300年もの間、俺は独りだった。
…でも、あいつだけだったんだ。
あいつだけが俺の無彩色な日々の中で、唯一の極彩色だったんだ…

color

「俺が…この俺が…一体どうして」
することもなく、かと言って死ぬことさえできず、無彩色に過ごしてきた300年間。
俺は…一体なぜ、ここまできてしまったんだろう…
生きることに絶望し、しかし右手の紋章のために生き続けなければならなかった。
楽しいこと、なんて、笑顔なんて一つも無かった。


……でも、アイツが現れた。
通りすがりの戦火の中、テオ・マクドールに拾われ、連れていかれた場所に


クゥが、いたんだ



「テッド〜〜〜♪」
―――――来た、あのかわいい顔して何気小悪魔、俺の親友クゥ・マクドール。
こいつがこんな声で走ってくる…こんな時は。
テッドは少し身構えた。
「クゥ…ぐえっ」
テッドはクゥに思いっきり抱きつかれた。
カエルが潰れたような声をだすテッド。
そしてクゥに抱きつかれたまま自分の短い髪をかきあげ、ため息を着く。
「あのなぁ、クゥ…」
それでも離せない俺は、やっぱりコイツに甘いのだろうか。
ふとそんなことを考えたが、
「ん?なぁに??」
見上げてくる瞳のあまりのかわいさにテッドは言葉を失う。
―――――どうしてコイツって奴は………
「いい加減いきなり人に抱きつくのはやめろって…」
それでもいかにも呆れながらという呈を装って言う。
「えぇ〜?いいじゃん!これが僕の友情表現だ!」
あはははと笑いながらクゥはテッドから手を離す。
その手に寂しさを覚えながらもテッドはホッとした。
これ以上抱き疲れていたら俺が危ない。
「まぁいいか…」
ため息をつきながら。



―――――それはいつからだったんだろう。

いつの間にか同じくらいになってた背丈も
笑顔を向けられて無表情だった俺もつられて笑ったことも
一緒に釣りにいって、久々に遊ぶ楽しさを思い出したことも

今となってはすべて愛しい。


…こんな想い、何年ぶりだろう。

昔のことなんてもうすでに覚えていない。
紋章を俺に渡したじいちゃんの顔だって、今ではもう朧だ。
300年間、ずっと生きてきた俺は物事を白黒に見ることを覚えた。
白か黒。
俺にとって有か無か。
無彩色な日々。



何度か情を交えた人もいた。
だが、それでもやっぱり俺にとっては無為だった。
白。
黒。
それしかなかったんだ。



それ以外、どうしようもなかったんだ。

「ほら、釣りに行くぞ!」
俺は呆れ顔でクゥの手をとり、釣り場へ向かおうとする。
「わっ、テ、テッド、ちょっと待ってよ!」
クゥが少し驚いた様子で声をかける。
振り向いた俺は、その顔に少しの動揺ととまどいを見る。
―――――ん?
……………あぁ。
そうか。
俺はなんだか良い気分になってクゥの手をさっきよりもしっかり結ぶ。
「なんだよ、手ぇつなぐぐらい変なことじゃないだろ?
おまえこそしょっちゅう手やら腕やら組んでくるくせに。
それよりも、早く行かないと遊ぶ時間が減るぞ?」
「…わ、わかってるよ!
行くよ、行く!
――今日こそはテッドを追い抜くんだ!!」
「あははは!!!
おまえそりゃ無理な話だって!
このテッド様に勝とうだなんて、数千年早い!!
クゥはまだ一日に数匹が限度だろ?
俺はいつも10超えるもんな〜♪」
「むぅ〜〜〜〜!」
クゥがどっかのむささびみたいな声をだして悔しがる。
俺はそんなクゥを笑いながらも、やはり愛しく思うのだった。
―――――クゥは驚いたんだろう、俺から手を結んできたことが。
……俺はめったにクゥみたいなことはしなかったからな。

どうしてこんなにこいつだけはっきりしているんだ?
どうしてこんなに鮮やかに彩られるんだ?
どうして俺はモノクロでこいつを見ないんだ?


ずっと、わからなかった。



「暗くなってきたな……………」
「ん…………………………」
川岸の土手に二人並んで座って釣り糸を垂らしている。
俺はもうすでに20匹ほど釣っていた。
「まだ釣るのか?」
今日、クゥはどうしたのか3匹しか釣っていない。
いつもならもっと釣っているのだが、運が悪くてたまたまそうなることはあった。
だが、今日のクゥはテッドから見て少しおかしかった。
本人は明るく釣ってるふりをして誤魔化していたみたいだが、時々なにか深く考え込んでいるみたいだった。
今もそう、今日のクゥはおかしい。
「ん………もうちょっと……………」
―――――朝のあのいつもの明るさはなんだったんだ…
俺は一つため息をつくと、クゥの頭をポンとたたく。
「!」
「どうしたんだ?
今日はずっとその調子だな。
なにか悪いことでもあったのか?」
クゥが驚いて水面に落としていた目線をテッドの方へ向ける。
「えっ?
な、なに、どうしたの?
僕はなんともないよ??」
「とかなんとか言いやがってコノヤロ、釣りの間ずーっと考え込んでたくせに!
俺に隠し事は無駄だぜ?」
「!」
クゥがびっくりする。
―――――気づかれていなかったと思っていたのか?
そう俺が付け足して言うと、クゥは目線をまた水面に落とし、
「……………テッドは、いつまでこのままでいられると思う?」
ぽつりと言葉を落とす。
テッドは目を見開いた。
知らず、身体が緊張した。
水面に目線を落としていたクゥからは、それは見えなかったが。
「僕は父様の息子だから、これから軍に入ってバルバロッサ様のために仕えていくと思うんだ。
テッドは……………昔旅に出ていたっていうから、また旅にでるのかな?
…………………………どちらにしろ、ずっと、いつまでもこのままでっていうわけにはいかないと思うんだ…」
クゥは一旦そこで言葉を切る。
そしてテッドを見上げた。
見上げるその瞳に、寂しさを見た気がした。
テッドはハッとした。
―――――そうだよな、こんな俺に気づくわけが無い。
しかも。
……………クゥは、俺と離れたくない、と?
ありえない。
無理な話だ。
俺がこいつから離れるなんて。
もう、離れることさえできない。
「テッドは、今は僕のとこにいるけど、きっといつかは……………
僕はもうずっとこのまま、毎日釣りに出かけたり、森に狩に行ったり…ずぅっとこのままでいたい………………」
先を見通す鋭い目。
俺のほうが長く生きているのに、時折見せるこいつの敏捷な観察力には驚かされる。
―――――こいつに魅かれている。
俺が…この俺が…一体どうして。
…不思議だ。
クゥのためならなんでもしてやりたいって気になる。
そう、だから…
「それはないだろうな」
「……………え?」
「俺にはこの先、時間なんていくらでもある」
そう、過ごしても過ごしてもいつまでも終わらない永遠という時間がな。
「特にやることもないし」
右手の紋章のために生き続けるということ以外。
「引き止めてくれる人がいるっていうのは、嬉しいことだしな」
……………いままで自分から離れていったからな。
でも、こいつになら。
この、鮮やかで色彩豊かなこいつのそばにいられるのなら。
俺は―――――


どうしてこんなにこいつだけはっきりしているんだ?
どうしてこんなに鮮やかに彩られるんだ?
どうして俺はモノクロでこいつを見ないんだ?



最期に会ったとき、その理由がわかった気がした。
―――――そうか、こいつはこういう存在だったんだ。

天魁星

輝くばかりのその存在。

俺は、その光に魅かれたんだ。

なにかをするために、なにかを成し遂げるために生まれてきた存在。

俺は、その存在に憧れたんだ。

それと同時に、どこか不安定なあいつのあやうさを守りたいと思ったんだ。

俺は…こいつのためなら死ねる。

こいつのために死ぬ……………きっと、そういう星の元に生まれたんだ。

無意味に生きてきただけだったのなら、意味あって死んでいきたい。

俺が、そうすることで、少しでもこいつのためになにかができるなら。

こいつがめざすことを、少しでも助けてやれるなら。

恨まれても良い。

憎まれても良い。

おまえのために、俺は死んでやろう。

おまえのために、俺の今までの生きてきた年月、すべて捧げよう。

ありがとう。

俺に、俺の世界に色を与えてくれた
クゥ

次はおまえの番だ。
捧げたすべて、むだに使うなよ。
このテッド様がこんなことするなんて、本気でありえないんだからな。

おまえがいて、良かった。
会えて良かった。

ありがとう。

ありがとう……………


*…………………POSTSCRIPT…………………*

テッドの坊ちゃんに対する気持ち。
これはずっと書きたかった話なんです。
あたしはこのテッドの坊ちゃんに対する気持ちって、すっごくせつない!!と思うんです。
ていうかこのテッドの運命自体、すっごいせつないですよ〜!!
嗚呼……………不幸な少年ってステキ…………………………(ヲイ)
まぁそんなたわごとを言っておりますが、餃子は本当にこの二人はせつないと思います。
……………ただ、この小説はそのせつない感じがあんまり出なかったかな…って、すっごく自己嫌悪……………Σ(-ロ-)Oh no!
虚しい……………(涙)
いつか書き直そっかな……………

 2007.3.26 真白茶飴

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