執務室の机の上に、マスタングがいつも着けている手袋が置いてあった。


03 指を絡ませる



「これ…大佐のよね」

確か今、マスタングは市街見回りに行っているはずで、
(やたらと嬉しそうに出て行ったのは、
 一時的にでも書類の山から解放されたためだろう。)
傷の男の件も片付いていない時期なのに、
この発火布の手袋を忘れて行ったとは何とも危険だ。

「届けに行ったほうが良いかしら…」

考えて、ふと、今どこにいるのか分からなければ意味が無い事に気付く。

「…まぁ、ハボック少尉も一緒だし、心配無いわね」


とりあえず思考を完結させる。
終わった分の書類のチェックをしなければ、と思い立つ。

しかし。


「・・・・・・・・・・5分だけ、休憩」

机の上にある手袋に、何故かとても後ろ髪を引かれた気がして。
ホークアイにしては珍しいことに、勤務時間中の無断休憩。



そっと、手袋に手を伸ばす。
触れた生地は意外に柔らかくて。
思わず。

「・・・・・・・」

指と指の間に手袋の指先部分を挟み込み、軽く力を込める。
まるで、指を絡めるように。


「いつか、こんなことが出来たら・・・・・・・・・大佐・・・」

今はまだ、言えない想いだ。
その時期ではないから。



でも、いつか。
その手袋の持ち主と、直に指を絡めることが出来たなら・・・








窓からの光を受けて、祈るように佇んでいるホークアイの姿を
見回りから戻ってきたマスタングが扉の隙間から見つめていたことは、
しばらくマスタング一人の胸の中に仕舞っておかれた。

彼もまた、今はその時期ではないと知っていたから・・・











穏やかな話を目指してみました。
実は、本編に書くの躊躇った結末があります。
読みたい方は→その後


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