二つの人形
「っあ〜〜〜〜〜〜っっっ!!」
大きく背伸びして、身体を伸ばす。
やっと実験が終わった。
今回の実験では、実践で役に立つような結果にはならなかったが、それでも、多少の実りはあった…アリスはそう思い、満足そうにうんうんと頷いてから辺りを見回した。
「………随分散らかしてしまったのね…」
アリスには、よくあることだった。
普段、几帳面で何事にもきっちりきっちりと整理のつけているアリスだったが、一度魔法に関する実験に入ると、熱中しすぎるあまりにまわりが見えなくなるのだ。
今回もまた、実験器具やらなんらかの薬品やら…出しっぱなしになったまま、実験に熱中してしまっていたらしい。
「今から寝ても…微妙な時間だし、それに目が冴えてて…眠れそうにもないわ」
…ならばすること等、ひとつしかない。
「掃除をしましょうか」
「けほっ、けほっ…」
気づいたら、家中の掃除をしていた。
ここ一ヶ月近く実験に熱中していたせいで、しばらく家の中は放置状態だったのだろう、やや家中が埃っぽくなっていた。
実験に入ったら、しっかりと実験に没頭しないと気がすまない。
しかし元の生活に戻っても、アリスのそんな几帳面な性格は変わらないのだった。
あそこもここもと掃除しているうち、家具をひっくり返したり、棚を動かしたりと、いつの間にか大掃除となっていた。
「…あら、これは…」
そんな折、ふと見つけた二つの人形。
アリスはそれを作ったきっかけを思い出す。
…だが、人形など作ったところで本来の願いが叶うはずもなく…結局作ったら作ったで戸棚に仕舞ったまま、ずっと忘れていたのだった。
「…私の姿の人形と………魔理沙を模った、人形…」
その二つの人形は、狭い戸棚の中、ぎゅうぎゅうと窮屈そうに並んでいた。
「………」
しばらくその様を見て、アリスは少し顔を紅くした。
「…ふと、気づいたら二つ作ってて…でもそんなことしたって、どうにもならないし…」
人形達に手を伸ばし、取り出してみる。
「………せめて、戸棚の中でくらい、隣り合って座れたらな、って…」
嗚呼、我ながらに良く出来た作りだわ。
…現実逃避のように、そう考えた。
アリスは恥ずかしくて仕方が無かった。
二つの人形が出来上がった時、なんとなく出来心で…人形同士の顔を合わせ、キスの真似事なんてさせたことまで思い出してしまったからだ。
その二つの人形達は、とりあえず窓辺に置いておいた。
見ていると恥ずかしくて堪らない自分がいるからだ。
…でも、しっかりと隣同士で座らせている辺り、まだ自分は全然懲りていないんだろう。
そう自嘲しながら、想いを振り払うように掃除に没頭するのだった…
「お〜い、アーリスぅー!」
アリスの家の前で、魔理沙はアリスを呼んだ。
しかし、いつもなら「はい、はーい!」とおざなりに返ってくる返事が、今は返ってこない。
「………へんじがない、ただのしかばねのようだ」
等と意味も無くつぶやいてみるものの、突っ込む相手はいなかった。
…ふと、魔理沙はがたごとと家の中が騒がしいことに気づいた。
「…ん?なんだ、友達でも来てるのか?…って、あいつに友達なんて、私くらいしかいないか」
くすくすと意地悪く笑いながら魔法を繰って箒を動かし、二階の部屋の窓から部屋の中を覗いてみる。
「なんだ、掃除してるのか。…そういえばここ最近、アリスの姿を見なかったな…実験でもしてたのか?」
それならば、結果を聞いてみるのも良いかも知れない。
あわよくばその技術を盗んでみようか、等と考えつつ。
掃除?
そんなアリスの個人的事情などかまわない。
魔理沙はいつも勝手にアリスの家に来て、勝手にお茶を飲み、勝手に本を読み、挙句の果てには勝手に薬の原料を持っていくのだ。
最初はアリスも魔理沙の身勝手な振る舞いに一々怒っていたものの、いつだって魔理沙はそんな調子の為、諦めざるを得なかった模様だ。
しかも頻繁に来る。
勝手に来る。
用事があって出かけていても、どうやってか勝手に鍵を開け、帰ってきたら居間で「よぅ!」と返事をされたこともある。
…もうこれは、諦める以外、方法がないと云うものだろう。
そして魔理沙自身も、アリスがその様に適宜に放置し、適宜に相手してくれるのを当然の如く受け取っていた。
………とんだ居候猫である。
「…お、別の部屋に行ったな」
見ていると、魔理沙に気づかないままアリスは出て行ってしまった。
掃除器具も一緒に持っていった為、多分今度は別の部屋をまたガタゴトと騒がしく掃除し始めるのだろう。
…案の定、椅子を引きずったような音が隣の部屋から聞こえてきた。
「なにもそこまでしっかりとせんでも…」
苦笑しながらつぶやき、窓の桟に足を掛けた。
特に深い意味は無いが、その窓から部屋に入ろうとした為だ。
「よっ、と…」
窓を下から上に引き上げ、部屋に入ろうとする。
ぼとぼとっ。
「あん?」
何かが落ちた。
「………なんだこりゃ?」
窓の光があたらない場所から、落ちたもの二つをつまみ、無造作に持ち上げてみた。
二つの物体が窓からの光に当たると、くっきりとその正体を現した。
「……アリス…の人形、と…これは私か…?」
じっと見てみる。
…良く出来ている。
別に、本物そっくり、リアルに作ってある、と云うわけではないが…本物と同じデザインの服、同じ色合いの布地で作られた髪、糸で縫われた目…だがしかし鼻と口はない。
適宜に本人に似ていて、しかしカントリーな雰囲気の漂う、可愛らしい人形たちだった。
「………」
ぺらり、とめくってみた。…アリスの方を。
………ここで何を、と聞くのは無粋である。
「はいてるのか…」
小さいながらもきちんと可愛らしいレェスのついた、白いドロワ。
ちっと舌打ちしてみて、ふとそんな自分に苦笑を浮かべる。
…見たいのか、私は。
ついでに自分の人形の方もめくってみた。
「うん。はいてるな」
………。
「…私のなんて捲っても面白くない。ここはやっぱり、アリスの…いや、どうせなら本物のほうを捲るべきだな!」
想像してみた。
…捲れたスカートの奥にある、レェスたっぷりのぱんつ。
…「よっしゃ、今日は白だな!」と叫んでみる私。
…とりあえず、アリスは怒るだろう。
…そして顔を紅くして私を睨み、「馬鹿っ!」と言うに決まってる。
………。
………。
………。
萌えた。
異常に萌えた。
しばし一人で二体の人形を持ったまま、無言で悶えた。
※人形でドロワを履いているのだから、きっと本物もパンツの上にドロワをしっかり履いてるに違いないのは決定的だが、そこは魔理沙の妄想力のなせる業である。
「…いやしかし…こんだけ細かく作られてるんだから、もしかしたらドロワも…」
魔理沙はあんまし懲りていなかった。
早速アリス人形のスカートを再度捲り上げ、白くてちまいドロワの端を摘み、ひっぱってみる…
「………アッー!」
簡単にズレた。
それにしても素晴らしい出来だ。
一体どんだけ器用なのか、ドロワに小さな小さなゴムまでついてる模様だ。
ひっぱってみると、びよんと伸びる。
とりあえずきょろきょろと辺りを見回し、実はアリスが見ていたーだなんてベタなオチが無いことを確認してみる。
「…よしっ!ならば後は私の家でじっくりと…☆」
脱がしかけていたドロワをしっかりと履かせてから、アリス人形をこそこそと懐に仕舞い、魔理沙人形の方は元の場所に放置し、そしてこれまたこそこそと窓から出て行く魔理沙であった。
…後日。
「あら、こんな所に魔理沙の人形が…」
あの掃除が終わった後、どうやらすっかりとこの人形の存在を忘れていた様だ。
アリスの家は、一人暮らしであると云うのに、存外広い。
その為、他の部屋の掃除にかまけて人形のことなど忘れてしまったのだろう。
「………?」
アリス人形がない。
「掃除してる最中に、どっかへやってしまったのかしら…」
窓の桟に、ひとりぽつんと取り残されている魔理沙人形。
「…そんなに寂しそうな顔、しないで。ここに私がいるんだから」
………。
嗚呼、我ながらに良く出来た作りだわ。
…現実逃避のように、そう考えた。
独り言とはいえ、臭い台詞を口走ってしまった自分が実は恥ずかしかったのである。
「臭くても、恥ずかしくても…本人の目の前で言えたなら、きっと百点満点だわ…」
そんなこと、言えっこない。
それを承知の上でつぶやいたアリスは、手に取った魔理沙人形をじっと見つめた。
「こんなことも、本人に出来たのなら…」
目をつぶって、魔理沙人形の顔に唇を当てる。
「そりゃもう、百点満点どころじゃないわよね」
ふぅ、と苦笑し、また人形を元通り窓の桟に飾っておいた。
*…………………POSTSCRIPT…………………*
魔理沙へんたい!!
いぇい!マリアリです…!(きらり)
このサイトでは初書きマリアリですね!
うふふふ♡
でも私的には、魔理沙よりもアリスの妄想力のほうが激しい方希望w
だがしかし、魔理沙はきっと、平然と、そして堂々と妄想を言ってのけるタイプだと思!
アリスみたいに、こそこそアリスと魔理沙人形を作ってキスさてたりとかせずに、フッツーに当人にしに行くと思!!
魔理沙「アリスー!ちょっと良いかー?」
アリス「あら、魔理沙?何しに来たの?」
魔理沙「キスしに来た。」
アリス「そう、キスしに。………ってぶッ!!(吹き出し)」
ってな感じに、超唐突に言い出したりとかしそうだ。
…このネタは、某オフ会の最中、そこらじゅうの乙女達にセクハラしまくってたことから来ております(微笑)
女の子って…良いよね…!!
特に胸とか胸とか胸とか胸t(ry
しっかし…おかしいな、ここまで魔理沙を変態にするつもりはなかったんですが…いつの間にか(笑)
…ていうか、「後は私の家でじっくりと」何をするつもりなんですか、魔理沙サン。
良かったら詳しく教えてください。
2007.9.24 真白茶飴
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