『…またこんなに部屋をちらかして…どうして坊ちゃんは片付けということができないのですか』
呆れ顔であいつは言うんだ。
『グレミオ………………………………………どうすれば片付くの?』
するとあいつはため息をついて、
『仕方ないですねぇ、次こそはちゃんとお片づけするのですよ』
エプロンして掃除し始めるんだ。
僕はそんなグレミオの姿が大好きだったんだ。
片付けられない症候群
「たはっ」
ため息をつく。
……だって。
「……………一体コレをどうしろと?」
ぐちゃ〜〜〜〜〜っと擬音がつきそうなほど、大量の物にあふれる僕の部屋。
解放軍の湖上の城の別塔の先端で、僕は途方に暮れる。
「はへっ」
何度ため息をついても変わらない目の前の現状に。とりあえず何かしてみようかと考える。
「まず捨てられるものとか…………………………探してみよう」
10分後
「……………やってらんない」
早くも僕は根を上げていた。
…だってどれも捨てらんないんだもん。
こーゆーのグレミオにやらせると上手いんだよなぁー。
使うもの使わないもの、パッパと整理していってしまう。
「…………………」
グレミオのことを思い出し、僕は少し気落ちする。
「…ハッ」
馬鹿にしたように息を吐き、
「誰かやってくんないかな」
ついに言い出す。
「…ま、そんなこと言ってても仕方が無いのだけれど。あーあ、面倒臭」
そこで感じる空気の違和感。
これはもしかしてっ♪
扉の近くに空気が集まっていく。
目にまで見える風。
そしてその場に風が凝縮すると
「ク……………わっ!」
「ルック〜♪」
そこに現れた人物・ルックに抱きつく。
そして甘える。
そう、甘える。
ひたすら甘えるのだっ!
これぞ秘訣っ♪
「ねぇねぇルックぅ〜?」
べったりとくっつき、甘えた声で話しかける僕に驚いたのだろう、ルックが少々眉を寄せる。
「な、何なんだよ…人が来るなりいきなり……………」
いつもは絶対こんなことしないくせにとその目が言っている。
まぁ元から僕はそんなベタベタするタイプじゃないんだけど。
でも、今はやるしかないんだっ!
えへへーと笑って言う。
「あのね、実はね ………」
僕はそこで後ろを振り向く。
ルックも僕の目線の先を追って目を動かす。
そこには…………………
「………………………………………………クゥ」
ルックは片手で目頭を押さえる。
「ん?」
そこで僕は精一杯愛想の良い顔でルックに向かって小首をかしげる。
「……………うっ」
よし!決まったっ!!
僕は内心ガッツポーズを決める。
ふふふ、この僕の必殺☆ぶりっこで誤魔化せっ!攻撃にはどんなしかめつらいヒトだってイチコロさー♪
そしてこれはあまり人に知られていない事だけど、今僕が抱きついているこの彼ルックは、実はかなりの世話人なのだ。
何故かというと、彼はここに来る前星見の塔でレックナート様の弟子をしていた。
ウワサによると、レックナート様とは人使いが荒い人なのだそうだ。
その彼女の弟子のルックは、すべての家事を一手にやっていたらしい。
………そんな彼にこの部屋の整理を”お願い”すれば嗚呼なんて楽なんだ♥
「……………何、それで僕は掃除でもすれば良いの?」
観念したようにルックが言う。
そこですかさず、
「うん、”お願い”♥」
胸の前で両手を合わせて懇願する。
「………………………………………」
ルックが片手で顔を覆って後ろを向いた。
…………………ノックアウト?
僕はルックが後ろを向いてるのをいいことにニヤリと笑う。
ふふふ、この僕の”お願い”には誰にも勝てない…………何故なら散々グレミオとかクレオとか、パーンやテッド、果てには父様にまで試しに試した技であるからだっ!
最強〜最高〜無敵に素敵〜♪
ってΣはっ
そんな歌(”輝かしき僕の人生”作詞作曲クゥ・マクドール)歌ってる(脳内で)場合じゃなかったっ!
さっさと片付けルックにしてもらわないとっ………!
え?
何故「さっさ」となのかって?
それは早く落ち着いて広々とした場所でゆったり優雅に読書したいからさっ☆
さぁ、キリキリ働いてもらうよルック♪
「ねぇ、どうしたの?ルック」
僕は声に心配そうな響きをもたせて言う。
「う…いや、その……何でもないんだ。わかったよ、やるよ。やればいいんでしょ」
そう言って颯爽と僕の部屋の片付けにとりかかる。
ふふふ、これでやっと楽ができるっ♪
僕はそばにあった椅子を引き寄せ、あふれる大量の物と格闘するルックを横目にゆうゆうと本を読み始めた。
4時間後
「っはぁっ……………や、やっと終わった…………」
ルックの疲れたような声が聞こえた。
僕はそろそろ終わりに近づいていた本から顔を上げ、部屋を見っ………………
「…ッ何これっ……………!?」
ぴかぴかぴかと擬音がつきそうな程僕の部屋は。
「っ超ォ綺麗じゃんっ!!!」
僕はつい顔を作るのも忘れて、始めて見るような気持ちでゆっくり自分の部屋を見渡す。
「うっわぁ……………」
もぉなんというかすでに感動の域。
あの汚い部屋が。
うわ、何か棚まで作られてキレイに整頓されてるし。
ええ!?何コレ!?
どっから掘り出してきたんだか、真ん中には優雅に紅茶でも飲めそうなティーテーブル。
窓際には涼しげなカーテンに植物まで置いてある。
うわ、気が利いてる(笑)
「…………これ、本当にルックが……………?」
信じられない気持ち聞く。
「そうだよ。君はずっと本を読んでいたから見て無かったかもしんないけど。大っ変だったよ?一体どうやったらここまで汚くできるものなのか、一度その生活ぶりをお目にかかりたいね」
いつの間にしていたのかエプロンと三角巾を外しながら言うルックの悪態をすべて聞き流し、僕はただただ感心する。
「ほえすごいねぇ、ルック。ねぇねぇこのテーブルクロスなんてどこから持ってきたの?何気にあのベッドカバーもおそろいだし」
好奇心に目を輝かせてルックに問う。
あのルックが一体どっからこんなもの持ってきたってのさ?
「…………………………………僕が作ったんだよ」
へぇー、そーなのか、ルックが作っ……………
「ぷ」
つい、笑いが出てしまった。
だってあのルックがだよ!?
あのいつも石版の前でぶっきらっぽうに立ってて、いかにも「何もしません」ってカオしてたあのルックが!!
「……………何が言いたい?」
「っ……………イヤ、以外にマメだナァ、と…………」
笑われたことに腹が立ったのか、額にちょっぴり青筋なぞたてながら怒りを抑えた声で言うルック。
僕はそんなルックを見てさらに出てくる笑いを必死に堪えながらそう言ったのだった。
「………………………切り裂いていい?」
「イヤ待ってだめだめっ!感謝してるって、ホント!!」
ルックの手を握り、上目遣いに「ね?」と言う。
「うっ………………まぁ、感謝してるなら……………」
途端に態度を変えるルック。
「じゃぁキレイになったところで、紅茶でも飲もうか♪」
そう言ってお湯を沸かし始める僕。
ルックはやれやれと席に着き、
「全く……………君のせいで何のためにここに来たのか忘れてしまったじゃないか」
「まぁまぁ☆」
僕は上機嫌でお茶の準備をする。
僕は片付け下手でも紅茶だけは得意だからねっ♪
……………あれ?
ふと感じた既視感に首をかしげる僕。
訝しげに思ったのか、ルックが声をかけてくる。
「どうしたんだい?クゥ」
どうしたんですか、坊ちゃん
その声が、あいつと重なった気がして。
「ううん、何でもない」
どこか懐かしい、幸せな気分に僕は浸るのだった
〜ルック談〜
「クゥって……………恐い………
だってあの顔って…わかってやってるものなんだろうけど逆らえない。
僕はそれがわかってるだけまだいい………問題なのは」
知らずにひっかかる奴。
「さすが天魁星というかなんというか……………」
でも。
「そんな所で無駄に「天魁星」の役割を費やしているような……………」
星見の魔術師の弟子・ルックの苦悩は続く**********
それにしても。
「これでしばらくはもつな♪」
「え?」
振り返ったフリックに笑顔で答える。
「何でもないよ」
*…………………POSTSCRIPT…………………*
か…書いた……………!!
ついにやったぞ、強気坊ちゃん!!(暗流の後書きの予告ヨリ。)
………強気?
果たしてコレは強気と言うのか……………?
むしろ小悪魔だろ………………………………………
ま、まぁ余裕のあるという点では強気、ということでっ!
でもそんな坊ちゃんも好きだ……………♥
2004.9.18 真白茶飴
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