ピピピピピピピピピピピピピ――――――カチッ


耳を刺すように鳴り響く高音。
自然と伸びる手がその音源を絶つ。
泥のような眠気を抱え目覚める、いつも通りの朝。


「朝・・・か」


カシュッ


すがすがしい音を立て、カーテンを開く。
瞬間、先ほどの眠気が窓からの光に打ち消されていく。
その光に抱かれ、思いっきり身体を伸ばす。
制服に着替え、鞄を手に持つと、勢いよくドアを開け放つ。
勢いをそのままに、階段を駆け下りる、いつも通りの朝。


「母さん、メシ〜」
「はいはい」


台所に駆け込み、放つ一声。
そのまま洗面所に向かう。
顔を洗い、歯を磨き、濡れた両手で前髪を掻き上げる。
鏡に映った自分と目が合い、笑顔を一つ。
身を翻し、食卓へと向かう、いつも通りの朝。


「いただきま〜す!」


いそいそと朝食済ませ「ごちそうさま!」と一言。
食後に軽くお茶を飲み、玄関に向かって賭け出す。
廊下を走りぬけ、そのまま玄関先に座り込む。
靴を履き、立ち上がってトントンとつま先を鳴らす、いつも通りの朝。


「行ってきま〜す!!」


玄関のドアを開き、2度目の朝日に身を投じる。
熱を持ったアスファルトの上、ゆっくりと歩を進め、そして止まる。
一度すがすがしい空を仰ぎ、再び視線を前へ。
度の過ぎた陽気、揺らめく陽炎、苦笑気味に前を見つめる、いつも通りの朝。


「・・・よしっ、いくか!」


誰に向けたものでもない一言。
背負った鞄の2つの肩紐、それぞれを両手でしっかりと握る。
初めの2、3歩は歩み、そこから徐々に加速。
遅刻ギリギリ、ここから時間との競走が始まる。



変化のない朝。
習慣となった一連の行動、その典型である朝。
誰にも干渉されない、私の思い通りに進む時間・・・・・・朝。


これが私の、いつも通りの朝。



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