糧(かて)
そこはインビな空間だった。
隠微であり淫靡。
聖堂という綺羅の下、密やかに、淫らかに繰り返される、闇の宴―――。
「ん…っ………」
うつ伏せにされて下肢を広げられたその身体は、肉の楔で串刺しにされていた。
顎をクイと持ち上げられたその顔(かんばせ)もまた、肉の棒を咥えさせられていた。
「どうした? しっかりと舌を使え……さもなくば、貴様の望むモノは手に入らぬぞ」
枕をクッション代わりにして凭れた男は、自らの足の間に顔を埋める男の髪に絡めた指を軽く引く。そのまま髪を梳くまま耳の後ろまで指を流し、耳の形をなぞるようにして重く垂れ下がるピアスに触れてみた。以前であれば鋭い反応を示したのだが、今となってはその程度の刺激は意味を為さなかった。
「つまらんな……」
ランサーに舌を使わせたまま、ギルガメッシュは飽きたというような独り言を漏らすと、象牙細工のような指に青い髪を絡ませたつつ後頭部を自分の方へと押さえつけた。より深くなる挿入に、喉の奥からくぐもった声を漏らすランサー。抵抗しようにも、後ろ手に縛られていれば何の手出しもできようはずがない。ましてや、その鎖は神性が強ければ強いほど力を増すのだ。
「そろそろ終わりにしようか、狗」
異物を詰め込まれて凝縮する気管。その締め付けに快感を呼び起こされたギルガメッシュは、身体を震わせると上り詰めた証をランサーの奥へと放った。
「………っっ……」
快楽の余韻に身体を委ねながらも、楔を引き抜く。すると、奥に収まりきらなかった白い飛沫は淫らな熱さを持ってランサーの顔を汚した。
「…んっ……!!」
瞬間、ランサーは瞼を固く閉じると、口の中に残されたモノを飲み下した。ランサーの前髪を掴んで顔を上げさせたギルガメッシュは、喉仏が動く様を満足げに眺めると、
「どうだ、狗? 美味であっただろう…我の魔力の味は」
と、そんなランサーの様子を愉しむようにして口を開いた。その声に反応するかのように、ランサーの閉じられた瞼はぴくり、と動くと睫毛を震わせながら薄く開いていく。
「………………」
まるで紗がかかっているような茫洋とした色合いをその炎のような瞳に浮かべながら、それでも声の主を探すかのように少しずつギルガメッシュに焦点をあわせていった。
と、頬骨にかかっていた白濁が滑り落ちるかのように、ランサーの口の端へとたどり着く。反射的にランサーの舌はそれを掬い取って口の中へと流しこんだ。
「そうか、美味いか」
英雄王は眼を細めて頷くと、さらに言葉を続けようとその朱唇を開いた。が、
「…………………」
いつまでたっても玉音は漏れず、それどころか徐々に表情が変わっていく。
怒りや喜びではない。かといって哀れみや楽しさでもない。むしろそれは、奇妙なものを眺めるような、怪訝な表情だった。
「な、な、何を…貴様………」
ギルガメッシュの見たもの。
それは舌を伸ばして、鼻の頭の白濁を舐め採ろうとしているランサーの姿だった―――。
「な、な、何を珍妙な方法で……」
「るせーな。テメエが顔中に撒き散らすからいけねーんだろうが!」
そう言うと、ランサーは果敢に舌を動かして、顔に飛び火した魔力の欠片を集めようと試みる。
「な、何故にそんな風に……」
「仕方ねーだろ! つか、勿体無いだろ!!」
「せめて、指で掬い取って舌をちらつかせながら舐める、とかいう方法はできんのか!?」
「無茶言うな!! 大体、テメエが後ろ手に縛り上げたんだろ! しかも『天の鎖』で!?」
「だからと言って! そんな戯画めいたことをせぬともよかろう! 貴様、情緒とか風情とかいう言葉を知らんのか!!」
「知るかバカ! こんな行為、そもそも悪ふざけにしか見えないだろうが!!」
「貴様…! 王自ら魔力を与えてやっているものを、わ、悪ふざけなどと……!!」
「悪ふざけじゃなかったら、タチの悪い冗談だろ! 人の顔をこんなんで汚しやがって……!」
「こんなん……き、貴様っっ! 王に対する暴言の数々、断じて赦すわけにはいかん! 我の情けで生き長らえている身で……!!」
「テメエのお情けに縋ってるってか!? は、笑わせんな! テメエだっていい目見てんだろ! 男に咥えさせて何が楽しいんだよ、このド変態っっ!!」
「……っ! 王を変態呼ばわりとは、貴様…身の程を知れい!!」
英雄王と光の御子が収拾のつかない言い争いを続けているその間。
「どうしたものか……」
色々な意味で動けなくなった言峰は、半ば呆然とその様を眺めているしかできなかった……。
以前からちょっと書いてみたかったので、最初はweb拍手のお礼SSとしてアップしました(なにせ短いし)。ちょっとばかし公序良俗にひっかかるかな〜(ちょっと!?)というのはあったので、相方の紅さんに相談してみたら「やっぱ、やばいだろ」と「これは地下だね」という助言をいただいたので、急遽こちらにアップなぞしてみました(笑)。
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