19 抱き合う



くらり、と。
世界が歪んだと感じた瞬間の、不思議な感覚。


何が起こったのか、分からないはずなのに何故か頭は冴えていて。
あぁ、私はめまいを起こしていて、ここままだと床に倒れ込むわね、
と思ったとき、心地よい浮遊感が身を包んだ。




「大丈夫かね?中尉」
「大佐…」



その正体は、この人のたくましい腕。
私の様子が変わったのを感じ取り、抱き止めてくれた、らしい。



「ありがとうございます。
 最近ちょっと寝不足だったものですから…でも多分、もう平気です」


そう言って離れようとする私を、強い力が押し戻す。


「もう少し」
「…分かりました」




まぁ、今回は助けて貰ったおかげで痛い思いしなくて済みましたし。
ちょっとだけ、そう、誰かの足音が近づいてくるまで、
こうして抱き合ってていましょうか。




私だって、できることならずっと貴方の近くにいたいですから。



寝不足の原因は大佐の仕事なんですけどねー。 30題に戻る