01 髪を梳く


さらら、さらら。
白い手袋に包まれた指が、肩に掛かる金の糸を掬う。
取っては逃げるその糸は、しかし彼の微笑みを誘う。

「まるで君だ」
心地良さそうに目を閉じて、さらら、さらら。

「何故」

髪の持ち主――リザ・ホークアイが問う。
動きを止めぬまま、手の持ち主――ロイ・マスタングが意外そうに彼女の顔を見やる。

「何故って。
 私をかわすけど決して拒否しない所なんて君そのものだよ。
 だから、ほら、髪の一房さえこんなにも愛しい」

言って優しく唇を落とす。

さらら、さらら。
短いが艶のある髪は、再びロイの手から零れ落ちる。

その途中。
ぴた、髪の流れが止まる。

見るとリザがロイの肩に体を寄せている。
ロイの手に残った金の糸が、淡く光る。

「逃げないのは、…髪を梳かれるのが、結構好きだからですよ…貴方限定ですけど」
「…それは、『髪を梳かれるのが』だけかい?」
「解釈はお好きなように」





言えない、本心なんて。
その解釈が嬉しかった、だなんて。
決して言えない。
出来れば次は、手袋越しでない、貴方の指で梳いてほしいのだけれど、なんて。









乙女チック中尉。
多分、ここは大佐の家です。
でなきゃ中尉の家。
うちの中尉はそれ以外の場所でこんな大胆なことしないでしょうから…。

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