次元を超えて(仮)

 

 

 

 

 

第1話「出会い」

 

 

 

それはある晴れた夏の日の事。

 

俺は一人、ベッドの中で惰眠を貪っていた。

 

「今何時だ?」

 

俺の脳がそろそろ学校に行く時間だと思ったらしい。

右腕が、まるで獲物を探す蛇のように地面を這っていた。

程なくして俺の指に冷たいものが触れる。

時計発見!

 

「あー、今何時だ………!?」

 

それを見た俺は我が目を疑った。

 

「……11時半」

 

一応確認しておこう。俺は学生だ。

とりあえず高校生をやっている。

 

「……遅刻?」

 

そう、その通りだ!

つまり普通の高校生はせっせと勉強をしている時間なのだ。

いや、俺も普通の高校生なのだが……

………

 

「…よし、サボろう!」

 

悩んだ時間、僅か1秒。

 

「そうと決まれば家でじっとしているなんて勿体無いじゃないか!」

 

…え? それなら学校に行けって?

いや、それとこれとは話が別だ。

学校に行くのと私的に出かけるのでは訳がちがう。

 

「さて、どこ行こっかなー」

 

そんな事を考えつつ朝飯、兼昼飯を食べようとしていた、そのとき……

 

 

ピーーンポーーーーン

 

 

突然の来客である。

 

「チッ、誰だ? 人が折角いい気分で飯食ってる時にっ!」

 

 

ガチャ

 

 

「はい、どなた?」

 

とりあえず出てやる。

 

「あっ、今日からお世話になります」

「……誰だ、お前は」

「………え?」

「知らん、俺は断じて知らんぞ!」

「え? あの、はぇ?」

「じゃ」

 

 

バタン

 

勢いで攻めてみるとほらこの通り。

以外にサラリと流せるもの……

 

「あのー、お話を聞いてくださぁい」

 

……まぁ、流せるわけも無いか。

 

「黙れ! セールスはお断りって、そこに書いてあるだろうが!」

「……いえ、書いてないですよ?」

 

当然である。

俺はそんなもの貼った憶えは無い。

 

「そうか、なら改めて言おう。セールスはお断りだ」

「セールスじゃないですよぉ」

「だったら再び訊くが、貴様は誰だ!?」

「ふぇ? もう忘れたんですかぁ?」

「忘れるも何も、元々知らん!」

「ひどいですぅ! 昨日の夜の事を思い出してください。紫桜(しおう)です」

 

ん? 紫桜? 昨日の夜?

ああ、そういえば何かあったような……

 

 

 

(回想中)

 

 

「うー、飲み過ぎちまったぁ」

 

俺は高校生にもかかわらず酔っていた。

何処で飲んだのかは覚えてない。

ただ、酔って外を歩いていたのは覚えている。

 

「ん? なんだありゃ」

 

俺の視線の先で、一人の老人が何かをやっていた。

何故か写真(のようなもの)を広げている。

いつもなら完全に無視しているところである。

しかし、その時は違った。

俺は何かに引き寄せられるように近づいて行った。

もちろん、その必要を感じたわけではない。

だが、俺にとってその行動は至って自然に感じられた。

 

「おい爺さん、こんなとこでなにやってんだ?」

 

そして、気付けば声を掛けていた。

 

「お? 興味がおありかね?」

「まあ、そういうことになるかな。で、なにやってんだ?」

「商売じゃよ。見て分からんか?」

 

確かにその写真には名前と値札がついていた。

しかし、値札には全て『¥0』と書かれている。

 

「これを、売ってんのか?」

「それ以外、何を売っとるように見えるというんじゃ?」

 

それもそうだ。

ここには写真しか置いていない。

まさか自分のカラダを売るなんて事はもってのほかである。

 

「……写真、だよな」

「その通りじゃ」

「でも、いくらなんでもタダってのは」

「少年、値段で見ちゃいかん。 ちゃんと商品の方を見て欲しいのう」

「商品……ねぇ」

 

老人の言うことももっともである。

とりあえず俺は商品……写真の方に目を向ける。

 

………

 

よく見ると、微弱だが魅力的な何かを発しているようにも見える。

もちろん塗料とかではないだろう。

もっと自然な、もっと人間的な何かを……

 

「んじゃ、一つだけ貰っとこうかな」

「おいおい、ちゃんと買ってもらわんと……」

「ああ、そういえば売ってるんだったな」

「わかればいい。で、どれにするんじゃ?」

 

俺は再び写真に目をやった。

 

「よし、これだ。この紫桜ってやつに決めた」

「…何故それを選んだ?」

「え、それは………俺の趣味にぴったりの設定をもってそうだったから、かな?」

「ふむ、なかなか面白い奴じゃのう」

「なんなんだよ」

 

少し馬鹿にされたような気がした。

だが、そろそろ酔いも冷めてきて冷静になってきたのか、あまり苛立ちはなかった。

 

とりあえずさっさと帰ろうと思い、その写真を手に取った時、異変が起こった。

 

 

パシュッ

 

 

「うわっ」

 

水の弾けるような音が右手の写真から聞こえた。

だが次の瞬間、さらに驚くことが起こった。

写真が俺の手の中で水に溶けるように消えていったのだ。

 

「おい、爺さん! これはどういうことだ!?」

「まあ、気にするでない。すぐに分かる事じゃ」

 

そんな言葉のみを残し、その老人もまた消えていた。

 

「……なんなんだよ」

 

 

 

(回想終了)

 

 

 

「うーん長い回想だったなあ……いや、それどころじゃないぞ」

とりあえず、その紫桜とやらの姿を確認する。

確かに、あの写真の女の子のようだ。

 

「お前はなんだ?」

 

「ふぇ?」

「ふぇ?じゃないだろ。俺が買ったのは写真だったはずだ」

「まあいいじゃないですか。付録みたいなものですよ」

 

付録? 本当にそうなのか?

 

「つまりお前は俺が買ったもので、俺の所有物となるわけだが……」

「はい、あの時にあなたは私の所有者になられたのですよ」

 

はっきり言って、嬉しかった。

このあまりに非常識極まりない状況を危惧するわけでなく、俺はこの状況をすんなりと受け入れていた。

 

「わかった、とりあえず中には入れ」

「わかりました、失礼しますね」

 

 

この時、この瞬間から全てが変わり始めた。

しかしその時の俺には、それに気付く事が出来なかった。

 

 

 

                          <続く……かな?>




やっとのことで一つ完成しました。

まぁ、今のところ続くかどうかは完全に不明です。

続きを読みたい・・・とか思ったりしている方や、いろいろと感想のある方は感想とか下さると嬉しいです。

もちろん、意見等もお待ちしております。


そんなこんなで夏も終わり、寂しい限りですね。


では、今後ともよろしくお願い致します。





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