ランサーズヘヴン 3.5




「…………………………」
「…………………………」
 今日も冬木港は色々な意味で賑わっている。


 投影で作り上げた釣竿を意気揚々と操る褐色の肌の男。
 金にあかせたキンキラキンの釣竿を子供らに持たせて、その情景を楽しむ金髪の男。
 ……そして、そんな姦しい男どもの喧騒から身を避けるかのように、一人糸を垂れる痩身の男。
 相変わらず、冬木の善良な市民の皆さんが立ち入れない場所だなー、と苦笑しつつ士郎はそれでも一番とっつき易いだろう男の側へと近寄っていった。


「………どう………?」
「………釣れると思うか………?」
 愚問だ、と思いながら聞いてしまった士郎に、表情の読めない顔をしてランサーは答える。
「………悪かった」
「………あー、いや、別に坊主のせいじゃねーし………」
 と、諸悪の根源たる二人の弓兵にちらりと視線をやる槍兵。
 けれど、元はと言えば自分の放言が原因となっているというコトを自覚しているのか、次第に「ああ、オレの幸運ランクって結局はE以下なんだよなー」なんて顔に変わっている。思わず、肩に手をやって慰めたくなるような、そんな表情だ。


「………………?」


 そんなランサーの背に士郎がふと目をやると、何やら白い紙がぴらぴらと舞っている。何かと思ってランサーの背後に回ろうとすると、
「おい、後ろに立つなよ」
「え、ああ、ごめん……」
 流石に歴戦の戦士は背後にすぐ反応してしまうのだろう。そんなランサーに思わず苦笑する。
「……それじゃ、ランサーは肩揉んでもらおうと思っても難しいかもな」
「まーな。けど、オレは別に肩が凝るようなこたあしてねーし……むしろ厄介なのはアイツだろ」
 ぴくりとも揺れない糸、そして竿。
 けれど口から出てくるのは軽快な言葉だ。
「アイツ……?」
「そう。背後に立たれると条件反射で右ストレートを繰り出す上、乳がデカいから肩こりが酷えアイツだよ」
「ああ………」

 頭の中で彼女の姿を思い浮かべる士郎。
 いつもははにかんだ笑みの絵が浮かんでくるところだが、今回に限っては薄笑いを浮かべて手袋を嵌める絵が出てきた。

「えっと……」
「この場だけの話というコトにしといてくれ。オレも、もちっとくらい永らえたいわ」
 了解、と言うと士郎は待ち人来たらずの太公望に背を向ける。
 と、その瞬間に先ほど気になった紙をしっかりと盗み見ることも忘れない。


 むしろ、あの紅い髪の女を呼んできたほうがいいような気もしてきた。
 なにしろ、その紙には達筆な行書で、


「賞品」


 と書かれていたのだ。
 内容も問題だが、この男の背中にこんな紙を貼り付けられるような技術というか技量を持つ者は少ない。そして、自分の背中に何かくっついているということを長時間悟れない槍兵でもない。
 というコトは。

 ・・・・・・・・・

 数時間後の惨状を思わず想像してしまう士郎。
 一体、この槍兵は金と赤のどちらの弓兵にお持ち帰りされるのか……?


 まさにそれこそ「神のみぞ知る」と言ったところだろうか。



・END・



 こうなったらヘヴンじゃなくてヘル。むしろバゼット嬢に助けてもらえ槍(笑)。





>拍手おまけ部屋に戻る

>Fate小説部屋に戻る