ライジング・サン




「………へえ、いい動きしてやがんな」
「………君の『いい動き』とは、彼女か? それとも彼女の身体の一部分か?」


 ごほん、とけん制するような咳払いも付け加えると、その筋骨隆々とした腕を露出した男は、
傍らのアロハシャツの男に尋問に近い問いを向ける。
「ん? ……ああ。別にどっちでもねーな」
「ほう? 先日セイバーにいらん事を言って、半殺しにされた君のことだ。また視線はその部分に向かっていったと思っていたよ」
 あまりにもあからさまな皮肉に、今度はアロハの男が軽い咳払いをする。
「……むしろあの中に混ざりたいというか……闘争心を煽られる動きだと思っただけだ」
「……そうか、それはいらぬ詮索をした。侘びの一つでも入れておこう」


 …………。


「………今、何って言ったよオマエ」
 全てこの世は斜め向き。
 ひねた角度からしか物をみようとしない、男の口から漏れた言葉に思わず聞き返すアロハの男、もといランサー。
「だから、侘びの一つでも入れる、と言ったのだ」
 と、その逞しい二の腕でしっかりとランサーを捕らえたもう一人の男、
アーチャーはそのままずるずると人口のビーチサイドへと向かって行く。
そこには、


 ビーチバレーに興ずる、赤茶の髪の少年と長い黒髪の少女がいた。



「……これのどこが詫びだ?」
 コイントスでサービスを引き当てたアーチャーに耳打ちするランサー。すると、
「混ざりたいと言っていただろう。生憎とビーチバレーはペアで行う競技だ」
 その大きな手を使い、人差し指の先でくるくると器用にバレーボールを回すアーチャー。
それだけを言うと、最初のサーブは自分がするのだろう、ネット前にランサーを残すとエンドライン後方へと下がった。
「……いや、混ざりたいとは言ったけどな」
 こういうスポーツは戦闘と同じ、つまりはパートナーとの呼吸が全てを決める。
 そう。いくら強者同士がペアを組もうと、相性の問題は大きな壁となるのだ。
 ぶっちゃけて言うなら、青の槍兵と赤の弓兵(今は赤くないけど)の相性は、誰もが認めるほど、最悪なもの……








 でもなかった。








 何しろ互いに刃を合わせたことのある身である。互いの長所短所が分かっていれば、パートナーはそれをフォローすべく動くだけ。そして、自分の利点を生かすだけ―――そもそも生粋の戦士である2人にとって、共闘のポイントなど分かりきっている。
 だから、

「コーナー!!」
「おうっっ!!」

 鷹の目を駆使するアーチャーと、最速のランサー。
 狭いコートの中を縦横無尽に駆け巡る白い身体と、的確な指示を忘れない褐色の身体。


 それに負けじと、

「ちょっと、衛宮くんどきなさい!!」
「ま、待て待て遠坂! その姿で突進してくるな…っっ!!」

 と……一日限定の主従もまた真っ向勝負でサーヴァント2人に立ち向かっていた。

「ふむ……流石にリン程度ではランサーに動揺は与えられないようですね。せいぜいアーチャーを赤面させるのが関の山ですか」
「ちょっと!! 聞こえてるわよライダー!!!」
「異議あり!! 私をそこの節操なしと同レベルに扱うなライダー!!!」
 レシーブしながらも、その地獄耳で反応する赤いあくま。
 そして、返ってきたボールをレシーブする体勢に入っている白い髪の弓兵もまた同じタイミングで反論した。



 そんなこんなで第三セット。
 折りしも、双方がマッチポイントのタイブレイク。
 渾身の凛のサーブをレシーブするランサー。
 そして、彼の長身はそのままふわりと宙を舞った。そう、自らのレシーブをそのままスパイクしようとしたのだ。
 だが―――


「な、何をしている、たわけ!!」
「は!? 何でオマエが……!!」


 綺麗な放物線を描いたランサーのレシーブをスパイクしようとしたアーチャーもまた、その身体をソラへと浮かせていた。



 当然―――




 二人の身体は中空で激しくぶつかり合って、
 絡まりあって、
 ―――ようやく落下した。
 まるで、彼ら自身が不幸の星であるかのように。
 ……まあアレだ。幸運ランクEの相乗効果であるのだから、仕方がない。



「このヤロウ! オレの超絶技巧のアタックを邪魔しやがって!」
「君はコンビネーションというものを何だと思っているのだ!」



 この場において不幸であるのは、槍と弓のサーヴァントのみにあらず。
 公衆の面前でムキムキマッチョの男同士が絡まり合う図に、
 自らの将来をちょっと悲観してしまった少年もまた、不幸の連環を構成する一部分かもしれない。



・END・



 そして、2人は「わくわくざぶーん」の伝説となった。
 ・・・合掌。




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