仮面ライダーブレイドIF その5(再掲載
※この作品は、2005年にこのサイトで連載された、選択リレー小説の再掲載です。
現在放映されている「仮面ライダーディケイド」内の「仮面ライダーブレイド」とは設定が異なります。



第74回「ギャレン・孤軍奮戦」



「・・・ぅん・・・・。」
「剣崎さんの寝顔、かわいいです・・・。」
始穂がブラックファングの残骸へ、カードを集めに行っている間、美月が休息をかねて剣崎を見る。
「でも、剣崎さんが眠る場所は、私の膝じゃないんですよね・・・。」
ばらばらと残骸をあさる始穂を見る。
「私の入る隙は、もうないか・・・。」

「ウルフアンデッドが見当たらない。」
そういって彼女は戻ってくる。
その手には、ワイルドベスタのキングとクイーンのカードがあった。
「こっちのクイーンは、お前のだ。破壊されたラウズアブゾーバーの中にあった。」
美月に、ひゅっと投げられる。

「・・・これで、私のスートは全てのカードがそろいました。」
「私はウルフアンデッドを探す。あれはハートのカード最後の一枚だ。・・・そう遠くには行っていまい。もう少しさがしてくる。」
「いえ、私がいきます。貴方は、剣崎さんを見ていて上げてください。」
「きっと剣崎さんも、そのほうが嬉しいと思います。ね?」

「!・・・・うん・・・。」
美月の申し出に、顔を赤くする始穂。
(あ、かわいいところもあるんだ・・・。)
「じゃ、お願いしますね。」
「うん・・・・。」
そっと剣崎を膝の上に載せる。

(お二人の邪魔をしちゃ、いけませんよね・・・。)

少し離れた場所を見回っていると・・・。
「っ!?」
うつぶせに倒れたウルフアンデッドを発見した!
「な、何でこんなところに倒れて・・・・。」
恐る恐る近づくと、その頭には銃撃の跡が見られた。
「うっ・・・・。」
未だ流れ落ちる緑の血液。
「・・・・憎らしい奴だったけど、楽にしてあげなきゃ・・・。」
始穂から預かった、ハートのJのプロパーブランクをその上に落とす。
「さよなら。新名さん・・・・。」

「でも、何でこんなことになっていたんだろう・・・?」
誰が、彼を撃ったのか?
あの時、まだ誰かいたというのだろうか?

「あ。私が開放したアンデッドもまた封印してあげなきゃ。」
その考えをとりあえず置くと、叩き潰されたスキッドアンデッドの元へ向かった。



「一真・・・。」
いとおしそうに頭をなでる始穂。
「う、ぅぅん・・・・。」
そこで、彼は目を覚ました。
「始穂・・・・。」
「起こした?・・一真。」
ガバッと身体を起こす剣崎。

「あいつは!?あいつはどうなった!?」
眠る前の事の記憶が薄いのか、始穂に問いただす。
「・・・・・。」
始穂はだまって、山となったその残骸を指差した。
「・・・・!・・・そっか。俺、あいつを倒せたんだな。」
「うん。それで、私も助けてくれた。」
「そっか・・・・・。」

少し思案をめぐらせる剣崎。
「なんか、忘れてる気がする・・・・・。」

「始穂さーん!カードがありました!」
そこへ、走って戻ってくる美月。
「これで、私と始穂さん、剣崎さんのカードが全てそろったわけですね!」
「美月ちゃん!もう腕はいいの!?」
「剣崎さん!はい。始穂さんの見つけたカードで治してもらいました。」
「・・・カードで?」

「・・・一真。このカード。」
始穂が差し出したカードは、キャメルリカバー。ハートの9のラウズカードだった。
「!!!」
・・・・彼は、そのカードのアンデッドに見覚えがあった。
彼と始穂が山小屋暮らしをしていた時、怪我した剣崎を治してくれた、あのアンデッド。
おとなしくて、善良なアンデッドだったのに・・・。
「あの男が・・・持っていた。」
「そうか・・・。」


「残るカードは、後一枚ですね。」
「ああ。橘さんの、ダイヤのキング・・・。」

「!!!」
「そうだ!橘さん!!」

「ええ!?」
「思い出した!ずっと引っかかってたんだ!」
「どうしたの・・・?」

剣崎はここに来る前、橘とすれ違い、その時によぎった嫌な予感、それらを話した。

それを聞いて、見る見る顔が青ざめていく美月。
「そ、そうでした!橘さんは、天王路さんに直接疑いを晴らしにいったんです!」
「疑い・・・・?」
「急ぎましょう!!」
あわてて自分のバイクに乗り込む美月。
「なに!?何なの美月ちゃん!?」
「走りながら話します!嶋さんの話が本当なら、橘さんが危ないんですよ!」

一人で駆けだしてしまう美月。
「何なんだよ・・・!とにかく追いかけよう!始穂、乗って!」
「うん!」
二人もまた、ブルースペイダーを走らせた!





「変身!!」
4体もの怪人を前に、さくらはギャレンへと変身する!

「無駄だよ橘君・・・。彼女達の力は、ライダーを遥かに凌駕している。君一人では、一体とて倒せはしないよ。」
「どうかしら・・・?私は仮面ライダーシステム1号、ギャレン!剣崎君や美月ちゃんとは経験が違うのよ!」

『えやああああああああっ!!!!』
鈍色の杖を持つ、トライアルGが、まずは襲い掛かった!
「っ!!!」

ドヒュイドヒュインッ!!

すぐさまさくらは醒銃ギャレンラウザーを引き抜き、引き金を引いた!!
『むうっ。』

ギュキィンギュキィンッ!!

だがそれをトライアルGは、手にした杖で弾いていく!!
「なっ!!?」

ガキィィンッ!!

「うぐうっ!?」
振りぬかれた杖は、ギャレンの胸を切り裂く!
『えやあっ!!』
それをすぐさま返し、逆の部分で突き押す!
たたらを踏むギャレン。
「こいつ・・・。どこかで見た動きを!」

『はあああああああああっ!!』
つづいて黒い姿のトライアルFが向かってきた!
振り上げるその腕には、鋭利な鎌が備えられている!
「鎌・・・・ねぇ。嫌なこと思い出すわ!」
『むうっ!!!』
「動きが・・・単純よ!」

ガッ!

突き出された拳を左腕でいなし、右手にもったギャレンラウザーで、零距離射撃を加えた!!

ドヒュドヒュドヒュッ!!!

『きゃうううううっ!!!!』
悲鳴を上げるトライアルF。
「・・・・娘だなんて悪い冗談だと思ったけど、本当に女の子なのね。こいつら・・・。」

ガキィィンッ!!

「ううううっ!!!」
トライアルFを相手にしている隙に、背中から斬りつけられる!
「この・・・!」

ザギィィンッ!!

「うああああっ!!」
今度はトライアルFにその腕を振るわれた!
前や後ろから、攻め立てられるさくら・・・!
「くっ!!」
足元を転がり、体勢を立て直す。

にゅるるるるる・・・・。

「!!!」
その時、足元にドロドロの液体の感覚!
それは実体化するとトライアルDとなり、さくらの両足を掴んだ!!
「あああああ・・・こ、このおっ!!!」

ドヒュイドヒュイドヒュイッ!!!

足元を這うトライアルDに何度も何度も射撃をくわえる!
・・・が、それは放そうとしない。
そこを狙い、トライアルF、Gが向かってきた!
「こいつら・・・うっとおしいぃぃ!!」
さくらは向かってくる二体に対し、ギャレンラウザーを放つが、足元が定まらない散漫な狙いは、彼女らにはやすやすとかわせる物でしかなかった!

ザギィガギィィンッ!!!!

「ぐううううううっ!!!」
同時に胸を切りつける二体!

「うあああああっ!!!もう!!」

さくらはオープントレイを展開し、二枚のカードを取り出した!

『UPPER』
『FIRE』

『むうううう・・・・・!!』
再び襲い掛かるトライアル!
「でぃやあああああああああああああっ!!!!」

怒号と共に放たれる、両腕による二体同時攻撃!
トライアルFの拳をあえて受け、そこに強烈なアッパーカットを食らわせる!!
そしてトライアルGには、その杖が届く前に火炎を纏った弾丸を撃ち放った!!

『『きゃああああああああああああああっ!!!!』』

同時に転がる二体のトライアル!
『!!!』
「はぁ、はぁ・・・。アンタには、コレよ!!」

『ABSORB QUEEN』
『FUSION JACK』

ラウズアブゾーバーにそれらのカードを入力、孔雀の紋章がギャレンの腹に浮かび上がり、その背に6枚の翼を与えた!
「たあああああああああああああっ!!!」
翼を展開し、空へ飛び上がるギャレン・ジャックフォーム!

『BULLET』
『RAPID』
『FIRE』

『BURNING SHOT』

「いい加減・・・放せッ!!」
足を掴んだままのトライアルDを、空中で縦回転し、振り落とした!
『ウアアアアアッ!!!』

どしゃあああ・・っ!!

3体のトライアルがまとまった形で、空中のギャレンを見上げる・・・・。
そこに先ほど入力したカードがギャレンの背に浮かび上がり、ギャレンの仮面がダイヤ型に光った!
「まとめて大掃除よッ!!」

ドファドファドファアアアアッ!!!

強力な火炎を纏った弾丸、それが雨のように3人のトライアルに降り注いだ!!

ドガアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

大爆発を上げる三体。
それを背にゆっくりと着地し、翼をたたむギャレン。
「・・・ま、ざっとこんなものよ。」
ギャレンは仰向けに倒れた三体のトライアルに、コモンブランクを投げつけた!

ぎゅいいいいい・・・・。

「!!?」
彼女らを封印するかに思われたカードは、なんとその身体に吸収されてしまった!
「・・・・・・な、なんなの!?」

「ふははははっ!!!・・・だから言ったろう?橘君。君では、一体とて倒せないと。」
カードを吸収したトライアルたちは、ゆっくりと起き上がる。
ダメージも修復しているようだった。

『むうぅ・・・。』

ダッ!

トライアルGが駆け出した!!
「ちっ・・・!」
その振り下ろされた杖にあわせようと、ディアマンテエッジを備えたギャレンラウザーを振った!

ガキィィン!!!

「・・・!!!」
が、それは間に合わない。
さっきよりも・・・早い!

ガッ!

「!!」
そこにトライアルDがギャレンの襟首を掴み、

ガスゥッ!!!

「ぐうううっ!!」
火花が散るほどの威力の拳が炸裂した!
地を転がるさくら。
「カードを吸収して、強力になってるっていうの・・?!」

「はっはっはっは・・・。抵抗もここまでかな?橘君。」
「ぐ、ぐう・・!」

こんな奴ら、どうしろっていうのよ・・・!!





1.ここは逃げる!こいつは分が悪いわ・・・!!
2.やれるだけやってやる!きっと、どこかに倒す方法はあるはずよ!
3.こうなったら、天王路だけでも倒して・・・・!





第75回「へルター・スケルター」



バッ!!

ギャレンはその背の翼を展開させる。
こんな奴ら、まともに戦っていられない・・・・!!
飛び上がると、ギャレンはトライアルたちを警戒しながら遠ざかっていく・・・。

「ほう、逃げを打つか。賢明な判断だな。」
「・・・追っておくれ。娘達。」
その声に三人のトライアルは駆け出した!

「・・・無事でよかった。詩織・・・。」
トライアルBは人間態に戻る。
「くっ!自分で連れてきておいて!」
彼女はその自分を抱える腕を振り払った!
「貴方は父じゃない・・・その記憶を奪った偽者じゃないの!!」
「・・それは違うな。どんな姿になっても、彼は君の父親だ。」
「貴方がそいつを操っているんじゃないの!!」
理事長・天王路に対しても、全く臆せず意見する詩織。

「・・・元気のいい娘だ。しかし、しつけが必要なようだね。」
「ええ。」

「!!」
広瀬は再びトライアルBへ姿を変えると、その腕から雷を放った!!

ドガアアアアアアッ!!!

「きゃあああああああああああああああああああっ!!!!」
爆炎が収まった後には、気絶した彼女の姿。
「当ててはいないのだろう?」
『ええ。』
「・・・彼女に記憶操作を施そう。それに、アレを試してみようじゃないか。」
『・・・・はい。』




途中からレッドランバスに乗り換え、ひたすら逃走するさくら。
「どうやら、撒いたみたいね・・・・。」

ききっと、バイクを止める。
「これから、どうしようかしら・・・・。」
信じていた組織に裏切られ、その正義に燃える理想にも裏切られた。
彼女に残されたものは、一体何なのだろう・・・。

「・・・・・剣崎君、どうしてるかな・・・。」
ジョーカーと共に姿を消した自分の後輩。
真っ先に自分を裏切った相手。
・・・でも、今はそんな彼が、一番信じられる気がする。
「会いたいな・・・。でも・・・。」

「橘さん!!」
「っ!!?」
その時、不意にかけられた声にびくりと身体を震わせた!

がさがさ・・・。

草むらから、一菜が現れる。
「か、一菜ちゃん、びっくりさせないでよ・・・。」
「橘さんこそ、一体どうしたんですか?」
「・・・ちょっと、命狙われててね。おにーさんはどうしたの?」
・・・なんかとんでもない事を、さらりと言った気もするが。

「おにーさんは、美月さんを助けに行きました。始穂さんと一緒に。」
「!!!・・・そう。まだ彼は、ジョーカーと一緒なの。」
「橘さん・・。おにーさんは。」

「もう・・・いいわよ。彼の好きなようにすればいい。私には・・・もうBOARDの使命は、関係なくなったから。」
「橘さん・・・?」
うつむいて、再びバイクにまたがる。
「どこに行くんですか!?」
「ここにいたら、一菜ちゃんにも迷惑をかけるわ。もう少し離れてみる。」
「なんだか分かりませんが追われているんでしょ?今におにーさんが帰ってきます。美月さんと始穂さん、4人の仮面ライダーが協力すれば大丈夫ですよ!」
「・・・・・わたし、剣崎君に合わせる顔がなくて・・・。」
「橘さん?」
「ごめん、一菜・・・・ん?」

その時、彼女の身体に違和感が走る。

にゅるにゅるにゅる・・・・と彼女の身体を這う感覚。
「っ!!!・・・・・んぅ・・・っ!!」
「た、橘さん、何を・・・。」
顔を紅潮させて、身体をくねらせるさくら。

「わ、私の服の中に、何か・・・・ウンっ。」
「え、ええ!?」
一菜がその服の間を目を凝らしてみると、確かに何か動いている。
「ん、んん、あ、んんんんん・・・!」
その服の中に入っていた液体が、外に這い出ると実体化し、そのまま羽交い絞めの格好になった!
「か、怪人・・・!?」
「と、トライアルD!そうか、私が呼び寄せたレッドランバスの中に・・・!!」

グッ!!

「ううううっ!!!」
グイと首を締め付けるトライアルD!
「ああああ・・・・・。ど、どうすれば・・・!」
「え、ええええいいっ!!」
意を決し、体当たりしようとトライアルDに突撃する一菜!
『・・・・オマエデハナイ。』

バシッ!!

「きゃううっ!!!」
しかしそれもむなしく、あっさりと弾かれてしまった。
「か、一菜ちゃ・・・・んんっ!!」
なおも締め上げられるさくら!

「お、おにーさん・・・・。」
くたっと、一菜が気を失う。

「剣・・・崎・・・君・・・!!!」
さくらもまた、酸欠で気を失いそうになる。
意識が遠のいていく・・・。

もう・・・だめ・・・・・・・・・。





ザギィィン!!!

『グワアアアアアアアアッ!!!』
「・・!!!ぷはっ!!」
突如響いた斬撃の音とともに、さくらを締める腕の力は弱まった!
すばやく距離をとり、トライアルDに向かい合う!
・・・・が、そこには敵が二人いた。

『グウ、ウウウ・・・!』
一体はトライアルD。そしてもう一人は・・・。
『・・・紛い物風情が。』
萌黄色の鎧を着込んだ武者。
・・・いや、こいつは・・・!!
「あなた、あの時の上級アンデッド!!!」
・・・伊坂と遭遇する以前、さくらが初めて接触し、その心に恐怖心を植えつけた上級アンデッド。
ダイヤのカテゴリーK、ギラファアンデッドだった。

『・・・久しいな。仮面ライダー。こんな奴にやられそうになっているとは、所詮は人間の女か・・・?』
「バ、バカにしないで!こんな奴、封印さえ出来れば!!」

『グアアアアアアアッ!!!』
襲い掛かるトライアルD!
『ザコが!!』
ギラファアンデッドはそれを、両手の剣で叩き返す!
『グア・・!』

ズガザギィィン!ズガザギィィン!!

交互にその剣を振り、見る見るトライアルDの体力を奪っていく!
『ティィヤアッ!!』 

グガギィィィンッ!!

『アアアアアアアアアッ!!!』
両手の剣を同時に水平に振るい、トライアルDを吹き飛ばすギラファアンデッド!
「う・・・・!!」
みているだけのさくらにも、戦慄が走る。
やはりこいつは・・・強い!

『ハァァァァァァ・・・・。』
両手の剣を構え、気を高めていくギラファアンデッド・・・!
『ぬぁぁぁぁぁっ!!!』
気合一閃、その剣から十文字の斬撃の波動が放たれた!!

『ウアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・!!!』

バシュウウウウウウウウウウウウンッ!!!

・・・・トライアルDはその姿を、チリも残さず消滅した。
『・・・・・フフン。』
得意げに鼻を鳴らすギラファアンデッド。
「・・・・・・・・。」
逆にさくらは、何もいえなくなった。
封印できない相手を、完全に消滅させてしまうこのアンデッドの力に、改めて恐怖する。

『さて。お前はどうする?』
「!!」
そのまなざしがさくらを向く。

・・・・恐怖なんて、恐怖なんてとうの昔に克服した!
今足りないのは、こいつに勝とうという気持ち!!

「・・・貴方を、倒すわ。」
さくらはベルトを取り出す。
『ククク・・・はやるなよ仮面ライダー。』
「何ですって!?」
ギラファアンデッドはそういうと、人間態に姿を変える。
「今残っているアンデッドは、俺とジョーカーだけだ・・・・。今俺を封印すれば、世界は滅んでしまうぞ?」
「!!」
「先ほど、この近くでカテゴリーKとカテゴリーJが封印された。お前の仲間だろう。」
「そう・・・・。貴方が、ジョーカーを除いた、最後のアンデッド・・・。」
「ああ。だが今俺は戦う気はない。例えジョーカーを倒しても、封印など出来はしないからな。」
「そこでだ。俺はこのままバトルファイトを放棄したいと思う・・・。それを他のライダーに伝えてくれないか?」
「な・・・!?」
・・・それは思いもよらない申し出だった。
アンデッドが戦いを放棄する!?
考えもつかなかったその話に、さくらはしばし困惑する。

「俺は意味のない戦いに参加する気はない。せっかくカードから出られたんだ・・・。自由も満喫したいし、な?」
「・・・・・。」
考え込むさくら。
こいつの話が、どうしても嘘に思えなかったからだ。
確かにバトルファイトの目的が、最後に勝ち残ることである以上、相手を倒せない戦いをいくら続けても意味がない。
だが・・・。相手はアンデッド。どうしても野放しにしておくことはためらわれた。
「貴方は、人間に危害を加える気はないの?」
「・・・・そんな事をすれば、すぐさまお前達が封印しに来るのだろう?そんな馬鹿なことはしない。」
「・・・・・・・・・・・。」

「・・・む。お前の仲間が来たようだ。考えておいてくれ。この話、どちらにとっても損はない。」
そういって、彼は森の中に消える。
「・・・・・・どうしろっていうのよ・・・・。」



その後目を覚ました一菜とさくらは、剣崎、始穂、美月と合流。
さし当たって身を隠すため、一行はさくらの隠れ家へ向かった。


さっきの話・・・。どうしよう?



1.話さない。・・・私の胸にとどめておこう。
2.話してみる。・・・・私は、信じていいと思う。
3.話す。・・・・その言葉は信じる。警戒はしておいた方がいい。




第76回『新たな戦い』



「・・・・実はね。私、アンデッドに命を助けられたの。」
話は唐突に切り出された。
コンクリートの壁が丸出しの、無機質なその部屋で、俺達はその言葉に耳を傾けた。


天王路と広瀬に命を狙われ、差し向けられたトライアルDに命を奪われかけるが、そこを助けだしたのがそのアンデッド。
ギラファアンデッドだったのだ。
そのあと彼が告げたのは、もうバトルファイトを放棄したいという申し出だった。


「それって、いいことじゃないですか!もう戦わなくていいって事でしょ!?」
その話に嬉しくなって、つい声を張り上げてしまう。
「剣崎君なら、そういうって思ってたわ。・・・でもね。そう簡単にアンデッドを信じていいとは、私は思わない。」
「・・・・・・・・・。」
その言葉に、始穂は橘先輩に鋭い視線を向けた。

「でもね。彼に戦う意味がないって言うのは、信じていいと思う。彼に貴女を封印できる力はないからね。」
「・・・・・・・・・。」
「コレはいい機会だと思うの。これならアンデッドの脅威を気にせず、天王路一派の撃破に意識を割ける。」
「じゃあ、やっぱり戦わなくても!」
「でも!!・・・警戒はするわ。あいつは封印できないから戦わないといった。」
「・・・つまり、封印できる方法があれば、私を封印しに現れるかもしれない。・・・というのね。橘。」
「そういうこと。ま、とにかく今は天王路たちの動きに集中しましょう。」



「はあ・・・・。話はまとまったみたいですね。」
「そうみたいですね。」
部屋のすみっこで、美月ちゃんと一菜が、身を寄せ合っている・・・。
「・・・で、何してるのお前達。」

「わたしたち。」
「なんだか話についていけなくて・・・。」

なんか息が合ってるな・・・。歳が近いからかな?
「いいかい?今俺達は、BOARDの理事長の天王路さんに、命を狙われてるんだ。」
俺は二人の妹(?)に説明を始める。
「なんでですか?」
「それは・・・天王路さんのたくらむ計画に、俺たちが邪魔だからなんだ。」
「天王路さんの計画というのは?」
「う〜ん・・・。アンデッドたちのバトルファイトの勝者に与えられる、『万能の力』を手に入れようって事らしいけど・・・。」
「そこは私と橘さんが、嶋さんから聞いた話ですよね。」
「分からないのは、人間の天王路さんが、どうやってアンデッドだけに与えられるその力を手に入れるのか、って事なんだけど。」

「・・・・・それだけわかればいい。」
始穂が立ち上がる。
「天王路というのが何をたくらんでいようが関係ない。私の前に立ち塞がるというのなら、倒すまでだ。」
「・・・そうだな。それに、あの人が自分の野望のためにアンデッドを解放し、人々を苦しめたって言うのなら、俺は絶対に許せない!」
「ええ。例えどんなに敵が強大でも、私たち仮面ライダーが力を合わせれば、やれないことなんてないわ。」
「は、はい!頑張りましょう!」

俺達4人はがっしと拳をあわせ、結束を固めたのだった!




「さて・・・これからどうするんですか?」
一菜の言葉に、俺達は振り向いた。
「・・・えーと。」
言葉に詰まる俺。

「あ、もうじき夕食ですね。私ご飯作ります。」
美月ちゃんが立ち上がった。
「あ、うん・・・・。台所、そっちだから。」
力が抜けたように、美月ちゃんに教える先輩。
「私も手伝います。美月さん。」
一菜も立ち上がった。

なんだか気をそがれたな・・・。
始穂も橘さんも同じ気持ちみたいだ・・・。
「あ。全然材料がありませんよ。」
冷蔵庫をのぞき、こちらに呼びかけてくる美月ちゃん。
「ああ。ま、隠れ家だからね・・・・。ここ。」
「じゃあ買ってきます!」
美月ちゃんがぱたぱたと部屋の中を駆け巡る。

「あ、いいよ。俺が買ってくるからさ。」
・・・どうせやることもないし。
「一真が行くなら・・・わたしも行く。」
始穂が申し出る。

「早く帰ってきてね。剣崎君。」
「分かってますよ。いつ、誰に狙われてるのか分からないからでしょ?」
「ううん。早くご飯が食べたいから。・・・いや、美月ちゃんがご飯作るって言ったら、お腹空いちゃって。あはは・・・・。」
「・・・・・・・・・そうですか。」
俺はさらに脱力しつつ、部屋を出た。



近くのスーパーで、買い物する俺と始穂。
「なんか、久しぶりだね。・・・こうして一真と二人きりで買い物するの。」
「あ、うん。そうだね・・・。」
「ふふ・・。一真。」
始穂が寄り添ってくる。
・・・みんながいるときは冷たい感じだけど、こうして二人きりになると、始穂は素直にオレに甘えてくる。
誰も知らない彼女の顔を独占しているようで、少し誇らしかった。

「ねえ。始穂。」
店を出て、その帰り道、彼女に話しかける。
「なに?」
「この戦いが終わったら・・・。本当に二人で暮そう。」
「一真・・・・。」
「大丈夫だ。始穂とカテゴリーKが戦わない限り、バトルファイトは決着せず、永遠にこのままの時間が過ぎるんだ。」
「たとえカテゴリーKが君を狙っても、君は・・・封印されない。俺が守る。」
「うん・・・・・。頼りにしてる。でも・・・」
「でも?」
「・・・・もしどうしようもなくなったら・・・。一真に、私を封印して欲しい。一真なら、私は本望だから。」
「始穂・・・?君、何言って」

ヒュウッ!!

「!!!」
「危ない!!」


ギィィン!!

その時、俺達の間を赤い矢が通り抜けた!
・・・またか。
また俺達の間を、邪魔しようって言うのか!!

俺はキッとその前を見据える。
・・・そこには、その仮面にAの文字を抱く、仮面ライダーが立っていた!
桐生さん、新名さんに続く、三人目の人工仮面ライダー・・・・!!
その手には、ボウガンを思わせるラウザーが握られていた。



1.始穂。君は荷物を持って逃げろ。俺は大丈夫。それに・・・橘さんが、ごはんをまってる。
2.一緒に戦おう!どんな能力を持ってるか分からない。
3.「一真。私に任せて。私の新しい力・・・今ここで!」
4.二人で逃げよう!・・・俺達を前にたった一人・・・。ワナかもしれない。




第77回「張り巡らされた罠」




「始穂!ここは逃げよう!何か企んでいるのかも知れない!」
「ええ!?」
オレの提案と自分の考えは違ったのか、驚いた声を上げる。
その手を引いて、路地へ入る。
何とか撒かないと・・・!!


「・・・・・・・・・。」
「・・・思ったより、冷静だったね。お前を囮に、こちらも一斉にかかるつもりだったが・・・。」
その仮面ライダーの影から、広瀬所長が現れる。
「剣崎君のキングフォームは、いくらトライアルでも一人で勝てるものではないからね。」
「・・・・・・。」
「路地裏に逃げたのならば、次の手を打とう。彼らにうってつけの刺客がいるからね。ふふふ・・・・。」
そういうと広瀬所長は、その赤いAの文字の仮面ライダーの肩に、手を置いた。
「剣崎君・・・・倒す・・・。」



「ハァ、ハァ・・・・!!」
「・・・・・・・・。」
俺達はひたすら路地裏を走った。

ヒュウッ!!

ギィン!

時折飛んでくる矢に道をふさがれながらも、俺達はひたすら逃げ回った!
もうそろそろ・・・・。橘さんの隠れ家だ!
「一真・・・ねえ一真!」
「え?」

バッ!

その手を振り払われた。
「な、何だよ始穂。」
「何で逃げるの?私には理解できない。」
「だ、だってさ、俺は最強のキングフォームに変身できるんだよ?それに、君も仮面ライダーカリス。」
「そんな俺達二人を、たった一人で倒そうなんて、おかしいじゃないか!ワナかもしれないって思わないのか?」
「最強だって言うなら、そんなワナなんて力づくで突破すればいい。一真は・・・逃げてばかり。」
「!」

そういえばそうだ。
彼女と駆け落ちしてからこっち、襲ってくる追っ手には逃げを打ってばかり・・・。
でも、でもそれは。

「だって俺は、君を危険な目にあわせたくないんだよ・・・。」
「・・・・・・・・一真はわかってない。私は傷つくことなんて怖くないんだ。」
「でも、でも俺は!」

「・・・・!!」
その時俺は、路地の曲がり角に、橘さんの姿を見つけた。
「橘さん・・・。」
「?」
始穂もそこを振り返る。
「・・・・橘。」
俺達を見て、手招きする橘さん。
「迎えに来ていたのかな?始穂、行こう。」
「・・・・・嫌。行かない。」
「始穂!!何でそんなわがまま言うんだ!」
「一真こそ、あの女にはついていかないほうが良い。」
「・・・・なんだよそれ・・・。始穂は、橘さんを信用していないのか!?」
「そりゃ確かに橘さんは、いつも始穂に冷たいけど、だからってこんなときまで!」
「一真こそ、私を信用して。あの女について行ってはいけない!」

「もういい!!俺は橘さんについていく!」
「ダメ!一真!!」




目の前の橘さんを追って走る。
始穂・・・。何で分かってくれないんだ。
橘さんを、どうして信用してあげられないんだ・・・!!

「ふう、ふう・・・・。」
橘さんを追い始めて、ずっと走りっぱなしだ。
・・・・あの人、こんなに足が早かったか?
と、考え事をした矢先、その姿を見失ってしまった。
「橘さん・・・。少しくらい待ってくれても・・・。」
・・・・・・・?

辺りを見回すと、見慣れない場所に来ていた。
あれ?隠れ家はこんなところにはなかったはず・・・。

『剣崎さんっ。』
「え?」
そこに、美月ちゃんが顔を出した。
「美月ちゃん!・・・橘さん見なかった?ついて来いって言われて着いて来たら。見失っちゃって・・・。」
『いいえ。みていませんよ。』
「そうか・・・・。そういえば、美月ちゃんは、何でここに?」
『うふふ。』
にこにこしながら、近づいてくる美月ちゃん。
・・・?
なんだろう。様子がおかしい・・・・。




「一真・・・。どこにいったの・・・?」
彼とはぐれ、一人で路地裏をさまよう始穂。
そこへ・・・。
『・・・・・・・。』
「・・・・!橘・・・。」
橘さくらが、彼女の前に現れた。
「橘!一真は、一真はどうしたの!?」
『・・・・・・・。』
さくらは黙って始穂の後ろを指差した。
「え?」
振り返る始穂。
「なにもない・・・・」

バキッ!!

「ウッ!!!」
再び振り返った始穂を、さくらは殴りつけた!
「な。何を・・・・。」
『うすぎたないアンデッド。お前などに、剣崎君は渡さない・・・。』
「何・・・ッ!!」
始穂が立ち上がろうとすると、さくらは振り返り、路地の中へと消えていった!
「あの女・・・!!!!」




「おそいわねぇ〜。私お腹空いたよぅ。」
寝っころがりながら、足をばたばたさせるさくら。
「が、がまんしてください、橘さん。」
「むぅ〜、あの二人何してるのよ、もう・・・。」
「きっと久しぶりに二人っきりになれたんで、盛り上がってるんですよ!・・・・はあ、憧れます・・・。」
うっとりする一菜。
「むむ。私もう我慢できないわ!二人を探してくる!」
「は、はい、いってらっしゃい。」
「らぶらぶな二人を邪魔しちゃダメですよ〜。」

二人に送られ、さくらは外に出る。
「私が見てないと、何してるか分かったもんじゃないんだから!」





「へっ!?」
オレの胸に飛び込んでくる美月ちゃん。
『剣崎さんの胸、温かいです・・・。』
「み、美月ちゃん・・・。いったい、どうしたの?」
『剣崎さんは鈍いんですから・・・。でも、そんなところもいいんです。』
「何を言って・・・・。」

スッ。

「!!!」
そのとき、オレの懐から何かが抜ける感覚。

ドンッ!!

「うっ!」
美月ちゃんに突然突き押された!
『あはははははは・・・!!ほら、こんなに鈍いんです♪』
その手には、オレの変身ベルトが!

「よくやったね・・・・。」
「!!!」
そこに、聞きなれた年配の男性の声。
「広瀬・・・・さん。」
「一度目の私達のワナを見抜いたのは見事だったが・・・。その次の手を見抜くことは出来なかったようだね。」
彼はゆっくりと俺に近づいてくる。
「君の身柄を預からせてもらうよ。」
「な・・・!?」

バチィッ!!!

広瀬所長の手がオレに触れたとき、強烈な電流がオレの中を走った!!
「う・・・・・。」
そのまま意識を失う。
「こちらはうまくいったよ。あとはあの二人だね・・・。」





「あ、あなた!」
「・・・・・・・・・・・。」
路地裏を歩く始穂の前に、さくらが現れた。
「どこいってたの?!早く帰って、ご飯食べましょ。って、あれ。剣崎君は?」
「しらを切る気か。」
「え・・・・・・・?」
そう告げた始穂の眼は、獣の光が宿っていた。

「お前の事は、初めて会った時から気に入らなかった。伊坂と手を組み、二人で私に挑みかかってきたあの時から!」
「な、何言ってるの!?・・・そりゃ、あなたとは色々あったけど・・・。今は一緒に戦う仲間でしょ?」
「一真が間にいなければ、お前などと手を組むものか。・・・・・変身。」

『CHANGE』

始穂は、カリスに変身する。
「あなた、そこまでやるって言うの!?」
『一真は私の全て・・・!!』

ビュウッ!!

カリスアローを振るう始穂!
「ひゃっ!」
しゃがんでかわすさくら!
『どうした・・・・。さっきみたいに殴ってこないのか?』
「なんですって・・・・?」
『それとも、不意打ちでなければ私と戦えないのか!』
「な、何言ってるのあなた!私は、さっきまで部屋に・・・!」
『問答・・・無用ッ!!』





「・・・・彼らのクローンであるトライアルに惑わされ、ライダーたちは互いに争い、やがて・・・・。自滅する。」
「サヨナラ。仮面ライダー諸君。」
BOARD所長室で、天王路は不気味に微笑んだ。






1.こうなったらやってやる・・・!私も、あんたが気に入らなかったッ!!
2.待ってよ!そんなことより剣崎君は!?
3.もう、相手になってやるわよ。あんたの気が済むまでね!



第77回「激突・風と炎のライダー」



「変身!!」
さくらはバックルを起動し、ギャレンへと変身する。
「貴女は口で言って聞くタイプじゃなさそうだからね・・・。相手になってやるわよ!」
『・・・そうだ。私は戦いの中でしか聞く耳を持たない!!』

ビュンッ!!

振りぬくカリスアロー。
身体をそらし、ギリギリでかわしていくさくら。
「気になるのよね。剣崎君はどんな風にあなたを変えたのかしら?」
『!?』

ギィィィィィ・・・・キシュウウンッ!!

カリスの弓から光の矢が放たれる!!
それをまたさくらはバク転でかわして行く。

「街の中で寄り添う貴方たち、まるで本物の恋人同士みたいだった。人間の。」
「剣崎くんの前の貴方は、すごくかわいいわよ。」
『こ、このおおおっ!!!』
叫びながらカリスアローを振るう。
だが、怒りに我を忘れる始穂と、冷静に回避に徹するさくらでは、その勝負は見えていた。

「あなたは心から、剣崎君を信頼しているのね・・・。」
「私たちはたった今、結束を固めた仮面ライダーよ。私も、信じてはくれないの?」
『口先だけの奴を、私は信用しないッ!!』

ビュウッ!

「!!」
『おまえは散々私と一真の邪魔をした。それに、頬を張られた借りもある。』
「根に持つタイプって訳だ・・・・。どうすれば信用してくれる?」
『一真は強かった・・・。だから誰にも渡したくなかった。私の獲物。』
「そう・・・・。じゃあ正々堂々貴女を倒せばいいわけだ!」
『言ったはずだ。口だけの奴を、私は信用しない・・!』
『それに、私は卑怯者には決して負けないッ!!』
「いいわ・・・。私が卑怯者かどうか、その目で確かめなさいッ!!」

ビュウッ!!

振り下ろされるカリスアロー!
「その軌道は、みえみえよっ!」

ガッ!

さくらはその足を振り上げ、カリスアローを持つその手を止める!
『!!?』

ドヒュイドヒュイッ!!!

『ぐっ、ああああああっ!!!』
その脇を縫い、近距離からギャレンラウザーを放つさくら!
「なめないでよ。剣崎君に戦いを教えたのは、私なんだから!!」

『くっ!!』
強く地を蹴り、距離をとるカリス。

ドヒュイドヒュイドヒュイッ!!

距離が開くと見るや、その銃をさらに連射するさくら。
しかしカリスもその弾丸を、カリスアローで弾いていく!

ガキィン!!

「うううっ!!?」
カリスのもつ両刃の剣は、ついにギャレンの胸を切り裂く!
『はああああああっ!!!!』

ガイィンガギィン!!ザギィガギィィン!!

一度命中すれば、カリスの剣舞は止まらない!
一気に攻め立てる始穂!
『お前こそ、わたしをなめるな・・・・・!!!』






「橘さんも帰ってこなくなりましたね・・・・。」
「うん・・・・。困ったなぁ・・・。もう暗くなってきたよ。」
眉毛を下げて、困った顔を突きつけあう年少組。
「お腹すいたなぁ〜・・・。」
「うん・・・・。あれ?」
その時美月が、窓の外の景色の異常に気がつく。
「あれ・・・火花じゃない!?」
「へ?」
一菜が窓に張り付く。
「あのへんから・・・ほら、また光った!」
暗い路地裏を、明々と照らす赤い光。
「一体何が・・・・?」
さらに目を凝らすと、その発生源がうすうすと見えてくる。
赤い光が見えた瞬間、二つの仮面が見えた。
「仮面・・・。仮面ライダー!」
「ええ?!」
「カリスとギャレンが・・・・戦ってる!!!」

「うそ!そんな・・・・。」
あわててポータブルアンデッドサーチャーの電源を入れる一菜。
「一菜ちゃん、電源落としてたの!?」
「だ、だって、あと一人のアンデッドとは戦わないって・・・。」
起動したサーチャーには、確かに一体のアンデッドとギャレンの反応が!
「と、とにかく行ってくる!止めなきゃ・・・止めなきゃ!!」
部屋を駆け出す美月!

「あう・・・。一体どうなってるんでしょう・・・。」



『ハァ。ハァ、ハァ・・・・。』
「ハァ、どうかしら?私の事、認めてくれる気になった?」
『まだだ、まだ私は、納得してはいない!』
「頑固ね・・・・・。ハァ、ハァ・・・。」
互いに肩で息をする二人の仮面ライダー。
夕暮れ前に出たはずの買い物は、既に日がくれるまで続いていた・・・。



『決着をつける・・・!!』

『FLOAT』
『DRILL』
『TORNADE』

『SPINING DANCE』

「ええ・・・。私達の、いろんなことに!」

『DROP』
『FIRE』
『JEMINI』

『BURNING DIVIDE』

「はあああああああああああっ!!」
『てぃぃぃやああああああああっ!!!』

死力を尽くして戦った二人が、互いの最強の技を放つ!!
「あああっ!!?」
そこへ急いでやってきた美月。
だがそこは、既に決着をつけようと激突する、二つの力の発現が!
「二人とも、こんな事しちゃダメですーーーーーーーッ!!!」
・・・美月の叫びも既に遅く、

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

渦巻く風と燃え上がる炎の激突は、その声を掻き消した。

「そ、そんな・・・・・。」
へたりと座り込む美月。
「なんで・・・・。なんでこんなことになったんですか・・・・。」

「橘さん、始穂さあああああんッ!!!!」

『ふふふふ・・・・・・・。』
「はははは・・・・・・・。」

「え?」
美月が絶叫を上げた次の瞬間、その炎の中から笑い声が聞こえた。
「やるな・・・・。橘。」
炎の中から光の壁が飛び出し、そこを潜り抜け始穂の姿が現れた。
「貴女もね。ふふ。」
同様に、さくらもその無事な姿を見せた。
「二人とも・・・・。無事だったんですか!?」
駆け寄る美月。
「あ、美月ちゃん!ん、大丈夫大丈夫!」
「わたしも、久しぶりに思いっきり暴れた気がする・・・。」
「な、何をいってるんですか、もう・・・・。」



「さっき、私は橘に顔を殴られた。」
「ええ?!」
驚きの声を上げたのは美月だ。
「橘は部屋にいたと言った。でも私は信じなかった。」
「ええ。でもわたしは、わたしを信じて欲しかった。」
「だから・・・・お二人は戦っていたんですか!?」

「橘の一撃は心にしみた。やましい事などない澄み切った一撃。」
「だから、私は橘を信じることにした。・・・・仲間として。」
「嬉しいわ。コレで私たちは、本当に結束を固めたわけね!」
がっしと始穂を抱き寄せるさくら。
「・・・・!!やめろ。気色悪い。」
「あら。コレくらい、仲間だったら当たり前じゃない?」
「・・・橘の言う仲間というのは、何か違う気がする。」

仲良く振舞う二人を見て、ほっと一息をつく美月。
でも・・・。
「橘さん?」
始穂には聞こえないように、小声でささやく。
「何?」
「意外でした。橘さんは、あんなにジョーカーである始穂さんを嫌っていたのに・・・・。」
「ああ、もう、いいの。もう私はBOARDとは関係ないし、それに・・・・。」
「二人を見ててね、私、諦めがついたのよ。」
「あきらめ・・・・?」
「ううん。なんでもないっ!」
えへへぇ〜と、始穂に頬ずりするさくら。
始穂はというと、迷惑そうな顔をしながら、頬を赤く染めている。
「お二人が仲良くなって、良かったです。」


ヒュウッ!!

「あぶない!!!」
そんな二人に、襲い掛かる赤い矢!
美月はとっさに変身し、そのフィールドでそれを防いだ!!
「・・・・・・・・。」
「な、何よ一体!?」
物陰から現れたのは、あの赤い仮面ライダー。
「また、新しい人工仮面ライダー!?」
「二人は消耗しています、ここは私が!!」
レンゲルへと変身した美月は、その杖を振り回し、そのライダーへ向かう!

ガキィィン!!!

振りぬいたレンゲルラウザーは、赤いライダーの手にしたボウガンで止められる。

ググググ・・・・!!

「!!?」
あわせられたそのボウガンに、恐るべき力が加わってくる!
「こ、この人細身なのに、すごい力・・・・!!」
かべに押し付けられていく美月!
「美月!!」

『CHANGE』

始穂はカリスに変身する!
すぐにカリスアローを構え、光の矢を放つ!!
「!!!」

バシュッ!!

それは正確に赤い仮面ライダーの腕を射抜いた!
力が弱まり、美月に押される赤いライダー。
『ここまでだな。』

「・・・・・・・!!!」

バッ!!

詰め寄るカリスを前に、そのライダーは飛び上がり、その場から離脱する。
「逃げたわね・・・・。」
「・・・・あいつが出たから、一真は消えた。捕まえて聞き出そうと思ったのに。」
「あ、そうよ剣崎君!!」
さくらが思い出したように言う。
「始穂。貴女たち、一体何があったの?」



3人は隠れ家に戻り、一菜もくわえ、夕食を食べながら始穂の報告を聞く。
「私に連れられて行った?」
「・・・・一真は橘を信用しきっていた。わたしは、あの橘から何か違うものを感じて、着いてはいかなかった。」
「さっきの話とあわせると、どうやら橘さんの偽者がいるみたいですね・・・。」
「偽者ですか?・・・・この橘さんは本物ですよね?」
ほっぺたをぷにぷにする一菜。
「・・・・本物よ。始穂が保証してくれる。」
「うん。・・・・偽者にあんな戦いは出来ない。」

「一体、何が目的なんでしょう?剣崎さんを連れ去るなんて。」
「う〜ん・・・・・。」

ガンガン!

「!!?」
その時、この隠れ家の鉄のドアを叩く音が響いた!

バッ!!

いっせいに身構える4人。
「私が行くわ・・・。みんな動かないで。」
さくらが扉に向かっていく。

「誰?」
「私よ、橘さん!」
「・・・・・広瀬、詩織ちゃん?」
「もう、そうですよ!分かったら早くあけて!」

広瀬、詩織・・・。
BOARDの研究員であり、仮面ライダーのオペレーターを勤める、広瀬所長の娘・・・。
そんな彼女が、何故ここに?

「・・・・BOARDから逃げてきたの。天王路の隙をついて。」
「逃げた?なぜ?」
「・・・・父は怪物だった。それに天王路は万能の力を得ようと非道なことに手を染めてきた。BOARDの正義を信じていた私には、耐えられなくなったのよ。」

がちゃ・・・。

さくらはその扉を開ける。
そこには、確かに研究所で見ていた、広瀬 詩織の姿が。
が、彼女は片腕を辛そうに押さえていた。
「・・・怪我、してるの?」
「追われてるとき、少し・・・・ね。」
「それよりも橘さん!大変なの!剣崎君が父に、トライアルにつかまってるの!」
「ええ!?そんな・・・・。」
「詳しい話は中でするわ。お願い、橘さん・・・・!」



何か、引っかかるわね・・・。



1.詩織ちゃん、あなた・・・・なんで剣崎君がつかまってるって知ってるの?
2.ねえ、ここは私の隠れ家なの。何でここがわかったの?
3.痛そうね・・・。その腕の怪我は?



第79回「突きつけられた罠」




「ねえ、詩織ちゃん。何でここが分かったの?」
「え?なんでって・・・・。」
「ここ、一応烏丸主任にも内緒の隠れ家なんだけどな。」
「う・・・・・。」

一瞬視線をそらす詩織。
「橘さん、研究所からレッドランバスを呼んだでしょ?その反応を追跡したの。」
「きっと剣崎君や、他のみんなとも合流すると思って。」
「・・・・・・・。」
「そっか。うん。入っていいよ。」
「ありがとう、橘さん。」
さくらは頷くと、彼女を迎え入れた。
「疲れてるでしょ?詩織ちゃんは免許とかないもんね。ここまで大変だったでしょ?」
「え?う、うん。もう疲れてへとへと!」
「うん。ゆっくり休んでね。」

「広瀬さん!」
「一菜ちゃん久しぶり〜♪」
まるで姉妹が抱きあうように、がっしとくっつく二人。
「管制室で、ずっと一緒だったんだもんね。」
「はい!広瀬さん・・・。無事でよかった!」
「うん・・・。でもね、こうしてまた一菜ちゃんに会えたのは嬉しいけど、今はそれより、剣崎君が大変なのよ!」
「おにーさんが!?」

しばらくして、4人を集め、詩織が話を始める。
「私が研究所を逃げ出してから、剣崎君が連れていかれるのを見たの。」
「どこでみたの!?」
「あれは・・・・。もう一つのBOARDの研究所。天王路が直接、アンデッドの研究を進めていた場所よ!」
「なるほど・・・・。そこで剣崎君のデータを改めて取ろうというわけね。」
「じゃあすぐ行かなきゃ!橘さん、場所は分かりますか!?」
「ええ。大丈夫よ。」
「待って!わたしも行く。」
詩織が名乗り出る。
「な、何言ってるんですか広瀬さん!危ないですよ!」
「ううん。その研究所のセキュリティは、この中では私にしか開けられないわ。」
「橘さんのIDカードは、既に無効にされている。でも、私のならまだ大丈夫なはずよ!」
「・・・それに、指紋や網膜チェックも入るし。本人じゃないとダメですよね・・・。」
一菜が気が重そうに続ける。
「一菜ちゃん、大丈夫よ。」
「うう・・・・はい。」

「じゃあ、一菜ちゃんはここに残っていてください!また橘さんの偽者が現れるかもしれないですから、気をつけて!」
美月があわてて外に出ようとする。



「待って!」
「!!」
その声に、美月はびくりと身体を震わせた。
「な、なんですか?」
「わざわざ、今回の最大の罠に飛び込むことはないわ。」
「え・・・・・・・?」

「・・・・・・・・。」
「私達がそこに行けば、おそらく研究所に仕掛けられた・・・・。そうね。爆弾か何かかしら?閉じ込められてボカンよ。」
「えええっ!?」
「そこにいる・・・・。仕掛け人にね!」

びしいっ!!!

っと、さくらはある人物を指差す。
「・・・・・・・・えぇ?」
一菜はその指の指す先を見て、その目を疑った。

「詩織ちゃん・・・・。貴女は、今回の罠の仕上げとして広瀬所長が送り込んだ刺客だったのよ!!」
「そ、そんな、広瀬さんがそんな事をするはずが!!」
「・・・・・そうだな。私もそう思う。橘。」
さくらの言葉に頷く始穂。

「・・・・その女の腕の怪我、それは私がつけた傷だ。」
「お前はあの赤い仮面ライダーだ。先ほど私と橘を騙し、互いに戦い合わせ、弱ったところを狙った。それはつまり、橘の偽者とも通じているということだ。」

「・・・・な、何を言うの!!」
「そのとおりよ始穂。それに、あなたがここがわかった理由。それはレッドランバスの反応を追ったからじゃない。誘拐した剣崎君から、何らかの方法で聞き出したのよ。」
「だ、だって!レッドランバスにはカメラが・・・」
「そんなの、トライアルDに襲われた時点で切ってるわ。バイクの反応を追ってここにたどりつくのは不可能。」
「た、橘さん、戦ってたじゃない!ここでその子と!」
詩織は始穂を指差す。
「それをサーチャーで・・・。」
「そうかもね・・・。でも、それはついさっきの事。」
「あなたさっき言ったわよね。「免許はもってない」と。」
「あ・・・・・!!」

「歩いて逃走する免許のないあなたが、アンデッドの反応を追ってすぐにここにやってくることは不可能なのよ!」

「 ! ! ! ! 」





「さ、まだ言い訳するかしら?詩織ちゃん。」
「ひ、広瀬さん・・・・・?」
不安そうに、詩織の顔をうかがう一菜。


「ウフフフフフ・・・・・・あははははははは・・・・・・・!!!!」
「!!!」
「さすがね橘さん。こうも簡単に見破ってしまうなんて。でも、私達もこのまま黙ってはいないわ。あの研究所に来ないのなら、遅かれ早かれ剣崎君は死ぬ。」
「何ですって!?」
「橘さんは罠とは言ったけど、剣崎君がいるのは本当よ。建物を全て吹き飛ばす爆弾と一緒にね。」

「時限装置がついてるの。早く助けに行かないと、剣崎くんは一人で研究所と運命を共にする。」
「そうね・・・・。父が設定したタイムリミットは午前5時。それまでに助け出さないと、彼は死ぬわ。」
「5時・・・!!」
携帯電話で時間を確認するさくら。
「・・・・あと、7時間・・・・」
「急がないと!」

「そうは行かないわ。」

『OPEN UP』

「!!」
広瀬詩織は、仮面ライダーラルクへと変身した。
「貴女も適応者だったなんてね・・・・。」
「いいえ。コレは父の開発したアンデッド適応因子の力よ。それを被験者に注入すれば、だれでも仮面ライダーになれる。」
「ただしコレは人造のカテゴリーAである、このケルベロスだけに限定されるけどね。」
「ケル・・・ベロス・・・・。」

「さて、誰もここから逃がしはしないわ。この私を倒さない限りはね!!」




1.私がこいつを倒す。・・・一人で十分だ。お前たちは先に行け。・・・一真を頼む。
2.詩織ちゃんは私が止めるわ。みんなは剣崎君を!
3.広瀬さんは、私が食い止めます!大丈夫。私は彼女と一度戦っていますから。
4.みんなで一気に倒すわよ!時間を食っている暇はないわ!




第80回「3大ライダー・最大の危機!!」





「みんな!!彼女は私が止める。ここを離れて、剣崎君を助けに!!」
「で、でも橘さん、私達、その研究所がどこにあるのか・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・あ。」
しまった。
自分で道案内するといっておいて、それはないだろう。

「ええええええええええいっ!!!」
「!!!」
その隙をつき、仮面ライダーラルク・・・・広瀬 詩織は猛烈な拳を突き出した!!

ガシャアアアアアアアアアンッ!!!

「ッきゃああああああああああああああああっ!!!!」
その一撃は、とっさに防御したはずのさくらの身体を吹き飛ばし、ガラスを割り、外へと落とした!!
それを追い、ラルクも外へ飛び降りる!

「ど、どうしましょう・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
始穂は目を閉じ、心を集中し始めた・・・・。


・・・・・・・・。

「・・・感じる。一真の居場所。」
「本当ですか、始穂さん!!」
「行くぞ。わたしのバイク、シャドーチェイサーを呼び寄せる。」

『CHANGE』

始穂はカリスに変身すると、部屋を飛び出す。
「わたしたちも行きましょう!」
「そ、そうですね。私も何か役に立てれば。」
年少コンビも部屋を駆け出す。

隠れ家の出入り口には、二台のバイクが待っていた。
『こっちだ、行くぞ!』
「はい!」
二台の仮面ライダーの超バイクは、夜の闇を切り裂き、目的の場所に向かって走り出した!



ばらばら・・・と身体についたガラスの破片を払い落とし、ギャレンは立ち上がる。
「なんてバカ力なの・・・・。」
ジンジンと痛む腕を見る。
「・・・・・!!」
その時、上から気配が!
「くっ!!!」
その場から飛びのく!

ズドオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

ラルクの落下速度を利用したその拳は、ライダースーツのパワーもあいまって、アスファルトをやすやすと砕く。
「・・・・・っ!あなた・・・。ちょっと腕を鍛えすぎじゃないの!?」
「橘さん・・・。おとなしくそのベルトと、封印したアンデッドのカードを引き渡しなさい。」
「なんですって!?」
「天王路さんの計画に、どうしてもあなた達が邪魔なの。それらを引き渡せば、命だけは助けてあげる。」
「命・・・・ね。大きく出たわね。詩織ちゃん。」
「今のわたしは人工仮面ライダーの一人よ。貴女たち四人にも、決して引けはとらない!」
「そうね・・・。でも、戦いの勝敗は、その力だけで決まるものじゃないわ!!」
さくらは腰のギャレンラウザーを抜いた!

ドヒュイッ!!

・・・・が。

キュインッ!!

その熟練の早撃ちは、簡単にかわされてしまった。
「な・・・っ!!?」
一瞬、その事態に冷静さを失うさくら。

ダンッ!

その隙を、ラルクは逃さない。
大きく踏み込み、一気に間合いを詰めると、渾身の体当たりを食らわせた!!

ドガアアアアアアアッ!!!

「うああああああああっ!!!!」
衝撃はさくらを吹き飛ばすだけでは足りず、叩きつけられた壁が砕ける!
「ぐ・・・・」
倒れそうになるところを踏ん張り、前を見据える。

「どうして銃弾がかわされたか。かしら?橘さん。」
「ええ・・・・。その通りよ。どんな手品を使ったの?」
こんこん、と詩織はその仮面を叩く。
「このスーツにはね、あなた達のクローンである、トライアルシリーズの行動パターンが入っているの。」
「あなたの動きやしぐさ・・・。それら全てを模写したトライアル。それを予測し、行動するのがこのライダースーツ。」
「わかるかしら?あなたは、その全ての動きを見切られているの。だから、わたしを超えることは決して出来ない。」

「なるほど、偽者たちのデータが入ってるわけだ。・・・・でも、それで私に勝ったと思うのは早計よ。」
「強がりかしら?変身した私は、あのトライアルたちに完全に勝利できる。そんな私に勝つことなんて・・・・。」
「出来るわ。」

「・・・・・・・・・!!」
「過去のデータを複製した私に勝ったところで、常に成長を続ける、人間である私に勝つことは出来ない。」
「言ったわね橘さん・・・。じゃあ見せて。私を超えて見せて!!」

ドヒュイドヒュイドヒュイッ!!

連射するギャレンラウザー。
それに向かい突進するラルク。
その手にしたラルクラウザーを振るい、その一発一発を叩き落していく!
まるで、その弾道全てが見えているかのように・・!!

ザギィィン!!

「ぐうううっ!!!!」
ラウザーの刃がギャレンの胸を裂く!
返す剣でもう一度斬る!
「はあああっ!!!」
怯むギャレンに、その顔面に必殺の拳を叩き込む!

ガスッ!!!

ギャレンの体が縦に回転し、転げ落ちる。
「ぐ・・・・。」
さくらはその身体を起こすが、膝が折れ、座り込んでしまう。
「どうしたの?私を倒すんじゃなかった?」
ゆっくりとギャレンに近づくラルク。
「言われなくても、そうするわ!!」
ラルクが近づいた瞬間、ギャレンはその手のギャレンラウザーの銃口を相手に押し付けようと手を伸ばした・・!!

ス・・・・。

「!!!!」
が。それは身体をずらすことであっさりとかわされる。
「貴女の奥の手、零距離射撃。それも分かっているの。」

『MIGHTY』

切り札さえも読まれ、驚愕するさくらを尻目に、詩織はカードをラウズする。
「さよなら。」

ズシュウッ!!

逆に至近距離から放たれる、ラルク必殺のレイバレット!!!
「ッ!!!!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

座り込むさくらはかわせるはずもなく、その爆炎に飲み込まれた・・・・・。




『!!!!!』
「ど、どうしました?始穂さん!」
『い、いや、なんでもない・・・。』
(橘が・・・やられた。)

始穂は、それを二人に告げることはしなかった。



3人の前に、白い建物がそびえ立つ。
「ここですね・・・・。」
『・・・・ああ。ここから一真の存在を感じる。』
「じゃあ、行きましょう!セキュリティとかは、私が何とかしますから!」
『ああ・・・・。ん?』

3人がその門にたどり着くと同時、門は勝手に開き、正面のドアが開かれた。
『どうやら私達の歓迎準備も出来ているようだ。・・・・奴らが呼んでいる。』
「は、はい・・・・。」
「あの、私は・・・・?」
『一菜。あなたは隠れてなさい。大丈夫。一真は必ず私が助け出す。』
「は、はい!お願いします!!」

二人の仮面ライダーは、研究所へと消えていく。
「みなさん・・・。ご無事で・・・!!」


通路を歩く二人。
その行く手には鋼鉄のシャッターがおり、進めない場所もあった。
それらを避け、別の道を行く。
「誘い・・・込まれてますよね?」
不安そうに口を開く美月。
『ああ・・・・。』
それ以上何も言わない。
この先に感じる大切な人の無事を願い、二人は足を進め続けた。


やがて、広い空間に出る。
どうやら、室内訓練所のようだった。
「ここにも訓練施設が・・・。やはり、あの人工仮面ライダーの?」
『・・・だろうな。』

「よく来たね。」
その空間の奥から、両手を腰に回した広瀬所長が現れた。
「広瀬さん・・・!!剣崎さんを返してください!!」
「剣崎君なら、ほら、そこだよ。」

ガン!!

乱暴な作動音と共に、空間の一部にスポットライトが当てられた。
「・・・・・・!!始穂!!美月ちゃん!!!」
その周りが見えるようになり、彼はこちらをみつけた。

「・・・・無事みたいですね。」
『・・だが、おとなしく返す気はないのだろう?』
「私が天王路さんに与えられた使命は、君たちの抹殺でね。」
彼は指を鳴らすと、それにあわせ天井から、二つの影が降りた!!

『・・・・・・・・・・。』
『・・・・・・。』
黒い身体に白い仮面、自分の身長よりも長い杖を持つ、トライアルG。
銀の仮面に右腕に銃を備えた、トライアルE。

「こ、この人たちは・・・!?」
「私の造り出した改造実験体、トライアルシリーズ。・・・私のかわいい娘達だよ。」
『一真を返して欲しければ、こいつらを倒せという事か・・・。』
「・・・・だが、私も人の親だ。娘と近い歳の君たちを殺すのは忍びない。」
「美月君、君のもつ変身ベルト、そして封印したプライムベスタ。それらを全て引き渡せば、剣崎君は返そう。」
「え、えええええ!?」
『・・・・・・。』

「どうするね?」

『・・・・断る。一真はそんな事は望んでいない。』
『一真の願いは、お前達の野望の阻止だ。私はそれに従う。』
彼女の言葉に迷いはなかった。
美月もそれに、力強く頷く。

「そうか・・・・。残念だよ。」





1.美月がトライアルG、始穂がトライアルEと戦う。
2.美月がトライアルE、始穂がトライアルGと戦う。
3.始穂一人で二体をひきつけ、美月が剣崎を救出する。
4.美月一人で二体をひきつけ、始穂が剣崎を救出する。
5.二人で、二体を操っているであろう広瀬を倒す。



やがて、4者は入り乱れ戦い始めた!!
「く、くそ・・・・!!俺の手にベルトがあれば!!」
悔しそうに彼は懐を見る。
「アブゾーバー、だけか・・・。」





第81回「絶望の夜」




「たああああああああああああっ!!!」
『えやあああああああああっ!!!』

ガキィィンッ!!

二本の杖が火花を散らす!!
二人の武器は、そこから全く動かない。
力が互角・・・完全に等しい力だった。



ドヒュイドヒュイッ!!!

トライアルEの腕の銃が火を噴く!
カリスはその銃弾を、カリスアローで防いでいく・・・・。
『なるほど・・・。橘のコピーか。』
その動きやしぐさに、先ほど戦ったギャレンと同じものを感じる始穂。

バッ!!

同時に二人のライダーはその敵から間合いをおき、背中合わせに構える。
「この人たち・・・なんなんですか!?」
『どうやら、こいつらは私達のデータからコピーした、クローンのようだ。』
「え!?私達のコピー・・・。じゃあ・・・。」

美月はトライアルGを見る。

「あいつは、わたしのコピー・・・。」
『ああ。そしてあいつは、橘のコピーだ。動きが似ている。』
『おそらく、奴が剣崎を誘い込み誘拐し、私を騙した偽者だろう。』
「どうするんですか!?始穂さんはともかく、私のほうは倒せそうにありませんよ・・・!!」
『お前達の力は互角。決着には時間がかかるな。』
「その間に、広瀬さんの言う爆弾が爆発したら・・・。」
剣崎の救出どころか、自分たちまで全滅してしまう。


しばし思案する始穂。

『わたしが奴らをひきつける。その隙に美月。お前が一真を助けるんだ!』
「ええ!?で、でも始穂さんだって・・・。」
『今は・・・・。一真を助けるのが先だ。助け出せさえすれば、二人の時間はいくらでもある。』
その決意に満ちた言葉に、美月も戸惑いながらも頷く。
「でも・・・始穂さんって、すごく恥ずかしい事を真顔で言うんですね。」
『!!・・・う、うるさい。』

二体が近づく。
『いいか・・・・。合図したら、お前は一真にむかって走れ!!』
「は、はい!!」

カリスはその腰のラウズバンクから、一枚のカードを取り出した。
『これを・・・・使う。』
『行け!!』
「はい!!!」
美月が走り出した!!

『!!』
それに気づき、止めようとするトライアルG。

『EVOLUTION』

そのカードをカリスラウザーに入力した瞬間、そこから13枚のカードが飛び出し規則正しく並び、それら全てがラウザーに吸い込まれる!!
『美月の邪魔はさせない!』
トライアルGの前に立ちはだかる始穂!
その姿は赤い液体に包まれ、それが晴れた瞬間、彼女の姿は深紅の仮面ライダーに変わっていた!
『・・・・・・!!』
その足から赤い鎌、醒鎌ワイルドスラッシャーを引き抜く!

ズギャアアアンッ!!!

それを振るい、トライアルGに斬りつけた!!
『ううううんっ!!!』
その威力の前に地を転がるトライアルG。

「始穂さん・・・!!」
その紅い姿を少し振り返ると、美月は剣崎に向かって走った!
縛り上げられ、転がされている剣崎。
「み、美月ちゃん!!」
「今行きます!剣崎さん!!」


『急げよ、美月!!』

ドヒュドヒュイッ!!

『うううっ!!?』
トライアルGを斬り飛ばす始穂・・・ワイルドカリスだったが、その隙をトライアルEが突く!
『く・・・・。』
トライアルE、Gが並んで立つ。

『・・・・・・・・。』
トライアルGは走り出した!
『来るか・・・!』
油断なく構えるワイルドカリス。

ドヒュイドヒュイッ!!

『うっ!!?』
が、その後ろに控えるトライアルEが、始穂に向かって銃を放つ!
弾道を見切り、それらを弾く始穂だったが・・・・。

ガッ!!

トライアルGはその杖を使って高く飛び上がる!!
『!!』
思わず上を見上げるカリス。

ガシィィィッ!!

だが既に遅く、そのキックがワイルドカリスに見舞われた!
『・・・・軽い。』
しかし進化したカリスは、その一撃をものともしない。
横に着地したトライアルGを狙って、その鎌を振り上げる!

ダンッ!!

『!!?』
が、トライアルEはトライアルGに続いて飛び上がり、空中から銃を打ち込んでいく!!

ドヒュイドヒュイドヒュイッ!!!!

『うううっ!!?』
怯む始穂。
『えやああああっ!!!』

ガギィィンッ!!!

杖を振るい上げるトライアルG!
『ぐああああああっ!!?』
『はあっ!!』
着地したトライアルEは左手を振るい、そこに備えられたスタンスティックが始穂を襲う!

バチバチバチィィッ!!

『うああううううううっ!!!?』


その連係プレイに、進化したカリスといえど苦戦を強いられていく・・・!!
(早くしろ!・・・長くもたない。)




「剣崎さん!!」
ついに彼が眼前に迫る。


「・・・・・・・・いけないな。美月君。」
「!!?」
そこに、広瀬所長が割って入った。
思わず足を止める美月・・・仮面ライダーレンゲル。
「仲間を置いて、一人でここに来るとは。自分はひどい事をしているとは思わないのかね?」
「みんなの気持ちは同じです!橘さんも、始穂さんも、全ては剣崎さんを助けるために!!」

「だが、彼を返すわけには行かないな。・・・・私が相手になるよ。美月君。」
「そんな・・・・。広瀬さんはただの・・・・。」

バチ・・バチバチ・・・!!

その時、広瀬の体が放電を始める!
「!!?」
それが全身に広がった時、彼の姿は異形の姿へと変わっていた。
「そんな・・・広瀬さんも、トライアル・・・・!?」
『ふんッ!!!』

バキィィッ!!!

「きゃうううううううっ!!!!」
振るわれた拳は、レンゲルを一撃で吹き飛ばした!
「そんな・・そんな・・・・。」
まだ動揺する美月。
『むうううう・・・・。ハアッ!!!』
広瀬はその左手をつきだす!
そこから激しい雷撃が放たれ、辺りを爆炎に包んだ!!!

ドガアアアアアアアアアアッ!!!!

「きゃああああああああああああああっ!!!!」
『!!!美月!!』

ザギィィンッ!!!

『ぐうううっ!!!』
それに始穂は気がつくも、二人のトライアルは逃がさない!



『・・・・残念だよ。美月君。』
その炎を背に、広瀬・・・トライアルBは、一人戦い続けるワイルドカリスの元へ向かう。


『BLIZZARD』
『BITE』

『BLIZZARD CLASH』

炎の中、ラウザーの電子音声が響く!
『っ!!!?』
「えやああああああああああああっ!!!!」
吹雪を纏ったレンゲルの、渾身のケリがトライアルBに迫る!!

ガシィィィィィッ!!!!!

『むうううううううっ!!?』
その奇襲は功を奏し、トライアルBを捕らえた!
「はあ、はあ、はあ・・・!!!」
技を受け地面に転がった広瀬を、レンゲルはその醒杖レンゲルラウザーを振るい、襲い掛かる!!
「えやあああああああああああっ!!!」

ヒュウッ!!

ザギィィン!!!

「ぐううううううううっ!!!?」
その背中に、斬撃の衝撃が走る。
天井から降りてきた、もう一つの影。
『・・・・美月君。切り札とは、最後までとっておくものだよ。』
起き上がり、広瀬の横へ移動する影。
黒い姿に、両腕に備えた鋭い凶器。トライアルFだった。

「まだ、かくれていたの・・・?!」
『さあ、最後のようだね・・・。』

ダッ!!

広瀬は駆け出し、その指先をレンゲルに触れさせる。

バシバシバシバシイイイッ!!!!

「ウアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
その身体を、強烈な電撃が走った!!
「あ・・・・・・・・・。」

バタッ・・・・。

美月は倒れこみ、変身も解除された。
転がり落ちるレンゲルのベルト。



ドヒュドヒュドヒュドヒュッ!!!

『ああああああああああっ!!!!』
トライアルEの零距離射撃を受け、ついに地に伏せるワイルドカリス。



「始穂!!!美月ちゃああああんッ!!!!」
彼の目の前で、二人の仮面ライダーが地に伏せる。



絶望の夜は、ますます深さを増していく・・・。



1.ここまでか・・・・俺は二人にカードを引き渡すように言った。
2.いや・・・・。まだ希望はある!!俺は懐を覗き込んだ。
3.イチかバチか・・・。俺は倒れこむ美月ちゃんを視界に入れた。




第83回「その男の真意」




「う、うう・・・・・。」

ブスブスと黒い煙を上げ、美月ちゃんが倒れ伏せている。
まだ生きているけど、すぐ動ける状態じゃない。
いや・・・でも、今戦えるのは始穂と美月ちゃんだけなんだ。
「・・・・・・・・。」

俺は懐を覗き込む。
コレを使えば、一気に逆転できるかもしれない。
でもそれは、戦えない今のオレが、彼女達に鞭打つようで、とても辛い。
しかしこのままじゃ、俺達全員がやられてしまう。
「やるしかないんだ・・・・。」
俺は体と腕を縛られたまま、ゆらりと立ち上がる。

『ここまでのようだね。美月君。』
地に伏せた美月ちゃんを見下ろす広瀬さん。
他のトライアルも、自分達の倒した相手を見下ろし、油断している。
今しか・・・ない!!

ダッ!!

俺は駆け出した!!
ただ一点、油断した広瀬さんを狙って!!!
「ウェェェェェェイッ!!!!!」
『!!!剣崎君!?』

ドガアアッ!!!

『むううううっ!!?』
全体重をかけた体当たり。
俺と広瀬さんはもつれ合うように転がる。

カシャアアッ!!!

・・・その時、オレの懐から「アレ」が落ちた。
『か、一真・・・?』
倒れていた始穂も、オレの行動に気がつく。
『!!!』
周りのトライアルも気がつき、一斉にオレに襲い掛かろうと・・・

グアキィィィン!!

『ぐうっ!!!』
その足を、ワイルドカリスが止める!
『一真には・・・近づけさせない!!』


「美月ちゃん!起きるんだ!!」
俺は広瀬さんに乗っかったまま、彼女に呼びかける!
「剣崎・・・さん?」
よかった・・・すぐに気がついた!!

『剣崎君・・・。まだそんな事をする元気があったとはね!』
広瀬さんの上にいるオレを、トライアルFが掴み上げる!
「っ!!剣崎さん!!!!」
「オレの事はいい!!それを、それを使うんだ!!」
「え・・・・・・・・?」
オレの指し示す方向、そこに、先ほど懐から落とした、ラウズアブゾーバーがあった。
「あっ!!!」
彼女もオレの意図を理解する。

「変身するんだ!!」
「はいっ!!」
美月ちゃんはすぐにレンゲルのベルトを拾い上げ、腰に装着、変身待機状態になる。
『させないよ、美月君!!』
その指先から、再び雷撃が放たれた!!

「変身ッ!!」

『OPEN UP』

ベルトから飛び出したフィールドは、その雷撃を弾き、美月ちゃんに届かせない!!
『ぐ・・・。』
「剣崎さん・・・使わせてもらいます!!」
レンゲルはそれを左腕に装着、腰のラウズバンクから二枚のカードを取り出す!

『ABSORB QUEEN』

アブソーブタイガーを装填、そこにクラブの紋章が浮き上がる。

『EVOLUTION KING』

そして、嶋さんのカードを入力した!!

腰のベルトから、黄金のタランチュラの画像が飛び出し、レンゲルを通過する!
「うっ、ウウウウウううううううううううっ!!!!!」
その体の中に、かつてない力が目覚めていく。
進化のカードは、これまでのレンゲルを遥かに超えた力を生み出そうとしていた!!

タランチュラの画像の八本の脚は、レンゲルの背中に定着、それらを象った杖へと変わる。
その腹にはタランチュラの紋章が浮かび上がり、肩も大きくせり出し、その装甲は緑に輝く!
そしてその手にはキングの証、重醒杖キングラウザーが握られた!

「やった、美月ちゃん!それがレンゲルのキングフォーム・・・!!」

バッ!!

「うっ!!」
オレを掴み上げていたトライアルFは、その姿を見るや俺を放り投げた。
『キング・・キング・・・・!!』
両腕の刃物を振るい、襲い掛かるトライアルF!!

「・・・いきます。」
美月ちゃんは、その背中の放射状に広がる八本の杖のうち一本を引き抜くと、キングラウザーに連結、その杖の先端はクラブの形に展開した。
その長さは、以前のレンゲルラウザーと変わらないものの、太さ、展開した刃の大きさなどは、以前より一回り大きくなっている。
「はああああああああああっ!!」
そんな大きなものを軽々と振り回す、レンゲルKフォーム!!

ザギィィン!!!

『きゃあああああああっ!!!』
その一振りで、トライアルを吹き飛ばすレンゲル・・・!!
「すごい・・・。これがキングフォーム!」

ビュウッ!!

「!!」

ガギィィン!!

死角から振るわれた杖を、間一髪止めるレンゲル。
相手はトライアルGだ。
「でも・・・・、もう負けませんッ!!」
先ほど互角の力を見せたトライアルGを、力で押し返していく!!




『・・・私も負けていられないな。』
『・・・・・・・。』

ドヒュイドヒュイッ!!!

撃たれるその銃弾を、完全に回避していくワイルドカリス!
『一対一ならば・・・。負ける道理はない。』
ワイルドスラッシャーを引き抜き、猛然と襲い掛かる!

ズガァン!ガギィィン!グアキィィィィンッ!!

接近戦に持ち込み、その腕のスタンスティック、銃を破壊、無効化するカリス・・!!
『むうッ!!』

ガシィィィッ!!

トライアルEを蹴り飛ばし、ダウンを奪う。
『・・・とどめだ。』
二本のワイルドスラッシャーを折りたたみ、カリスアローにコネクトする。
するとベルトから13枚のカードが飛び出し、それらは一枚のカードに合体、カリスの手に収まる。

『WILD』

そのカードを入力したカリスアローは、緑色の光が満ち始める。
『・・・・・・・・・。』
カリスアローを弓を引くように引き絞り、手を離した瞬間、そこからは巨大な緑の渦が巻き起こった!!
それがトライアルEに襲い掛かる!

『きゃああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・。』

その渦は断末魔の悲鳴さえもかき消し、トライアルEを完全に消滅させた・・・。




「やあああっ!!!」

バキィィィンッ!!!

キングラウザーの一撃は、トライアルGの杖を叩き折る!!
『!!?』
「次、行きます!」

『RUSH』

クラブの4をラウズする。

ドガガガガガガガガッ!!!

すると、背中の杖が何本か飛び出し、トライアルGに強烈な突きを何度も合わせる!!
『はうう、ううっ!!!』
吹き飛ばされるトライアルG。
「とどめ、いきます!」
美月が5枚のカードをラウズバンクから抜き出す。

『キングゥゥゥゥッ!!!!』
「!!?」
その時、背後から再びトライアルFが襲い掛かった!
ふろ下ろされる右腕の刃!

パシイッ!!

・・・・が、それを美月は素手で止める。
「一人ひとり相手なら、私だって・・・!!」

バキィィンッ!!

『グアアッ!?』
レンゲルはそれをへし折ると、そのままトライアルFを、トライアルGに向かって投げつけた!

ドガアアアアアッ!!!

『美月!行くぞ!』
「はい!!」
始穂の合図と共に、美月はその手にした5枚のカードを入力し始める!

『STAB』
『SCREW』
『RUSH』
『BITE』
『BLIZZARD』

『STRAIGHT FLUSH』

「たああああっ!!!」
レンゲルは飛び上がる!
その途中、その背の八本の杖が飛立ち、トライアルFとGの周囲を囲むように突き刺さる!!
そこで地面に浮かび上がるのは・・・光り輝く蜘蛛の巣!

「えやああああああああああああああっ!!!!!」
そこに向かって、キングラウザーを下に向かって突き立てる!!

ズドオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

その瞬間、蜘蛛の巣の中ををすさまじいエネルギーが吹き上がった!!


『WILD』

『はあああああっ!!!!』
そこを狙い、ワイルドカリスはワイルドサイクロンを放つ!!!

『ウぎゃああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・・。』
2人の仮面ライダー、最強フォームの必殺技により、2体のトライアルは消滅した!!



『まさか・・・・!!』
ついに一人残される、トライアルB・・・広瀬所長。
「あとは・・・あなただけです。」
『おとなしく一真のベルトを返せ。』

『・・・・・それは出来ないな。私の使命は君たちの抹殺だ。例え一人になっても、使命は果たすよ。』
「広瀬さん・・・・。」
『ならば、覚悟・・・・ウッ!!』
突然、膝を突く始穂。
その次の瞬間、彼女から光の壁が現れ、その姿を相川 始穂へと戻していく。
「く・・・・。ワイルドのカードを、2回使ったせいか・・・。」
息の上がる始穂。
ワイルドは、13枚のカードを同時に攻撃に使うのと同意。
その制御には、すさまじい体力と集中力が必要だった・・・・。

「始穂さん・・・!ですが、まだ私がいます!仮面ライダーレンゲル・キングフォームが!!」
『・・・私を娘達と同じと思ってもらっては困るね。君たちも何度も言っていたが、一対一なら君にも負けはしない。』
「じゃあ・・・。試してみますッ!!」

踏み込むレンゲル!


「待ちなさいッ!!」
「!!?」

『!?』
その時、入り口から声が響き渡った。
「あなたは・・・!!」
そこには、赤い人工仮面ライダー、ラルクがいた。
しかも、その腕には一菜を抱えている!!
「そこまでよ。早くお父さんから離れないと、この子がどうなっても知らないわよ?」
「み、みなさん、ごめんなさい・・・・。」

「か、一菜ァッ!!!!」
思わず叫んでしまう。
「剣崎君。あなたも妹が大事なら、美月ちゃんにお父さんから離れるように言うのね!」

「・・・・・・。」
人間態に戻る広瀬所長。
「助かったよ。詩織。」
「うん。お父さん。やっぱり戻ってきてよかった。まさかあの子達が全員やられてるなんて。」

「け、剣崎さん・・・・。」
「美月ちゃん。・・・・・頼む。」
「はい・・・・・。」
美月はベルトを閉じ、変身を解除する。

「汚い真似を・・・・・!」
悪態をつく始穂。
「なんとでも言いなさい。」
一菜を抱えたまま、ラルクは広瀬さんに近づく。
「お父さん。ここは逃げよう。」
「詩織・・・!?」
「わざわざ戦うことはないわ。夜明けも近い。」
・・・・確かに空を見れば、わずかに白み始めている。
「剣崎君。ここで仮面ライダー全員、運命を共にするのね。」
一菜を抱えたまま、広瀬親子は唯一の出入り口へと近づいていく。

「広瀬さん・・・・!」
「何故なんだ、何故なんだよ広瀬さん!」
美月ちゃんに、オレを縛る縄を解いてもらいつつ、俺は叫んだ。

「何で天王路に手を貸すんだ!あいつがどんなことをしようとしてるか、知ってるだろう!?」
「分かっているわ。でも・・・私が手を貸しているのは、あくまで父よ。父が天王路さんに従うのなら、私も父に従う。」

「広瀬さん!私、私知ってます!広瀬さんは、自分がいやなことには、たとえ相手が親でもはっきり断る、意志の強い人だって!」
「一菜ちゃん。・・・親子の絆は、そんな簡単なものじゃないの。」

「行こう。お父さん。」
「ああ。」
二人は出入り口に差し掛かり、それをくぐった先で止まる。
「さようなら。みんな。」
ラルクはその出入り口にあるスイッチに手をかける。

かちっ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

その出入り口の分厚いシャッターが閉じようとする!!
「!!!!」
「と、閉じ込められます!!」
「動くな!」
「!」
一菜を抱えたまま広瀬さんが言う。

「どうしようもないのか・・・!!!」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドヒュインッ!!

バスッ!!

「!!!!!」

一瞬、何が起こったのか理解できない。
銃声が響いたかと思うと、スイッチが破壊され、そのシャッターは停止した。
「だ、誰!!?」
辺りを見回すも、誰もいない。

ブロロロロロロ・・・・・

「!!?」
その時、遥か遠くの廊下から、エンジン音が聞こえる。

ブロロロロロロロロロロ・・・・!!!

「よけるんだ、詩織!!」

バッ!!

二人が同時に身をかわすと同時、シャッターの向こうから赤いバイクと赤い仮面ライダーが姿を現した!!
「先輩!!!!」

ギャキキキキキッ!!!!

「おくれてごめん、剣崎君!みんな!!」
「橘・・・!」
「橘さん!!」

「橘さん・・・。生きていたの。」
「・・・・冗談。あの程度で仮面ライダーが倒せると思った?」

「剣崎君。ここに隠してあった、あなたのベルトよ!」
それを手渡される。
「橘さん・・!!」
「そうか。それを探していて遅れたというわけか。」
「ええ。あなた達が広瀬たちを引き付けてくれていたお陰で、安心して探すことが出来たわ。」
「あのシャッターを止めたのも、橘さんなんですか?」
「うん。このカードを使ってね。」
彼女の見せるカードは、ダイヤの8。SCOPE BATだった。
「これで、超遠距離射撃を行ったの。狙撃なんて苦手なんだけどね。」
・・・そりゃ、いつも零距離射撃なんてやってるからなぁ・・・。

「おにーさん!!」
「一菜!」
駆け寄ってくる一菜。
二人がレッドランバスをかわした際、抜け出したらしい。
「いや、轢かれるかと思いましたけどね!」
「ごめんごめん。」
頭をかくギャレン。
「・・・これで、本当に形勢逆転だな。」

二人の前に並び立つ、俺達4人の仮面ライダー。
「広瀬さん・・・。」

「・・・・・君達が、私の用意した数々の罠を潜り抜けたのは驚きだったよ。」

(ま、約一名つかまった人がいるけどね。)
と言いたげな、橘さんのいたずらな視線が痛い。

「だがここで、夜明けまで君たちを足止めできれば、私の勝ちだ。」
「ここに仕掛けられた数々の爆弾が、この施設を跡形もなく吹き飛ばすだろう。」
「・・・・そうはさせない。お前たちを倒し、ここを脱出する。」
「私は、天王路さんから与えられた使命を果たすだけだよ。そして、そのためには手段を選ばない。」
広瀬は再びトライアルBに変身する!
『さあ、覚悟したまえ。』



「いや・・・・・・・。君の使命は終わったよ。広瀬君。そして詩織君。」

「!!!!!」

そこにいる全員が、その声の方を見た。

『天王路・・・・さん。』

「天王路!?」

そこには、BOARD理事長に返り咲いていた、あの天王路さんが立っていた。
「ご苦労だった・・・・。」
その隣には、一度俺がここにつれてこられたときに見た、黒いオブジェがあった。

「すべては彼ら仮面ライダーをおびき寄せるためだ・・・。この場所を最後に指定したのも。コレが、ここにあるからなのだよ。」
その黒いオブジェを指差す。
『天王路さん、そんなことよりも、ここは危険です。間もなく夜明けが。貴方がセットしたここの爆弾が・・・。』
「そうだな・・・・・。それなら、早くしなくてはね。」
天王路さんは、その手に二枚のカードを取り出した。

パシャッ!

「!!?」
その時、仮面ライダーラルクの変身が強制解除され、バックル内のカードが、天王路さんに向かって飛んでいく!
それを受け取る天王路さん。
「これで全てのケルベロスのカードがそろった・・・・。」
「ケルベロス!?」
「君達仮面ライダーとの戦闘データを学習し、全てのアンデッドの細胞を併せ持つ究極のアンデッド、ケルベロス・・・。」
そういうと、その三枚のカードを黒いオブジェへ突き刺した!
突き立てられたカードは、そのオブジェの中へ吸い込まれていく・・・。

「あ、あれは・・・・。」
「・・・始穂?」
「なによどうしたの?あの、黒い板が気になるの?」
「あれは、バトルファイトのマスター。・・・統制者の石だ。」
「そんなものが、どうしてこんなところに!?」

ズオオオオオオオオオオッ!!!

ドシッ!

その黒いオブジェから、一体のアンデッドが飛び出した。
黒い身体に三つの頭、右腕に巨大な爪を備えている。

『グウウウ、グルルルルルルルル・・・・・・・。』

血に飢えたその目は、全てのものを破壊しつくさんと、らんらんと輝く。
「ケルベロスよ。お前の使命は全てのライダーを滅ぼし、全てのアンデッドを封印することだ。」
それに頷くケルベロス。

「では・・・・。早速その力を試してみるとしよう。」
「・・・・彼を使ってね。」

その視線の見つめる先は・・・。広瀬さん!

『て、天王路さん!?』
「ご苦労だった。・・・・娘と共にゆっくり休みたまえ。・・・・ははははははは!!!」
ケルベロスが、その爪先をトライアルBに向けた!!

「天王路・・・・!!」




1.「広瀬さんを、二人を助けるんだ!!」俺はブレイバックルを起動させる。
2.「アレはやばいわ・・・。逃げるのよ!爆弾も爆発する!!」橘先輩は逃げるように促す。
3.「相手がなんだろうと、アンデッドならば倒すだけだ。」始穂はケルベロスに向かう!
4.「お父さんッ!!!!」広瀬さんは、ケルベロスとトライアルBの間に割って入る!




第84回「野望の終焉」



ケルベロスが駆け出した!
狙うのは広瀬さん・・・トライアルB!
「広瀬君・・・・。トライアルシリーズの研究データ、ならびに今までのBOARDの総括、ご苦労だった・・・。」
「最後に、君の数々の研究の成果であるケルベロスの、生贄となりたまえ。フハハハハハハ・・・!!」
天王路の笑い声が響く。

「広瀬さん・・・・!!」
用済みになったから始末するだって・・・・?
そんな、そんな事させない!
「もう・・・誰の犠牲もごめんなんだ!!!」

『TURN UP』

俺はブレイドに変身、ケルベロスに向かった!!

「一真!!」
「く、やっぱりこうなるわよね・・・!!」
「剣崎さん!」

『CHANGE』
『TURN UP』
『OPEN UP』

後ろの3人も、それぞれライダーに変身した!

「愚かな・・・・。」

「ウェェェアッ!!」
振りぬくブレイラウザー!

ガキィィン!!

「!」
それを、なんなくその腕で止めるケルベロス。

ザギィィィン!!

「うあああっ!!!」
そしてその爪で切り裂かれる!
『はあああああっ!!!』
次は始穂が襲い掛かった!
ジャンプから繰り出す、ドロップキック!

ガシィッ!!

『・・・なに!?』
よけることもせず、ただそれを受け止める。
ダメージは、ない・・・・!!
その足を掴み、地面に叩きつける!

ズドオォォンッ!!

『うあああっ!!!』
「く、あいつ、強い・・・!!」

「広瀬さん!一菜ちゃんと外へ逃げて!!」
「美月ちゃん・・・。私たちを、助けるの!?なんでよ!」
「私達仮面ライダーの使命は、人々を守ることなんです!さあ早く!」

「詩織・・・。彼女達の言うとおりにしよう。」
「お父さん・・・・。うん。」
二人は肩を貸しながら、この場を去る。
「おにーさん、みんな・・・・・。」
一菜もそれについて出て行く。

「逃げたか・・・・。まあいい。君たちをここで一人残らず葬り去る。ケルベロスよ。存分に暴れるがいい・・・・。」

『グアウオオオオオオオオオッ!!!!!!!』
ケルベロスが猛る!
「この、犬っころめぇっ!!」
橘さんは銃を引き抜き、その弾を浴びせる!
『グルルルルルアアアアアアアッ!!!』
「!!!」
だが、ケルベロスはものともせず突っ込んでくる!!

ザギィィンッ!!

「うあああっ!!!!」
「橘さん!!この、こうなったら・・・・!」

『ABSORB QUEEN』
『EVOLUTION KING』

美月ちゃんに、再びキングの力が宿る!
「烏丸君の開発した、キングフォームか・・・・。だが、それとてケルベロスの前では無力だよ。」
「やってみなくちゃわかりませんッ!!」
レンゲルはキングラウザーを振るい、ケルベロスに向かう!
「えやあああああっ!!!」

ガキィィンッ!!

やはりそれは爪で止められた!
『グルルルウッ!!』

バキィィンッ!

脇を狙って拳を入れる!
「ぐうっ!!」

バキッ!バキッ!バキィッ!!

続けて何度もその顔を殴りつける!
「うあうッ!あうっ!!ううううううっ!!!!」
「やめろおおおおおっ!!!!!」

ザギィィンッ!!

『グルオオッ!!?』
その背中を切りつけた!
『グルアアアッ!!!』
振り向きざまにその爪を振るう!
「ぐうっ!!」

ガギィィンッ!!!

その爪をブレイラウザーで受け止めた!
が、その衝撃は衰えず、オレを吹き飛ばす。
転がりながら体勢を立て直し、再び剣を構える。

「剣崎・・・さん・・・。」
ケルベロスが離れ、気が緩むと同時、彼女の変身は解除された。
ガシャリと、ラウズアブゾーバーも落ちる。
「美月ちゃん、下がっていて。俺だけはさっきまで戦っていなかったから。だから!」

『一真・・・。』
「始穂、君も休んでいるんだ。こいつは、俺が!!」

「面白い。たった一人でケルベロスに挑もうというのかね・・・?」
『グルルルルルルル・・・・。』

「ウェェェェェアッ!!!!」
ブレイラウザーを手に、ケルベロスに向かう!

ビュウッ!!

「!!!」
身体をそらし、かわされる!

ビュッ!!

もう一度振るった剣もかすりもしない・・・!!

ガギィィンッ!!!

「ぐううううううっ!!!!!」
その空いた隙を、ケルベロスは突く!
凶悪な二本の巨大な爪が、容赦なくオレを襲う!


ザギィィィンッ!!!

「うあああああああああっ!!!」
ブレイラウザーを弾き飛ばされ、地面を転がされる。

「まるで話にならないな。ケルベロスよ。やれ。」

ヴウウウウウ・・・・。

その右肩に着いたケルベロスの顔が、光り始める・・・。
『グルルルルルアッ!!!』

ズビイイイイイイイイッ!!!!

「!!!!!!!」
そこから緑の光線が放たれ、オレのいる近くの床を吹き飛ばした!!!

ドガアアアアアアアアアアッ!!!!!

「ぐああああああああああああっ!!!!!」

『か、一真アアアアアアアッ!!!!』



爆炎に飲まれる中、始穂の声だけが聞こえた。


「コレで終わりだな仮面ライダー諸君。」
こちらに近づいてくる天王路。

「ぐ、く・・・・。」
・・・まだ生きている。でも、立ち上がる気力が・・・。
「では最後だ。君達の持っているカードをいただくとしよう。」
『グルルル・・・。』
ケルベロスがオレの方をむく。
『グルルルアッ!!!』
そのとき、ケルベロスの背にある管から、強烈な吸引力を持った風が放たれた!!
「コレがこのケルベロスの能力・・・・。アンデッドを封印したカードを吸収、自分のものとする・・・・・。」
「そしてこのケルベロスこそが、ジョーカー以外で唯一、他のアンデッドを封印する力を持っているのだ!」
「な、なんだって!?」

「君達のカードをいただいた後、次はジョーカーを封印しよう。そして最後のカテゴリーKを封印し、バトルファイトの勝者はケルベロスとなるのだ・・・。」

「ああああっ!!?」
美月ちゃんのカードが、ケルベロスに吸収される!
「ふははははははは・・・・・!次は君だよ。剣崎君・・・。」
ケルベロスは美月ちゃんから全てのカードを奪い取ると、オレに向かってゆっくりと近づいてくる・・・。
「く、くそ!取られてたまるか!!!」

「無駄だよ。この力に抗うことは出来ない。」
『グルルルルルル・・・・。』
だんだん風が強くなってくる。
「このままじゃ・・・!!」

「剣崎君ッ!!!」

「!!!!」
その時、橘さんがオレの目の前に躍り出た!

ガシャッ。

「覚醒するのよ!!」
橘さんが落としたのは、美月ちゃんが使っていた、オレのラウズアブゾーバー。
「橘さん、これは・・・。」
「拾ってきたの!さあ、私が盾になっているうちに、早く!!!」

「こしゃくな・・・。ケルベロスよ。ギャレンのカードも吸い取ってしまえ!」
『グオオオッ!!!!』
「ううううううううううっ!!!!!」

やがて、橘さんの持つカードも吸い取られてしまった!
「俺は・・・・、俺は!!!」

『ABSORB QUEEN』
『EVOLUTION KING』

オレの頭上に、13枚のカードが舞い踊る!
そしてオレの身体に、それらは一枚一枚融合していく・・・・!

またオレの中に、アンデッドの声が聞こえてくる。
・・・・・が、そんなもの、今の俺は聞く耳を持たない!!

「またキングフォームかね?先ほどのレンゲルとの戦いで、それが無駄と分かっているはずだ。」
「俺は、お前を許さない!!」
天王路の言葉に耳を貸さず、俺は重醒剣キングラウザーを握り締めた。
「自分の欲望のために、広瀬さんを利用し、俺達を利用し、アンデッドをよみがえらせ、多くの人々を苦しめたお前を、俺は許せない!!!!」
「すべては・・・・。私が支配者となるために、必要だったことだ。君達ライダーを作り、アンデッドを封印させたことも、全て私の計画通りだ。」
「あとは、君達ライダーを始末し、全てのアンデッドを封印する。そして私は、神の声を聞くのだ・・・。」
「人々を苦しめた?・・・・そんなもの、感傷に値しないがね。今の人類は邪悪な心に満ちている。そんなものがいくら死のうと、私の知ったことではない!」

「許さない・・・許さない!!」
「御託は、このケルベロスを倒してからにして欲しいね。」
『グオオオオオオオッ!!!』

俺は五枚のカードを手にする。
それらをキングラウザーに入力、オレの最大の技は起動する・・・!!

『ROYAL STRAIGHT FLUSH』

五枚の巨大なカードが、ケルベロスの前に並んだ!!!
『グオオオアアッ!!!!』
「なにっ!!?」
だがケルベロスは、そのカードを突き破りながらこちらに向かってくる!!

ザギィィンッ!!!

「うあああっ!!!」
爪で突かれ、大きく吹き飛ばされてしまう!

「ファハハハハハハハ・・・!!ケルベロスは、誰にも止められない!」

「ぐ・・・・。」
俺は身体を起こすと、向かって来るケルベロスを睨む。
「やれ、ケルベロス!彼さえ始末すれば、もうお前に敵はない!!」
『グオオオオオオオ・・・・・。』

ヴウウウウ・・・・。

ケルベロスの爪が、紅く光り始める。
「みせてやれ。人工仮面ライダーの技の原点を!」
『グアアアッ!!!!!』

バシュウッ!!!

爪から放たれたのは、紅く輝く光の矢・・・!!

ズバアアンッ!!

「うううううううううっ!!?」
それをキングラウザーで受け止め、何とか切り抜ける。
「ほうやるな。だが次はかわせるかな・・・・・?」
爪が金色に輝きだす。
それを大きく上へと掲げていく・・・・。

「あの構えは・・・・。」
桐生さんの変身した、あのライダーの技だ!!
忘れもしない、俺はあの技の前に、剣を叩き折られたことがある。

仮面ライダーグレイブの必殺技グラビティスラッシュが、今オレの前に、再び襲いかかろうとしている・・・!!

ダンッ!!!!

ケルベロスが跳んだ!
大きく爪を振りかぶり、俺へと振り下ろす!
「ウェェェェェアッ!!!」
俺はそれに剣を合わせようと、キングラウザーを振りかぶった・・・。





ズバアアアアアアアアアギイインッ!!!

・・・え?
その音は、俺が剣を振ろうとした瞬間に起こった。
見ればオレの前には黒い影が立ちはだかり、緑の鮮血が飛んだ。
・・・・・俺はすぐに、それがカリス・・・。始穂だと理解する。
「かず・・・ま・・・。」
強大なダメージは、始穂の変身を解除させる・・・。
俺は倒れこむ始穂を受け止めた。

「始穂・・・・!!」
「一真・・・。私は、お前を助けるって、一菜に約束・・・・したんだ。だから・・・・」
「始穂、始穂・・・!!」
そのまま、気を失う始穂。
オレの手には、彼女の血がべっとりとついていた。


・・・・・・・・・・・・・・・!!!!

「命拾いしたようだな剣崎君。」
「俺は・・・もうごめんだ。」
「んん・・・・?」
「こんなのは・・・もうごめんだ!!!!!」

オレの手についた始穂の血から、巨大な剣が現れる!
それはアンデッドの血を媒介に呼び出した、カテゴリーKの大剣、オールオーバー!
『ウェェェェアアッ!!!!!』
振り下ろすキングラウザー!
それを受け止めるケルベロス・・。
が、左手に握られたオールオーバーで、続けざまに斬る!!
『グアアアアアッ!!!』
『始穂を!!!美月ちゃんを!!!!橘さんを!!!!!』

ザギィガギィガギィィズガギィィィンッ!!!!!

『もう誰も、傷つけさせはしないいいッ!!!』

ズガァァァンッ!!!

キングラウザーの強烈な突きが入る!!

ドサッ!!

『グウウウ、グルルルルルルル・・・・。』

『うおおおおああああああああああああああああっ!!!!!!!』
オレの叫びと共に、オレのライダースーツに施されたレリーフから光が浮き出し、二本の剣に吸い込まれていく!
剣を十字に構え、腰を低く落としていく・・・。
オールオーバーを逆手に持ち変えると、俺は駆け出した!!

『STRAIGHT FLUSH』

『ウェェェェェェェェェイイイイッ!!!!』

バシュウウウウッ!!!

左手のオールオーバーでケルベロスを水平に切り裂き、

『ウアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』

ガシィイィィィィッッ!!!!

右手のキングラウザーを縦一文字に振りぬいた!!!

『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!』


ドガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!

この広い空間をも震わせる断末魔を上げ、ケルベロスは地に伏した!!
「う・・・・。」
俺はコモンブランクをケルベロスに投げつけた!
「っ!!!や、やめろ!!!」
・・・・天王路の声も時すでに遅く、カードはケルベロスを封印し、オレの手に収まった。

「バカな・・・・。そのカードを、そのカードを渡すんだ!!!」
「なんだと・・・?」
「それがなければ、人類は、人類は滅んでしまうんだぞ!!」

「何を言って・・・・」

ドガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!

「え!?」
そのとき、とおくから爆発音が響き渡った。
「ま、まさか・・・・。」
「この研究所の爆弾が、起動し始めたのだ・・・。」
俺は窓から覗く空を見る。
夜が・・・明けようとしている!!

「ケルベロスを封印した跡に、私達の奪われたカードが・・・。みんな!!早く回収して!!」
「この研究所は、爆発して跡形もなくなるわ!!!
「は、はいっ!!!」
橘さんの声に、俺も一緒にカードを拾い始める!

先ほどの爆発で、床は揺れ始め、天井からは小さな破片が落ちてきている。
いまに大きく崩れだすに違いない・・!!

「コレで全部ね・・・。みんな、早く逃げるのよ!!!」
一斉に出口に向かって駆け出す!!

「ははははは・・・・はははははは・・・・・・。私の、私の計画が・・・・。」

「・・・・。」
俺はその背に始穂をおぶっていたが、その天王路の声に気がつき、足を止めた。

「私がいなければ、人類は滅ぶ・・・・。これで、コレで全て終わりだ・・・・ファハハハ・・・・アハハハハハハハハハハ!!!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・。

だんだん崩壊していく訓練所。
あの黒いオブジェも瓦礫の中に消えていく・・・。
「天王路・・・・さん。」





1.俺は始穂をおろし橘さんに任せ、天王路さんの手を取った。
2.俺はぐっと唇をかみ締めた。「今までの、今までの報いだ・・・・・・!」




第84回「平和を喜ぶ声・混沌を望む嘲笑」



「橘さん!!」
「え!?」
俺は橘さんを呼び止める。
「始穂を・・・。お願いできますか?」
「え?・・・・まあ、本人は嫌がるかもしれないけど。」
依然彼女は気絶したままだ。
「・・・何をする気?」
「俺は・・・全ての人を助けたい。やっぱり、この想いは変えられないんです!」
「剣崎君!!」

彼女の止めるのも聞かず、俺はブレイドに変身、天王路の元へ向かった。
落ちてくる瓦礫を砕き、俺は彼に近づく。

「ハハハハはははは・・・・あはははははは・・・・・。」

狂ったように笑い続ける天王路さん。
「・・・!!」
俺は意を決すると、駆け抜けざまに天王路さんを掻っ攫い、ここを抜け出す!
「はははははは・・・・。」
彼は、もう正気を失ってしまったのだろうか・・・。




ドドオオオン・・・ドガアアアアア・・・・

「剣崎さん・・・・。」
美月の見つめる先で、いよいよ研究所は破壊されていく。
爆発は止まらない。
「大丈夫よ。剣崎君はきっと出てくるわ。」
「はい・・・・。」

「・・・・・一真?」
「あ。」
さくらの背中の始穂が気がつく。
「気がついた?」
「一真が・・・・いない。」
辺りを見回し、彼女は不安そうにつぶやく。
「大丈夫。きっと出てくる。きっと・・・・。」

「剣崎君・・・・。」
木の陰にもたれかかる広瀬所長、それを診る詩織。
「おにーさん・・・・。」
一菜も、その出入り口をただ一点に見つめている。

たたたた・・・・・。

「!」
「あ!」
「一真・・・・。」

俺は炎や煙から天王路さんをかばいつつ、ついに研究所から抜け出した!
その次の瞬間、出入り口は瓦解する。

「剣崎君ッ!!!」
橘さんが手を振るのが見える。
みんな・・・無事だ。
俺は、そこへと向かって歩いた。

「天王路を助けたって訳。・・・・ま、そのほうが貴方らしいわ。」
天王路さんを木の陰に下ろす。
彼は、何も言わなかった。
「ケルベロスを封印した今、もう天王路さんの野望は潰えましたからね。」

「これで、戦いは終わりですね・・・・。」
美月ちゃんが、爆発炎上する研究所をみつめ、感慨深そうに言う。
「そうだね。これで始穂とあのカテゴリーKが争わなければ、もうこれ以上戦いは起こらない・・・。」



ブロロロロロロロロ・・・

「ん?」
そこへ、黒い高級車が現われた。
「こんなところに・・・?」
車は俺達の近くで止まると、その後部座席が開く。

ガチャ。

そこから出てきたのは、まだ幼い美少女・・・。でも、年齢を感じさせない威厳を放っている。
「研究所が爆発したと聞いて、飛んで来ましたの。」
「き、きみは?」
「お退きなさい。」
「!!」
しずしずと歩き、彼女は、俺が下ろした天王路さんの前で止まる。
「ご無事で・・・・何よりですわ。」
助手席と後部座席から、いかつい男達が出てくる。

思わず引く俺。

彼らは天王路を抱えると、その高級車に載せる。
「仮面ライダー・・・・。私は感謝などしません。」
「え!?俺達を、知っているのか!?」
「・・・あなた達は大変な恩を受けているのです。このくらいは当然のこと。」
ぷいときびすを返すと、彼女の高級車に乗り込み、去っていった。



「・・・なんだったんだ?」
「彼女は、天王路 博美。BOARD理事長・天王路 博史のたった一人の娘よ。」
「天王路さんの、娘・・・・!?」
「じゃあ、お父さんを迎えに・・・・。」
美月ちゃんが、車の去ったほうを見る。

「あの様子だと、天王路のやろうとしていたことは知らないみたいね。」
「でも良かった。・・・・天王路さんを助けたことは、間違ってなかった。」
「・・・俺みたいな子が、また増えるところだった。」
「剣崎君・・・。」

「さあ、みんな。帰ろうよ。俺達の居場所に。」
「そうね・・・・。もう疲れたわ。昨日から、ずっと動きっぱなしで・・・。」
「そうですね。わたし、なんだか眠くなってきました・・・。」

「わたしが、みんなを乗せていこう。」
広瀬さんが立ち上がる。
「あなた、また私たちを騙そうって言うんじゃ!?」

「違うわ!お父さんはそんなことはしない!」
娘の方の広瀬さんがかばいに入る。
「わたしは天王路さんに見捨てられた・・・。でも、わたしにはまだ、BOARDの所長としての勤めが残っているからね。」
「そうですね・・・・。広瀬さんは、やっぱりBOARDの所長ですよ。」
「剣崎君!もう、この人はトライアルなのよ?」
「始穂は、アンデッドですよ?」
「・・・・・・・・。」
「う・・・・・。もう、分かったわよ!」

「ふふふ・・・。」
「あははは・・・・。」
「あはははははは・・・・!!」

みんなの笑い声がこだまする。
戦いが終わって、心から安堵した笑い声。
願わくばこの時間が、ずっと、ずっと続きますように―――






「くくく・・・。そうか。ケルベロスのカードか・・・・。」
「アレがあれば、ジョーカーを封印できる。クククク・・・・。」




俺達は研究所に戻り、一日をゆっくり過ごした。

さて、今日はどうしようかな?

1.橘さんに会いに行く。
2.始穂の怪我の様子を見に行く。
3.美月ちゃんに会いに行く。
4.広瀬さんに会いに行く。




第85回「勝ち残るために」




・・・・また、この部屋で目を覚ますとは思わなかった。
あの日ここを出て行き、次はここに軟禁され、そして、今は堂々とここにいる。

「う〜ん・・・。」
身体を伸ばし、朝日を浴びる。
平和に、なったんだよな・・・・。
ケルベロスを倒してから二日たった。
あれから、アンデッドサーチャーには何の反応もない。
例のカテゴリーKは、本当に戦うことをやめたのだろうか?

・・・少なくとも橘さんは、まだ警戒しているらしい。
その証拠に、オレの手にはベルトがある。
「まあ、用心に越したことはないけど・・・・。」

今日は、始穂に会いに行こうと思う。
昨日はずっと眠っていたから。
キングフォームの影響か、やたらと良く眠っていた。

俺は廊下を歩き、始穂のいる病院棟へと向かった。





「始穂・・・・。入るよ。」
「あ!・・・うん。」
始穂の病室に入る。
・・・といっても、医療器具は何もなく、彼女自身に包帯が巻かれているだけ。
彼女は、アンデッドだから、簡単な治療が施されただけだったのだ。
「具合はどう?始穂。」
「うん・・・・。ずいぶん良くなった。」
そういって、自分の背中をさする。

「そうか。」
俺は部屋にある椅子に腰掛ける。
・・・しばらく、何も話さずに過ごす。

「ねえ、一真。」
先に話しかけたのは始穂だった。
「なに?」
「怪我が治ったら、ハカランダに行きたい。」
「ハカランダに?」
「うん。春花さんと天乃ちゃんに、一真の事を教えたい。」
「そ、そっか・・・・。」
「うん。一真も、来てくれるよね・・・・・?」
「も、もちろんだよ。始穂の大切な人たちに、改めて挨拶しなくちゃ。」

「きっと祝福してくれるよね。私たちのこと。」
「うん。」
「ふふ・・・。本当、そうなるといいな・・・・。」
「始穂・・・・?」

「ねえ。前に言ったよね。もしどうしようもなくなったら、私を封印してって。」
「バ、バカな事いうなよ。俺が始穂を封印するなんて・・・。」

始穂はその言葉に、ふるふると首を振った。

「一真は、前に私だけを守るって言ってくれた。嬉しかったよ。でも、やっぱり一真は、全ての人たちを守りたいって思ってる。」
「う・・・・・・・。」
「ふふ。いいの。それで。一真は。」
「始穂・・・。」
「だから、もし私が世界を滅ぼしそうになったら、私がそんな存在になってしまったら、一真は私を封印して。それだけが唯一、世界を救う方法だから。」
「ダメだ、ダメだよ始穂!俺にはそんなこと出来ない!・・・君を失うなんて、考えられない・・・・。」
「一真。・・・私は人間じゃない。こんなことがなければ、アンデッド開放なんて事がなければ、私は一真と会うはずがなかった存在。」
「だから、初めからいなかったって、そう思って。・・・・もし、そんなことになったら。」
「そんな・・・そんな悲しいこと・・・。」

がちゃ。

「おっと。これはこれは。水を差してしまったかな?」
そこへ、ノックなしでドアを開く音と、遠慮のない声が発せられた。
入ってきたのは、メガネをかけたやや優男風の男。
あった事は・・・ないはずだった。
だが、その男を見た始穂の顔が、見る見る険しくなっていく。

「カテゴリーK・・・・。何をしにきた!?」
「カテゴリーK!?」
「ククク・・・。人間とアンデッドの恋とは、なんとも滑稽な事だな。」
「それがジョーカーとなれば格別だ。愛する女の正体は、世界を滅ぼす死神なのだからな。クククク・・・。」
「答えろ!!・・・・何をしにきた!?」

「知れたこと。小僧。お前のもつケルベロスのカードをもらいに来た。」
「何・・・・!?」
「天王路の造り出した人工アンデッド、ケルベロス・・・。あれは他のアンデッドを封印する力を持っている。」
「カードのままでも、その力は行使出来るはずだ。その力を以ってそこの女、ジョーカーを封印する。」
「ジョーカーを、始穂を封印してどうするつもりだ!」

「俺は・・・・。俺達だけの世界を作る。人間など一人もいない素晴らしい世界だ。」
「お前を封印し、俺は世界を思い通りに変える、万能の力を得るのだ。」

「そんなこと、そんなことさせるもんか!!」
「・・・お前にしては浅はかだったな。力づくで奪いに来たのだろうが、ここには4人の仮面ライダーがそろっている。いくらお前といえども・・・。」

「ああ。いくら俺でも4人相手は少々分が悪い。だから、少しハンデをもらうことにした。」
「ハンデ・・・・?」

「ジョーカー。さっきあの親子の店によってきたぞ。」
「!!?」
「・・・お前があの店に住み着いていたのは、あの時の俺達の争いに巻き込まれた、人間のためなのだろう?」
「戦いに、巻き込まれた・・・・!?」

「・・・・・・・・・・。」
「あの主人も娘も、父親に会いたいだろうにな。」
「・・・・なぁ?ジョーカー。」
「父親に・・・会いたい?」

「・・・・・まさか、お前・・・・!?」
「明日の夜明け、この先の岬にケルベロスのカードをもってこい。お前達の誰でも構わん。・・・だが、オレのところへ来るのは一人だけだ。」
「もし誰かが隠れていたら・・・・。さて、あの親子はどうなるかな?クククク・・・・。」

「貴様アッ!!」
「・・・・おっと!オレを封印しようなんて思わないほうがいいぞ。その瞬間その女の勝利が確定し、世界は滅ぶのだからな。」
「明日の夜明けだ。忘れるなよ。・・・・ハハハハハ・・・・!」

その男は去っていった。
「始穂・・・。」
「・・・橘に相談しよう。」

奴ははっきりと口には出さないものの、春花さんと天乃ちゃんを人質にしているのには違いない。
俺達は二人の安全のため、やむを得ずケルベロスのカードを持って指定された場所に行くことにした。

・・・さて、誰が行く?



1.俺が行く。始穂の大切な人を守るんだ。
2.「私が行くわ。あいつには借りもある。」
3.「私が行きます。私が相手なら、きっと油断すると思うんです。」
4.「奴の狙いは私だ。・・・私が行けば済むことだ。」




第86回『BURNING』




「やっぱり、私の悪い予感が当たったわけね。」
所長室で話し合う中、橘さんがそういう。
「ええ・・・。もし俺がベルトを持っていなかったら、あの場で殺されていたかもしれない。」
「まあ、間違いなくケルベロスのカードは奪われていたわね。」
「奴は春花さんと天乃ちゃんを人質にとった。二人を助けなくちゃ・・・。」

「・・・・で、どうするね?」
所長の席に着く広瀬さん。
「一人でカテゴリーKの元へいく。それは奴と一対一で戦うことになる可能性があるんだ。」
「しかも、奴を封印すればジョーカーの勝利が確定する。」
一同は、一斉に始穂を見た。

「・・・・・・・・。」
「私は、カードを渡すべきではないと思う。」
「!!!!!」
今度は、橘さんに注目が集まった。

「な、何を言うんですか、橘さん!!」
「ケルベロスのカードが奪われれば、いつかジョーカーを封印される。・・・そんな危険を冒すことはないわ。」
「橘・・・!」
「それに、カードを渡しに行くこの中の誰か。その誰かも無事で済むとは限らない。」
「コレはリスクが大きすぎるのよ!・・・・人間二人の命と引き換えにするには。」

「お前・・・・!!」

ガッ!!

「始穂!!」
橘さんの胸倉を掴み上げる始穂・・・・。
「放しなさい。・・・・世界中の人間の命には換えられない。分かるでしょ?」
「私は・・・・。お前を見損なっていたようだ。」
始穂は手を離すと、ぷいときびすを返し、外へ行こうとする。
「どこへ行く気?」
「・・・決まっている。カテゴリーKのところだ。ケルベロスのカードをもっていく。」
「そしてみすみす封印されるの?」

「・・・・私をなめるな。」
鋭い眼光が、赤い髪の女性を射抜く。
「・・・・そうね。あなたがあの二人を人質に取られて、それでもカテゴリーKと戦えるなら。」
「・・・・!!」

「貴女には何も出来ない。・・・・頼むからここでおとなしくしているのね。」
「・・・背中の傷、完治してないんでしょ?」
「・・・・・・・・・・。」

橘さんは所長室を出て行く。
「橘さん!!」
思わず俺は呼び止めた。

「・・・・本当に、本当に見捨てるんですか!?」
「・・・・・ええ。たった二人の人間のために、世界中の人間を危険にさらすわけには行かない。」
「橘さん!!!」
「貴方もおとなしくしているのね。・・・・彼女に付き添っていて上げなさい。」

バタン。

「広瀬さん!!俺は、俺は納得できない!!」
「・・・だが、彼女の言うこともある意味正しい。・・・・きっと橘君も辛いだろう。」
「あの、その人質にされてるお二人を、今助けることは出来ないんでしょうか?」
「・・・・残念だが。その二人は今この瞬間も人質にされているわけではない。」
「え?どういう?」

「ハカランダの様子を見に行かせたところ、なんら異常はなかったらしい。おそらくカテゴリーKは、自分とは別の何かに二人を見張らせているようだ。」
「合図したら、殺せと、命令されているのかもしれない。」
「そんな・・・・。何とかならないんでしょうか?!」
「・・・・難しいだろうね。」

「く・・・!!!」
拳を握り締める始穂。

ガチャッ!!

「どこへ行くんだ、始穂!?」
「ハカランダに行く。このまま見てるだけなんてできるものか!!」
「俺も行く、始穂!!」

バタンっ!!

「はぁ・・・・。本当に、どうしようもないのかね・・・・。」




「・・・・・ごめん。みんな。」
研究所の外で、レッドランバスにまたがる橘さくら。
その手にするのは、ケルベロスのカード。
「この決着は、私がつけるから。」





「ん・・・・・・?」
ギラファアンデッドはその背後の気配に気がつく。
「おやおや、ずいぶんとお早いご到着だな。」
「・・・・・・・・・・。」

「ケルベロスのカードを持ってきたのか?」
「ええ。」

ヒュンッ!!

さくらはそのカードをギラファアンデッドに投げつける。

パシッ。

「フン・・・・確かに。」
「約束よ!ハカランダの親子を解放なさい!」
「そうはいかない。あの親子はジョーカー封印の大きな切り札だ。やすやすと手放せると思うか?」
「・・・・・・・・。そう、やっぱりそういうつもりだったんだ。」
「お前こそ、こうなると分かっていて、何故一人で来た?」
「私は、嫌われたからよ。」
「・・・何?」
「だから誰も心配しない。誰も悲しまないわ。」

彼女はベルトを取り出した。
「・・・・正気か?オレを封印すれば、世界は滅ぶんだぞ?」
「世界は・・・滅ばない。私はあの子を、始穂を信じる。」
「彼女の中の、人を愛する心を、私は信じる。」
「だから・・・・貴方をこの場で封印する。始穂に、手出しが出来ないように・・・!!」

『TURN UP』

さくらの目の前に青い変身のフィールドが出現、彼女はそれを潜り抜け、ギャレンへと変身する・・・!
「馬鹿者が。・・・・ジョーカーを信じるなどと、正気の沙汰ではないな。」
「そうかもね。でも・・・。貴方が勝利者になるよりはずっとマシよ!!」

ドヒュイドヒュインッ!!!

火を噴くギャレンラウザー!
だが、その弾丸はギラファアンデッドには届かない。
「無駄だ・・・。前回の戦いで理解したと思っていたがな。」
その周りには、飛び道具の侵入を防ぐバリアが張り巡らされているのだ!
「そうだったわね・・・・。でも、今のわたしは、あの頃の私とは違うッ!!!」

『ABSORB QUEEN』
『FUSION JACK』

ラウズアブゾーバーを起動、彼女の背に六枚の羽根が備わる。
「たああああああっ!!!」
ギャレンJフォームはその羽根を展開し、空中からギャレンラウザーを放つ!

『・・・・・・。』
だが、アンデッド態に変身したカテゴリーKには、それすら通用しない。
「く・・・!」
『クククク・・・・。』
両手の剣、へルター・スケルターにエネルギーがたまり始める・・・。
『ィイィィヤアッ!!!』

その剣から、斬撃の波動が放たれた!!
「ううっ!?」
かろうじてかわすギャレン!
『どうした?飛んでばかりではオレを倒せないぞ?』

またくつくつと笑うギラファアンデッド。
『そっちがこないのなら、こっちから行くぞ!!』

バッ!!

飛び上がった!!
その跳躍はあっという間にギャレンに迫り、

ガシッ!

その足につかまった!
『いい加減飛ばれるのも鬱陶しいぞ・・・!!』

ザギィィン!!

その背の羽根を切り落とされた!
「うっ、うわああああああああっ!!!!」
バランスを崩し、落下するさくら!
ギラファアンデッドはそれを見届けると、悠々と着地する。
「う・・・・・。」
ジャックフォームが解ける。

『ハアアアッ!!!!』
そこへすかさず追撃を加えてくる!
「くっ!!」

ドヒュイドヒュイドヒュイッ!!!!

苦し紛れに撃つ弾も、カテゴリーKには届きもしない!

ザギィインッ!!!

「ぐああああうっ!!!!」
その一撃はギャレンの装甲を切り裂く!
『バカな奴らだ!自ら世界の破滅を招くとは!』

ザギィィンッ!!

「うううっ!!」
『お前も、もっとオレに戦いを楽しませて欲しいものだな・・・!』

グアキィィィンッ!!

「うああああっ!!!」
『あの天王路という男が仕組んだ今回のバトルファイト・・・。どうやら失敗に終わったようだ。』
『やはり万能の力は・・・・。我々アンデッドがいただくべきものだ!!』

バキィィィッ!!

「うああああああああっ!!!!」
その頭部への一撃は、ギャレンの仮面を砕く・・・!!
赤い長い髪を振り乱し、仰向けに倒れ伏せるさくら。
『ククク・・・。』
ゆっくり近づいてくるギラファアンデッド。

『・・・やはり、お前は美しい。』
「な、なに?」
奴の口から出たのは、思いもよらない言葉。
『お前の恐怖に引きつる顔は、何より美しい。ククク・・・・おかしいな。俺が人間に興味を持つなど。』
「そうね・・・。まさか以前戦ったときに私に止めを刺さなかったのは、私の美貌が惜しかったからかしら?」
『クククク・・・。』
「・・・何よ、否定しないわけ。」
『お前をわが子飼いとし、万能の力を手に入れた暁にアンデッドへと転生させ、永遠に俺の元に置くのも悪くない!』
「な、何を言ってるの・・・。」
ゆっくりと起き上がるさくら。
『どうだ!?今ここで犬死するより、永遠の命を手に入れたほうが、よっぽどいいと思わないか・・・・?』
「・・・貴方も、人間くさいところがあったのね。欲に正直で。」
『ククク・・・。欲があるからこそ、アンデッドは万能の力を欲する。種の本能以外に自分への報酬を求めるのは当然じゃないか・・?』

『さあ、どうする?赤い仮面ライダー。』
「そんなの・・・・頷くと思ってるのッ!!」

バッ!!

銃を向けるさくら!
『遅いな!』

バキィン!

ギャレンラウザーが宙を舞う・・・・。
「!!!」
『ハアッ!』

ガキィィン!!

「ぐううっ!!!」
斬り付けられながらも、ラウザーを追うさくら!
ギラファアンデッドに背中を向ける・・・・。
『バカめ!!!』

ザシュイッ!!!!

「うっ!!?」
その剣がさくらの背中を切りつけたとき、その長い髪は断ち切られ、周囲に舞った・・・。

ガシッ!!

ギャレンラウザーを掴む!!
『むうっ!!?』
その髪が潮風に舞い、ギラファの視界を阻む。
「たあああああああああっ!!!!!」
さくらはかけだし、ギラファアンデッドに近づき・・・

ぎゅっ!

『なに!?』
「どう?欲しがってた女に抱かれた気分は!?」

ドヒュドヒュドヒュドヒュッ!!!

『グウアア、アア、アアアアアッ!!!!!』
ギャレンはその密着した状態から、ギャレンラウザーを叩き込む!!
『おのれ、放せええええッ!!!!』

ガキィィンッ!!!

「ううううっ!!!!」
ギラファもまた密着した状態で抵抗する!
やがて、ついにその手は離された!
『ハァ、ハァ、おまえ・・・・。もう、もうお前などいるものか!!!』
「あら・・・。ハァ、遠慮しないで、もっと私に抱かれてみればいいのに。ハァ、ハァ・・・。」

『FIRE』
『UPPER』

カードをラウズするさくら。

『イヤアアアアアアッ!!!』
その手の剣を振るい、ギャレンに襲い掛かる!!
「だあああああああああああっ!!!!!」
炎を纏った拳をその剣にあわせる!!!

バギィィィィィンッ!!!!

さくらの拳はそれを砕く・・・!!!

ブシュッ!!

「・・・・・ッ!!!!」
が、さくらの拳もスーツが引き裂かれ、血が吹き出る。
「ぐ、ぐぐぐぐぐ・・・・!!!」
その手でカードを再びラウズする。

『BULLET』
『RAPID』
『FIRE』

『BURNING SHOT』

左手にもったギャレンラウザーを再びギラファに押し付ける!
『お前ェッ!!?』
「熱い気持ちを受け取りなさいッッ!!!!」

ドブァドブァドブァアアアッ!!!!!

『グアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
至近距離からの火炎弾の連射!
カテゴリーKもひとたまりも・・・!!
『ウ、ウオオオオオオオッ!!!!』

ビュンッ!!

その手に残された、剣の片割れを投げつけるギラファアンデッド!!

バガァァァァンッ!!!

「うああああああっ!!!!」
渾身のその投擲は、ギャレンの胸の装甲を打ち砕いた!!
・・・だが、さくらは倒れない!!

「しつこいわねええええええっ!!!!!」

『ABSORB QUEEN』
『FUSION JACK』

再びジャックフォームへと変身するギャレン!!

『お前を倒せば、俺はジョーカーを封印することが出来る!俺はこんなところで終われないィィィッ!!!!』
腕に備えた刃を構え、突進するギラファアンデッド!!

『DROP』
『FIRE』
『JEMINI』

『BURNING DIVIDE』

「でええええええええええやああああああああッ!!!!」
空中に飛び上がるギャレン!!!!

その頂点で二人に分身し、相手の左右に展開、その炎を纏った足をむけ、突っ込んでくる!!!
「これで・・・・・・・・。」
『ウオオオオオオオッ!!お前、お前はああああああああああああああっ!!!!!』
「終わりよおおおおおおおおおおッ!!!!!」

ドズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!





ギャレン最大の技を受け、爆発炎上するギラファアンデッド。
その爆風にケルベロスのカードが舞い飛ぶが、ギャレンは気がつかない・・・。

「ハァ・・・・ハァ・・・・・・・・」
さくらはその手にキングのプロパーブランクを手にし、近づく。

ガクッと膝を突くと、手にしたカードを直接ギラファアンデッドに突き立てた。
『おのれ・・・・おのれ・・・・!!!!』
「二兎を追うもの・・・一兎も得ず、よ。」
キングを吸収したカードは、ダイヤの13、エヴォリューションギラファとなり、さくらの手に収まった。

「みんな・・・・。私のことなんて、心配しないで。」
「みんな、私を嫌いでいて。」
「みんな・・・・。嘘ついてごめん。」
「みんな・・・・。あとはおねがい・・・・・。」

バサッ。

変身フィールドがさくらの変身を解除させると、ベルトはその腰から落ちる。
無残に大破したベルト。
その上に、さくらは倒れ伏せた。

彼女は、そのまま動くことはなかった・・・・・。










「ッ!!!!」

「どうした、始穂!?」
バイクで移動中、始穂が急に苦しみ始める。
バイクを止め、彼女に近づく。
「始穂・・・?」
「は、離れて!!!!」
「ええ?!」
オレを押しのける始穂。
「ぐっ!!」

ガシャアアンッ!!!

その後すぐに始穂は、オレのブルースペイダーを倒してしまった!
「始穂!?何するんだ!!」
「私を・・・・追わないで!!!」

ブロロロロロロロロロッ!!!

バイクで走り去る始穂。
「な、何なんだよ一体・・・・。」





・・・風に舞い踊ったケルベロスのカード。
その目が、ギラリと光る。
そして意思があるかのように、そのカードはある人物の元へ舞い飛ぶ。



「・・・!!止めなさい!」
「は・・・・。」

黒い高級車から現われたのは、あの少女。天王路 博美。
「これは・・・・。」
車の行く先に舞い落ちたカードを拾い上げる彼女。
「ラウズカード・・・。でも、BOARDの資料にはこんなカードはなかった・・・。」
「お父様なら、知っているかもしれない。」
彼女はそのカードを懐にしまい、再び車に乗り込んだ。





バイクを駆る始穂・・・。
「やめろ・・・。私は何も望まない!」
「うっ、うああああああああああっ!!!!!」
彼女のその姿が、黒い異形・・・ジョーカーへと変わった!!!
バイクから転がり落ち、その姿を見る。
『また・・・・。またこの姿に・・・・。』

そこで彼女が前を見ると、あの黒いオブジェが立っていた。
一体どこから現われたのか、始穂を見つめるようにたたずんでいる。

『やめろ!!やめろ!!!私は世界の滅びなど!!!』

オブジェの影から、見たことのない黒い無数のアンデッドが湧き出る!
長い触角に羽根を帯びたその姿は、まるでゴキブリのようだった。

『やめろ・・・・やめろ・・・・、やめろおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!』





第87回「地獄の犬の流れる先」




「なんだってんだよ・・・。」
俺は始穂に倒されたブルースペイダーを起こす。
「あれは、普通じゃなかったよな・・・?」
突然苦しみだし、一人でどこかへ行ってしまった始穂。
あの様子は、まるで初めて俺が、彼女の前で「ジョーカー」という単語を口にしたときのような・・・・。
・・・・まさか、な。


『剣崎君!!』

「!」
そのとき、バイクを通じて広瀬さんから連絡があった。
「広瀬さん!?どうしたの!?」
『橘さんのレッドランバスと、ケルベロスのカードがなくなってるの!』
「ええ!?まさか・・・・。」
『うん・・・・。きっと、きっとそうよ!』
「広瀬さん!ギャレンの反応は!?」
「うん・・・!今見てみる!」

・・・・・。

『いた!やっぱり例の岬に!』
「そうか!!」
『カテゴリーKも一緒みたい!急いで!!』
「分かった!!」
・・・・始穂のことはとりあえず置いて、橘さんの元へブルースペイダーを走らせた!



やがて到着する岬。
だがそこには橘さんの姿はなく、彼女の髪と思われる赤い毛髪と、ダイヤのラウズカード13枚、大破したギャレンバックルがあるのみだった。
「橘さん・・・・。」
握り締めるギャレンバックル。

「それに、カテゴリーKのカード・・・・。」
カードを手にする。
エヴォリューションギラファ・・・・。あのカテゴリーKのカードだ。
「橘さんは、こいつを封印して、それで・・・・。」
もう一度ギャレンバックルを見る。



(私は、カードを渡すべきではないと思う。)
(貴女には何も出来ない。・・・・頼むからここでおとなしくしているのね。)
(たった二人の人間のために、世界中の人間を危険にさらすわけには行かない。)



そこで、研究所で彼女が口にしていた、数々の冷たい言葉を思い出す。
「橘さんは、俺達に心配をかけまいとして、わざと冷酷な態度をとっていたのか・・・!!」
「死ぬ・・・覚悟で。」
「橘さん・・・・!!!」



『剣崎君!』
「・・・あ、広瀬さん!ハカランダは、ハカランダは無事ですか!?」
『ええ・・・。中に侵入していたうちの監視班の話によると、カテゴリーKの反応の消滅と共に、店の中にいたカテゴリーKの眷属が消滅したらしいわ。』
「眷属・・・?」
『ええ。あいつ、店の中に自分の仲間を忍ばせておいたのね。見たことのない小さなクワガタムシだったらしいわ。ただ、どんな能力を持っていたのかは分からないけど。』
「人を殺せるだけの力を、持っていたんだろうな・・・。じゃあ、二人は無事なんですか!」
『ええ・・・。でも、橘さんは・・・・。』
キングのカードを握り締める。
「あの人は・・・。命がけで始穂を、ハカランダの二人を守ってくれたんだ。」
『うん・・・・・・・・。これで、バトルファイトは集結したのね・・・・・。』
「ええ。始穂が勝ち残ったことに・・・。」
『ジョーカーが勝ち残った。・・・・でも、本当に貴方の言うとおり、何も起こらないのかしら?』
「・・・・・・。」

俺は、始穂を信じてここまで来た。
彼女に人間らしい気持ちがあるなら、ジョーカーは世界を滅ぼす死神になりはしないと。

「俺、始穂を探しに行きます。」
『え?一緒じゃなかったの?』
「うん。なんか彼女、いきなり苦しみだして、オレを置いて一人で行っちゃったんだ。」
『それって・・・・!?なんか、やばくない?』

広瀬さんの言いたい事はわかった。
彼女が苦しみだしたのは、バトルファイトに勝利したことで、ジョーカーの力が再び目覚めたのではないだろうか。
そう考えているのだろう。
でも俺は・・・・。

「・・・・そんなはずない。俺は、始穂を信じる。」
『そう・・・・。でも、気をつけてね。』
「ああ。じゃ、いってきます。」





「また群がっていますのね。」
黒い高級車の向かう先の屋敷には、人だかりが。
彼女の車が帰ってきたことに気がつくと、いっせいに群がってくる。

「お父様の容態は!」
「ぜひ一度お目通りを!」
「博美様!!」

「・・・・・・・・・。」
彼女の運転手は、無言で車を進めていく。
「うっとうしい・・・。そんな気持ちもないくせに!!」
車は人だかりを振り切ると、屋敷内の駐車場に消えていく。

「お帰りなさいませ。お嬢様。」
屋敷に入ったところを、執事の男が出迎える。
「・・・お父様の様子は?」
「は・・・。相変わらず、心ここにあらずといったご様子で・・・。」
「・・・・そう。」
どすどすと歩く彼女の後を、ついて歩く執事。

「お嬢様、本日も各界からご主人様を心配する手紙が何十通・・・。」
「ふん。どうせうちの遺産目当てのハイエナでしょう。」
「お父様は、死んだわけではないというのに・・・!!」

窓の外から、先ほど群がった来た男たちを見る。
「あいつらも、どこかの政治家の息子達でしょう?」
「はい・・・・。博史様がお倒れになり、ひとりで心細いお嬢様を気遣っておいでで・・・。」
「私はあんな奴らに心を許しはしません!奴らは私を年端の行かない小娘と思って、簡単に懐柔できると思っているのです!」
「結局は父の地位が・・・。権力が目当てなんでしょう。・・・鳳(おおとり)、奴らを決して屋敷に迎え入れてはいけません。」
「は・・・・・。」
深々とお頭を下げる。鳳と呼ばれた執事。

「ところでお嬢様、今日は何か博史様に用事でも・・・?」
「・・・・ええ。ここに帰ってくる途中、妙なものを拾いましたの。」
「・・・妙なもの?」
「ええ。・・・父が出資した研究所のものなのでしょうけど、父なら何か知っているかと思って。」
「然様でございましたか。・・・しかしお父上は絶対安静・・・・。余り刺激するようなことは。」
「ええ。分かってます。」

そのドアの前に立つ。
「鳳、貴方はここに控えていて。」
「は・・・・。」

少女は父親の部屋のドアを開け放った。

「・・・・・・・・・・。」
そこにいるのは、感情のない顔で、ベッドの上で虚空を見つめる、かつての面影を失ってしまった父親の姿だった。
「お父様、博美はただいま戻りました。」
頭を下げ、挨拶をする少女。
しかし、彼は何の反応も示さず・・・・。
「・・・・お父様。」
彼女はそのベッドに近づき、腰を下ろした。

「お父様・・・。お父様はかつてお母様をなくし、お一人で私をここまで育ててくださいました。」
「わたくしは、お父様に深く感謝しています。ですから、お父様には以前のように元気になっていただきたいのです。」
「・・・・・・・。」
そんな彼女の言葉にも、やはり何の反応も示さない。
「お父様・・・・。」
その父の手をきゅっと握る。
その時、握る手は必ず右手だ。
左手は決して握ったり、袖をまくったりしてはいけない。
理由は分からないが、彼女はそう言い聞かされてきたのだ。


「どうして、どうしてこんなことになったのでしょう・・・・。」



・・・・彼女は知らない。

彼女の父である天王路は、アンデッドのバトルファイトを利用し、万能の力を手にしようとしていたことを。
それによって、大勢の犠牲が出ていることを。
仮面ライダーは父の道具だと聞かされている。だから炎上した研究所から父を救い出したのは彼らだと信じて止まない。
だが、娘にも言わなかったその野望を阻止したのは、ほかでもない彼らだった。

彼女がライダーのことを疑わないのは、ひとえに父の言葉への絶対の信頼があったからだ。
アンデッドがこの世によみがえったことは知っている。
それを倒すのが仮面ライダーだと聞かされていたから、彼女はそれを疑わない。

彼女は、良くも悪くも純粋であったのだ。



「・・・・そう言えば、お父様。」
彼女は懐から、一枚のカードを取り出す。
「これは、お父様の研究所が研究していた、ラウズカード・・・。ですわよね?」
それを彼の眼前に差し出す。

「!!!!!!!!!!」
「?」
それを見たとき、虚空を見つめるばかりだった父親の目に光が戻った。
「ケ、ケルベロス・・・・!!!」
「お、お父様、意識が・・・!!」

「コレだ・・・これさえあれば・・・・・!!!」
「ファハハハハハハ・・・アーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

その突然の笑い声に、執事の鳳が飛び込んでくる。
「お、お嬢様、コレは!?」
「鳳!・・・・分かりません。コレを見にした途端、急に・・・。」

「ハァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」

「・・・・・・。」
父親は笑い続けた。
まるで狂ったように。
初めて彼女は、自分の父親のその姿に恐怖するのだった・・・。





『大変よ!!!剣崎君!!!!』
「うっ!!?」
始穂を探すオレの元に、広瀬さんの大声が飛び込んでくる!!

「な、なんだよどうしたの!?」
『アンデッドが・・アンデッドが出現したの!!それもものすごい数が!!!』
「え!?何いってるんだ。カテゴリーKが封印されて、もうアンデッドは始穂だけしか・・・・。」
『でも事実なのよ!!!今美月ちゃんが出動したわ!それに、新たに編成されたアンデッドハンターも。』
「そんな・・・・。一体どうなってるんだよ!!」
『そんなに私のにも分からない!でも、罪のない人たちが苦しめられてるのは事実よ!』
「・・・・わかった。どこへ行けばいい!?」





1.研究所に戻って!やつら、今にもここを攻めてきそうなの!
2.美月ちゃんの援護に行って!数が多くて、苦戦してるみたい!
3.街の東の方へ向かって!そこだけ、妙に数が集中してるの!
4.街の北のほうへ向かって!数は多いし、大きな家がいくつもあるの!
5.街の南のほうへ向かって!海の近くよ。小さな民家が集中してる!






第88回「滅びの序曲」





突如発生した大量のアンデッド・・・。
それらはダークローチと呼ばれ、圧倒的な数で人々を襲い始めた。
カテゴリーKの封印と、時を同じくして発生したダークローチ。
ジョーカーがバトルファイトに勝ち残る時、世界は滅ぶ。それはこの事を示唆していたのである。

BOARDは唯一の対抗組織として、ダークローチに戦いを挑みはじめた。
だが、それらの減る事を知らない物量差によって、じわじわと追い込まれ始めていた・・・。

そんな中、仮面ライダーブレイドこと剣崎 一真も、ダークローチの大量発生した地域に向かっていた。



「この方向は・・・・。ハカランダのある方だ!」
道路を全速力で駆け抜ける。

ザッ!

『キシュシュシュシュ・・・!』
その行く手に、6体のアンデッドが!
「あいつらが、そのダークローチって奴らか!」
俺はアクセルを絞り込み、一気に加速させる!

バキバキバキッ!!

『ギシュウウッ!!!』
そのままバイクで奴らを跳ね飛ばしていく。
奴らは動かなくなり、ひとりでに燃え尽きた。
「一匹一匹は弱いけど、こんなのがもっといっぱい出てきたら・・・!!」
いくら仮面ライダーでも・・・・。

・・・弱気になってる場合か!
俺がやらなきゃ、誰がやるんだ!
俺は自分を奮い立たせると、再びハカランダの方向へ向かった。



たどり着いた先は、黒いアンデッドで埋め尽くされていた。
草木は枯れ、道路は砕かれ、車は燃え上がる。
人間を追い回す姿も見える。

・・・・・・・。

「これ以上!!好き勝手させるか!!!!」
俺はバックルを引き、ブレイドへと変身した!

『ABSORB QUEEN』
『FUSION JACK』

すぐにジャックフォームへ覚醒すると、俺は飛び上がり、蠢く黒い絨毯に突っ込んでいった!





「ねえさん!早く乗って!」
「う、うん!天乃も早く・・!」
「でも、でも・・・・。」
ハカランダの店先に、彼ら3人はいた。
車に乗り込み、二人を急かす青年と、そこへ行こうと手を引く母親、そして家を捨てるのが耐えられない娘。
「始穂さんを、始穂さんを描いた絵がまだ、始穂さんの部屋に・・・。」
「天乃・・・・。」

「どうしたの、ねえさん!」
あまりの遅さに痺れを切らし、駆け寄ってくる青年。
「ああ、虎太郎・・・。天乃が、絵を持ってくるって聞かないのよ。」
「天乃ちゃん、そんなのどうでもいいから、早く逃げないと僕達も危ないよ!」
「どうでもいいわけないでしょ!もう、虎太郎はいつも始穂さんに冷たかったんだから、そんなことばっかり言って!」
「それとコレとは違うよ・・・。早く逃げよう、奴らすぐそこまで来てるんだから!」

『キシュシュシュシュシュシュ・・・・。』
「・・ああ!?」

・・・気がついたときにはすでに遅く、3人は大量のダークローチに囲まれていた・・・!
「お母さんッ!」
「天乃・・・!」
「く、くそぅ、僕が、この二人には指一本触れさせないんだからな!」
二人をかばうように立つ青年。

『キシュシュシュ・・・・・。』
そんな彼の行動を嘲笑うように、ダークローチたちはじわじわと包囲を狭めていく。
「う、うう・・・・。」
「も、もうダメ・・・・!!」

キィィーン!キィィーン!・・・・

その時、何か発信音のような音が聞こえた。
その音を聞くなりダークローチたちはおとなしくなり、その音のするほうへと去っていく・・・・。

「なに!?なにがおこったの・・・?」
春花さんは周囲を見渡すが、その音が何なのか分からなかった。
「・・・・あ。」
「どうしたの?天乃ちゃん。」
「うん。なんか、あそこの影に、始穂さんがいたような気がして。」
「そんな・・・。だって彼女は、出ていっちゃったんだろ?」
「そうだけど・・・。なんか、いたような気がしたの。」



「春花さん!天乃ちゃん!!」
俺はようやくハカランダにたどり着く。
「わ!仮面ライダーだ!」
二人と一緒にいた、オレの会った事のない青年が、その姿を見て驚く。
「そうよ虎太郎。この人が私の知り合いの仮面ライダーなんだから!」
「ふあ〜、すごいなぁ〜・・・。」
ものすごい羨望のまなざしで見てくる青年。
・・・俺は恥ずかしくなって、変身を解除した。

「二人とも、大丈夫でしたか!?」
「剣崎君・・・・。うん。私達は大丈夫。虎太郎も。」
「虎太郎?」
「そうよ。私の弟で、白井虎太郎。」
「よろしくね。」
笑顔で握手を求められる。
「あ、ああ。」

「よく無事でいられましたね・・・。」
「うん・・・。あのね、私達、さっきまであの黒いのに囲まれてて、もうダメだって思ってたの。」
「ええ!?」
「で、そしたらね、何か変な音が聞こえて、とたんにあの黒い奴らは逃げていっちゃったのよ。」
「そんなことが・・・。」
「ええ・・・。一体、どうなってるのか・・・・。」


「ねえねえねえ、良かったら取材させてくれない!?書きたいんだよ君たちのこと!」
「ウェッ!!?」
俺と春花さんがうなってると、彼がいきなりとんでもない事を言ってくる。
「もう、虎太郎!そんなことより、早くここを離れようよ!お母さんも!」
「ん、あ、ああ。そうだね。・・・残念だけど。」
・・・なんか、今回は縁がなかったって感じだなぁ・・・。

「あ、そういえば。」
「なに?剣崎君。」
「・・・始穂が、ここに来ませんでした?」
「え、一緒じゃないの?」
「ええ。はぐれてしまって・・・・。」
「そうだそうだ剣崎さん!始穂さんとはどこまでいったんですか?」
「ウェェェッ!!?」
天乃ちゃんがまたあのいやらしい笑みで聞いてくる。

「二人は駆け落ちしたんですよね、いいなぁ〜。私もさらってほしいな〜。」
「あ、あのね、天乃ちゃん。ここは危険だから、早く逃げてほしいんだけど・・・。」
とりあえず、もっともらしい理由で逃げようとする。
「そ、そうだよ天乃ちゃん!姉さんも、今のうちに!」
「うん。剣崎君、気をつけて・・・・。」
「剣崎さん!あいつらは、あっちの方へ行ったから。」
指差し教えてくれる天乃ちゃん。

「うん。分かった!みんなは早く避難して。」

「頑張ってね、仮面ライダー!」
運転手席から手を振り、彼の車は去っていく。

よし・・・・。

俺はその、ダークローチが向かった先を追った。




キィィーン!キィィィーン!

ダークローチたちは、その音の発生元へと集まる。
その中心にいるのは、黒い異形、ジョーカーだった。
『あの店に・・・近づくなぁ!!!』

『CHANGE』

ジョーカーはカテゴリーAをラウズ、カリスに変身する!
そして瞬く間にダークローチの大軍を切り伏せていく・・・!

『あの店は私が、あの二人は私が・・・!・・・・ウッ!!』

カリスは苦しみだすと、その姿はジョーカーに戻る。
『・・・ジョーカーの力が強くなっていて、他の姿が維持できない・・・。』




「・・・・始穂?」
『!!!!』
俺は彼女の姿を見つけた。
・・・彼女はカリスに変身し、群がるダークローチを片付けていたが・・・。

「その姿は・・・・。」
『・・・・見てのとおりよ。私は、もう自分の力を抑えられない。』
「始穂・・・!」
『近づかないで!!』
「!!!」
『今のわたしは・・・。血と戦いを好む獣。戦えば戦うほど、ジョーカーの本能が目覚め、貴方すら・・・殺してしまう!』

ズオオオオオオオ・・・・・。

ジョーカーの影から、あのダークローチたちが湧き出てくる!
「始穂!?そいつらは!?」
『こいつらは・・・。統制者が生み出した滅びの蟲達。世界を滅ぼすまで増殖を続け、そのときが訪れるまで消えることはない・・・。』
ダークローチたちは、オレを標的と定めると、一斉に襲い掛かってきた!

「く・・・。変身!!」

『TURN UP』

飛び出したフィールドはダークローチたちを弾く!
俺はそれを潜り抜け変身すると剣を抜き、ダークローチたちに挑む!

ザギィィン!!

・・・こいつらは動きも鈍いし、力が強いわけでもない。
俺は瞬く間にそのダークローチたちを一掃する。

『さあ、一真。私を封印して。』
「ええ!?」
『私が封印されない限り、こいつらは永遠に増え続ける。世界を救う道はそれしかないの。』
「・・・・・。」
俺はブレイラウザーを握り締める。

「始穂・・・・!!!」





1.彼女を斬る。
2.斬られる訳がない・・・・。




第89回「決着を」




「ううう・・・。うああああああああああああっ!!!!」

ビュッ!!!

俺はジョーカーに向かって、ブレイラウザーを振り下ろした!!

『・・・・・・・・・。』
・・・が、オレの剣は彼女の手前でぴたりと止まる。

「オレに・・・オレに君を斬られる訳がない!!!」
剣を下ろす。

『一真・・・・。』
彼女はオレに手を伸ばす。
・・・届かなくなった宝物を、慈しもうとする様に。

ビクッ!!

『う、うう・・・・・・・。』
そんな彼女の手も、途中で止まる。
『うああああああああっ!!!!』

バキィィッ!!!!

「ぐううううううっ!!!」
彼女の手はそのままオレを殴りつけた!
『ウウ、ア、アアアアアア・・・・・・。』
始穂はその場を去る。

「オレに、君は斬れない・・・・。封印も出来るわけがないよ・・・・。」
薄れ行く意識の中で、オレの目は彼女の後姿だけを見ていた。





・・・・次に目を覚ました時、俺はBOARDの病院棟にいた。
なんだかいつかのように、周りにはBOARD主要スタッフが雁首をそろえている。

「目が覚めたようだね。」
「広瀬さん・・・・。」
「君がジョーカーと接触したのは、サーチャーで分かっていたよ。美月君に迎えにいかせた。」
俺は美月ちゃんを見ると、彼女はちょこっと頭を下げた。
「俺はどうすればいいんですか・・・。オレに、彼女を斬る事はできない。」
「・・・・君は、どうすればいいと思うね?この世界を救うために。」
「世界を、救う・・・・。」


「俺は、始穂を救いたい。・・・・罪のない人々も。」
「剣崎君。・・・・人一人など、たかが知れているんだ。全てを救おうとすることは出来ない。」
「でも、でも俺は・・・・!!」
「彼女を、愛しているんですよ・・・。」

「・・・・彼女を愛しているなら、彼女の気持ちを汲み取ってあげたら?」
「・・・・!?」
その時響いた声は、聞こえるはずのない声だった。

俺はとなりのベッドを見る。
そこに立っていた広瀬さんが、身体をよける。
「・・・・・・・!!橘、さん・・・・。」
「やっほー。」

・・・死んだと思っていた橘さんが、ベッドに横たわっていたのだ。
俺は身体を起こす。
「生きて、いたんですか・・!!」
「危ないところだったけど・・・。烏丸主任に助けてもらったの。」
「烏丸主任が!?」
「ああ。ナチュラルと橘君を連れて、この研究所に戻ってきたよ。」
「じゃあ、今は・・・?」
「君の持ち帰ったギャレンバックルの修理をしているよ。」

「・・・剣崎君。あなたはジョーカーを愛してしまっている。・・・そんな貴方にどんな言葉を求めても、きっと実行など出来はしないわ。」
橘さんも身体を起こし、オレのほうを見る。
「・・・・・・・。」
「・・・だから、私と美月ちゃんがジョーカーを封印する。」

「ええ!?」
「私と美月ちゃんのキングフォームを使えば、如何にジョーカーとだって互角に戦えるはず。・・・君は、ここで休んでいて。」


「・・・・・・・・・・。」
俺は考える。
・・・・この状況になってしまったのは、彼女を擁護し続けたオレの責任だ。
彼女を信じ続け、でもこうなってしまった。
・・・だったら、俺は責任を取らなければいけない。
みんながオレを心配しているのは分かる。でも、コレだけは他人任せにしてはいけない。

今までの事に、決着をつけるために。
・・・全てに決着をつけるために。
それがどんな形であれ、その決着は俺がつけなければいけないんだ!!!

「橘さん・・・。俺が、俺が行きます。」
「でも剣崎君!」
「こうなってしまったのは、オレの責任です。だから、俺が決着をつけなくてはいけないんです!!」

「・・・だが剣崎君、君は、もう変身してはならない。君に行かせたくないのは、その理由もあるのだ。」
「え?」
変身してはならない?
いきなりの言葉に、俺は困惑する。

「君の融合係数は、危険域に達している。あまりのアンデッドとの適応に、君の身体はアンデッドそのものになろうとしているんだ。」
「!!!!・・・俺が、アンデッドになる・・・・。」
「そ、そんな・・・・・。」

「通常の変身ならば問題はない。・・だがアブゾーバーを使った強化変身は、その症状を爆発的に進行させるだろう。」
「持って、後二回・・・・。」
「二回・・・。二回アブゾーバーを使えば、俺はアンデッドになってしまう。」

「・・・でも、俺がやらなくちゃいけないんですよ。・・・・行ってきます。」
俺はベッドから降り、ベルトを手に部屋を出て行く。


「・・・橘君。美月君。彼を追ってくれ。・・・見守ってやってくれ。」
「はい・・・。美月ちゃん。」
「はい・・・・・・・。」



俺はブルースペイダーにまたがった。
・・・・オレの体がアンデッドになってきているからだろうか。
俺は彼女を感じる。
・・・・オレを待っている。





1.あの、山小屋だ。俺達の始まった・・・。
2.廃工場だ。・・・誰の目にも止められず、彼女はひとりで待っている。





第90回『最後の選択を』




「つい最近の事なのに、なんだかもう遠い昔のような気がする。」
俺は、暗い山小屋の闇に話しかけた。
「そうだね・・・・。私達はここで出逢った。」
闇が答える。
彼女が・・・・。始穂がその闇から現れる。
始穂は人間態に戻っていた。

「二人で逃げ出して、ここで二人で過ごした。」
「うん・・・・。そして、ここで終わる。」

「・・・・!!」
「始穂。やっぱりダメなのか?」
「私は、ジョーカーなの。コレだけはもう変えられない。」
「また私がいる限り、ダークローチは止まることはない。」
「・・・そして、貴方は仮面ライダー。人々を守る使命を帯びたヒーロー。」
「やっぱり、こうなる運命だったのね・・・。」
「始穂!!」

『ウッ!!』
「始穂!?」
突然彼女が苦しみだした!
その腰には、緑色をしたカリスラウザー・・・。ジョーカーラウザーが現れる!
「それは・・・!!」

『ウウウウ・・・ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
ラウザーから緑の衝撃波が放たれ、山小屋を、この山を包み込んだ・・・・!!!




「う・・・・。」
目を覚ます。
あの衝撃波で気を失っていたらしいが・・・。
山小屋は、跡形もなくなっていた。

・・・それは、俺達がもう後戻りできないことを暗示しているかのようで。
「・・・!!」
離れた場所に倒れていた始穂も目を覚ます。
『ウ、ウアアアアアアアアアッ!!!!』

彼女はジョーカーへと姿を変える!!
「始穂・・・・!!」
俺はベルトにカテゴリーAのカードを挿入する。
バックルから赤いカードが飛び出し、オレの腰を一回りしベルトの形を成す。
「変身!!!」

『TURN UP』

「ウェアアアアアアッ!!!!」

ガキィィィン!!!

オレのブレイラウザーと始穂のダガーが火花を散らす!!
「始穂・・・!!」
『一真・・・。』

ガキィン!!

振り下ろす剣をダガーで止める始穂。
恐るべき力で、オレの剣を片手で止めている!

ギャキッ!!

そのまま剣をいなすと、空いた左手で拳を固め、殴りつけてきた!
「ぐううっ!!!」
『うふふふ・・・あははは・・・・。』
「・・・始穂?」
彼女の口から、笑い声が漏れた。

『おかしいよね・・・。あんなに避けたかった戦いなのに、私の血が、全身が喜びを感じているの!』

ザギィィン!!

「ぐうああっ!!」
『私は貴方と戦いたかった・・・。初めて戦ったときから、どっちかが倒れるまで戦いたいって、ずっと思っていたの!!』
振り抜かれるその刃は、さらにその鋭さと速度を増す!
『私は、嬉しい・・・。あなたと命を賭けて戦えて!!!』

ガギィィィンッ!!!

「始穂・・・!!」
彼女の言葉を受け止め、俺はなお彼女に刃を振るう。
ジョーカーの太刀筋も、だんだん目がついてきた。
俺は戦う。彼女の気持ちに応えるように。

そうだ。彼女は言っていた。もしどうしようもなくなったら、私を封印してくれと。
封印されることが、彼女の望みなら・・・!!

(怪我が治ったら、ハカランダにいって、二人に私達の事を伝えたいな・・・。)

「・・・・!!!」
彼女のそのときの表情がだぶり、俺は剣戟を緩める。

ザギィィィンッ!!!

「ぐうううううっ!!」
自分を封印して欲しい・・・。それは本当に彼女の望みなのか?
彼女は、普通の人間の女の子のように、幸せになりたかったんじゃないのか?
『グアアアアアオオオッ!!!!』

獣の咆哮をあげ、襲い掛かるジョーカー。
俺はそれを必死に凌いでいく・・・。

(私も・・・私も剣崎が好きだった。)

(始穂って、呼んで。わたし・・・。そのほうが嬉しい。)

「始穂・・始穂・・・!!!」
彼女の一撃を受け止めるたびに、彼女との思い出が頭をよぎる。
小さな幸せな記憶を、こぼさないように抱きかかえて。

俺は、彼女を失いたくない、失いたくない・・・!!!



『グアアアアア・・・・・・!!!』
その手のダガーに、エネルギーを貯めていく・・・。

「・・・・・・・・・・。」
俺は身構える。

『グアアアアアアアアアアアアッ!!!』
投げつけるジョーカーのダガー!!

「ウァァァァァァッ!!!!」

ガキィィィンッ!!!!

胸に突き刺さりそうになるところを、剣で弾く!!!
「!!!!」
だがそれは勢いが衰えず、オレの顔面に向かって飛ぶ!!

バガァァァァンッ!!!

「ぐあ・・・・!!!」
それは仮面の半分を砕き、オレの顔を露出させた。
『グフゥ、グフゥ・・・・・・』


「始穂・・・・。俺は・・・・。」

・・・まだ決められない。
俺は、彼女を倒すのか。このまま殺されるのか?
それとも・・・。





1.・・・君を倒し、封印する。それが君の望みなら。
2.俺には君を倒せない。俺は君を失いたくないから・・・・。
3.俺はキングフォームに変身する。君を倒すくらいなら、俺は・・・・!!





最終回『未完の物語』



ガシャッ。

俺はその手からブレイラウザーを落とした。
『・・・・・!?』
「出来ない・・・。俺には、君を倒すなんて出来ない!!」

『なんで・・・・?何で戦えないの?私は・・・・。世界を滅ぼす死神なんだよ?』
『一真は、仮面ライダー。世界を、人々を守るのが、・・・・貴方の使命じゃなかったのッ!!!?』

「・・・・ごめん。」

『・・・・・・・。』

「それが仮面ライダーの使命だっていうなら、俺はきっと、失格なんだ。」
「いや、君を連れて逃げた時点で、俺はもう、とっくに人々を守る仮面ライダーじゃなくなっていたんだよ・・・・。」

「だって俺は、あの時人々の命より、君一人を守る事を選んだんだから。」
「これは、自分の意思で俺が選び、信じてきた事なんだ。だから、今君を封印すれば、俺は今までの自分を否定することになる。」

『だからって・・・・。今戦わなきゃ、一真は死ぬのよ!ジョーカーである私に、殺されるのよ!!!』

「・・・・君も言ったじゃないか。」
俺は割れた仮面の下から、彼女に笑いかけた。
『・・・・え?』



「俺は、君に殺されるなら、本望だって。」



『・・・・・・・・・・。』
『バカああああああああああああああああッ!!!!!!』

ジョーカーが駆ける!
彼女は刃を振るい、まっすぐオレに向かってくる。

「・・・・・。」
俺は動かない。

ザギィィィィン!!!!

ブレイドの装甲が破壊され、オレの身体は宙を舞う。
俺はなす術なく、崖を転がり落ちていった・・・・。



『バカ・・・。無責任だ・・・。』







「いや、その固い意志はむしろ賞賛されるべきだ。」
『!!!?』
「そして・・・・。彼のお陰で、私は最後のチャンスをモノにできた。・・・彼には感謝しなければな。」
『お、お前は・・・・・!!』
「・・・・・変身。」








剣崎君・・・。
「う、うん・・・・・。」
剣崎君、剣崎君・・・!!
「あ、うう・・・。」

頭の中に声がする。
俺は・・・死んだんじゃなかったのか?
そう頭の中で考えると、とたんに全身に痛みが走った。
「ウッ!!」

「剣崎君!!」
その痛みで頭が覚醒する。
目の前には・・・・。橘さんがいた。

「良かった・・・生きてて・・・・。」
橘さんは、俺を抱きかかえ、涙を流していた。
「橘さん・・・・。オレを追って?」
「うん。広瀬所長がね・・・。」

「そうですか・・・・。」
でも、俺が生きていたとなると、始穂も黙ってはいないだろう。
彼女は、俺に封印されるのが望みだから。
・・俺は、そんなことしたくないのに・・・・。

「でも、もうコレで終わったのね。・・・ダークローチも、全て消滅したしね。」
「・・・・え?」

「貴方が、ジョーカーを封印したお陰よ。ダークローチを生み出す源だった彼女が封印されたことで、世界中にあふれていたあいつらは、一匹残らず霧散したわ。」
「・・・・・・・・?!」
俺には、彼女の言葉が理解できない。
だって、そんなことあるはずが・・・・。
「貴方が、世界を救ったのよ。剣崎君。」
「・・・・・・・・・・・!!!!!?」

頭が混乱する。
俺は確かに始穂に切り裂かれ、崖から落ちたはず。
それが、ジョーカーは封印されているって、そんな、そんなことあるはずが・・・!!

「橘さーん!!」
崖の上から、女の子の声がする。
・・・美月ちゃんも、きていたのか。

「よいしょ、よいしょ・・・。」
ゆっくりと崖を降りてくる。
「どうだった?」
「はい橘さん、ちゃんとここに。」

・・・・・・!!!!!

美月ちゃんの手には・・・。

「真っ黒いカード。コレがジョーカーのカードなんですね。」

始穂の、始穂の封印されたカードが・・・・!!!!

「な、なんで・・・・・・。」
「あ、剣崎さん、気がついたんですね!」
「俺は・・・・・俺は・・・・。」
「剣崎さん、あなたのお陰で世界は、人類は助かったんです!剣崎さんこそ、本当の仮面ライダーですよ!」

本当の・・・仮面ライダー・・・・・。
「ちがう。俺は・・・・。」
「もう、美月ちゃん。剣崎君はジョーカーとの戦いで身も心もボロボロなのよ?・・・・休ませてあげないと」
「はい。じゃあ剣崎さん、あとは私がやっておきます。橘さんとBOARDに戻っててください」
「美月ちゃん・・・・。」


違う、違うんだよ。
俺は彼女を封印したくなくて、それでわざとやられただけなんだ。
でもなぜか始穂は封印されてて・・・・。
世界は救われていて・・・・。

「何故なんだよ・・・・。」






「世界は救われた?違うな。これから私が救うのだ。」
「邪悪な心に満ちた人間達から・・・・。フフフフ・・・・ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」









俺は心に大きな穴の開いたようだった。
最愛の人はなく、ライダーとしてアンデッドと戦う日々も終わった。
世界はまた、何事もなかったように動き始める。
そして俺は、その流れにおいていかれている。・・・・そう感じていた。

オレの心は、あの日から止まっている。
戦いによる傷が完治しても、俺はまだ無気力のままだった。
橘さんから研究所に残らないかとも誘われたが、俺は学があるわけじゃないし、断ろうかとも思っている。
一菜と、おじさんの家に帰ろうか・・・・。
それも、悪くない。

さて、戦いの終わった俺は、どうすればいいだろうか・・・?







1.もう一度、やりなおしたい。(二周目スタート
2.納得がいかない。俺はまだ、ここにいる。(裏・最終ツリーへ
3.一菜と帰る。もう、全て忘れて・・・。(終了








空豆兄
2009年03月08日(日) 10時50分46秒 公開
■この作品の著作権は空豆兄さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
その5。
この後は作者妄想展開です

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30 Angel ■2014-11-21 20:09:31 188.143.232.111
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