金髪の髪の人の先にいたのは…
紫で切り替えされている緑のバンダナに包まれた、やや茶色がかった黒の少しぽわぽわした髪。
小柄で、押したら倒れてしまいそうな細身の体躯。
橋先に座ってこちらに背を向けている彼は…明らかに、普通の人とは違う雰囲気を醸し出していた。
少し猫背に俯いて、静かに釣り竿を川に垂れていて。
その様が…なんだか、今にも儚く崩れてしまいそうな様相に見えたからー
童顔英雄
「すみません、あの…」
俺は少し緊張して、静かな口調で慎重に話し掛ける。
心無しか…後ろにいる、今日一緒に付いて来ていた仲間の幾人かからも、緊張した様な空気が感じられた。
彼らも、俺と同じ様に今にも彼が消え去ってしまいそうだと思ったのだろうか。
「………」
「………?」
返事が返ってこない。
得体のしれない不思議な人…
俺は奇妙な感覚を覚えながらも、もう一度声を掛けようとした所…
「…久しぶりだね」
ルックだった。
驚いた。
まさかルックが、彼に話し掛けるとは微塵にも思っていなかったから…
常にいかにも「くだらない」という様な表情を浮かべている彼が、ここにきてその重い口を開くだなんて。
「………」
彼が、少し身体をぴくりとさせた。
…でも、まだこちらを振り向こうとしないし、ルックの言葉に返答する気配もない。
微動だにしない彼は、もしかして、俺たちが一体何者であるのかを…悟っているのかもしれない。
俺はもう一度声を掛ける。
「…あの、貴方は」
「………」
それでも返答が無い。
俺は少し心配になる…彼は、もしかしたら俺達に、話し掛けられたくないのかもしれない。
こんなに不思議でミステリアスな雰囲気を漂わせる彼。
一体どんな理由で、こんなにも儚い様相を見せるのかー…
「…ニィリ」
またも珍しく、あの短気なルックが躊躇いながらも彼の名を呼ぶ。
…ニィリ?
それが…彼の、名…?
「ニィリ」
「………」
それでも黙っている彼。
「ニィリ?ちょっと…」
ルックがしびれを切らして肩に手をかけたその時。
ぐらりと彼の身体が傾いだ!
「…!?」
俺は驚いて彼の顔を覗き込む。
ふわっとした前髪を靡かせ、横に倒れた彼の長い睫毛に縁取られた瞳が………
「………すやすや」
「寝とるよこの人ーーー!!!」
閉じていた。
そりゃもう、いっそ憎々しいくらいに気持ち良さそうな顔で、すやすやと、お気楽に。
「…そういやコイツの趣味、日光浴だったね…」
盛大な溜め息を付いてルックが呆れた様な顔で彼を見遣る。
「何だよ、寝てたのか…ま、いかにもニィリらしいっつーか、な…」
苦笑しつつ、それまで黙っていたフリックが話し掛けてくる。
…そ、そ、それって…それって…一体どういう人やねん…orz
なんでこの人、こんな儚そうな雰囲気醸し出しながら、でもそれが実はすやすやおやすみタイムでした☆なんて芸当ができるんだ…
完全脱力した俺は、所在無さげにルックを見る。
「…起こすか」
もいっかい溜め息を付いたルックがニィリの頭を乱暴にロッドでどつく。
どごっ!
「こら起きろ!ニィリ…ニィラドゥリィ!!」
「…え?ニィラドゥリィ…?」
ルックが結構イタそうな音をさせて殴りつつ言った言葉…それは。
まぎれも無く…俺の憧れていた、あの
「うにぃ……ふぇ?」
隣国の、英雄の。
彼が、瞳を見開く。
予想通り、幼い顔つきの彼の顔に似合う、大きな瞳が表れて…不思議な色合いの緑が俺を視界に入れる。
ひとつ大きく瞬き、そして今やっと頭の痛みに気付いたという様子で、ルックに叩かれた頭の箇所を手で押さえる。
「…あれ?…んんぅ、きみ…誰?……ふぇ、ルックがいるぅ……」
何やらむにゃむにゃそんなことをまだ眠たそうな顔で呟いていた彼が、突然にぱっと笑って
「おはよう〜」
と言ってふぁあ、と欠伸する。
「えええ〜〜〜!?ニィラドゥリィって…も、もしかして…こ、コレが…まさか…あの、ニィラドゥリィ…解放軍の英雄、ニィラドゥリィ・マクドール!!??」
「うぇ?何でございましょ?」
とぼけた様に答えるその口調があまりにも似合いすぎてる彼は…彼が…まさか本当にあの隣国の超有名人!?
「ま、ま、ま…マジで?」
あまりの自体に、俺の頭が付いてこない。
一体どういうこと?
目を瞠る俺に助け舟を出してくれたのはフリック。
「本当だ、こいつが正真正銘、あの門の紋章戦争で大活躍した、ニィラドゥリィ…俺ら親しい仲間内では、皆ニィリってこいつの事、呼んでたけどな」
「う?」
背をバンと叩かれて俺に紹介された…彼。
「???……よろしく?」
こてん、と小首を傾げて、未だ事態を良く理解してないといった顔をしながらも、とりあえず挨拶を返してくれた。
見えん…見えない…!
全然あの、トランで大騒動を起こした、かの雄々しい英雄らしくない…っっ!!
てゆーか…
てゆーかぁぁぁぁぁ!!!!!
俺は声をかけられた事に漸くハッとして、この途方も無いショックから抜け出し、即座に行動を開始する。
「初めまして、あの、俺シラギと申します。どうぞ今後、平に宜しくお願い致します」
目をきらりと一瞬光らせ、すちゃっと彼の両手を握って、神妙な顔で挨拶する俺。
「あ…うん、シラギ…くん?」
「いえいえいえいえそんな君付けだなんて水臭い。どうぞシラギと呼び捨てでお呼び下さい、マクドール様…!」
「…あ、そう?えっと、じゃあ…シラギ」
「はい、なんでございましょうか?」
「あの…えっと……距離近い…」
「アンタ一体何やってんだよ!」
がづごぉッッ!!
さっきマクドール様を叩いた音より明らかに酷いカンジで俺を殴るルック。
「………いっ…てぇぇぇえっっ!!っ何すんだよルック!!!」
余りの痛みにマクドール様の手を離し、自分の頭をおさまえてルックに詰め寄る俺。
「そんなに近寄ったらニィリがよろけて川に落ちるじゃないか!しかも馴れ馴れしい…!」
「な…ちょっとしたスキンシップだろっ!何もロッドで殴らなくても…」
「あれがちょっとしたスキンシップかい…?アンタの脳も相当腐ってるようだね」
「憧れの英雄に会えたんだ、ちょっとぐらい行き過ぎたって仕方ないじゃん!」
「ちょっとぐらい行き過ぎて、それであわよくばキスでもって思ってたんだろ?最悪だね、アンタ」
「ち…違う、キスだなんてそんな恐れ多い事をまさか」
「じゃあなんであからさまに目を泳がすわけ?」
「うっ…」
のんびり状況を見守っていたマクドール様が、にこにこ人好きのする笑顔を浮かべて間に割り込んで来られ、
「まぁまぁルック、シラギ、仲間内で争わないで…ね?」
俺とルックの肩に手を置いてにっこり微笑まれて…ついうっかりそれを直視してしまった俺は。
「うっ…!!」
さっきとは違う意味の「うっ」で、思わず顔をガバリと反対側に反らしてしまう。
だ、だ、だってだって…ちょ、超…
「かわいい…vvv」
思わず口から漏れてしまったその台詞。
ルックが顔を盛大に顰める気配が伝わって来た。
全身から立ち上る雰囲気が、いかにもアンタもう一度殴ってやろうか?と語っていて…でも多分、マクドール様の手前、それが出来ずにいる。
だがしかし。
ぴくり
「かわいい…?」
マクドール様が俺のつぶやきをリピートした。
その声のあまりの可愛らしさに、俺はすばやくマクドール様の両肩を掴み、(ルックが今「あっ!」とか言ったのはまるっきり無視で)マクドール様の瞳を真正面から見つめて
「ええ可愛いです…っ!ぜひとも俺と付き合って下さい!!」
超至極真面目な顔で言い放つ俺。
駄目でした…この素敵な人を前にして、こうも言わずにいられる人がいるのなら、俺はぜひとも拝見致してみたく頂戴候っ!!
そのまま瞳をきらきらさせて目の前のお方をじぃぃっと見据えていると、意外なものを、俺は目にする事になった。
「可愛いから…付き合って欲しい訳?」
美しい弧を描く眉が、眉間に皺を寄せて可愛らしく顰められる。
ま、マクドール様が…怒っておられる…?
意外だ。
その可愛らしく、ほえほえとした雰囲気からはおよそ想像出来ない怒りの表情が、今、俺の目の前で惜しげも無く晒されている。
意外である…が、その前に。
「怒った顔でさえ可愛らしい〜〜〜vvv」
俺はぶわっとわき上がるこの感情が押さえきれなくなって、ついに目の前の愛しい存在をがばぁっと抱きしめようとする。
…が。
どごどががぁぁっッ!!!!
「ぐぺろっっ!!」
「ぼ…僕の…僕のどこが可愛くて童顔で女顔で男に見えなくてしかも絶世の美少女だってぇぇっっ!!??」
マクドール様の華麗な棍技に脳天を直撃された俺はなす術も無く地面に転がる。
「そ…そんな事まで言ってな…ぅぐぉっぅ!!」
どげしッッと俺の腹を、その外見からはおよそ見当のつかない意外な馬鹿力で蹴飛ばされ、
「ふんっ…」
等と構えていた棍をブンッと音を立てて荒々しくその一端を地に着かせるマクドール様。
「最悪!お前なんか嫌いだっ!」
「…ー…」
俺はぶつりと一言声にならない声を漏らした。
するどくも聞きとがめたマクドール様が、俺に近寄り、聞き耳を立てる。
「あぁ?何て言ったよ?聞こえないよっっ!?」
「かのマクドール様の美しき御御足(←おみあし)に蹴られるならそれだけで本望…」
「ぅわ………」
ルックがかなり「コイツってこういうシュミだったんだ…」的な響きの声を上げた。
大してマクドール様は、
「………はぇ?」
さっきまでの怒り+外見からは辛くも想像出来ないかなりヤッさん的な口調を解いて、もとのほえっとした声+ほけっと呆気にとられた表情になり、
「…君って…マゾなの?」
可愛らしい顔からそんな単語をさらっと口の端に上らせたのだった。
それが、俺とニィリさんとの…一番最初の出会いだった。
え?なんで呼称がマクドール様から「ニィリさん」に変わっているのかって?
それは…あの後コウ君を助けて、レパントのまるで懇願するかの様な必至なマジ願いを「ごめんね」とにっこり笑顔で可愛らしく退けた(しかもそれで納得してしまうレパントって大統領としてどうなんだか)ニィリさんの案内で、ニィリさんの立派なお家に恐れ多くも泊めさせて頂いてしまった俺らだったんだけれども…
俺がその夜、ニィリさんの部屋に寝込みを狙ってあわよくばと襲撃した所、ニィリさんはそれに気付いてだかそれとも別の理由だか、もうだいぶ夜遅いって時間なのに起きておられてさ。
俺がモロ残念そうにしてると、窓辺に椅子を寄せて、座って窓の外を眺めていたニィリさんがこちらに顔を向けて
「僕ね、この女顔、めちゃめちゃ気にしてるの。だから今度からはそういう事言わないでね?」
とにっこり(ちなみに穏やかで可愛らしい微笑みだったけれど、大変空恐ろしいモノがあった)言った後に、
「それからマクドール様、って…やめて。…ニィラドゥリィが言いづらかったら…皆みたいにニィリって呼んでくれてかまわないから」
と言って、後はもう俺には興味無いとばかりにふいと顔を戻してまた窓の外を眺め始めた…
そんな事から、俺は『ニィリさん』って呼ぶ事になった。
『ニィリ』と呼び捨てするには…俺、やっぱりどこか恐れ多いものがございましたので。
「…ま、なんつーの?お前、しょっぱなからニィリに向かって言っては危険ワードその一を…ナチュラルに言い放ってしまった訳か」
どうやらニィリさんと付き合いの深いらしい…それが一体AまでなのかBまでなのかCまでなのかこの時には判別つかなかったけれども…シーナが哀れむ様な視線を向けてくる。
「だって…本当に可愛かったし。」
臆面も無く言い放つ俺。
ま…これは本当、ニィリさんが目の前にいないからだけどネ。
いても言っても良いんだけどさ…またあの綺麗なラインの御御足に蹴飛ばされるなら…うふふえへへ
にこにこ笑い出した俺を駄目だこりゃ、と肩を竦めたシーナ。
「…頑張れよ。お前なら…もしかしたら、ニィリも気を許してくれるかもしれないしな…」
片眉を上げてなにやら意味深にそう言ったシーナの真実の理由に、後に俺は否が応でも気付かされるハメになるんだけれども…ね。
*…………………POSTSCRIPT…………………*
ニィリ君の登場!
彼は…題名通り、童顔少年です。
キャラ設定を見ればわかる通り。
一途な子です。
…浮気しまくりだけど、一途な子なんです(笑)ええ(笑)
まぁそれは…追々小説を書いて行きますので…
シラギ君は…変態です。
や、mixiの坊受けコミュでさー、一時期「M2主って良くね!?」って話題が出てきまして、真白そこでその話題に便乗してミニ小説書いたんです。
それがこのシラギ×ニィリの原型だったんですよね。
今この二人の性格とは多少違う所もあったのですが、でもともかく、シラギのM設定はそっから来ました(爆)
だ…だって…萌えちゃったんだもの…!
もー皆さん、素敵なカキコしまくりだって…!!
M2主って何よ!?
なにその面白そうなネタ!!!!!!
そんなわけで、シラギは精神的にはSのクセに、肉体的にはMであります(爆)
この小説はー…ニィリが日光浴してたトコを、シラギが「儚い雰囲気うんたらかんたら」と勘違いする所と、
そして上記のM2主、それから「可愛い」と言われてめためた怒るニィリ君を書きたかったんですよね。
…確か(笑)
まぁ、そんなWリーダーズですが…どうぞこれから、よろしくしたって下さい(笑)
2007.04.02 真白茶飴
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