7 国家錬金術師


この世の理はすべて、等価交換で表せる。
義務あっての権利だし、努力あっての才能。
じゃあ、そうすると…


「国家錬金術師になったときの対価って、何だろ?」
「…何だ、突然」

ベッドでごろごろしていたオレの、唐突過ぎる言葉。
同じく横で転がっていたロイは、それでも何とか返事をしてくれる。
こういう所が良いんだよね。

「いやさ、オレが国家錬金術師になった時の対価って、何だったのかなーって思ってさ」
「法外な研究費用と特別な環境、少佐相当の地位に特権がプラス。
 …軍の狗だと罵られる事がマイナス。これで差し引きゼロだろう?」

指を4つ折り好環境を数え、一気にそれは元に戻された。
確かにそれくらいのものはあるよな、一般人の視線。

「それは一般論だけだろ。オレはそれに加えて、ロイと出逢えたこともあるんだからさ」
「?出会いなら、君が国家資格を取る前の話だろう?」
「違う違う。確かに『出会い』は資格を取る前だけどさ、
 『出逢い』はその後、ロイがオレを見初めてからだろ?」
「あぁ…」

ふわり、笑みが舞う。
穏やかなロイの笑顔は、ここだけ見れば軍人にはまったく見えない。
もちろん、鬼才天才でならす国家錬金術師にも。


「それだと、等価交換にならないな。プラスのほうがずいぶん大きい」
「自分で言うかな、そんな事」
「事実だろう?」

自信たっぷりに、挑戦的な笑顔を向けるロイ。
否定なんてする理由もなく。


オレはまた、黙ってベッドの中でごろごろし始めた。



完璧デキてます、この二人。
いつの間にそんなことになったのやら。
いかにも翌朝。
自信家なロイさんがツボなんです。


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