「おや、いらっしゃいませ。今日はどんなのになさいます?」 「そうだな…」 13 花 店の前に並べられた、色どりどりの花。 みな、自分が生まれてきた理由を誇るように、堂々と咲いている。 そんな姿に、ふと彼を思い起こして。 デートの予定は後から取り付ければいいか、と思い、立ち寄った花屋。 「今日もデートで?」 女性に花を贈るとき、いつも頼む花屋の主人が笑いながら聞いてくる。 私は、ここではすっかり上客になっているらしかった。 「あぁ、今日の子はちょっと若くてね。年の頃は15,6。 半端ないはねっかえりだが、そこが面白くて最近夢中なんだ」 「それはそれは。…では、こんなもので如何でしょうか?」 出された花束に頷き、代金を払って店を出る。 軽く辺りを見回して公衆電話を見つけると、 今彼がいるはずの司令部に掛けた。 「ロイ・マスタング大佐から、と言って資料室にいるエドワード・エルリックに繋いでくれ」 会いたい、一言だけ言って最後に場所のみを早口で伝え、素早く受話器を置く。 彼がその場所に来てくれる確信を胸に、電話から離れる。 呟いた建物は、恋人が多く訪れるレストラン。 着くなり待ちきれずに、二階の席から大通りを走る赤いロングコートを探し始めた。 彼は、この花束を受け取ったとき、どんな顔をするだろう? その顔が、早く見たくてたまらない。
そりゃ、どんな花束作ったかによりますけど。 あの話しぶりからして、プロポーズに使うようなものでないことだけは確かでしょう。 私は花言葉に詳しくはないので、見た目だけで決めたんですが。 同じ位、エドワードも花言葉なんて知らなさそう。 …見た目で決めた、というのは。 とりあえず、堂々として綺麗な、カサブランカあたりで。 45題に戻る