仮面ライダーintertwine 第弐章過去ログ
第弐章 第一話 転入生(執筆者:イシス)



−−ボード学園


中学部と高校部を併せ持つこの名門学園に、少しばかり些細な事件が起きた……



「おはよ……」
俺はドアを開け、教室に入る。
クラスメイトの一人がすかさず近寄ってくる。

「よー、列!今日は可愛い妹とは一緒じゃないのか?」
「え…あぁ……あいつ、風邪引いたから学校休ませたんだ。」
俺は嘘をついた。
本当は華枝は昨日から帰ってきていない。
しかし、それをクラスの皆に言ったところで華枝が帰ってくるはずもない。
だから、俺は嘘をつく。
「そっか…華枝ちゃん、かわいそうになー。なんだったらお前、一緒に休んでやればよかったじゃんか。」
「ふざけんな。そこまで面倒見きれるかよ!」
必死になって反論する。
が、実のところかなり顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
「またまた!満更でもないくせに。」
さらに別のクラスメイトが冷やかしてくる。

(こいつら、ぜってぇ俺がシスコンだって思ってんだろ……)

文句の一つでも言い返してやりたかったが、これ以上こいつらといるとさらに弄ばれるのがオチだ。
ここは無視を決めこみ、さっさと自分の席へ行く。


席に着くまでに、何人かのクラスメイトに冷やかされた。
俺がシスコンだの、ロリコンだのと……いつか一発殴ったる……


席に座り、斜め前の席の親しいクラスメイトに挨拶をする。
「おはよ、雅菜。」
「ん。おはよ、列。」


草加雅菜。

ボード学園始まって以来の超優等生。
成績は常に学年トップを独走し、全国模試でも上位にあり続けている。
運動神経も抜群で、多くの部活の部長を掛け持ち、しかも生徒会にまで所属している。
そのため、多くの生徒、教師からの信頼も篤い。
しかも、とびきりの美人なため、彼女を狙う男は多い。

そんな奴と俺は親友なのだ。
自然、周りの男子からの視線は痛い……


「今日は華枝ちゃん、休みらしいわね。」
「あれ?雅菜知ってたのか?」
「生徒会で先生から聞いたのよ。あの娘、なかなか評判いいから、風邪ひいて休みってのは結構驚いたわ。」
「あぁ…そうだな……」
「ほら、あの娘あれで遅刻も欠席も無かったからね。」
「あぁ…うん……」
「……列?」
華枝の奴……結構、人気あったんだな。


………あれ?なんか腹ただしいな……なんでだ?


「それよりも、あんた知ってる?このクラスに転入生が来るって。」
「え?そうなの。」
「そうなの。しかも、一度に三人も来るらしいのよ。」
「…マジ?」

驚いた。
自慢じゃないが、この学園はなかなか上位にランク付けされている。
編入するのも結構大変だって聞いたけど、いっぺんに三人も来るとは思わなかった。


「ほら、席に着け。」
チャイムが響き、同時に担任が教室に入ってくる。
みな雑談をやめ、それぞれの席についていく。
「あー、もう知っているものもいるかもしれんが、このクラスに転入生が来ることになった。」
担任の一言に教室が色めき立つ。
「しかも、三人。女子二人に男子一人だ。」
三人という人数と“女子”という単語に、男子がさらに盛り上がる。
対して女子の方は“男子”と聞いてもそれ程騒がない。


…まぁ、そうだろうな。
いきなり超絶美形の高校生が来るなんてこと、普通はありえないもんな。


「それじゃあ、入ってきなさい。」
担任が廊下の方に声をかける。
教室に入ってきた転入生を見て、男子は当然のように、なんと女子まで色めき立った。


一人は、なんと言うか、“可愛い”としか言いようがないくらい、可愛い女の子だった。

あ、なんか緊張してるみたいだ。


もう一人の方は、細目の女の子。
さっきの娘が“可愛い”なら、この娘は“綺麗”といった感じか。


そしてもう一人の男子。
……冗談としか思えないぐらい、美形だ。
髪が薄い青で眼の色もなんか違う。……ハーフかな?


「じゃ、一人ずつ自己紹介してもらおうか。」
言われて、まず男子の方から自己紹介する。


「八代みつるです。皆さん、どうかよろしく。」
みつると名乗った青年に対し、女子からすさまじいほどの拍手が浴びせられた。
まぁ、ここまで絵に書いたような美形もそうそういないしな。
女子が熱狂するのも無理は無い。


次に、細目の女の子が自己紹介する。
「豊桜冥(ほうおうめい)です。よろしくお願いしますね?」
少し首を傾げながら挨拶をする冥と名乗った女の子。
その仕草に、男子は熱狂した。
……こいつらの将来がなんだか危険な感じがするのだが、どうだろうか……


最後には、あの可愛い女の子の番だった。
やはり緊張しているのか、少し俯きながら挨拶をする。
「し…志熊京……です。み…皆さん…仲良くしてください……」
なんとか挨拶を終えた京という女の子。
やはり、男子から拍手喝采だった。俺も拍手した。
いや、そこまで熱狂的には叩いてない。普通にだ、普通に。



「えーと、八代君の席は風瀬の隣だ。豊桜さんと志熊さんはお互い、隣同士に座ってもらおうかな。」
担任の指示により、豊桜さんと志熊さんが隣同士となり、俺の隣に八代君が来た。
「豊桜さんに志熊さんは、何か困ったことがあったら草加に相談するように。八代君は……席も隣だし、風瀬に相談するように。」

なんか凄いことになったな……
男子は先程から豊桜さんと志熊さんの話題で持ちきりだし、女子の視線も八代君に注がれている。
なんか色々大変そうになるかな。
そう思案に暮れていると、いきなり八代君から声がかかった。
「えーと…風瀬、列君だよね?」
「え?あ、あぁそうだけど……」
「これから何かと縁があるかもしれないね。よろしく。」
笑顔で手を差し出してくる隣人。なんか調子狂うな………
「えと…風瀬君なんて、あんま慣れてないから、列って呼び捨てにして構わないよ。」
「そうかい?じゃあ、俺も八代って呼び捨てにしてくれ。その方がより親密になれそうだ。」
とりあえず、手を握り返す。

うん、なんかちょっと変わっているけど、いい奴みたいだな。
早いとこ、豊桜さんと志熊さん、それに八代と、この新しいクラスメイト達と慣れないとな……


と、ふと周りを見ると、なんだか女子達がもの凄い剣幕で睨んでいる。
……俺、なんか悪いことしたか?



第弐章 第二話 お昼の光景(執筆者:空豆兄)



「お昼だぞ。列。」
隣の席に座るオレの新たな友人、八代が昼休みを告げる。

「ああ…。」
けだるそうに返事。
授業中もずっと、妹の華枝の事を考えていた。

行方不明の華枝…。
午後から街へ探しに行くといったものの、はたして見つかるのか…。

「はぁ……。」

「何、お前って実は暗いやつなの?溜息ばかりついてさあ。」
八代が、オレの顔の前で手を振って見せる。
でもオレは、それを気にも留めずに虚空を見る。

「…考え事か?」
「妹さんの事を考えてるのよ。きっと。」

そこへ、草加が話に入ってくる。
「あ、草加さんどうも。こいつ、いつもこうなの?その、妹の事考えてるの?」
「そんなことないんだけど。今日は特にひどいわね。」

それだけ聞くと、八代はニヤニヤしながらオレに近づく。
「おまえ、シスコンだったんだな!」
「!!!」

シスコン!!

その言葉にオレは現実に帰る。
「オレはそんなんじゃねええええええええッ!!!!!」
そして、大声で反論。

「おわっ!!?」
……しまった。
つい大声を出してしまい、教室中の視線を集めてしまった。

「…びっくりした。」
そう反応するとは思っていなかったんだろう。
八代は後ろに引いていた。

「ようよう、それはいいけどさ、昼食べようぜ昼!ここの食堂に案内してくれよ。」
すぐに復帰する八代。
「そうね。私も一緒していい?列。」
それに雅菜も続く。

そうだな。どの道さっきの大声で、この教室には居辛いし。

「おう。わかっ……。」
………そのとき、何かを忘れている気がした。
そう思ったとき、俺はその言葉を最後まで出すことが出来なかった。

「どうしたの?」
首をかしげる雅菜。

「あ、いや……。」
それが何なのか思い出せないオレは、曖昧に返事を返すのだが…。



「れー…つー…さんっ♪」

その瞬間、すぐに思い出す。
……オレは、彼女とお昼を食べる約束をしていたことを。

「こんにちは!神歌がお迎えに上がりました!」
教室の入り口に立ち、軍隊の敬礼のようなポーズをとり、笑顔で会釈する少女。
英流、神歌ちゃん……。

高等部の教室に、全く物怖じせずに入ってくる中等部の神歌ちゃん。
否が応でも注目が集まる。
しかも彼女はかなりの美少女。…まあ、今朝までは意識していなかったことなんだけど。
そんな彼女が、クラスで評判のシスコン(俺は認めていないが)のオレの名前を呼んでいるもんだから……。

「おっ、おまえ……。何なんだよこの子は!!」
八代がクラスの男たちを代表して叫ぶ。
「あ、あの、この子は、その……。」
「列さん。ここは神歌が。」
俺を手で制し、神歌ちゃんがそれに応対した。

「あ、はじめまして。わたし英流 神歌って言います。列さんとは、その、なんていうか、深い、お付き合いを……。」

……え?
もじもじしながら彼女は、と、とんでもない事を言う。
「ふ、深いお付き合いーッ!!!!?」
「うわわわわわ!!!違う!違う違う!!!」
あわてて否定しに入る。

「え?でも神歌たち、昨日は夜遅くまで一緒にいたわけですし……。ぽ。」
…さらに誤解を加速させる発言をするんですか君は。

「列!!おまえ、こんな中等部の子にまで手を出しやがってえーッ!!!!!」
…いや、なんでお前が怒るんだと。
でも、なんだかすごくいやな雰囲気…。
教室中の男子クラスメイトたちから、非難の視線をビシバシと感じる。

「神歌ちゃん!逃げよう!!」
「え?」

オレは彼女の手を取り、教室を駆け出した!!
そのまま教室の外へ出ていく俺達。



「逃げるな、列ーッ!!」
…その声も、もう俺達には届かない。


「くそ。なんて羨ましい奴なんだ。」
「列って、あんな彼女がいたんだ……。」
二人が感想を漏らす。
昼休みが終わって教室に帰ったとき、俺はまた弄られるネタが増えているというわけで…。




「風瀬、君。だっけ。なんだかにぎやかなひとだなぁ……。」

「………(興味なし)」

一方転校生は二人はというと、こんな感じで。


第弐章 第三話 無の質問(執筆者:ウェイド)


一方時は少し戻り。ある町にて。

ゼロ「それでは貴様らに質問する。」
宙に浮かびながら、もの凄い威圧感で二人の動きを抑える。

ゼロ「貴様らは何者だ?見たところデュナミストライダーではないようだが……。」
エウリピデスたん「デュナミストライダー?」
ゼロ「何だしらんのか…?」

エウリピデスたん「(聞いたこともないわよ。)」
ゼロ「ふむ、そうか。」
エウリピデスたんは驚いた、人の心を読む力を持ったものがまだいるとは。

ゼベイルたん「それで……貴方の質問は?」
意識が消えそうなもの凄いオーラの中で話せた一言だ……。

ゼロ「貴様らは何者だ、これはさっき言ったか。それと……。」
ゼロは一息吐いて、続けて喋った。
ゼロ「……デュナミストライダー…バトルに参加しないか?」
ゼベイルたん「デュナミスト」
エウリピデスたん「ライダー…バトル?」
ゼロ「質問に答えてもらおう、その後は我に質問してもよい。」



第弐章 第四話 再び囚われて(執筆者:空豆兄)



「…………。」
夜空に浮かび、威圧的に私たちを見下ろす仮面の男。
仮面ライダー…ゼロ……。

羽根をたたみ、私は降り立つ。
先ほどまで、私とあの女がいた家を切り裂いた、圧倒的なその力…。

「………。」
私の前に立つ、私を誘拐した女も、あいつには警戒している。
それも分かる話だ。
私たちが束になっても敵う相手では……ない。

それは、そうと…。

「応えよ。デュナミストライダー・バトルに参加するか否か。」
私の答えを待つゼロ。

質問の意味を考える。
ライダー…バトル…。その名の示すとおり、仮面ライダー同士が戦うのだろうか…?
それによって何がもたらされるのか。今のままでは判断の材料が少ない……。

いや。

初めから答えは決まっている。
「興味は…ないわ。答えはNOよ。わたしには、やらなきゃいけないことがあるんだから!」
「そうか……。残念だ。」
そんな気持ちなどまるでないだろうに、そう告げるゼロ。

「ではもう一つの質問に答えよ。貴様たちは何者だ?」

何者…。
何者…たって。
「私は……。仮面ライダーゼベイル。」
「私は、神藤 和子。この家の修理代、あなたに請求して構わないわよね?」
このゼロの、圧倒的な威圧感を前に、軽口をつく女。
…割と、度胸があるみたいだ。

「…なるほど。しかと覚えた。また会うこともあるだろう。」
そういうと、黒い翼を翻し、この場から消えていく。

(だが忘れるな。お前が仮面ライダーである限り、他のデュナミストライダーの影はお前に付きまとう。)
ゼロの声だけが、この場に響く。
(お前も、そして他の仮面ライダーたちも、この神聖なる戦いからは逃れられない…。)



…今度こそ、その気配は消える。
「………。」
ようやくその威圧感から解放され、安堵の息を漏らす。

「あ〜あ、せっかくの隠れ家だったのになぁ……。」
真っ二つにされた我が家を見て、少しうなだれる神藤 和子。
「あいつムカつくわねぇ…。いくらメチャクチャ強いからって、人のうちを勝手に壊していいと思ってるわけ!?」
次は怒り出した。

「はぁ…。」
なんだか水を差された感じ。
わたしは一息つくと、変身を解除する。

「ん。あなたも落ち着いてくれたみたいね。」
にこりと笑顔をこちらに向ける彼女。
「わたし、帰るわ。こんなところにいられない。」
それを無視して、くるりときびすを返し、家のほうへと向かう。
「待ってよ。」
それを彼女が、私の腕を掴んで制した。

「なによ。人攫い。」
「私もね、あなたを帰すわけには行かないの。コレが、仕事だから。」

バシィッ!!!

「うっ!!!!」
そのとき、私を掴んだ腕から電流が走り、私の意識を刈り取った!
また「私」が、暗い意識の深層へと還っていく…。

「コレも私の能力の一つ。ごめんね……。」
彼女はまた私を抱え、また別の隠れ家へと連れて行く。

「さて。エウリュディケはこの子を見て、なんて言うかな…。」


ほんの少しの不安を、一緒に抱えて。



第弐章 第五話 ラフエイア、色んな意味で震え上がる



昼下がりの街中、ラフエイアは一人街中を繰り歩く。

彼女にはウィッチ・ビアンコからゼベイルを始末せよという指令が出されていたが、ゼベイルは夜にしか出現しないため、
昼間はほとんど自由行動みたいなものだった。

「ったく、あのババア。しちめんどくさいこと押し付けやがって……」
ぼやくラフエイア。
「あんな蝿ごときにびびってるなんざ、胆のちいせぇ奴だな。」
ラフエイアはゼベイルを失敗作と呼ぶ。

しかし、彼女の言い分も尤もだった。
ゼベイルはウィッチ・ビアンコが作った中でも、信じられないほどの欠陥品だ。
自分達と比べれば、その性能は遥かに劣っている。
そんな奴に恐れをなすというのは、彼女からすれば臆病者と言うほかなかった。


何気なく街を見回りながら、ラフエイアは通り過ぎる人波のことを思う。
(こいつらもいつか、ババアの実験にされちまうのかねぇ……)
少し感傷に浸るも、すぐにその考えを振り払う。
そんな事は自分の知った事ではない。彼らの末路なぞ、どうでもいいことだった。
(帰るか……)
ウルエイアが待機しているアジトに戻ろう。
そう思った矢先の事、いきなり後ろから声をかけられる。


「ねぇ、君。」
鬱陶しそうに振り向くラフエイア。
が、声の主は彼女よりも遥かに身長が高かったため、思わず見上げてしまう。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
長身の女性が尋ねてきた。
本心ではさっさと帰りたかったが、特にすることも無かったので、つきあってやることにする。
「……なんだよ。」
出来るだけ不機嫌そうに応える。
しかし、相手はそんな事も気にせず、話を続ける。
「うん。えっとね……この娘、知らない?」
女性がポケットの中から一枚の写真を取り出し、ラフエイアに見せる。
その写真に、ラフエイアは驚きを隠せなかった。
なぜなら、その写真に写っていたのは………
(ゼベイル!!?)
声には出さず、表情にも変化を出さなかったのは、奇跡としか言いようがなかった。


(こいつ…なんでゼベイルの写真なんか持ってんだ?)
ラフエイアの頭の中では、この得体の知れぬ女の事が渦巻いていた。
(人間が普通に撮ったとは考えられない。何か、ハイテク機器を使わなきゃ無理だ。)
ゼベイルは高速戦闘タイプ。
その素早さは決して肉眼で捉えることは出来ないと言っても、言い過ぎではない。
それを、ここまで正確に捉えることが出来るのは、スマートブレインぐらいしか思いつかない。
と、いうことは……

(こいつ……まさか、仮面ライダー!?)

しかし、ラフエイアはここで冷静に考える。
(自分から墓穴を掘るわけにはいかないな……)
おそらく、相手はこちらがライダーとは気づいていないだろう。
なら、自分から正体を明かす必要は無い。
こちらはこの写真とは無関係であることを明らかにし、逆に相手の情報を探ってやろう。


「……お前、オレをおちょくってんのか?」
「え?」
ラフエイアは女性に詰め寄る。
「こんなの誰が信じんだよ!空飛ぶ人間なんざいると思ってんのか!?」
「えぇ!!?いや、その……」
たじろぐ女性。
とりあえずは、これで自分が疑われることはないはずだ。
「お前、オカルトの読みすぎじゃねぇのか?人を呼び止めてこんなもん見せんじゃねーよ。」
ダメ押しに最大級の悪態をつく。
これで十分だと思い、その顔を見やると……


なぜか恍惚の表情をしていた……


(な、なんだコイツ!!)
背筋が震える。
何か知らんがこいつはヤバイ。色んな意味でヤバイ。
逃げ出そうと思ったが、まだ相手の目的に探りを入れていない。
それだけ済ませてさっさと逃げよう。

「…つか、あんたこいつ見つけてどうすんだ?どっかに売り飛ばすのか?」
とりあえず軽い質問で攻めてみる。
これぐらいなら、怪しまれる事はないだろう。
「え?実はねぇ………」
一息置いた後、この女は


「つかまえて、私のものにして、可愛いお洋服着せて、いっっっぱい可愛がるの!!」
なんて答えた。


「………」
これで確信が持てた。こいつとは絶対に関わってはいけない。
こいつの背後関係うんぬんを調べる前に、こいつ自身がヤバすぎる。
このまま行くと、きっと良くないことが起こるに違いない。
もういい。さっさとずらかろう。
これ以上こいつといたら、すごく危険だ。


「あ、ねぇ君。」
逃げようとして、いきなり声をかけてくる危険女。
何を言うのかと思えば、


「可愛い服、着ない?」
だった。
……うわ、鳥肌が立ってきた。
「君だったら、体操服にブルマが似合うと思うのよねぇ。あ、でも、サスペンダーとかも似合うかも!!」
……こいつが何を言ってるのかは、さっぱり分からない。
ただ、今逃げないと自分は色んな意味で、もう帰れなくなりそうな気がした。
なので、


「あ!ヤベ、時間だ!!ワリィ、オレ帰る!!」
全力で走って逃げた。
「あ!ちょ、ちょっとーーーー!!」
だんだん声が遠ざかってくが、ちっとも気にしない。…いや、気にしちゃいけない。


世の中には、遇ってはいけない人間もいるもんだなと、冷静な頭で考えていたラフエイアだった……



第弐章 第六話 水の使い手


水野町(ネーミングセンスは気にするな(ぇ

??「はぁ……暇すぎる。」
金の髪を揺らしながら帰宅途中の彼女。この近所では有名な、水野水美である。

水美「というか後ろで変なのがいるしね……」
変なのつまり亜種デュナミストである。
姿は人型だ。

亜種「がォォォォ!!!!」
水美に襲い掛かる……だが。

水美「残念でした!暇つぶしには丁度いいわ!覚醒!仮面ライダーガブリエルたん!!」
青き鎧の戦士、ガブリエル……その強さは…。

ガブリエルたん「じゃあこれ受けてみて!アクアハーケン!」

ガブリエルたんは自分の武器、アクア・ランスを亜種に刺して、そのまま空彼方に投げ飛ばした!

ガブリエルたん「もう終わり?情けないわね〜。」
亜種はそれにムカついたのか体を発光させて向かってきた。

ガブリエルたん「それでよし!、デットウェーブ!!」
ザバァァァァァァン!!!!!
ガブリエルたんが消えると、もの凄い波が亜種を襲った!

亜種「ぎゃ!?ぎゃぉぉ!!………」
その攻撃により一撃で消える。亜種……不憫だ。

ガブリエルたん「もう終わり?つまんないの〜。誰でもいいから相手してよね〜。」

??「あ…あの?」
ガブリエルたん「なに?」
小さい声で話す少女……いらいらしてくるガブリエルたん。

??「あの…その」
ガブリエルたん「(ブチ)……なにが言いたいかはっきり喋れ!!!!」

ガブリエルたん、ブチ切れです。
??「あの…ごめんなさい〜」
ボロボロと涙が出ていく、少女さすがにこれはガブリエルたんもたじたじ。
ガブリエルたん「いえ、あの泣かせるつもりは……。」
なにを言えばわからなくなる、ガブリエルたん。
最終的には………。


水美「それで?貴方はその仮面ライダーってやつを退治するのね(ってあたしもじゃん!、よかったとどめマーメイド形態で刺して。)」
心の中で冷や汗をかく水美。
アイスキュロス「あ、はいそれで。今買い物途中に貴方の戦闘を見て……。」

水美「どこから?」
もし、最初からだったら……。変身をする準備をする。

アイスキュロス「あ、変なのに止めを刺したところです。」
水美「そう(よかった、最初からじゃなくて)」
ここで戦闘沙汰はいやだしね。

アイスキュロス「あ、それでは。そろそろ帰ります。」
水美「ええ、また会えたらどこかで。」
アイスキュロス「それでは〜。」
歩いてかえるアイスキュロス……途中で転んだが。

水美「ドジっ子ね。」
それにしても戦闘沙汰にならないでよかったわ……
だけど……。
水美「少しだけついてってみようかしら」
何処からかバイクが来てそれに乗り込む水美。って免許は?
水美「ステルスモード、目的はあの子に着いてくこと、以上!
???『了解、ステルスモード』

聞いちゃいない、さてどうなることやら。



第弐章 第七話 挫折…そして



昼休み、列が騒いでいる時(あらぬ誤解を解くためにとも言う)…

残る転校生、京そして冥は、こんなことを話していました…。


「あの…冥さんと私って以前、どこかで会った事ありませんか…?」

「いいえ。私は今日初めて、あなたに会ったけど?」

「そうですか…。」


京は昨日、自分のピンチを救ってくれた異形の存在=豊桜 冥(ほうおう めい)に、どうしてもお礼が言いたかった。

京のそんな顔を見て、冥も笑ってこう言った。


「まあ、こんな顔した人が二人いるかどうかも疑問だけどね。それより、昼食を食べましょ。転入初日で緊張しちゃって…。」

「は、はぁ…。」


…時間は飛んで、放課後。(飛びすぎ!)

冥は、一枚のカードを取りだすと、誰にも分からないように外に投げた。


「行って来なさい。…あの子を動かすために。」


彼女は笑っていたが、その笑顔はぞっとするほど、冷たかった…。


ガシャァァァン!!


突然、2階の窓ガラスが割られる。中からじゃない、外からだ。


「キャアァァァッ!!」


その場にいた生徒たちは立ちすくんでしまう。

コウモリ人間というべきだろうか…まぁ、そういうことにしておこう。(ぇ

生徒たちの血を吸うつもりなのだろうか、どんどん近づいてくる…。


「はっ!!」


だが、そんなことをさせまいと立ち向かった者がいた。

京いや、仮面ライダーシグマである。


「早く、早く逃げて!!」


その言葉で一目散に逃げていく生徒達。

全員が逃げたことを確認すると、コウモリ人間を窓から外へ放り出した。

そして、自分もそこから出て、コウモリ人間と戦おうと構える。


「こいつ…一体…。」


考えているヒマはない。そう思ったシグマは即座に攻撃を開始する。

だが…。


「くっ…! こいつ…!」


そう、相手はコウモリをモチーフにしている。空が飛べるのだ。

対してシグマは、空を飛ぶ相手に対する能力が、覚醒していない…。


「あうっ!!」


空からの攻撃を一方的に受けてしまうシグマ。


「今度は何処から…!?」


それがまずかった。

あっという間に後ろを取られ、そして…。


「ぐぅっ…!?」


肩に噛み付かれてしまった…。赤い血が流れる…。


「(こ、このままじゃ…負ける…。)」


そう思った時だった。


「はあっ!!」


黒に黄色のライン…シグマの前に現れたその人物は、すごい力でコウモリ人間にダメージを与えていく…。


「私の敵じゃないな…。消えろ!」


≪Exceed Charge≫


持っていた変わった形の剣を光らせ、その人物…いや、仮面ライダーカイズィーは見事にコウモリ人間を蹴散らす。


「強い…!」


が、次の瞬間シグマは倒れてしまう。


「おい、しっかりしろ! おい!!」


そう呼びかけられた気がしたのだが、シグマ…いや京は答えることができなかった…。



次に京が気付いたのは、ベッドの上だった。


「気がついたか?」


彼女の横には、草加 雅菜が座っていた。


「あ…草加さん…?」

「傷は明日になれば多少癒えるだろう。」

「あの…何で…ここに…?」


雅菜は鋭い目をして言う。


「お前もライダー少女だったとはな。」

「え…!?」


驚いた京は返す言葉がない。


「あのコウモリの化け物を倒したのは私だ。仮面ライダーカイズィーだ。」

「仮面ライダーカイズィー…。」


発音しにくい〜と思ったが、怒りを買いそうなのでやめた。


「お前のことは木場から聞いた。まさか転入生にライダー少女がいたとは、驚いたよ。」


まぁ、転入生は3人が3人ともちょっと変わっていますけど…?(ぉ)


「それで、思ったんだ。私がお前のコーチになったら、どんなにお前が喜ぶか…とね。」

「ええ!? 草加さんが私の…コーチ!?」


驚いた京はつい声が大きくなってしまう。


「明日から、SB社の地下施設を借りて、特訓といこうじゃないか。」

「は、はい…!!」


こうして、ちょっと奇妙な師弟関係が生まれた…

が、雅菜はちょっと苦い顔。


「(言えないよなぁ…。レオナに脅されたから、コーチ役を受けた…なんて…。)」


どういう脅され方をしたかは、ご想像ください。(ぉ)



その頃…



『…どうして君はこうもまぁ、問題を大きくしてくれるんだろうねぇ…。』

「すいません…でも…。」


エウリュディケと神藤 和子(エウリピデス)が話している。

どうやら帰ってきたようだ。


『しかも、だ。君が言う、やってもらいたいことってかなり難しいよ? 正気なのかい?』

「私は正気ですよ。ご主人様。」


一息切って、和子は言った。


「もう一度言います。仮面ライダーゼベイルたんを、昼間でも戦えるようにしてください!」



第弐章 第八話 兄と妹、それぞれに


「列さん、こっちにいきましょう!」
「よ、よし!」

非難の視線をビシバシと浴びせられる教室から、神歌ちゃんの手を引いて逃げ出した俺。
帰った後の事を考えると、気が重いが……。

とにかく学園中を駆け回り、神歌ちゃんの案内で人目のつかないところへどんどんと移動を続け、やがて、体育館の裏にたどり着いた。
ここは教室などからはかなり遠く、わざわざこんなところまで昼食をとりに来る生徒はいない。というわけだ。

「お。神歌ちゃん。ここなら誰もいないみたいだ。」
「そ、そうですね。…やっと、二人っきりです。」
まわりに人影はまるでなく、ここにいるのは俺達二人だけ。

「やっと、安心してご飯が食べられるね。」
オレは体育館の裏の、ちいさな出入り口の階段に腰掛けると、あのドタバタの中で秘かに持ち出してきていた(ぇー)
持参の弁当を広げる。

「いただきます。」
こう見えてもオレは、料理が得意だ。
兄一人妹一人の生活の中で、自然に身についていった数少ない特技。
こうやって昨日までは、妹の分も弁当を作ってやり、一緒に食べていたわけなのだが…。

……華枝。
ちゃんとご飯食べてるのかなぁ……。

いつもオレの弁当を満足そうに頬張っている、妹の事を思い出すと、また胸が締め付けられる。
「華枝……。」

「……………。」

ふわり、とオレの横で風が舞った。
神歌ちゃんが座ったんだろう。
彼女も持ってきていた弁当を……。

「列さん……。」
「え?」

俺は呼ばれて神歌ちゃんのほうを向く。
「………!」

そこには、頬を赤く染めて、上気した目でオレを見つめる神歌ちゃんの顔が…。
「今朝の返事を、聞きたいです。」
「ええ!?」

今朝の返事…。
神歌ちゃんは、オレの支えになりたい…という、その話。
いくら俺でも分かる。多分コレは、遠まわしの愛の告白。
それ自体信じられない話なんだけど。
彼女のここ最近の態度から、それも分からない話じゃないって言うのがまた困る……。

「ここなら、誰にも聞かれません。列さんの気持ちを教えてください。」
ゆっくりとオレに近づく神歌ちゃん。

そういえばここに来るまで、ずっと神歌ちゃんの案内だったような気がする。
……確信犯だ。
オレをここに連れてきて、その、返事を聞くために。


そりゃ、俺だって彼女の事は嫌いじゃないけど…。
華枝が行方不明だって言うのに、こんな、こんな事してちゃいけないって、そう思う。
でも…。
悲しいかな、俺も男の端くれな訳で。

「神歌は、列さんになら、この場で何をされたって……。」

何をされたって…?
「何」ってなんなんですか!!?
彼女の言葉に、あらぬ期待をかけてしまう情けない俺……。



彼女の顔がすごく近い。
神歌ちゃんの吐息を、肌に感じるほどに。

「列さん……。」
熱く甘い声がオレを呼ぶ。

……列くん、大ぴんちっ!






……さて、話はその妹の華枝ちゃんのほうへ移るわけで(ぇぇー

「はにゅぅ……。」
ふかふかのベッドで寝息を立てる女の子。
その幸せそうな寝顔からは、彼女のその正体を想像もできないだろう。
なにせ、本人すらも知らないのだから。

その寝室に、EASE(イーズ)のリーダー、エウリュディケが入ってくる。
『信じられない話だな。』
そうつぶやく。

こんな無邪気な寝息をたてる普通の女の子が、実は仮面ライダーだというのだから。
エウリュディケ。彼女の忌み嫌う、人間以外の存在だというのだから。

しかし、彼女を利用できれば、自分の野望の助けになる。
だがエウリピデスの報告によると、彼女の変身するゼベイルたんは、夜にしか活動できず、おまけに短時間しか戦えないという。
そんな欠陥品を、わざわざ修繕する必要はあるのか……?
「うにゅ…。」

『試して…みようか。』






「うにゅ…。おにぃ…ちゃあん……。」

ごろりっ!

「ふにゅっ!」
天と地がひっくり返る。
心地のいい夢の中から、地獄の底にまっさかさまだ。
「あうぅ……。いたぁい…。」
頭をさすりながら立ち上がる。

「………?」
最後に見た景色と違う。
自分のすぐ横には、白いベッド。
道路で寝たはずの自分は、なぜかベッドの中にいたらしい。

しかしそのベッドは、何もない白いドーム状の空間の真ん中に置かれていた。
自分もその真ん中に立っている格好だ。

人に助けられて寝かされたにしては…かなり異常な状況だ。

「ううっ!」
そのとき、背中に寒気が走る。
あれ…?昨日とおんなじ感覚。
あの白い怪物が出たときと、同じ…。

あれあれ……?私、そういえば、どうして助かったんだろう。
なんであの怪物にやられずに、ここに寝てたんだろう。
訳が分からない。

「うぅ〜ん……。わかんないよぅ〜……。」





その様子をモニター室で見守る、エウリュディケ。そしてエウリピデス。
「あの子、本当に何も覚えてないのね。」
溜息混じりにエウリピデス…。神藤 和子がつぶやく。

「あの子は二重人格者。記憶の主導権は、もう一人が握っている。どうやら夜にならないと目を覚まさないようです。」
『なるほど……。』
「そして仮面ライダーとして変身が可能になるのも夜からです。その戦闘力は私たちには劣るものの、戦力としては十分と考えます。」
『ずいぶんあの子の肩を持つんだね。』

……。

「いえ。別に。私たちの悲願達成には、あの子の力も加えるべきと判断しただけです。」
『確かに…。味方は多いほうがいい。』
『でも……。それはコレに生き残ってからだ。』
エウリュディケはそのモニター室から、一枚のカードをドームの中に投げ入れた。
『さて。どうするかな。このドームはボク達EASEの地下戦闘訓練場。逃げ場はないよ……。』



そのカードは地面に落ちると同時、絵柄になっていた黒い豹がそこから飛び出し、実体化する。
人型をした黒い豹……。それは獲物を見つけると、その爪を構え、一気に駆け出した!!



ストトトトトトトトトト……。

「え?」
聞きなれない音が聞こえる。
それは自分の真後ろから。

「な、なに…?」
先ほどの寒気もあってか、彼女はゆっくりと後ろを振り向く。

『ヴガウロオオオッ!!!』

「きゃあああああああああああああっ!!!!!」
そこには、黒い姿をした細身の怪物が、自分に向かってまっすぐに向かってくる姿があった!

ダンッ!!

その怪物は地を蹴ると、信じられないような跳躍力で、自分の真上から襲い掛かってきた!!!
「いやああああああっ!!!!!!!!」

思わずうずくまってしまう。

こわい、こわいこわいこわいこわい……!!!!!!!!!





「ご主人!!」
それを見たエウリピデスは、エウリュディケに向かって制止を呼びかける!

『照明を落とすんだ。』
「は、はい…!!!」
『これでもし彼女が変身できなければ…。彼女はそこまでだったということさ。』


ガツンッ!!

白いドームが暗闇に包まれた。

「ひっ!!!!?」
それに真っ先に反応したのが彼女…。風瀬 華枝。

「いや!!!!いやああああああああああああああああっ!!!!!!!」
たまらず彼女はその場から駆け出した!!

ザスウウッ!!!

『ヴガルルルルルル……。』
完全に目標を捕らえるはずだった黒豹の爪も、突然の暗闇に目標を見失ってしまった。
黒豹は五感を研ぎ澄ませ、暗闇に潜む獲物を探す……。






「いやあっ!!!!いやいやいやいやいやあああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

暗いの怖い暗いの怖い、あの怪物も怖い、一人ぼっちも怖い、死ぬのも怖い!!!誰か、誰か助けて……!!!!!!
光を求めて夢中で走る。
暗闇の中に、一秒だっていたくない。

だって暗闇は私をさらうから、私の身体をいじくりまわすから。
私が一人増えてしまったから。二度とおにぃちゃんに会えない気がするから。


(キヒヒヒヒヒヒヒヒ……!!)


いやだ、思い出したくない!!!
あの笑い声、あの部屋の臭気、山積みになった人間の死体、見守る、4人の女の子たち……。


(お前は……失敗じゃ。)


失敗!?失敗って何よ!!?
私の身体が私じゃなくなったって言うのに、失敗って何よ!!!!!


(こやつは捨て置け。蝿(ゼベイル)にはゴミ捨て場がお似合いじゃ。)


ゼベイル…?それが、失敗作の私に与えられた、名…。


(次の人間はおらんのかえ?こんな出来そこないではなくて、もっと丈夫な心と身体を持った人間がいいのう!キヒヒヒヒ…!)
(まったく人間という奴は、いくら実験に使っても勝手に増えよる。この町は私のモルモットの飼育場といったところか!)


モルモット?人間が……?


(もっと人間を連れてくるのじゃ。誰も帰しやせん、証拠もありはせん。蒸発じゃ。大量蒸発事件じゃ。)
(いっそそこらの一家全員を連れてきて、いっぺんに改造してやろうかのう……。
死ぬのも一緒じゃ。寂しくあるまいて。キヒヒヒヒヒヒヒヒ…!!!)


許せない…。
こいつは、こいつは絶対に!!
人の命をおもちゃのように弄び……。
家族の絆を引き裂き…。ごみのように捨てるこいつを、私は!!!


「絶対に許せないんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」



『!!!』
「!」
そのとき、暗視カメラに捕らえられた彼女の様子が変わった!!
彼女の周囲を、一層暗い闇が纏い、その姿を変えていく……。

『これが……。これが…。』
「仮面ライダー…ゼベイル!」


その背の羽根を開くと、彼女は闇の中を走る黒い豹に標的を絞る。

バッ!!!

そして地を蹴り、超低空を高速で駆ける!!!



ブイイイイイイイイイイイイ……。

『ヴガ!!?』
目の前から、黒い物体が駆けてくる!
黒い豹もその足には自信があったが、その物体は、それを遥かに上回る速度で迫ってくる!!
その物体は右足を突き出し、こちらを見据え、さらに速度を増してくる!!!

『ヴガアアアッ!!!』

ダンッ!!!

それを危険と見た黒い豹は、地を蹴り、上空に逃れ距離を離そうとするが、……遅かった。

「ラピッド・ブレエエエエエエエエエエエエエエエエエエイクッ!!!!」

そう、声を発した黒い物体は、上空に逃れた自分に向かって軌道を修正し……。
『ヴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!』

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!

そのキックを浴びる結果に終わった…。




『ほう……。なかなかやるじゃない。あれを一撃で倒すとはね。』
「ええ。」
その様子を、満足した表情で見守る二人。
『よし…。では彼女をここに。人格を一つにまとめ、彼女を戦闘向きに改良する。』
『今回の事で、暗闇さえあれば変身できることが分かった。そこをもう少し調整してみようかな。』
「ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げるエウリピデス。


『聞いてるんでしょ!!人攫い!!!!』
「っ!!?」
そのとき、ドーム内の集音マイクから、ゼベイルたんの声が聞こえてきた。
二人はモニターを覗き込むと、そこには暗視カメラに向かって睨みを効かせる彼女の姿があった。

『わたしは……。あんたみたいな奴を、絶対に許せない!!!』
『人が誘拐されることが、その本人にとってどんなに恐ろしいことなのかも知らず、
それがどんなに家族を悲しませるかも知らず、平気な顔をして!!!』
『絶対に……許せないんだ!!!!』



『…熱いねぇ。「もう一人の」彼女は。』
「ええ……。」
複雑な表情のエウリピデス。

『エウリピデス。彼女を始末するんだ。』
「え!!?」
『あれじゃボクの改良を受け入れそうにないでしょ?それにここも知られた。生かしておくとろくな事がないよ?』
「で、でも!!!」

『ボクの命令に、逆らうのかな…?』

っ……!!!!

その目に、凍りつく想いがした。
逆らえば自分の命すら……ない。
そう思えるほどの、あまりに冷酷な瞳。

エウリピデスは…。だまってモニター室を出た。





早くここから出よう。
啖呵を切ったはいいが、とにかく今は、兄の元へ帰らなくては。
一晩帰らなかった。心配してるだろうから。

暗闇をも見渡す彼女の瞳は、このドームの出入り口を探した。
きょろきょろと辺りを見回すが、出口らしきモノは全てふさがれている。
「こうなったら、天井をぶち破ってでも……。」

ガツン!!

「!!!」
そのとき、照明が復活した。 
「うっ……!!」
暗闇の中を活動するゼベイルたんは、明るい光が苦手だったのだ…。
かといって、すぐに変身を解除されるわけではないのだが。



「あなたを……。帰すわけには行かない。」
「!!!」
そのとき、ドームにその女性の声がこだまする。
「………。」
ゼベイルたんは息を呑む。

やってきた女性…。エウリピデスはその手に巨大な剣を携えていた。
「人攫い。」
「神藤 和子、よ。」

「お願い。おとなしく私たちに従って。そうすればあなたは、人格を一つに戻せるし、
今のような不完全な変身体ではなくなり、仮面ライダーとして、あなたの目的も…。」

「わたしは、これ以上人間から離れる気はないわ。もう二度と私の身体をいじらせはしない!!」
「人格を消すなんてまっぴらごめん。私たちの心は、私たちのものだ!!」
「…それに、頷いたが最後、わたしはあなたたちの操り人形に成り下がる。
人攫いの片棒を担ぐくらいなら、死んだ方がマシよ!!!」

「じゃあ……仕方ない。」
彼女はその大剣をゼベイルたんに向ける。

「EASEが一人、エウリピデス……。参る!」

「…ならば!!」
「私は仮面ライダーゼベイルたん!!夜を舞い、闇にはびこる悪を討つ!!!!!」



第弐章 第九話 潜入そして……


一方。アイスキュロスからはぐれ。ウォーガのサーチだけが頼りとなった、水美はと言うと……。

水美「さてと……どう?ウォーガ」

水色のバイク……ウォーガ。超自己判断AIを持つSB社の得A級、機密兵器だ。(なぜ、水美が持っているかは不明)

ウォーガ「100のドアの99がダミーだ。本物は……あれだ。」

一見ただのドアだが……開けてみると……。

ガチャ…………。


水美「凄い設備ね。」
あたり一面が見たことも無い機械でいっぱいだ。
ウォーガ『これの大半のうちは、SB社の高性能ユニットが入っている。』

水美「何でそんなのが?」

ウォーガ『考えられる点は一つ。』
水美「SB社で、誰かがこれを渡した……ね。」

ウォーガ『とりあえず先に進むぞ。』

水美「トラップは?」
あったら先に進めない。

ウォーガ『100%のうち20%を解除したなおも解除中だ。』
超高性能AI……人間で言うIQは300以上だとか。

水美「それじゃあ20%のほうを探すわね、ウォーガは更にトラップとかを解除して。」
ウォーガ『了解した。』


水美「失礼しま〜す……。」
ドアを開けて誰もいないと判断すると……。
水美「さてと……覚醒!仮面ライダーガブリエルたん!!」
青き戦士となり壁をぶち壊すガブリエルたん……敵にばれるぞ?

ウォーガ『マスター。たく……解除終了……武装形態に移行、マスターの戦闘を補助する。』

ガブリエルたん「さあ!敵さんいらっしゃい!」

壁やらを壊しながら進む、ガブリエルたん……に対しウォーガは。

ウォーガ『サンプル採取と……SB社に渡さないとな。』
もの凄くしっかりしていました。(ぇ



第弐章 第十話 渦巻く謎



「やっぱり…。」


アイスキュロスはつぶやいた。


「バレバレですよ、貴女の動き…。」


その顔は先ほどまでのドジっ子とはとても思えない。


「あちらはあちらで騒がしいですし、…追い返しますか…。」


彼女の性格が明らかに違っている…。これは一体…?



その頃…。



「くらいなさい! 『メデア・ウィンド』!!」

「遅いっ!!」


その剣から作り出される衝撃波を軽々と避けるゼベイルたん。


「この大剣:メデアの衝撃波を軽々と避けるとはね。」

「私は…負けるわけにはいかないのよ!!」


ゼベイルたんが睨みつけている相手、エウリピデスは余裕の表情で言う。


「なら…これならどうかしら!!」

「!?」

「……発射(ファイアー)!!」


ズドン!!

何処からか持ち出したのか、巨大砲:ヒッポリュトスをゼべイルたんに向けて放つ。

が、もちろん…避けられる。


「そんな武器を扱うなんて…!」

「卑怯なら卑怯とでも言いなさい。これが私の戦い方なの。」


ゼベイルたんは感じ取っていた。遊んでいる…と。

自分よりもかなり強いはずだ…。でも、それが分かっているから余裕の表情を見せているのだろう…。


「余裕なんて見せてないで、本気で来なさいよ!!」

「…言ったわね。これが私の本気よ!!」


そう言うと、エウリピデスは大剣:メデアと巨大砲:ヒッポリュトスをしまってしまう。


「な…。」

「武器を使わないのが、私の本気。これを喰らいなさい!!」


それを、モニター室で見ていたエウリュディケは…。


『命がけだと、怖いねぇ…。エウリピデスの本気は…他のライダーを遙かに超越したものだよ。勝てるわけがない。』


それでも、ゼベイルたんは立ち向かう。


『どんな逆境にも立ち向かう熱いヒロイン…か…。面白い子だったけど、もう終わりだね…。』



「終わりなさい…!」

「!!」


華麗にエウリピデスはジャンプすると、体にものすごい回転をかけて、ゼベイルたんに向かう!


「やばっ…!」

「きりもみ…回転キーーック!!」


一撃だった…。

その強力なキックがゼベイルたんに命中…。


「お……お…にぃ…ちゃん……。」


兄を呼びながら、彼女は人の姿へと戻り、倒れた…。


『エウリピデス。彼女を片付けておくんだ。彼女には悪いが、これも運命だと思えばなんでもない。』

「はい…。」

『ボクはアイスキュロスのところへ行ってくる。何かあったみたいだからね。』

「分かりました…。」

『それと次の任務は彼女をこんな姿にした奴を倒すことだ。おそらく、別の仮面ライダーを作っている可能性があるからね。』

「了解…。」


エウリュディケが去っていくのを確認したエウリピデスは、ゼベイルたん…いや風瀬 舞夜を抱きかかえる。


「…まだあなたを死なすわけには行かないのよ…。」


エウリピデスは、舞夜を抱えたまま、一人でつぶやく…。


「……あなたと私は…同じなのだからね…。」


…? そりゃどういう意味だ?(お前が聞くな!)



んで、エウリュディケの方では…。



『…これはまた…派手にやってくれたねぇ…。』


目の前には壊れた機械…。


『やれやれ。せっかくSB社をハッキングして、ここに機材を届けさせたと言うのにさ。』


げ…。そんなことをしていたのかこいつ…。


『アイスキュロスはどうやら戦っているみたいだけど…。なるほど…水の使い手か…。』


「はっ! てやぁっ!!」

「このっ!!」


戦っている声が聞こえる…。


『やれやれだね…。アイスキュロスは…泣いているときが一番強いって…本人は言っていたけど、出鱈目もいいとこだね。』


エウリュディケはひとりごちた。


『泣かないときでも、充分に強いって言うのに…。泣くとボクを越えそうな気がするから…強さを抑えているのに。』


誰も聞いていないのに、解説するエウリュディケ。

…まぁ、目の前にいる私達とかは聞いているだろうが。(ぉ)

戦いの音が激しくなる…。


「私は雪野 波(ゆきの なみ)! EASEが一人、アイスキュロス!! 泣かせると痛い目を見ますよ!」


そう名乗るアイスキュロスの声を聞いて、その場を立ち去るエウリュディケ…。


『デュナミストに成れない者の…亜種の怨念が集まって出来たとはとても思えないよ…。アイスキュロス…。』


…だから、どういう意味だよ。(だからお前が聞くな)



第弐章 第十一話 危ない二人の悪女



昼下がりの街をトボトボと歩く長身の女性−槍使い。
頭はガックリとうなだれ、足取りも非常に重そうだった。


「うぅ…あの娘どこに行っちゃったのかなー?」
数時間前、槍使いは一人の女の子に会った。
その娘は見た感じは少しとがった印象を与えたが、槍使いの好みに直撃だった。
最初は空飛ぶ少女を自分の物にしようと思ったが、さっきの娘も欲しくなった。
なので、可愛い服を着ないかと尋ねたところ、いきなり女の子は逃げ出してしまった。
「せっかく可愛い服着せてあげようと思ったのに……何がいけなかったのかな?」


まさか本人に問題があるとは、少しも気づいていなかった。


しばらく歩いていると、目の前に何時の間にか青年が立っていた。
槍使いは特に関心も無く話しかける。
「こんにちは。貴方は“人形使い”?それとも、唯の“人形”?」
槍使いの質問にニッコリ笑う青年。
「これは唯の“人形”。本物は“八代みつる”として学園に潜入中さ。」


そう、これは人形使いの操る“人形”である。
動き自体もほとんど人間と変わらない動きをするこれが、唯の操り人形だとは誰も思わないだろう。


「何か用?」
そっけなく返す槍使い。先程の女の子といた時とは性格が180度、反転していた。
「仕事だよ。シグマを連れて来いとの暗殺者の命令だ。」
「……なんで私なの?」
「暗殺者は今、魔眼使いと作業中でね。代わりに君にお願いしたってことさ。」
「やだ。気が向かない。」
ふんと明後日の方向を向く槍使い。そんな彼女に青年は天国の扉を開いた。


「捕まえたら君の自由にしていいって言ったら?」
「!!??」
凄い速さで振り向く槍使い。しかも目が輝き、涎まで垂らしていた。
「ほ、ホント!?私の自由にしていいの!!!」
「勿論だとも。暗殺者がいいって言ったんだから。」
先程までの元気の無さはどこにいったのか、ピッと背筋を伸ばす。
「まかせて!!必ずあの娘は私と騎士団のために連れてくるわ!!」

騎士団の目的は二のついでみたいなものになっていた。



場所は変わって学園。
京と雅菜は二人そろって学園を出るところに、出迎えが来ていた。
ロールスロイスの中から出てきたのは……
「木場、それに北崎。」
SB社社長木場夕菜と北崎沙耶だった。
「大丈夫でしたか?京ちゃんが負傷したと聞いたのですが……」
心配そうに見やる木場。
「あ、大丈夫ですよ。思ったほど大した傷じゃありませんし……」
「そうですか?なら、いいのですが……」
それでも心配する木場に、京は純粋に嬉しかった。
「まぁ、本人が大丈夫だって言ってるんだから、それでいいだろう。」
雅菜がフォローをいれる。
「でも、危険な傷かもしれないよ?私が手厚く看護を……」
北崎が身を乗り出し京に近づこうとする。が、

「「やめんか!!!」」
二人の良識人に阻まれた。
そんな三人を苦笑しながら見ることしか出来なかった。

「ところで、木場。」
雅菜が話を切り出す。
「明日から放課後、SBの地下施設でコイツを特訓させる。いいな?」
「………やはり、そうなりますか……」
その表情にはありありと悲しみが映し出されたようであった。
「今のままでは唯の足手まといだ。分かってるんだろう?」
「…………」
押し黙る木場。

出来ることなら、これ以上京には戦って欲しくなかった。ただ、平和な学園生活を送って欲しかった。
どうしてこんな事になったのか。そう、思慮に耽っていると……

「あの、木場さん。私に特訓させて下さい!!」
京が自分から言い出した。
「京さん…………」
「私、今回の戦いで何も出来ませんでした。雅菜さんが助けてくれなかったら、今頃もっと多くの犠牲者が出ていました……」
俯き、拳を握る。そして、
「私、負けたくありません!もっと強くなって、皆を護りたい!!」
顔を上げ、真っ直ぐ木場を見据える。
そんな京の姿勢に、木場は軍配を上げるほかなかった。


「…分かりました。ただし、徹底的にやってもらいます。いいですね?」
「はい!!」
二人を夕日が照らす。その姿は誰が見ても立派なものであった。
「安心しろ。私が特訓してやるんだからな。」
雅菜が笑いながら歩み寄る。そして、

「ねぇ〜、私は?」
一人置いてきぼりを食らった北崎がいた。



木場の提案で、京と雅菜を車で送ってもらうことになった。
京が悪いと思ったが、木場がこれぐらいはさせて欲しいと言ったので、恐縮ながらも、了承することにした。

四人がそろって車に向かう途中、目の前に人が立ちふさがった。
自分達よりも身長のあるその女性が口を開く。

「志熊京ちゃん、だよね?悪いけどお姉さんと一緒に来てもらうよ。」

全員、体に緊張が走る。
「貴女!いきなり堂々と人攫いをすると宣言するとはいい度胸ですね!!」
木場が感情を露にする。が、女性は気にした風も無く、
「んー、貴女今は帝王のベルト使えないんでしょ?だったら私の敵じゃないよ?」
「!!!」

木場は言葉を失った。
確かに、オーガギアはセイバーとの戦闘で傷付き、現在は修理中である。
しかしなぜそのことを知っているのだろうか?
「お前、何者だ?」
雅菜は相手に探りを入れる。答えないとは分かっていても、聞かずにはいられなかった。
しかし、相手の女性は……


「あ、まだ挨拶してなかったね。私は槍使い。よろしくね、京ちゃん?」
堂々と名乗った。


「槍使い?ふざけてるのですか?」
「ふざけてないよ。こういう名前なんだもん。」
ケロリと答える槍使いと名乗った女性に、木場は神経が逆撫でされた気分だった。
「…私を攫って……どうするつもりですか?」
警戒しながらも尋ねる京。
この質問にも槍使いは堂々と答えた。
「“私達の目的”は明かせないけど、“私の目的”なら話してもいいよ。」
一呼吸間を置いて、槍使いははっきりと、

「私の物にして、可愛い服着せて、たっっっっっくさん可愛がるの!!」
と答えた。顔はとても悦に入っていたし、しかもおもいっきり涎が垂れていた。その返答に、全員背筋が震えた。が、

「そんなことはさせない!」
北崎だけは果敢に立ち向かった。
「京ちゃんは私の物なの!!あんたなんかには渡さないんだから!!」
そんな理由で立ち向かうなと全員突っ込みたかった。

「あんたと京ちゃんじゃ不釣合いよ。」
「いい度胸ね。私に勝てると思ってんの?」

お互い、それ以上の言葉はいらなかった。
北崎はデルタギアを装備し、デルタフォンを顔の前まで持ち上げる。
対して、槍使いは懐の槍型のネックレスを取り出す。


「「変身!!」」
『Standing by』
『Complete』

北崎はデルタに、槍使いは全身を大型甲冑に身を包む姿になった。

「私は仮面ライダージン。アンタなんかには負けない!!」
「私だってアンタには負けない!!」

ここに、最も不純な動機で勃発した戦いが起きてしまった………



第弐章 第十二話 青い翼の天使…



「……ごめん。オレは、君の気持ちに応えられない。」

「え…………?」

意外と言った表情で、神歌ちゃんはオレを見た。
「な、なんでですか?列さんは、神歌が嫌いなんですか?」
そして一変、泣きそうな表情でオレに訴えかけてきた。

「やっぱり……。華枝がいるから、華枝がいるから、神歌のことなんて構ってられない。そう言うんですね…。」
「や、ちがうよ!俺には、どっちも大切だし、それにどっちがっていうんじゃないんだ。」
オレは手を振って否定する。

「じゃあ、どうしてなんですか?なんで、神歌じゃダメなんですか?」

「…………。」
食い下がる神歌ちゃん。
適当なことを言ってごまかすことは、無理だろうな……。
意を決し、オレは彼女に話す。

「俺には、別に好きな人がいるんだ。」

「えええええええええぇっ!?」
それこそ意外と言った顔で、神歌ちゃんが驚く。

「…そんなに、意外かなぁ?」
「あ、いえ!ごめんなさい!でもあの、やっぱり意外だったので…。」
軽くショック、かな…。
まあ、世間じゃシスコンで通ってるみたいだしな…。

「いいよ。誰にも言ったことなかったし。華枝にも。」
「……華枝も、知らないんですか?」
「うん。」

「神歌ちゃんが、オレの事を好きだって言ってくれたのは嬉しい。
でも、俺もこの気持ちを大事にしたいんだ。…もう一度、彼女に会うまでは。」
「……もう一度?いつも会ってるような人じゃ、ないんですか?」
「うん。」
「誰なのか……知りたいです。神歌には、聞く権利があると思います。」
真剣な顔。
「そうだね……。神歌ちゃんになら、話してもいいかな。」
「はい!」

ちらりと時計を見る。
まだ昼休みは半分残っている。
話し終われるかな……。ギリギリか。
「神歌ちゃんは、お昼食べながらでいいから、そのまま聞いていて。」
「はい。」

…オレは話し始める。
「俺の好きな女の子はね…。天使なんだ。」

いきなりのその単語に、神歌ちゃんは噴き出しかけた。
笑ったのではなく、びっくりして噴出しそうになっていた。

「ははは。びっくりするよね?」
「は、はい……。」

オレはそのまま話を続ける。



「華枝が先に帰っていた、ある日の学校の帰り道にね、オレは変わった羽根を見つけたんだ。」
「何の羽根なんだろうって思った。青い色をしていて、しかもかなり大きいもので、
こんな大きな鳥がこの辺にいるのかって思ったのさ。」

「しかもその羽根、何枚も何枚も落ちていて、俺は気になってその羽根のあるほうへとむかっていったんだ。」

……神歌ちゃんは黙って聞き始めた。
今までの話に何か思うところがあったのか、なにも反応しない…。

「…そしたら、土手の下の川原の方までその羽根は続いていたんだよ。」
「で、オレはその上から川原を見下ろした。」


するとそこには、紫の血を流す、青い羽根を背中に生やした女の子が、川原に座り込んでいたんだ。





「どうしたの?」
俺が聞くと、その子は背中の羽根をかばうように隠す。
「怪我してるじゃない。……大丈夫?」

彼女の肩から流れるのは、紫の血。
どうみても彼女は普通じゃなかった。…が、羽根が生えた人間などいるわけがない。
だから血も紫なんだと一人で納得していた。

「…………。」
ひたすら浴びせる非難の視線。

関わるな。と、いわんばかりだ。
……とはいっても、声をかけちゃった以上、このままにはしておけないな。

オレはかばんの中から簡易救急セットを取り出す。
…もともとは、華枝のために使っているものだ。
あいつ、ボーっとしているからよく怪我するんだよな…。

ま、それはそうと。

オレは怪我をした部分を消毒し、包帯を巻いてやる。
「人間の薬って、効くのかな……?」

その青い羽根の女の子は、オレのされるがまま、おとなしくしていた。
「………。」
オレの手つきをずっと見つめる女の子。
手馴れているのが珍しいのだろうか?

…自慢じゃないが、華枝の怪我はいつものことだからな。
それにあわせてオレの看護スキルも上昇するというわけで。

次は大きな傷を見る。
滴る紫の血をふき取っていく。
「痛そうだな…。」
傷が大きいから出血もひどい。

傷を見ていると、それはなにか靴のあとのような、爪のあとのような不思議な傷であることに気がつく。

「喧嘩でも、したのか…?」

彼女は答えない。
「まあ…。いいけど。」


「うん。これでよし。」

すっかり治療を終えて、立ち上がる。
「コレでとりあえずは大丈夫。でも肩の傷は大きいから、病院に行ったほうがいいよ?」
「………。」
その子は肩の傷をさする。
「………………。」

「…じゃあ、俺、行くな。」

ぐい。

「え……?」
立ち去ろうとしたオレの腕を、何かが掴んだ。
振り返ると、オレの腕を掴む彼女の姿が。

「………………。」
「………!」

その子は、初めてオレの顔を正面から見た。
俺も、その子の顔をはっきりと見たのは、そのときが最初。

青い髪にくっきりした瞳。小さな口…。
この世のものとは思えないほどの、綺麗な造形だった。

「……あり、がとう……。」
その小さな口が、そうつぶやいた。
不安そうだった彼女の横顔と違って、今の彼女の顔には、確かな優しい微笑があった。

「……………あ、いや、うん……。」
つい、口ごもってしまう。
笑った彼女は、信じられないほど、その、かわいかったから……。



「恩は…忘れません。さようなら……。」

そういうと、彼女はその背の青い翼をひろげ、飛立っていった。
オレはその姿を、ずっと見続けていた……。






「……それ以来、オレはあの子の事が忘れられなくて。」
たははと笑う。

「でもコレ、本当の話なんだよ?そのときの羽根だって、まだ持ってる。」
「ほ、本当に…?」
黙って聞いていた神歌ちゃんが、ようやく口を開く。

「うん。あ、今度見せてあげる。オレの宝物なんだぜ?」
「あ、ああ、いえ。いいです…。」
「そうなの?」

コレはちょっと意外だった。
今朝はオレの部屋にあんなに入りたがっていたのに……。

「列さんは、その女の人のことが、本当に好きなんですか?」
「え?」
次に神歌ちゃんが発した言葉は、そんなことだった。
オレは彼女が本当に好きなのか…。

あまりに忘れられないような相手だったから、というのもあるのかもしれない。ただ……。

「それを確かめるためにも、俺はもう一度彼女に会いたいって思ってる。…なんか、現実離れした相手だけどさ。」
「…紫の血を流していたんでしょ?それに、羽根が生えていた…。そんな相手を、列さんは本当に好きになれるんですか?」
「恐ろしい…怪物なのかもしれませんよ?」

「………。」
オレは少し考えると…。
「確かにそうかもしれない。けど、彼女は優しい笑顔をオレにくれた。綺麗な目をしていた。
それが…。怪物だとか、信じたくはないな。」
「そんなの、希望じゃないですか。本当にそうとは…。」

「まあ、もう一度会うことができたら、考えるよ。」
そういって話を切り上げた。
「そんな……。」

時計を見る。

「あ。そろそろ昼休みが終わるよ。戻ろうか…?」
「はい……。」
彼女は重い腰を上げる。
よっぽどオレの話が気になったのか、表情も暗い。
神歌ちゃんらしく、ないな……。





「きっと。また……会えると思うんです。」
「え?」
「列さんが……。そう思ってるなら、また……。」
控えめな笑顔で、彼女は言った。

「うん……。ありがとう。神歌ちゃん。」
「はい……。」



ここに来た時とは打って変わった、重い雰囲気で、俺達はその場を後にした。
その後のクラスメイトの冷やかしが、今までで一番苦しかった。





そして……後に、オレは本当に彼女と再会することになる……。
青い髪、青い翼の天使と……。



第弐章 第十三話 幻影見参、剣強襲


レンナ「うにゃぁぁぁぁぁ!!?!?」
ものすごく早い車(一人乗り用)に乗り込んでいるレンナ……目的は?

?????『高等部か……突っ込んだら変身しとけよ?」
レンナ「は〜い〜」
目がぐるぐる回っている……目を覚ますのはいつごろだろうか……。

なぜこうなったかというと………。
時は少し前に戻る。

レンナ「………今日は何もないよね?」
家に帰りくつろいでいると……。
??????『幻龍レンナだな。分け合ってこちらに来てもらいたい。』
レンナ「敵!?って……車?」
それもSB社の最新型じゃない。って……
レンナ「何で車がしゃべるの!?」
??????『いいから来い!』
レンナ「あ、はい。」

というわけである……用心しろよ、レンナ。

そして今いるとこが………

ズガァァァァン!!!!

壁を突き破る黒い車って……危ないぞ?
???????『このまま行くぞ!』
レンナ「逝くぞ、の間違いじゃないの!?」
フォーミュラー『うるさい!、それと俺の名はフォーミュラーだ。』
レンナ「も〜どうにでもなって!」
フォーミュラー『そのいきだ!』


デルティー「!?」
ジン「あらかわいい子」

レンナ「………覚醒!仮面ライダーファントムたん!!!!」
黒き風がレンナを包み、風が晴れた先には。

ファントムたん「幻のように現れ影に潜む悪を絶つ……それが僕だ!」
黒き戦士ファントムたんだった……それで仮面ライダージンの反応は……

ジン「可愛い。」
だった。(ぇ

フォーミュラー『こいつ、フレオンのマスターと同じ性格か。』
彼が人間ならため息をはいているだろう。

ファントムたん「と…とりあえず先手必勝!雷光拳!」

稲妻の力を借りたパンチがジンに迫ろうとしたそのとき……

セイバー「われも参加しよう……こやつらと一緒にな…」

次元が歪み徐々にセイバーと……怪獣の形となり元に戻った。

セイバー「ゆけ!ラインカー!主の悲願達成のために!」

戦いはさらに混乱を極めていくこととなる……。



第弐章 第十四話 BATTLE



放課後となり、列はすぐさま支度を整え下校をする。
しかし、すぐに家に帰る訳ではない。その前に列はしなくてはならないことがあった。

それは、昨夜から帰ってこない妹を探すことだった。

妹の華枝は彼に良く懐いてくる。
少しくっつき過ぎだと思う時もあるが、決して不快な感覚は抱かなかった。
そして、あまりにもそれが当たり前すぎて、いなくなって列はどれだけ妹を大事に思っているかが思い知らされた。

(……案外、シスコンってのも当たってるのかな?)

少し自嘲気味に笑う。


まずは街の賑わう所から探そうかと思案していると、廊下でばったりと転入生に会った。

「あれ?列か。もう帰るのか?」
今日から列のクラスの仲間となった八代みつるだった。
たった数時間しか付き合ってないのに、彼らは不思議なくらい仲良くなった。

「あぁ…今日はちょっと寄らなきゃいけない所があるんだ。」
「ふーん…なぁ、俺も付いてっていいか?」
興味津々と言った顔で列と同行しようとする八代。しかし、
「悪ぃ……今日はちょっと勘弁してくれ。」
列の表情に少し影が指したように感じたのは気のせいであったのか。
そしてそのことを感じたのか、八代はそれ以上は関わらなかった。

「そっか……分かったよ。ただ、行くんなら早く行った方がいいんじゃねぇか?」
「あ、あぁ。そうだな……」
「ま、今回はこれで引き下がるけど、今度は俺も付き合わせろよ。」
「あぁ、分かった。」
八代の提案に従い、すぐさま列は駆け出した。


そしてそれが幸いしてか、列はこの後の騒動に巻き込まれることは無かった………



「雷光拳!!」
ファントムが放った全力の一撃が重装甲のライダーに直撃する。
オリジナルと差異のないコピーアンデットを一撃で倒した必殺技である。
直撃を受ければ無事では済まない。しかし、

「へぇー。面白い技を使うんだね?」
「!!?」
この仮面ライダージンには全く通じなかった。

(堅すぎる!!僕のパワーでは打ち破れない!?)
相手の余りにも強固な装甲に、対応策が思いつかない。
そして、全力で放ったが故に、相手の手が伸びて捕まえられても、対処することが出来なかった。

「しまった!!」
「つーかまーえた!」
やけに楽しそうにファントムの手を掴む。
振りほどこうにも、相手の方がパワーが上なのか振りほどくことが出来ない。

(やられる!?)

このまま攻撃を受ければ無事では済まない。
ファントムの頭の中に、“生命の危機”という言葉が浮かんだ。
しかし、相手は“肉体”による攻撃ではなく“精神”による攻撃を行使した。

「かわいいー!もう離さないから!!」
「………」

背筋が震えるのが自分でも分かった。

「最近『僕』って言う女の子もいないから、すごく嬉しい!!」
「……はい?」

確かに、ファントムは自分の事を『僕』と呼ぶが、それがいったいどうしたんだろう。
そう、ファントムは思った。

「お姉さんが可愛い服着せてあげるから、一緒に行こ!!」


この時、ファントムの頭には“生命の危機”以上に、なぜか“貞操の危機”という言葉が頭に浮かんだ。

「させない!!」
気合と同時に、デルティーの放つ光弾が鎧のライダーの腕を弾き、ファントムを開放する。
「!!」
一瞬驚き、そしてすぐさま射手を睨みつけるジン。
ファントムはお礼を言おうとして、

「アンタなんかに今時珍しい僕っ娘を渡さない!その娘も私の物なのよ!!」
絶対に言うもんかと心に誓った。


すさまじい速度で相手に肉薄するデルティー。すかさず右拳を相手の鳩尾に叩き込む。
普通ならばそれだけで勝敗がつきそうな一撃だが、それすらもこのライダーには通じなかった。

「何?この程度なの?」
「…っ!!」
悔しさに歯軋りするデルティー。
自分の一撃をもってしても、この相手には通じないというのか。
デルティーは不本意ながらも、認めるしかなかった。

(……強い!!)

「今度はこっちの番よ!!」
振るわれる豪腕。
身の毛もよだつ一撃を、デルティーは軽いステップで回避する。

「どうしたの?当たらないわよ!」
軽口を叩くも、相手も負けていなかった。
「あんたの攻撃もちっとも通じないわ。負けを認めたらどうなの?」
「誰が!!」

足に力を込め一気に相手との間合いを詰め、今度は左拳を放つ。
それすらも耐え切る相手に、残った右手でデルティームーバーを握り、銃口を向け、立て続けに零距離で連発する。
その一撃に相手は僅かに後退する。

「どうやら、ノーダメージってことはないみたいね。」
涼しげな顔で言うも、内心では動揺していた。

(倒すつもりだったのに……)

そんな一撃すらも、この相手は半歩下がっただけだった。
「やってくれるわね……もう容赦しない!!」
すさまじい怒号とともにデルティーに接近するジン。
デルティーも負けじと相手に接近する。


ここまでの戦いで、両者は今のところ全くの互角であった。
力に関してはそれ程大差はなく、耐久性では比べるまでも無くジンが上であった。
対して、敏捷ではデルティーが圧倒的に有利である。

相手の豪腕をかいくぐりながら、カウンターを叩き込むデルティー。
それすらも無視して、次の一撃を振るうジン。

このままでは、お互いに決着をつけるのは難しいだろう。
となると、勝敗を分けるのは、それぞれの『切り札』だった。
デルティーには『ルシファーズハンマー』がある。
これを決めれば、おそらく勝利は自分に転がり込んでくる。そう考えている。
しかし、この強敵に叩き込むのは容易ではない。
なにか、相手の絶対的な隙を見つけ出さなくては決められない。

だから、デルティーは待つ。
その時が来るまで、執拗に攻撃を加えていった。





「す、凄い……」
ファントムは驚愕した。
デルティーとジンの戦いが余りにも凄まじすぎて、自分が入り込む余地がないように思えた。
しかし、油断は出来なかった。なぜなら……

「会いたかったぞ!あの時の雪辱、今こそ晴らさせてもらうぞ!!」
鮮血の鎧のライダー、セイバーが自分の前に現れたからだ。

「何時ぞやは我に一撃を与えるとはな……見事と言うほかあるまい。」
相手を褒め称えつつ、二刀の剣を手に持つ。
「今度はこちらから行くぞ!!」
「!!」

セイバーが振るう白剣を避け、続けざまに振るう黒剣を雷光拳で弾く。
「やるな!!」
それに満足したのか、今度は黒剣を横に払う。対し、ファントムは旋風脚でまたも弾く。

「ははは!!楽しい、楽しいぞ!!」
心底愉快そうに、攻撃を加えるセイバー。
対してファントムは、なぜか攻撃を防ぐばかりで、自分からは攻撃をしなかった。




セイバーの放った怪物−ラインカーは雄叫びを上げつつ、京たちに迫っていく。
京は変身して戦おうとするも……

「よせ。今のお前では無理だ。」
雅菜に止められた。
「雅菜さん。でも……!!」
なんとか食い下がろうとする京。
「心配するな。奴は放ってはおけない。ここで私が倒す。」

一歩前に出て、カイズィーフォンを開く。
「雅菜さん……」
京が心配そうに見るが、
「大丈夫です。雅菜さんは強いから、ここで見てましょう。」
木場に諭される。

『9・1・3、Standing by』
低い音声と共に、携帯を握った右手を顔の左に持ってくる。
「変身!!」
掛け声と同時に携帯をベルトに装着する。
『Complete』

金色の光が雅菜の姿を包み、中からは仮面ライダーカイズィーが現れる。
襟を直す様な仕草をし、異形の怪物と向き合う。



混迷を極めるこの戦いは、どのような結末を迎えるのだろうか………



第弐章 第十五話 二つの戦い


一方ガブリエルたんは。


ガブリエルたん「はぁぁぁぁぁ!!!!」
ガブリエルたんのアクアランスによりフルパワーの突き……だが。

アイスキュロスたん「見え見えですよ?」
それをまるで子供が投げたものを払うように弾く。

ガブリエルたん「なっ!」
アイスキュロスたん「さようなら……!?」

そのとき爆音が起きたそしてその先には。
ウォーガ『マスターを狙うならば………私が相手だ!』

青き機械戦士、ウォーガだ。
ウォーガやフォーミュラーは変形タイプである。

ウォーガ『そしてこれが私の武器!オクスタンランチャー!』

青き機械戦士が持つ白き銃、激闘は始まったばっかりだ。


場所は戻り。シグマたちがいる場所。

カイズィー「きゃぁ!」

ズシャァ!

ラインカーの皮膚は硬く尚且つ、再生能力がすごい……。
カイズィーのパンチを受けてもなんともないのだ。

シグマたん「カイズィーさん!」
カイズィー「大…丈夫だ……っ。」
シグマたん「ですけど……。」
しかしラインカーは無情で、カイズィーに近づこうとする。

ちょうどその戦いを見ていた少女がいた。買い物途中で見た戦い。
????「!!……変身!」
『ターンアップ』
少女の前にカブトムシの形をした半透明な壁(?)が現れた。
????「はぁぁぁぁ!!!」
そして少女は壁に突っ込み、壁から出てきた戦士。名を。

ブレイドたん「仮面ライダーブレイドたん、ただいま到着!」
カイズィー「ブレイド。何でいるの!?」
余談だが、カイズィーとブレイドたんは知り合いだ。

ブレイドたん「悪あるとこ私あり。です!」

フォーミュラー『ちっ!邪魔だラインカー、ども!』
どこからかに2匹のラインカーが現れた……。
このままではきりがない。

どうする?



第弐章 第十六話 真夜中の刺客たち



「夜だぜ。ウルエイア。」
「うんっ。狩りの時間だね。」

街の某所に用意されたアジトに潜伏していた、2人の少女。
ウィッチ・ビアンコの誇る、最強の4人の仮面ライダー少女の内の二人。
仮面ライダーラフエイア、仮面ライダーウルエイアである。

夜の帳が下り、彼女らの獲物が動き始める時間になる。
二人はアジトを抜け、街へと繰り出していった。

そしてそれに伴うように、夜のビル街の屋上を、あやしい影がついて動き出していた。
『フゥ、フゥ、フゥウウウウ………ッ。』


普段着の姿で、その目的の場所へと向かっていく。

「ゼベイル……ま、オレらが戦うまでもないだろうけどな。」
「まあ、そうだよね。でもボク、戦うのって久しぶりだから、ちょっとくらいは遊んでもいいでしょ?」
「勝手にすればいいさ。」
「えひひっ!楽しみだなぁ〜。どんな間抜けな声で断末魔を上げるんだろ♪」
「相変わらずだな…。」

無邪気に笑うウルエイア。
だがその表情とは裏腹に、その内容は明らかに人の生き死にを楽しむような風だった。

「手足を引きちぎって、芋虫みたいに転がそうか?あ、違うね。蝿だから、蛆虫だ。きゃははははっ!」
「は……。好きにやれよ。」
そんな残酷な笑顔に、ラフエイアは苦笑いを浮かべるしかなかった。







意識が、「私」のままだ。
今は夜なのか、それとも「私」のまま死んだから、そのままなのか。
死んだ…?
私、死んだの?

……死んでも、こうやって考えることが出来るなんて思いもしなかった。
でも考え事が出来たって、もう死んでいるんだから、何も出来ることはない。
死ぬ前の事を思い出して、恐怖に怯えることしか……。

死ぬ前……?
死ぬ前って、どっち?

私があの女にやられたとき?
それとも。

あの老婆に身体をいじくり回された時…………?



違う。私はあの時新しく生まれ変わったんだ。
人々の平和を守るために。
これ以上、私のようなものを増やさないために。

そして捨てられた私は、戦い始める。
誰にも告げることは泣く、親友を、最愛の兄さえも騙し、たった一人で……。


でも…。それもここまで。
やはり私には……。無理だったんだ……。




「自分で、生きているのか死んだのか、わかってないみたいね…。」

神藤 和子は、新たに用意したアジトのベッドに、彼女を寝かせていた。
「急所ははずしたつもりだったけど……。この子、身体が脆いみたい。それが彼女の言っていた、「失敗作」ってことなのかな。」
彼女の頭を優しくなでてやる。

「かわいそう……。ずっと一人で戦ってきたのね。出来損ないの身体を引きずって、しかもどんな相手にも怯むことなく……。」

「!!!!!!」
そのとき、外に異様な気配を感じる。
窓の近くに、何かいる。
そして、入り口にも一人。

「この廃ビルのアジトを…突き止めたって言うの!?」
ここは誰にも教えていない……。主人であるエウリュディケにも。

…彼女を狙った、刺客だろうか。
ベッドで眠る少女……。風瀬 舞夜を見る。
だとしても、ここをどうやって…?

……考えても仕方がない。
彼女はその手に大剣を取り出し、近づくものを警戒した。



「さあ、どこからでもきなさい!……彼女は、死なせはしない!」

ドゴォォォンッ!!!!

「!!!!?」
そのとき、ビル全体に揺れが走った!

ドゴォォォォンッ!!!!

この揺れ方は…地震じゃない!
和子は窓を開けて下を見た。

…そこには、緑のガントレットをはめた何物かが、その拳でビルの壁を殴っていたのだ.
「ハハハハハハハァーッ!!!ここだろ!?ここにいんだ蝿野郎ーッ!!」

「…女!?」
窓から身を乗り出し、目を凝らしそれを見れば、それは彼女、風瀬 舞夜と歳の変わらない少女だった。
そんな少女が、拳だけでビルを揺るがしている!!!

(くすくすくす。出てきた出てきた。)
「!!!?」
さらに声がした。
今度は…その姿を見ることが出来ない!
下には一人だけ、上には暗闇が広がるのみ。
正面には……。

「くすくすくすくす。」

……いた。
空中を静止し、必死で探すこちらを嘲笑う小さな少女が。

「みぃつけた。あの蝿をかばうなんて愚かな人。でもね……。」

ブンッ!!

「!!?」
今、目の前にいたはずのその少女の姿が、ふっと掻き消えた。


「あ、なんだ死にかけじゃない。」
「!!!!!?」

その少女は、エウリピデス…神藤 和子の後ろ…。部屋の中にいた!

「こんなのいたぶってもつまんなーい。…でも、あなたなら面白そう♪」
無邪気な笑みが、新たな獲物……。すなわち自分を捕らえたことを思い知る。

「くっ!!?」
その得体の知れない力を警戒しつつ、大剣「メデア」を構えた。

「えひひひっ♪」

ブンッ!!

「!!!?」
またその姿が掻き消える!
「おそぉい♪」
その姿は、既に目の前に……ッ!!!?
「うっ!!!?」

ガシャアアアアアアアアアアアアンッ!!!!




エウリピデスの姿が夜空に舞う。
「えひひひひひっ♪さあ、楽しい戦いの始まりだよっ!」
それを追うウルエイア。



「あいつ、始めやがったな……。」
窓から飛び出したものを見つめるラフエイア。
ウルエイアも、その部屋から飛び出す。
「おっと、ガラスが降ってきやがる…。」
さっさとビルの中に逃げ込んだ。

「今出てきた奴は、ゼベイルじゃなかったな…。」
少し思案し、
「おい。蜘蛛野郎。」
屋上にて待機していた、シュバルツェ・ウィドーに呼びかける。

「さっきガラスが割れて、ウルエイアが飛び出した部屋だ。行け。」
指令を受け、魔女の作りし異形の怪物は、その部屋…。すなわちゼベイルたんの眠る部屋に向かっていく…。

「これで、この仕事も終わりって訳だな。…あっけねぇ。」



『フゥ、フゥウウウウ…!!』

壁を伝い、迫る異形の蜘蛛。

「うう、うううう……。」
未だ目の覚めないゼベイルたん。

この最大の危機、どう切り抜けるのか―――――!!



第弐章 第十七話 決意…そして復活



何故だろうか…エウリピデスの頭の中でフラッシュバックする記憶。


―『ボクは、虚像の存在だ。…もちろん君達もね。』

―「どういうことですか? 虚像とは…。」


エウリピデスが不思議そうに聞く。


―『ボクはオルフェノク少女に殺され…復活できなかった人間の怨念が集まってできた虚像なんだ。』


エウリュディケは簡単に、気楽にそう言う。


―「では…私達は…?」

―『アイスキュロスは…デュナミスト達になれなかった亜種達の怨念の虚像…。』

―「そうなんですか…。」

―『ソフォクレスは…倒されたオルフェノク少女達の怨念。』

―「なるほど…。」


皆、静かに話を聴いている…。


―『エウリピデスは…はっきりとは分からないが、妙な奴に殺された者達の怨念のようだね…。』

―「妙な奴…?」

―『はっきりとした形は僕でも見えない。…形容詞するなら…魔女…かな…。』

―「魔女…。」


そう、彼女の頭の中に、ある名前があった。

ウィッチ・ビアンコ…。誰も知らないその名前を捜し求めて…彼女は本を読んでいた…。

そして、舞夜の心を読むことで、遂に知ったのである…。

ウィッチ・ビアンコに改造実験体にされた者の怨念から生まれたのが、自分だと…。


―「だからこの子に会った時、自分と同じ波動を感じたのね…。」


そう、彼女を誘拐してしまったのは、彼女がウィッチ・ビアンコが作った者なのか確かめたかったのだ。


―「…でも…謝罪や同情なんて…私の自己満足に過ぎない…。だから……!」


だが…それでは…彼女は…一人で誰にも看取られずに死ぬしかない…。

…私が守る…。この子と会う事が…私の存在意義なんだとしたら…!


目の前にいる異形の少女(ウルエイア)を睨む、神藤 和子。


「私は…! あの子を守る! あの子を死なせるわけにはいかないのよ!!!」

「そんなことムリだよぉ♪」


ウルエイアが面白そうに言う。


「あの子はここで死ぬのぉ♪」

「死なせはしない!! これをくらいなさい!!」


巨大砲:ヒッポリュトスで、攻撃するエウリピデス。

だが、相手が速過ぎるため、当たらない。


「無駄無駄ぁ♪」

「どうせ…彼女と私は同類よ! 影でしか生きることのできない者なのよ!!」


何度も撃つが、下手な鉄砲は数撃っても当たらない…。


「当たらないなら…これでどうだ!!」

「無駄だって♪」


が…エウリピデスの狙った相手は…ウルエイアでも、ラフエイアでも、ゼベイルたんに近づくシュバルツェ・ウィドーでもない…。


「私の生命エネルギーの一部を…彼女に送れば…!」


閃光…。

その光と同時に、先ほどまで部屋の中にいた物が外へと飛び出してくる。

…それは…これまでの…ゼベイルたんとは違っていた…。


「生命エネルギーを与えるのは最後の手段だと思っていたけど…やって正解だったわね…。」

「私は、仮面ライダーゼベイルたん! 夜を舞い、闇にはびこる悪を討つ!!」


ゼベイルたん…エウリピデスのおかげで…強化復活…!



第弐章 第十八話 刀王丸初陣


ラインカーに囲まれたカイズィーたち。
だがフォーミュラーは賭けに出る……。


フォーミュラー『システムチェンジ!オーバーモード!!!』
どこからか飛行機が現れそれがフォーミュラーとひとつになり。
戦士が生まれる。

刀王丸『我、汝らを絶たん!』
ファントムたんの相棒であり、一人の戦士、刀王丸に。

刀王丸『そこの二人!』
ちょうどカイズィーとブレイドを指差した

カイズィー「なに?」
刀王丸『ひとまず。残りのラインカーどもを頼む、我はこいつをかたづける!』
恐らくやつが一番強いからな……。
カイズィー「わかったわ……無茶するなよ!」

カイズィーとブレイドは残り二体のラインカーに向かった。
刀王丸は相手をしている、ラインカーに目を向けた。

ラインカー「グルルルル……」

刀王丸『……ゆくぞ!』

ラインカー「ガオ!!!」
爪で刀王丸を切り裂こうとしたのだろうしかし、その爪は無残にも空を切っただけだった……。

刀王丸『遅い!今度はこちらがいくぞ……。』
両肩のブースターが腕に装着され形が変わった、ドリルに。
刀王丸『はぁぁぁぁ……、ドリル!バーストナックル!』

キュィィィン!ズグシュゥゥゥゥ!

ラインカーの両腕は吹き飛ばされた……だが……

ジュルン……ジュルルル……

刀王丸『なに!生成能りょ……グア!』

ズバァァァァ!!!

非常識な再生能力……さらに口から熱光線この攻撃により、ドリルが破壊された。

ラインカー「ギャォォォン!」

刀王丸『く……やむえんな……オーバーシステムアウト!タイムリミットまで残り……10。』

刀王丸の片腕から巨大な刀が現れ。その剣を持つ刀王丸。

刀王丸『勝負は一瞬!!!超光剣奥義!覇王!連激斬!』

スパン!

その一撃はラインカーのコアを切り裂いた……。

刀王丸『我に敵無し!』

ズガァァァァン!

再生能力は暴走を起こし、最終的は自滅したラインカー。残りの数は……2

刀王丸『く……いきなりこの形態さらにオーバーシステムを発動したからな……限界が来たか。』

所々煙が出ている……。

刀王丸『すまん……後は頼むぞ……。』

そういい残し。目の輝きが失った。自己修復を行なっているらしい。



第弐章 第十九話 龍槍『天津彦根』



夕日に染まり、じきに夜が訪れようかというこの時間、ボード学園の校庭では未だに戦闘は続いていた。




『Ready』

カイズィーギアの左に装備されたカイズィーショットを右手で取り、左手でミッションメモリーをカイズィーフォンから外す。
すかさずメモリーをカイズィーショットに取り付け、パンチングユニットに変形させる。

ラインカーの放つ火球を、軽く横に回避しさらに敵に接近していく。
距離があと5メートルになるかならないかの地点で、カイズィーフォンを左手でスライドさせ、

『Exceed Charge』

Enterキーを押し、フォトンブラッドを右手に集中させる。


カイズィーの攻撃の威力の高さを本能で察知したのか、咄嗟に爪を振るうラインカー。
しかし、そんなものがカイズィーに当たる筈もなく、お返しと言わんばかりに右のカウンターを放つ。

濃縮されたフォトンブラッドの一撃『グランインパクト』が、ラインカーの脳天に炸裂する。
本来ならそのあまりの威力に、冗談のように数メートルほど後方へ飛ばされるはずだった。

「………!?」

しかし、敵はあまりにも強固な装甲を誇っていた。グランインパクトを受けてもびくともしない。
今度はラインカーが攻撃をする番だった。
振るわれる左の爪をしゃがみこんで回避し、即座に距離をとる。敵の非常識なまでの固さに、毒づくカイズィー。

「化け物が……!!」

奥歯を噛み砕いてしまうほどきつく歯を食いしばりながらも、携帯端末をスライドさせる。
一撃で片がつかないなら、何度でも叩き込むまで。
その覚悟で再度Enterキーに手を走らせる。



「はあぁぁぁぁ!!」

気合と共に、もう一体の怪物と対峙する蒼の戦乙女。小柄な体ながらも、その力は並外れていた。
怪物の一撃は爪を振るうごとに大地を抉っていく。それを受け止め、流し、弾き、その全てに対処している。

「くっ……!」

しかし、やはり攻撃力は相手の方が勝っているのか、ブレイドは次第に押されていく。

「このままじゃ……!!」

劣勢に立たされたこの状況をなんとかひっくり返す。そのためにも、一度大きく距離をとる。

『ガシュゥゥゥゥゥ……』

低い唸り声を上げ、ブレイドの出方を伺うラインカー。対しブレイドは自身の最強技を準備する。

『KICK』
『THUNDER』
『MACH』

ラウザーに三枚のカードをラウズさせ、攻撃態勢に移る。それを迎え撃つようにラインカーも力を溜める。

「うぇーーーーい!!」

雷を纏った超高速のキックが怪物に迫る。衝突まで5秒とかからないその一撃を、

『グガァァァァ!!』

己の振るった爪で容易に弾き飛ばしたのだった。

「きゃあ!!」

着地もままならず、そのままカイズィーのいる場所まで飛ばされた。

「大丈夫か!?」

心配そうに声をかけるが、ブレイドは平気だと言わんばかりにスッと立ち上がる。

「あ、大丈夫です。でも、このままだと……」
「あぁ。ジリ貧だな………」

一方は強固な装甲を持つ怪物、もう一方はライダーをも凌ぐ力の持ち主。
どちらにしても、あまり好ましい展開ではなかった。

「持久戦になる。覚悟はいいか?」
「はい!勿論です!!」





「………」

ジンはデルティーとの戦闘の最中でありながらも、その視線を異形の怪物達に目を向けていた。
デルティーとしては、自分が低く見られているような気分だったので、心持は良くなかった。

「ちょっと!戦っている最中に余所見とはいい度胸じゃない……!」

ジンの余裕とも思えるこの態度に怒りをあらわにするデルティー。

「……邪魔だな。」

ポツリと、あまりにもか細く呟いた一言を聞けたのは、対峙していたデルティーだけであったろうか。

「な、何を…。」
「ちょっとゴメンネ!」

デルティーを無視し、二体の異形の怪物へと向かっていく。

『ガシュゥゥゥ………』
『ウゴゴゴゴ………』

低い唸り声と共に、新たな敵に向かい合う二体のラインカー。
対し、ジンはその背に背負った三つの“槍”の内の一本を手に取り、振るう。
そのあまりにも奇怪なフォルムに、この場にいる全員が息を呑んだ。

「なに……あれ……」

デルティーは思わず呟いてしまった。
いま、自分の敵は背を向けている。言わば、絶好の機会と言うものだった。
にもかかわらず、デルティーはルシファーズハンマーの体勢に入ることが出来なかった。

その“槍”は、あまりにも異様過ぎた。握り手の部分から刃先にかけて全て、まるで生物を思わせたからだ。
例えるなら“龍”。龍の尾から頭にかけてを槍へと変えたように思えるほどである。
そして、最大の特徴は刃先にあった。

−単眼。

刃先には気味の悪い単眼が付いていた。まるで、全ての獲物を狙うかのような眼。
その“眼”に、誰もが身動き一つ取れなかった。

「さーて……久々にやりますか!」

軽く微笑み、槍を高々と右手で掲げる。

「さぁ……起きなさい!!」

ジンの合図と共に、槍に変化が生じた。
槍からまるで、生物を思わせるような轟きが聞こえてきたのだ。

「……!!これって……」

音の正体に真っ先に気づく京。そして、次第に全員が理解した。

まず、それは視覚に現れた。槍を中心として、凄まじい大気の渦が生じた。唸り声の正体は、螺旋回転をする大気の音だった。
それはだんだんと巨大になり、あまりの暴風に誰も身動きがとれなくなっていた。
無論、それはラインカー達も同様であった。そんな怪物たちを無視して、ジンはその“槍”を振るった。

「吹き飛べ!!」

ジンが振るった槍−天津彦根、大気を取り込み圧倒的な回転を加えることで発生した大気の刃。
それが、身動きのとれないラインカー達を容赦なく細切れにしていった。
堅い皮膚もまるで紙細工のように切り刻み、豪腕の一撃もその嵐の前では役には立たなかった。
しばらくして暴風が止み、残ったのは抉れた大地だけだった。その光景に、全員唖然とする他なかった。

「……おのれ!」

唯一人、セイバーは自分の主の造形物が倒されたことに怒りを覚えるも、そのあまりにも巨大な力にはなす術もなかった---



第弐章 第二十話 決意の刃・誓いの剣



永遠とも思える時間の中、私は暗闇の中にいた。

……私はあの女に敗れて死んだ。
失敗作の私に、ふさわしい最後。

闇は私にとって力の源。
「私」には、ここは居心地のいい……。

でも。


「うぁぁぁ…うぁぁぁぁ……。」

「彼女」は泣いていた。
闇を恐れ、闇を憎む少女……。華枝。
私のすぐ後ろで、背中合わせに立ち、泣いている。

彼女と私は一心同体。同じ体の中の、二つの心。
彼女が泣けば、私も悲しい。
彼女が兄を思えば、私もあの人をいとしく思う……。

そして彼女は、あの人との別れを、死を望んではいなかった。


もう死んでしまった今の状況で、なんて矛盾。
そんな希望など、持つだけ無駄だというのに……。



(あなたは、死んでなどいない!)

そのとき、闇の中に光が見えた。
私と彼女、二人だけの空間で。
もう一人、誰かが入ってきた。

(あなたらしくない!そんな諦めの台詞は、あなたには似合わない。)

闇にとらわれる前に、最後に聞いた声。

(あなたは!どんな逆境にも、どんな恐ろしい相手にも、絶対に怯まずに戦ってきた!
そんなあなたが、こんなところで諦めてしまって、良い訳がない!!)

何をわかったようなことを…。
私たちを倒したのは、あなたじゃない!!

(…そうよ。だったら、私を倒せないまま、終わっていいの!?このまま、失敗作として死んでいって…それでいいの!?)

わたしは……。このままじゃ終われない!
あなたを……。あの魔女を!!!
「奴ら」を全員倒すまで、私の戦いは終わらない!!!

(キヒヒ……ヒヒヒヒヒヒヒッ!!)


私のようなものを
(私のようなものを)
これ以上増やしていいはずがない!!!

闇の中に浮かぶ光、それが私たちに向かってくる。

(だったら立ちなさい!この手をとって!)

あなたの…手を……?

(わたしの命を分けてあげる。だから!!)

命を……?

(立って!!戦って!!仮面ライダーゼベイル!!)







それは、暖かな光だった。
手にした瞬間、わたしの中に炎が燃え始めた。
命の…命の炎が!!

それはわたしと同じく悲しい運命にあい、はかなく散ったものたちが、わたしに力を貸してくれるかのように、力強く…燃える!
体が熱い…!!!
もう…寝てなんていられるもんか!!!!!





「生命エネルギーを与えるのは最後の手段だと思っていたけど…やって正解だったわね…。」

ウルエイアと戦うエウリピデスが撃ちだしたのは、彼女の生命エネルギー…命の欠片だった。
力強く、暖かな光はゼベイルの部屋に命中すると、それはさらに輝きを増し、深夜の廃ビル街を昼のように照らした!

「な、なんなの!!?」
ゼベイルの眠る部屋から死にかけだったはずの、その「蝿」が飛び出してくる!



「ゼ、ゼベイル!!!?」

「よかった…。わたしの声、届いたのね……。」
以前と同じように、夜を舞うその姿に安堵の息をつくエウリピデス。
「これで…一安心……。」

ドサッ……。

…そこで、彼女はひざをつき、倒れこんでしまった。





…さっきの見立てでは、こいつは瀕死の状態だった。
だが彼女は、今自分の前に居る。
滑稽なほどの、蝿の醜い羽根を羽ばたかせて。

「なんでよ…。お前、死にかけだったじゃない!!」
「わたしは…お前たちをすべて倒すまで、死ねない!!」

最強ライダーの一人、ウルエイアをまえに、少しも臆せずゼベイルは、その口上をあげる!!
黒い体は深みを増し、背の羽は大きくなり、以前よりも力強くなったその姿。

同じく空を舞う…ウルエイアを指差す!!

「お前たちにもてあそばれ、むなしく散った者たちのためにも、
これ以上、わたしのようなものを増やさないためにも、わたしはお前たちに絶対に負けはしない!!!!!」
「なによなによ!!この…あんたなんかただの蝿の癖にぃっ!!!」

「そう…。でもわたしは、ただの蝿じゃないッ!!!!」
「!!!」




「聞け!!!わたしは仮面ライダーゼベイルたん!!!夜を舞い、闇にはびこる悪を討つッ!!!!」





「なによ…なによなによ!!かっこつけないでよ失敗作のくせにぃーッ!!」
その姿に、怒り出すウルエイア。

「やっちゃえ!シュバルツェ・ウィドーッ!!」
「!!」

『フゥゥゥゥゥゥッ!!!』

バッ!!!

ウルエイアのその声とともに、ビルに張り付いていた異形の蜘蛛は、空を舞うゼベイルに襲い掛かった!
「うっ!!?」

ドガアアアアアアアアアンッ!!!

空中でつかまり、その勢いのまま近くのビルの壁を破り、二人はその中へと転がり込んだ!!
「そうよ……醜いあんたは、醜い蜘蛛相手にもがくのがお似合いなんだからっ!!!!」



「ぐ……!」
もうもうと上がる土煙の中、ゼベイルが目を開けると

『フゥゥゥゥゥッ!!!!』
目の前に、八つの目を持った人間の顔が……!!
「うっ……。」
その醜さに、目を覆いそうになる。
でも、目を離すわけにはいかない。
その口から生える牙からは、緑色の毒液が滴り落ちる。
あれに噛みつかれれば、終わりだ…!!



「くすくすくすくす。あんたはそいつには勝てないもん。おばあさまの作った黒い蜘蛛。あんたと同じくらいの力を持ってる。」
「さあ、シュバルツェ・ウィドー。小賢しい蝿なんてあんたがおいしく食べちゃえ!」



「ぐ、うううううううううっ!!!」
体を押さえつける黒い雲の腕を跳ね除けようとする。
だが…。わたしの細い腕ではこいつの力を跳ね除けることはできない!

必死でその牙をかわすだけ……!!





(ゼベイル…!!)
「!!?」
そのとき、頭の中に声がした。
これは…闇の中で聞いた光。
あの女の声だ…。

(わたしの力を使いなさい!)

あなたのちから…?

(そのまま死にたくなかったら、叫びなさい!「フォームアップ・メデア」と!!!)

一体なに……?

『フゥゥゥゥウゥッ!!!!』
「ぐッ!迷ってる暇はない!!!」


「フォームアップ!!メデアアアアアアッ!!!」


その声と同時、わたしの心の中に一本の大剣が浮かび上がった。
メデ…ア……?
剣そのものがわたしに呼びかける。

わたしを纏いなさい!あなたの新たな力として……。

「!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

ザシュウウウッ!!!!

『フウウウウウウウウウウッ!!!!?』

突如出現した、ゼベイルの腕の剣に、その腕は切り飛ばされる!!
「うおおおおおあああああああっ!!!!」

ドガアッ!!!

たじろいだその隙に、わたしはその腹にけりを入れ、引き剥がした!!
ビルの壁にたたきつけられる黒い蜘蛛!

わたしは立ち上がり、改めて自分を見る。

両腕には片刃の剣が備え付けられ、肩と胸には、あの大剣の鍔の立派な装飾がつけられていた。
あの大剣の一部と思われる刃を、全身に纏う……。
これが、わたしの新たな力!!

ゼベイルたん、フォーム・M(メデア)!!

「散り行くものの無念を背負って、輝く刃は決意の証!!決して挫けることのない、研ぎ澄まされた誓いの剣!!!!」







「…この先から、聞こえたよな…。」
夜を徹して、妹の華枝を探し続ける。
そのさなか、この先の廃ビル街から、大きな音が聞こえてきた。

…俺は、その場所に向かっている。
それになぜか、華枝はこの先にいて、俺を待っているような…。そんな気がしていた。



第弐章 第二十一話 無再び


列「すぐ近くだと思うけど……」
妹が近くにいる……感だけど、近くにいることは確か……なんだけど。

ラインカー「グルルルル……」

何でこんなとこに、怪獣がいるのだろうか。
俺は走った。あんな化け物を相手したら最後、食われてしまう。

ラインカー『エサ……ニガサナイ』

俺が餌!?妹に会ってもいないのに死んでたまるか!!

ズダダダダダ!!!

一方、その光景を見ていたものが一人。

無王「………あの者は本当に、ただの人間か?」
その光景を見て、冷や汗を書く人が一名。

その凄さを持っている列はと言うと……

列「疲れた……でもこれだけ離れていれば追いつかれることはな……」

ズバァン!

落ち着いたとき、俺の近くにあった、重くてか硬い鋼鉄のドアが吹き飛ばされた。
ラインカー『ムダ、オレハオマエニガサナイ』

もうだめか?せめて妹に会ってから……ってここまで俺はシスコンか……。

ラインカー『イタタダキマス!』

化け物の牙が俺を斬り……殺していない?
と言うか牙が地面に刺さっている?
そして、俺は誰かさんに抱かれているし……。
そもそも、俺を持てるなんて、凄い筋肉だな。

無王「ごちゃごちゃ考えるな……頭が痛くなる」
こいつって俺が考えてることがわかるのか!?
無王「わかっているだからか静かにしろ」
いやすごい、……あれ?……なんか眠たくな…って…きた?

ドサ。



無王「さて……ラインカー019貴様は法を犯した、よって」
色がない風が無王を包み、風が晴れたときそこに立っていた者、名を

ゼロ「覚醒……仮面ライダーゼロ」
審判者、仮面ライダーゼロ。

ラインカー『オマエだれだ?ショクジノジャマヲスルナ!」

その余りの愚かさ。これが選ばれし者の末路か……。
ゼロ「もうよい、消えよ……ゼロリバース」
その瞬間ラインカーの周りになぞの紋章が現れた。
その紋章は徐々に近づき、最終的には。
ラインカーを押しつぶした。


そして。
ラインカーは……この世から消えた。否消されたのだ。跡形も無く、消滅された。



無王「おい、おきろ」
戦い(というか一歩的な戦い)を終え、変身を解除して。列を起こす、無王。
列「ん?ここは」
無王「さて、どうする?汝の大切な者がいるとこに連れてやるが?」
列「華枝のとこにか!?」
無王「どうする?」
無論……。
列「案内してくれ!」
無王「ならば着いて来い。」

無王が行く先、そこはどこなのだろうか?
だが、妹はいることは確かだ!



第弐章 第二十二話 攫われたΣ


無残に抉れた校庭、そこに立つ仮面ライダー達。一同の視線はこの惨状を招いた人物に注がれていた。

「ふぅ…ま、こんなとこかな?」

なんでもない事の様に気楽に構える重装甲の戦士。
だが、デルティーはじめその他のライダー達はこの戦士の強さに戦慄を覚えていた。



カイズィーとブレイドが相手にしていた異形の怪物−ラインカー、その強さは想像を絶するものだった。
一方は強固な装甲を誇りもう一方は圧倒的な攻撃力を持つ、まさに『化け物』と形容するに相応しい存在だった。
それをこのライダーは槍の一振りで一掃してみせたのだった。


「さぁて、雑魚は片付けたことだし、そろそろ本題に入りましょうか?」

言って、ジンは京の方へと振り向く。

「っ……!!」

京を始め、咄嗟に身構えるカイズィー、ブレイド、そして木場。
自分達では敵わないかもしれないが、それでも黙って手をこまねいているだけなど出来なかった。
各々が武器を構え、戦闘態勢に入る。その中でも、デルティーは特に気合が乗っていた。

「私を無視した挙句、今度は京ちゃんを頂くつもり?そうはいかないわよ!!」

『Ready』

ベルトのミッションメモリーをデルティームーバーへとセットし、いつでもルシファーズハンマーを撃てる状態にする。
対し、ジンは再び巨大な戦槍『天津彦根』を掲げる。

「おもしろいわね……やれるもんならやってみなさい!!」

怒声と共に再び唸り声を放つ様に轟く槍。大気が渦を巻き、真空の刃が精製されていく。
デルティーはなんとかその刃を掻い潜り必殺の一撃を叩き込むべく、ジンの隙を窺っていく。そして…

「たぁぁぁぁ!!」

気合と一緒に放たれる一撃。
見えざる刃が襲い掛かってくる猛攻、しかしその対象はデルティーではなかった。

「!?」

それは予想だにしなかった攻撃だった。圧倒的な威力を秘めた技をジンは相手に向けることをしなかったのだ。

狙った先は“地面”だった。

真空の刃が地面を先程以上に抉っていき、その影響で強烈な砂埃が舞い上がる。
それがデルティー達の視界を容易く塞ぎ、身動きできない状態を作り上げたのだった。


しばらくして砂埃も上がり視界が晴れた時、デルティーは唖然とした。

「いな……い……」

そう、いないのだ。先程まで自分が対峙していた重装のライダーは影も形もなくなっていた。
一瞬何が起こったのかと思案し、ある考えが頭をよぎった。
それはあってはならない考えであったが、デルティーにはそれしか考えることが出来なかった。
その考えが杞憂で過ぎ去って欲しいと願いつつ、後ろを振り返った。
そこには、デルティーの予感が的中した現場があった。

「社長さん!!」

変身を解除し、急いで木場の元へと駆け寄る。そこには、地面にうずくまる木場がいた。
しかし、いたのは木場だけであった。

「社長さん!!しっかりして!!」

必死に揺り起こす北崎。やがて木場は目を覚まし、申し訳なさそうに呟いた。

「す…すいません、北崎さん……京ちゃんを…攫われて……」

段々と声が小さくなっていき、やがて聞こえてくるのは嗚咽であった。俯く北崎。



ジンは天津彦根を“目くらまし”の目的で使用したのだった。
ラインカーを一撃で葬り去ることでそれが“戦闘目的”の武器だと錯覚させ、応用が利くとは考えも付かないようにさせたのだった。
北崎達が舞い上がる砂に戸惑っている隙に、槍使いは木場を気絶させ、京を攫っていったのだった。



何も出来なかった木場はただ涙を流し続け、草加も剣崎も、レンナもただ俯くことしか出来なかった。
唯一人、北崎は唇を噛み締め、攫っていった張本人のことを考える。

(絶対に許さない………!!)

北崎の中で、静かな炎が燃え盛っていた……




「ふん……付き合いきれんな。」

戦意を無くした今の北崎達を相手にする気など、セイバーには毛頭なかった。
異次元の移動ゲートを呼び、自身の主の元へ帰還する。その去り際、確かな憎しみを込めここにはいない相手に言った。

「我が主の造形物を倒した罪……ただでは済まさん!!」





京が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所であった。
薄暗い明かりに照らされたそこは、まるで地下深くと言っても差し支えないような場所であった。

「…ここ……は……?」

辺りを見回し、自分の状況を確認する。

(そうだ……私、連れ去られちゃったんだ……)

状況整理は瞬時に終わったが、次に京を襲ったのは後悔だった。

(木場さんや先生、心配してるだろうな……)

きっと二人だけじゃなく、北崎や草加だって心配してることだろう。そう考えている内に、すぐ近くに人の存在を認めた。
数は一人だったが京はその人物を見て、驚きを隠す事が出来ず、動揺した。

「久しぶりね。また会えて嬉しいわ。」
「…!!貴女は!!」

まるで昔馴染みの友人にでも会うかのように話しかけてきた人物は、黒衣のロープを身に纏っていた。
京はこの人物を良く覚えていた。

「仮面ライダークロノス!!」

体が強張るのが自分でも分かる。
自分がこれからどうなるかはよく分からないが、まず言えるのがあまり好ましくはないということだった。
あの時、この女性は自分を捕獲すると言った。抵抗するも空しく、咄嗟に入った助けによってなんとか難を逃れたのが前回。
しかし今回は助けはない。絶望的な状況に冷や汗が流れる。
だが相手は微笑みながら、こちらを落ち着かせるように話しかけた。

「まぁ、待ちなさい。好戦的になるのはこちらの事情を聞いてからでも遅くはないでしょう?」

黒衣の女性のこの言葉に警戒する京。

「……話してくれるんですか?貴女達の事全てを……」
「えぇ、そのつもりよ。」

相手は自分達の事を話すと言っているが、もしかしたら虚言を言われるのかもしれない。
そんな考えが頭をよぎるも、冷静に自分の状況を分析する。
自分は相手の事について何も分かってはいない。それを相手から話してくれるというのだ。
まさに藁にもすがる思いというものだった。
また、この相手は自分に嘘は言わないだろうというのが、なぜか直感的に感じた。

そして、どこか自慢げ気に黒衣の女性は語りだした。

「まずは私達について。私達は“騎士団”という組織に所属するエージェント。そして私の名は暗殺者。」
「騎士団?暗殺者?」
「名前は単なるコードネーム、気にしなくてもいいわ。」

そこで京は考える。騎士団という名は初めて聞いたが、とても嘘をついているとは思えなかった。
おそらく木場やキールなら何か知っているかもしれない。

「騎士団の目的は世界の秩序を守り、害をなす物を排除する組織なの。」
「私達はこの世界に大きな害をなすものをこの手で排除してきたの。その候補の中に貴女がいるってこと。」
「……どうして、私が?」

そこで一回言葉を区切り、再び話始めた。

「貴女の中には特別な力が眠っているということをつい最近、突き止めたの。」
「特別な……力?」

それは仮面ライダーとしての力であろうか。しかし、それなら自分以外にもライダーはいるはず。
なのに、どうして自分なのであろうか。



「ま、それをちゃんと確認するのは明日だし、何も問題がないようならすぐに帰してあげるわ。」

緊張を和らげるようなその一言に、思わず安堵のため息が出る京。
上手く話をはぐらかされたような気がしたが、京としてもあまり気にはしなかった。
ふと俯いてみて、何か違和感を感じた。

「……あれ?」

気のせいか、やたら肌が露出している。そして気づいてみるとなんだか肌が締めつけられる様な感覚がした。
それに、着ている物が何かおかしい。間違いなく自分の制服じゃない。色が紺だ。
しばらく思案して、気づいた。

「……なっ……!!」

気づいて、頭が真っ白になった。というか、これはありえないと頭の中で突っ込みを入れる。
よく考えてみると、今の自分の状態をこの女性も見ているという事か。……なんか口元おさえて笑っていた。

「私、なんで“すくーるみずぎ”なんて着てるんですかーーーー!!」

そう、京が着ていたのは紛れもなくスクール水着だった。しかも、きちんとサイズがぴったりだ。
おまけに、胸には名前がでっかく平仮名で“けい”って書かれていた。
誰がこんなことをと考え、すぐに気づいてしまった。

「あ、やっと起きたんだー。」
「……!!」

響く悪魔の声。恐る恐る振り返ると、そこには自分を掻っ攫った犯人が満面の笑みで近寄ってきた。
しかも涎たらして……

「うわー…やっぱり京ちゃんはスク水が似合うねー。」

舌なめずりしながら微笑む槍使い。はっきり言って恐い。

「さぁ、今日の夜は張り切っていこうね。」
「え……な、何を張り切るんですか……?」

体が震える。なんとか逃げようと思ったが、しっかりと肩を掴まれたため、逃げるに逃げられなかった。
しかも、信じられないくらい強い力だった。

「大丈夫。お姉さんが優しくしてあげるから。ね?」

言いつつ、ひょいと肩に京を担ぐ槍使い。

「え、あの!ちょっと!!」

もがくもどうにもならず、そのまま連れて行かれる。

「先生ーーーー!!木場さーーーーーん!!助けてーーーーー!!!」

響く京の絶叫。しかし、どことも知れぬ地下に助けが来る事は考えられなかった…………



第弐章 第二十三話 それぞれの再会


『フゥゥゥゥッ!!!!』
その口から白い糸を吐き出す、黒い蜘蛛……シュバルツェ・ウィドー!

「はぁぁぁぁぁっ!!」
両腕の、肘の先に向かって伸びる剣を振るい、その糸を切り払っていく!

全身に帯びたあの女の剣、メデア。
悔しいけど、これってすごい力…!!
昨日までの私なら、この場所…。せまい部屋の中での戦いは不可能だったけど。
この力があれば私は、今まで出来なかった近接戦闘もこなせる!



『フゥ、ゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!』
飛び掛る黒い蜘蛛。
それは……うかつだ!!

ガキィン!ガキィン!!

「ハァッ!!」
肘から伸びた剣を、手首を支点に180度回転させ、それを十字に組み、飛び上がった!!

ザギィィィンッ!!!

『フゥゥゥゥゥゥッ!!!』

ドシャアアアアッ!!!

その一撃を腹にいれ、怪物を地面へと弾き落す。
背中から落ち、もがく黒き蜘蛛。
『フウゥ、フウウゥ、フウウゥッ!!!!!』

それは起き上がると、その狭い部屋の中を、壁、天井お構いなしに這いずり回り始める!
「!!!」

バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!!

さらに部屋全体を壁から壁へと飛び移り、ゼベイルをかく乱しはじめる!
「これで……かく乱しているつもり?」
確かにかなりすばやい。
あの大きな体でよく動く。
だけど……。

ザギィィィンッ!!!!

『フウウウウウウウウウッ!!!!』

ドシャアアアアアアアアアッ!!!

「高速戦闘を得意とする私に…。そんなスピードは通用しない!」
まして今の私には近接戦闘用の武器もある……。
「私はもう、昨日までの私じゃない!!」






その様子を、空から見下ろすウルエイア。
「うそ……。おばあさまの造ったシュバルツェ・ウィドーがぜんぜん歯が立たないなんて!!」


本来なら助けに入るべきなのだが、彼女はせまい場所での戦闘を苦手とする。
ゼベイルと同じく高速戦闘型である、彼女の欠点だった。
……だが、ゼベイルはそれを克服した。

ゼベイルを倒すために、狭い場所での戦闘を前提に造られたシュバルツェ・ウィドー。
だが、その弱点を克服したゼベイルを前に、すでに勝ち目などなかった。
「く……!!ハエの……ハエのくせにぃっ!!!」

…なにをそんなに恐れているんだ。
自分でもその感情の源がわからない。
相手はたかが失敗作。そして私は最強の仮面ライダーの一人。
「どんな場所であろうと…。ボクがたかがハエに負けるわけがないんだからっ!!」

ウルエイアもまた、そのビルへと飛び込んでいった!




「ちっ、なんか面白そうなことになってるのに、そこまでいけねぇたぁな……。」
二人が戦うビルの真下で、碧の巨大なガントレットを打ち付けるラフエイア。

「!!」
「……何か近づいてきやがるな。」

強大な力を持った何かが近づいてくる。
自分たち最強の仮面ライダーをも凌ぐ、恐るべき力の持ち主が。

「なんかヤバイ気がするな…。ここは様子を見るとするぜ。」
そう決めるが早いが、ラフレイアは変身を解き、あふれる力の流動をとめる。
その相手に、感知されないようにするためだ。
そして手近なビルの陰へと隠れ、やってくる相手の様子を伺った。




「騒ぎが起こっているのは、このあたりのようだ。」
その男に連れられて、その場所へとやってくる。
「ここに、華江が……。」
「そうとは…限らぬがな。」




(なんだ……?あの二人は。)
そこへやってきたのは、底知れぬ力を感じさせる黒い男。
そしてもう一人は……。

(ただの…野郎じゃないか。)
ライダーであるような様子もない。
本当にただの少年のようだった。

こんなところに……。何しにきやがった?






ザギィン!ザギィンン!!

火花を散らし、私の剣は奴を斬りつける!
黒い蜘蛛は糸を封じられ、動きさえも見切られ、為す術がなかった。

ガギィィィインッ!!!!

『フクゥゥゥゥゥウっ!!!!!』
ごろごろと床を転がる。
「とどめ……!!」

ブブブブブ……!!

その背の羽を羽ばたかせ、一気に近づき、ビルに開いた穴から、黒い怪物を外へと弾き飛ばす!!!

ドガアアッ!!!!

それを見届けると、ぐっと深く構え、大きく地を蹴り、飛び出した!!
そして腕と体を伸ばし、両腕についた剣を二つあわせ、腕の先に切っ先を作り出す。
「はあああああああああああっ!!!!」
高速回転を開始、空中を舞う黒い怪物に向かって突撃する!

「スピニングソード・ブレエエエエエエエエエエエエエエイクッ!!!!」

グガギィィイィィンッ!!!!!

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

ドガアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

その一撃は蜘蛛を切り裂き、それは空中で爆発を起こした。

「!!!!そんな…!!!」
そこに向かっていたウルエイアも、その動きを止める。
「………。」

ぶぶぶぶぶぶぶぶ……。

二人は互いを見止める。
空中に静止する、ゼベイルとウルエイア。

「蝿がぁ……!!調子に乗ってるんじゃないッ!」
「私は、立ち止まらない。お前たちを全員倒すまでは…!!」

ゼベイルは腕の剣を構える。

「お前なんかに、ボクを倒せるもんか……!」
ウルエイアもまた、その背の羽を激しく羽ばたかせる。



「…………。」
「……………。」

バッ!!!

二人の仮面ライダーが、空を駆けた!!!





ガキィィィィイインッ!!!!!

空の上で、衝撃音が鳴り響いた。
俺は思わず上を見上げる。

「……………あ。」
そこには、黒と赤の虫のような二人の人間と、青い翼を持った人間が、組み合っていた。
青い…翼……。
俺は……それに見覚えがあった。




「………!!!」
私は目を見張った。
あの高速で激突したはずの私たち二人の間に、もう一人、別の仮面ライダーが割って入ってきていたのだ。
青い髪の彼女は、私の剣を、ウルエイアの足を同時に受け止めていた。
「ミ、ミクエイア…!!!!」
「…………。」

ミクエイア……?
「ウルエイア。……シュバルツェ・ウィドーは敗れました。私たちは体勢を立て直さなくてはいけません。」
「何言ってるんだよミクエイア!!こんな奴、ボクたち二人がかかれば、いや、ボク一人でだって…!!!」



「いけません。私たちはあの蜘蛛の実験データをも取っていたのを忘れたの?一刻も早くそれを届けなくては。」

「そんなの、ミクエイア一人で行けばいいよ!!ボクは、ボクはこいつを!!!」
「わからない子ね……。」

ズリュ……。

……私の剣が、青い髪の少女の肩から引き抜かれる。
「……ミクエイア!その怪我…!!」
「…さすがに、完全にとめることは出来なかったようですね…。」

「お、お前らッ!!!」
何がどうなっているのかよくわからないけど、こいつも、敵だって言うんなら!
紫の血の滴る剣をふり上げ、再び襲い掛かろうとする……。
「………。」

ガッ!!!!

「ぐううううううううっ!!!!!!?」
…が、その青い髪の少女…。ミクエイアによってその一撃は阻まれた。
顔面にカウンターを決められ、その衝撃で廃ビルにたたき付けられる!!!

ドガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!



「……。あ、ミ、ミクエイアッ!!」
そのできごとに、一瞬ほうけた様子のウルエイアだったが、すぐに我を取り戻し、ミクエイアに近づく。
血の滴る、その肩の傷を気遣う。
「この傷…。前に怪我してた古傷?確か…。逃げたゼベイルを追っているときにつけられたんだっけ……?」
「ええ…。また開いちゃった…。」

「ご、ごめん。ボクのせいで……。はやくかえろう?傷の手当しなくちゃ。」
「うん。ラフエイアにも伝えて。今夜は、撤収だと……。」
「わかった!わかったから、あまりしゃべらないで。」

ガラッ……。

「く……。」
ビルの壁から顔を出す。
私を吹き飛ばしたあの女をにらみつける。
あのウルエイアに肩を貸してもらい、どこかにいこうとしているのがわかる。
あいつら…。逃げるの!!?

私は肩についた、メデアの刃の一部を引き抜く。
「たあああああああああっ!!!!」
それを、力いっぱい投擲した!!



「!!!!ミクエイア、危ないッ!!!」
それに気がついた彼女は、ミクエイアをかばうように刃に身を晒す!

ズシュッ!!!

「ウルエイア!!?」
…それはウルエイアの右肩に命中。奇しくも、ミクエイアと同じ場所に傷を負う……。
「へへ…。大丈夫。早く逃げよう。」
「ええ…!!!!」
ミクエイアはその背の羽根を羽ばたかせると、この場から去る。




「あの子は……。まさか…!!!」
その一部始終を見ていた、風瀬 列。

(撤収…?!俺はあの蜘蛛野郎のデータを持って帰れってか。……しょうがない。)
そしてラフエイア。

「お、終わった……?」
二人が去っていくのを、とめることができなかったゼベイル……。
「くそ……。つ、疲れた……。」
彼女はゆっくりと地面に降りると、その変身を解く。
そのままひざを突き、倒れ伏した。
「もう……眠い……。」





「な、なああんた、あれがなんか知ってるのか!?」
俺はすぐ後ろにいたあの黒い男に話しかける。

「……あれ?」
が、その姿はもう掻き消えていた。
「なんだったんだ。あいつ……。」
…それよりも、
「あの女の子がいた。あの……青い翼の女の子が。」

あの日、河原で怪我の手当てをしてあげた、あの女の子。
なんか、誰かと戦っているみたいだったな…。
普通じゃないって思ってたけど。

黒い…。あれも、女の子なんだろうか。
青い少女、赤いのと戦っていた、黒い虫のような姿をした人間。
体の線から見て、少女のような印象を受けた。
「あれが、彼女の敵…?」




ばたっ……。

「!!」
そのとき、何かが倒れる音がした。
ある予感が走る。
……いや、俺の中ではもう、それは確信だった。
ここにきたのと同じく、根拠はない。
でも、でもそれは。間違いなくそうだと伝えている。
俺は駆け出す。
その音のしたほうへ。

そこにはきっと、彼女が。
世界で一番大切な、俺の家族が待ってるから―――!










「しばらくの…お別れね。」
ビルの壁を支えに、かろうじて立っている女性…。エウリピデス。
「でもまた私は、あなたの前に現れる。わたしたちの想いを果たすために…。」
「また……。夜に会いましょう。舞夜。」



第弐章 第二十四話 神水の舞


ガブリエルたん「このぉぉぉぉ!!!」
ガブリエルたんの槍の連撃を楽々と避けるアイスキュロスたん。
アイスキュロスたん「遅いですね、それに先ほどの元気も無い」
ガブリエルたん「はぁはぁ、それは、貴方もでしょ?」
息を切らしながら余裕なふりをしている、ガブリエルたん。
だが、いずれは……
ウォーガ『主!私が時間を稼ぐ!』
ガブリエルたん「頼むわよ!」

ガブリエルたんの足場に何か紋章が浮かぶ。
ガブリエルたん「水の称号の守護獣リヴァイアサン、今私ガブリエルたんに力を……」
徐々に光が強まる。

アイスキュロスたん「させない!」
ズガガガガガ!!!!
アイスキュロスたん「っ!!」
ウォーガ『貴様の相手は私だ』
純白の騎士、その姿は敵にとっては堕天使であろう。

ガブリエルたん「汝、神水の舞を今見ん!!うけよ!シャインアクアイリュージョン!!」

アイスキュロスたん「!?」
ウォーガ『やっと……できたか……』
両腕が無く頭部は特徴的だった両耳の角が折れ、足は装甲が取れていた。

ガブリエルたん「私の全魂力受けとれぇぇぇ!!!!


数百ものガブリエルたんが現れ、アイスキュロスに攻撃を始めた。


ズギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!

ガブリエルたん「そして、舞は終わる」

ズゴォォォン!!!

ガブリエルたん「はぁ…はぁ……やった?」
ウォーガ『だろうな』
ガブリエルたん「つか……れた……」

体を重力に任せて倒れるガブリエルたん。これで終わり……?

ウォーガ『だが……まだいるような気がする、そうどこかで出会った感じの奴が』

???????『そうだよ、ウォーガいやGXT−002』

ウォーガ『その声は……エウリュディケ!』

エウリュディケ『久しぶりだね』

ウォーガ『主が倒していたと思っていたのはオリハルコンか』

エウリュディケ『ご名答』

ウォーガ『……アイスキュロス。奴はなぜ主を殺そうとした?』

エウリュディケ『彼女は亜種ディナミストの亡霊の集合体だ、詳しく言えば違うけどね』

ウォーガ『なるほど、正式デュナミストである主を亡霊が怨んでいた
のか』

エウリュディケ『そういうこと、それじゃあ、彼女も連れて行くね』
ガブリエルたんとアイスキュロスを抱えてどこかへ去ろうとする、エウリュディケ。

ウォーガ『……………主はまだ、何も知らない、主が知らないとこで何がおきているのか、だから』

エウリュディケ『分かっている、無茶はしないさ』

ウォーガ『……デュナミストライダー・バトル勝てば望みが得られる』

エウリュディケ『ご報告ありがとう』
そのままどこかへ消える、エウリュディケ。


ウォーガ『始まりの鐘、そう隕石が振るとき、すべては動く。冥界の者もこの世に現れ。………ここで記憶が飛んでいるな。まあいいか』

誰もいない、基地。ウォーガが発見されたのは、1週間後である。

ウォーガ『もう少し早く着てくれ』
いぬみ「えへへ、ごめん」



第弐章 第二十五話 …そして、暴走






その頃、超がつくほどピンチの京ちゃんは…。


「いーーーーやーーーー!」

「あー! 逃げないでよー!」


何とか部屋の中を逃げ回っていた。

可愛がられ続けたら間違いなく(私が)狂う!

そういうことで逃げ続けていた。

変身後のスピードは遅いが、可愛い子相手となると豹のようなスピードで、槍使いは追いかけてくるらしい…。


「捕まえた!!」

「きゃっ!!」


ついに、京ちゃんは槍使いにベッドに押し倒された。(危険)


「たーくさん、可愛がってあげる…。」

「い…いや…。」


京は震えていた…。もちろん、“生命の危機”じゃなくて“貞操の危機”ということに…。


「味方がいないこの状況で、京ちゃんには何もできやしないでしょ?」

「(味方がいない…。)」


もうすでに分かっていることだが、現在の彼女は味方がいない。(それはもういい。)


「孤独だから、私が可愛がってあげるの…。」

「(孤独…!?)」


ドクンッ…!

京の中で何かが動き出した…。


「天涯孤独の身なんだから……私が妹にしてあげる。」

「(天涯孤独…!?)」


ドクンッ…! ドクンッ…!

―何…? この感じ…。

―私…。孤独になることを恐れているの…?

―何で…? 私の中に…何かがいる…!?

―嫌…出てこないで…!

―私が私でなくなっちゃう…!


「どうしたの? 京ちゃん。」


ドクンッ…! ドクンッ…! ドクンッ…! ドクンッ…!

―ダメ…! 止められない…!!


「嫌ァァァァァァァァ!!」

「!?」


ドガァン!!

衝撃。

その衝撃とともに槍使いは吹っ飛ばされる。


「な…!?」

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」


その叫び声とともに、京の体が変化する。

だがその姿はシグマではなく、いやシグマなのだろうか…?

猛獣のような姿へと、変化したのである…!


「こ、こんな…! 私が…恐怖を感じている…!?」

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」


槍使いに襲い掛かろうとする京。

だが…。


『やれやれ、シグマ。君の相手はボクだろ?』

「ううう…!!」


エウリュディケだ。

突然目の前にワープしてきたと思われる。


『場所を変えよう。君は大事な者のために戦っているはずだ…。』

「ぐぅぅぅ…!」


何か音がしたかと思うと、二人の姿は消えていた。


「何なのよ…!! あの子…! 結構可愛かったけど。」


槍使いの観点はやはりずれていた。



どこかの小高い丘で…二人は対峙していた。


『暴走形態か…。厄介だね…。』

「ぐぅぅぅ…!」

『…こうすれば君も元に戻るんだろうか…?』


エウリュディケは携帯電話を取り出すと、どこかに電話しはじめた…。


『…SB社社長:木場夕菜だね…?』

「…誰でしょうか? 今私は忙しいのですけど…。」

『シグマと一緒にいるといったら?』

「何ですって!?」

『探してごらんよ? 小高い丘にいるのがヒントだ。』

「あなたは一体なんなのですか!?」

『ボクはエウリュディケ。早くしないと…シグマが死ぬよ?』

「!!!!!」


ピッ。


『アイスキュロスのダメージもまだ治ってないし…ガブリエルの強化洗脳もまだだし…。まったく、疲れるよ…。』

「ぐぅぅぅ…!!」


未だにエウリュディケを睨む京。

…果たして、この暴走を止められる人は…いるのか…!?



第弐章 第二十六話 世界の守護者達



騎士団のアジト。
その中心部、監視モニターや計測用のコンピューターに囲まれた部屋、そこに暗殺者と魔眼使いがいた。

魔眼使いはしきりにパソコンのキーボードを叩き何かの作業に没頭し、それを暗殺者は真剣な眼差しで見つめていた。

そこに響いてくる足音。それもかなり駆け足で近づいてくる。
やがて、その部屋のドアを乱雑に開け放ち、中に入って来た長身の女性は荒い息を抑えることも忘れ、大声で叫んだ。

「ちょっとーー!!これ一体どういうことよーーーー!!?」

が、対照的に魔眼使いは鬱陶しそうな目つきで作業に集中し、暗殺者は笑いを噛殺した表情だった。

「どうしたの?志熊京との楽しい時間はもう終わったの?」
「それどころじゃないの!!」

見ると、槍使いは相当慌てていることが見て取れた。

「京ちゃんが突然変身して、変な可愛い娘が来て、その二人がどっかいっちゃって…………」
「あら、大変だったわね。」
「……………へ?」

ここで槍使いは冷静になった。思えばなぜこの二人はそれ程慌てていないのか。
単純に考えればすぐに分かることであった。

「み、見てたわねーーーーー!!?」

再び叫びだす槍使いに、早く何処かに行ってくれといった表情の魔眼使いだった。




「まぁ、愕いてないと言ったら嘘になるわね。」

話を再開したのは暗殺者だった。
その会話が重い意味を持っている事を感じた槍使いの顔つきが引き締まる。
また、作業に一段落がついたのか、魔眼使いも会話に参加する。

「姿はとても仮面ライダーとは形容出来なかった。まるで、何かの獣………」



京の変貌した姿を最初に見たのは槍使いだった。あの時、槍使いは何か言いようのない恐怖を感じた。
と、言っても彼女は別に京の強大な力に恐怖した訳ではない。彼女達『騎士団』はこれまでにも様々な敵と戦ってきた。
それは人間と戦ってきたこともあれば、形容しがたい『怪物』とも戦ったこともあった。
むしろ彼女が感じた恐怖とは、京が怪物の様な物に姿を変えてしまったことに恐怖したのだった。

「京ちゃんは一体、何者なんだろう?あんな姿になっちゃうなんて……」

京の身を案じる槍使い。しかし、魔眼使いは対して興味もなさそうな表情で槍使いに問いかける。

「槍使い。まさか志熊京を処分するのが嫌って言うんじゃないよね?」
「………………そんなことないわ。」

苦しげに返答するおさげの長身の女性。


騎士団が掲げるその目的とは、世界の秩序維持である。
この世界に大きな災いをもたらそうとする存在に、非合法な手段を用いてでも排除する。
そのため、この組織は一種のテロ扱いを受けることもしばしばあった。
そして騎士団は対象となった者達を、ただ一人の例外も無く完膚無きまでに打倒していったのだった。

「いくら京ちゃんでも私達の敵になるようなら、私は容赦はしないわ。」

その眼は決して躊躇いと言うものが見受けられなかった。





「ところで、人形使いが言っていた作業ってなんなの?」

突然思い出したように話を変える槍使い。それを小柄な少女は何でも無い事のように言い放った。

「あぁ、お姉さまのライダー装備をオリジナルカスタマイズしてたの。」
「な、ちょ!えぇーーーーー!!?」

またもや叫びだす槍使い。

「なんで!?暗殺者強いんだからそんな必要ないじゃん!!」

食い下がる槍使い。しかし、魔眼使いは出来の悪い生徒を窘める様に言いやった。

「あのねぇ、お姉さまの“仮面ライダークロノス”は先代の“暗殺者”専用のだってことを忘れたの?」
「う…………忘れてはないけどー…………」

いまいち納得のいかない槍使い。それに、暗殺者は静かに唇を開いた。


「私はクロノスでも十分だったんだけどね?」

しかし、魔眼使いは少し怒った表情で黒衣の女性に食ってかかった。

「お姉さま!元々クロノスは先代の暗殺者専用、だからお姉さまじゃ完全にはその力を使えないのよ!?」
「正確には、私の“父”のだけどね。」
「でも、今まで暗殺者はクロノスでも十分強かったじゃない。現に私今まで暗殺者に勝てたことないし…………」

言って自分で落ち込む槍使い。

「それでも、これからの戦いにはやっぱりお姉さま専用のライダーシステムが必要なの!」

力説する魔眼使い。

騎士団の切り札はこの暗殺者である。その彼女が本来の力が使えないというのは正直な所、相当の痛手であった。
と言うのも、暗殺者は先代の使用していたクロノスをいたく気に入っていた。
そのため、彼女は自分用のライダーシステムを作らず、今までずっとクロスで戦ってきたのであった。
それでも、彼女は今まで予想以上の成果を上げ、本調子でないにも関らず、騎士団のNO.1に君臨していた。
それだけでも、彼女の並々ならぬ才能を感じさせずにはいられない。

「ま、しょうがないわね。私としても今回の戦いは万全で挑みたいからね。」

言いながら軽く拳を握る。

そう、今回の戦いは普通ではない。様々な仮面ライダーやそれに伴い、正体の知れぬ者達も暗躍している。
一時の油断も許されないことは前回の任務において身をもって体験した。
次にあのような事があれば、自分に命は無い。それを踏破するには、形振りなど構っていられなかった。

「でも、安心してお姉さま。元はクロノスから作っているから能力はほぼ同じ。強いて言えば、クロノスの改良型みたいなものだから。」
「まぁ、それは助かるわね。」
「えぇーーー!!ずるいよそんなのーーー!!」




しばらくして、ようやく作業が終了する。魔眼使いは完成したリングを暗殺者に手渡す。

「これが…………」

まじまじと眺める暗殺者に、魔眼使いは誇らしげに解説した。

「今回のは武器が全てナイフで統一されてあるの。ほら、お姉さまってナイフが一番使いやすいって言ってたでしょ?」
「気が利くわね。」

暗殺者は様々な武器に秀でているが、最も得意とする得物はナイフであった。
クロノスで戦っていた時もナイフを主に使用していたのはそのためである。

「他にも特殊な技とかも追加したけど、一番凄いのはなんと言ってもこれね!」

言って魔眼使いが取り出したのは一振りのナイフであった。そのナイフを見て感嘆のため息を漏らす暗殺者。
極限に磨き上げられた刀身は鏡を思わせるほど流麗。それでいて剛質な印象を与えずにはいられなかった。
握り手の部分にも鮮やかな工夫が見受けられる。さらに使い手のことを考えてそこは戦闘目的に調整されていた。
これは巧の業と言っても差し支えはあるまい。

「ただのナイフじゃないのよ。これ、クロノスの“ハルペー”から作り出したの!」
「まぁ。すると…………」
「ハルペー同様の効果を持ってるわ。しかも、前と違って投擲をしても効果を発揮できるの。」

魔眼使いの仕事に満足したのか、その小さな頭に手を置き撫でいる。

「ありがとね。それで、このライダーシステムの名前は?」
「えへへ……………それは……………」

照れながらも、はっきりとその名を紡ぐ。

「仮面ライダー黒姫っていうのはどう?お姉さま。」



第弐章 最終話 二人の戦士


牙鉄「………どうするべきじゃろう…」
今時刻午前1時つまりツバキに殺されること間違いなし。
牙鉄「ぞうじゃ、無王に教えておいてやろうかの」
白色の小刀を取り出し、小刀に念を込める牙鉄。

そして次の瞬間、閃光が落ちた。
仮面ライダーゼロが、現れた。

ゼロ「なんのようだ?」
牙鉄「実はの………」
牙鉄はこれまでの事をすべて話した、ゴーレムのこと、ガブエイアのことを。

ゼロ「馬鹿な!?それはまるで………」
今まで現れたとき、冷静だったゼロがはじめて、動揺を見せた。
それほどまでに、異常なことのようだ。

牙鉄「うぬ、魔再生装置そのものじゃな」
ゼロ「ゴーレムはほとんどドッペルゲンガーか」
謎の単語を出す二人。どうやら、彼等は知っているようである。

ゼロ「ところで、それだけではないのだろう?」
牙鉄「うぬ、一番重要なことじゃ」
ゼロ「……」
二人の緊張が高まる。






牙鉄「うちにかえれないのじゃよ」
ゼロがまるで漫画のように空中でずっこけた。
ゼロ「…………それだけか?」
なぜか右腕が牙鉄をつかむ。
牙鉄「それだけじゃが?」
ゼロ「そうか……それならばとんで逝け!!!!!」
牙鉄をそのまま投げ飛ばす、ゼロ……よほど先のことがむかつくようである。

牙鉄「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!?しかも逝けって、わしが死ぬのかぁぁぁぁぁぁ!!!!?」


           キュピーン
まるで、これまた漫画のように、星になった牙鉄である。

ゼロ「たっく、それだけで我を呼ぶな……しかし」
なぜ、魔再生装置が?まさか、壊しきっていないやつが一つ在ったのか?
ゼロ「……調べる必要があるな」
そのまま消えたゼロ、二人の関係は一体?そして魔再生装置とは?
それが分かったとき、物語は急変する。


第弐章 エピローグへ


第弐章 エピローグ 両手に花編 (空豆兄様作者)


腕を伸ばせば、そこにある。
ベッドの中の、もうひとつのぬくもり。
同じ毛布の中で、静かに寝息を立てる小さな少女。
俺の大切な妹。

……華枝。

空はまだ暗く、早朝とも呼べない時間。俺は彼女を抱き寄せた。
「んぅ…。」
そのぬくもりを感じたくて……。

行方不明になっていた華枝。でも俺は、そんな彼女を見つけ出すことが出来た。
見つけたときには気を失っていて、俺は華枝を負ぶって帰った。
結局家についても華枝は目を覚まさなかったので、俺は彼女をそのまま寝かせた。
目覚めた華枝がおびえないように、俺も同じベッドに入って。

「んふ…ん……。」

……いつもは迷惑がっていた華枝と一緒に寝ることも、いざ彼女がいなくなってみると、それが当たり前の事になっていた自分に気がつく。
隣に誰かがいることで、安心して眠れる華枝。
そして俺も、隣に華枝がいることで、安らいでいたんだ。

華枝……。

俺はそっと、その頬を撫でる。
もう、お前を独りぼっちにはしないからな……。






「華枝、朝だぞ。おきろ。」

ゆさゆさ。

彼女が消えるまで繰り返されていた、いつもどおりの朝。
俺はそれがうれしくて、ニヤニヤしながら華枝をゆする。

「ふぁ……?おにぃ、ちゃぁん……?」
そして、いつもの華枝の眠そうな声が、俺の耳に届いてくる。
「華枝。おかえり。」
「ふぇ……。」
まだ寝ぼけている様子。
ゆっくりと体を起こし、俺の顔を見る。
「おにぃ……ちゃん?」
「ああ。そうだよ。」
「あ………。」

俺の顔を見止め、そして辺りを見回し、自分がいつもの居場所に帰ってきたことを確認する華枝。
そして……。

「ふぇ……おにぃちゃああああああああんっ!!!」

がばあっ!!

俺の首にしがみついてくる。
「どわあああっ!!?」
その行動に、ベッドの上にいた俺はバランスを崩し…。

ごっちいいいいいいんっ!!!!

頭の中に星が回った。





「えへへへぇ〜。」
「……。」
頭に出来たこぶを撫でつつ、食事を取る。
…で、華枝は俺の横にぴったりくっついて、パンをかじっているわけで。
「華枝。食べにくい。」
「そうだねぇ〜。」
「だったら離れてくれないか。」
「や〜だぁ。こうやって、くっついているの。」

「あのな、華枝…。」
「わたし、すっごく怖かった。」
「……。」

「気がついたら広い場所にいて、すごく怖い目にあった…。」
「わたしひとりで、ずっと怖かった…!」

ぎゅっ。

「華枝…。」
また俺の腕にしがみつく。
「でも、やっぱりおにぃちゃんは私を助けてくれた。一人ぼっちの私を助けてくれた。」
「……まあ、な。」
俺を見つめるその視線が恥ずかしくて、俺は控えめに返事を返す。

「おにぃちゃん、大好き……。」
俺の胸に、頭を預けてくる華枝。
俺は、その頭を優しく撫でてやった。

よかった。華枝が帰ってきて。
こうしてまた、二人の時間が過ごせるようになって……。




ぴんぽ〜ん……。

そのとき、玄関のチャイムが来客を告げた。
「あ。」
「ふにゅ…。」
残念な声を上げる俺たち二人。
「…わたし出るね。」
そういって、華枝は玄関に向かった。

……ふう。
なんだか知らないが、…すごくどきどきしたな。
いかん。こんなんじゃなおさらシスコン呼ばわりを…。

「あ〜〜〜〜っ!!」

「ふえ!?」
玄関から突然、華枝の声が!
俺はすぐに立ち上がると、玄関へ……!

「神歌ちゃんだぁ〜っ♪」

ぎゅ〜っ。

「………。」
そこには、その来客にうれしそうにしがみつく華枝と、
「わ、ちょ、ちょっと落ち着きなさいってば、もう……。」
嫌がりながらも、頬を赤く染めた神歌ちゃんがいた。

「おはよう。神歌ちゃん。」
「お、おはようございます、列さ……ああんっ。」
「また会えて、すごくうれしいよぉ〜♪」
華枝にしがみつかれて、まともに返事できない神歌ちゃん。

「こら華枝。うれしいのは分かるけど離れるんだ。神歌ちゃん困ってるだろう?」
「はぁ〜い。」
俺の声には素直に耳を傾ける華枝だった。

「れ、列さん…。華枝……。」
華枝から開放され、交互に俺たちを見直す、華枝の親友、神歌ちゃん。
「ああ。…昨日、俺が見つけたんだ。それでつれて帰ってきた。」
「そうだったんですか…。」

「うん。道で寝てた私を、おにぃちゃんが負ぶってきてくれたんだって。やっぱり、おにぃちゃん大好き!」
今度は、俺にしがみつく華枝…。
「華枝。重い。」
「いやだぁ。ずっと離れていたんだもん。その分今日はくっつくの!」
こりゃ…参ったな……。

それをみつめる神歌ちゃんの視線が…。今日は特に痛い。
「!」
一瞬、俺と目が合うと、彼女は視線を背けてしまった。
「……。」
そして、肩をさする。
………?

「神歌ちゃん。肩……?」
「え、は、はい。昨日ちょっと怪我しちゃって……。」
そういって、右の肩をさする神歌ちゃん。
「ひょっとして、さっきの華枝のせいで、傷口が…!?」
「あ、あはは……。」

「ええっ!?神歌ちゃん怪我してるの!?ごめんなさぁい。…私、そうとは知らなくて、神歌ちゃんに……。」
「………。」
そのとき、神歌ちゃんの眉が、少し動いた気がした。
「…ううん。そうよね。私、何も言ってなかったからね。」

華枝が俺から離れて、神歌ちゃんに歩み寄る。
「神歌ちゃんごめんね……。」

その肩を、やさしく撫でる華枝。
彼女を大事な友達と、そう思う気持ちが伝わってくるみたいだ。
そんな彼女の様子に、神歌ちゃんは表情を緩めて、ふっと笑った。




「あ、それからあの、今日は3人で学校に行きましょう。ね?」
「わー!賛成!3人で行くのって、すごく久しぶりだよねぇ。」
神歌ちゃんの提案に、喜んで同意する華枝。
「そうだな…。よし、そうしよう、華枝も戻ってきたわけだしな。」
「うん!」
「はい。」
二人の返事を聞くと、俺は華枝を連れて部屋へ。
かばんを持って外に出た。



並んで学校へと登校する俺たち。
自然に俺は真ん中の配置となり、二人の美少女に挟まれて登校する形になった。

……これはある意味うれしいが、ある意味非常に危険な気もする。
学校に着くまで、注目の的だなこりゃ……。

「〜♪」
うれしそうに俺の横を歩く華枝。
「……?」
俺の顔をうかがう神歌ちゃん。

いやはや、いつの間に俺はこんなことになってたんだろうなぁ…。





…その中で、俺は神歌ちゃんの肩の傷が気になっていた。
そういえば、最近そんな怪我をした人を見たことがあったような。

どこでだったろうか…?



第弐章 エピローグ ゼロとガーゴイルとイクスたん……それと牙鉄のその後編 (ウェイド作者)

とても広い部屋、ゼロの存在がちっぽけと思うほど。

ゼロ「………イクス!イクスはどこだ!?」

でもここは、人間の世界じゃない。

イクスたん「どうしましたか?兄様」
その姿は少女とも少年とも言えよう中世的な姿。

ゼロ「兄様と呼ばなくてもよい、それより魔再生装置の中で我等が壊し損ねたものが無いか徹底的に調べてくれ」
イクスたん「かしこまりました、兄様」
そしてとある部屋にはいる、資料室と呼ばれる部屋だ、その凄さは地球上の全データがあるのだ。

ゼロ「兄様と呼ばなくてもよいと言ったが…奴の癖か?」
?????「イッヒヒヒ!久しぶりだなゼロ!」
ゼロ「……なんのようだ、ガーゴイル」
ゼロの目がラインカーを消したときのような狩人の目になった
ガーゴイル「いやなぁ、イクスを俺のものに………」

ズパァン!!!
言うか言わないかといった瞬間にガーゴイルが座っていたいすが消えた。
否消滅されただ。
ガーゴイル「お〜こわ、お前シスコンだなぁ〜」
ゼロ「次ぎ言ってみよ、貴様の首が空を飛ぶぞ?」
ガーゴイル「やってみなよ、シスコン」
二人が武器を取り出した。
ゼロは小さなナイフ(気で剣を作り出すため、持ち運びが便利なナイフを使う)
ガーゴイルは巨大なバンカーである(それも自分の二倍の大きさ)

二人が動いた次の瞬間!

イクスたん「兄様、魔再生装置の中で四つ起動している反応がありました……?何をしているのでしょうか?」

今の二人の状況
ゼロはソウルブレード(ゼロの武器)でガーゴイルの首を刺そうとしている。
ガーゴイルはカオスバンカー(ガーゴイルの武器)でゼロの頭を貫こうとしている。
イクスたんが考えた状況、二人は殺し合いをしようとしていた。

イクスたん「…………」
イクスたんは無言で自分の武器、デルタマシンガンを取り出した。

イクスたん「喧嘩しちゃいけません!!!!!」

ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
デルタマシンガン、それはラインカー種族すら一瞬で蜂の巣になる武器である。
つまり二人は……

ゼロ「まて!イクス!!別に殺し合いするつもりでは……」
ガーゴイル「そうだぜ!俺達は演習してたんだよ!!」
必死であった。
イクスたん「喧嘩しちゃだめぇぇぇぇ!!!!」
それすらも銃声によりかき消されていた。
ゼロ&ガーゴイル「………(きいちゃいね〜)」
結局、創造者が来るまで、イクスたんはデルタマシンガンを撃ち続けていたそうだ。



続く。

そうそう牙鉄はというと……

牙鉄「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ガシャーン!!!
牙鉄「いててて……うぬ?ここは確かわしの家そして……」
血の気が引く、間違いなければここは
ツバキ「何をしていらしてるんですかおじ様」
ツバキの部屋……
牙鉄「いや、実はの!」
ツバキ「外でお休みください」
牙鉄「いやツバキ!」
ツバキ「休んで下さいってるんですが?」
笑っているが目が笑っていない……
結局牙鉄はというと………

フォーミュラー『苦労してるんだなアンタ』
牙鉄「そうじゃよ……ガレージには入れたのが奇跡くらいじゃ」
フォーミュラー『(というかこいつ飛んできたよな?)』
人間ならあの速度じゃ即死だ………
フォーミュラー『アンタ本当に……普通の人間か?』
牙鉄「普通ではない、じゃが人間じゃよレンナと同じな」
そのとき、牙鉄の目は戦士の目をした。それも百戦錬磨の戦士の目
フォーミュラー『それじゃあ……アンタも……』
牙鉄「それじゃあわしは寝る、お休み」
フォーミュラー『あ…ああ』
次の日、必死で誤る牙鉄がいたとさ。
フォーミュラー『あの時見えた戦士の目は視覚回路のバグか』
あほらしいと思う、フォーミュラーであった



第弐章 エピローグ 道化とラフエイア編(イシス様作者 )

すでに時刻は夜の零時を過ぎようかという頃、両手に巨大な翠の篭手を着けた少女が街を疾駆していた。
幸いにも、深夜ということと少女が常人よりも圧倒的な速度で駆けているお陰で、人目に付くことはなかった。

(あの蝿………まさかババアの蜘蛛を倒しちまうとは………)

苦々しく舌打ちをする魔女の造り上げた最強の仮面ライダーの一人、ラフエイア。


魔女が造った蜘蛛の異形−シュバルツェ・ウィドー。
あれは本来、近接戦闘を不得手とするゼベイルに対して製作した実験体である。
作戦ではゼベイルに蜘蛛をけしかけるだけで片付くという、至極簡単な任務のはずだった。

しかし、予定外の事態が発生した。

ゼベイルが潜んでいると思われる廃ビル。はたしてそこにゼベイルはいた。
だが、そこにはゼベイルのみならず、彼女を庇おうという女性がいた。
その女性はゼベイルに生命の力を分け与え、結果ゼベイルは強化変身を果たした。
しかも近接戦闘も可能になったという嬉しくないオマケつきで。

結果、任務は見事に失敗。自分は倒された蜘蛛の戦闘データを抱えてこうして撤退して、現在に至るという訳である。

(あの蝿も蝿に加担した奴も、タダじゃおかねぇ!!)

恨み辛みを悶々と腹の中に押し込めつつ、さらに夜の街を駆ける。が、ふとその足が止まった。
ラフエイアがふと街を見下ろすと、ある一点に気になるモノを見つけたからだ。




それはある種、異様とも言える光景だった。
何の変哲も無いただのサラリーマン。その後を付ける一人の少年。

年の頃は18といったところか、そんな少年がなぜずっとサラリーマンの跡などを付いていくのであろうか。
その光景を不思議そうに眺めるラフエイア。

「あいつ…………なんで……………」

無論、ただのサラリーマンならラフエイアもそこまで気にはかけない。
だが、“あれ”はただのサラリーマンなどではなかった。

「なんでババアのゴーレムの跡なんか付けてんだ…………?」





先程からずっとサラリーマンの跡を付いていく少年。
傍から見ても異様な光景であるが、一番不気味に感じているのはずっと跡を付けられている男だった。
男は何度もこの少年を振り切ろうと試みたが、それでも少年はしつこく付いてくる。

さすがに男の方も不気味に感じ、咄嗟に後ろを振り返り少年に向かって一喝する。

「な、なんなんだね君は!さっきからずっと人の跡を付けて……迷惑だ!!」
「……………」

男の怒声が耳に入っていないのか、少年は気にした風も無く、まじまじと男を眺めていた。
まるで何か道具を観るかのような眼に、男は思わずたじろぐ。
すると、少年は突然軽く笑い出した。

「ふふ………“人”、ね………“人形”の間違いなんじゃないのか?」
「な!何を言っているのかね!!?」

少年の突拍子もない一言に怒りを露にする男。しかし、表情には僅かながらの焦りがあった。

「あぁ、別に誤魔化さなくてもいいさ。あんたが“人形”だってことは最初から知ってたよ。」
「な………!」
「俺としては、ここまで精巧な“人形”はなかなか見れないから、つい跡を付けちまったのさ。」
「私を………“人形”と言うのかね…………?」

少年の不可解な会話を、この男はまるでそれが正しいかの様に認識しだした。
さらに、徐々にではあるがその筋肉が盛り上がっているように見えた。

「あぁ。俺、そういうの見分けるのが得意なんでね。」
「そうかい………だけど、分からなければよかったのにねぇ………」
「へぇ、なんでだい?」

まるで他人を嘲る様な少年に対し、男はもはや人間とは思えないほどの筋肉を見せつける。

『一生知ラナキャ、コンナ所デ死ヌ必要ガナイカラサ!!』

姿だけでなく声までも人とは思えぬほど変わり果て、叫びながら拳を振り上げ少年に駆け出していく男だったモノ。
誰が見ても、その拳を受ければ脳髄を飛び散らせるのには十分だということが分かるだろう。
少年との距離を詰め、一気に拳を振り下ろそうとして…………


出来なかった。

『!!?』

何が起きたのか理解出来ない異形は、なんとか目の前の不遜な少年に自分の拳を振り下ろそうとする。
しかし、いくらやってみても体が少しも反応しない。まるで、自分の体ではないかの様に………………

「あきらめな。もうお前は一切動くことは出来ねぇ。」

焦る異形に対し、目の前の少年は涼しげな表情をしていた。

『グググ…………キサマ、ナニヲシターー!!』

なんとか声だけでも絞り出す。それを少年は何でも無い事の様に答えた。

「お前の体は俺が支配した。これからお前は俺の人形だ。」
『ナン………ダト………!?』
「相手が“人間”だったらこうは上手くいかなかったろうな。お前が“人形”で助かったよ。」

ことさら愉快そうに話す少年に対し、すでに異形は発言の自由すらも奪われていた。

「さてさて、こいつの親元は…………魔女?えらく古風だなー……」

半ば呆れた様な溜息を吐き出す少年、そしてその後ろには何時の間にか立っていたラフエイアがいた。





「てめぇ………何してやがんだ………。」

怒気を隠すこともせず、目の前の優男を睨みつけるラフエイア。
少年はやはり気にする事も無く、目の前のラフエイアを眺めた後、意味ありげな笑みを浮かべる。

「ほぅ。人形の次は改造生命体か………どうもこの魔女様は多趣味なようだな。」
「………テメェ………!」

殺気を放ちつつも、ラフエイアは目の前の敵の得体の知れなさに警戒する。

(こいつ、どういう訳かは知らねぇがあの泥人形からこっちの情報を読み取ってやがる…………!)
「魔女の名前は………ウィッチ・ビアンコ。これまた聞かない名前だな。」

少年はお構いなしにラフエイア達の情報を引き出していく。ここまで知られた場合、やるべきことは単純だった。

「さっさと………死んじまいな!!」
「……!!」

地面が凹むほど蹴りこみ、一気に少年に肉薄せんとするラフエイア。
仮にこの少年に仲間がいる場合、それを知られる前に倒す。単純故に最も効果的な選択肢だった。

少年の方も黙ってやられるつもりはなく、支配下に置いた異形をラフエイアに差し向ける。

「遅ーーーーーいっ!!」

しかし、魔女の造った最強の仮面ライダーの一人がこの程度のゴーレムに遅れを取ることなどありえない。
右腕を振るっただけで、ゴーレムは粉々に粉砕された。残っているのは頭部だけである。
そして、勢いを緩めることなく少年に接近し左腕で殴りかかる。

「え…………?」

その驚きはラフエイアのものだった。
魔女のゴーレムを自分の手足の様に扱っていた少年が自分の一撃を受け、吹き飛んだからだ。
しかも、少年はほぼ即死だった。右手は千切れ飛び、下半身は原型を留めないまでに転がり落ちた。
特に直撃を受けた上半身は頭だけを残し、残りは奇怪な肉塊のオブジェと化していた。

あまりの呆気なさに唖然とするラフエイア。

「なんだ………こいつは…………」

ラフエイアの驚きも尤もである。
この少年は魔女の泥人形を自在に操り、こちらの情報を読み取り、さらにはこちらに攻撃を加えてきた。
それが、まるで何の変哲も無い人間のようにあっさりと自分の一撃を受け、事切れてしまった。

「………けっ。拍子抜けしちまったよ。」

動かぬ屍に興味を無くし、そこを立ち去ろうとしようとしたその時だった。

「………死んだ………死んだ………………」
「!!?」

声のする方に振り向く。そこには、最前自分が殺した相手の首が口をきいているのだ。

「……死んだ…………死んだ?……………誰が?……………誰が死んだ?…………」
「な………こいつは………!」

たじろぐラフエイア。
無理も無い。殺した人間の頭がまるで生きているかのように喋っているのだ。誰でも気味悪がるのが自然だ。

「………死んだのは俺…………殺された………殺された………力持ちのお嬢ちゃんに…………」

なおも口を開く生首。

「……だけど、死んだのは俺じゃない…………死んだのは人形……俺の姿をした人形………」
「え………?」

そこで冷静になるラフエイア。
今この男はなんと言った?自分の姿をした人形?なら本物は………

一瞬の思考の後、咄嗟に先程自分が壊したゴーレムを見やる。
そこには、ゴーレムの頭部を抱えた“全く無傷の少年”が立っていた。

「大した能力だな。これだけの力を持った相手はなかなかいない。」

涼しげに、微笑を浮かべながらラフエイアの能力を看破する。その悔しさに歯噛みするラフエイア。

「テメェ………マジで何者だ…………」

無駄とは思いつつも、聞かずにはいられなかった。が、相手は以外にも素直に返答した。

「そうだな。こっちだけ名乗らないってのはフェアじゃないな、ラフエイアちゃん?」
「!!」

目を丸くするラフエイア。
こちらは一切名乗ってもいないのに、相手は自分の名前を言い当てた。
おそらく、さっきの様に手にしたゴーレムの頭部からこちらの名前を引き出したのだろう。

「俺の名は人形使い。騎士団直属第3楽団の仮面ライダーだ。人形を操ることなら誰にも負けない。」
「なに………言ってやがる…………」

いぶかしむも、相手が虚言を言っているとはどうしても思えない。

「ま、知らなかったら親元の魔女殿にでも聞いてみな。何か知ってるかもな。」
「………!おい、待て!!」

話すだけ話し、帰ろうとする人形使い。その態度に腹を立て、今一度襲いかからんとする。

「やめとけ、今日はここまでだ。お互いにな?」
「!!?」

突然、ラフエイアの目の前に漆黒の集団が纏わり付いてくる。それはカラスであった。
大量のカラスはラフエイアの進行を阻止せんと威嚇し続ける。

「邪魔なんだよ!!」

左右の拳を交互に振るっていき、カラスを打ち落としていく。
全てを払いのけた後、すでにそこには誰もいなかった。

「人形使い……騎士団………厄介なことになってきたな…………」


誰に聞かせるわけでもなく、独りごちるラフエイア。それは、これから先の戦いの熾烈さを予感しているようでもあった。



第弐章 エピローグ エウリュディケ暗躍編 (ユルカ様作者)







時刻は既に午前零時を回っていた。

小高い丘の上で、対峙する二人。

エウリュディケとシグマ(暴走形態)だ。


『シグマ。君がそんな姿になったのを望む者などいないんだよ。』

「ぐぅぅぅ…!」


獣のように睨むシグマ暴走形態。だが、一向に怯みもせず、余裕の表情で話しかけるエウリュディケ。


『もちろん、この僕もね。僕の目的のためには…君は元に戻らなければならない。』

「ぐぅぅぅ…!」


キィッ!

エウリュディケの後ろで、車…ロールスロイスが止まる。

出てきたのは、木場夕菜、北崎沙耶、草加雅菜、そしてキールだ。


「あなたが、エウリュディケですね…!」

『早かったねぇ…。シグマを元に戻せるのは君達しかいないと思ってさ。』

「どういう意味ですか…!?」

「アレは…!?」


雅菜が異常な姿をした京に気付く。


『アレが今のシグマだ。全てを抹殺しようとする、獣となってしまったのさ。』

「え〜!? 京ちゃんがあんなになっちゃったら、可愛がれないじゃない…!」

「そんなことはともかく。どういうことですか…!」


北崎を制して、夕菜が聞く。


『「無限」の力の一部を使ってしまったのさ。「孤独になりたくないから力が欲しい」なんて、愚かな事だよ。』

「『無限』の力…!?」

『「無限」の力は思いを形にする、大いなる力だよ。それゆえにコントロールがうまくいかないと、あんな姿になる。』

「あなた…どこまで京のことを知っているの?」


今度はキールが聞く。


『僕がこの世で解らないことは、これからの歴史に刻まれることだけだよ。』

「全部知っていると…!?」

『そんなことよりも。シグマを元に戻せるのは君達だけなんだけどね…。どうにかしないのかい?』

「そ、そんな無責任な!!」

「京ちゃんは私が説得して可愛がるの!!」

「北崎の言うことはともかく、説得できるのか!?」


全員が口々に言う中、一人だけ動いた人物がいた。

キールだ。


「京は私が育てた子です。私があの子を元に戻します。」

「で、出来るのですか…!?」

「やってみせますよ。」


キールはベルトを装着すると、台形を2つ、縦に組み合わせたような物体を手に持った。


「それは…フォトンブラッドカートリッジ!!」

「あの子を止めるには、これしかありません! 変身!!」


フォトンブラッドカートリッジをベルトに装填し、ファイティングポーズをとるキール。

その体を青色の光が包み、次の瞬間にキールは仮面ライダーレインへと、変身を完了していた。


「ぐぅぅぅ!!」


それを見て、動いたシグマ。

引っ掻こうと、レインに接近する。


「…京…!」

「ぐぅぅぅ!!」


攻撃を連続して繰り出すシグマ。

だが、避けずに受け続けるレイン。


「何をしているんですか!?」

「そろそろね…!」


あまりにも激しい攻撃に、レインは血を流していた。

そして突然、シグマに抱きついたのである!


「あ〜! ずる〜い!!」

「あなたはそんなことしか言えないんですか!!」


北崎のことは放っといて、その行為によりシグマに変化があらわれた。


「ぅ…?!」

「京…孤独を恐れないで。孤独を恐れたら、大事な物を全て失ってしまう。」

「ぅぅ…。」

「それがあなたの望んだ事なの!? 違うでしょ!! 大事な物を全て守るのがあなたの願いなんでしょ!」

「ぅ…せ…せ、せん…せい…。」

「…京!?」


突如、京が元の姿に戻る。

それを見て、キール(レイン)も変身を解除する。


『さすがだねぇ…。これで面白くなってきたよ…。』

「こいつっ!! 人を何だと思って…!!」


雅菜はエウリュディケを殴ろうとしたが、あっという間に消えてしまう。


『僕は負けないよ…。君達もいつか…僕達の前に敗れ去るんだよ…。』


そういう声が響いた後、辺りは「シ〜ン…」と静かになった。


「京。大丈夫?」

「先生…。私…。」


泣きそうになる京。だが、そんな京に対し、キールは厳しい行動をとった。

パァン!!

京の頬を平手で叩いたのである。


「あ…。」

「叩いてごめんなさいね。でもこれだけは覚えておいて。二度とこんなことをさせないで。お願いだから…。」

「先生…。私…、もっと強くなります…。ライダーの強さも…心の強さも…。」

「戦いは激しくなるわ。明日から、特訓するんでしょ?」

「はい!」


決意を新たにする京。だが…。


「ところで、京ちゃん。その格好のままで可愛がっていい?」

「え…ゎ、うわぁぁぁっ!?(////」


京の格好は…スクール水着のままだった…。



そんな面々とは裏腹に、エウリュディケは…会議室のようなと言うかそういう部屋にいました。。

従者であるソフォクレス、エウリピデス、アイスキュロスも一緒だ。


『じゃ、報告を聞かせてもらおうかな…。エウリピデスから。』

「はい、ゼベイルたんに止めを刺そうとしたのですが、逃げられまして…。ただそれにより、また別の組織が浮かび上がりました。」

『へぇ…。それで、その陣営はどんな奴らなんだい?』

「正確な名前は不明ですが、ウィッチ・ビアンコという名の魔女が最高権力者であると思われます。」

『ウィッチ・ビアンコ…ねぇ…。魔女とはシャレてるじゃないか…。』

「冗談ではなく本当なんですけど…。」


ちょっとふくれるエウリピデスに対し、エウリュディケは涼しい顔。


『分かっているさ。それで? ライダーは何人いるんだい?』

「私が確認したのは3人ですが…ひょっとしたら、もっと多いかもしれませんね。」

『それじゃ、そのことに関してはもう少し調査を進めておいてくれ。次はソフォクレス。』


続いて名指しする、エウリュディケ。


「はい。主がシグマを連れ出した場所にいた組織の正体ですが、私が接触したクロノスもいました。」

『ということは、クロノスやシグマを攫ったジンとか言う奴も同じ陣営だと思うべきなんだね…。』

「『騎士団』と言うそうです。世界の秩序を守るための組織だとか。」

『…なのに、何で僕達は無視しているんだろうね…?』

「それは…分かりかねますね…。」

『他には? あの、セイバーとかファントムとか言う奴は?』


話を変えるエウリュディケ。


「…ファントムの事はともかく…セイバーのほうには一つ問題が…。」

『なんだい? 言ってみなよ。』

「彼の製作者はドクターセルファです…。」

『何…!? セルファだと…!?』

「間違いありません。」

『ソフォクレス。任務変更だ。セイバーを最優先で始末しろ。』


突然の任務変更にソフォクレスは妖しく笑う。


「お任せを。」

『アイスキュロス。報告は?』

「ガブリエルに対する全作業完了しました。いつでもいけます。」

『じゃ、作戦開始と行こうか。名付けて…「シグマの能力を覚醒させちゃうぞ作戦」。』

「「「(そのまんま…。)」」」


果たして…「シグマの能力を覚醒させちゃうぞ作戦」とは…!?


第参章に続く…
オリジナルライダー・リレー企画
http://yuruka0415.ameblo.jp/
2006年12月14日(木) 09時35分40秒 公開
■この作品の著作権はオリジナルライダー・リレー企画さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
相当プレッシャーかけられてるのでUPしました。(ぉぃ)

ところでこのリレー小説では版権ライダーズ9人の設定が一部違うんですよね。

ファイズィー:出番が遅い(ぇ)
カイズィー:列達の同級生
デルティー:いつも木場についている(何故)
サイガ:始穂=アンデッドであることを知っている
オーガ:移動は主にロールスロイス
ブレイド:レンナの親友
ギャレン:保健室のお…お姉さん
カリス:アンデッドではあるが、ジョーカーの力はすでに押さえ込まれている
レンゲル:風の声が聞こえるようになっている
(※9人はそれぞれの正体をすでに知っている。)

次も早めの内にアップしますねー。

この作品の感想をお寄せください。
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