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「ルーックー!!」
ふと出掛けた草原の彼方、愛しい人の姿を見た気がして。
駆け寄って、抱きつく。
「ねぇルック、ルック?僕今ね、仕事抜け出してきたんだ。ちょっとマッシュが五月蝿くてさー、息抜きに☆」
「……………」
ふと、抱きつく相手の気配に何処か違和感を感じて。
見上げてみると、いつものルックとは違う服。
いつもの若草のような緑の法衣じゃなくて、鮮やかな空色が基調の少し異国風の小洒落た着衣。
髪型もどこかいつもと違うし、抱きついた時香ったフレグランスなんて優雅なものも、常のルックなら着けないもの。
クゥは常々、ルックは風の匂いがすると思っていた。
風に匂いなどないはずなのだが、何故かクゥはいつもそう思った。
あのルックの冬の月のような冷たい顔からは想像できない優しくて、何処か温かなその匂いがクゥは気に入っていて、ルックに抱きつくのがクゥのお気に入りだったのだが……………今日のルックは、何処か違う。
それになによりもその表情。
凍てつくような冷酷なルックの顔。
それが今は柔和で優しそうな表情で、少し困ったようにクゥを見つめていた。
「……………あ、れ?」
顔は確かにルックなのに、どうしても違い過ぎるその雰囲気にクゥは自分が人違いをしたことに気づいた。
「あはは…ごめんね、ボクは君のお探しの人ではないようだ」
ふんわりと穏やかに掛けられた、ルックと全く同じで、全然正反対なその声にものすごく違和感を感じながらも顔を紅くしてバッと離れた。
「ごっ……ごめんなさい!あ…その、人違いだって、気づかなくて…………」
同じなのに、全然違う。
奇妙な既視感に絡め捕られる。
この妙な感覚がなんだか嫌で、すぐにクゥは去ろうとした。
「待って!」
「!」
彼と離れて違和感から解放されようと思ったのに、引き止められて背を向けたまま顔も向けずに返事をする。
「……………何か?」
できればもうこの場から離れたい。
クゥの愛しい人は、別の場所にいる。
「あ……………その…、ボクに、似た人がいたのかな?」
呼び止めたものの、かける声に困ったのか青年が戸惑ったように言ってくる。
基本、誰にでも優しいクゥは、その場から逃げ出すことが叶わず、付き纏う既視感に捕らわれながらもその顔を青年に向けた。
青年は、思わず息を呑んだ。
その顔が、その人があまりにも美しかったから。
違和感に居心地の悪さを感じて僅かに眉を顰めたその姿は、まるで今だかつて見たことの無いような綺麗な 少 女 で。
全身から覇気の感じられる利発そうな少女。
武芸を嗜むのだろうか、着ている真っ赤な道着が彼女を更に引き立てている。
緑の草原に、バンダナの長い裾をたなびかせて。
「うん…とっても、似てる…僕が困ってしまうほど」
ササライは、すまなさそうに顔を背ける目の前の少女に、今までに無い奥底からの躍動感を感じた。
顔を背けたことによって見えた首の細さに、思わず傍によって抱きしめてしまった。
「!!」
「その人は、貴方の大事な人なのですか?」
クゥは抱き締められたことによって更に強まった既視感に、どうしようもなくこの場から逃げ出したくなる。
「あ…の、離して、もらえないですか…?」
ルックのようで、ルックでない青年…
そのササライを、どうしてもクゥは力一杯拒絶することができなかった。
「ボクの問いに、答えてくれたら…考えてあげましょう」
「でしたら僕だって、離してくれたら答えますよ」
「それは……………できません」
「いえあの、困るんですけど」
「こちらだって、困っていますよ?」
「……………と、とりあえず、何でも良いから離して下さい」
「だったら………力いっぱい抵抗してみせれば良いじゃないですか」
「だ、だって……………」
クゥは困りはてた。
ルックに良く似た人。
でもルックじゃない人…
どうしても、抵抗するには憚られて。
「………………ていうか」
「はい?」
「僕、なんですけど。」

一瞬の、間。

「…ああ、少年だったのですか。………それが、何か?」
動じていないようににっこりと笑うササライ。
クゥは、そのことに少し身を引く。
いやそんなこと言ったらルックを好きな自分はどうなるんだと思いながらも、思いがけず出会ってしまった真性の属性の人に、既視感も何もかも吹っ飛んで本気で逃げ出したくなる。
「あ………の」
「ええ、なんでしょう?」
「さっき言ってた、『困っている』というのは………」
「勿論、貴方がとても素敵だったからですよ」
「いえあの、その、どうしてそんな近づくんですか?」
「愚問ですね………美しい人を見て、接吻くちづけずにいられるほど、ボクは聖人君主じゃありませんからね」
と言って逃げられないよう片手で腰を抑え、片手で顎を固定してサッと見事なほど鮮やかな手つきでクゥの唇を奪う。
逃げようとして逃げられなかったクゥはその素早い手腕に唖然としてしまった。
だがはっとしてすぐに逃げ出そうとしたクゥを、ササライは別段かまわず、すぐにクゥをその腕から逃してくれた。
安全な距離をとり、真っ赤な顔して警戒するクゥに、にっこりと笑みを残して
「ボクの名前はササライ……またいつか、貴方に逢いに行きますね」
何かの呪文で風の中に掻き消えた。
退き際までルックそっくりなササライ、クゥは無性にルックが恋しくなって、逃げるようにその場から去っていった…


*…………………POSTSCRIPT…………………*

結構前に、mixiの坊受けコミュにも載せたミニ小説。
でも…実は書いたの、大分昔だったりします(笑)
気に入ってるんですよねー、これ。
まず…「人違い」ネタはオイシイ!!
次に…「性別勘違い」ネタはオイシイ!!!
…ていうかそれに全然動じてないササライ様が大好きです♡

実は真白、旧サイトを開く以前から…ルク坊ファンでありました。
元々、一番最初にハマったのがルク坊だったのですよね。
でも次第に主坊にもハマり初めて…それで、今現在主坊メインのこの世界童歌があるわけですが。
まぁ、そんな経緯があるものだから、昔書いた小説には…わりとルク坊も多かったりするんです。
クゥのメインの話は、主坊ってことにしてしまいましたが…旧サイトの時点では、どっちも同じ位好きだった様な気がします。
だからこうして…探してみると、今でもルク坊主体の話が掘り出されたりするんですよね。
そんなわけで、この話のクゥは、ルックが大好きであったりするのです。

 2007.04.02 真白茶飴

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