もう、子供じゃないんだから。
淋しい、なんて言えるわけない。


20 残業


『悪いな、鋼の。どうも仕事が終わりそうになくて…』
「いつもサボってるからだろ。こっちはそんなの予想範囲内だよ」
『…大した言われようだが、反論の余地がないな。
 まぁそういうことで、もう少し待っていてくれたまえ』
「了解、無能な大佐」


これ以上何か言われる前に受話器を置く。
おそらくは回線の向こうで憮然としているに違いない14才年上の恋人の姿を思い浮かべ、
壁に拳を叩き付ける。

――イライラしてる。

原因が分からないわけじゃない。
イヤ、さっきの電話が原因だって事はよく分かってるんだ。




今夜、定時で仕事上がった後一緒に食事しようって持ちかけてきたのは大佐の方だったのに。






…まぁ、大佐が無能で、サボり魔で、いつも残業くらってることも知ってるけどっ。
だから別に、そんなに期待してたわけじゃないんだけどさっ。


…もう子供じゃないんだから、淋しいなんて言わないし、言えるわけないしな。


















ただちょっとだけ、本来より長く大佐と居られる人達が羨ましいだけで、
それ以外に何とも…間違っても淋しいなんて…思ってないんだから。





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