44 雲 ふわり、と。 あてどもなく飛んでゆく雲を見て、いいな、と思った。 人間は、重力に縛られて、ここにいる。 ここでしか、生きれない。 でも。 雲のように、何のしがらみも無く生きていけるのも、それはそれで味気ないとも思った。 そこには、愛する人のそばを離れられないという、 甘いしがらみさえ無いのだから。 「…ロイ」 「どうした?エドワード」 「何でもない」 「そうか、それは良かった」 心配をして、心配されて、という甘美な重力に、今日もオレ達は縛られている。 雲のような人生なら、これは味わえない。
「自由」と背中合わせになっているものは「孤独」かも知れない、とか。 45題に戻る