オオサカ武勇伝・ぷらすB 一日目 ―コウベ 「ここが件の世界ですか」 「そう。場所は……コウベね。橋を渡ればミドリガオカ。悪司の本拠地よ」 「そんな一々めんどくさい事は止めにして奇襲して終わりにしませんか?」 「それはつまらないわ。とりあえず、PMのチビガキのところに行くわよ」 「はぁ……わかりました」 私はレナ。元バトルノートである魔人だ。 そして、何の因果か私は今、大陸とは程遠い異世界にいる。 無論本来ならこんなところに居たくは無い。ワーグ様のわがままに付き合わされることになったしまいこうなった。 1分1秒でも早く城に戻りアイツの望む『二人の世界』の完成を目指さねばならない。 ……あれ? しかし、私がここにいる原因も元を辿ればアイツの思いつき……。 もしかしなくてもランスの自業自得、か? ……まあ、いい。とりあえず、早く大陸に戻ることだけを考えるとする。 ―ヒラカタ ウシに引かれてもいないのに動く車という乗り物に乗り移動した先は周りの民家とは一線を画す屋敷の前。 ……しかし、どうやって動いているのだろう? アースガルドのような魔力炉を小型化してあるのか? しかし、この世界には魔力という物があまりにも希薄だが? 見る限り色々な形があり持ち帰れば産業の発展につながるかもしれない。 「レナ、何をぼ〜っとしてるの? 入るわよ?」 「あ、もうしわけありません」 ワーグ様は門番と衛兵を蹴り倒し悠々と屋敷の中へ。 姿が見えなくなったのを確認して門番と衛兵の様子を見る。 ……なんとか息はあるみたいだ。 我々は交渉に来たのであって襲撃に来たのではない。ハズ。 門番を黙らせた時点でかなり怪しくなっているが。 ―屋敷内部 「桃山の屋敷に殴りこみとはいい度胸ね」 「どこからどう見れば殴りこみにみえるの?」 ワーグ様、どこからどう見ても殴り込みにしかみえません。 案の定、ワーグ様と対峙している二人はいつでも攻撃に移れるように重心を移動させている。女性のほうは拳に炎を纏わせていて、もう一人の屈強な男は女性の少し前方で盾のように立ちはだかる。どことなくサテラ様とシーザーに似ている気がした。 「あんたは確かヤマトにいたやつでしょう? 消えたって聞いていたけど」 「まあ、確かに一時期はこちらの世界にいなかったわ。ちょっと野暮用が出来たから戻ってきたの。お前に用は無いからチビガキのところに案内しなさい」 ……思いっきり喧嘩売ってますよ、この方。 せめて容姿を利用して騙すとか考えてください。 いや、門番を蹴り倒して入った時点でもう無理か。 「盾、やるわよ」 「……」 相手の二人も喧嘩を買ってしまった。 それにしても盾みたいだと思っていたら本当に盾というらしい。字(あざな)だろうか? と、目を放した隙に屋敷ロビーで格闘戦が始まってしまった。 ワーグ様の周りにはラッシーが格納している魂が実体化してPMの二人と戦っている。 あの魂たちの戦闘力は侮れない物だったはずだが、PMの二人はそれを顔色一つ変えずに撃破している。こちらもかなりの戦闘力を有するようだ。 戦闘パターンの記憶を開始する。これでコレクションが二つ増える。 ふと見ると私の周りにもPMの下級構成員らしき者達が集ってきた。これだけ派手にやっているのだか仕方がないといえばそうなのだが。 「君達、私に構うのは止めてもらおう。あいにく私は忙しい。彼女達の戦いぶりを記憶しておきたいのでね」 言ったところで無駄、か。忙しいのは本当なのだが……。 後ほど私たちの下で働いてもらうのだ、少しくらい実力を見せてもいいだろう。 『リカーリングナイトメア』 魔人になって得たこの力にはそう名を与えた。 バトルノート単体ではその力を発揮できない。指揮する部下が居てこその真価を発揮できる。しかし、指示を出す対象がそこにいない局面もある。なら、自分で作ってしまえばいい。まだまだ未完成で発展の余地はあるが十分使用に耐えうる。 影に力を流し込み術式を起動。 「起きろ。仕事の時間だ」 立ち上がる黒い塊。このままではただの不定形生物にすぎない。 コレに私が記憶しコレクションしている今までに見てきた誰かの戦闘経験を写しこむことによりその人物の劣化版として機能する。 今回はランス一人。今のところ10体まで同時に使役可能だ。 ただの黒い塊が姿を変えて大剣と鎧を形作る。姿形こそまねても表情までは再現しない。 「サポート無しでもいけるな? 任せる。殺さないよう手加減を忘れるな」 本体である私が魔力の供給を止めない限りアレはダメージを受けても再生し続ける。 対峙するものにしてみればまさに繰り返す悪夢となろう。 1対10くらいの戦いになるが問題ない。私はワーグ様のほうへ注意を戻す。 ワーグ様はラッシーに腰掛け観戦モード。対する二人は次々と実体化する魂に応戦するのが精一杯になりつつあるようだ。……あれこそ悪夢だろう。 「ワーグ様」 このままでは決着がつくまでに時間がかかる。危うく目的を見失いそうになったが、我々は喧嘩に来たのではなく、無敵様が参入するであろう悪司組と敵対するためにPMと手を組む目的でここへ来ているのだ。 「何?」 「そろそろ先に進みませんか? 今でも十分そうですが、これ以上事が大きくなると交渉の余地がなくなります」 「交渉、ね。まあ、いいわ。別にチビガキの命を人質にしてPMをのっとるのもアリかと思ったんだけど」 ……意外とソレの方がすんなりいくかもしれない。 が、それは私の主義にそぐわない。 「ラッシー、全部片付けて」 「わふ」 急に戦っている相手が消えてしまい大きくタタラを踏む二人。 だが、すぐに体勢を立て直しこちらを睨みつけてきた。 「……何のつもり?」 「これ以上やっても無駄だってわからない? さっきも言ったはずだけどチビガキの所へ案内してほしいの。わかる?」 「その必要はありまちぇん」 声の主は正面大階段の上。 桃山リンダ。どこからどう見てもお子様だがPMの専制君主らしい。 背後には執事が控えている。……こちらの方はただものではない気配がぷんぷんする。 「これだけどたばたやっていれば屋敷中どこにいてもきゆきまちゅ」 「久しぶりね、おこちゃま。出てきてくれてありがとう。下っ端をこれ以上苛める手間が省けたわ」 「な! 誰が下っ端ですって!!」 「アエン姉様、リンダ様の前です。落ち着いてください」 いつの間にか現れた炎使いの妹は氷のように冷ややかな雰囲気を纏う。 「くっ……。盾、出かけるわよ」 「……」 すれ違いざまにものすごい殺気をぶつけられた。 ……ソレを私に向けるのは間違いだと思うのだが。 「ここじゃ話をする場所の相応しくありまちぇん。ハイネ、場所を用意してくだちゃい」 「はい、リンダ様」 ハイネと呼ばれた老齢の執事は音もなく姿を消した。……執事レベル3? ―桃山邸 バルコニー 魔王城のソレと比べると猫の額くらいの広さ。城と屋敷の違いといったところか。 「……そこの黒いの。今しちゅれいな事かんがえてまちぇんでしたか?」 「いえ、まったく」 聡い子供だ。……正直苦手なタイプ。小さい子供はどう扱っていいのか未だにわからない。 ランスの孤児院でも小さい子供には避けられていたほどだ。 ランス曰く子供を見る目が怖いらしいが……。 「まあ、いいでちゅ。そろそろ話をききまちょう」 「簡単に言うと、私のモノになった無敵が女を連れてこっちの世界に逃亡、駆け落ちしたから取り返しに来たんだけどモミアゲ男の組織に身を隠しちゃったから単身突撃は無謀かなと思い立って、ならば対立組織のチビガキを利用してしまおうと思ってきてやったの」 思わず口に含んだ紅茶を吹きかけた。 桃山リンダも呆然としている。 「ワーグ様、一言いいですか?」 「何よ?」 「前半部分、かなり捏造が入っていませんか?」 「文句ある?」 「あります。……とりあえず、この場は私にお任せください。無敵様を取り戻すにしてもPMの力は必要です。ワーグ様ではまとまる話もまとまりません」 こういう場に私を使わないなんて、私がここへ連れてこられた意味がなくなるではないか。 ワーグ様の目が細くなり非常に心臓に悪い。 空気が凍りつき、私も桃山リンダも硬直している。 「……まあ、いいわ。任せる」 「承知しました」 咳払い一つして場を仕切りなおし。 「さきに自己紹介を。私はレナ。ワーグ様と同じく魔人に名を連ねる者です。現在はワーグ様の補佐をしています」 本当のところは補佐を『させられています』が正解。 だけど、考えたら負けだ。 とりあえず、自己紹介から始まり正確な私たちの置かれた状況などを子供にもわかるように噛み砕いて説明しおえる。 「ふ〜ん、確かにお互いに必要なものをもっていまちゅね」 私とワーグ様には組織の力が、桃山組には決め手となる戦力が欠けている。 協力関係になれば互いにその欠落が埋まる。 「こちらからの条件としては滞在期間中の衣食住を提供していただければ結構、あとは可能な限りそちらの条件を飲みます」 こちらから出す条件も好条件のはずだ。相手は子供。何をきっかけに機嫌を損ねノーといってくるかわかったものじゃない。 「いいでちゅ、手を組みまちょう」 譲歩も何も必要なく予想以上にあっさり受け入れられた。 あっさり過ぎて逆に不安になるほどに。 ……裏切られた場合も想定しておこう。 常に誰か一人は最悪の事態を想定しておかねば。 「決まりね。レナ、宣戦布告に行くわよ」 よほど暇だったのか同盟成立と同時に私の後襟をつかむワーグ様。 そのままひきずり屋敷を脱出。 ……その行動力には感服します。 されるがままの私から見えるのは本当に今の決断が正しかったのか悩むお子様当主の姿。 なに、すぐに納得させてみせよう。ワーグ様はともかく私を雇って正解だったと。 こうして私のオオサカでの1週間が始まった。 |
あとがき かなり久しぶりにASOBUです。 中途半端になっていたリセット武勇伝の続きです。 なんと2面構成ですすみます。……無謀ですね。 終らせることができるのでしょうかww サイドBはキャラが書きやすいレナ嬢の視点から、サイドAは無敵やリセットの様子を淡々と書こうかと思っています。実現できるかは神のみぞ知る…… |