07 頬に触れる
すっ、と、飾り気の無い頬を撫でる。
軍人としての意識なのか、それとも単に化粧に興味が無いのか。
それとも、彼女のことだから、
皮膚を通して体内に浸透する化学成分が、やがて体に蓄積し、
悪い影響を与えるということを気にしているのかもしれない。
体を壊せば、戦うこともままならなくなる。
それでは彼女が、私の傍にいる資格が無いと見なされてしまうだろう。
それは、私にとっても非常に困る。
有能だから、というのも勿論あるが、何よりただ、傍にいてほしいのだ。
些細なことではあるかもしれないが、確実に健康を損ねるものならば。
私から彼女を引き離す要因となりうるのなら…
「ホークアイ中尉、今月の25日は空いているかね?」
「プライベートでは、その予定ですが。
一応その日までが年内の出勤ですから、
大佐が定時までに仕事を終わらせて下されば、午後7時以降は空きです」
手帳を見ることも無く予定をすらすらと言う中尉に、感心する。
やはり才媛だ。
「それはよかった。ではその後、食事でもどうだね?
通りで先日から工事をしていたレストランが、20日から再開だそうだよ」
「噂は聞いています。しかし、もう予約が一杯なのでは?」
「ふ、私を甘く見るのではないよ。既に個室を押さえてある」
「…職権乱用など、していらっしゃいませんよね?」
ついでに、いくら使ったのか気になる所ではありますが。
ぽそりと付け加えて、答える様子が無い私にため息をつく。
それを横目で見ながら、頭の端で考えた。
さて、今年最後の25日まであと1週間。
化粧をしない彼女には、この冬限定のルージュの新色を贈っても仕方ない。
慎重に決めなくてはね…
その時。
何を贈れば彼女を喜ばせられるのか、悩む私の耳に、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「ハボック少尉であります。大佐は、御在室でいらっしゃいますか?」
居るとは限らない私に会いに来る時、ハボックは大抵こう聞いてからノブに手を掛ける。
それまで、中尉を抱きしめ頬に触れていた私は慌てて机に戻り、
中尉はほんのり紅くなった顔を見られないよう、壁に向けた台で書類を数えだした。
後日、25日のディナーで、
「あの時ばかりは、大佐の逃亡癖がありがたかったです」という、
何とも微妙な感謝の言葉をもらった。
何だろう、これ。
あんまりお題に合ってないような気が。
最初は「どういう状況で頬に触れてるのか」の描写を入れなかったんで、
危うくR指定になるところでした☆
(いや、「☆」じゃねぇから。)
化粧品が体に悪いって話は、薬剤師さんから聞きました。
何でも、肝臓と腎臓に悪いんだそうです。
結局は異物ですからねぇ。
(昔の、鉛を使ってた化粧品ほどじゃないですけど)
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