仮面ライダーブレイドIF その3(再掲載
※この作品は、2005年にこのサイトで連載された、選択リレー小説の再掲載です。
現在放映されている「仮面ライダーディケイド」内の「仮面ライダーブレイド」とは設定が異なります。



第31回「先輩の先輩」




路肩にバイクを止め、途方にくれる俺。
「・・・さて、電話も繋がらないわけだが・・・・。」
どうしたもんか。
橘さんに会いたいのに、コレではどうしようもない。
おまけに広瀬さんには一菜がついていて、うかつに女性の名前も出せない状態だ。
いや、やましい事をしてるつもりはないが・・・・。
ああ、でも橘さんに会いたいって言うのは不純なんだろうか・・・・。

その時、オレの目の前を二台のバイクが通り過ぎた。
「・・・・・!」
そのうちの一台は、見間違えるはずもない。橘さんのレッドランバス!
俺は急ぎブルースペイダーにまたがり、二台の後を追った。



バチバチバチィッ!!

「うぎゃああああああああああああああああああ・・・・・・・・・。」
「・・・・!!」
その人物の右手が離れ、悲鳴を上げた男は地面に倒れふす。
「みただろう?さくら。コレが今のわたしの仕事だ。」
「桐生、さん・・・・・。」
さくらは倒れこんだ男の脈を調べる。
「死んでる・・・・・。」
「桐生先輩、こんなの間違ってる!こんな風に人を殺して、いいわけがない!」
「こいつは逃走中の通り魔だ。・・・死んで当然の奴を、このわたしは断罪した。裁判所も手間が省けただろう。」
「そんな・・・。あなたのしてることは・・・!」
「さくら・・・ッ!!」
「!!」
ぐいっと、胸元を掴み上げられる。
・・・女性とは思えないような、右手の力。
「お前に何が分かる!ギャレンの力を捨て、のうのうと生きているお前に!!」
「・・・・・・・。」
「・・・・・みろ。さくら。」
そういって彼女は、右手にはめられた革の手袋をはずしていく。
「・・・!」
思わず目を背けるさくら。
「わたしの腕は・・・。ギャレンのベルトの起動実験の時、失われてしまった。今ではこんな機械の腕が、わたしの腕だ。」
「そしてわたしには、仮面ライダーになりたいという、行き場のない正義だけが残ってしまった!」
「桐生さん・・・・。」
「なのにお前は!」
「桐生さん・・・。あなたは、わたしのせいで、そんなに荒んでしまったんですか・・・。」
「さくら・・・!申し訳ないと思うなら、お前はもう一度戦え!ギャレンとして、戦え!!」
「でも・・・わたしには・・・・・・・。」
「・・・・腑抜けになったお前に、何を言っても無駄なようだな。・・・・・・いいだろう。それならばわたしにも考えがある。」
「桐生さん!!」

ブロロロロロロロ・・・・・。

バイクで走り去る女性。
「桐生さん・・・・・・。」
「橘さん!」
そこへ、俺が出てくる。
「剣崎君・・・。あなた・・・。」
「・・・はい。聞いていました。道で橘さんを見かけて、追いかけてきたら・・・・。」
「・・・・そう。」
「あのひとは・・・?橘さんの先輩の・・・・・・?」
「ええ。桐生さん。私の前の、ギャレンの適合者だった人よ。」
「その先は、聞いていたから、分かるわよね・・・?」
「はい・・・・。でも橘さん。俺もあの人と同じ気持ちです。俺も、橘さんにはもう一度、戦って欲しい。」
「・・・・・ダメなの。無理なの。まだ、わたしには・・・・。」
「橘さん!!」




「・・・・・・再三の説得も、どうやらムダだったようだね。」
「ええ。・・・残念ですが。」
「では、君にこのベルトを与えよう。」
「・・・・・?これは?」
「試作中の人工仮面ライダーシステム・・・・。その先行試作品だよ。」
「これを、わたしに?」
「うむ・・・・。きみには、このベルトのデータ収集をお願いしたい。なに、君はただ、それを使って変身して、戦ってくれればそれでいい。」
「誰と戦うのかは・・・・・君の自由だ。」
「・・・・・・・・・・ありがとうございます。こんな、ライダーの適合者のなりそこないの私に・・・・。」
「気にすることはない。では、行きたまえ。君の望む戦いに・・・・。」

ブロロロロロロロ・・・・・・。

「・・・・・・・。」
携帯電話を手に取る。
「・・・・広瀬君か?」
「・・・・ああそうだ。万が一に備え、『E』の出動準備を頼む。」
「・・・・・・・汚い仕事は、裏の人間の役割だ。では、頼んだよ。」




「私は・・・・・。ついに仮面ライダーになった!」
ベルトを起動し、バックルを展開する。

『OPEN UP』

三つ首の犬の映像を潜り抜け、現れたのは・・・・。
金の装甲を持つ、剣を持ったライダーだった。

「ハハハハハハハ・・・・ハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・!!!!」




明日はどうしよう?

1.まだ何か心配だ。橘さんとすごす。嫌な予感がする・・・・。
2.あえて離れて行動する。始穂さんに会いに行く。
3.あえて後輩に走る。美月ちゃんを愛でに行く(待て




第32回「突然の電話」





「美月ちゃんですか?あの子は地下の訓練場ですよ。」
「そ、そっか。ありがと。一菜。」
俺は急ぎその場を立ち去ろうとする。
一菜に疑念をもたれる前に・・・!!
「待ってください。」

来た・・・・・・・・。

「美月ちゃんに何のようですか?」
「い、いや、ちょっと様子を見に行こうかと・・・。」
「ふむふむ。それは決して、始穂さんへの裏切りではないんですね?」
「そ、そうだよ。」

(・・・間違ったことは言ってない。ウン。)
(大体裏切るも何も、まだ始まったばかりだし・・・・。)

「そうですか。ならば何も言いません。」
「ははー。ありがとうございます〜。」
(俺、なんで女の子ひとりに会うのに、一菜の検査を通らなきゃいけないんだ?)

・・・・まあ、黙ってたら後が怖いし。
そもそもなんで一菜にこんなこと聞かなくちゃいけないかって言うと、広瀬さんが出かけてていないから、だったりするんだよな。
あの人がいないなんて、ホント珍しいよな。
・・・・とにかく地下に行こう。
彼女に会うのは、久しぶりだな。



「ぃぃあああっ!!!えああああああああっ!!!」
地下に設置された仮面ライダー訓練所。
そこでは今、仮想空間によるアンデッドとの戦闘訓練が行われていた。
彼女には黒いバイザーのついたヘルメットがつけられ、実際に仮面ライダーに変身し、アンデッドと戦っているような感覚が襲う。

それをモニター室で見つめる、烏丸主任。
「・・・・やはりまだ、戦闘には向かないか。」
「もう息が乱れています。まだ早すぎたようですね。」
「実際の戦闘がどんなものなのか、肌で感じてもらおうと思ったが・・・。」
「想定されたレンゲルの耐久値、限界です。」
「よし。打ち切りだ。」

ばしゅううううううん・・・・・・・・。

「はぁ、はぁはぁはぁ・・・・・」
『美月君。今日はここまでだ。体力づくり、怠らないようにな。』
「はぁはぁ、はぁ、はい・・・・。はぁ、はぁ・・・・・・。」
しばらくその場から動けない美月。
「よほど疲れているようだな・・・。」


「所長!」
モニター室に顔を出す。
「剣崎。どうした?今日は。」
「はい。美月ちゃんの様子を、ちょっと見に・・・。」
「そうか。お前が来れば、彼女の励みになるだろう。お前を気に入ってるようだからな。」
「は、はあ・・・・。広瀬所長もそんなこと言ってましたよ。」
「誰が見ても分かるさ。朴念仁の私でもな。」
そういって烏丸所長・・・。いや、今は技術主任か。部屋のマイクに手をかける。
『美月君。君の先輩のお目見えだ。』
ピクリとも動かなかった彼女が、がばっと顔を上げる!
「うお!」
びっくりする俺。
「やはりな。・・・フフフ。」
『剣崎さん!?剣崎さん、来てるんですか!?』
訓練施設内の声は、モニター室に自動的に集音されている。
美月ちゃん、顔が真っ赤だ・・・・。
『そうだ。君の頑張ってる様子を見にな。』
『はぅぅぅぅぅ〜・・・・・。』
「ほら、剣崎、声をかけてやれ。」
マイクを渡される。
『あ、あ〜・・・・。美月ちゃん!』
『はいっ!剣崎さん!!』
しゃきーん、と背筋を伸ばす美月ちゃん。
『え、え〜と・・・・。今日の訓練、終わったんだってね。ご苦労様。』
『は、はいぃぃ!!』
ものすごく様子が変だ。
「剣崎、彼女をエスコートしてやれ。疲れているだろう。」
「は、はい!」

俺は訓練所内に降りる。
「け、剣崎さん!!?」
「寮まで送ってくよ。疲れてるだろ?」
「いえっ!そんな!私、全然疲れてなんて!!」
でもその言葉の直後、その足元はふらつき、
「はぅ・・・・。」
倒れそうになる。
「危ないっ!」

どさっ。

「は、はう・・・・・。」
急いで彼女を受け止めた。
「は、はぅぅ?!」
彼女の目の前には、オレの顔。
「ほら。やっぱり疲れてるじゃないか。送ってくよ。美月ちゃん。」
彼女に肩を貸すと、訓練場のエレベーターから、控え室へと上がっていく。

「ふむ・・・・。これからは、剣崎に同席してもらった方が、いいかもしれないな。」
「でも、逆に集中できないかもしれませんよ?」
「ははは!そうかもしれないな。」


女子更衣室に入り、俺は外で待つ。
わずかに水音が聞こえる。
シャワー、浴びてるんだな。

シャワー・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

プルルルルルルッ!!

「どわあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
突然のコール音に、俺は心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。
(けんざきさん?どうしたんですか、何かあったんですか?)
「い、いや、なんでもない!」
動揺する気持ちを抑えつつ、つとめて冷静(?)に返事を返す。
「はい、剣崎です。」
「・・・・・・・・。」
「・・・?」
電話の相手の人物は、何も語らない。
いたずら電話か?
「・・・・ギャレンのベルトをもってこい。」
「!!?」

プツッ!

「切れた・・・・。」
一体、何者だ!?
ただのいたずらとも思えない・・・。
次の瞬間、オレの電話にメールが入る。
添付ファイルを開くと、そこには地図が。
ここに持ってこいってことか・・・・。

「剣崎さん!」
更衣室から出てくる美月ちゃん。
「何か、あったんですか?」
「ああ。ギャレンのベルトを持ってこいって、いきなり・・・・。」
「え!?・・・どういうことなんでしょうか?」
「あの声、聞き覚えがある・・・・・。」

ギャレン・・・・。
ギャレン・・・・・・・。

(戦え!)
(ギャレンとして、戦え!!)

「!!」
そうだ!あの声、昨日の、桐生さん・・・・・。
「桐生さんだ!」
「きりゅう、さん?」
「美月ちゃん、一菜に言って、橘さんの位置を伝えてくれ!」
「剣崎さんは、どうするんですか!?」
「俺は・・・・。ギャレンのベルトを持っていく!」
「剣崎さん!!」

外に飛び出すと、すぐさまブルースペイダーに乗り込み、メールの示す場所へ駆け出した!!




「無様だな。さくら・・・・。」
金の装甲をまとうライダー。
その足元には、さくらが伏していた。
「桐生さん・・・・。その姿は・・・・。」
「お前の後輩は、必ずベルトを持ってくる。お前がここにいると知ればな・・・。」
「桐生・・・先輩・・・。」


『剣崎さん!』
「美月ちゃんか!」
バイクで走るオレの元に、彼女の声が届く。
『剣崎さんの地図の場所と、橘さんの現在地が、一致しました!』
「そうか・・・・!!」
先輩を人質に、ベルトを奪うつもりなのか!



1.美月ちゃんを呼び、二人で向かう。相手は生身の人間だし、あまり意味のない気もするけど。
2.先輩が危ない!時間がもったいない。一人で向かう。ベルトを奪われてたまるか!



第33回「死闘、グレイブ」




「・・・来たか。」
呼び出されたのは、輸送列車の集まる場所。
そこを見下ろす、橋の上だった。
「剣崎君・・・!?」
「桐生さん・・・・。このとおり、ベルトを持ってきました。さあ、橘さんを返してください!!」
「そうだな・・・。では、それをこっちに持って来るんだ。」
「だ、ダメよ!剣崎君!!」
「・・・・・・・・・。」
橘さんの声は、聞かないことにする。
もし俺が彼女の命令に逆らえば、橘さんがどんな目に合わされるか・・・・。
俺は彼女の動きに警戒しつつ、ゆっくりと近寄っていく。
「・・・・・・・。」
そして、彼女にそれを手渡した。
「・・・・よし。」

ガシャッ。

「!?」
桐生さんはそれを手に取ったかと思うと、それを地面に落としてしまった。
「い、一体何を・・・。」
俺はそれを拾おうと、ベルトに手を伸ばす。
「・・・・・・・。」

ブンッ!!

「!!!」

ガツッ!!!

「うわ・・・・・・・・!!?」
俺が屈んだ瞬間、桐生さんは顔面に向かってこぶしを振り上げた!
鼻に命中し、尻餅をつく。
「ギャレンの適合者は、この世にただ一人。それは・・・・。私ではない。」
「な・・・!?」
思いもよらない言葉。
この人は、てっきり橘先輩から、ギャレンのベルトを奪おうとしていると思っていたのに・・・・。
「じゃ、じゃあオレにベルトを持ってこさせたのは・・・・。」
「・・・・・・・私の望むものは、戦いだ!」
「な、何!?」
「・・・・変身。」

『OPEN UP』

「な・・・!?」
桐生さんの腰にあったのは、また見たことのないベルトだった。
いや・・・。美月ちゃんのレンゲルのベルトに良く似ている。
しかし、変身を可能にするカテゴリーAのカードは、全部で四枚。
ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルの四人しか、仮面ライダーはいないはずなのに・・!!



「くくく・・・。さあ見せてくれ。我々の研究の成果を。」
「完成度30%・・・。だが、それがどこまで力を発揮できるのか!」
「フフハハハ・・・ハーハッハッハッハッハッ!!!」



「・・・・・・・・。」
桐生さんは、金の装甲をまとう黒いスーツのライダーへと変身する。
その顔面には、大きく「A」の文字が・・・。
「ハアアアッ!!」

ブンッ!!

「うっ!!?」
腰から剣の形のラウザーを引きぬき、切りかかる!
俺と・・俺とそっくりだ!

『TURN UP』

俺もブレイドへと変身する。

ガキィン!!

すぐさま引き抜いたブレイラウザーに、桐生さんのラウザーが合わせられ、火花を散らす。
「力だけはあるようだが・・・。まだ経験不足か。」
「何っ!?」

ドグっ!

「うっ・・・!!」
腹に膝を入れられ、合わせた剣を離してしまう。
「ふんっ!」

ガキィン!!

そこに剣による突きが炸裂する!、
「ぐぐぐ・・っ!!」
たたらを踏むが、すぐに前を見据える。
「!!?」
いない!
「はああああああっ!!」
「!!」
上か!
だが気がついたときにはもう遅い。
「でぃぃぃやああっ!!」
空中で宙返りし、両脚をオレに落とす!!

ズガアアアアッ!!!

「うわああああああああああああっ!!!!!」
余りの威力に、橋から突き落とされ砂利の上に落ちる。
「ぐ・・・・。」
それに、さっきの技。あれは橘さんのバーニングスマッシュ・・・。
「あの人はギャレンの適合者だったんだ。同じ技も、カードなしで使えるって訳か・・・!」

「感心してる場合か?」
「!!」

『MIGHTY』

桐生さんがカードをラウズした!
聞いた事のないカード名・・・。
あのライダーは、一体なんなんだ!!

ラウザーから飛び出した光はその刃にまとわりつき、青く輝きだす。
「はあああああああああああああ・・・・・。」
「くっ!!」
俺もカードを使う。

『THUNDER』
『SLUSH』

『LIGHTNING SLUSH』

オレの剣もまた、稲妻を帯び青く輝く!!
「はあああああああああああーッ!!!」
橋から飛び降り、オレに向かって真ッ過ぐ斬りつける桐生さん!
俺もその一撃に合わせ、ブレイラウザーを振るった!!!

バキィィィィィィンッ!!!!





「うっ・・・・。」
「うああああああああああああっ!!!!」

バシバシバシバシィッ!!!!

全身から火花が飛び散り、そのダメージは全身を駆け抜ける。
「あ・・・・・・。」
ガクッと膝を突く。
・・・・・敗者は、俺だった。
地面につくその手を見れば、オレの剣は叩き折られていた。
「あ、あああああ・・・・・・・。」


「け、剣崎君・・・・!!!」
その姿を、じっと橋の上から見つめるさくら。

バキィン!!ザギィン!!

武器のなくなったブレイドを、一方的にいたぶる桐生。
「このままじゃ・・・このままじゃ剣崎君が・・・!!」

「・・・・・・・・。」
「・・・?!」

そのとき、さくらには、桐生の声が聞こえた気がした。
桐生が、一瞬こちらを見たからだ。
そういえば、桐生がブレイドをいたぶる姿は、何かを待っているようにも見える。
それは・・・・。
他ならない自分なんだと、さくらは感じ取った。
「桐生さん・・・・。」


(ギャレンは、この世にお前一人だけだ。)
(お前が、大切に思うもののために戦え。)
(もう、二度と後悔しないように・・・・。)

(お前なら、出来る・・・・・・・。)

ぱしっ!

そう感じるが早いが、ベルトを手にさくらは飛び出した!
戦いの嵐の中、何も迷わずに・・・!!!
「変身!!」

『TURN UP』



第34回「さよなら先輩」





飛び降りる自らの軌道に映像が発生、飛び降りつつ変身する!
「た、橘さん・・・!」

ザギィン!!

「ぐわあああっ!!!」
「待っていたぞ・・・・。ギャレン!!」
何度も振り抜かれる桐生の剣、グレイブラウザー。
だがギャレンは、それを首の動きだけでかわしていく!

ズガッ!!

その隙を見逃さず、さくらは正拳をその腹に見舞う。
「ぐっ!?」
そこをすかさずその剣を持つ右腕を掴み、さらに肘を入れ、そのまま裏拳、しゃがみこんで大きく振るう足払いを放った!!
「ぐおおっ!!?」

「すげえ・・・。やっぱり橘さんは・・・・。」

ギャレンラウザーを引き抜く。
「うおおおおおおっ!!」
ラウザーを突き出す桐生。
それを狙い、ギャレンはジャンプ!
着地した先は、突き出されたグレイブラウザーの上!
「な、なに・・・・・・・!?」

とんっ!

その刃を蹴り、宙返りしながら相手の背後に逆さに落ちていく。
「く、うう・・・っ!!」
あわてて振り返る桐生。
だがさくらは、その逆さの状態でギャレンラウザーを構え、幾度も幾度もその弾丸をその黒いライダースーツへと見舞っていく・・・・!!

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュ・・!!!!

「あああああああああ・・・・・・・あ・・・。」
膝を突く桐生。

「・・・・・・・・・・・・桐生先輩!」

『DROP』
『FIRE』
『GEMINI』

『BURNNING DIVIDE』

「はあああああああああああああああっ!!!」
「せぃぃぃやああっ!!!」

ズガアアアアアッ!!!

「・・・・一流だ。」

その二人のギャレンの一撃が、桐生に炸裂する!!
「きゃああああああああああああああああっ!!!」
その威力で、吹き飛ばされてしまう桐生。
列車の車両の反対側・・・。歩いていくには遠回りを要求される所だった。
「き、桐生さん!!」



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・。」

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ・・・・。

「ふ、ふふ・・・・さくら、やれば出来るじゃないか・・・・。」
ダメージの過負荷により、変身は解除される。
「もう・・・。もう私は、あの子には必要ないかな・・・・。」
「はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・。」

ざっ、ざっ、ざっ・・・・・・・・・・。

「これからは・・・。私はあの子達の影となって、このライダーの力で、アンデッドと・・・。」

ざっ、ざっ、ざっ。

『目標、捕捉。』
「!!?」

ドヒュイン!!




「桐生さぁーん!!」
急いで桐生さんのもとへ走る俺と橘さん。

どひゅ・・・。

「!?」
「銃声!?」
俺達は頷きあうと、さらに急ぎで現場へと走る。



「な・・・、なによ、あいつ!!?」
「桐生さん!!」
その場にいたのは、見たことのない銀色の怪人と、それに首を締め上げられる桐生さんだった。
『お前達は、目標ではない。』
「何を・・!!」
「くっ!!」

ドヒュドヒュッ!!

橘さんは、寸分たがわずその締め上げる腕を打ち抜いた!
『む・・・・。』
どさっと、桐生さんは倒れ伏す。
『・・・最大の目標は達した。離脱する。』

ざっざっざっ・・・!!

走り出し、逃げ出そうとするその銀色の怪人。
「待て!!」
折れたラウザーからカードを取り出し、ラウズする。

『KICK』
『THUNDER』
 
『LIGHTNING BLAST』

「ウェェェェェェェェェイッ!!!!」
雷を帯びたキックを繰り出した!!
『!!?』
それに気がつき、こちらを振り向く怪人。
しかし、それが命取りだった。

ガシィィィィッ!!!

そのキックは顔面に命中し、その衝撃は、砂利の下の砂を巻き上げた。
「う・・・っ!」
視界が利かない。何も見えない・・・ッ!!

カシャッ。

何かが足元に落ちた。
見ればそれは、銀色の仮面。
あの怪人のものか・・・?
それを手に取ろうとすると、目の前に銀色の何かが立っていることに気がついた。
「・・・・・・・・・!!」
・・・そう、奴は目の前にいたのだ。
俺は後ろへ飛び、奴を目にする。
だが、その素顔に俺は・・・目を疑った。
「あ・・、まさか、た・・・・・・・・・・・・・・!!!!?」

『離脱する。』
仮面の下にあった、長い髪を振り、そいつは去っていった。



「剣崎君!!?」
ようやく視界が晴れ、橘さんがオレのもとへやってくる。
「た・・・!た、橘さん・・・・。」
「?どうしたのよ。そんな幽霊でも見たような顔して。」
「い、いえ・・・・。それより、桐生さん!!」
「うん。桐生先輩!!」

走りながら変身を解除。俺達は桐生さんの周りにしゃがみこんだ。
「さく・・・・・らか。」
「はい、はい、桐生先輩!」
橘さんは、桐生さんを抱きかかえていた。
「・・・・・・・やっぱりあなたは、やれば出来る子だったな・・・。」
その手が、橘さんの頬に触れる。
「す、すみません・・・。私、また先輩に、迷惑を・・・・。」
「ううん・・・・。私は、分かっていた。ギャレンに相応しいのは、お前だけだって。」
「私は、そんなお前がギャレンを捨てたなんて、認めたくなかっただけだ・・・・。」
「先輩・・・・。」
「・・・・?」
さくらは、途中で気がついた。あのベルトが・・・・なくなっている!
「先輩、あのベルトは、なんだったんですか?あのライダーは・・・・。」
「さ、さくら・・・・・・・。」
いよいよ息が乱れている。
認めたくないが、桐生さんの胸は、既に鮮血に染まっていた。
先ほどの、怪人の仕業だろう・・・。
「気をつけろ・・・・天王、じは、ウッ・・・!!」
「桐生さん!」

「・・・・・・。」
「負けるな。さくら・・・・。」

頬に触れていた手が、静かに落ちた。

「あ・・・・・・・・。」
「う・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「桐生・・・さん・・・・・・・・・・!!」





「・・・良い実験データが取れた。彼女には、感謝しなくてはな。」
「出来損ないの仮面ライダーにも、十分利用価値はあった。フフフ・・・・。」
「しかしコレはまだまだ未完成だな。もっとアンデッドのデータを収集し、より完璧な存在へと仕上げるのだ。」
「すべては、私のために・・・・。ふははははははははははは・・・・・・・・・・!!」





明日は、どうしよう?

1.橘さんがBOARDに帰ってきた。お祝いにまた食事に誘おう!
2.ハカランダに行こう。なんか、彼女の顔が見たくなった。・・・・あの小さな天乃ちゃんじゃないからな。
3.美月ちゃんは照れてかわいかったな・・・。はっ!?いかん。彼女はかわいい後輩で、そういうんじゃ・・・・。
4.一菜といると、なんだか落ち着くんだよな。子供の頃に返ったって言うか、さ。
5.・・・・・・あの銀の怪人が気になる。足取りを追ってみる。



第35回「始穂と少女と人質と」




「こんにちは〜。」
もうすっかり常連となってしまった、ハカランダに顔を出す。
「あら、剣崎君。いらっしゃい。」
ご主人の春花さんにも、もうすっかり顔なじみだ。
「そうだ。ちょうどいいところにきてくれたわ。ちょっときて。」
くいくいと手招きする春花さん。
とりあえず、その導くままついていく。

地下室に下りていく。
・・・・そこは誰かの部屋になっているらしい。
「始穂さん。いい人つれてきたわよ。」
「へ?」

春花さんが戸を開ける。
・・・そこには、私服を着込んだ始穂さんがいた。
活動的な服装で、大きなバッグに荷物を詰め込んでいた。
「・・・・春花さん。・・・・いい人、って・・・・?」
「この、剣崎君よ。今日の助手にちょうどいいでしょ?」
「・・・・・・・・・・。」
「助手うっ!?」
「うん。そうよ。実はね。始穂さんが今カメラマンの助手をしているのは知ってるでしょ?」
「ああ・・・。前にそんなこと言ってたような。」
「で、今日は動物園に動物を撮りに行く予定だったの。入園チケットまで用意してくれてたんだけど・・・。」
「・・・・その先生、急に都合が悪くなったって・・・。でも、私に悪いからって、そのチケット、送ってきてくれた。」
「でもね。先生がいなくても写真を撮りに行くって言うのはいいんだけど、始穂さん女の子でしょ?、重たい荷物が多くて、助手の一人も欲しいところだったの。」
「・・・そこで、オレに白羽の矢が立った、と。」
「ごめんね〜。私はお店があるし、天乃は一緒に行くって聞かなかったけど、荷物の関係であきらめてもらって、もう剣崎くんしかいないのよ。」

「う〜ん・・・。じゃあ、オッケーですよ。助手、俺引き受けます!」
「ほんとう!?ありがとう〜剣崎君!今日は行くのやめようって言ってたくらいなの。始穂さんのためになることだから、今日はどうしても行かせて上げたかった。」
「じゃあ、今日一日、始穂さんお願いね。剣崎君。」
そういって、春花さんは部屋から立ち去った。
・・・・俺と始穂さんだけが残る。
「・・・・・ありがとう。」
「あ、いや・・・・。」
「・・・いきましょう。私に、ついてくればいいから。」
「・・うん。」

・・・・・・・・。
どうも会話が途切れ途切れになるよな・・・・。


やってきた動物園は、近くの、割と大きな動物園だった。
機材を持ち込み、サル山を前に、てきぱきと組みたてていく始穂さん。
俺は荷物持ちしか出来ず、・・・・まあ、カメラについて知識がまるでないので、俺はただぼおっと見ているだけだった。

かしゃかしゃと、シャッターを切る音がする。
俺は夢中でファインダーを覗き込む始穂さんの横顔を、じっと見ていた。
ひたむきで、一所懸命で。その姿は気高く美しく、同時に儚げに見えた。
・・・なぜだろう?どうして彼女を見ていると、そんな圧倒的な孤独感というものが見え隠れするのだろう。
春花さんや天乃ちゃんに囲まれて、あんなに幸せそうなのに・・・・。

「・・・・休憩、取りましょう。」
「あ、うん。」
一区切りついたのか、彼女は休憩を提案する。
俺はずっと休憩みたいなものだったが。

ベンチに隣り合って座り、でも何も話さないまま時間は過ぎる。
傍から見れば、俺達は他人同士にしか見えないだろう。
お互い何も話さず、ただ俯いているだけなのだから。
「・・・・・のど渇かない?俺、なんか買って来るよ。」
「・・・・・・うん。」

とりあえず、その場から逃げ出す。
はあ〜・・・・。でも、こんなに何も話さない子だとは思わなかったな。
とにかく、コレはいい機会だから、もっともっと彼女と話をしなきゃ。
よし。やるぞ!

・・・・と、ベンチに戻るが、そこには誰もいなくなっていた。
「・・・・・始穂さん?」
機材は残っている。
先に帰ったわけではなさそうだ。


「おにーちゃん?」
「うわ!?」
いきなり声をかけられ、思わず後ずさる。
「わ、すごく驚いてる。そんなにびっくりした?」
その声の主は、大きなリボンをつけた小さな女の子だった。
こんなところで一人だなんて、この子は迷子なのかな?
「きみ、どうしたの?お母さんとはぐれちゃった?」
「ううん。そんなの初めからいないよ。」
「え・・・・・・・・?」
「それよりも・・・・。ここにいたおねぇちゃんがどこに行ったか、知りたくない?おにーちゃん。」
「な、なんだって!?」

「こっちだよ。ついてきて。おにーちゃん。」
踊るように駆けて、去っていく小さな女の子。
「なんなんだ・・・・。あの子・・・・・・。」
半信半疑ながらも、俺は彼女についていくしかなさそうだった。


「・・・・・・・私を捕まえて、どうする気だ。」
「どうやらお前は、あのブレイドと仲良しのようだからな・・・。利用させてもらったって訳さ。ヘェッヘッヘッヘッ。」
「ブレイド・・・?!」


「み、見失っちゃった・・・!」
小さな女の子を追いかけて、園内の、人気の少ない場所へとやってくる。


「上級アンデッドか。・・・こんなせこい真似を使わずとも、正々堂々私と戦ったらどうだ?」
「なんだと・・・・・?人間が何言ってやがるんだ、あぁ?」

「始穂さん!!」
「!!!!」
遠目でしか見えないけど、アレは確かに始穂さんだ!
・・・・・・・・・?
何か手に持ってたものを、ポケットに収める仕草をする。
なんだろう、あれ・・・。

「フォォォォーーーーーーウ!!きたなぁ、ブレイド・・・・。」
「お前、上級アンデッドか!?」
俺はそいつに向かって駆け出し、ベルトにカードを挿入しようとした。
「おっと!そいつはちょっと待ってもらおうか。」
「な・・・!なに!?」
「お前が変身すれば、こいつを絞め殺す。」
「・・・・それでもいいのかなぁ?」
「く、くそ・・・・・・・!!」
「ベルトをそこに置け?へへへへへへ・・・・!」
また、人質か・・・!
「剣崎・・・・・・。」

「早くベルト置けッつってんだろぉ!!?」



1.始穂さんの命には代えられない。俺はベルトを置いた。
2.ベルトを置けば、殺される。俺はベルトを手放せなかった。




第36回「守りたい人、助けたい人」




「・・・・。」
始穂さん・・・。
オレの見つめる先に、上級アンデッドの男に抱えられる始穂さんがいる。
不安そうな顔で、オレを見つめている。
・・・・ダメだ!
俺には、彼女を見捨てることなんて出来ない・・・・。

俺は上級アンデッドを視界に入れたまま、ベルトを地面に置いた・・・。
「・・・ハァ〜。それでいいんだよ!」
すると男は、その姿を異形へと変える!
『へっへっへ・・・。』
アンデッドはその手にU字型の巨大な手裏剣を取り出す。
『ハァッ!!』
「っ!!」

ガキィン!!

「な!!」
そのアンデッドは、その手裏剣で、始穂さんを壁に貼り付けにしてしまった!
『逃げられちゃ困るからなぁ・・・・。』
『さあ!たっぷり楽しませてくれ!!』

ズドォンッ!!!

アンデッドはその口から、青い衝撃波を吐き出した!!
「うわあああっ!!!」
自分の身体を、地面に飛び込ませるように転がし、何とかそれをやり過ごした。
『ハハハハ・・・・。ハアッ!!』
殴りかかってくるアンデッド。
「うッ!!」
なぶるようなその動きは、生身の俺にも捉えられる。
だが、それはアンデッドが弱いのではなく、オレをいたぶって楽しんでいるんだ。
『へへへへ・・・。噂の仮面ライダーも、彼女を人質にとられちゃ形無しだなぁ!?』
「何・・・!?」
『人間って奴は、そんなだから俺達アンデッドには勝てないんだよぉ!』

ガツッ!!

「うぎっ!!」
奴の一撃が、顔面に入る。
『おっとぉ・・・。今ので死ぬんじゃねぇぞぉ?ほんのちょっと触った程度なんだからよぉ!!』
冗談じゃない・・・。
俺はそんな一撃で、尻餅をついたって言うのか・・・!!

ガスっ!

「うがあっ!!」
一瞬気を失いかける。
腹にケリを入れられた・・・!
仰向けの状態だったものを、転がって体勢を立て直し、うずくまったまま奴を睨む。
口の中が・・・。しょっぱい。
『ハハハハァ・・・・。まるで芋虫だよなぁ!仮面ライダー・・・?』
「きっ、貴様あっ!!」
『コレで俺は、お前のカードを手に入れ、更なる力を得る・・・。オレの能力は『吸収』だからな。』
『お前のカードをしこたま食って、俺は最強のアンデッドになるって訳だ。ひゃはははははは・・・!!!』
「そんなこと・・・させるか!!」
『ハッ。口だけは達者だなぁ・・・。でもなぁ。ライダーになれないお前なんざ、そこらの虫ケラと変わらねぇってんだよぉっ!!』

ズドォン!!

再び放たれた衝撃波。
俺はそれをもろに受け、木に叩きつけられた!!
「ごふ・・・・っ」
口から血が吐き出され、そのまま崩れ落ちる。
必死に開ける目も、ぼんやりとしか前が見えない。
始穂さんの姿は・・・・見えない。
『楽しませてもらったぜぇ。ブレイド。じゃあ、そろそろ楽にしてやるかぁ?』
ゆっくりと歩み寄ってくるアンデッド。
足しか見えない、顔も上げることができない。


殺される・・・・。
始穂さんは、俺が死んだ後、どうなるんだろう。
あいつが、彼女を解放するだろうか・・・・。
・・・・そんなことありえない。
奴は始穂さんも殺す。
・・・・じゃあここで俺が死んでも、何の意味もないじゃないか。
俺は、彼女を救えてないじゃないか・・!!!

ぐぐぐぐぐ・・・・・っ

『!ほう・・・・。』
「はぁ、はぁ・・・・。がはがおほっ!!・・・はぁ、はぁ・・・・。」
『アレを食らって立ってられる人間がいるとはなぁ。流石は、仮面ライダーって訳だ。』
『でもなぁ・・・。立ったところで何もかわらねぇ。お前の死には、まったく変更がねぇ。』
「俺は・・・・。始穂さんを助ける。絶対に・・・!!」
『良くそんなことが言えるなぁ?感心するぜ。人間の足掻きって奴にはなぁ・・・!』

目が霞む。
奴の黒い姿が、ぼんやりと見えるだけだ。
・・・その後ろに、もう一つ黒いものが見える。
奴は、気がついていない。

『じゃあ死ね。ひゃははははは・・・!!!』
奴がその手を大きく振りかぶった・・・
その時。

『TORNADE』

ズヒュッ!

バシィン!!!

『ぐおおおおおおおあああああああああっ!!!!』
後ろから強烈な一撃を受け、膝を突くアンデッド。
『だ、誰だ!!』
『・・・・・・・・・・・・。』
『て、てめぇ・・・カリス!カテゴリーAの・・・!!』
『・・・・。』

ダッ!!

『!!!』

ザギィザギィン!ズガァン!ザギィンガキィン!!

カリスは間合いを詰めたかと思うと、一瞬で五回もの強烈な一撃を上級アンデッドに加えた!
『グアアアアアアア・・・・・・て、てめぇ・・・・・。』
『卑劣な奴に、私は容赦しない。』

『DRILL』
『TORNADE』
『MACH』

『SPINNING SONIC』

3枚のカードをラウズ・・・!
『う、うわ・・ひゃああああああああああっ!!!』
そのカリスの圧倒的な力の恐怖のあまり、逃げ出すアンデッド。

カリスの身体に竜巻が纏い、空中に浮かび上がる・・・・。
そして自分の足を軸に高速回転し、さらに音速に迫る速度でアンデッドに襲い掛かった!!
『でぃぃぃぃやあッ!!!!』

ズガアアアアッ!!

『ギィィィヤアアアアアアァッ!!!!』

ドガアアアアアアアアンッ!!


その一撃はアンデッドを貫き、大爆発を起こした。
『・・・・・・。』
カリスはカードを取り出すと、アンデッドに投げつけた。
入手カードは、ワイルドベスタのクイーン。

『・・・・・。』
ざっ、ざっ、と、さっきから立ったままの剣崎の前にやってくる。
『・・・いつまでそうしてるつもりだ。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
『・・・!お前・・・・。』
なんと剣崎は、立ったまま気絶していたのだ。
『・・・あきれた奴だな。』
ぴっ、とその手のカードを剣崎の足元に落とす。
『・・・・・これは、礼だ。』


・・・・・・・。
・・・・・・・・・。


「・・・・・・・・・・。」
いててて・・・・。
体中が痛い。
俺、どうしたんだっけ・・・・。
ああ、そうだ。
始穂さんを、始穂さんを助けないと・・・。
早く・・・目が覚めろよ・・・・。
「・・・・・・・・。」

「あっ、気がつきました!」
「剣崎さん・・!!良かった・・・・。」
「・・・・もう、余り無茶するんじゃないわよ・・・・。」

「・・・ふあ?」
オレの周りには、3人の女の子、それに年配の男性が二人いた。
・・・・いかん。名前もすぐに出てこない。

「気がついたか。剣崎。」
「しょ、所長・・・・。」
「君はその呼び方が身についているようだね。まだ頭がはっきりしてないうちは、しょうがないさ。」
「広瀬・・・さん。」

「うわああああああああああんっ!」
がばっと、泣きついてくる女の子。
「剣崎さん・・・生きてて、生きてて良かったです・・!!」
「美月・・ちゃん。」
「三日も眠ってたのよ・・・。もう、女の子を泣かせるなんて、悪い男の子ね。剣崎君・・・・。」
そっと頭をなでてくる女性。
「橘さん・・・・。」
「ほんとです。おにーさん、これからはもう無茶しないでください!みんな本当に、本当に心配してたんですよ!」
「一菜・・・・。」

そうか。ここはBOARDの病院棟。
俺はいつの間にかここに運び込まれてたのか・・・。
「相川 始穂という女性から連絡があってね。剣崎がひどい怪我をしたから、迎えに来てくれって。」
「あなたの携帯電話を使ったみたい。・・・それにしても大変だったわね。あのカリスってライダーが来てなかったら、どうなっていたか。」
あ、そうなのか。・・・俺、あいつに助けられたのか・・・・。

「そうです!生身でアンデッドと戦うなんて馬鹿げたこと・・・。」
「まあまあ。聞けば剣崎君は、その女性を人質にとられて、仕方なく、というじゃないか。その人のために。なかなか出来ることじゃない。」
「さすがおにーさんです!彼女を守るためにその身を張る!それでこそ男の中の男!それでこそ私のおにーさんです。」

「・・・・彼女?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・げ。
一菜、今すごいまずいことを口走らなかったか?
「へえ・・・。剣崎君。彼女が出来たんだ。それは知らなかったわねぇ・・・。」
「剣崎さん、本当なんですか・・?」
「え、いや、それは、あの・・・・。」

「ここは席をはずそうか、広瀬君。」
「うむ。ここは若い連中に任せて。」
「剣崎、ほどほどにして置けよ。はははは・・・・。」

ばたん。

・・・・・・。
所長と広瀬さんが出て行く。
「は・・・・。あ、あはははははははは・・・・。」

「剣崎君?」
「剣崎さん?」

「はっ、はいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」




研究所の外で、その窓を見つめる女性。相川 始穂。
「・・・・・。」
「剣崎、良かったね・・・・・。」

そうつぶやくと、彼女はそこから去っていった。




「うふふふふ・・・・。やっぱりあんな小物じゃダメね。」
「でも、いろいろ楽しみが出来ちゃった。」
「カリス?アンデッドと人間の間に、信頼関係など出来はしない。」
「最後は戦う定めなの。いくらあなたがあの人間を想っていても、それは避けられはしない。」
「私がそれを教えてあげる。このわたしが・・・・。」
「うふふふふふふふふっ。」

暗闇の中で、大きなリボンがゆれていた・・・。





さてさて。十分休養もとったし。

1.アンデッドを警戒しよう。最近、上級アンデッドの動きが活発だ。
2.BOARDの訓練施設に行こう。どうも負けが込んでる気がする。鍛えなおすぞ。
3.病院食ばかりだったから、栄養のあるものが食べたいな。
4.アンデッドも気になるが、あの銀色の怪人や、もう一人のライダーも気になる。独自に調べを入れてみる。




第37回「美月の悩み」




「ふんぬあああああ〜!」
ベッドから起き、背筋をぐっと伸ばす。
そのまま上体を左右に捻り、ごきごきと背骨を鳴らせた。
んあ〜、気持ちいい・・・・。
しばらくの入院生活で、身体がすっかりなまってしまったからな。
よし。今日は訓練施設で、久しぶりに鍛えなおすか!
思い立ったが吉日、食堂で軽い食事を終えると、エレベーターで地下へ。

「・・・戦闘シミュレーターはいいか。」
機械の操作は苦手だし、それに実戦を飽きるほどやってる。
今オレに必要なのは、どんな攻撃にも立ち上がるタフさだ。
ぶっ倒れるたびに、この前みたいな目に合うんじゃ、おちおち負けられないからな。
・・・・いや、俺は死んでてもおかしくなかった。
この前生き残ったのは運だ。
俺は、もっと強くならなくてはいけない・・・。
どんな状況でも、勝利を勝ち取れるように!


トレーニングマシンで汗を流す。
足腰、筋力、体力、とにかく鍛えなおす。
がむしゃらにトレーニングルームに篭もり続けた。
時間なんて忘れるほど・・・・。

・・・っと、あまり根詰めて、それでまた倒れたら話にならないな。
少し休憩するか・・・・。
タオルで頭を拭きつつ、器材の並ぶトレーニングルームを出た。

「・・・今日は誰とも会わないな。」
思えば最近は、いつも誰かと一緒にすごしていたからな。
たまには一人も・・・・。

「剣崎・・さん?剣崎さん!」

・・・いや、そんなはずもないか。
「美月ちゃん。」
俺はその声の方を振り返る。
「剣崎さん・・・・。ずっと、訓練を?」
オレの出てきたほうを見て、そう聞いてくる。
「ああ。しばらく身体動かしてなかったからね。それに、最近良く負けてるし。この機会に鍛えなおそうかって思って。」
「そうなんですか・・・・。すごいですね。剣崎さんは。」
「そうかな?美月ちゃんだって仮面ライダーになるんだし、これくらいは・・・・。」
「・・・・あの、場所変えませんか?立ち話は、ちょっと・・・・。」
「・・・?ああ。」
少し彼女の様子がおかしい。
それを心配しつつ、場所を変える。


「ここでいいの?」
「・・・はい。」
やってきたのは、研究所内の、小さな実験室。
窓は締め切られ、電気をつけなければ昼なお暗い、あまり人の寄り付かない場所だ。
「徹底してるなぁ・・・。そんなに聞かれたくないの?」
「はい・・・・。」
「実は私、仮面ライダーに、向いてないんじゃないかって、そう思うようになって・・・・。」
「ええ!?」
「私、いくら頑張っても強くなれないんです。すぐ息は切れるし、とろいし、それに、相手が怖くって・・・。」
「張り切ってBOARDにいれてもらったけど、私って結局、カテゴリーAに魅入られただけの、ただの女の子だし・・・。」
「美月ちゃん!そんなことないよ!頑張れば、頑張ればきっと、俺や橘さんみたいな仮面ライダーになれるって!」
「でも私、きっと才能がないんです。剣崎さんや、橘さんみたいに、戦う理由があるわけじゃないし・・・。」
「戦う、理由?」
「所長から聞きました。剣崎さんは子供の頃に両親をなくされて以来、全ての人を守りたいと思うようになったとか。」
「それに橘さんは、アンデッドに恋人を殺されているそうじゃないですか。私には、わたしにはそんなものはない!」

「・・・それじゃまるで、不幸な方がいいみたいじゃないか。」
「じゃあ、剣崎さんの戦う理由はなんですか?」
「・・・・これ、仕事だから。」
「仕事?」
「ああ。俺が選んだ、命を賭ける価値のある仕事だ。」
「美月ちゃんみたいな、アンデッドに襲われてる人を助けたい。それが、オレの戦う理由なんだ。」
「剣崎さん・・・・。」

すっと、俺は美月ちゃんの手をとる。
「あ・・・・っ!?」
「さあ、いこう。美月ちゃん。」
「え?行くって、どこへ?」
「俺が見ててあげる。訓練をしよう。美月ちゃんの、仮面ライダーになるための。」
「ええ!?で、でも・・・・・。」
「君の戦う理由も、どこかにきっとあるはずさ。俺も一緒に探してあげるから。あきらめるなんて言わないで。」
「剣崎さん・・・・・・・・・・・・・・・。」

俺は美月ちゃんに笑顔で応えると、そのまま手を引いてトレーニングルームへ。
彼女に付きっ切りで、その日を終えた。



「すぅ、すぅ・・・・。」
オレの腕の中で寝息を立てる美月ちゃん。
よほど疲れたんだろう。
俺は彼女を自室へ送りとどけると、そっと扉を閉めた。
「おやすみ・・・。頑張ったね。美月ちゃん。」

「けん・・ざき・・・・さぁん・・・・・・・。むにゃ・・・・。」




明日はどうしようかな。


1.引き続きアンデッドを警戒する。・・・それがオレの戦う理由。それがオレのひb(略
2.引き続き美月ちゃんの悩みを解消してあげる。美月ちゃん、そんな風に感じてたのかい?
3.・・・あの人にお礼がしたい。晴れた日に、きっと胸を張って!




第38回「彼女への贈り物」





ハカランダの前に立つ。
その手には、なんとプレゼントなぞ持っている。
「な〜んか、大げさなような・・・。」
生まれてこの方、女性にプレゼントなんてあげたことがないので、ものすごい、その、恥ずかしい。

そもそも、ハカランダに行くと一菜に告げたのがまずかった。

(おにーさんは始穂さんのおかげで命が助かったんです。プレゼントの一つも差し上げても、罰は当たりません!)

「ただ一言、ありがとうって言うだけのつもりだったのに。」
これじゃまるで・・・・。その、あの・・・アレみたいだ。
よくわかんないけど、アレだ。
・・・・・。
一菜と一緒に選んだプレゼント。
喜んでくれるといいけど・・・・。

・・・く、くそ。
ただ自動ドアをくぐってドアを開けてこんにちはって言うだけなのに。
今日はこの距離が余りにも長いッ!!


「な〜にしてるんですかっ!」
「!!!!!ぎゃあああああああああっ!!!!!」

「・・・・・今日は、泥棒でもしてるんですか?」
振り向くとそこには、お店の子、天乃ちゃんがいた。
「天乃ちゃん・・・・。脅かしっこなしにしてよ。」
「だって学校から帰ったら、剣崎さん窓を見ながらきょろきょろしてるんだもん。」
・・・我ながら、ものすごい挙動不審だったな。
「あ。なんですかそれ。」
天乃ちゃんがオレの手の包みに気がつく。
「あ〜、始穂さんにですか?それともお母さん?わたし?」
「あ、あの、これは、その・・・・。」
「始穂さんですよね。分かってます分かってます。この前のお礼なんでしょ?」
「あ、あう・・・・。」
「よし!じゃあ私が、始穂さん呼んで来ますね!」
「ウェッ!!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
「ただいま〜!」

オレの言葉も聞かず、ハカランダに駆け込む天乃ちゃん。

・・・・・・・・・・。
やがて・・・。
「・・・何?」
始穂さんが出てきた。
「あ、あの、こんにちは。」
「・・・・剣崎。こんにちは。」
とりあえず挨拶なぞ交わしてみる。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
・・・・でも、やっぱりなんか会話が続かない。
この前と変わってないじゃないか・・・・。

「・・・・・・・・天乃ちゃんに言われてきた。何か、用?」
「あ、ああ・・・・。うん。」
先に彼女から切り出してきた。
なんだか早く戻りたそうな雰囲気が伝わってくる。
「あの・・・。この前、ありがとう。動物園で・・・・。」
「・・・・ああ。それは、間違ってる。」
「え?間違ってる?」

「助けてもらったのは私。剣崎、お前に助けられた。」
「あ、い、いや、でも、君がBOARDに連絡してくれなかったら、俺はあのまま・・・・。」
「・・・・・それは、そうかも。」
「う、うん。ありがとう。始穂さん。」

「・・・・でさ、これ。・・・・もらって欲しいんだ。その・・・。これ。」
差し出すその手には、彼女へのプレゼント。
「・・・・・・・・・!!」
「気に入るかどうか分からないけど。」
そっと彼女はそれを手に取る。
不思議そうな面持ちで。
「くれるの?」
「う、うん。」
「・・・・・よくわからない。助けてもらったら、物をあげるものなの?」
「へ?」
変わった事を言うなぁ・・・・・。
「別に、そうとは限らないけど、言葉だけじゃ伝えられない気持ちって言うのが、あるでしょ?」
「気持ち・・・・。」
「そんな時に、言葉以外のもので、気持ちを示すんだ。今回は、俺は始穂さんにコレだけ感謝してるって・・・・。」
なんて、プレゼントは一菜の勧めで買ったんだけど・・・・。

「感謝・・・・。」
ぎゅっとそのプレゼントを抱きしめる始穂さん。
「初めて・・・・。こんな気持ち・・・。胸が、温かい。」
「始穂さん・・・。」
「・・・・剣崎。ありがとう。」



「わあ・・・・。ものすごくいい感じ。」
「天乃!」
「はぁい。でも、あの大食いの彼女はいいのかなぁ?」
「大人には色々あるのよ。でも私は、あまり感心できないかな?」
「わたしは、始穂さんが幸せそうだから、それでいいと思うなぁ。」
「そうね・・・。わたし達といるより、ずっと幸せそうね。始穂さん。」


「・・・それじゃ、店に戻る。ありがとう。剣崎。」
「そんな、何度もお礼言わなくてもいいよ。どっちがお礼しに来たのかわからない。」
「うん・・・・。でも、ありがとう。」

戻っていく始穂さん。

「ふはぁ〜・・・・。」
き、緊張したぁ・・・。
でも、無事に渡せてよかった。
「・・・・じゃ、いったんBOARDに戻るかな。」
駐車したブルースペイダーに戻る。

・・・・・・・?
だがそこには、小さな女の子が座席に座っていた。
どこかであったことがあるような・・・。
大きなリボンが風に揺れている。
「あ、おにーちゃん。また会ったね。」
少女はオレに気がつくと、気さくな感じで話しかけてきた。
「君は・・・。動物園で会った。」
「あはは。あのおねぇちゃんとおにーちゃんは、恋人同士?」
この子、俺と始穂さんのやり取りを見てたのか!?
・・・・。天乃ちゃんといい、最近の女の子って言うのは・・・。

「そんな、そんなんじゃないよ・・・・。」
「あはは。そうだよね。おにーちゃんたち二人がそんな風になれるわけ、ないモンね。」
「・・・・・・む。」
ちょっと気に触った。
「あはははっ。怒った?でも、ホントの事だよ。おにーちゃんたちは絶対に幸せになれない。」
「なんだよそれ・・・・。」

「仮面ライダー。禁断の恋もいいけど、目の前の敵にくらいは気がついたらどう?」
「え・・・・・・・・?」

「あはははははははっ!!!」

その少女から、圧倒的な力があふれだす。
彼女はそのままバイクから降りると、その身体が大きく、そして異形の姿へと変わっていく・・・!!
『さあ、遊んで。おにーちゃん。』
「じょ、上級アンデッド・・・!!!」
赤いアンデッドは、その両手に二本の巨大な鎌を取り出すと、オレに襲い掛かった!!


1.こ、こいつからはすごい力を感じる・・・。ここで時間を稼ぎつつ、橘さんに応援を頼む。
2.ここは逃げる!ハカランダが近い・・・。もっと広い場所へ!
3.一人で立ち向かう。訓練の成果、見せてやる!



「!!!」
「どうしたの?始穂さん。」
「い、いや、なんでもないよ。天乃ちゃん。」

(この感じは・・・・。カテゴリーKか。)




第39回「カテゴリーK(キング)の脅威」




「変身!!」

『TURN UP』

俺は仮面ライダーブレイドへと変身する。
『あはははは♪ねぇ、早く遊んで。おにーちゃん。』
無邪気な声が、赤いアンデッドから響く。
「くっ・・・・。」
ちらと後ろを見る。
ハカランダが近い。
ここで戦えば、店に被害が出るかも知れない・・・。
俺は、じりじりと場所を移そうと、あとずさる。
「・・・・・・・・・・。」
向こう側には、広い草原がある。
そこで戦うか・・・!
『あれ?ここじゃ戦えないのかな?うふふ。そうだよね。お店が壊れちゃ困るモンね。』
「・・・・・・・・ああ。そうだよ。」
『じゃあ、場所を移そうね。やさしいおにーちゃん。』

何もかも見透かしたような少女のアンデッド。
俺は素直に彼女の話に従う。



「あら、始穂さん、どこへ行くの?」
「・・・!ちょっと、そこまで・・・。」
「・・・・そう。早く戻ってきてね。今お店、忙しいから。」
「はい。・・・・春花さん。」



『ここでいいよね?もう、我慢できないよ。おにーちゃん・・・・。』
その巨大な鎌を構える。
「く・・・・・。」
俺も、修復されたブレイラウザーを構える。
『シャアアアッ!!!』
鎌が振るわれる!

ガキィィン!!

火花を散らす鎌と剣。
『ハアッ!』
だが、受け止めたのは二本の鎌のうちの一本のみ・・!!
もう片方の得物が振るわれる!

ザギィン!

「ぐっ!!」
『ハハハハハ!!』
続けざま鎌が振るわれた!

ザギィザギィザギィン!!!

何度もきりつけられる・・・!
俺が苦し紛れに振るう剣も、片方の鎌で受け止められ、もう片方の鎌で一撃を受ける!
「ぐうううううううううううっ・・・!!」
斬りつけられた勢いでオレの身体は回転し、そのまま地面に転がった。

『なぁんだぁ、おにーちゃん弱ぁい。』

こ、こいつ、なんなんだ・・・!
あの上級アンデッド、伊坂なんかとは比べ物にならない。
武器を振るう早さも、オレの剣を受け止める動体視力も、今までの奴とはまるで違う・・・!!
くそ!・・・オレの訓練は、何の役にも立たないって言うのか・・!
もっと、もっと力が、力が、欲しい・・・・・・。

『あは。でもまだ殺さないよ。今にカリスが来るはずだから。』
「ぐ、く・・・・・・・。」

やがて、少女の言葉通り。
『・・・・・・・・・・・・。』
仮面ライダーカリスが、ゆっくりと現れた。
『来たわねカリス。』
『カテゴリーK・・・。その男をどうするつもりだ?』
カテゴリー・・・・K? 
こいつが、キングの・・・アンデッド?

『このおにーちゃん?うふふ。あなたの目の前で、殺そうと思って。』
『・・・その仮面ライダーは、私の獲物だ。私の手で倒す。・・・ほかの誰にも渡さない。』
『ふふぅ。強がっちゃって。本当は、おにーちゃんが心配ですぐにも駆け寄りたいくせに。』
『おしゃべりな奴だ・・・・。』

・・・・カリスが、オレを心配?
何だ、どういうことだ?

『どちらにせよ、わたしはお前を倒す。アンデッドは・・・全てだ。』
『わたしと戦って、ただで済むと思っているの?』
『刺し違えてでも・・・!!』

ビュウンッ!!

両刃の剣、カリスアローを振るい、赤いアンデッドに襲い掛かるカリス。
『ははははぁ・・・・!人間の心配なんて、下らないわよカリス!』
『!』

ビュン!

ガキィン!!

振り下ろされたカリスアロー。両手の鎌を十字に組んで受け止める。
俺から離れて戦っているため、だんだんその会話は聞き取りにくくなっていく・・・。

『贈り物は嬉しかった?あのときの貴女、人間の女の子みたいだったわよ。カリス・・・?』
『貴様・・・!!』
『なんてムダ。なんてむなしい行為。いずれ人間達は、バトルファイトの勝利者により排除される。』
『それにね。アンデッドと人間の間に、愛なんて成立するはずがない・・・・。あなたが見ているのは、甘い夢に過ぎない。』
『愛だと・・・?わたしはそんな感情を持った覚えはない。わたしはアンデッドだ。そんな人間の感情など、知ったことではない!』
『ふふふ・・・。じゃあ、おにーちゃんの前でその変身を解ける?』
『カリスの正体が自分の知る相川 始穂、おまけにアンデッドだって、人間じゃないって、それを知ったらおにーちゃんは、あなたの事をどう思うかしら?』
『・・・・・・・・・・・!!』
『間違いなく、あなたなんて見向きもしなくなるよ。人間は、人間がすきなんだもん。』
『は・・・・は・・・・・・・・。』
カリスの手が震えだす。
『分かってるよ。あなたが動物園ですぐに変身しなかったのは、おにーちゃんに正体を知られたくないからでしょ?自分でも分かってるんだ?』
『き・・貴様・・・!!』
『かわいそう。カリス。人間になったばっかりに・・・・。』
『でもね・・・。』

ガツッ!!!

『ぐううっ!!!』
赤いアンデッドはカリスアローを弾き、その胸に二本の鎌による突きを浴びせた!!
ごろごろと、草原を抜け道路に転がり出る。
・・・カリスが、オレの視界に入った。

『あの世で二人をあわせてあげる。せいぜい幸せになりなさい・・!!』
赤いアンデッドが、右手に持った鎌を投げつけた!
『・・・・・。』
カリスは、まだ気がついていない。
「よけろっ!カリスゥッ!!!!」
『!!!!!』

ドシュウッ!!

その鎌は、カリスの右肩に突き刺さった。
俺がとっさにかけた声でそれに気がつき、わずかに命中点をそらしたのだ。
だが、深手には違いない・・・・。

ぴしゃっ。

・・・・?
その時、オレの上に何かが振ってくる。
緑色の液体。
なんだ・・・・これ。
もう一度カリスを見る。
・・・・その肩からは、だらだらと流れる緑の液体があった。
血か?血なのか?
緑色の血・・・。
カリスは・・・・カリスは人間じゃないのか!?

『ぐうう、う・・・・・・・。』
鎌を引き抜くカリス。
そこに、悠々と赤いアンデッドがやってくる。
『おにーちゃんは気がついたみたいよ?カリスが人間じゃないと。』
『ぐ・・・・・・・・。』
『ではここで、あなたの変身をといてあげる。どんな反応をするかしら?おにーちゃん。』
『ぐうう、う・・・!!』

再び鎌を振り上げるアンデッド。
助けなきゃ・・・!!・・・でも、身体が動かない。
ただ、俺は奴に向かって、手を伸ばすだけで・・・・。

『ハァッ!!』

しゅうううううううううううううううううっ!!

『むっ!!?』

その時、赤いアンデッドにどこからか白い糸が放たれた!
『こ、この糸は・・・!』
・・・・どうやらアンデッドは、それに心当たりがあるらしい。
『・・・・・・。しょうがないなぁ。ここは引き下がろうかな。』
『またね。おにーちゃん♪』

逃げていく赤いアンデッド。
いったい・・・何が起こったんだ?

『危ないところだったね。』

「・・・・!!」
そこへ現れたのは・・・。
紫色をした、蜘蛛のアンデッド・・・!!
『か、カテゴリー・・・Kか。』
な・・・!!
また、またキングか・・・・。
『待ちたまえ二人とも。今はわたしの事より、君達の手当てをしなくては。』
・・・・・・・・・・何?
そのアンデッドの口から出たのは、思いもよらない優しい言葉。

・・・・どうする?



1.アンデッドは信用できない。引きずってでも逃げる!
2.・・・・ここはこのアンデッドを信じてみる。どうせ、戦う力も残ってない・・・。
3.橘さんに救出を頼む。次戦えば、もう倒されるしかない・・・。




第40回「力を求めて」




緑の血に彩られた地下歩道で、二つの影が争っていた。
一人は異形の怪物・・・。アンデッド。
そしてもう一体は・・・。
『お、おまえ、その力は、その姿は・・・・!!』
そのアンデッドは全身に切り傷が刻まれ、今にも倒れ伏しそうだった。

「はははは・・・!もう、あんたは・・・・オレの敵じゃないってことだな。」
「あんたは、オレの力を見誤った。オレを1万年前と同じと読んだアンタの負けだ。」
『おのれ・・・おのれ・・・!!』
アンデッドは最後の力を振り絞り、その手の鉄槌を振るう!!
『パオオオオオオオオオオオオッ!!』

ガシィン!!

だが、もう一人は手にした槍のようなもので、あっさりと受け止める。
「・・・おわりだ。ハァッ!!」

ガギィン!!

槍をふるい、鉄槌を弾くと、

ザシュウッ!!

・・・槍は、その重厚な身体を貫いた。
「ヒヒヒヒヒヒ・・・イイィィッヒッヒッヒッヒッヒ!!!」



「・・・・あ、アンタ、何者なんだ・・・?」
突如現れた蜘蛛のアンデッド。
しかし俺達に敵対する意思はないようだ・・・・。俺は剣を収める。
・・・まあ、立ち向かったところで勝ち目はないし。

『わたしかね?』
そういうと、彼は人間の姿に変わる。
「わたしの名は嶋 昇。烏丸所長から、君たちを助けるように言われて来た。」
「おっと。今は所長じゃなかったね。はははは・・・。」
「烏丸主任から・・・?」
「わたしと彼は知り合いでね。彼の研究を手伝っていたことがある。」
「アンタ、アンデッドなのに・・・・。」
「わたしはこのバトルファイトを終わらせようと考えている。・・・変わり者なのさ。わたしは。」

「・・・・彼女は、逃げたようだね。」
「え?」
嶋さんの向く方を見ると、そこには緑の血だまりがあるだけだった。
「カリス・・・・。」
「彼女が、心配かい?」
「え、彼女?あいつ、女なんですか!?」
「・・・・・コレは、余計な事を言ったかな・・・・。」
ぽんぽんと自分の頭を叩く嶋さん。

「君がやられそうだったからね。私が助けに入らせてもらった。」
「そうだったんですか・・・。うっ。」
「君の怪我はひどいようだ。早く戻ろう。」
「はい・・・・・・・・・・・・。」



からころ〜ん。

ハカランダの扉が開く。
「あっ、始穂さんお帰りなさ〜い!」
「う・・・っ。」

バタッ!!

「し、始穂さん!!?お母さん!おかあさーん!!」




「バカ!何でそんな奴と一人で戦ったりしたの!!」
手当てを終え、ベッドで休むオレの前に、橘さんと美月ちゃんがやってきていた。
オレの襟首を掴み、揺さぶる橘さん。
「い、痛いですよ、痛いっすよ橘さん!!」
「あなたみたいなおバカさんは、こうやって痛い目見ないと分からないでしょッ!!?」

がくがくがくっ!!

「あうあうあうあうあうあうあう〜っ!」
「やめてください橘さん!剣崎さんは、怪我人なんですよッ!?」
割って入る美月ちゃん。
「はぁはぁ・・・。剣崎君!そんなにわたしが頼りにならないの!!?」
「橘さん・・・・。」
「わたしは、あなたの先輩なの!もっと頼ったっていい、甘えたっていいのよ!自分が先輩になっても、私はずっとあなたの先輩なのよ!!」
「橘さん・・・。ごめんなさい。」
「ばか。今言ったって遅いのよ。」

ぎゅっ。

「はふうっ!?」
橘さんがその胸に、オレの顔をうずめる・・・。
「今度、今度こんなことになったら、私、絶対剣崎くんを許さないから!私、あなたを大切に思ってるんだから・・・・・。」
「はふぃふぁぬぁふぁん・・・。」
「・・・んっ、息が、こそばゆいわよ。」
「あ、あう〜・・・・っ。」
なんだか悔しそうに俺達を見つめる美月ちゃん。

「・・・ぷはっ。」
橘さんから開放される。
や、やこかった・・・。
「烏丸主任と広瀬所長が呼んでるわ。行きましょう。」
「あ、は、はい。」



「気がついたか。剣崎。早速で悪いんだが・・・・。」
「はい。」
所長室には、広瀬所長、烏丸主任、そして嶋さんが揃っていた。
「聞いたよ。カテゴリーKと遭遇したんだってね。」
「はい。奴は・・今まで戦ったどんなアンデッドよりも強かった。」
「烏丸君。君の開発したアレが、ついに望まれるときが来たようだね。」
「うむ・・・・。」
「広瀬さん?アレ、とは・・・・?」
「これだよ。橘君。」
嶋さんが、懐から黒い機械を二つ取り出す。

「これは・・・。私が開発した、ラウズ・アブゾーバーだ。」
「ラウズ・アブゾーバー・・・・。」
「うむ。これをライダースーツにセットし、カテゴリーQとカテゴリーJのカードを挿入することにより・・・。」
「君達は、ジャックフォームへとパワーアップできる。」
「パワーアップ・・・。それで、カテゴリーKと戦えるんですか!!?」
「まあ、落ち着きたまえ剣崎君。・・・問題は、そう簡単じゃない。」

「確かにこれは君達のライダースーツを飛躍的に強化できる。だが、これはカテゴリーJとの融合を可能にするものだ。」
「早い話。ジャックフォームになってもカテゴリーKには、おそらく太刀打ちできないだろう・・・。」
「そんな・・・・。せっかくパワーアップしてもそれじゃあ・・・・。」
「それで終わりではない。コレを使用するには、ライダーに対応したプライムベスタの、カテゴリーQとカテゴリーJが必要なんだ。」
「たとえば剣崎君。君がコレを使用するには、スペードのカテゴリーJのアンデッドを倒さなければならないわけだ。」
「問題は、山積みというわけですか・・・・。」
ため息をつく橘さん。
「いや。望みを捨ててはいけない。」
と、嶋さん。
「恐れる事なかれ。そして怯む事なかれ。絶望の後には、必ず希望が来る。」
「そのとおりだ。橘。あきらめるのは早い。」
「でも、でも烏丸主任。カードは足りない、強化しても勝てない、って言うんじゃ・・・。」
「美月君。アブゾーバーは二つある。剣崎と橘。彼ら二人がジャックフォームになれば、勝機はある。」
「それに、君にも出動してもらうよ。」

「えええ!?」
「そんな、美月ちゃんにはまだ、無理ですよ!!」
「剣崎。お前が彼女につきっきりで訓練をした時があったろう?」
「あ、え、は、はい。」
そういえば、そんなことしてたな・・・。
「アレ以来、彼女のライダーとしての能力は飛躍的に上昇していてな。もう実戦も可能だと判断した。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あ、そ、そうなんですか・・・。」
「・・・ふぅん。仲のいい事。」
「主任、私、頑張ります!」
「うむ。ではこれから君達には、カテゴリーQとカテゴリーJの封印に向かってもらう。」

「ライダーが3人揃った初仕事だ。頼んだよ。」
「美月君には、念のため嶋君に同行してもらう。」
「え?・・・・は、はい。」
「よろしく頼むよ。美月君。」

「現在上級アンデッドの反応は、5つ出ている。」
「・・・!!5つもですか!?」
「そのうちの1つはカテゴリーKだが・・・。後の4つのカテゴリーは不明だ。」
「2人1チームで、これらの封印に当たってもらいたい。」
「分かりました!!」



1.廃車置場に反応が・・・。近くに下級アンデッドもいるらしい。
2.植物園内に反応。どうやら一人のようだ。
3.町の中に反応が。人が多いな。うまく戦わなくては。
4.ハカランダに反応・・!?どういうことだろうか。




第41回「狙われたそっくりさん」



「こんなところにアンデッドがいるんですか?」
俺達は大きな川を臨む公園へとやってくる。
昼間のこの時間、公園には家族連れやカップルがあふれていた。
屋台も見える。
思い思いに、たこ焼きを買って食べる子供達。

「平和ね・・・。」
ぽそりと橘さんがつぶやく。
「そうですね・・・。」
こんなのどかな時間が流れているのに、この街のどこかで、アンデッドが爪を研いでいるなんて、信じられないよなぁ・・・。
「どう?剣崎君。私たちもたこ焼き買わない?私おごっちゃうから。」
「え!?いいんですか?」
「うん。剣崎君は一箱でいいわよね?」
「はい。」
・・・・待て。では自分は何箱食う気なんだろう。
いつぞやのハカランダでの事を思い出して、身震いする。

「おねえさ〜ん、たこ焼き6箱くださ〜い!」
元気に屋台に駆け出す橘さん。
っていうか5箱か!5箱なのか!!
「ねえちょっと橘さん!いくらなんでもそれは・・・・。」

「おういらっしゃい!お兄さんたち、カップル?いいね〜。わたしもお兄さんみたいなカッコいい人と付き合いたいなぁ。」
その声の主に、俺は絶句する。
その声、その顔・・・・。
「・・・ウソ。始穂さん!?」
「あれぇ?お兄さん彼女の前でナンパ?まあ私としちゃ、来るもの拒まないけど?んふふ♪」
「あ、あれ。始穂さんと違うの・・・?」
「ねえちょっと。」
オレをひじで小突く橘さん。
「何よ、どういうこと?」
「は。はい・・・。彼女、ハカランダのウェイトレスさんの始穂さんに、瓜二つなんです!」
「・・・そう。じゃ、ナンパじゃないんだ。それならよし。」
・・・・そっちの心配だったのか。

「はぁい、たこ焼き6箱お待ち〜♪」
「あ、ありがとう。」
両手で差し出されたその山積みの箱に、俺も両手を伸ばす。

ひた・・・。

「あっ。」
「!」
その時、彼女の指がオレの手に触れる。
「いけないんだ〜。こんな手まで使って。」
「あ、い、いや、これは・・・・。」
「んふふ〜。そんなに欲しいなら、たこ焼きと一緒にあたしもどうぞ。んちゅ〜。」
「うおわ!?」
目を閉じて、唇を突き出し迫る女の子。
「いい加減にしなさいッ!」
ぐわしと彼女の頭を掴む橘さん。
「うは、いいツッコミ。いい彼女だねぇ。お兄さん。」
(なんなんだ、この子は・・・・。)
「あ、あたしは三上 了子って言うッス。どうぞよしなにッス!」
「は、はあ・・・。」
元気いい子だよな・・・。


もぐもぐ・・・・。

「じゃあ君は、相川 始穂って名前は全然知らないのかい?」
彼女が働く横で、もぐもぐとたこ焼きをほお張る俺と橘さん。
いや。

ぽいぽいぽいぽいっ!

あの人の場合、ほお張るというより、放り込む。って感じだな・・・・。
「幸せ〜。」
やっぱり食ってりゃ幸せなのか!
「相川 始穂・・・。うう〜ん、全然聞いたことないッスねぇ〜。そんなにあたしとそっくりなんスか?」
「もう本当そっくり!同じ人なんじゃないかって思うくらいだよ。」

「その人、お兄さんの彼女なんスか?」
「ぶふううううっ!!!!な、何を言うの君は!」
「別に照れなくていいッスよ〜。いまどき、彼氏彼女の5人や6人、持っててもおかしくないじゃないッスか?」
「そんな、俺はそんなつもりじゃ・・・。」
「えへへぇ。じゃあ、そんなにそっくりなら、あたしもお兄さんに惚れられちゃうかも知れないッスね♪」
「ほらほら。あたしは結構尽くすタイプッスから、お買い得ッスよ?」
そういって、オレに擦り寄ってウィンクする。

うっ・・・。
始穂さんと同じ顔なだけに、その仕草にドキドキしてしまう・・・・・。
「ご馳走様〜。ああ、美味しかった♪」
そんなオレの心境には、まったく気がつかない様子の橘さん。
って言うか完食かよ!俺まだ全部食ってないよ!

「きゃあああああああああああああああああああああーーッ!!」
「!!」
その時、平和な公園に悲鳴が響き渡った!!
「わ、な、何があったッスか!?」
「剣崎君!!」
「はい!」
俺達は頷きあうと、その場から駆け出した!
「え、二人ともどこへ!?」

「「変身!!」」

『TURN UP』



ざっ、ざっ・・・。

やってきたのは、海蛇のアンデッド。
『・・・・見つけたわ。ジョーカー・・・・。』
その目に、先ほどの三上 了子ちゃんを捕らえる。
「待て!!」
そこへ、俺達は立ちはだかった!!
『仮面ライダー・・・。あなた達も、私と戦ってる場合ではないのではなくて?』
「何・・!?」
『あの女は・・・。ジョーカー。』
そういって、了子ちゃんを指差す。
「ジョーカー?」
『そう。このバトルファイトにおける、最後の切り札。』
「何言ってるんだ!彼女は普通の人間だ!」
「アンデッド・・・。見た目で判断するのは、良くないわよ?」
『ほざくがいい。この私が見間違えるはずがない。』
『・・・やれ!』

ざばああああああああああっ!!

「!!?」
「な、なにっ!!?」
そのアンデッドの合図と共に、了子ちゃんの屋台の裏に流れる川から、もう一体のアンデッドが出現した!
「どええええええええええーーーーー!?なに、なに、なんなんスかーッ!!」
川から飛び出すとそいつは、じりじりと了子ちゃんに歩み寄る。
「ひ、ひいいいいー!!!」
その恐ろしさに、腰を抜かしてしまったようだ・・・。
「剣崎君!いきなさい!こいつは私が・・!!」
上級アンデッドに挑みかかるギャレン・・・!

「は、はい!!」

『シュルルルル・・・!』
「いや、いや、こないで、こないでー!!」
たこ焼きに使う、長い串を振り回す了子ちゃん。
亀のアンデッドは、それにお構いなく、彼女に襲いかかろうとした・・・!
「待てーッ!!」

ガシィン!!

『シュルウウッ!!?』
その伸ばした手を、ラウザーで叩き斬る!
「う・・・っ!」
すごい手ごたえ。こいつ、メチャクチャ硬い!
「早く・・・、早く逃げて!!」
「う、うん、け、剣崎君やったっけ?ありがとう!!!」
ものすごい勢いで駆け出す了子ちゃん。

よし・・・!



1.このままこのアンデッドを倒す。一人、一体の担当だ!
2.橘さんに加勢する。あの上級アンデッドを倒せば、俺と橘さん、どっちかがJフォームになれるかも!





第42回「起動!アルティメットフォーム!」




「こいつ・・・!どうしても了子ちゃんの所に行こうって言うのか!」
止めに入るオレの手を振り切ってでも、逃げおおせた彼女の方へ向かおうとするアンデッド。
「ウェイッ!」
その顔面にこぶしを入れる!

ガツッ!!

・・・・・・・・・・くううっ!!
こいつ、なんて硬い外装なんだ!
体術が効かない、ラウザーも・・・。
『シュルルルルルルル・・・。』
ようやく目標を俺へと変えるアンデッド。
「ウェアッ!!」

ガキィン!!

振り下ろす剣も、まるで効果がない!
その腕の装甲で、拳の一撃を受け止めた後、即座に空いた手で攻撃を加えてくる!!

ガツッ、ゴツッ!

「ぐうっ、ううううっ!!!」
地味ながらも強力な一撃は、ジワジワとオレを追い込んでいく・・・!




『アハハハハハハハハ!!アハハハハハハ!!バカな奴らね・・・。ジョーカーを守ろうとするなんて。』
「ジョーカー・・?アンタ、さっきから何言ってるの!」
上級アンデッドに向かい、正拳を振るうギャレン。
しかしアンデッドは右手でいなすと、左手の蛇の尾でその胸を切り裂く!

ガキィン!

「うっ!」
『アハハハハハハ・・・!!ジョーカーを知らないの・・・?バカねぇ・・・アハハハハハ!』
「アンタ・・・。さっきから笑ってばかりで、ムカつくのよッ!!」
『お前たちを片付けた後、ゆっくりあの女を追わせてもらうわ。ハハハハ・・・!アハハハハ!』

ザギィンガキィン!

その両手の蛇の尾の先につけられた刃物が、縦横無尽にギャレンに迫る!
「く・・・・。あんな隙間のない攻撃の中じゃ、ラウザーは抜けない・・!!」
『どうしたの・・・?仮面ライダーとやら、コレで終わりなのッ!?』


二体のアンデッドの前に、苦戦を強いられる二人。

『SLASH』

「はぁぁぁぁぁ・・!」
青い画像を纏い、輝く刃・・!!
「ウェエイッ!!」

グアキィンッ!!

・・・だがそれも、アンデッドの装甲をわずかに削ったのみだった。
「これもだめか!!」

バキィッ!!

「ぐああああああっ!!」



「はぁ、はぁ・・・・・。」
逃げる途中、何度も何度も二人を振り返っていた三上 了子。
ついに、その足を止める。
「・・・・あたし、こうやって逃げてていいのかなぁ。」
「あの二人、今戦ってるんだよなぁ。」
「あたしを逃がすために、剣崎君、戦ってたなぁ・・・。」

・・・・・・・・・・。

「あたし、こうやっていつも、嫌なことがあったら逃げてばっかりやった。」
「でも・・・・。あの二人見てたら・・・。」
「そんな自分、恥ずかしくなってきたなぁ・・・。」



ザギィン!!

「きゃあああっ!!?」
アンデッドの一撃を受け、地を転がるギャレン。
『アハハハハハ・・!!』
倒れ伏したギャレンをアンデッドは立ち上がらせ、肩を掴んだまま顔に攻撃を入れていく・・・!!
「ううっ、うううっ!!!」
『これまでね・・・。上級アンデッドの力、思い知った?アハハハハハ・・・!!!』
肩を掴む手に力を入れ、そのまま投げ飛ばす!
「ぐ、うう・・・。」
その場でへたり込むギャレン。
『ここまでのようね・・・。止めを刺してあげる。』
じわじわと寄ってくるアンデッド。
しゃがみこみ、その手をギャレンの首にかける・・・!!

「残念だったわね。」
『!!』

ドヒュイドヒュドヒュドヒュドヒュインッ!!!!!

その瞬間、ギャレンはラウザーに手をかけ、止めを刺そうと油断していたアンデッドの腹に、零距離射撃を浴びせる!!
『ぐうううわああああああああああっ!!!』
のた打ち回るサーペントアンデッド。
「油断大敵。・・・コレで終わりよ。」

『DROP』
『FIRE』
『JEMINI』

『BURNNING DIVIDE』

「たあああっ!!」
『ぬッ!!?』

天高く舞い上がったギャレンは、空中で回転、そこで二人に分身、オーバーヘッドキックを落とす!!
「でぃぃやあああッ!!」

ガスウウウッ!!

『うぐわああああああああああああああッ!!!』

ズドオオォォン!!

爆発する上級アンデッド。
ギャレンはラウザーからカードを取り出し、封印する。
「やった・・・!こいつ、ダイヤのカテゴリーQ!!」



「うあああああああああああっ!!ウェイ!!」

『LIGHTNING BLAST』

「ウェアアアアアアアアアアアッ、ウェイイイイイイイイッ!!!」
雷を纏うキックを放つ!!

それを見てアンデッドは、くるりと背中を振り向いた。

ガシィィィィンッ!!

なんとその背の甲羅は、必殺のライトニングブラストの衝撃さえも耐え切る・・!!
「うわあああああああっ!!」
必殺技を破られ、弾き返される。
「く、くそ・・・。もう、カードが使えない・・。」
ブレイラウザーのAPは、もう底を尽きていた!
『シュルルルルル・・・!!』
「まだだ・・・!まだ俺には、この手と足が、戦う意思がある!」
それでも戦意を失わない。
俺は、敢然とアンデッドに向かった!

「そこまでだ!」
『!!?』
「!!」

その時、太陽を背に、何者かの声が響き渡った!!
「だ、誰だ・・!?」
「あたしは・・・・・。」
「とうっ!!」
それは俺達の戦う川辺に向かって、飛び降りてきた!

「たい焼き名人!アルティメットフォォォォムッ!!」

「・・・・・・・・了子、ちゃん?」
なにやら変なプロテクターとヘルメットに身を包んでいるが、ぴょこっと飛び出た金のツインテール、
それが彼女だと物語っていた。
「だれですかそれはっ。あたしは、たい焼き名人ですっ。」
『シュルルルルウウッ!!』
そんな俺達の会話などよそに、アンデッドは襲い掛かる!
「え、きゃあっ!」
「危ないッ!!」

ガツッ!!

とっさにアンデッドの攻撃から、彼女をかばう。
「く・・!!」
「くっそ〜・・。もう、逃げてばかりのあたしじゃないッ!!」
そういうと彼女は、その手にたい焼き用の鉄板を取り出した!
「な、なに、それ。」
「とりゃああああああああああああっ!!」
なんと了子ちゃんは、その鉄板を持って、アンデッドに殴りかかった!
「あ、危ない!!」

じゅううううううううううううううううううう〜っ!!!

『ギュルウオオオオオオオオアアアアアアアッ!!!』
鉄板から吹き出る湯気。
あ、あれ、アッツアツに熱してあったのか・・!!
それを押し付けられ、顔を真っ赤にするアンデッド。
今あの場所に攻撃すれば、ひょっとしたら・・・!!
もうカードは使えない。ならば・・・!!

のたうつアンデッドに向け、助走をつけ、両足でのドロップキックを顔面に向けて放った!!
「ウェェェェェェェェイッ!!!」

ガシイイッ!!

『ギュルオオオオオオオオオ・・・オ・・・・・・・・・・。』
・・・効いた!
地面に倒れ伏し、伸ばした腕も、力なく落ちる。
バックルが開いた。
「よし・・・!」
カードを投げつけ、アンデッドを封印した。
「おおおお〜!かっこいい!素敵!ワ〜♪」
それを見て、大はしゃぎする了子ちゃん。
変身をとき、彼女に近づく。
「ありがとう。君のおかげで、アンデッドを倒せた。」
「ううん。あたし、剣崎君達見てて、あたしも逃げてばかりじゃいけないなって思えたッス。だから、ありがとうって言うのは、こっち!」
「・・・ッス?やっぱりきみ、了子ちゃんなんじゃないか!」
「ああっ!!?ひ、人違いッス!・・・・あ!どこかであたしを、たい焼きを望む声が!それではここで失礼するッス!!」
しゅたっと手を上げると、やっぱりものすごい勢いで去っていく。

・・・・まあ、いいか。


その後橘さんと合流、橘さんはジャックフォームへの変身が可能になっていた。
「あとは、スペードのカテゴリーJね。」
「はい・・・・。美月ちゃんたち、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。あの嶋さんがついているんだから。」

「そう、ですね・・・・。」





1.廃車置場へ。初仕事、頑張ります・・!
2.植物園に行きます。わたし、初めて行くかも知れないです。
3.ハカランダに反応があります!このままでは、店の人に被害が!



第44回「始穂を見舞う客」



剣崎たちが公園で、たこ焼きをもぐもぐやっている頃。

「感じる・・・・。美月君。この先にアンデッドがいるようだ。」
美月に同行した嶋さんが、風を読み、アンデッドを感知する。
「すごいんですね・・・。嶋さんって。」
感心する美月。
「この先にいるのは・・・。飛行能力を持つアンデッドのようだ。」
「カテゴリー・・・J、なんでしょうか?」
「さてね。それは分からない。」

二人の見つめる先は、剣崎の馴染みの店、ハカランダ。

「この中に、アンデッドが・・・・。でも、見た目は普通な感じですよね。何事も、ないように・・・。」
「さて・・・・・。入ってみなければわからないよ。美月君。私が同伴じゃ、君は不服かもしれないがね。」
「あう、それって、どういう意味ですか!?」
「さぁて、ね。風に聞いてみるといい。」
そういうと、さっさとハカランダに向かう嶋さん。
「そ、そんなの分かりませんよ〜っ!」



「いらっしゃいませ〜。」
出迎えたのは、この店の女主人。
「こんにちは。」
ぺこっと挨拶する美月。
「では、奥に座ろう。」
そこから、小声でささやく。
「店全体が良く見渡せる。」
「はい・・・・。」

注文をし、しばらく客の観察をする二人。
「あの男が、気になるね。」
「え?」
特製オムレツをもぐもぐしていた美月が、嶋さんの言葉に振り向く。
「顔を向けてはいけない。気づかれてしまうからね。」
「あの男の人が・・・。アンデッド?」
「そう。私と同じ・・・。上級アンデッドさ。」

スーツを着込んだ、眼鏡の男性。
カウンター席に座り、コーヒーをすすっている。
「ご主人。・・・彼女の具合は、悪いんですか?」
春花さんに話しかける男性。
「ええ・・・。それに部屋にも入れてくれないんです。こうやってお客さんが、こんな大きな花束を持ってきてくださったのに・・・。」
ちらと横を見ると、そこには抱えるほどの大きな花束が。
「では、彼女に伝えてください。「君の傷が治ったとき、昔の約束を果たそう、」とね。」
「は、はぁ。昔の、約束・・・・。お客さんと始穂さんは、どういう・・・?」
「ぼくたちは遠い昔、ある約束を交わした仲なんです。そして、今こそそれを果たす時だ。」
「お代はここに。・・・では失礼。」
男性は店から去っていく。


「こ〜んな花束なんて持ってきて・・・。あの人、始穂さんの何なのよ!」
その大きな花束を手にする天乃ちゃん。
「ひょっとしたら、婚約者、だったりしてね。」
「えええっ!?」
「だって、こんな花束、ただ心配してるだけじゃ持って来れないわよ。懐かしいなぁ・・・。あの人も、こうやって私に花束をね。」
「お母さんの事は聞いてないの!」
「んぅ、もう。つれないわね。天乃。」
「始穂さんが大変な時だって言うのに、剣崎さんは何をしてるのよ。もう・・・。」


「我々もいこう。美月君。」
「はい。」
二人は男性を追って、店を出た。


「な!?」
「あ、あれ?」
彼が出た後、すぐに店を出たはずなのに。
その姿はもうどこにも見えない。
「一体、どこに・・・・。」

「・・・無粋ですね。君達は。」

「!!」
その声はすぐ近く、しかも上から聞こえてくる!

バッ!

即座に後ろを振り向き、上を見る!

「僕の邪魔はさせない。そして、カリスに手を出すことも許さない。」
男性は腕を組み、直立した状態で空に浮いていた・・!!
「飛行能力・・・。あいつが、カテゴリーJ!」

「聞いていますよ。仮面ライダー。神聖なバトルファイトを汚す、無粋な輩。」
「そしてそのうちの一人が、よりによってカリスに近づこうとしているとか・・・。まったく、この僕を差し置いて、いい度胸ですね。」
ゆっくりと、男性はその場を移動し、近くの草原の上に降り立つ。
「剣崎さんの・・・ことですか!?」
「青い仮面ライダー、ブレイド。奴はこの手で引き裂いてやらないとね・・・。」

「そんな、そんなことはさせません!」
美月は懐から取り出したベルトに、カテゴリーAのカードを挿入する!
「気をつけるんだ、美月君!」
「わかって・・・います!!」
形成されるベルト。
「変身!!」

『OPEN UP』

彼女の姿は、いつかの伊坂のアジトの時と同じように、仮面ライダーレンゲルへと変わる!
「やれやれ。自分の力のなさも分からないらしい。」
ため息をつくと、男は異形へと変身する!
『君など僕の敵ではないことを、教えてあげましょう!』




1.美月君!今、私も手を貸す。二人でアンデッドを倒すんだ!
2.美月君・・・・。心を強くもつんだ。カテゴリーAは、君の心の隙を狙ってくる・・・。



第45回『二人の強敵』



仮面ライダーレンゲルは、その腰から醒杖レンゲルラウザーを取り出す・・・。
「はぁ、はぁ・・・・。」

カシィン!

クローバーの形に展開する、先端の刃。
『ふふふ・・・・。怯えているようですね。』
右腕の巨大な2本のつめを構え、ゆっくりと歩み寄るアンデッド。
「はぁ、はぁ・・・・。」
「う、うああああああああっ!!!!」
力任せに杖を振るう!

ヒュウッ!!

だが、あっさりとその軌道を見切り、しゃがんでかわす。
『見え見えですよ・・・。恐怖に怯えたその瞳の見つめる先は。』

ガキィン!!

起き上がりざまに爪を振り上げ、その胸を切り裂く!
「ぐうっ!」

「い、いかんっ!」
やはり彼女には、まだ無理なのか・・・!!
「今行くぞ美月君!二人で・・・二人でアンデッドを!」
嶋さんはアンデッド態に変身する!

『ハアアアッ!!』
両腕の爪で更に攻め立てる!
美月は、その勢いに手も足も・・・・!
「うああ、うあ、ああああああああっ!!!」
(嫌だ、怖い、怖い怖い・・!!)
『ハァッ!!』

シュウウウウウウウウッ!!

そこへ、嶋さんの手から放たれた糸が、アンデッドに吹きかかる!
『ぬ・・・っ!』
『・・・今だ!』
アンデッドが、まとわりつく糸を振り払おうともがく。
その隙を突いて、嶋さんがレンゲルを助けに入った。
『美月君!美月君!しっかりするんだ!』
頭を抱えてうずくまるレンゲル。

『ハアアアアアアアッ!!』
カテゴリーJ・・・・イーグルアンデッドは飛び上がり高速回転し、糸を振り払った!
『ふう、ふう・・・・。む。あなたはカテゴリーK。なるほど。人間に下ったわけですか。』
『人間は素晴らしいよ。君もどうだね?』
『ふん。ばかばかしい。僕にとって人間は憎むべき存在。共存など・・・・。』
その言葉の終わらないうちに、アンデッドは空高く飛び上がる。
『ありえませんよ。決してねッ!!』
そこから一気に急降下、回転を加えながらその腕の爪を突き出す!!

『むう・・・・。』
対する嶋さん・・・。タランチュラアンデッドは、その手に風を集めていく・・・。
『はああああっ!!』
突き出すその手から、竜巻が巻き起こった!!
『ぬうッ!!?』
空を飛ぶイーグルアンデッドは、その竜巻に巻き込まれてしまう・・!
『うおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!?』

どしゃあ・・・・っ

頭から地面に落ちるアンデッド。
『ふう・・・・。さあ、美月君。封印だ。』
「・・・・・・・・・。」
ゆらりと立ち上がる美月。
『・・・・・・美月君?』

『ヌアアアッ!!!!』

ジャギィン!

『ぐお・・・ッ!!?』
なんと美月は、嶋さんをその杖で切り裂いた!
『フフフウ・・・ハハハハハハハッ!!!』
・・・その声は、美月のものではない。

『まさか、美月君・・・。カテゴリーAに、取り込まれてしまったのか・・!!』
『マッテイロ。カテゴリーK。スグニ奴ヲ封印シテヤル。』
『美月君ッ!!』

『ぬ、ぬうう・・・。』
よろよろと立ち上がるイーグルアンデッド。
『イヤアアアッ!!』

ジャギィンッ!!

『うおおおおあっ!!?』

先ほどかわされた一撃も、今度は完全にアンデッドの胸を捉える!
『ハアッ!!』
杖の刃の反対側、ラウザー部分でその喉を突く!
さらにケリを叩き込み、間合いを広げる・・・
『ゲホッ!君は・・・。本当にさっきの人間か!?』
『違ウナ・・・。』
『な、何・・・!?』
『俺ハレンゲル。・・・最強ノ仮面ライダー・・・ダ。』

『何だと・・・!?』


『BITE』

レンゲルはカードをラウズする。
『ハアアアアアア・・・・。』
『ヌウウウウウアアアアアアアアッ!!!!』

飛び上がったレンゲルは、その両足を挟み込むように振りぬいた!!

バキィィィィッ!!

『う、うああああああああああああああああああっ!!!』

ドゴアアアアアアアアアアンッ!!!

『美月君・・・・。』
嶋さんが見つめる先、レンゲルはカードを投げつけ、イーグルアンデッドを封印した。
手に入ったのは、彼女らの求めるスペードのカテゴリーJ、だったのだが・・・・。

『次ハ貴様ダ。カテゴリーK。』
『美月君・・・・。いや、カテゴリーA。やはりこうなってしまったのか。』
『コノ女ガ何ヲシヨウト無駄ダ。人間ガ俺ノ支配カラ逃レル事ハ出来ナイ。』
『そうかな・・・・?人間の心を甘く見てはいけないよ。カテゴリーA。』
『ホザケ・・・!ウッ!!』
『なんだ・・!?』
突然苦しみだすレンゲル。
『ウウウウ・・・・貴様ハ・・・俺ノモノダ・・!!』
(いや、アンデッドになんてなりたくない、剣崎さんに会えなくなるなんて、いやだ・・・!!)
『美月君の声が聞こえる・・・。』
受けたダメージが浅かったせいか、美月の心の影響力がまだ大きいようだ。
『彼女は、まだ負けてはいない・・・!』




1.剣崎君の、彼の声を聞かせよう。コレで彼女の心が取り戻せるはずだ。
2.・・・・仕方ない。私を封印させよう。その後は、私と奴との勝負だ。
3.こうなれば、カテゴリーJのカードだけでも手に入れなければ・・・!



第46回「奪われた戦う資格」



「美月君・・・・。この声を、この声を聞いてくれ。」
嶋さんは人間態へと変わり、カテゴリーAに支配されたレンゲルに、指に集めた風の声を聞かせる。

『う、う・・・・・・・・。』
(美月ちゃん・・・。俺、君がすごく心配だ。君には、闘ってほしくない。)
(俺が守ってあげるから。君はかわいい後輩だから。)
(だから、また一緒に・・・・・・・)

「剣崎・・・・・さん。」
ガクッと膝を突く。
『バ、バカナ・・・・・・・・・・!!』
カテゴリーAの意識が弱くなっていく。
フィールドが飛び出し、レンゲルの変身はとかれる。

「ふう・・・・・・。」
一息つく嶋さん。
「正気を取り戻したようだね。美月君。」
「し、嶋さん・・・。今のは・・・・・・?アンデッドの声が聞こえて、剣崎さんの声が聞こえて・・・・。」
「うん。剣崎君の心の声を、風に乗せたものだ。今の声が、剣崎君の君への気持ち・・・というわけだ。」
「そう、ですか・・・・。」
(かわいい、後輩、なんだ・・・・・・。)
「今はカテゴリーAの力は弱まっているが、コレは一時的なものだ。次また今のようなことがあれば、どうなるか分からない。」
「はい・・・・。」

「美月君。君は、未だ自分が戦う理由が見つからないようだね。」
BOARDへと帰還する二人。
「はい・・・・。あのアンデッドと戦った時、私、恐ろしくて、何も出来なくて・・・・。」
「それは、君を支える確固たる想いがないからだよ。想い、心。それらなくして、アンデッドと戦う事はできない。」
「でも、私には・・・・。」
「美月君。人は誰でも、戦士へと変わる瞬間がある。」
「戦士へと・・・・変わる瞬間?」
「そう。君も戦いを決意する時が必ずやって来る。私も、出来るだけの事をしよう。」
「はい・・・・。」
それでもうなだれる美月。
「さあ、下をうつむいてばかりじゃ、せっかくのかわいい子が台無しだよ?」
「かっ!かわいいだなんて、そんな・・・・。」
「少しは元気が出たかな?ふふ。では、剣崎君たちも帰っているはずだ。帰ろう。美月君。」
「は・・・はい!」


『チュン、チチ・・・・。』
「ただいま。ナチュラル。」
所長室に下げられた鳥かごに入ったカナリヤ。
それは嶋さんの飼うカナリヤ。名をナチュラルと言った。
「ナチュラルって言うんですか?嶋さん。」
「そうだよ。さあナチュラル。美月君に挨拶だ。」
『チチチ・・・。』
「わあ、こっち向きました!かわいい〜・・・。」


「美月君は、すっかり嶋君になついたようだね。」
「ああ。ああいう平和な姿こそ、我々の守るものかもしれないな。」
「はい。なんだか、嬉しくなってきますね。美月ちゃんを見ていると。」

・・・・・・・・・・・・。

「・・・・所長。広瀬さん。剣崎君ッ!!」

ダンッ!!

「「「ッ!!!!!!」」」
思いっきり机を叩く橘さん。
「報告、したいんですけど。」
「あ、ああ。すまない。」
「まったく、男って奴は・・・・。」


・・・・。

「そうか。無事二人はジャックフォームに変身出来る様になったようだね。」
「はい。あとは、カテゴリーKを倒すだけですね!」
「うむ、・・・・そのことなんだが・・・・。」
なんだか、烏丸主任の様子がおかしい。
「どうしたんですか?」
「うむ。実は、カテゴリーK討伐について、天王路さんが推薦する人物がいてな。」
広瀬さんが続く。
「大変言いにくいんだがね・・・。剣崎くん、キング討伐には君をはずし、その人物を入れろといってきているんだ。」
「そんな!そんなバカな!誰なんですか、その人物って!」

「わたしだよ。」

ガチャ・・・・。

所長室の戸が開く。
そこに立っていたのは、オレの良く知る人物だった。
「新名、さん・・・・・。」
「久しぶりだな。剣崎君。」
「アンデッドハンターのあなたが、天王路さんの推薦する人物ですって・・・?」
橘さんが詰め寄る。
「橘君。私はもう、アンデッドハンターではないよ。」
そういうと、すっとその懐から何かを取り出す。
「!!!」
「そ、それは・・・!!!」
・・・それは、紛れもなく仮面ライダーのベルトだった。
しかも、あの桐生さんの持っていたベルトに良く似た・・・。
「・・・彼はね、人工仮面ライダーの被験者に志願したんだ。」
「人工・・・・仮面ライダー。」
「BOARDは・・・既にそんなことまで!」
「そういうことだ。」
「で、でも!新名さんはまだなり立ててで、アンデッドと戦うことなんて・・・!!」
そこで美月ちゃんが割って入る。
「美月君。君も今日の出動でアンデッドを封印したようだが・・・。」

ぴっ、とカードを机に放る新名さん。

「こ、これは!!」
そこには、3枚のラウズカード。
しかもそのうち2枚は、上級アンデッドのカード!
その内容は、ワイルドベスタの8、J、Qだった。
「・・・信じられない。」
「たった、一人で・・・・。」
「それは君たちが使いたまえ。私にはこの一枚で十分だ。」
そういって、三つ首の犬の絵が描かれたカードを見せた。

「・・・・剣崎。最近のお前は負けが続いていた。もちろん私はそんなことは責めてはいない。アンデッドとの戦いが、どんなに恐ろしいものか。」
「私は良く分かっているつもりだ。」
「・・・それで、彼を下ろすって言うんですか!」
「天王路さんの求めるものは、速やかな全てのアンデッドの封印だ。」
新名さんが、オレを見る。
「剣崎君。きみはそのかわいらしい後輩の面倒を見ていればいい。カテゴリーKを封印するのは、私と、橘君だ。」
「そんな、そんな・・・・!!!」
「納得するわけないでしょうッ!!剣崎君とは、私はずっと一緒にやってきた。私達は最強のコンビなんだからッ!!」
「・・・・・橘君。これは、BOARD最高意思の決定だ。・・・やり方はどうかと思うが、目指すものは我々と同じだ。」
「天王路さんは、より安全で、確実な方法をとろうとしているんだ。剣崎君。理解して欲しい。こんなところで、意地を張ってもしょうがないだろう?」

「う・・く・・・・・・・・・!!!」



1.いやだ!俺は納得できない!新名さん、俺と、俺と勝負してください!!
2.納得できるもんか。橘さんを誘って、こっそりカテゴリーKの元へ向かう。
3.悔しいけど、新名さんの力は本物だ・・・。・・・・そう認めたら、あの人に、会いたくなった。
4.分かりました・・・。美月ちゃん、・・・・行こう。



第47回「侵入決行・先輩の部屋」



夜・・・。
それも深夜。BOARD内の研究員も、そのほとんどが眠りに就いた頃・・・。
俺は、行動を開始する。
忍び足で廊下を歩き、侵入する女子寮。

・・・・・・・・い、いや、違うぞ!
俺は別に、下着盗もうとか夜這いしようとか考えてるんじゃないからな!
・・・誰への言い訳なんだよ・・・・。



こん、こん・・・。

あまり音が出ないように、慎重にノックする。
(橘さん・・・。俺です。剣崎です。)
小声でドアにささやく。
(け、剣崎君!?・・・・・そっか。よし。入って。私も準備は出来てるから。)
・・・・さすが橘さん。
俺が、こっそりアンデッドを倒しに行くって、見抜いてたのか。

かちっ。

鍵がはずされる。
俺は音が出ないように、慎重に橘さんの部屋に身を隠した。
「って、ぶううううううううううううううううっ!!!」
ドアをくぐり、部屋を振り向いた時、目に飛び込んできたのは、
バスタオル一枚の、橘さんのまぶしい肢体だった・・・。

「な、な、な、なんて格好してるんですか!橘さん!!」
「なにって・・・・。ちょうどシャワーから出たところよ。」
「俺が来たことで、急いで着替えるとか考えなかったんですか!?」
「え、だって・・・。ふふぅ。剣崎君、私を襲いに来たんでしょ?」
な、何てこと考えてんだーッ!!!
「ち、ちちちちちち違いますよ!!俺はそんな事でここに来たんじゃ・・・・。」
「うふふ。かわいい。剣崎君。・・・・・・わかってるわよ。ちょっとからかっただけ。」
急に真面目な顔になる。

「カテゴリーKを倒しに行くんでしょ?・・・・納得できるはずないもんね。あんな言い方されて。」
「私も、納得できない。こんな一方的なことって、ないもの。」
「行きましょう、剣崎君。私達最強の仮面ライダーコンビの力、あいつに見せ付けてやりましょう!」
「・・・って、何であっち向いてるの。人の話、ちゃんと聞きなさい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、早く服着てくださいよ!!!」
「あ。ごめんごめん。今すぐ着替えるから、ちょっと待っててね〜。」
まったく・・・。

ぱさ・・・。

「!!!」
今のは、バスタオルが落ちた音か!!?
つう事は今は橘さんは・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。
「もういいわよ。」
「は、はいぃ!!」
振り返ると、いつも通りの出で立ちの橘さんがいた。
「?どうしたの?顔、まっかっかよ?」
「いえ・・・・。」
・・・振り向くべきだったと、激しく後悔する俺がいる・・・。
「さあ。いきましょう!」
「はい・・・・。」
うう。それもコレも橘さんが、あんな体してるのが悪いんだぁ!
・・・むちゃくちゃ言ってるな・・・。


ガレージにたどり着き、こっそりと俺達のバイクを持ち出す。
「敷地を出るまでバイクは引いて行きましょう。それから、ライトも敷地を出てから。」
「はい・・・・・。」

無事敷地を出ると、俺達はバイクにまたがり、走り出す。
「ポータブルアンデッドサーチャー、持った?」
「はい!」
「反応パターンをカテゴリーKに限定して・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」

ぴーっ、ぴーっ。

「反応した!」
「でも・・・これは!」
画面の中の、アンデッドの反応を示す地点は・・・二つ。
「嶋さんじゃないよな・・・。」
「ええ。・・・と言うことは。」
「どっちかが、まだ見ぬ未知のカテゴリーK・・・・。」
「どうしますか!?」
「・・・・・やっちゃいましょう。明日になれば、私とあいつが組まされる。チャンスは今夜だけよ!」
「でも、どうすればいいのか・・・!」
「二手に分かれるか、二人で同じ場所に行くか・・・。それは剣崎君に任せるわ。」
「それしかないですよね。・・・・・・・・。」
「別れる場合、返り討ちにあう可能性が高いわ・・・。必ず、無理せず逃げ出すか、お互いを呼ぶかすること。」
「はい。」
「一つは海辺、一つは森の中みたいよ。さあ、どうする?」




1.二手に分かれ、海は俺、森は橘さん。
2.二手に分かれ、海は橘さん、森は俺。
3.二人で海に向かう。
4.二人で森に向かう。




第48回「森の少年」





「二人は、やはり出かけたようだね。」
「うむ。奴ららしいな。広瀬君。」
所長室の窓から、剣崎と橘がこっそりBOARDを抜け出す場面を、しっかり見ている所長コンビ。
「・・・嶋君。頼めるかね?」
入り口に控えていた嶋さんに、烏丸主任は声をかける。
「承知したよ。彼らも、若いね・・・。」
そういうと、ふっとこの場から消える嶋さん。
「剣崎、橘・・・。お前たちのこの命令違反は、結果をもってしか償えないぞ・・・・。」
「いや、負けたっていいさ。生きてさえいれば、ね。」
「そうだな。生きていればチャンスはいくらでもある・・・・。」



反応をおって、森の中へとやってきた。
「どこだ・・・。カテゴリーK・・・。」
懐中電灯を照らし、夜の森を捜索する。
聞こえる物音と言えば、虫の声、鳥の声。そしてオレの草の根を分ける音ぐらい。
・・・なんだ。けっこう騒々しいな。
がさがさと歩き続け、やがて開けた場所に出た。

木々に囲まれた、丈の短い草の広場。
月の光がちょうど当たり、電灯がなくても一望できる。
・・・・そして、そこに人がいた。

確認するまでもない。こんな時間にこんな場所にいるなんて、普通じゃない。
カテゴリーK捜索用に設定されたサーチャーも、奴を示す。
何より決定的なのが、その横にもう一体、下級アンデッドをつれていると言うこと―――

少年の姿をしたそれは、そのアンデッドと共に、この森を抜けようと歩いていたようだった。
「あれ。こんなところで人に会うなんて。」
少年に見つかる。
それもそうだ。この見晴らしのいい広場に、足を踏み入れてしまったのだから。
「いやあ助かったよ。道に迷っちゃってさぁ・・・。」
気さくに話しかけてくるカテゴリーK。
「街まで案内してくれよ。・・・・仮面ライダー。」
「・・・!!」
向こうも、オレの正体に気がついている、か・・・。
そうだな。お互い、普通じゃない。

「・・・・・・・・・・。」
ベルトに手をかけようとする。
「アレ、やる気?・・・あいにくこっちは今そんな気分じゃないんだ。早くこんなところから、街に出たいんだよ。」
「俺と戦う気は、ないって言うのか?」
「そうだよ。それに、僕と戦っても、絶対に勝てないよ。誰も僕に傷をつけることは出来ない。」
「・・・・・・・・。」
今こいつを街に解き放てば、どんな被害が出るか分からない。
でも、今戦うべきはこいつじゃない。
既に街に入り込んでいるはずの、あの赤いアンデッドだ。

・・・時間もない。
俺は、彼を街まで案内することにした。
戦うよりも、この方が早く橘さんの元へいける。
「・・・分かった。案内してやる。でも、街で暴れるなよ。少なくとも、もう一度俺と会うまでは。」
無駄だと思うが、そう念を押す。
「そのときに決着をつけようってわけだ。・・・いいよ。それくらい。どうせ暴れる気はないしね・・・。」
・・・どこまで信用できるのか。
とにかく俺は、その少年とアンデッドを連れて、森を抜けようと歩き出した。


「ねえねえ。」
歩いている途中、気軽に肩を叩いてくる少年。
「なんだよ。」
「君はなんていうのさ?あ、僕はキングって言うんだ。最強って意味でね。」
名前を、聞こうっていうのか?
「・・・俺は、剣崎 一真だ。」
「へえ。一真か。かっこいい名前じゃん。」
「別に。」
「そうとんがるなって。今は戦ってるわけじゃないしさ。」
・・・なれなれしい奴だな。

「一真。僕はね。アンデッド同士の戦いに、興味はないんだよ。」
「・・・・え?」
「だって馬鹿らしいじゃないか。僕らアンデッドが種族の運命をかけて戦っているっていうのに、君達人間は何も知らずに暮らしている。」
「だから、僕はこの戦いをメチャクチャにしてやりたいんだ。アンデッド、人間、全て関係なく、ね。」
「メチャクチャに・・・・?」
「そうさ。僕はただ、どっちも滅びていくさまが見てみたい。それだけなんだよ。」
「そんな・・・そんなことはさせない。俺は、人間を守って見せる!」
「お。勇ましいなぁ。・・・・君との勝負。楽しみだよ。」
二カッと、無邪気な笑顔を見せるキング。
・・・なんだか、調子狂うなぁ。こいつ・・・。


森の外に出る。
「おお、出た出た!サンキュ。一真。」
「いいか。暴れるんじゃないぞ。」
俺は出口に止めてあったブルースペイダーにまたがり、すぐに橘さんの元へ行こうとする。
「待ってよ。一真は今からどこに行くんだ?」
「・・・なんだよお前。そんな事聞いて、どうするんだ?」
「外への案内の礼がてら、ちょっと付き合ってやろうと思ってね。」
「なに!?」
「仮面ライダーの向かう先、アンデッドありだろ?急いでいる様子を見ると、仲間がもう戦ってるんだ。それも、相手は大物。」
「どう?違う?」
「・・・・ああ。そのとおりだよ。」
「だったらさ。僕も連れてってよ。案内分くらいは、働いてやるからさ!」
「な、なんだって!?」

・・なんてことだ。
こいつは、一時的にだがオレの味方をしてくれるらしい。
「さ、どうする?僕はどっちでも構わないけど?」




1.・・・だめだ。やっぱり信用できない。この場においていく。
2.わかった。戦力は少しでも多いほうがいい。後ろに乗れよ。




第49回『波打ち際の少女』




Jフォーム二人がかりでも、あいつには、勝てないかもしれない・・・。
ちょっと癪だけど、こいつの力を借りよう。
「分かった、つれてくよ。その代わり変なこと考えるなよ?後ろからぶっ刺そうとか・・・。」
「そんな事しないしないって!サンキュ、一真!」
よいしょっと後部座席にまたがるキング。
ヘルメットを渡すと、素直にそれをかぶった。
「お〜!僕バイクって初めてなんだよね!早く行こうよ!仲間が待ってるんだろ?」
「分かってるよ!急かすなって!」

俺がブルースペイダーのエンジンを入れたとき、思い出したようにキングは振り返った。
「お前は、後から来い。僕の居場所、分かるよな?」
金色のアンデッドは、無言で頷く。
「よしよし。いい子だ。慌てなくていいからな。」
「いいか?いくぞ?」
確認を取る。
「ごー!!」
キングの元気のいい掛け声と共に、俺はバイクをスタートさせる。
先ほどのサーチャーの反応を元に、橘さんの元へ!



「あちゃ、参ったなぁ・・・。反応がなくなっちゃった・・・。」
途中までは確かにカテゴリーKの反応が出ていたのに、現場に着いたころには、その影は見当たらなくなっていて・・・。
「あー。こんなことなら剣崎くんに、カテゴリーKの人間態の特徴、聞いて置けばよかったなぁ・・・。」
海辺。岩がその波で削られた、険しい地形だ。崖もある。

「こんなとこから落ちたら、助からないだろうなぁ・・・。」
下を見下ろし、身震いする。
「人影はないし、こんなとこから離れようっと。」

崖から離れ、砂浜に向かって歩く。
「誰かいないかなぁ〜・・・。」
・・・と、そこに、

「♪」
月の光に照らされて、波打ち際で遊ぶ小さな少女の姿が。
「・・・あら。こんな時間に女の子が一人?迷子かな。」
さくらは、その頭に大きなリボンのゆれる少女に近寄っていく。

「ねえお嬢ちゃん。こんなところで、一人でどうしたの?」
優しく声をかけるさくら。
「ん?あのね。わたし、おにーちゃんを待ってるの。」
「おにーちゃん?お嬢ちゃんの、お兄ちゃん?」
「ねえ。お嬢ちゃんってやめて。わたしには、緋芽(ひめ)って名前があるの。」
ぷうと頬を膨らませる女の子。
「あ、あは、ごめんね。えっと、緋芽ちゃん?どうしておにーちゃんを待ってるの?はぐれちゃったの?」
「ううん。今夜、おにーちゃんが来るような気がしたから。私は待ってるの。」
「え?約束もしてないってこと?」
「うん。でも、きっと来てくれる。私、信じてるから。」
「緋芽ちゃん・・・。」

砂浜で、二人は並んで座っていた。
さくらも、その少女の一途な思いに打たれたのか、一緒に待ってあげることにしたのだ。
(アンデッド退治も大事だけど、この子、放っておけないし・・・。)
「あのね。おにーちゃんにはね、恋人がいるの。」
「え?そうなんだ。」
「でもね。二人は決して結ばれることはないんだよ。」
「まぁ、悲恋よねぇ・・・。でも、どうして?」
「・・・・・・・。」
さくらの質問には答えず、そのまま話を続ける少女。

「おにーちゃんだけが、そのことを分かってないの。だからね、私が教えてあげるの。あの人とは、ダメだって。」
「ふぅん・・・。緋芽ちゃんは、おにーちゃんが好きなの?」
「好き・・・・・?わかんない。」
「あはは。まだ子供だもんね。」
そういって、頭をよしよしとなでる。
気持ちよさそうに目を細める緋芽ちゃん。

「ねえ。おねぇちゃん。」
不意に彼女が声をかける。
「ん?何?」
「おねぇちゃんは、人を探してるんだよね?」
「・・・・ええ。そうよ。」
「そっか。・・・ねえ。」
「なに?」
「わたし、おねぇちゃんみたいな人が、おにーちゃんの彼女だったら良かったのにって、思う。」
「そう?どうして?」
「だって、優しくて、あったかくて。お母さんって、よく分からないけど、きっとおねぇちゃんみたいな人なんだって思った。」
「緋芽ちゃん・・・・。」
「だから。ごめんね。おねぇちゃん。」

「え・・・・・・・・?」

ドスッ!!

「あ・・・・・・・・・・・・。」
脇腹に、冷たい感触が走った。
「緋芽・・・・・、ちゃん・・・・・?」
何がどうなっているのか。
みればその少女の右腕が、鋭利な刃物に変わり自らの脇腹を突き刺している。
ずぶりとそれは引き抜かれ、そこから赤い血があふれ出た。
その場に崩れ落ちる・・・橘さくら。

「何・・・を・・・。」
「ゴメンナサイ。おねぇちゃん・・・。」
そう頭を下げると、彼女はさくらの目の前で、異形へと変わった
『おねぇちゃんは、仮面ライダー。・・・私を、封印するんでしょ?だから、刺したの。』
「ひ、緋芽ちゃ・・・ん・・・・。」
『おねぇちゃんとは戦いたくない。だから一突きに殺そうって思ったの。』
「ぐぐ・・・・・。」
油断・・・。まさか、アンデッドが少女の姿をしているなんて、思いもよらなかった。
不用意に心を許した、自分の過ち・・・。
押さえる手から、血は止まらない。
だんだん、意識が遠くなっていく・・・。

『おねぇちゃん。サヨナラ・・・・・・。』
彼女はその鎌となった腕を振り上げ、その首に向かって振り下ろした・・!!



『待ちたまえッ!!』
その時、一陣の風が砂浜に吹いた。
『っ!!?』

風の吹いた先・・。
そこにはもう一人のカテゴリーKがいた。
『あなた、また邪魔をするの?』
『その子は殺させないよ。』
『ハアアアッ!!』
『キャッ!!?』
嶋さん・・・タランチュラアンデッドの手から放たれた竜巻は、カテゴリーKだけを弾き飛ばす・・!!
『橘君!!』
急いで駆け寄る嶋さん。
「ハァ、ハァ・・・・。」
『出血がひどい・・・。はやく治療を受けさせなくては!』
嶋さんは糸を吐き出し、患部の血を止める。
『コレでしばらくはもつだろう・・・。』

『だめよ・・・。おねぇちゃんを連れて行かないで。』
ゆっくりと戻ってくるカテゴリーK・・・。パラドキサアンデッド。
『君に、彼女をやらせはしない。』




「なんだ!!?」
現場近くへと迫ったとき、サーチャーに変化が・・!!
「お、どうしたのさ一真?」
「カテゴリーKが、二人いるんだ!」
「へえ・・・・。誰かな。会うのも久しぶりだな。」
「懐かしがってる場合か!それに、ギャレンに変身した様子もない・・・。どうなってるんだ!」
「お、見えてきたよ一真。あれなんじゃない?」
キングの指差す先。
そこにはアンデッドが二体。
そして、アンデッドに抱かれる人影が・・・!
「橘さん!?橘さんッ!!!!」

その声に、さくらはぴくりと反応した。
「剣・・・崎・・・・君・・・・・・・・?」
『剣崎・・・・?剣崎君!!』

ずざざざあああああああっ!!!

乱暴に車体を捻りブレーキをかける。
「わたたたたたたっ!ばか、ふり落とされるとこだろ!」
「橘さん!!」
キングの言葉には耳も貸さず、橘さんを抱えるアンデッドの元へ走る。
「剣崎君!」
オレの姿を見て、人間態に戻る嶋さん。
「嶋さん!橘さんは!橘さんは!?」
「・・・見てのとおりだ。すまない。私がもっと早く追いついていれば・・・。」
何でここに嶋さんが向かっていたのか、そんなの後で考える!
「橘さん!橘さん!!」
「けんざきくん・・・・。ごめん・・・どじっちゃった・・・。」
「橘さん・・・・。」

キッと、俺はあの赤いアンデッドを睨んだ。
『おにーちゃん・・・。』
「許さない・・・許さないぞ!オレの大切な人を、傷つけやがって!!!!!!」
『大切な・・・・人?』

懐からベルトを取り出し、カードを挿入する。
アンデッドの命を得、ベルトはカードを吐き出しながらオレの周りを飛び回り、オレの腰へと定着する。
起動音が鳴る。俺は右手をかざし、その言葉を吐いた。

「変身!!」

『TURN UP』

目の前に現れる変身のフィールド。
俺はそれにゆっくりと歩み寄り、仮面ライダーブレイドへと「変身」した。
『おにーちゃん、あなたじゃ私に勝てないよ。分かってるでしょ?』
赤いアンデッドの言葉。
「勝つか・・・。負けるかじゃない。」
左腕に装備された、ラウズアブゾーバーを展開させる。
「オレの大切な人を傷つけたお前を、俺は絶対に許せない。だから戦う。・・・それだけだ!」

『ABSORB QUEEN』
クイーンのカードをアブゾーバーの中央に挿入、
『FUSION JACK』
そして、カテゴリーJを入力する・・!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

ベルトからカテゴリーJの紋章、黄金の鷲が飛び出し、俺の身体に融合していく!
仮面の中央には黄金のスペードマークが、胸には黄金の装甲、腹に鷲の紋章、ブレイラウザーも大型に強化する。
そしてその背に、白銀の翼を抱く・・・。
コレが、ジャックフォーム!オレの、新しい力!!

『そっか。それのおかげでもう一度戦う気になったんだね。でも。所詮はカテゴリーJの力。キングである私には勝てないよ。』
「いったはずだ。勝つか負けるかじゃないって・・・・・。」

「剣崎君・・・。」
「おおっ!カッコいいじゃん!融合の瞬間、ばっちりカメラに収めた!」
それぞれの感想を漏らす二人。

「カテゴリー、K・・・。」
俺はふと振り返った。




1.二人は、橘さんを早く病院へ。こいつは・・・俺一人で倒す!
2.嶋さん、あなたは橘さんを。キング。約束、果たしてくれ・・・!
3.こいつは、絶対に許せない・・・!!橘さんは置いて、3人で、3人でこいつを!!




第50回「赤い少女の叫び」





「嶋さん!あなたは橘さんを!」
俺は嶋さんを振り返り、頭を下げた。
「剣崎君・・・。」
「お願いします!橘さんが死ぬなんて、俺には考えられない。お願いします、お願いします!!」
「・・・分かった。確かに任されたよ。」
そういうと、嶋さんは橘さんをぐっと抱き上げ、その場から去っていく。

『おねぇちゃん・・・・。』
「さあ、コレで決着をつけてやる!!」
橘さんの仇を前に、鼻息の荒い俺。
そこへ、肩に手を置く少年が一人。
「!」
「一真。そんなに熱くなるなって。僕がいるんだ。負けるわけないだろ?」
「キング・・・。」

『あなた、カテゴリーK・・・。』
その姿を認めると、赤いアンデッドは人間態に戻る。
「キングって呼んでよ。僕が最強なんだから。」
「あなた、人間に下ったの?」
「・・・・まさか!これは義理って奴さ。一真にはちょっとした借りがあるんだ。」
「ま、一真も賢い選択したよね。最強の僕が、味方するんだからさ。 」

「ははは・・・・。いいなぁ。そうやって、割り切れて・・・・。」
キングの言葉に、泣きそうな表情を浮かべる彼女。
「お前・・・・?」

キッ!

「!!?」
彼女は一層強くオレを睨むと、再びアンデッド態に戻る。
右手には鎌を持ち、左手は鎌と一体化している。
三角の頭。真っ赤なその姿。カテゴリーK。パラドキサアンデッドがオレに牙を向く・・・!!

『おにーちゃん、あたしには理解できない。敵同士であるはずのアンデッドと仲良くしようとするおにーちゃんが。』
「・・・・カリスの事か?それともこのキングの事か?」
『どっちもだよ。人間とアンデッドは敵同士なのに。』
『・・・・なんでよッ!!』

ビュウッ!!

「!!」
投げつけられる右腕の鎌!

ガキィィンッ!!!

あわやオレに命中するかと思われたとき、オレの目の前に巨大な盾が出現し、それを弾いた!
鎌はその威力を相殺され、回転しながら彼方に消える。
「ふう、間一髪って奴?」
「今の・・・・お前か?」
「そ。感謝してよ。僕が手をかすんだ。一真が負けることは許さないよ。」
『・・・・。うあああああああっ!!!』

ダッ!

赤いアンデッドが駆け出した!
その左手の鎌を振るう!!
俺は今度は、その一撃にブレイラウザーを合わせる!

ガキィン!

ギリギリと力をこめる。
『おにーちゃんはいい加減だよ!おにーちゃんは人間の味方の仮面ライダーでしょ!?なんでアンデッドとも手をとろうとするの!?』
『仲良くなれるわけない、仲良くなったって、最後は戦わなきゃいけないんだよ!?それなら、初めから憎しみあっていればいいのに!!』
「別に俺はそんなつもりはない!ただ、戦わずに済むなら、それに越したことはない!」

俺はその鎌を力いっぱい弾くと、俺も奴に向かって間合いを詰め。剣を振り下ろす!
彼女も腕の武器を振るう!
二人の一撃は反発しあい、互いの武器は弾かれる。
が、それでも俺は剣から手を離さない。
『ハアッ!!』
奴の方が、返す一撃が一瞬早い!

ザギィン!

「ぐあ!」
ついにアンデッドの鎌がオレの胸を捉える!
・・・衝撃は前回ほどではない。これがジャックフォームの装甲か!
俺はそのまま剣を水平に振りぬく!

ザギィィン!!

『あうッ!!』
オレの一撃もまた、奴の腹を捕らえた!
「うおおおおおっ!!」
俺はそのままアンデッドに体当たりを食らわせる。
『うううっ!!?』
たたらを踏むアンデッド。
「ウェェェアッ!!」
その隙を突き、剣を突き出す!

ガキィン!!

まだだ、まだ終わらない!
「ウェイッ!!」
俺はそこから飛び上がると、空中で体を捻り奴の真上を通る。
『な、何!?』
その通りがかりざま、奴の頭、背中を二度切りつけた!

ザギィガキィン!!

『うぁぁぁぁぁうッ!!』
頭から落ちる格好になるが、受身を取りすばやく立ち上がった。
「おおお・・・。人間の仮面ライダーって言うのも、やるもんだねぇ。」
感嘆の声を上げるキング。
「よし、とどめだ!」
カードホルダーを展開させる。
カードを抜き取り、ラウズを・・・。

『はは・・・油断したねおにーちゃんっ!』
「なに!!?」
その時どこからか、先ほど弾き飛んだはずの鎌が戻ってきた!
「ええ!?」
俺もキングも反応できない。

ガキィィィンッ!!

「しまった!」
それはオレの剣に命中し、弾き飛ばしてしまった!
そして逆に、彼女の手には二本の鎌がそろう。
『ははは・・・。前回より健闘したけど、ここまでだね。おにーちゃん。』
「う・・・!」
今の俺は丸腰だ!
『おにーちゃんの死体を、あのお店にさらしてあげる。アンデッドと心を通わせようとした、報いだよ・・・!!」

ザギガギィィン!!

「うあああああっ!!!」
両手の鎌を水平に振り、オレの胸を切り裂く!
「一真!」
キングはアンデッド態に変身する。
その姿は黄金の鎧武者のようだった。
『動いちゃダメだよキング。あなたが動けば、あなたが手を貸すおにーちゃんが今すぐ死ぬことになるよ。』
が、アンデッドはそれに釘を刺し、手を出させない・・・!

『おにーちゃん、アンデッドと人間は分かり合えるはずがない。共存なんて無理なんだよ。』
「うう・・・・。」
俺は今の一撃で動けない。
『私達と人間は憎みあい戦いあう。コレは、運命なんだよ。おにーちゃん、どうして分からないの?』
「運命・・・・。」
「君は・・・。」

「本当は人間と仲良くしたいんじゃないのか!?」

『!!?』
オレのその言葉に動揺したのか、彼女は人間態へ戻った。
「何で、何でそんな事いうの・・・?私は、アンデッドで、おにーちゃんは・・・・」
「君はこうしてオレを殺そうとしているけど、君の言葉は、オレを心配しているように聞こえる!」
「うそ!そんな・・そんなことない!」

「僕にもそう聞こえるな。」
と、キング。
「キング!動くなって言ったでしょ!」
「それに、おにーちゃんにやきもち妬いてるようにも聞こえるな。アンデッドと仲良くするおにーちゃんに。」

「運命なんて言葉で片付けて、君は、自分の人間と仲良くしたいという気持ちを、封じこめようとしている!」
「君は言った。そう割り切れたらいいって。それはキングが羨ましかったんじゃないのか!?運命に縛られない、自由なキングが!」
「・・・・やめて!やめてよおっ!!」
俺とキングに攻め立てられ、彼女は頭をかかえてしゃがみ込む。

「戦わないで済むなら、俺はそれがいいって思ってる。君は・・・・。」
俺はそんな彼女に、そっと手を差し伸べた。
「わたしは・・・・おねぇちゃんを刺したんだよ。おにーちゃんの大切な人を、刺したんだよ。」
「!!」
「そんな私が、許されるわけない!カリスも、カリスも傷つけた!許されるわけないよ!!」
彼女はその叫びと共に、アンデッド態に戻る!

『わたしは、おねぇちゃんを殺すつもりだった!私と仲良くなろうとしたおねぇちゃんを!』
「なに・・・・!!?」
『わたしもおねぇちゃんが大好きになった・・・。でも、仲良くなってもどうしようもないもの!』
『だから刺したの!!私の敵になる、仮面ライダーであるおねぇちゃんを!』
『コレが運命なんだよ!!人間と、アンデッドの!!!』

ガキィィィン!!

「ぐああああ!!」
まだそれは終わらない。
感情に任せた滅多切りは、容赦なくオレの身体を切り裂く!
『だからおにーちゃんも、私の手にかかってよぉ!』
「ぐうう、う、あああああっ!!!」

『うおおおっ!!』

ガキィィィッ!!

『!!?』
その猛攻を、キングが割って入って止める。
『一真!剣を取れ!お前の剣を!!』
「キング・・・。」
キングは相手の鎌を受け止め、そのまま押し込み、赤いアンデッドを俺から引き剥がす。
『お前の、お前の思うままやれよ!』

「キング・・・・・・・。」
俺は決意を固めると、先ほど弾き飛ばされ、砂浜に突き刺さったブレイラウザーの元へ走る。
「・・・・・・・・。」
ずぼっと剣を引き抜き、ホルダーを展開させた。







1.彼女を・・・倒す。橘さんの心を踏みにじり、カリスを傷つけたこいつを、俺は・・・!!
2.俺には、出来ない・・・。たとえ橘さんを傷つけた相手でも。ただ彼女は、人間と仲良くしたかっただけなんだ。





第51回「人間とアンデッドの運命」





「うう・・・・・・・・。」
ぱさりとラウズカードを落とす。

『一真!?』
「俺には、出来ない。彼女は、倒せない・・・。」
ガクッと膝を突いた。
『・・・・そっか。お前がそう思うなら、そうすりゃいいさ。』
『おにーちゃん・・・。』

俺は変身を解き、剣を下ろした二人のアンデッドに近づいていく。
「君は、人間と仲良くしたいだけなんだろう?だったら、こんなことしてちゃいけない。」
『・・・・・!ち、違う!私は、アンデッドの運命に従っているだけ!』
「運命なんて、乗り越えればいい。俺は、ただ従えばいいなんて思わない。」
『だって、私はアンデッドだもの。人間が私を受け入れてくれるわけが・・・・。』
「さっきの、嶋さん。あの人は俺達人間の中で暮らしているよ。」
『・・・!』
「だからさ。君もきっと出来るよ。橘さんも分かってくれる。」
『おねぇ、ちゃん・・・・。』

「・・・・おにーちゃんは、私を許してくれるの?」
アンデッド態を解く少女。
「散々傷つけて、おねぇちゃんも傷つけて、カリスも傷つけた私を。」
・・・俺は、黙って頷いた。
「みんなが君の事を分かってくれなくても、俺は君を信じる。」
「・・・・どうして、どうして信じられるの?私は、アンデッドなんだよ?」
「君は、人間とアンデッドのあり方について、ずっと悩んでいたんだろう?悩んだり、苦しんだりするのって、それって人間じゃないか。」
「人間の心。きっと君は、それを持ってる。俺は、そう信じるよ。」
「お・・・・。」
「おにーちゃんっ!!」
オレに泣きついてくる彼女。
俺は、彼女の頭を優しくなでてあげた。


「やれやれ。こういうのが人間って訳か。」
肩をすくめるキング。
「・・・なんだよ。」
「いや。別に。でも一真・・・・。それでいいのかい?」
「どういう意味だ。」
「今は良くても、いつかきっと、アンデッドと人間は戦う時が来る。その運命と、一真は戦える?」
「・・・・・・ああ。俺は運命と戦う。決して負けはしない。」
「ん。一真の決意。確かに聞いた。じゃ、僕はそれがどこまで続くか、見物させてもらうよ。」
「キング・・・・・・?」
そういい残すと、彼は背を向け、去っていく。

「世の中つまらないって思ってたけど。へへ。楽しみが出来たな。」



「ぐす、ぐす・・・・。」
ようやく落ち着いた彼女。
「もう大丈夫?」
「う・・・・うん。」
「よし、じゃあ行こう。烏丸主任や広瀬さんには、俺が話してあげるから。」
「うん・・・・。でも、なんか怖い。」
「大丈夫だって。人間の暮らしが落ち着いたら、美味しいオムレツを食べさせてくれるお店につれてってあげるから。」
「それって・・・・。カリ、あ、いや、おにーちゃんの彼女がいる店だよね?」
「あ、そっか。君とはそこで・・・・。」
「ううん。おにーちゃんが連れてってくれるなら、わたしはどこでも嬉しい。」
「そっか!じゃあ、きみの住む寮とか決まったら、一緒に行こう。君には、人間をもっと好きになって欲しい。」
「うん。おにーちゃん・・・・。」

俺は彼女の手を取り、バイクの後部座席に乗せようとした・・・・。




ドスッ!!!

「え?」
彼女の腹から、何か棒が生えている。
緑の血しぶきが、オレの顔へ飛んだ。
・・・彼女は一瞬微笑むと、その場に倒れた。
まるで、糸の切れた人形のように。
「き、君・・・・・・?」

ヒュウッ!!

「!?」
俺が彼女に手を触れようとしたとき、どこかからカードが飛んできた!
「や、やめろ!!!」
カードは彼女に刺さると、その姿を吸い込み、封印していく。

『サヨナラ・・・・・。』
・・・・彼女の口が、そう動いた気がした。

すっかり彼女を封印すると、カードはその投げた主の元へと戻る。
「誰だ!!誰なんだ!!!」
俺はそれを目で追った。

「・・・・・・・。」

「あ、あなたは・・!!!」
「ご苦労様。剣崎君。おかげで楽にカテゴリーKを封印できたよ。」
それは黒い仰々しいバイクにまたがる、緑色の仮面ライダー。
その仮面には、大きくAの文字が・・・。
「新名・・・・さん?」
「そう。君達が抜け出したと烏丸主任から聞いてね。後から追ってきたのさ。」
右手にもったカテゴリーKのカードを、誇らしげに見せる新名さん。
ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる・・・・。
「なんで・・・・なんで彼女を封印したんですか!!」
俺はそう叫ばずにはいられなかった。
「何故って・・・?アレはアンデッドだったんだろう。君もそのつもりで研究所を抜け出したんじゃないのか?」
「そ!それは・・・・。」

「剣崎君。君は、そして私は、人間の平和を守る仮面ライダーだ。」
「一刻も早く全てのアンデッドを封印し、平和を取り戻す。それが我々の使命だろう?」

・・・・正論だ。本当に。俺も、そう思って仮面ライダーになった。
でも、でも・・・・・・・・・。

「私が所長達に口を聞いてあげるから。それで今回の君の事はお咎めなしになるはずさ。」
「新名さん・・・。」
「コレを見れば、天王路さんも文句は言えない。」
ワイルドベスタの、エヴォリューションキング。
・・・彼女のカード。

「・・・・夜が明ける。早く戻ろう。剣崎君。ゆっくり休むといい。」
新名さんは彼女を殺めた槍を携えると、黒いバイクにまたがり、去っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「彼女を、守れなかった・・・。」
「名前も、分からなかった・・・・・。」
彼女のぬくもりが残るこの手を見つめ、俺は朝日の中にたたずんでいた。




1.・・・無事カテゴリーKは封印できたんだ。見舞いがてら、橘さんに報告しよう。
2.そういえば、ずっと始穂さんに会ってない。顔、見たいな・・・。
3.今は美月ちゃんの顔は見たくない。あの無邪気な笑顔。・・・どうしても彼女を思い出してしまう。
4.一菜とすごそう。難しいこと、忘れられそうだ。
5.気持ちがまとまらない。・・・一人で、街に出る。



第52回「”ジョーカー”」




新名さんの言ったとおり、俺と橘さんへの責任の追及は、軽いもので済んだ。
でも俺は、あのカテゴリーKの少女を救えなかったことを、ずっと悔やんでいた・・・。

「はぁ・・・・。」
一人部屋で溜息をつく。

こんこん。

・・・・?
ドアにノック。
お客さん?
「おにーさん、いますか?」
・・・一菜?
「ああ。入っていいよ。一菜。」
「はいっ。ではお邪魔します・・・。」
そっとドアを開き、部屋に入る一菜。
「どうしたんだ一菜?いきなり。」
「おにーさん、最近元気がありません。流石に心配になりまして。」
・・・そっか。一菜にも心配かけてたのか。
「すまない。かず・・・・。」
「そこで!私はおにーさんに、始穂さんと会うことを提案します!」
「・・・・・・・へ?」
人差し指をピンと立て、ずずずずいっと迫る一菜。

「元気がない時。そういう時は、彼女に慰めてもらうのが一番です!らぶらぶな雰囲気になれば、悩みも吹っ飛ぶことでしょう!」
「・・・・・・は。」
こいつ、まだそんなこと・・・・。
「・・・・・・・。」
でも、実際俺は、彼女に会いたい。・・・会えば、何か少しは変わるかもしれない。
「こんなところでじっとしてるより、ずっとましだと思いませんか?」
・・・・そうだな。一菜の言うとおりだ。
「分かったよ一菜。俺、始穂さんに会ってくる。」
「はい!いってらっしゃい!」
一菜は笑顔でオレに小さく手を振る。
「はは・・・。いってきます!」
俺は忘れずにベルトを手にすると、ガレージへと向かった。

並ぶ仮面ライダーのマシン。
オレのブルースペイダー、橘さんのレッドランバス。美月ちゃん、レンゲル用に開発されたグリンクローバー。そして・・・・。
見慣れない黒いマシン。
「コレが、ブラックファング・・・・。」
BOARDのアンデッド襲撃の時に破壊された、従来のライダーのバイクを超えるべく作られたマシン。
それが、完成していたのだ。
烏丸主任の話だと、こいつもラウズカードシステムを搭載しているらしい。
そして新名さんという主人を得、こいつは名実共に仮面ライダーのマシンとなった。
一時は、こいつの完成のために、俺も頑張っていた時があったが・・・・。
・・・・今はこのマシンが、とても恐ろしい。禍々しく見える。
何故そう思うのかは分からないが・・・。

・・・・いこう。いつまでも悩んでいるから、こんなこと考えるんだ。
俺は愛車、ブルースペイダーにまたがると、ガレージを出た。



「いらっしゃいませ〜。」
「こんにちは。」
「あ、剣崎君。」
いつものとおり、ハカランダの主人、春花さんがオレを出迎えた。
「あ〜っ!もう、剣崎さん、このごろ何やってたのよ!」
「ええ?」
この店の子・天乃ちゃんが、なんだか怒った様子でオレに詰め寄ってくる。
「今、始穂さんは大変なのよ!」
「ええ!?大変って、一体どうしたの!!?」

「最後に剣崎君が店に来た日、覚えてる?始穂さんにプレゼントした時。」
春花さんが話に加わる。
「あ、ああ。ええ・・・・。」
ああ。思い出すだけで恥ずかしい・・・。
「あのあと、始穂さんも店から出て、それで帰ってくるなりそこで倒れちゃったのよ!」
「倒れた!!?始穂さんが!?」
「もう!それでも始穂さんの彼氏!?こんなことも知らないなんて、彼氏失格なんだから!」
「だ、だってさ天乃ちゃん。俺も仕事が忙しくって・・・・。」
「・・・って言うか、そんな彼氏彼氏言わないでよ。」
まだ決まったわけじゃないし・・・・。

「もういい!とにかく今始穂さんはね、部屋にも入れてくれないの!」
「え!どういうこと?」
「倒れた始穂さんを部屋に連れて行こうとしたんだけど、始穂さんすぐに起きだして、「触らないで!!」って、部屋に篭もっちゃったのよ・・・。」
「食事は、いつも部屋の前に運んでるんだけどね。」
「そっか・・・。そんなことに・・・。」
「剣崎さんだったら、きっと始穂さんも部屋に入れてくれると思うの!だから、ほら、今すぐいく!」
「ええええ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
「問答無用!ほら、早く来る!!」

・・・・天乃ちゃんにずるずると引きずられ、ハカランダ一階、始穂さんの部屋の前に立つ。
「さ、天乃。後は剣崎君に任せましょう。」
「うん。わかった。」
春花さんに言われて、天乃ちゃんも階段を上がっていく。
「剣崎くん、始穂さんのこと、お願いね。」
春花さんはそう言い残していった。

すぅ〜、はぁ・・・。
なんとなく深呼吸。

こんこん。

意を決してそのドアを叩く。
「始穂さん、俺、剣崎。」
「剣崎・・・・・?」
中から声がした。
「始穂さん、開けてくれないかな。春花さんも、天乃ちゃんも、心配してるよ。」
「・・・・・・・・・。」

かちっ。

お?
・・・なんかあっさり鍵が開いたな。
「・・・・入って。剣崎。」
「ええ!?う、うん・・・・・・。」
なんか、予想外の展開に・・・。

ばたん。

始穂さんの部屋に入る。
・・・・・思っていたとおりというか、なんというか。
飾り気のない、質素な部屋だった。
彼女のやっているというカメラの機材、壁にはコルクボードと彼女の撮った写真。
家具は、机が一つ、椅子が二つにベッドが一つ。
そのうえに、額縁が飾られていた。
子供が書いたであろう、つたない絵。
でも、そこからは温かな雰囲気が伝わってくる。
描かれているのは、一人の女の子と大人の女性。
俺はすぐに、天乃ちゃんと始穂さんだと理解した。

「へえ・・・・。これ、天乃ちゃんが書いたの?」
「・・・うん。もらった。」
「そっか。」
額縁に入っていることから、すごく大事にしていることが分かる。
「始穂さんは、天乃ちゃんが大事なんだね。」
「・・・・よく分からない。けど、きっと、そうだと思う。」
「そっか。そうだよね。天乃ちゃんも、始穂さんのことが大好きみたいだし。」
「うん・・・・・・。」

彼女の右肩には、包帯が巻かれていた。上着から覗く包帯が、肩まで続くのが分かる。
「怪我、してたんだ。・・・ごめん。見舞いにも来られなくて。」
「ううん。・・・今は、だいぶ治ってきたけど、ひどいときに剣崎が来ても、きっと部屋に入れなかったと思う。」
「・・・・ねえ、どうしてなの?そんなひどい怪我したんなら、俺達だって心配で、始穂さんの様子を見たくなるよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
彼女は答えようとしなかった。
「・・・まあ、いいにくいならいいけど。もう、怪我もいいんでしょ?そろそろ部屋から出てあげたら?」
「うん・・・。そうする。」
「はは。よかった。天乃ちゃんも春花さんも喜ぶよ。」
「うん・・・・・・・。」



それからしばらく、俺は始穂さんと雑談する。
といっても、俺がほとんど一人で話すだけなのだが、始穂さんはうんうんと頷いてくれていた。
「・・・・そういえば、最近始穂さんとすごい良く似た女の子と会ったよ。」
「わたし・・・・そっくり?」
「そうそう!もう、同じ人間なんじゃないかって思うくらい!でもね、性格はぜんぜん違うんだ。」
「騒々しくて、元気で、ころころ表情変わって。あ、たこ焼き職人でね、それがまたすっごく美味しいんだ!」
「・・・・・・・・・。」
「?」
心なしか、沈んだような顔になったような・・・。
一瞬だったので、よく分からない。
「俺、なんか変な事言った?」
「ううん。・・・なんでもない。続けて。」
「う、うん・・・・。」

「・・・・そういえば、あの子アンデッドに襲われて、大変だったなぁ。」
「アン・・・・デッド?」
「ああ。そのアンデッドがさ、言うんだよ。「こいつは、ジョーカー」って。」

「!!!!!!」

「今思うと、変なアンデッドだったな・・・。その子はただの人間なのにさ。」
「それに、ジョーカーって、なんだろう?」

ガタッ!!

「え・・・・・・?」
彼女が、突然立ち上がった。
「かえって・・・・。」
「え?」
「帰って!!!!」
「えええ!!?」
俺は訳の分からないまま、下の出入り口から外に追い出された。

「ね、ねえちょっと!始穂さん!!」
「ごめん、剣崎・・・・。今日は帰って。お願い・・・・。」
ドアの向こうから、彼女の声。
・・・・・どうしたんだろう。
とにかく今日は、これ以上ここにいても無駄なようだ。
俺はそのままバイクにまたがり、BOARDへ帰った。





「ジョーカー・・・。」
「私は、もうあの姿にはならない。絶対に、絶対に・・・!!」




明日はどうしよう?
始穂さんには、しばらく会わないほうがいいと思うけど・・・。

1.橘さんが呼んでる・・・・?何か、あったのかな。
2.美月ちゃんがまた頑張ってるみたいだ。様子を見に行こうかな。
3.それでも俺は、彼女に会いたい。ハカランダにいく。
4.街に出てパトロールするか。新名さんだけに任せておけない・・・。
5.ジョーカーについて・・・。広瀬所長や烏丸主任なら知っているかも。



第53回「ジョーカー・先輩の見解」



その日、橘さんからメールが送られてきた。
添付された画像には地図が。

俺はバイクに乗り、橘さんに指定された場所へとやってくる。
そこは・・・・。ものすごい廃ビルだった。
「なんだよ。ここ・・・・。」
慎重に足を進め、その一番奥へとやってくる。
・・・このフロアだけ、電気が灯ってるな。
俺はその奥にあった、赤い鋼鉄のドアを開いた。

「お、いらっしゃい。剣崎君。」
「橘さん・・・。」
壁も床もボロボロになったその無機質な部屋に、橘さんはいた。
「なんなんですか?ここ・・・・。」
「ん〜。私の、アジトってとこね。ちょっと研究所からパソコン持ち出して、独自に調べてるのよ。」
「・・・・ネットも使えるんですか!?よく回線繋がりましたね・・・。」
「ん。まあ。そこは私の技量?まあ、気にしない気にしない。」

「むぅ・・・。で、オレに用って、なんなんですか?」
「っていうか、けが人でしょ橘さんは!こんなところにいて、いいんですか!?」
「う〜ん・・・・。ホントは外出禁止食らってるんだけど。」
「だったら!別にこんなところじゃなくても!」
「・・・・ちょっと、研究所じゃ調べにくいことなのよ。」
「・・・・・・・・?」
「大丈夫。剣崎君に今調べてることを教えたら、すぐ帰るからさ。」
「はあ・・・・。」

「・・・・この前のアンデッド、覚えてる?ほら、ジョーカーっていってた奴。」
「あ、ああ。たこ焼き屋の時の。」
「わたし・・・。ずっと引っかかってたの。何であのアンデッドは、彼女を襲ったのか。ジョーカーとは何なのか。」
「はい・・・。」
「あのたこ焼き屋の女の子は、本当にただの人間だった。それなら、誰かと間違えたって考えるのが自然でしょう?」
「誰かって・・・・。まさか!?」
「・・・・・そっくりなんでしょう?その、ハカランダのウェイトレスは。」
「まさか・・・・。彼女が、そのジョーカー・・・?」
・・・そういえば昨日彼女は、ジョーカーという言葉に激しく反応していた。
やはり、彼女はそれと何かの関係が・・・・?

「コレがどういうことなのか分からないけど。で、次に気になるのが、このジョーカーってのが何者なのかって事。」
「アンデッドを封印しているラウズカードは、トランプをモチーフにしているのは知ってるわよね?」
「はい。A、J、Q、K。コレはみんなトランプの役ですよね。各スートのカード数は13枚だし。」
「そう。で、そこで気になってくるのがジョーカーというカードの存在。ラウズカードがトランプをモチーフにしている以上、ジョーカーも存在しているはず。」
「じゃあ、ジョーカーは、アンデッド・・・!?」
「・・・・おそらくね。で、次に気になってくるのが、なんでジョーカーを狙ったのかって事。」
「それは・・・。アンデッド同士は戦うものなんじゃ・・・?」
「うん。伊坂も言ってた。アンデッド同士は最後の一体になるまで戦う、バトルファイトをしているんだって。」
「バトル、ファイト・・・・。」
「でも、本当にそれだけかしら・・・・・。」
「・・・・・・・・。」

橘さんは腰掛けた椅子をくるりと回し、パソコンへと向かい合った。
「BOARDのデータベースにもアクセスしてるんだけど。」
橘さんは、検索用語に「JOKER」と打ち込む。
しかし、検索結果は、「無し」。
「どういうことなんだろ。BOARDはかつて全てのラウズカードを所持していた。それならジョーカーのデータもあるはずなのに・・・。」
「ジョー、カー・・・・。」



「こ、これは!!」
「広瀬君?・・・・どうした?」
「お父さん?」
先日のカテゴリーKとの戦闘記録を解析していた三人。
そこで、広瀬所長は突然驚きの声を上げる・・・・。
(コレが本当なら、剣崎君は・・・・。)

ぷるるるるる、ぷるるるるる。

「あ、お父さんの携帯じゃない?」
「あ・・・ああ。少し、失礼するよ。」
部屋を去る広瀬所長。
「どうしたのかな。お父さん。この記録に、そんな変なところが・・?」
画面を覗き込む広瀬 詩織。
「あれ?剣崎君の融合係数・・・・。」
「融合係数?」
烏丸主任も画面を覗き込む。
「・・・・・・通常の人間をはるかに超えている。ここ最近で、急激に伸びているようだ。剣崎、お前は一体・・・・。」



「はい・・・・。天王路さん。」
『BOARDのデータベースに、例のキーワードを打ち込んだものが現れたよ。』
「そ、それは・・・?」
『「切り札」だよ。広瀬君。』
「「ジョーカー」・・・。一体、誰が・・・・?」
『橘 さくら君・・・・。彼女のログインが検出されたよ。』
『広瀬君。彼女にパスワードを教えてやってくれたまえ。』
「し、しかし・・・!!」
『いよいよ、彼ら仮面ライダーに、その真なる使命を果たしてもらう時が近づいているようだ・・・・。』
「・・・・はい。」
『ジョーカーを封印させよ。滅びを避けるには、それしかない。』
「はっ・・・・。」




明日は、どうしよう?

1.橘さんを見舞う。今日の事は気になるけど、身体が一番大事だし。
2.美月ちゃんとパトロールに出てみようかな。俺が一緒にいれば大丈夫って、嶋さんの許しも出てるし。
3.始穂さん・・・・。今日の事、彼女に確かめるべきか・・・?
4.ジョーカーについて、独自に調べを入れる。・・・・といっても、烏丸主任に聞くだけなんだけど。
5.一人でパトロールに出よう。色々気になることはあるけど、まだまだアンデッドが出現してるんだ。




第54回「怒りの理由」




(相川 始穂。彼女は、ジョーカーかもしれない・・・。)

ぐるぐると頭をめぐる考え。
部屋で休むオレの頭に、ずっとこびりついて離れない。
昨日橘さんと調べたこと。
そこで芽生えた、彼女への疑念・・・・。

「そんなバカな・・・・。」
ごろりと寝返りを打つ。

彼女は、戦いで倒れた俺を介抱してくれた。
一緒に動物園にも行ったし、そこで人質にされた彼女を助けようとしたり、プレゼントをあげたこともある。
そのときの幸せそうな顔は、今でも忘れられない。
ちょっと不思議なところもあるけど、彼女は間違いなく人間だ。
・・・・そう思う。

でも・・・・。
一昨日の「ジョーカー」という言葉への反応。アレは普通じゃなかったと思う・・・。
やはり、本人に直接聞くべきだろうか?
・・・だがもし、「はい」と答えられたら、俺はどうすればいいんだろう?
ジョーカーだということは、それはつまりアンデッドだということ。
アンデッドだということは、俺達人類の敵って事だ・・・・。

そこで俺は、あの少女を思い出す。
赤いアンデッドの少女。
彼女はアンデッドでありながら、人間と共存したがっていた。
・・・・ならば彼女も、そうなのかも知れない。
ハカランダに住み、周りの人たちと共存を図っている。
きっとそうだ。

まあ、どちらにせよ本人に確かめないことには、どうしようもないな。
「よし!」
俺はベッドから起き上がると、すぐさまガレージに向かった。

その途中で、美月ちゃんとすれ違う。。
「あ、剣崎さん!見てください、わたし今日の出動で、アンデッドを封印したんですよ!」
嬉しそうにラウズカードを見せる美月ちゃん。
でも俺は・・・。
「悪い、今急いでるんだ。」
さっと横を通り過ぎる。
「あ・・・・。はい・・・。」

その寂しそうな声に、少し心が痛んだが、俺はまっすぐガレージへと向かった。

「剣崎さん・・・。ちっとも私とお話してくれない。」
「わたし・・・。もっともっと強くならなきゃ・・・。」
「そしたらきっと、剣崎さんも。」



(そうだ・・・。もっと、もっと強くなれ・・・。)




バイクを飛ばし、ハカランダにやってくる。
階段を上り、自動ドアをくぐって、いつもの挨拶。
「こんにちは〜。」

「あ・・・。いらっしゃいませ。」
「あ、うん。」
今日俺を出迎えたのは、いつもの春花さんではなく、珍しく始穂さんだった。
「もう、部屋から出たんだ。怪我、大丈夫?」
「・・・うん。もう大丈夫。」

「えへへへへぇ〜。入り口で語らうのもいいけど、早く席に座ったらどうですか?」
いつの間にか横に天乃ちゃんがいた。
いやらしい笑みを浮かべている・・・・。
「な、なんだよその顔。」
「べぇっつに〜♪さ、始穂さんも早く剣崎さんを、座らせて上げたら?」
「う・・・・うん。じゃ、こっちへ・・・・。」

始穂さんに案内され、席に着く。
「・・・ご注文は、何になさいますか?」
「ん〜・・・。オムレツは食べ飽きたかなぁ・・・。」
「注文はもちろん、君の愛だよ。」

「「!!!」」

「えへへへ〜。どうしたのかな〜?二人とも、顔真っ赤だよ?」
・・・今の台詞は天乃ちゃんが、オレの声色をまねて言ったものだった。
「こ、このマセたお子様め・・・。」
「だ〜ってぇ、二人とも反応が面白いんだもん。」

ぐにっ。

「ひ、ひひゃい。」
「こら、天乃、いい加減になさい。」
「春花さん。」
店の奥にいた春花さんが、天乃ちゃんのほっぺをつまんでいた。
「ゴメンナサイね二人とも。こら天乃、二人に謝りなさい。」
「は〜い。ごめんなさい。剣崎さん。始穂さん。」
「もう、この子はませてるんだから・・・。ごめんね剣崎君。お詫びに、コーヒーただでいいから。」
「ホントですか!?わあ、ちょうど良かった。そろそろ今月の給料が底を尽きそうだったんですよね。」
「あら。そんなになるまでうちに食べに来てくれるなんて。なんだか悪いわね。」

「だって、本命は始穂さんだもんね〜♪」
「はうッ!!?」
自分の顔が、急激に赤くなるのが分かる。
ほんとにこのガキは・・・。
「こぉら!天乃!!!」
「わ〜!」
天乃ちゃんが走って逃げていく。
春花さんはそれを見てため息を突きつつ、
「スペシャルパスタ、半額でいいわ。剣崎君。ほんとにごめんね。」
そういって厨房に消えていった。

「は、ははは・・・。なんだか、もう疲れちゃった。」
「・・・・剣崎は、いつも私に会いに来てるの?」
「え!!」
・・・そう本人に聞かれたら、答え辛いものがあるよな・・・。
でも、まあ、それは本当のことだったりするので。
「うん・・・・。俺は、いつも始穂さんに会いに来てる。」
はっきりそう答えた。
「・・・・そう。そうなんだ。・・・かわってるな。剣崎。」
始穂さんの頬が・・・赤く染まる。
「でも、嬉しい。」
「え・・・・。」
そうつぶやくと、彼女は足早にその場を去った。
嬉しいんだ・・・。
なんか、その言葉に俺まで嬉しくなった。



しばらくして、始穂さんが山盛りのスペシャルパスタとコーヒーを手にやってきた。
「おおお!すげえ!」
思わず感嘆の声を上げる。
こんなご馳走、何年ぶりだ・・・。
「・・・では。ごゆっくり。」
「あ!待って始穂さん。」
「・・・?」

そうだ。天乃ちゃんのせいですっかり忘れていたけど、俺は今日、彼女に確かめに来たんだった。
・・・彼女が、ジョーカーかどうかを。

「あとで、二人だけで話があるんだ。・・・・いい?」
「・・・・・。うん。手が空いたらそっちに行くから・・・。」
「うん。分かった。」
始穂さん、すぐにOKしてくれたな。
「ああ〜。いよいよ告白ですか?」
天乃ちゃん・・・。
「もう、いい加減にしろーッ!!」




「・・・剣崎。話って、何?」
「う、うん。」
もう天乃ちゃんに邪魔されないように、少しハカランダから離れた場所に彼女を呼び出した。
始穂さんは、時折オレの顔を見ては目を背けてる。
少し様子が変だった。
いつもと違うというか・・・。

俺は話を切り出す。
「実は・・・。一昨日の、話なんだ。」
「・・・・・・・・・。」
それを聞いた始穂さんは、少し険しい表情になる。
「・・・あの時ジョーカーって聞いたときの君の反応、普通じゃなかった。」
「それに、君そっくりの女の子が、アンデッドにジョーカーと呼ばれたこともある。」
「・・・ねえ、始穂さん。君は・・・・。」

「・・・・ははは。何だ。そんな話か・・・。」
「始穂さん・・・・?」

「・・・・・・・・・もう、お前の顔は見たくない。二度と店に来るな!!」
「え?!」
「・・・誰にだって秘密の一つや二つ、あるでしょう?・・・・お前にそんな事を聞く資格はない!!!」
「し、始穂さん!?」

「サヨナラ。剣崎。」

・・・彼女は振り返りもせずに去っていく。

「ま、待って!始穂さん!」
俺はすぐに駆け出すと、彼女の肩に手をかけた。
「!」
すると彼女はすぐに振り向く。
・・が、すぐに鬼のような形相を見せると、
「私の身体に触るな!!!」
「!!!」
身体がびくっと震える。

そして彼女は、うっとおしそうにオレの手を払うと、ハカランダへと戻っていった。

・・・・・・・・・・・。
その場に一人残される。

・・・・・・・・・・俺は。
彼女を、傷つけたの、だろうか・・・・。

答えの返らない問いは、吹き抜ける風と共に消えていった・・・・。




もう、始穂さんとは会えないのだろうか・・・・。

1.始穂さんに謝りに行く。・・・・許してくれないと思うけど。
2.人生の先輩、橘さんに会いに行く。迷える後輩をお救いください・・・。
3.美月ちゃんの相手をする。しばらく話もしてないし。
4.振られた男には、孤独にパトロールが似合う・・・。アンデッドを警戒する。
5.それでも、詳しくジョーカーの事を調べる。



第55回「決断の時」




「あれ?おにーさんパトロールですか?」
「ああ。たまにはいいだろ。」
「そうですよね。おにーさんは正義を守る仮面ライダーなんですから。」
「まあな。・・・じゃ、行ってくる。」

久しぶりに、一人でパトロールに出た。
街の中をただ、風のように走る。

(もう顔も見たくない)

未だにオレの頭を、彼女の言葉が苛む。
それを忘れたくて、俺はこうして一人で見回りを続けていた。
誰かと一緒にすごすのも辛かった。

彼女を傷つけたこと・・・。その後悔を埋めるのは、アンデッドとの戦いだけだった。
たまに報告の入る、アンデッド出現が待ち遠しい。
俺はジャックフォームへと変身し、圧倒的な強さでアンデッドを封印していった。



『LIGHTNING SLUSH』

「ウェェェェェェェェイッ!!!」
その背の白銀の翼を羽ばたかせ、雷を帯びた剣を振り下ろす!!

ズザアアアアアアッ!!

『クエエエエアアアアアアアアアアッ!!!』

ドガアアアアンッ!!!

キツツキのアンデッドを撃破した。
コモンブランクを使って封印する。
・・・・あれから、手持ちのワイルドベスタは、すべて本来の持ち主へと返した。
カリスだけはどうしようもなかったので、ハートスートのカードは、まだ手元にある。

・・・そういえば、奴にもしばらく会っていない。
あのカテゴリーKとの闘いの傷が、まだ癒えないのだろうか。

「ハァ、ハァ・・・・・。」
もう、どうでもいい。
始穂さんを、彼女を失った俺に、もうそんなことは・・・・。


「さすがだね。ブレイド。」
「!!」
突然、後ろから声をかけられる。
俺はすぐさま振り向き、剣をその相手に向けた!
「・・・・・穏やかではないね。」
「!!あなたは・・・・。天王路さん。」
「久しぶりだね。BOARD襲撃以来かな?」
黒い革のスーツに身を包んだ年配の男性・・・・。
BOARDの元理事長。天王路さんがそこにいた。

「ここ最近の君は、素晴らしい活躍をしているようだね。一心不乱にアンデッドを次々と封印している。」
「・・・・・・。」
あの日から数日が過ぎていた。
それ以来俺は、毎日のようにアンデッドを見つけては封印していた。
まるで、戦いの事しか考えられないように・・・・。
「何の・・・用でしょうか?」
「うむ・・・・。ほかでもない。今君達が調べているジョーカーの事だ・・・・・。」
「・・・・・!!」
ジョーカー・・・・。
「時間は取れるかね?君の疑問に答えてあげよう。」
「・・・・・・・・。」
俺は黙って変身を解き、彼の促すまま、その乗ってきた車に乗り込んだ。
・・・俺は、全てがどうでもいいと思っていたのかもしれない。
自分で考えることも、放棄して・・・。



たどり着いたのは、白い無機質な建物だった。
「ここは・・・?」
「私直属の、BOARD研究所だよ。」
「・・・!!俺達のいるほかにも、研究所が!?」
「そういうことだよ。剣崎君。」

彼の案内するまま、その最深部、最重要研究室へと案内された。
そこには数人の研究員、黒い立派な椅子、そして・・・。
黒い厚い鉄板がねじれたような・・・。そんな不思議なオブジェがたたずんでいた。

「さて。ジョーカーのことだが・・・。」
天王路さんはその椅子に深く腰掛ける。
「ジョーカーは・・・。このよみがえったバトルファイトに置ける、最後の切り札だ。」
「切り札・・・。」
「そもそもバトルファイトとは、生物の始祖たるアンデッドが、自らの種族の存亡をかけ、最後の一体まで戦う神聖な儀式だ。」
「生き残ったアンデッドは勝利者となり・・・。その種族の繁栄が約束される。」
「1万年前。我々人間のアンデッドが勝利者となり、こうして人間は繁栄している・・・というわけだ。」
・・・バトルファイトは、そういう意味が・・・。

「だがジョーカーとは・・・。どの種族の始祖でもない。」
「もしジョーカーがこのバトルファイトに勝利した時・・・。この世に生き残る生命はない。」
「ええ!?」
「君達ライダーの使命は、全てのアンデッドを封印することだ。ジョーカーは、その中でも最も警戒すべきアンデッドだ。」
「コレは君にも今に知らされることだが・・・。近く君たち4人のライダーを集結させ、ジョーカー討伐を行う。」
「ジョーカー、討伐・・・・。」
「でも、ジョーカーが誰なのか・・・。」

「心配ない。調べはついている。」
「・・・・・・・!!」
「ジョーカーとは、他のアンデッドを封印する能力を持っている。それだけではない。」
「その封印したアンデッドのカードを使い、その姿を自由に変化させることが出来るのだ。」
「相川 始穂・・・。君も良く知る人物。彼女こそがジョーカーなのだよ。」
「!!」
やっぱり・・・・。
「彼女は人間のアンデッドのカードを使い、今の姿をとっているのだ。」
彼女は、アンデッド・・・・。
「剣崎君。今こそ君の使命を全うして欲しい。」
「ジョーカーを封印し、人類の危機を救って欲しい。期待しているよ。剣崎君。」




俺は天王路さんに送られ、研究所に戻る。
「君のバイクは研究所に戻させておいたよ。」
「天王路さん・・・。その、ジョーカー討伐は、いつなんですか?」
「・・・・明日だよ。」
「明日!!?」
「そう。この事は今まで秘密にしていたわけだからね。・・・今頃他のライダー達も知っていることだろう。」
「明日、頑張ってくれたまえ。剣崎君。」

走り去る天王路さん。


・・・・・・・・・・・・。
始穂さんが、ジョーカー。
そして、彼女を封印しようとするBOARD・・・。
明日、彼女は・・・・。

(私にいつも会いにきてくれて、うれしい。)
(二度と顔も見たくない。)

俺は、それでいいのか?
彼女を、このまま封印して・・・。
俺は・・・・。



1.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は決意を固めた。
2.ジョーカーを封印する。それがライダーの使命ならば。
3.何か、何かあるはずだ。彼女を封印せずに済む方法が。人類も、彼女も守る方法が。





空豆兄
2009年03月08日(日) 10時44分14秒 公開
■この作品の著作権は空豆兄さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
その3です。
あの女の子の名前は全く決まっていませんでしたが、「鎌田」ってことになるんでしょうかね・・・w

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