僕はあの日、ジャングル・ジムの上で空を見上げた。
柔らかく吹き抜ける風を全身に受ける。
気持ちがいい。
だがそんな風ですら、僕の心にかかった霧を払ってはくれない。
そのまま僕は、ゆっくりと上空を抜ける雲を見送った。
僕はいつもと違う場所に居た。
周りにはいつもと違う友だち。
いつもと違う雰囲気、いつもと違う緊張感。
それは、もしかすると別世界に来てしまったのではないかと錯覚させるほど強烈で、
いつもなら冗談などを笑って返せるはずの取るに足らない言葉にすら、小さな相槌を打つことしかできない。
まるで、身も心も一回り小さくなってしまったかのよう。
『寂しい』
その気持ちに気付くまで、いったいどれだけのため息をついたのだろう。
いや、本当は気付いていたのかもしれない。
ただ、僕の小さなプライドがその感情を抑え込んでいたいただけなのかも・・・・・・
わかってみれば簡単なことなのに・・・
それなのに・・・・・・
僕はまたジャングル・ジムに登っている。
逃げ道を失ったわけじゃない。
あの澄みきった空に訊ねたいことがあった。
僕はどうすればいいのか。
・・・・・・・・・
本当は、答えなんてとっくに出てるんだ。
今僕がやっていることは、ただの時間稼ぎだってこともわかってる。
ただ、ちょっとだけ勇気が欲しかった。
・・・・・・・・・
よし。
伝えなければならない言葉があった。
今じゃないと・・・ この空の下じゃないと、もう踏み出せない気がするから。
ケンカしちゃった友達に、一言だけ
『ごめんね』って