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闇の饗宴 |
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何か布地を裂くような音の後には、布地を裂くような悲鳴が響いた。 「な、な、な、何すんだ、よっ……!」 「知れたこと。今更だな、ランサー」 戦闘衣の胸元を切り裂かれたランサー、それに対して言峰は黒鍵を片手にしてもう片方の手で逃がさぬとばかりにランサーの手首を掴んでいる。しかし、ランサーの魔力は充分であるのか、はたまた残った魔力を総動員したのか、瞬時にして青い装甲は復元する。 「……魔力は、足りてる。つか、さっさと回路を繋げよ!」 「そのような面白みのない。サーヴァントならマスターの退屈を紛らわせてくれてもよかろう」 「却下! 絶対に却下だっ! 無理強いしたけりゃ令呪を使え!」 既に令呪を2回使用している言峰は、今度の3回目は最後となる。前のマスターであるバゼットから略奪する形で自らのサーヴァントとしたランサーが、令呪の使用による解放の後にはその朱色の槍を言峰に振るうのは明白だった。 「……お前の挑発は見え透いていていささか興が削げる。そうは思わぬか、ギルガメッシュ?」 2人のやりとりを滑稽そうに眺めていたギルガメッシュは、主の言葉にくすり、と笑みを漏らす。 「『天の鎖』はいつでも発動可能だぞ、言峰」 高い神性を持つ者を縛めるギルガメッシュの宝具『天の鎖』。ケルトの光の神の子として生を受けたランサーにとって、ある意味最も恐ろしいのは言うまでもない。 「テメエ……」 槍の穂先をその瞳に宿しながら、ギリ、とギルガメッシュを睨み据えるランサー。そんな死の棘などものともせずに受け流すギルガメッシュ。 「いささか鎖プレイにも飽いた。そうだな、媚薬入り麻婆というのはどうだ?」 ただでさえ恐ろしい言峰謹製麻婆豆腐。それに媚薬が入るとなると……。ランサーだけでなく、ギルガメッシュですら微かではあったが顔色を変えた。 「けっ、生憎だったな。オレは薬とかの類は一切効かないんだよ」 「そうだろうな。だが、それに『この世全ての悪』の因子を混ぜたらどうなると思う……?」 さすがにランサーも二の句が告げようがない。そんなランサーを眺めながら哄笑を響かせるギルガメッシュ。 「それはいい! この傲岸不遜な男が腰を振って欲する痴態を見せるというなら、なかなかに面白い趣向ではないか! それならば我も協力は惜しまぬぞ」 奥歯を噛み締めてギルガメッシュと言峰を交互に見つめながら、それでもランサーは昂然と顔を上げる。 どこから現れたのか、さっきまで黒鍵を手にしていた言峰の手には山盛りの麻婆豆腐の皿が湯気を上げていた。 「さて、饗宴をはじめるとしようか」 「……っっっ!!!」 教会の裏手。古木の幹に寄りかかって微睡んでいたランサーは、あまりにリアルな夢の内容に目を見開いたまま荒い呼吸を繰り返す。思わず周囲を見回して何もないことを確認すると、深呼吸を1つして逃げるようにその場を立ち去った。 教会の厨からは、あの忌まわしい麻婆豆腐の匂いが周囲を覆い尽くさんばかりに漂っていた。 ・END・ チキンの名を欲しいままにする佐々木には、これ以上書けませんでした(大嘘)。 一応、この後の男祭りもございます。当然のコトながら裏への片道切符。 ちょいとばかし汁気多いので地下部屋に収録してございます。 |