ちょっと大人の色気がただようその人は、2日に1回はバーに足を運ぶという。 ちょっと背伸びしたい年頃のオレは、ねだって連れて行ってもらうことになった。 雪国 「おや、今日は可愛い恋人をお連れですね」 「まぁ、たまには社会勉強って事でな。 あと数年で成人だし、もう立派に大人に混じって渡り合ってるし…大した奴でさ」 「それはそれは」 バーテンダーと二言三言交わし、カウンターに。 いかにも馴れたその様子が、あぁ、やっぱりこの人は大人だもんな、と思わせる。 ほんの10才しか違わないのに、10才も違うんだ。 「オレは…雪国。エドには…ベリーニを」 「はい」 「…聞き慣れない世界」 「だろーなぁ。あ、大将に頼んだのはアルコール度数低いから心配すんな」 使ってる酒もスパークリング・ワインだから、初めてでも飲み心地はそう悪くないぞ。 笑ってオレの頭を撫でる少尉に、なんだか悔しくなる。 そりゃ、ジンとかはさすがに無理だろうけどさ…子供子供言われてるみたいで。 「どうぞ」 出された液体は、オレンジ色をしていた。 微かにただよう桃の香り。 一口。 「…甘いな」 「糖分多いしなー」 聞けば、レモンジュースに砂糖、シロップまで入ってるとか。 どーりで。
「少尉のは?…"雪国"って言ったっけ」 「キュラソーと甘いライムジュース使ってるが… ベースがウオッカだからなぁ。大将が飲めるようなもんじゃないだろ」 「ふーん」 きらきら、グラスの縁に付いた砂糖。 ゆらゆら、グラスの中のグリーン・チェリー。 ライムのせいかな、微かな緑に輝く液体。 …あぁ、似てる… 見入って、しまった。 魅入られた、のかもしれない。 |