2 いってきます
今日は、思ったより早く起きた。
起きたと言うよりむしろ、起こされた、に近い。
ジュ、とか、カチャカチャ、とか。
そういう生活音は、意外に聞こえてくるものなのだ。
「おはよ、大佐」
「おや、鋼の。もう起きたのかい?おはよう」
「なんとなく、さ」
目が覚めたって言うか〜。
呟き、顔を洗いに行くオレに、声が降ってくる。
(降ってくる、という言い方は非常に不本意だが、声は本当に頭の上から降ってきた)
「今日の朝食はパンにハムエッグ、それに牛乳だからね」
…嫌がらせですか、大佐。
口を突いて出そうになる言葉を飲み込み、「…ぉぅ。」と小さく返事をした。
「じゃあ、今日は遅くなると思うから。
…多分、ホークアイ中尉が居るから、仕事終わるまで帰してくれなさそうだし…
先に寝てなさい」
「え、起きてるよ。
帰ってきた時に『お帰り』って声が掛かるのが嬉しいって言ってただろ?」
オレもなんとなくそれは分かるしさー。
言うと、頭を撫でられ。
「あぁ、確かにね。しかし、あまり寝ない子は背が伸びないと聞くが?」
したたかにオレの弱点を突いてきやがる。
それ言われると、寝とくしかないじゃんか。
ずるいぜ、大佐。
「いってらっしゃい、って言ったのに、お帰りって言わせないつもりかよ」
「そうだな…明日の朝、おはよう、という前に言ってくれればいいさ。
じゃあ、いってきます」
ぽんぽん、と頭を撫でていく。
…それ、止めてくれないかなー。
悔しがりながら、それでも言うことは忘れず。
「いってらっしゃい、仕事サボるなよ」
だんだん小さくなっていく背中を見送り、一人ごちた。
「ま、さっさと背伸ばすために、早寝早起きってことで。」
いつか、撫でられないくらいデカくなってやる、と。
密かに誓って。
お題は、含めて書いてるけど、ぜんぜん主題になってないような。
贔屓目に見ても、この話の主題は「身長」っぽい。
反省。猛省。
サルに負けない。
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