この世に正しいことなど何も無い……………
正誤
「ねぇルック……………
僕はこの世には正しいことも、間違っていることも無い……………そう考えているんだ」
湖のほとり、僕は急にそんなことを話し出す。
なんとなくここに来たくなって、来てみるとそこにはすでに先客がいて。
まったりとした雰囲気の中、まったりと話をしていたんだけど………
「……………ふ〜ん…」
僕の言葉に、まったりと返す先客ルック。
今までがまったりだったからそう答えたんだろうけど。
「そしてそこにあるのは人の考えだけであると」
「……………?」
ルックが眉をひそめる。
「僕ってさ、将軍の息子だったわけじゃない?
だから余計にそうなんだと思うけど、皇帝バルバロッサは僕の中で至上の存在だったわけ。
そしてそれが、僕の中での一番の『正』だった」
話し始めたら止まらなかった。
僕はルック相手にどんどん話した。
「でも、実際国は腐敗してきていた。
高官が平気な顔で不正をしている事、それを見てみぬふりの帝国軍人。
そしてなにより至上であったはずの皇帝バルバロッサ自身が、すでにこの国を崩していた元凶だった」
「……………」
「僕は真逆さまの人生を歩むこととなった…
だって。
今まで至上と考えてきたものが一気に変わり、僕は絶望を見てしまったわけだから」
「……………!」
「まだ、軍主になって最初の頃は良かった。
テッドが死んで、父様を殺して………そしてグレミオまで…。
そうなってから僕はやっと気づいたんだ」
僕は一息ついてから一気に言う。
「本当にこの世にあるものって、ただの事実しかないんだよ。
そうある必然性があったから、そうなった。
それの集大成。
……………だからそれが『正』であるとか『誤』であるとか、そんなのって…無意味じゃない?」
「……………そうだけど」
「例えば人を殺すのは間違っているとか、人に優しくするのは正しいとか……………
はっきり言って、そんなの『正』でも『誤』でも無い。
僕の経験してきたことは、そんなのを『正』とも『誤』とも言わない」
「……………」
「そこにあるのは、その人がただ『こいつを殺したい』、『この人に親切をしたい』とか思ったからの結果。
だからそれを『正』とも『誤』とも言わない。
そういうのはそれを見た第三者からの感想にすぎないから」
「……………」
「人っていうのは、なんにでも理由をつけたがるよね。
必ず『正』か『誤』かって言いたがるんだ。
……………それが大きくなってしまった時が一番恐ろしいのに」
「……………」
「『全体の考え』って、だから嫌いなんだ。
………軍主やってる僕の台詞じゃないんだけどさ、僕は集団とかってはっきり言って嫌い。
そこを支配するのは、『全体の考え』だから。
こんなこと言ってる僕こそがその『全体の考え』の中心人物だなんて。
笑っちゃうよね」
「……………」
「ただの事実でしかないことに、意味なんて無いよ。
だから僕はこの世には何も無いと思ってるんだ。
そうある必然性があったから、そうなった。
それにわざわざ『正』『誤』をつけるのはそれこそ間違っている。
この世には何の意味も無い」
「………結局、人っていうのは何も無いって考えるのが実は恐いんじゃないかな。
だから、何かを『正しい』と考えたり、『間違っている』と決め付けたりするんじゃないの?
……………つくづく、人間って馬鹿なんだろうなぁって思うよ」
「『正』が無いのなら、見つけるしかないじゃないか」
「……………え?」
「この世には何も無い。
何も無いからこそ、人とは全体の考えに惑わされやすい。
……………本当の『正』なんて、どこにもない」
「……………」
「………だからこそ、答えは自分で見つけるんだ。
自分だけの『正』を求めるんだ。
『正』も『誤』も無いのなら……………自分で決める他ないだろ?」
僕はあっけにとられてポカンとする。
……………………この彼がこう言うとは。
「…………………………どういう風の吹き回し?
ルックがそんなこと言うなんて」
僕がそう問うと、ルックが遠く湖に目を遣る。
「わからないさ…本当の事実も、本当の答えも。
それはやっぱり『正』って概念が、
だったら…勝手に決め付けてもそれはそれで『正しい』のではないのかな」
僕は目を見開いてルックの湖を眺める横顔を見つめる。
その姿はどこか、ここじゃない遠くを見つめているようで。
「足掻いて足掻いて見つけた結果…それがどうなるかは誰にもわからないんだよ………」
今の僕には知る由も無かったけど。
*…………………POSTSCRIPT…………………*
お互いの暗い部分を話し合うお二人でした。
………主に坊ちゃんだけど。
さり気に3的な観点がありますよね。
これは1の話なんですけど。
でも管理人はまだ3プレイ中なのです。
まぁだからこそ、かな。
色気は無いけど、ちょい伏線みたいなもの有。
だからルク→坊としておきます。
2004.9.20 真白茶飴
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