平行




殺したり、殺されたり。
あぁ、人間ってのは面白いくらい愚かだね。
次から次に生まれてくるとは言え、数に限りがある同胞なのに
どうしてあんなに同じ種族同士で殺し合うのか。
全くもって理解しがたいよ。


「だからといってあんたらが人間を殺して良い理由にはならないだろ」


そう?
まぁそうだね。
そうかも知れない。
でも、やっぱり自然による淘汰ではないだろう?


「それはそうだけど。
 でも、守るべきものがそれぞれにあって、その旗印を掲げて戦ってるんだ。
 殺し合うことが目的で戦ってるんじゃないんだから、
 そこに『殺すことが目的』のあんた達の介入は好ましくない」


あはは、なかなか言ってくれるね、鋼のおチビさん。
確かに、そんな解釈も成立するだろうね。
でも、こんな解釈はどう?

人は自分の掲げた正義のために戦ってる。
でもそれは、正義のために戦いがあるんじゃなくて、戦いのために正義があるんだよ。
大義名分、って言うのかな。
戦いたいから戦う、とか、悪のために戦う、とか。
そんなことを言えるほど人間は強くないから、正義の名を借りる。

そう言う、悪知恵だけは回るけど本当の賢さに行き着かない愚かさが、
人間って生き物の終着点なんだとしたら、これ以上存在する価値はないだろ?
だから、オレ達は人間を犠牲にすることに何の抵抗もない。


「それは…守りたいものが無い奴の論理だ」


ふぅん?
じゃ、おチビさんにはあるの?


「あぁ。…オレの愛する人達と、オレを愛してくれる人達だ」


ありきたりだね。
つまらない回答。


「その中にあんたも入ってるんだから、そう捨てたもんじゃないと思うけど?」


へ〜え。
いつの間にそんな口説き文句言えるようになったのさ?
こないだまでガキだガキだと思ってたんだけどね〜。


「成長のないあんたには分からないさ。
 身体が育つことも、心が育つことも…愛情が育つことも、な」


ははっ。
分からなくて結構。
成長ってのは変化と同義だろ?
変わっていく愛なんてほしくもない。


「…平行線、だな」


だろうね。
変わることを知らないオレと、
変わらないことを知らないおチビさんとじゃねぇ。



――そこにあるのは、2本の平行な線。
  くっつくことはおろか近づくこともないけれど、
  ずっと側にある、ただ1つの存在――





妹との賭けに負けて書くことになった作品。 サイト掲載許可が出たので載せました。 04.6.7  一宮由香 拝 戻る