仮面ライダーリュミエール VS 仮面ライダーGEIST 〜全てを護りし閃光と全てを破壊せし亡霊〜 第3話  災いを生み出す悪魔 


注意!

この作品は、リュミエール本編を読みつつ後日談風に作者が勝手に考えて書いた作品です。
その為、作者の勝手な憶測だけで本編後を、書かれている部分が多々ございますが、
その辺りはご勘弁ください。



「ただいま・・・・藤子。」

裕也は、二年半前と変わらない笑みを、藤子に見せながら。

「裕也・・・ゆう・・・や・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

藤子は、停止した思考が、裕也に優しい笑みによって、急速に動き出し
その2年半もの前に、失ったはずのその裕也の笑みに、歓喜あまり泣き崩れる。

「・・・今まで・・・心配かけてごめん。」

裕也は、そんな籐子を、優しく抱きしめて、藤子の頭を自分の胸に当てた。





   仮面ライダーリュミエール VS 仮面ライダーGEIST 
        〜全てを護りし閃光と全てを破壊せし亡霊〜


第3話  災いを生み出す悪魔


「・・・募る話は、いっぱいあるけど・・・・けど、生きているなら、どうして今まで連絡をくれなかったの?」 

藤子は、目をまだ充血させたままだが、どうにか落ち着きを取り戻した。

「ごめん・・・・俺も会いたかったんだけど、ちょっと、出来なかったんだ。」

裕也はすまなそうな顔をした。

「・・・でもいいの。こうして、また会うことが出来たんだから・・・それだけでも
・・・私はうれしいから・・・もう絶対どこにも行かないでね!」

藤子は、また瞳から大粒の涙を流しながら、裕也に縋るように泣いた。

「うん・・・わかっているよ。
これからは、ずっと一緒にいような。」

裕也はそう言うと、また優しく藤子の髪を優しく撫でた。

「うんっ!!!」

藤子はその幸せを噛みしめるように、強く頷いた。

「・・・・生憎だが、そうはさせない。」

「えっ!?」

藤子は、その幸せの時間から、突如引き戻した冷たい声の主の方に、振り向いて、その姿を見つめた。
そこには、身の丈を越える大剣を背に抱え、背に八芒星が描かれた紅蓮の外套を羽織った
男が、冷めた瞳と共に大型自動拳銃を、裕也と籐子方に向けていた。

「・・・あなたなんかに、・・・夢にまで待ち望んだ・・・・今を、奪わせはしない!!」

藤子は、その冷酷な瞳に怯みながらも、裕也の前にでて両手を広げ、力強く叫びながら、その男をにらみ返した。

「・・・・藤子・・・こいつだよ。・・・俺のことを殺そうとねらっているんだ・・・。」

裕也はそんな行動をする藤子を見ながら、男を怯えたように見つめる。

「・・・・どけ。」
「きゃっ!」

男は、そう言うと、複雑そうな思いを瞳に宿して、藤子払い飛ばし大型自動拳銃のトリガーに手をかける。

「わぁぁぁ!!!」

裕也は、手で頭を覆いうずくまった。

「あんた、なに、してんのよっ!!!!」

「・・・・柚子。」

突如に響いた威勢のいい声に、その男は、首を傾けた。
そして、藤子は、その親友の声を聞くと安堵のため息を吐いた。

「・・・よく事情はわからないけど、裕也は藤子を連れて急いで逃げなさい!!!」

柚子は、そのうずくまった裕也に激をとばした。

「わっ、わかった!行くよ!藤子。」

裕也は、柚子に激を飛ばされると、直ぐさま立ち上がり、藤子の手を引いた。

「柚子・・・気をつけてね。」

藤子は、突き飛ばされた時に、唇を切ったのか唇から少し血を流しながらも、
裕也に手を引かれながら、幼なじみであり親友の柚子に後ろ髪を掴まれた様な様子で
その場を後にした。

「・・・・待て。」

誠は、その二人の様子に追いかけようとする。

「いくらあんたでも・・・いかせない。」

柚子は、追いかけようとする誠に方に、手で制する。

そして、 誠に「裏切られた」ような悲しみと怒りを宿した瞳で睨みつけながら怒鳴りつけて、柚子は、両手を腹部の前に持って行くと、中央に黒い宝石の安置されたベルトを出現させる。


「変身!!!」

滾らせた血を力にするように発せられた大音声は、世界を一変させる。
金髪の少女の周りの地面がいきなり隆起し、小さな山々を生みだしていく。
その山脈に覆われ、柚子の姿が見えなくなる。
しかし、一瞬とせぬ内に岩肌に亀裂が入った。
岩山を砕いて現れた、銀の重装甲を纏った戦士。その片手には昆虫の王者を模した雄々しい斧。
バックルの黒い宝石は、まさに軍神が如く崇め奉りたくなるほどの威光を放つ。

「この先を進みたくば、力によって敵を滅討せし戦乙女、仮面ライダーフォルスを倒すことねっ!!!」

今まで以上に、鬼気迫る声で、柚子は、誠は怒鳴りつけた。

「・・・・どうしても、先には進ませないつもりか。」

誠は、深いため息を吐きながら、手に持っていた大型自動拳銃を懐に戻して柚子を睨みつけた。

「・・・・そうよ。
あの子が、夢にまで見た瞬間を、あんたなんかに壊させないっ!!!!!」

柚子は裕也と藤子が逃げていく様を、一瞥してから、友を傷つけようとする目の前にいる「敵」を鬼神が如く眼光で、睨みつける。

「・・・・例え、悪夢であろうが、善夢であろうが・・・・人は、そこから目覚めねばならないものだ。」

誠は、その柚子の決意に満ちた瞳を射貫くと複雑な表情を見せる。
そして、誠は一呼吸、深く息を吸い込むと、

「・・・・それでも、目覚めさせることを止めるのならば、・・・・お前でも容赦はしない。」

初めてあったときよりも纏っている雰囲気が、刺々しさを越えて禍々しさを放っており、それは、冷酷とまでいえる冷めた瞳は、
まるで最前線の兵士の様に、殺意を込めた極寒ともいえる冷めた瞳を柚子に向けて放つ。

「・・・・っ!?」

柚子は、一瞬、全身を何か鋭い物で貫かれた錯覚を起こした。
けれども、誠は、柚子との距離を詰めたわけでも、何か動作をしたわけではない。
そこで、柚子は気づく。
今、自分の体を貫いた物の正体を、
それは、誠から向けられた今まで生きた中で感じたこともないほどの純粋な・・・・殺意
大抵の物ならばその殺気を受けたものは、それだけで戦意を削がれて、たつことすら出来ないだろう。
楠木町における最初で最強のライダー・フォルスの柚子でさえ、足が震え初めて、心が恐怖を覚えて戦うことを躊躇する。
こんな瞳で見入られたら、昨日のクリーチャー達も、怯えるのも分かる気がした。

それでも、柚子は、その目の前の強大な「敵」に対して、逃げ出すことは、
彼女の「信念」において許しはしなかった。

「ハァァァァァッ!!!!」

柚子は、震える足と怯える心を叱咤するが如く威勢良い声をやや震えていたが、叫びあげて己の持つ得物で、目の前の「敵」に斬りかかる。

「・・・・その震えた腕で・・・・何を望み・・・・何を得るのだ?」

誠は、その風すら切り裂きそうな豪腕を、外套のポケットに両手を突っ込みながらに紙一重の所で身を傾けて避け、がら空きになった柚子の腹部に、ただ間合いを離す程度喧嘩キックを蹴り込んだ。

「くっ!!!!」

されど、その前蹴りの衝撃は、いかに戦車砲をも軽く凌ぐ「仮面ライダーフォルス」の
装甲をもってしても、腹部の装甲を大きく歪ませて、足を後ろに引きづる形に、滑り踵辺りから火花を飛ばす。

「・・・やっぱり、一筋縄では行かないわね。」

柚子は、目の前の「敵」の強さを己の本気のぶつけて改めて実感する。
自分が必死だというのに、目の前の「敵」は、一向にそのポーカーフェイスを崩さない。
柚子は、その状況を打破するために、前回のような阻止されないように、この離れた間合いからヘラクレスアックスを地面に叩き込んだ。

「アースシェイク!!!!」

その一撃で、常人ならば、たつことも叶わない局部的な地震を引き起こし、
大地を隆起させたのだが、

「嘘っ!?」

その柚子の必殺技を、地面に打ちつける瞬間に、誠は、隆起する高さよりも高く飛び上がっていた。

「・・・けど、空中じゃあ、これは避けられないでしょ!!!!」

柚子は、その予想外な行動から驚いたがすぐに気持ちを切り替えて、目の前を無防備に跳ぶ、誠に向かって、己の得物を投げつけた。

「・・・・ちっ」

誠は、その跳んできた斧を、避けることが叶わないために、空中の不安定な姿勢から蹴り飛ばしながら、その衝撃に宙返りしながら着地する。

「どりゃぁぁぁ!!!」

柚子は、返ってきた片手斧を手にすると、その着地の瞬間を加速を込めたショルダータックルを、誠に叩き込む。
すると、誠は、その衝撃に吹き飛ばされると思いきや、やや後ろに後退しよろめいただけだった。
そして、柚子は、体当たりしたときにある異変に気づいた。
それは・・・・

「重すぎる・・・あんたどんだけの荷物を積んでいるのよ。」

簡単な物理の問題だった幾ら速度を込めて柚子が体当たりをしたとしても、
幾ら「仮面ライダー」になって強化されているにしても、たかが50kgほどの柚子が、突っ込んだとしても、目の前の物の重さが、重すぎれば些か意味がないのだ。

「・・・・ざっと、10tと言った所か。」

誠は、相変わらずの仏頂面でしれっととてつもないことをいった。

「・・・・・はぁ!?」

その馬鹿げた数字を聞いて、柚子は、驚くを通り越して呆れていた。
本当か嘘かは分からないところではあるが、柚子が少しの間あっただけでも分かることは、
目の前のこの男には、嘘をつくことはしない奴だということだ。
つまり、今までの機敏な動作は、そのデットウェイトを込みで行われているのだから
そのおもりを捨てて行動することを考えると末恐ろしい。

「あんた、そんなんでよく地面にめり込まないわね。」

柚子は、片手斧を構えながら間合いをあける。

「・・・・建物を入る際は、置いていくし・・・・普段、歩いている際は地面に体重などをかけたことなど無い。」

誠は、柚子の問いに、さらっと末恐ろしい答えをさらに返した。

「・・・そんな化け物と戦おうとしているのか・・・・私は」

柚子は、この以上過ぎる男の身体能力と言う奴に、心底驚き異常に、呆れていた。

「・・・・怖じ気付いたか?・・・・そうしてくれれば、こちらも楽なのだが?」

誠は、柚子を一瞥しながらいった。

「・・・冗談。・・・俄然やる気が出てきたわよ!」

柚子は、逆境という物に燃える体質のせいなのか自分に気合いを入れる様に叫ぶ。

「・・・・そうか。・・・・ならば、少し本気を出そう。」

誠は、そう言うと自分の背に背負っている身の丈を越える大剣を、地面に叩きつけて
柚子の「アースシェイク」のような轟音と振動を起こしながら、地面に深々と突き刺す。
突き刺してなおも、その剣は、地面にめりめりっと音をさせながら、
突き刺さり続けていた。

「なっ!?」

誠が嘘を言う人間ではないことは、分かったが、実際に、そんな物を目の当たりにすれば
流石の柚子も驚いた声を上げる。

「がふっ!!!」

柚子は腹部に衝撃を覚え、身もだえるのにそれから一瞬の出来事だった。
そして、柚子の仮面ライダーとしての超感覚を持ってしても気づかなかったのだ。

「・・・・実力の差は明確。・・・・それでも、まだやるのか?」

誠は、柚子の腹部に膝を曲げた状態で足を当てて、そのまま膝を伸ばして、さらに蹴り飛ばす。

「くふっ!!!
・・・冗談。「相手が自分より強い」からと言って逃げたりしたら・・そんな事したら、
そんな軟弱な事をしたら、私が私じゃなくなるっ!!!!」

柚子は、飴細工のように、グニャグニャに曲がった腹部の装甲に、手を当てて
よろよろと立ち上がりながらも、瞳はまだ死んでおらず、ぼろぼろの体でも尚凛とした瞳で、誠の事を射貫いた。

「・・・・なるほど。よい目をしている・・・・面倒な相手だ。」

誠は、言葉とは裏腹に、瞳を心底うれしそうな表情をみせた。













「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・ここまでくれば大丈夫だよね。」

藤子は、肩で息をしながら、手を膝においた。

「うん。・・・もう、大丈夫だよ。
・・・・あれ?藤子・・・・血が出てるよ・・・・・レロッ。」

「ひゃっ!?」

藤子は先ほど誠に突き飛ばされた時であろう傷が、唇辺りから流れていた血を、
裕也が舐めた。 その行動に、驚いた素振りを見せる。

「・・・おいしい。・・・食べてしまいたいくらい美味しそうだよ・・・藤子。」

裕也は、俯いた状態の為、顔の半分以上は髪に隠れて見えないが、唯一見えた口元だけは
背筋が凍り付きそうなほどの笑みを作っていた。


「・・・・えっ!?」

藤子は、その不気味な裕也の笑顔に、後ずさりする。

「・・・どうしたの?・・・そんなに、怖い顔して。」

裕也は、その不気味な笑みをしたまま、ゆっくりと藤子に近づく。

「・・・裕也・・・どうしたの・・・?」

藤子は、戸惑いの表情を見せながら、一歩一歩ずつ裕也から離れていった。

「ソウソウ、都合ノ良コトナドアルハズナイダロウ。」

藤子の後ろから忘れたくとも忘れられない脳裏に、こびりついた声が響く。

「・・えっ!?・・・」

藤子はその声を聞くと「ばっ」と、後ろに振り返りそこにいたあり得ないもの・・・・

「コノ瞬間ヲ恋イ焦ガレテイタゾ。藤子・・・」

かつて、半年前に籐子自らの手で終止符を打った琥珀色のクリーチャーがそこにいた。

「邪魔しないでよ。・・良いトコだったのに・・兄さん・・・」

そう言うと、くくくっ」と笑いながら、裕也だった物の体を変異させて
黒曜色の蟷螂のようなクリーチャーに変異させる。
そして、そのクリーチャーは、急速的な速度で藤子に接近する。

「きゃっ!・・・・・・あうぅ・・・・」

藤子は、いきなり起きた出来事に対処出来ずに、困惑したのだが
その黒曜色のクリーチャーに目と鼻の先まで顔を近づけられて、クリーチャーの口から吹きかけられたどす黒い息を吐きかけられた籐子は、意識を失った。

「・・・ココマデ、私ヲ熱サセタノハ、オ前ガ初メテダ。・・・藤子・・・」

琥珀色のクリーチャーは、崩れ落ちそうな藤子を後ろから抱きかかえて、髪の臭いをかぐような素振りを見せる。

「・・・ねえねえ、そんなに美味しそうだから、腕の一本ぐらい味見しても良いよね。」

黒曜色のクリーチャーは、裕也の声で、無邪気の子供の様に言いながら、
その細長い舌で藤子の顔を舐めた。

「ダメダ。彼女ニハ、偉大ナル王ノ巫女トシテ、捧ゲルノダカラナ。」

琥珀色のクリーチャーは、そういいながら黒曜のクリーチャーから藤子を遠ざける。

「い〜じゃん・・・けち。」

黒曜のクリーチャーは、拗ねた子供のような声を出した。

「私ダッテ、我慢シテイルノダゾ。我慢シロ。」

琥珀色のクリーチャーは、そう言って姿を消した。

「は〜い。分かったよ。」

黒曜のクリーチャーは、納得していないような口振りでその後を追うように消える。










「てりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

柚子は、もう両手では数える事の出来ない回数ほどの斬撃を繰り返しているが・・・

「・・・・悪くない攻撃だ」

その攻撃は、そこに届く事無く、振り落とされる前に、片手斧の斧頭を蹴り飛ばし
方向を変えて軽くその攻撃をいなした。
そして、その反動を利用して、後ろに宙返りしながら柚子との距離をあける。

「・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ。
・・・それで手をぬいているつもり?・・・もっと本気をだしなさいよ!」

柚子は、肩で息をしながら、目の前の敵を睨みつけながら挑発する。
口では、まだ余裕があるように、言葉を紡ぐが、
実際の所、柚子にはそのような余裕など微塵もないのだ。
既に、装甲のほとんどが砕けた為に、ほとんどの手足の肌が露出され
そこには、既に、楠木町における最初で最強のライダー・フォルスの姿はなく
ただ漆黒のベルトだけが、その面影を残していた。

「・・・・十分、本気を出しているさ」

その言葉に誠は、ただ柚子を見つめる。
その姿は、柚子とは対象的でその赤い外套は、未だに優雅に舞いながら綻び一つありはしない。


「嘘つきなさい。ご自慢の剣も使わなければ、その体につけられた銃を一回も使って無いじゃない!!」

柚子は、肩で息をしながら叫んだ。
幾ら劣勢に立たされている流石の柚子でも、いい加減に気づいた事があった
それは、誠は一度たりとも、素手以外での攻撃を行っていないのだ。

「・・・・抜いている暇がなかった。」

誠は、さらっとそう言った。


「どこまで、私をコケにしてくれるのよ!あんたは!!!」

柚子は、「がんっ」と誠を睨みつけながら叫ぶ。
誠の言っている言葉が、柚子でも嘘であることくらい気づいている。
ましてや、素手でも、止めをさせるチャンスは幾らでもあった。
柚子は、そのたびに、冷や汗を流したが、そのたびにあえて見逃す様な素振りを、見せ続けていた。
そして何よりも、昨日のクリーチャー達と戦った時のような獣のような目をしていないのだ。



「それでは、データの収集に成らないではないか。」

「えっ」

柚子は、突如聞こえた声の方向に、視線を傾け、今までそんな近くに来ていたことに、気づかなかった事に驚いた様な素振りを見せる。

「・・・・今回の親玉の登場か。」

柚子とは、対象的に、その突然の訪問者に対して何も驚いた素振りを見せず
冷静な視線を、その訪問者に向ける。

「そうだと言ったら・・・・どうします?強慾のアモン。」

司祭のような格好をした男が、誠の視線を軽く受け流すと、
クスリと笑いながら、誠を見た。

「・・・・早急に、倒すまでだ。」

誠は、懐から赤い呪文のような紋章が刻まれた大型自動拳銃を取り出し、
間髪入れず司祭の男に、トリガーを連続的に引いた。

「気が早い人だ。・・・・けれど、その程度では、私は倒せません。」

司祭の男は、軽く手を前にかざしただけで、弾が静止して
地面に、「カラン、カラン」っと金属音だけをさせる。

「・・・えっ!?」

柚子は、そのわけの分からない現在の状態に戸惑いの声を上げた。
「・・・・ベルトの資格者か。・・・・面倒だな。」

誠は、驚きもせずに、男を睨みつけもう片方の手をナイフのホルダーに手をかける。

「おやおや、そうそういきみ立たなくても貴方の相手は、用意しています。」

司祭の男は、そう言うと、懐から取り出した銃のトリガーを引いた。

「・・・・くっ・・・・・うっ」

その銃口は、誠ではなく柚子へと解き放たれてた。
その衝撃に、がくんと膝を落としてその場にうずくまった。

「・・・・何のつもりだ」

誠は、いつも道理の仏頂面を、司祭の男に向ける。

「おやおや、そんな怖い顔で、私を見ないでください。
貴方に戦いやすくしただけですよ?」

司祭の男は、くすくすと笑いながら、誠を見つめる。

「・・・・・うっ・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・」

柚子は、うずくまりながら荒い息をさせながら、よろよろと背中を丸めて立ち上がる。
誠によって傷つけられた箇所が、みるみると驚異的な早さで修復されていった。
しかし、柚子の瞳は、虚ろで生気を感じないが、それは、人の目ではなく
血に飢えた獣の目に変わり、うなり声を上げていた。
そして、怪しく腰のベルトが、黒く輝いていた。

「・・・・何をした?」

誠は、柚子の様子の変化に、目を傾けて、直ぐさま男の方に視線をむき直した。

「・・おや?お気に召しませんでしたか?
彼女達、仮面ライダーは、今まで貴方が倒したクリーチャーと同じ系列の力らしいです。
ですから、私が作り出した「因子活性剤」を打ち込んでその能力を活性化させて強くして上げたのですから、褒められてこそされ、咎められることはないはずです。」

司祭の男は、柚子の様子を一瞥して、一呼吸あけて、また言葉を紡いだ。

「正し、活性化した影響で、精神並びに肉体まで「クリーチャー化」してしまうようですね・・・・これは、改良の価値がありそうだ。・・・・貴方もそう思うでしょ?
強慾のアモン。」

男は、さぞ愉快そうに、誠に対して笑った。

「・・・・貴様。」

誠は、いつもながらの無表情でも、その瞳には、確かな怒りが宿していた。

「はっはっはっ!・・・・「強慾のアモン」の悪魔風情が、人のように怒りましたか?
それに、怒る所を間違えているぞ?・・・・この悪魔め。
全く可哀想な子だ。貴様がこの地にこなければ、彼女はそうならなかったろうに。」

司祭の男は、哀れんだ目で柚子を見た。

「うがぁぁぁ〜〜!!!!」

柚子は、その姿を、甲殻虫のようなごてごてした外骨格を纏いながら、
人成らざる獣の咆吼をあげていた。

「貴様ら「リベリオン」(神に仇なす者達)は、そうやって我らの計画を邪魔して、
「正義の味方」気取りのつもりかも知れないが、
それで、どれだけの犠牲者が出てると思っているのだ?
・・・・それに、幾ら貴様らが行動を起こしても誰も賛美を与えられる所か
下げずまれ罵られると言うのに。」
 
司祭の男は、絶対的優位に立ち、見下した様に誠を見た。

「・・・・正義の味方を気取る気はない。・・・・それがお前達の下らないことを潰すことが・・・・俺が、・・・・唯一果たせる「償い」だと信じているからだ。」

誠は、深く目を閉じて、確信を持った決意の帯びた言葉と共に、
「かっ」と目を開き、手をかけていたナイフを引き抜いて
司祭の男にそのナイフを突き立てた。

「・・・ふん。・・・悪魔風情が、我ら推敲の行いを「くだらない」と卑下するのか!
・・・まあいい。これでも私も忙しいのでねここで失礼しよう。」

司祭の男は、誠の一撃をもっていた聖書のようなもので受け止めてた。

「・・・・逃がすと思っているのか?」

誠は、力を込めてさらに押し込もうとする。

「できるさ。
今、貴様は、私をかまっている暇などなかろう?」

司祭の男は、余裕の笑みを見せる。

「うぅっ・・・うがぁぁぁ!!!」

柚子は、咆吼をあげて、誠と司祭の間を鉤爪のような腕で切り込み、割って入ってきた。
その瞬間に、司祭の男と誠は、距離を開けて難なくその攻撃を避ける。

「では、ここで失礼させてもらおう。
おっと、そうだそうだ・・・「償い」とやらをすぐ終えさせたければ、今この場で貴様が
彼女に殺されれば何も問題はなく果たせるさ。」

司祭の男は、愉快そうに高笑いをしながら、その場から消えた。

「・・・・このままでは・・・・っ!」

消えた司祭の男には、目もくれずに、誠は、目の前にいる柚子に視線を向ける。

「うぅぅぅぅ」

柚子は、うなり声を上げながら、誠を睨みつけていた。
もうそこには、人間であったことを忘れた獣がそこにいた。

「・・・・どうすればいい。」

誠は、珍しく苦虫を噛みつぶしたような顔をさせながら、柚子をみる。
このまま、決定打を打たずにずるずると、
戦い続けることは、いつか第三者を巻き込むかも知れない。
そのことなど、誠は理解していたし、
何よりも、司祭が柚子にもたらした「獣化」と呼べるその現象は、刻一刻と
柚子を、クリーチャーとして促進させていた。
そして、誠は、柚子のその獣のような手当たり次第腕を振り回す攻撃をかわしながら
思考を巡らすが、常に彼の頭の中で返ってくるのは・・・・己が最も後悔する答えが導き出されて・・・・
地面に埋没している大検の柄を握る・・・が、

「・・・・だめだ。」

誠は、そう言って首を横に振り、手にかけていた大検から手を離した。
そして、迫り来る柚子の鉤爪を目を閉じて受け入れようとする。



「・・・・な〜に、しけた顔を、しているのよ。」

その鋭い鉤爪が振り落とされる事はなく、穏やかな柚子の声が、誠の体を貫いた。

「・・・・大丈夫なのか。」

誠は、目を開き柚子を見つめると、
片腕を抱いて苦しそうな表情をした柚子がいた。

「・・・あんな豆鉄砲如きに負ける柚子様じゃないわよ。
・・・・って、言いたいところだけど、正直、長くは持ちそうに無いわね。
今まで普通に使っていた「仮面ライダーの力」に飲み込まれるとは思ってなかったわ。
だから・・・・ひとつ、あんたに最後にお願いがあるの。」

柚子は、無理矢理にでも、誠を心配させないようにという
気遣いの表れか笑みを作った。

「・・・・最後というな・・・・されど、聞くだけ聞こう。」

誠は、無表情に、こくりと頷きながら答えた。

「そっ、よかった。
・・・・じゃあ、お願い・・・・私が、まだ・・・人である内に・・・あんたの手で、私を楽にしてくれるかな・・・。」

柚子は、震えながらけれど、はっきりとした口調で誠に告げる。

「・・・・聞けないな。・・・・まだ諦めるのは速すぎる。」

誠は、相変わらずの顔で淡々と述べる。

「あははっ!」

柚子は、無理矢理作った笑みではなく、心の底から笑った顔になる。

「・・・・なにがおかしい?」

誠は、その笑っている柚子の行動に、不思議そうにみている。

「だって、あんたにそんな言葉を言われるなんて思ってなかったんだもの。
・・・・けどね。自分の体の事だもん。
「もう長く持たないし、直らないんだな〜」ってことは一番自分が分かっているつもり、
心が完全に支配されて、誰かを傷つける完全なクリーチャーになるなんてまっぴらごめんなんだから・・・・・
もう一度お願いするわ、私が私である内に・・・「誠」・・・「私を殺してください」」

柚子は、凛とした表情で誠を見つめて、誇らしく言った。

「・・・・その決意しかと受け取った。」

誠は、柚子の言葉を一字一句刻み込むかのように、目を瞑りながら聞き入れて
こくりと頷き、大剣を手に取った。

「・・・・よかった。最後に、「誠」あんたの名前をちゃんと呼べて・・・・
って、どうしたの!?その手!?」

柚子は、安堵のような表情を見せたが、誠の両手がべっとりと血で赤く染まっていることに気づいた。
無論のこと、誠が今の今まで、手に怪我などしていなかったはずだと柚子でも気づいている。

「・・・・対した事はない。」

誠は、何事も無かったような素振りを見せて、柚子に心配させないように、
誠なりに気遣っていた。

「・・・・やっぱり、「誠」・・・・あんたに会えてよかったよ」

柚子は、最後にその冷血漢に見えるが、ただ感情表現が苦手なだけで優しい彼を見つめながら目を閉じた。

「・・・・「柚子」、俺も、お前に会えてよかった。」

誠は、その柚子の姿を焼き付けるように見つめながら、
まるで死神の鎌のような大剣で、柚子の体を貫いた・・・・。





禍々しい外骨格は全て剥がれ落ち、誠の剣で貫かれた
柚子は、人形のように動かなくなっていた。







「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

その成美の悲鳴が、木霊するのに、そう時間を要さなかった。
深優
2007年08月19日(日) 05時35分26秒 公開
■この作品の著作権は深優さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
・・・・またもや、最初に、イシス様・・・・並びに、仮面ライダーリュミエールファンの皆様どうも申し訳ございません〜
〜〜〜〜!!!!m(_ _)m

仕事の関係上20日も書けませんでした・・
これからも、ちょっと忙しくなるので
遅くなるかも知れません・・・・。


絶対・・・・次回じゃ終わりません・・・
展開的に8〜9話くらいまでいきそう勢いです・・・・有言不実行ですよね・・・。

今回は、佐々木裕也君は、蟷螂のクリーチャーの弟でした。
はい。わざわざ、裕也君を使わなくてもよかったかも知れません。
ばらすなら後編の方がよかったのかも知れませんが・・・・正直、今後の展開の都合上さっさと進めたかったので、すぐに、ばらさせて頂きました。


後、後半は、フォルスVS誠のバトルです。
ちょっと、誠が強すぎる感がありましたが
・・ここは、作者の腕の無さでございます。
そして、ここが一番謝罪しなければならないところですね。
その戦いの結末ですね・・・。
いくら、神父が介入したからってあれは・・・・いい加減怒られそうです・・・
本当にごめんなさい。 m(_ _)m
本編で、クリーチャーの力とライダーの力は
元々同じと言うことで・・・・「そのクリーチャーの因子が活性化したら、クリーチャーになるんじゃないか?」という安易な考えから始まったんです。深く考えてませんでした

最後に、この小説は、誠×柚子小説です。
ここまで来たら、そうと言えざるおえなくなっちゃいましたよね・・・・原作の柚子生徒会長ファンの方々・・・イシス様・・・ごめんなさい  m(_ _)m





イシス様

感想ありがとうございました!!!
そして、リュミエール本編フィナーレ・・・どうもお疲れ様でした!!!



<<<深優さんの書く『リュミエール』は当然ながら、私のものとは違うだけに、
「こういうのもあったのか!」と斬新な驚きがあります。

私は、内心いつか怒られるんじゃないかと
冷や冷やしていますよ。

<<<特に、柚子ちゃんに絡む藤子ちゃんとか。彼女は大人しいイメージを前面に
押し出して書いてきたので、ちょっと攻め手な彼女というのも・・・・イイ!!w


私も、原作の二人をみていると、こういうのもありかな?ってついよんでいるとき、思ったものを思わず形にしました。


>>>あかねちゃんは・・・・何やら大変なことがあったみたいで・・・(汗
下半身麻痺って、流石にこれは予想してませんでした。ネタバレになるので
こちらの本編の詳細は伝えられませんが、深優さんなりの『リュミエール』として
しっかり機能していて、とても参考になりますし、面白いですw
ただ、あかねちゃんの辺りの件が「二年前」になっていて、「半年後」を
テーマとして書いてある今作においては矛盾してしまうのではと思います。


すいませんでした!
単純にそこは、二年前と半年前を間違えて表記してしまった誤字でした。
けれども、私の中では、あかねちゃん竜の戦いで、大けがをしてしまったんじゃないか?
という憶測からこの話が始まりました。
結果的に、本編とずれが生まれましたが・・・まあ、修正可能レベルですw


<<<では、長くなりましたがここからは本編の感想を。
司祭服の男が危惧する「悪魔」とは、これは誠君なのですかな?
確かに、「アースクエイク」や「セイント・レイ」をコピーしてしまうので、
その形容は相応しいと思います。本人にも何か色々な事情がありそうですし。



今回の話で、分かりましたが、その通りです
生身でライダーと戦える誠君の能力を考えると悪魔ほど相応しいものはございませんw
彼のコピー能力に関しましては、後々
表記していきたいと思いますw

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