ヒメゴト 


 ちゅく、と音をたててランサーの指への口唇愛撫を続けるギルガメッシュ。燻るような快感がランサーを襲う。
「やめ…ろっ……!」
 ギルガメッシュを振りほどこうとしたランサーだったが、いつの間にか彼の周囲には銀色の光が纏わりついていた。
 言わずと知れた『天の鎖』。ランサー最大の天敵と言っても過言ではない。
「往生際が悪いな、狗。ああ、そういえばそれが取り得だったか」
 鎖で身動きが取れなくなっているランサーをいいことに、ギルガメッシュは右手から口を離すと、シャツの裾をたくし上げるようにしてランサーの膚に手を滑らせていく。
「………っ!」
 冷たい指が膚に触れたこともそうだが、ちろちろと置き火のような快感が残っている身体にいきなり触れられれば、ぞくりと大きな波がランサーの身体の中に立ち上る。
「別に…する必要はないだろ……。魔力は足りて、んだ……」
 半ば押し倒される形になりながらも、ランサーは必死に抗う。そんなランサーを見て笑みの形を浮かべながら、それでも鎖を決して緩めることなくギルガメッシュはランサーの膚に触れるのをを止めない。
「オイ、いい加減に……」
「王の退屈を紛らわすくらいの芸は持たぬか、狗」
 ランサーの腋から腰のラインを一撫ですると、ギルガメッシュの手はピアスへ、そして耳を軽く摘み上げるようにして顔のラインを辿る。
「退屈、なら……セイバーにでも、手出ししに、行けよ……っ……!」
「フ……退屈を紛らわすような瑣末な器ではないのだ、騎士王は」
 刺々しいギルガメッシュの言い種にも、反論するどころのランサーではない。何しろシャツは胸のところまで肌蹴られ、背中に回された手がゆっくりとではあったが這うように動いている。その上顔のラインに手を添えられたまま、自らの唇に落とされてくるギルガメッシュの唇を受け入れる羽目に陥っていたのだから。
「んっ……ん………」
 ムリヤリこじ開けられた歯列の奥、自らの舌もまたあばき立てられて抵抗できない状況に追い込まれる。ちゅく、という音が口の中いっぱいに広がると、耐え切れなくなったかのように唾液が零れ落ちていく。
「んんっ……っ………ん………」
 息を継ぐのが精一杯のランサーは何も考えられなくなって、この態勢から逃れたいというよりただ縋り付く場所が欲しくて腕を動かす。すると、まるでそれを見透かしているかのように、ギルガメッシュはランサーの右腕に掛けていた鎖を僅かに緩め、唇を離す。
「あ…ふっ………」
 それを逃さぬとばかりにランサーが息を吸い込むタイミングを捕らえると、ギルガメッシュは再びランサーの口腔を犯しにかかった。口の中を嬲られ、思わずランサーはギルガメッシュの左腕に縋り付く。それがいけなかった。

「うわ……!」
「んっ!」
 びり。

 ただでさえ不安定なソファーの上での戯れだというのに、身体の片方に重心を傾けてしまっては転がり落ちるのは道理というものであった。ギルガメッシュの下敷きになるようにして倒れこんだランサーが身体を起こそうとすると、右手が何かを掴んでいる。何かと思って目を凝らしてみれば、ギルガメッシュの上着の袖だった。どうも転がり落ちる瞬間に力を入れすぎて千切り取ってしまったらしい。これは不可抗力というものだろう。けれど、
「……狗、王の服を破くような粗相をするとは………」
 ギルガメッシュにそんな言い訳が通用するはずもない。何しろ一番のお気に入りの服を破かれたのだから。
「そうか、そんなに乱暴にされたいか」
「そんなワケあるかっ! 元はと言えばテメェが……」
「ええい! 問答無用!」
 ギルガメッシュは『天の鎖』を発動させるとランサーを後ろ手に縛り上げ、床の上に押し付けるようにしてうつ伏せに押し倒す。
「んあ……っ……!」
 背中から圧し掛かられるような態勢になってしまったランサーは、何とか逃れようと身を捩る。けれど、手加減なしに縛り上げてくる鎖はビクともしない。わかってはいるが、それでもと身体を動かしていると、その隙間をぬうようにしてギルガメッシュの手が忍び込んでくる。
「それはそれでよいが……過ぎると見苦しいぞ。ああ…もっとも、抵抗された方が獲物を狩る楽しみは大きいがな」
 服の中を弄る手が自分の性感帯を的確に辿るのを感じながら、それでもランサーは身体を震わせつつ抵抗を続ける。けれど、
「ひっ……!」
 下腹部を通り越して身体の中心を直接握られる感触に、震えは止まり硬直してしまう。
「………っ……や、やめ………」
「フッ……我が触れずともしっかりと感じているではないか」
 それはそうだろう。あれだけ前戯が長かったのだ。快感は的確にランサーを捕らえて離すことなどなかった。
「違…っ……んっ……っ!」
 ぐり、と鈴口を親指で圧されるようにして刺激を与えられると、身体が撥ねるほど感じてしまう。そんなランサーの様子を楽しみながら、ギルガメッシュはその手を止めようとはしない。
「さて……次はどうされたい、狗? 王の手で達くのも一興か?」
「冗…談……だれ、が………っ……!」
 わざわざギルガメッシュに視線を合わせるようにして噛み付くランサーだったが、潤み始めた目でそんなことを言っても説得力などまるでない。それどころかそんな蠱惑的な眼差しはギルガメッシュをその気にさせるだけだった。
「ああ、貴様は本当に男を誘うのが上手いな……その目も、この身体も……思う存分哭かせたくなる」
「何が、だ……ん、んんっ……!」
 服の中でそそり立つソレを扱かれ、快感から逃れようと瞼を落として耐えるランサー。けれどそれは裏目に出てしまった。身体の中心を支配するギルガメッシュの冷たい手の感触がやけにリアルに感じられるのだ。
「そら、我の手の中で果てるがいい」
「い、嫌だ……っ……あ…ん………っ……!」
 もう絶頂間近のランサーが意識を飛ばしてしまう、そんな寸前に、

 ばたん。
 そんな音が居間に響き渡った。

「『妙なる調べ 部屋より響く』か……」
 賛美歌の一節を皮肉気にもじると、扉を開いた張本人である言峰神父は部屋の中を眺め渡す。
「綺礼、我の愉しみを妨げるとは何事か?」
 ランサーの身体に手を掛けたまま、視線だけは無礼な闖入者へと向けるギルガメッシュ。英雄王のそんな視線を軽く流すと、言峰はただ冷淡に「来客があるので部屋を空けろ」とだけ言うとその場を去った。
「チッ……」
 軽く舌打ちをすると、ギルガメッシュはランサーの身体から手を離して『天の鎖』を引く。一気に快感の波を取り上げられたランサーだったが、身体の中に残るそれが重石になって身動きが取れない。

「狗、さっさと立て。別の部屋で続きだ」
「………テメェ、オレの身体の都合は考えなしかよ……」

 横たわったままのランサーに痺れを切らしたのか、ギルガメッシュはまたもや『天の鎖』を発動させると、ランサーの身体を引きずって別の部屋へと移動する。

 その後のランサーの末路は言うまでもない。

・END・

新年早々何書いてるんでしょうね、ワタクシ。しかもまた流してるし! まったくこのチキンっぷりは年が変わっても中々治りませんな……。ちなみに神父の言葉の元ネタは「妙なる調べ 天(あめ)より響く」…有名なクリスマスソング、グローリアからの一節です。本当はクリスマス頃にアップしたかったのですが、こんなに遅くなりました。我ながら今年こそこの遅筆をどうにかしたい……。

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