22 ラインを辿る



大佐の部屋に書類の山を置きに行った(相変わらず大佐はいなかったけど)帰り、
ふと、知っている香りがして。

ちょうど仕事が一段落付いたところだし、どうせ大佐を捜さなくてはいけないから。
…と、自分に言い訳をして。



どうにも気になって仕方がないその香りの発生源を突き止めてみようと歩き出した。






廊下を真っ直ぐ歩いてみて。

(違うわね…こっちじゃない。香りが薄れたわ)


今来た方に踵を返し、元いた場所を通過して、突き当たりの角を曲がり、階段を下りて。

(…昇った方が正解だったわね)


1階まで着いたところで香りは完全に消えていた。
仕方なく今降りてきたばかりの階段を最上階まで昇ってみると、
途端に香りが強くなって。

――目の前には、屋上へ続く扉。

(…しまった。)




誘われたのだということに今ようやく気が付いた。
行方をくらましたのも、私好みの香りを廊下に振りまいていたのも、全て。



「こんなところにいたんですか、大佐」


この人の、仕業。






「やぁ中尉、遅かったね。もっと早く見つけてくれるかと思ったんだが」
「ご冗談を。あんな分かりにくい手掛かりしかないのに、どうやって探せと」
「だが、楽しかっただろう?香りの痕跡を辿ってみるというのは」


正体はこれだよ、と。
ポケットからだして示された小瓶は、私が以前に贈った香水。


(どうりで覚えがあるわけね…)





子供らしい恋人の、無邪気な悪戯にひとつため息をついて。
勤務時間中のかくれんぼはここに幕を閉じた。




探してほしいから居なくなる、の気持ち。 お子様ロイ。 可愛いんじゃないかな、と。 30題に戻る