仮面ライダー電王たん・蝶害電/仮面ライダークロノスたん・序章 |
都内某所に位置する、何の変哲もない一軒のゲームセンター。 本日も大盛況とまでは言わないものの、まばらに人影がチラホラと見えそこそこ賑わっている。 チカチカとあっちからもこっちからも刺激的な色の光が点滅し、上は中年から下は中学生ぐらいの子供までいるようだ。 そんな中、何とも言えない声が店内に響いていた。 「えぃっ! おりゃっ!!」 うぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜ん…… その声に合わせるかのように聞こえてくるのは、俗に言うUFOキャッチャーの起動音。 ボタンを押すくせっ毛の少女の手の動きを正確に読み取り、縦方向と横方向に移動する。 やがて静止したアームはかぱっと開き、うにょにょにょにょとゆっくり下降していく。 その真下にあったのは限られた場所でしか手に入れることの叶わないアイテム、いわゆる“プライズ景品”の箱。 アームは厚紙でできてんじゃなかろうかとさえ思えるチープで赴き深い箱を、ギリギリのラインでひっかけた。 「よぉーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし、そのままそのままゆっくりゆっくりぃ……」 少女――黒野スミレのやや安堵を含んだ声につられるように、アームはこれまたうにょにょにょにょと上昇を始めた。 無事に元の高度まで上昇しきったアームは縦横同時に、隅に配置された円筒形にぽっかりと口を開けた奈落の落とし穴にブツを落とすべく移動する。 スミレは硝子越しに、それこそ張り付かんばかりに近づいてその様子を見守っていた。 なんせこの“プライズ限定クリアリュミエール人形”を手に入れるためだけに、既に野口大先生が三人も両替機の餌食になったのだ。 ここでお目当てのブツを取りこぼすなんて目も当てられないような事態だけは、絶対に何が何でも回避せねばなるまいよ。 うぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜ん…… スミレ「来て来て、こっち来て! 栄光よカムヒアァァァアアッッ!!」 ついつい情熱がたぎり、スミレは力いっぱいシャウトした。 周りの客が変な目で彼女のことを見ているのがガラスを介してわかったが、今のスミレにそんなことは眼中になかった。 目の前を移動するのは一般市場、例えばデパートだったり玩具店だったりには流通しない代物なのだ。 ここで逃せば次はない、そんな確信めいた予感が彼女にはあった。 何としてでも今日ッ!ここでッ!このリュミエール人形は頂いていくッッ!! 一般人からすればもはや怨念に近いオーラがついつい彼女の声帯を支配し、音としてこの世に現れてしまっただけだ、何もとやかく言うようなことではない。 だが悲しいかな、UFOキャッチャーというものは我々が思うよりも遥かに繊細な機械なのである。 無慈悲な機械の腕は微細なガラスの振動によりその精度を若干狂わせ、ホールディングをほんの僅かばかり緩ませる。 そしてこの機会にとっては、その緩みこそが最大の敵だった。 アームが移動する際に生じる回避不可能な衝撃がそこに加わると、 ぐらっ…… スミレ「ぇ……?」 ひゅーーー………ぽとり……! スミレ「ぁ、ぁ……くぁwせdrftgyふじこ!!?」 このようにしていとも簡単にリュミエール人形を落っことすのだ。 思わずスミレは声にならない悲鳴を上げた。 不平不満不機嫌不愉快、怒り憎しみ八つ当たり。 一挙に押し寄せるやり切れなさを、ぐっっっ!と下唇を噛みしめながらこらえる。 スミレ「うっ、うろたえるんじゃぁないッ! オタはどんな時もうろたえない……」 愛読する人間賛歌漫画からの迷ゼリフを引用し、いったん頭をKOOLダウン。 大きく深呼吸して心も落ち着かせる。 だがよほど動揺していたのか、またぶつぶつとつぶやきシローへと。 スミレ「目の前でリュミエール人形が落としてしまったって? 逆に考えるんだよスミレ、落としちゃってもいいさと考えr……いやいやそりゃダメだ。 やっぱりね、落としちゃダメだよジョー○○ー卿」 脳裏に浮かんだ某イギリス貴族のナイス笑顔を強引にかき消し、ポケットから財布を取り出した。 スミレ「はぁ、しょーがないかぁ……もっかいやろっと」 何のことはない、失敗したのならもう一度挑戦すればいいのである。 32回目が駄目だったのなら、33回目で成功すればいいのです。 ネーバーギブアップ、フロンティア精神、あぁとっても素敵な言葉です。 こんな風にダメ人間的思想でスミレは財布を開いた。 だが彼女の目論見はあっさり崩れ去る。 スミレ「なん……だと……?」 某和服の死神風に、思わずスミレは驚愕した。 財布の中を見る。 紙幣も貨幣もない。 スミレは思った、パニックとはこういうことだと。 スミレ「落ち着け落ち着け、落ち着けアタシ。 奇数を数えるんだ…… 奇数は偶数で割り切れないマヌケな数字、アタシに勇気を与えてくれる。 1、3、5、7、9、11……――――」 ぶつぶつ言いながらポケットを探る。 だが紙幣も貨幣もない。 スミレ「――31、33、35、37、39、41……」 ブツブツ言いながら、続いて反対のポケット。 紙幣も(ry スミレ「な、なんてこったい。 神は遂にアタシを見放したの……っ!?」 あぁ、何ということだろう。 もう少し、あと少し、届かない人形(お宝)。 手元に軍資金がない、極論すれば資本主義社会のせいでリュミエール人形はこんなに近くにあるのに、その実とても遠い。 ちなみにスミレは今現在『orz』状態である。 もう つかえる おかね が ない! スミレ は めのまえ が まっくら に なった! とある晴れた日、200X年01月28日の出来事だった。 仮面ライダー電王たん・蝶害電 仮面ライダークロノスたん・序章 “この身に溢れる若さと情熱と気合だけで書きなぐった構想時間60秒にして執筆期間約20日のお話です編” イマジン――異魔人とも暇人ともジョンともレノンとも呼ばれる彼、彼女らは遥か遠い未来からわざわざやって来た精神生命体たちの総称である。 その目的は基点となる2007年からさらに過去へとタイムリープし、自分たちの都合のいいようにいじくり回して未来を改変すること。 そして今日、この日にやって来たイマジンたちは各々の目的を胸に四方八方へと散開していく。 光の玉となって飛ぶ姿は、さながら心霊写真とかで有名なオーブのよう。 あっという間にイマジンたちはその姿を視認できないほどバラけてしまった。 空一面に浮かんでいた光の玉が散開した後、少し遅れて一つの玉が現れた。 無論のこと、これもイマジンである。 「くそっ、奴らはもう行ってしまったみたいだな、逃げ足の速い連中だ!! これ以上過去に飛ばれると時空改変に手も足も出ん、急がねば……」 一人ごちたイマジンもまた同じように、ふよふよふよよと飛びながら街をさまよった。 遥か上空から眼下の世界を見て回る。 もちろん観光などではない、彼女は人を探しているのだ。 探しているのは正義感の強い人間。 イマジンの誘惑に乗るような人間など論外。 「この男は違う…・…この女もダメ……」 探しているのは弱気を守る勇気のあるもの。 自らの保身ばかり考えるような人間など論外。 「これは違う……えぇいっ、数が少ない! というかもっとロクな人間はおらんのかっっ!?」 うがーーっっ!と、叫ぶ。 探しているのは「特異点」と呼ばれる、改変の干渉を受けない存在(もの)。 これが最も重要だ。 上二つの条件を満たしていても、「特異点」でなければ意味がない。 「はぁ……特異点は数が少ないとは聞いていたが、まさかこれ程とはな」 さて、彼女は一体いかなる手段で「特異点」を見つけようとしているのか、それをここで説明しておかねばなるまい。 「特異点」とはあくまでも人間の“性質”であるため、外見では判断できない。 通常のイマジンが特異点にとり憑くためには、まさに「当たって砕けろ」の精神、玉砕覚悟で調べるしかない。 故にその確率――契約を結んだ、あるいは憑依した人間が特異点である確率――は天文学的数値になること間違いない。 ところが彼女にはそんなことをしている暇はこれっぽちもないのだ。 彼女の目的は博打に任せられるような軽いものでなし、確実に「特異点」にとり憑くひつようがある。 そこで彼女は目を与えられた。 その目は「特異点」かどうかを見極める目、これを使えば問題なく目的を達成できる。 そのために人間を物色していた――――って、物色かい。 「む……?」 彼女は浮遊中に変な人だかりを見つけた。 見ればチンピラが少女に絡んでいる。 ああゆう悪党は今すぐぶん殴って裁きを受けさせてやりたいのだが、ただの球体でしかないこの状態ではそれもままならない。 誰も助けようとしないのも腹立たしかった。 嘆息しながら捜索に戻ろうとすると、彼女は幸運なことに「特異点」を見つけた。 人ごみの中、二人とは少し離れたところから歩いていくではないか。 彼女は「特異点」を観察することにした。 ★ 店員「ありがとうございましたーっ」 スミレ「はふぅ……」 スミレはどんよよ〜〜んとした雰囲気をその身にまとわせて、ゲームセンターを後にした。 結局あの後どれだけ身体をまさぐっても、百円玉一枚出てこなかった。 軍資金がない以上、いつまでも未練がましく居座っていてはまずかろう。 そう考えて後ろ髪を引かれるどころか、わしづかみにされて引っこ抜かれるような思いで家路に着いた。 そんな時である、人の流れが変に歪んでいることにスミレは気がついた。 まるで何かを避けるように通行人が流れている。 野次馬根性に火がついたのか、スミレは人ごみをかき分け様子を伺った。 そこにいたのはスミレのクラスメイト、絵美里という少女だった。 チンピラ「はよ出すもん出せつっとるんじゃ、このガキッ!」 絵美里「ひゃぅっ!?」 ただし、チンピラに絡まれていたが。 彼女は日頃からおっちょこちょいで危なっかしい子だ。 きっとチンピラに「肩ぶつかった」とか何とか、しょーもない変な因縁つけられたんだろう。 スミレ(あっちゃー、マッズイとこに出くわしちゃったなぁ……どーしよ?) この時スミレは二つの考えが浮かんだ。 一つはヒーローのように颯爽と「待てぇい!!」とか言って絵美里を助け出すこと。 スミレが彼女よりも二周りほど大きいチンピラ相手に勝てるとは到底思えないが、衆人監視の中では手荒な真似はできないだろう。 助けに出れば、何とかなるかもしれない――そういう考えが一つ。 そしてもう一つの考えは、このまま見なかったことにして何食わぬ顔でここを立ち去ること。 放っておいても誰か見知らぬ人が助けてくれるだろうという、他人任せで少々情に欠ける考えだ。 何も自分が危険を冒してまで助ける必要はないと、絡まれた彼女自身にも問題があるという考え。 このように相反する二つの意思が彼女の中に息づいていたことは、紛れもない事実である。 スミレ(う〜〜〜〜〜ん……悩むなぁ。 早く帰ってアニメの録画も準備しないといけないしなぁ……) 一歩下がって人ごみに混じり、絵美里からは見えない位置でスミレはしかめっ面で考えていた。 というか、考えていることは中々に外道である。 そんな時、絵美里の悲鳴が聞こえた。 絵美里「きゃっ!?」 その声に通行人たちも足を止めたが、悲しいことにそれだけだった。 チンピラ「いい加減にせんと、いてまうぞワレェ!」 スミレ「…………!!」 チンピラが何をしたのか、スミレにはわかった。 あろうことか、やくざ蹴りで絵美里の身体を突き飛ばしたのだ。 咄嗟の行動とでも言おうか、それを見た瞬間に。 考えるよりも先に身体が動いていた。 スミレは人ごみから躍り出る。 スミレ「やめなよ、おにーさん。 大の大人がか弱い女の子相手に暴力ふるうなんて、みっともないよ?」 口調こそ普段と変わらぬのんびりのほほ〜んとしたものだったが、彼女の瞳には強い意志が見てとれる。 不快感を顕わにしている。 チンピラは声に反応し、振り向いた。 チンピラ「あぁん? なんじゃワレ? このガキの知り合いかい」 スミレ「ただのクラスメイトだよ。 悪いけどさ、もうやめてあげてくれないかな? えみりー、怖がってるじゃない」 チンピラ「はん、関係ないガキはすっこんどれ!」 威嚇として飛ばされたガンにもスミレは一歩も引かなかった。 スミレ「関係あるよ。 事情はよくわかんないんけどさ、もう許してあげたら?」 チンピラ「ほんなら、お前が代わりに治療費払うんかい!?」 スミレ「ちりょーひ? なんの?」 チンピラ「こいつがぶつかってきて、右肩脱臼じゃ! どないしてくれんねん!!」 スミレ「ぼそっと)……うっわー、すっごい使い古されたテンプレだこと、進歩がないねー……」 そりゃまぁ、呆れるわな。 勿論どことなく小物臭漂うチンピラにもだが、それ以上に絵美里にである。 以前から「コロッと騙されやすそうな子だなー」とか思ってはいたが、まさかこんな日が現実のものとなろうとは思いもしなかったでござんす。 いやはや、事実とは小説よりも奇なるものよのう。 とはいえ、ここまで首を突っ込んだ以上、やっぱ放置プレイはよくないだろう。 スミレ「ぜんぜん元気そーじゃない。 ホントに脱臼なんてしてるの?」 チンピラ「何や、ワレ疑うんか!?」 スミレ(参ったねぇ〜、これは何言っても聞かないタイプのキャラだ……) こうなったら「ここから逃〜〜げるっきゃない、今すぐ逃〜〜げるっきゃない♪」と、スミレは思った。 小柄な二人の方が人ごみをかき分けやすいはずだし、追いつかれにくいはずだ。 仮にも追いつかれそうになったらどこか近くの店に入って助けを求めるか、交番にでも駆け込めばいいだろうさ。 そうと決まれば実行あるのみ。 アグレッシブなオタクの底力を今こそ見せる時である。 チンピラ「邪魔する気かい。 お前みたいなおぼこいガキが、ワシに敵うとでも思うとるんか?」 スミレ「……確かにアタシじゃ逆立ちしてもおにーさんには敵わないだろーね。 でもね、 チビなアタシにもできることっていうのは意外とあるもんなんだよ。 この足を使ってさ」 チンピラ「あぁん?」 スミレ「それはねぇ―――」 チンピラは怪訝な表情でスミレを見る。 刹那、スミレの目が星型にきらりーーん!と光り輝いた。 ……すっごぃアニメちっくだ。 スミレ「―――えぃやっ!!」 チンピラ「んぎょわっ!?」 スミレ「地の果てまでも逃げるんだよぉぉーーーーっっ!!」 絵美里「あっ、ちょ、ちょっと―――!?」 ……何とも恐ろしいことに、スミレは右脚を大きく振り上げたかと思うとチンピラの――その〜、なんだ?――ナニを思い切り蹴り上げた。 これはたかがチンピラ風情に耐え切れるものではない、ある意味究極の男撃退方法である。 股間を押さえてうずくまるチンピラを尻目に、スミレは絵美里の手首をつかんでくるっと回って脱兎の如く逃げ出した。 遥か上空から、そんな彼女の様子を見ていたイマジンがいるとも知らずに。 ★ スミレ「はぁ、はぁ、はぁ〜……もーーぉダメ、もぉっ、走らんないぃぃ……」 絵美里「えっと、その……大丈夫?」 スミレ「いやぁ〜、こんなにっ、走ったのっ、はっ、久しぶりで、ねぇ……」 さて、非道な仕打ちと全力疾走でチンピラから美事(?)逃げおおせたスミレだったが、近場の公園のベンチにへたり込むとすっかりグロッキーになっていた。 アグレッシブなオタクとはいっても所詮現代に生きるもやしっ子、体育評定万年『1』では体力ゲージの限界などたかが知れているというものである。 体力限界突破!なんて素敵スキルも持ち合わせてはいない。 ぜぇぜぇはぁはぁと肩で息をしながら、天を見上げて休憩していた。 絵美里「ごめんね、変なことに巻き込んじゃって……」 スミレ「いーっていーって、困ったときはお互い様。 ラノベじゃ巻き込まれ型の主人公なんて山のようにいるしね」 絵美里「一体それと何の関係が……?(汗」 スミレ「いんやぁ、言ってみただけだよ。気にしない気にしない、一休み一休み」 ヘラヘラまったり、スミレは手を振りながら絵美里に言った。 絵美里も何となくスミレの隣に座ったが、イマイチ話しかけられない。 それもそのはず、この二人クラス内でも特別仲がいいというわけではないのだ。 決していがみ合っているとかいうわけじゃないが、今まで接点がなかっただけに何を話していいのかわからない。 何とも言えない雰囲気が流れ始める。 スミレ(うぅっ、気まずいなぁ……一体何から話したもんかねぇ?アニメや特撮のことなんて話しても多分わかんないだろうし、 JOJOもきっとわかんないだろうし……う〜〜〜ん、普通の女の子ってどんな話するんだろ?) 天を仰ぎながらも二人は終始無言、まるで思春期の幼馴染みたいではないか。 スミレはその後もあれこれ考えていたがどれだけ頭を捻って考えてもいいアイディアが浮かばないので、そのうち考えるのを止めた。 とりあえず逃げよう、そう決めた。 スミレ「……それじゃアタシはそろそろ帰るとするよ。 これから見たいテレビ(もちろんアニメ)があるからさ」 絵美里「あっ、うん…………それじゃあ、さようなら」 スミレ「まった明日ね〜」 公園を出て右に曲がり数十m歩いて、スミレは振り向き「はぁぁぁ……」とため息をついた。 結局何にも話せなかったなと、ちょっぴり後悔。 スミレ「おんやぁ……?」 見ると、路上は砂だらけになっていた。 公園の出口から、今スミレが立っているところまで砂が帯状に溢れている。 変なこともあるもんだと思いながら、スミレは今度こそ家路についた。 ★ 絵美里は自宅で寝そべっていた。 まぶたを閉じると浮かんでくるのは、今日の出来事。 初めて声を聞いたが、黒野スミレとはあんなに少年に近い声をしていたのか。 初めて手を握られたが、身長と同じく自分よりも小さい手だった。 初めて一緒に走ったが、意外と足は速かった。 ……体力はまるでなかったけれども。 絵美里「いい人だったなぁ……」 彼女は孤独だった。 ドジでおっちょこちょいなのが、可愛い子ぶってると言われてハブられた。 なんでも他校の男子に人気があるのが気に食わないと、いつだったかクラスの女子が話しているのを聞いた覚えがある。 そんなこと言われても困るというのが正直なところだったが、かといって余計なことをして状況が悪化するのは嫌だった。 今はただ誰とも縁がないだけ、寂しいことだが虐められているわけではない。 絵美里はそんなことを考えていると憂鬱になり、ごろりと寝返りをうった。 と、頬に当たったのは変な感触。 絵美里「あれ……何これ、砂……?」 やけに床がザラザラする。 不審に思って周りを見渡そうと、絵美里は上半身を起こした。 それと合わせるかのように、砂は上半身と下半身が分かれて逆さまになっている人型を形成していく。 絵美里「ひゃっ!?」 「オメーの望みを言え、どんな願いも叶えてやる。 オメーが支払う代償は、たった一つ―――」 絵美里「……………………………」 絵美里は部屋の隅に後ずさり、顔面蒼白になってへたり込んだ。 助けを呼ぼうにも、まるで喉が潰されたかのように声は出ず、からだの震えも止まらなかった。 だがそれも始めのうちのこと、徐々に頭が再起動し始めた絵美里は怯えつつもイマジンに話しかけた。 絵美里「……どんなお願いでもいいの?」 「おぅともよ」 絵美里「絶対に、叶えてくれるの?」 「任せときな」 絵美里「……………………………」 頭がCOOLになるにつれ、絵美里は自分の立場を理解し始めた。 冷静になって考えてみれば、これってかなり美味しい状況なのではないか? 彼女は一般人であるため当然のことだが「イマジン」の存在など知りえぬところであり、目の前にいるものを「親切な砂のオバケ」程度の認識しか抱けなかった。 それ以上に「どんな願いも叶えてやる」という、魅惑的なフレーズに心奪われていたのかもしれない。 そして考える、一体何を叶えてもらおうか、と。 お金持ちにしてもらおうか? 綺麗な服を出してもらおうか? 世界で一番の秀才にしてもらおうか? 絵美里「私の願いは―――」 「オメーの願いは?」 言いかけて考え直す、本当にそんなものが欲しかったのか? 違う、言葉では言い表せないがきっと違う。 一体何が本当の望みなのか、考えて―――何故か頭に浮かんだのはスミレの顔だった。 そう言えば、ちゃんとお礼を言ってない気がする。 絵美里「――な……い」 「あん? 聞こえねぇなぁ、ハッキリ言えよ」 絵美里「黒野さんにちゃんとお礼言って、友だちになりたい!!」 言って初めて理解した。 それが本当の望みだと。 「よぉし。 その願い、確かに引き受けた」 そう言うとイマジンはずざざざざざと砂から実体化していく。 そこにいたのは青鬼のような衣装を着た、ブルーオーガイマジンたん。 ブルーオーガイマジンたんは実体化すると、ぎろりと眼光鋭く絵美里のほうを向いて、 オーガ「まずはその身体、頂くぜ!」 絵美里「ぇ、―――?」 言うが速いか、ブルーオーガイマジンは絵美里に憑依してしまった。 絵美里の瞳が真っ青になり、髪は逆立ち一筋ブルーのラインが入り、顔は獰猛な動物のようである。 オーガ「へっへへへへ……さぁて、いっちょお礼参りと行くか!!」 その声は絵美里のものではなかった。 ★ その頃、自分が狙われているとはつゆ知らず、スミレは自宅でゴロゴロだらだらリラックスしまくっていた。 まさにダメ人間ここにありである。 ちょうど今アニメを見終わったところで、がさごそと棚からアニメDVDを取り出しているところ。 スミレ「ふっふ〜〜ん、今夜は朝までアニメフィーバーだよ〜〜ん♪」 徹夜するつもりだこのダメ人間。 駄目だこいつ、早く、何とかしないと…… ざざっ…… そんな風に何を見ようか悩んでいるスミレの背後に、何者かが現れる。 しかしながら「―――曲者っ!?」とかいって背後の気配を察知する能力は、スミレには当然ない。 だから背後の侵入者に気づくはずもなかった。 「おい、そこのお前」 スミレ「え〜〜っと、どれから見ようかね? やっぱりここは製作順にファーストから行こうか?」 「おい、お前! 聞いてるのか!?」 スミレ「種と種死はもうギャグだしねぇ、これはパス、っと。 ZZも似たようなもんだし、これもパス」 「……人の話を聞かんかこンの馬鹿モンがァァーーーーっっ!!!」 スミレ「ぁ痛゙っ!?」 ごちんっ!? 突如背後から飛んできた目覚まし時計に盛大に頭をぶつけ、スミレは涙目になって悶絶する。 痛みをこらえて振り返ると、そこにいたのは身長約30cmほどの鶴のような着ぐるみを着たイマジン(という名称を今現在、スミレが知るはずもないが)。 スミレは一旦目をパチクリさせながら、取りあえず一言。 スミレ「……痛いぢゃないか」 「『ぢゃないか』じゃないッッ! 先ほどからずぅーーーーっと 私が話しかけているというのに、無視するとは一体どういう了見だっっ!!!?」 スミレ「いんやぁー、何か聞こえるとは思ってたんだけどさ、空耳かな〜って思って」 「……まぁいい、今回のところは見逃してやろう」 スミレ「ありがと。 んで、キミ誰?」 意外と落ち着いてるというか、肝がすわっているというか。 いや、ただ単に危機意識がないだけか。 いつものまったりのほほん口調で、スミレは目の前の不思議物体に向かって聞いた。 オリヴィエ「私の名はオリヴィエ、未来から来たイマジンの一人だ」 スミレ「ひまじん?」 オリヴィエ「『イ マ ジ ン』だ。 ……まぁ、今はそんなことは どうでもいいな。 お前、私と一緒に戦え。 返事はイエスでいい」 スミレ「へ? 戦えって――――何と?」 あまりにもぶっ飛んだ話もちゃんと聞く辺りが憎めない。 ともかく説明をしないことには埒が明かないので、オリヴィエはスミレに軽く一通りの説明をした。 イマジン、時の列車、ライダーパス、ベルト、特異点について。 スミレ「ふぅ〜〜ん……詳しいことはあんまりよくわかんないけど。 よーするに、危ない未来を変えるために戦うってコトでいーの?」 オリヴィエ「まぁそんなものだ。 あぁ、安心しろ。 何も生身で戦えというわけじゃない」 スミレ「って、もしかして変身? アタシ、変身するの!?」 オリヴィエ「……何故そんなに嬉しそうなのかは知らないが、大体そんなものだ」 スミレ「うっひょぉーー! これでアタシも特撮主人公の仲間入り? いやぁ〜、 まさかラノベみたいなことに巻き込まれるなんて思いもしなかったよ。 ほんっと、人生って何が起こるかわかんないよねぇ〜♪」 オリヴィエ「……お前、コトの重大さを理解してるのか? これは遊びじゃないんだぞ!」 オリヴィエが怒鳴るのもごもっともだが、スミレはどこ吹く風である。 オリヴィエはそんな彼女を見て、ついつい思ってしまった。 オリヴィエ(くそぅ……ひょっとして、――――人選を間違えたか……?) オリヴィエは見ていた、彼女がチンピラから絵美里を助け出す一連の流れを。 運のいいことにスミレは特異点であったし、あの瞬間オリヴィエは確かにスミレの行動、心に「正義」を見たのだ。 だからこそ彼女に憑依したのだが、まさかこんなにノリの軽い少女だったとは思わなかった。 頭が痛くなった気がしたが、もう引き返せはしない。 スミレ「あれ? どったの?」 オリヴィエ「……何でもない、いいか? これはお前自身の戦いだ。 過去、未来、そして現在(いま) ――――すべての時間を、お前が守るんだ。 そのことを忘れるなよ」 スミレ「あぃあぃ。 でもさ、オリヴィエはそれでいいの?」 オリヴィエ「何がだ?」 スミレ「オリヴィエもイマジンなんでしょ? こんな仲間割れみたいなことしていいの?」 オリヴィエ「……気持ちがいいものではないが、仕方ない。 放っておくわけにはいかんからな」 スミレ「おぉぅ、カッコいいねぇ〜〜♪」 オリヴィエは思った。 やっぱり不安だコイツ。 オリヴィエ「む―――!?」 スミレ「オリヴィエ?」 オリヴィエ「イマジンの気配だ!」 スミレ「うそっ、もう!?」 オリヴィエ「行くぞ、スミレ!」 スミレ「ちょ、ちょと待って、まだ心の準備が――!?」 スミレがいうよりも早く、オリヴィエは彼女の身体に入り込んだ。 途端にスミレの様子が一変する。 くせっ毛の長い髪はポニーテールになり、髪の一部分と瞳は白い。 顔つきも普段ののほほんとした大らかなものではない、きりりとした凛々しい男前だ。 あと背も高くなってる。 Oスミレ「はっ!」 スミレ(ちょ、ここ二階なんだけど……ま、いっか。 階段下りるよりも飛び降りる方がヒーローっぽいモンね) 窓から飛び降りて着地したオリヴィエは、道路の先を見据えた。 スミレ(あっちの方から来るの?) Oスミレ「おそらくな。 だんだん気配が近づいている」 スミレ(へぇ〜、そんなコトまでわかるんだ……) オリヴィエ「――――そら、お出ましだ」 しかし、現れた敵にオリヴィエはともかくスミレは驚嘆せざるをえなかった。 スミレ(ちょ、あれイマジンじゃないよ、えみりーじゃん!?) Oスミレ「えみ……? なんだ、知り合いか?」 スミレ(ぅ、うん……) しかし目が完全におかしいし、手に持ってるのは鉄パイプだ。 そして目の前の絵美里はそれを振り上げ――――振り下ろす。 Oスミレ「!!」 スミレ「あぁん、テメーもイマジンか?」 あっさりと避けたオリヴィエに向かって、絵美里の口を介してイマジンが話しかける。 それはなんとも野太い声だった。 ヒャクパー絵美里本人の声ではない、というかそれが本人の声だったら嫌すぎる。 おっさん声の女子高生………やっぱ嫌すぎる。 Oスミレ「決まりだな、あの女は契約者だ」 スミレ(……ねぇ、イマジンだけをやっつけることできないの?) Oスミレ「そのためにはイマジンを契約者から引っ張り出さなければならん。 ま、適当にボコればそのうち出てくるだろ」 スミレ(ぶ、物騒だねぇ……) Oスミレ「はぁっ!!」 鉄パイプの一撃を避け、オリヴィエは華麗なハイキックをきめた。 絵美里の身体がぶっ飛ぶ。 スミレ(ちょ、やりすぎだってば!?) Oスミレ「なに、死にはしない。 それにイマジン頼るなどもっての外だ。 あの女にも少しはお灸をすえてやる必要がある、いい薬だ」 スミレ(それは――――そぅ、かも、しんないけどさ……) スミレの頭からは既に先ほどまでのお気楽な考えは吹っ飛んでいた。 目の前で起きているのはもはや、殺し合い、だ。 オマケにその相手が自分の知り合いなのである。 いい気分になれるはずがない。 オーガ「いってぇなぁちくしょう! もー切れた! もー殺す! ぶっ殺してやる!!」 Oスミレ「殺す? この私をか? ふん、できるものならやってみろ」 冷静にオリヴィエは攻撃を捌き反撃するが、その分絵美里の身体に傷がついていくだけだ。 Oスミレ「はっ!!」 オーガ「ぐぉ!?」 スミレ(………………) 殴る蹴るボコるどつく――――オリヴィエの手は止まることがない。 スミレ(オリヴィエ……ちょっと、ゴメン!!) オリヴィエ「うぉわっっ!?」 やがてスミレは耐え切れなくなったのか、身体からオリヴィエを追い出した。 瞳の色は茶色に戻り、ポニーテールもばさっとバラけて消失した。 身体から追い出されたオリヴィエは、ちょこんとスミレの肩にしがみつく。 慌ててオリヴィエはスミレに言った。 オリヴィエ「お、おい!何を―――」 スミレ「……アタシね、こういうの間違ってると思うんだ。 やっぱり、知り合いには手を上げたくないよ・・・…」 スミレは悲しげな顔でそう言うと、くるっと踵を返した。 全速力で――――駆け抜ける、いや、逃げ出す!! オーガ「んにゃろっ、待ちやがれ!」 当然ブルーオーガイマジンたんがそれを見逃すはずもなく追いかけてくる。 ところがどっこい、ブルーオーガイマジンたんはどうやら足は遅いようで。 スミレが考え事をしながら走っていてもつかまりそうにはない。 スミレがたったか逃げ出す傍らでオリヴィエは、ひゅーーーっ、と飛びながら叫んでいる。 オリヴィエ「何をしている、逃げるな! 戦え!」 スミレ「戦え戦えって簡単に言うけど、それじゃあえみりーはどうなるのさ!? 何も悪くないじゃない!」 オリヴィエ「……イマジンを倒すためだ、仕方ない!」 スミレ「仕方ない仕方ないって、口で言うのは簡単だよ! でもね、アタシは『仕方ない』なんて言って 誰かを傷つけたりするのは嫌だ! 例えそれがオリヴィエの言う「正義」のためだったとしてもね!!」 オリヴィエ「……だったらどうする気だ? イマジンはあの契約者に憑いている。 そう簡単に手は出せないぞ?」 オリヴィエの言うことは、少なくとも間違いではない。 スミレ「……きっと、人の“心”っていうのはそんなに弱いものじゃないよ。 アタシ、えみりーのこと信じてみる」 オリヴィエ「………………………」 スミレ「うぅん。 アタシ、えみりーのこと信じたい!!」 それだけ言うとぴたりと立ち止まり、スミレは振り向いた。 イマジンが手に鉄パイプを持ち、襲いかかってくる。 きっ、とスミレは絵美里――ブルーオーガイマジンたんに身体をのっとられた――を見つめた。 スミレ「えみりー、こんなことしちゃいけないよ!!」 オーガ「うらぁぁぁぁああああ!!」 スミレ「お願いだよ、目を覚まして!!」 迫り来る絵美里に、スミレは大声で呼びかけた。 そんな声をものともせず、どんどん近づいてくるブルーオーガイマジンたんは鉄パイプを振り上げ、スミレめがけて振り下ろす! オリヴィエ「――――馬鹿モンっ、避けろ!!」 オリヴィエがすぐ傍で言うが、スミレは真っ直ぐ前を見据えたまま動かない。 鉄パイプが迫り、スミレの脳天をかち割らんとして、――――!! 絵美里(――――やめてぇっ!!) ピタリ、と鉄パイプは止まった。 いや、鉄パイプだけではない、絵美里の身体も止まった。 オーガ「んな――――っ!? テ、テメー、何のつもりだ邪魔すんな!」 絵美里(私、こんなこと望んでない!) オーガ「うっせぇ! 俺は暴れられればそれでいいんだよ!!」 絵美里(いじわるするなら、こんなことするのなら――――私の身体から出てって!!) 絵美里の言葉に負けたのか、ぶわっと、絵美里の身体から青い光の玉が飛び出た。 ブルーオーガイマジンたんは放り投げられたかのように吹っ飛んでいく。 対して、絵美里はガクッと膝から崩れ落ち、倒れる。 スミレ「えみりー!」 スミレは慌てて駆け寄った。 例えただのクラスメイトだったとしても、放ってはおけない。 いや、もう“ただのクラスメイト”ではない。 スミレ「えみりー、大丈夫!?」 がしっと、スミレは絵美里の身体を抱え起こした。 弱弱しいが、どうにか生きている。 この分なら大事に至ることはないだろう。 絵美里「ぁ……黒野さん、ごめんね……私、迷惑かけてばっかりで」 スミレ「うぅん、気にしなくてもいいよ。 だって、私たち――――友だち、でしょ?」 絵美里「とも、だち?」 スミレ「うん――――私はえみりーを助けようとした。 えみりーはそれに答えてくれた。 だからアタシたち、もう友だちだよ」 スミレは心からそう思えた。 たった一瞬でも二人の気持ちは通じ合ったのだ。 互いが互いのために尽力した。 それを友と呼ばずして、一体何と呼ぼうというのか。 絵美里「えへへ、ともだちかぁ……」 絵美里は嬉しそうに、弱弱しくつぶやいた。 願いはかなったのだ。 しかもイマジンの力によってではなく、自分自身の力で。 絵美里は心底嬉しそうに笑うと、ぐったりと気絶した。 スミレ「えみりー……? えみりーっ!?」 オリヴィエ「心配ない、気絶しているだけだ。 じきに目を覚ます」 オリヴィエの言葉に安堵する。 そしてスミレは立ち上がった。 実体化したブルーオーガイマジンたんを睨みつける。 スミレ「アタシさぁ……こんなに怒ったの産まれて初めてだよ。 キミはぜっっったい、許さない!!」 オーガ「許さない、だぁ〜〜〜? ただの人間と不完全体のイマジン如きに何ができるってんだ!!」 スミレ「何でもできるよ、私とオリヴィエ、二人がいれば! そうでしょ、オリヴィエ?」 オリヴィエ「……そうだな。 まず手始めに、奴を完膚なきまでに叩きのめしてやろうか」 オリヴィエは感心していた。 正直スミレの態度を見る限り不安でいっぱいだったのだが、紛れもなく彼女は「正義」の心を持っている。 自分の目に狂いはなかった。 彼女こそ「時」を守るもの、「破滅」を回避するものに相応しい。 スミレを見る目が改まったような気がした。 オリヴィエ「よし、手順どおりにいくぞ!」 スミレ「おっけー!」 スミレはどこからかベルトを取り出した。 それは先ほどオリヴィエに説明を聞いたときに貰ったベルト。 それを腰に巻きつける。 オーガ「あぁん? 何だそりゃ?」 スミレ「これはね、アタシたち二人を結ぶ絆だよっ!」 スミレは当然知らないことだが、それは「電王ベルト」と呼ばれるものに酷似していた。 外見上で違うところといえばベルト全体がガンメタ調であることと、フォームスイッチの色が電王たんとは違うところか。 腰に巻きつけられたベルトはカチリとセットされ、起動音を鳴らす。 スミレ「いくよ、オリヴィエ!」 オリヴィエ「あぁ!」 フォームスイッチの一番上のボタン、白いボタンを押す。 ターミナルバックルが白く輝き、ミュージックホーンのような音が流れ出す。 スミレはベルト同様受け取っていたライダーパスを取り出し、ターミナルバックルの前にかざした。 「「変身!!」」 ≪――Lance Form――≫ スミレとオリヴィエ、二つの声が重なる。 ベルトから発せられた光はスミレの姿を変えた。 一瞬だけ駅員のようなプラットフォームに姿を変え、そこからさらに軽装の騎士風の姿に変わる。 ぶわっっ!!と、フリーエネルギーでできた無数の羽が空中を舞い散った。 オーガ「な、何だァ!?」 ざっっ、と。 羽吹雪の中から現れたのは白い騎士。 それはスミレでもなくオリヴィエでもない。 仮面ライダークロノスたん・ランスフォームはブルーオーガイマジンたんを指差して言った。 クロノスLF「貴様の罪は重いぞ、判決は終身刑だ――――覚悟はいいな?」 オーガ「あぁん? んなもん、従うわけが――」 クロノスLF「返事はイエスでいい!!」 言ってクロノスたんは駆け出した。 ブルーオーガイマジンは自身の武器であるトゲトゲ金棒(根性注入棒とも言う)を構える。 狙いを定めて振るい、―――!! オーガ「んなぁっ!?」 クロノスLF「そんなトロいもの、私に効くかッ!!」 あっさり避けられた。 クロノスたんは高々とジャンプしてブルーオーガイマジンたんの背後に着地すると、両腰のクロノガッシャーを手にする。 一番を上空に放り投げ、三、二、四の順に連結した。 オーガ「させるかよぉ!!」 ブルーオーガイマジンたんはこん棒を乱暴に振り回し、クロノスたんを叩き潰そうとした。 持ち手を握りしめ、振るう。 クロノスLF「遅い!」 だがそれより早く、未完成のクロノガッシャーでクロノスたんはこん棒を受け流した。 力任せに振るっていたブルーオーガイマジンたんは大きく体勢を崩す。 クロノスたんはクロノガッシャーを立てると、空中から落下したクロノガッシャー・一がクロノガッシャー・三に綺麗に連結した。 その瞬間、一と三からは鋭いオーラソードが現れる。 クロノガッシャー自体もその長さを伸ばし、クロノスたんの身長よりも長いその姿は、さながら方天画戟のようですらあった。 クロノスLF「はぁっ!!」 オーガ「ぐえっ!?」 長物であるクロノガッシャー・ランスモードを軽々と振るい、クロノスたんはブルーオーガイマジンたんを圧倒した。 クロノガッシャーを軽々と振り回し、二つの刃で切りつける。 彼女がクロノガッシャーを振るたびに、ブルーオーガイマジンたんの身体には傷が刻まれていった。 オーガ「お、お前もイマジンなんだろ!? 何のつもりだ、裏切るのかッ!?」 クロノスLF「裏切る、だと? 笑わせるな。 過去を改変し未来を破滅に導き、あまつさえ現在(いま)の思いさえ 弄(もてあそ)び踏みにじる――――お前の所業の、一体どこに正義があるっっ!! 」 分が悪いと見るやいなや、ブルーオーガイマジンたんは喉から声を絞り出して抗議した。 が、オリヴィエはブルーオーガイマジンの言葉を一蹴する。 聞く耳持たないとは、まさにこのことである。 クロノガッシャーの持ち手部分でブルーオーガイマジンたんを打ちのめす。 オーガ「ぎゃっ!?」 ブルーオーガイマジンたんは手を打ちすえられて、自身の武器である棍棒を落としてしまった。 クロノスたんはそれを見逃さず、落ちた棍棒をあさっての方向に蹴りとばす。 ブルーオーガイマジンたんは拳を振るって応戦するが、当然そんなものクロノスたんにとって脅威にはなり得ない。 ブルーオーガイマジンたんの間合いの外から、クロノガッシャーでめった刺し(……酷ぇ)一方的な戦いだ。 クロノスたんは敵の攻撃は跳びはねて軽々と回避し、自身の攻撃は機械のような精密さで突きや薙ぎを繰り出していく。 一方的な攻撃の前に、ブルーオーガイマジンたんはあっさり倒れ伏した。 クロノスLF「情状酌量の余地なし。 刑は磔刑(たっけい)だ」 オーガ「よ、よせ―――!?」 クロノスLF「先ほども言わなかったか? 返事はイエスでいい!! 」 オーガ「ぐ……っ!? ちっくしょぉぉぉ!!」 ブルーオーガイマジンたんはやけっぱちになりながら駆け出してきた。 身体はボロボロ疲労困憊、武器は既にない。 それは単なる自殺行為でしかない。 クロノスたんはライダーパスをターミナルバックルの前に、再度かざした。 ターミナルバックルが白い輝きを放つ。 ≪――Full Charge――≫ バリバリバリッ――――!!とターミナルバックルからフリーエネルギーがクロノガッシャーに充填され、クロノスたんはクロノガッシャーを構える。 視線はブルーオーガイマジンたんを真っ直ぐに見据え、ズレることはない。 クロノスLF「ふんっ!!」 オーガ「ぐぇっ!?」 そして、飛び掛ってきたブルーオーガイマジンに槍投げの要領でぶん投げた。 ぐさりと胸に刺さったクロノガッシャーは先端から白い羽――オーラフェザー――のような紋様になってブルーオーガイマジンの身体にまとわりつき、拘束する。 そしてクロノスたんは空中に跳び、―――― クロノスLF「デンライダーーーーァァ、キィィーーーーーックっっ!!」 オーガ「ぎぃゃ、あぁぁぁぁああッ!!?」 ――――右脚を突き出して必殺のデンライダーキックを叩き込んだ! 右脚から繰り出された蹴りはブルーオーガイマジンたんを吹き飛ばし、地面に転がした後に爆発四散させる。 文句の付けようのない、完全勝利。 ★ スミレ「ぁ、ぁ……くぁwせdrftgyふじこ!!?」 オリヴィエ「惜しい、あとちょっとだったのに」 翌日、スミレは昨日と同じゲーセンで苦悶していた。 昨日と同じUFOキャッチャーで、昨日と同じリュミエール人形を狙う。 だが結果も同じ、何度やってもリュミエール人形は後一歩の所で手に入らなかった。 スミレ「えぇい、もう一度、もう一度だけ! あと一回やれば取れそうなんだよ!!」 オリヴィエ「お前、典型的な破滅型だな……」 スミレ「破滅ゥ? そんなの関係ないね。 このリュミエール人形を手に入れるためなら、 破滅だろうと何だろうと『うぇるかむアンノウン』ってヤツだよ!!」 オリヴィエ「うぇ……? 何だそれは?」 違うのは彼女の肩にはオリヴィエが乗っていることか。 あれから気絶した絵美里を自宅までおんぶして連れて行ってくれたことに、スミレは感謝していた。 軽々と絵美里の身体を持ち上げたことには驚いたが。 ひゅーーー………ぽとり……! スミレ「ぁ、ぁ……くぁwせdrftgyふじこ!!?」 オリヴィエ「意外とゲームの才能はないんだな」 スミレ「うるさいなぁ、筋肉痛なんだよそのせいなんだよ!」 またもや眼前でリュミエール人形は落っこちる。 これもまた昨日と同じ光景だった。 違うのは身体中のあちこちが痛いということか。 全身が酷い筋肉痛。 オリヴィエにとっては別段激しい運動をしたというわけではないのだが、スミレの“身体”にしてみれば激しいハードワークだったということだろう。 今後もこのような苦痛にさいなまれること請け合いである、合掌。 絵美里「黒野さーん、取れた? りゅ、りゅ……りゅみ何とか人形」 スミレ「リュミエール人形だよ。 まだまだえみりーにはオタの英才教育が足りないねぇ」 絵美里「いや、それはちょっと勘弁して欲しい、かな……(汗」 昨日と違うのは、友だちと一緒に遊んでいることだ。 まだまだぎこちないが、きっと親友になれるだろう。 そんな予感がスミレと絵美里にはあった。 絵美里「私、ちょっとジュース買ってくるね」 スミレ「らじゃー。 アタシはもっかいチャレンジするよ」 たたたた、と走り去っていく絵美里。 その後姿を見ながらスミレは思う、無事に済んで本当によかった、と。 ふと真面目な表情になり、スミレはオリヴィエに聞いた。 スミレ「……ねぇオリヴィエ」 オリヴィエ「どうした?」 スミレ「イマジンって……まだまだ、いーーっぱいいるんだよね?」 オリヴィエ「あぁ、それこそ星の数ほどにな」 スミレ「そっかぁ……」 少しくらい顔をしたスミレを見て、オリヴィエは少し胸が痛んだ。 本人は明るく振舞っているが、少し悪いことをしたという思いもないわけではない。 彼女はこれから様々な困難に襲われることになるであろう。 スミレ「………………………」 オリヴィエ「……後悔してるのか?」 スミレ「へ? 何が?」 オリヴィエ「クロノスとして、イマジンと戦っていかねばならないことにだ」 オリヴィエは神妙な面持ちで聞いた。 スミレ「んーん、全然」 オリヴィエ「……………………」 スミレ「だってさー、オリヴィエは「アタシならできる」と思ったからアタシに憑いたんでしょ?」 オリヴィエ「(……今でもちょっと、ぃゃ、すっごい不安だが……)まぁな」 スミレ「だったらアタシもそれに応えなきゃいけないと思うんだ、期待されたからには。 どこまでできるかわkらないけど、できる範囲で、アタシにできることをしないとさ」 オリヴィエ「……肝の据わったヤツだ。 まぁなにはともあれ、これからもよろしくな」 オリヴィエは微笑みながら言った。 スミレもそれに、のほほんまったりとした笑顔で答える。 スミレ「うん――――ところで、物は相談なんだけどさぁ?」 オリヴィエ「?」 スミレ「オリヴィエ、この人形とってくれない? それがアタシの望み―――」 オリヴィエ「……こンの馬鹿モンがぁぁぁーーーーーっ!!」 スミレ「あぅ〜〜、冗談だよ。 そこまで怒んなくてもいいじゃん(ぶちぶち」 オリヴィエ「私たちはイマジンを倒し、破滅の未来を回避しないといけないんだぞ!? それを忘れて私に“望みを叶えろ”などと、ふざけたことを言うなっ!!」 スミレ「だから、冗談だってば〜。 そんなに怒んなくてもいいじゃん」 オリヴィエ「うるさい! その自堕落な性根、この私が叩きなおしてやるっ!!」 ……こうして、ここに仮面ライダークロノスたんが誕生した。 彼女たちの“時間を守る戦い”は、これからも続いていく――――かもしれないね。 To be continued……? |
YP
2008年06月21日(土) 18時21分00秒 公開 ■この作品の著作権はYPさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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