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太陽がくれた季節 |
「………あちー…………」 ギラギラと照りつける真夏の太陽。 降り注ぐ日差しは植物を成長させ、生物から容赦なく気力を奪う。 けれど、そんな中にあっても男は内側から発する生命力を削られることはない。むしろその太陽の光輝に身を委ねることは陰鬱な聖堂にいるよりもずっと、彼にとっては心地よいものですらあった。 冬木教会前の整えられた芝生を満足げに見やりながら、額から滴る雫をぐいっと乱暴に手の甲で拭う。 冬の間は枯れ草も目だって斑模様を作る芝生だが、今度は夏になると冬の分を取り返せとばかりにぐいぐい成長する。そればかりか、気候の良さに乗じて雑草までしっかりと根をはる始末。仮の宿とはいえ見苦しい光景は見たくないとばかりに―――半分は命令にしろ―――ランサーはせっせと自分好みの景色を作っていった。 何しろ特技の欄に「魚釣り・素潜り・山登り」と書かれるサバイバル系野生児サーヴァントである。 生まれは一国の王族とはいえ、絢爛豪華な宮殿内より豊かな自然溢れる野外が似合う彼にとって、最も美しい野外の風景といえば、やはり人の手が全く加わっていないようなものだろう。放置されて雑草が生い茂る様も、冬になってそれらが立ち枯れる様も自然の摂理として受け止められる。けれど、中途半端に人の手が入った風景はやはり人の手を入れてやらないとその美観を損なうのだ ………王子様という以前に、英霊が庭仕事という点でどこか間違っている気がしないでもないのだが、そこはまあ、赤いあくまに家庭内雑用一般でこき使われる弓兵もいるというコトでひとつ。 「あちー、あちー、あち〜〜……」 と、ダラダラ流れる汗を面倒くさいのか拭うこともやめて、ランサーは教会の庭の隅っこにちんまりとある水遣り用の水道にたどり着くと、いきなり蛇口を全開にする。1メートル弱のホースが付いている先から水が出てくるまでタイムラグを利用して出口を頭上に翳すと、 「ひゃっ…ほうっ! んー気持ちいい〜〜〜」 と、どこかオヤジくさい科白を吐きながら水の冷たさに身を委ねる。本当ならいっそ全裸になって水浴びなぞしたいところだが、そんなことしたら一発でブタ箱だ、と言峰神父から散々脅かされた。意味は分からずとも、不吉な響きのする「ブタ箱」という言葉に近寄りがたいものを感じ取ったランサーは、珍しく神父の助言を聞き入れ、服の上から大量の水を被っていた。 獣の鬣のように逆立つような癖がついた前髪も、鬱陶しいとばかりに髪留めを外して流れるに任せた後れ毛も、水の流れによってピタリとランサーの肌に張り付いている。元々身体の線が素直に出るような夏服もまた、その引き締まった筋肉を強調するかのように…まるでランサーの肌の一部分となったかとような風合いであった。 「…………………」 「……? な、何だよ………」 いつの間にか、そんなランサーの様子をじっと見ていたギルガメッシュ。その何を考えているか判読不可能な視線を受け、ランサーはぞく、と身を震わせる。実際、冷たい水を木陰で浴び続けていたこともあって、ちょっと肌寒くなっていたこともあった。すると、そんなランサーの感覚の変化に呼応するように身体もまた変化を生じる。 元々身体の線が露になりすぎるこの白いシャツだったが、少しでも寒気を感じたことによって胸の突起の形が恐ろしいほど主張するのだ。 「ふむ………狗、貴様も少しは媚態を身に付けたか」 「…………………は!?」 張り付いた衣服から垣間見える身体のライン、濡れた髪、濡れた素肌……そして、快感を表しているかのような尖りきった乳首。 十二分にギルガメッシュの眼鏡に適うものであった。 「ならば乗ってやろう。ありがたく思うがよい、狗」 そんな英雄王の科白とともに飛来した銀の閃光は、容赦なくランサーを虜にする。 「な、な、何でいきなりっっ!! このヤロウ! 離せっっ!!」 などと、いつものごとく口ばっかりは意気軒昂として抵抗するランサーだが、どんなに喚こうと暴れようとこの鎖が緩まることは一度としてありえなかったし、今後ともありえないだろう。 「貴様が望んだことだ。思う存分与えてやる」 とは、英雄王の宣旨。 その後のランサーの行く末は予想通りである。 ・END・ FDの特集記事で、夏服ランサーを見た時点でネタができました(腐)。 |