拒食症

いつごろからか、食事を見ても、あまり食べたいという気が湧かなくなってきていた。
僕は、あまり普段から食事する風景を人に見せなかった。
部屋に持ち帰って、か、グレミオに部屋に持って来てもらって食べていた。
他に、外に持って行って一人で食べる…なんてことも、わりとザラであった。
食堂で食べる事は、たまにしかなかった。
まだ平和だった、解放軍に入る前のあの頃は、まだ普通に食べている方だった。
それでも食は細かったが。

グレミオの作る料理は好き。
あつあつでコクのあるシチューは、普段グレミオが僕に向けているあの視線の意味を、少しだけ解かしてくれる気がした。
でも、それさえも、見てもあまり食べる気にはならなくなっていた。


くぁっ くぁっ くぁっ

「さぁ、たくさんお食べ」

海鳥がその腹へ食べ物を下していく。
目を細めてそれらを眺める。

くぁっ くぁっ くぁっ

美味しそうに咽に通って行く食物。
見ているだけで、こちらも満腹になってくる。

「…ありがとう。また、食べてくれるかな」

くぁっ くぁっ くぁっ

頭を撫でると無表情なその黒い瞳が嬉しそうに輝いた気がした。

—これからは毎日、ここで食べると良いかも。


海鳥がすべて、食べてくれるから


海鳥の飛んで行く空を見上げてひとりごちる。
「吐き気がする…」
少しだけなら食べられる。
でも、ふと気がつくと、もう食べる気は一気に失せてしまう。
お腹が空いたような気がする時もある。
だが、食事を前にすると、その食感

匂い。

舌が、それらを拒否するのだ。

体力を保つため、無理矢理にでも口に入れたことはある。
だが途中から、「これ以上は吐いてしまう」と身体が訴えるのだ。

幾日も食べないでいても、平気だった。
栄養失調のような症状が出て来た事もあるが、別段、物を食べようとは思わなかった。
そのうち身体に倦怠感がつきまとう様になったり、立ちくらみや目眩が頻繁に起こったり。
それでも、食べようという気にはならなかった。


ある時仲間に食事に誘われて、一緒に食べたことがあった。
…誰かと一緒に食べたならあるいは、とも思ったから。

「っ!?」 突如襲う嘔吐感
お手洗いに行ってくる、等と嘘をついて、外へ行って吐いた。

途中までは良かった。
いつもより、食べられていると思った…
軽い冗談
楽しい出来事
飛び交う笑い声
元から口数の少ないルティルはあまり話したりしなかったが、そこにいるだけで雰囲気が明るくて、常に鬱々とした気分が少し晴れたと思った。
しかしふと食事に目を落とすと、そこで急激に思い出す
その食感

匂い。

『食べたくない』

思考が、それ一色に染め上げられていった。



睡眠不足、それに加えて拒食症。
いかに自虐的なルティルでも、多少なりとも体調を直そうとは努力した。
軍主を勤められなくなってしまったら元も子もないから。
『皆の為にも』
食べようとした。
寝ようと努力してはみたのだ。


極力誤魔化そうとしたが、それでも埋めようの無い不健康な生活の為幾度も倒れたし、リュウカンには何度渋い顔をされたか。
それでもばれないよう、ばれないよう、気を遣って…


隠して、隠して、隠していく日々だけが、続いた。


*…………………POSTSCRIPT…………………*

クゥの方も読めばお分かりになると思いますが…「過食症」の対となる話です。
………本当はー…どっちも、裏行きにしようかとも考えました。
題が題だし、内容が重過ぎる。
それにこれから食事でーっす☆ってな方には…大変ごめんなさいなお話でしたり…どっちもね(^^;)

「過食症」の後書きでも色々と解説しましたが…でもこんなんなんです、二人とも。
こんな子達が大好きです。真白。
可愛いキャラ程虐めたくなってきますvv
とある作家さんかどなたかが言ってたけど…
「キャラは虐めてナンボだよ!」…だそうです。
名言だね。

ルティルに関しては…まだまだ書きたい事があります。
気が向いたものから、書いていこうと思います。
まぁ…気まぐれ真白のことだから、次にルティルの話が出来上がるのは…明日かそれとも一年後か、全くをもってわかったもんじゃ御座居ませぬがww(マテw)

 2007.04.02 真白茶飴

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