| 仮面ライダーアーク ROUND17 「疾風の杖」 |
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(4月5日=神の頭) 先日、花祭りも佳境を迎えて、公園の花を見に訪れていた多くの観光客も少し減りつつあった。その中で、ペンション“クラインガルデン”のパン屋と我楽多屋が大繁盛で幕を閉じた。 その日の翌日。 店が久々に定休日となり、メイたち7人は街へと繰り出すことになった。 お目当ての店に辿り着き、メイたちが席に着く。 そのお店の名前は「ソナタ」。 実はメイが昔から通い詰めているお店で、常連らしいメイが座席に6人を座らせていく。 プライド「ふうん・・・メイのセンスにしてはかなりいい雰囲気のお店じゃない」 メイ「喧嘩売ってんのか」 ラース「いや、年頃の娘っこの部屋なのに、壁に『喧嘩上等』だの『夜露死苦』だの掛け軸がかかっていて、それ以外のお洒落がサンドバックが吊るされている部屋なんて見たらそう思うだろ」 ラースが珍しく髪をさらさらとなびかせて呆れたように話す。 ラスト「掛け軸がお洒落の一つとはね・・・メイちゃんらしいというか」 プライド「諸行無常に贅沢禁止、健康第一って・・・・貴女はどんな頭の構造してますの」 プライドもいつものような制服ではなくて、チュニックにボトムのミニスカートを着込んだお洒落な格好で、金髪をポニーテールにしている。 エンヴィ「あははー。あたしお姉ちゃんのお部屋大好きだよー♪」 エンヴィがはしゃいだ。ロングのTシャツにベスト、ショートパンツを履いた活発なスタイルだった。 メイ「うむうむ、分かっているではないか。よし、エンヴィ、許す。今日添い寝すんぞ」 エンヴィ「わーい!」 スロウス「ダメだよ、オチビちゃん。メイの隣は・・・・僕がエスコートしなきゃ・・ね?」 スロウスが胸元を肌蹴たYシャツの上からジャケットを羽織った姿でメイに顔を近づける。ある意味百合にも見える関係。しかし、メイはスロウスの鼻を軽くつまむ。 メイ「お前は寝ると人の事踏んづけるし、寝返りで轢かれるし、危なっかしいから嫌」 スロウス「しょぼーん」 一方。 「ねえねえ、あの茶髪の男の子、カッコよくない!?ラフな服装が、中性的な顔立ちに似合っているって言うかさあ・・・・!」 「ま、眞子ちゃん・・・・あ、あたしは・・・・その・・・・////」 スロウス「・・・・がびーん」 その声が聞こえたのか、スロウスがふっと笑みを浮かべるとそのままソファに座って静かに眠りにつく・・・・いや打ちひしがれていた。 グラトニー「・・・自業自得です」 グラトニーが水色の和服姿で、呆れて突っ込む。 ラスト「・・・・あはは、さすがにスロウスちゃんでも落ち込むか」 ラストは胸元を大きく開いた肩ひものワンピースの上から白いニットの上着を着ている。 厨房から紺色の長い髪をした女性が出てくる。 「おまたせしました〜。当店自慢のダージリンティーです〜。」 メイ「どうも!」 おしゃれなカップに注がれた鮮やかな紅。 ラース「頂きます・・・・・あ、おいしい・・なんだか・・・ほっとするな」 「どうもありがとうございます〜。メイさん、どうも〜」 メイ「こっちも何かと忙しくてね」 プライド「毎日お店で乱闘実況中継中ですしね」 メイ「あんぎゃー」 「うふふ、いつも元気そうで何よりです〜」 グラトニー「・・・・・・」 ラスト「はれ?グラちゃんどうしたの?」 グラトニー「・・・・美味しいです。色、香り、温度ともに芳醇でかつ爽やかな味わい。そして何よりこの優しい味・・・こんな紅茶を淹れることが出来るのが人間界にもいたなんて・・・。素晴らしい仕事です」 そういって、グラトニーが最高の笑顔で賛辞を送る。 「あらあら〜そういっていただけると、祥子ちゃんも悦ばれるかと思います〜。・・・あれ?もしかして〜そちらの赤い髪の毛の方と貴女はもしかして〜高良市の花祭りで喫茶店を遣っていた方々ですか〜?」 ラース「・・・まあな。少し照れくさいな」 「そうですか〜。実は私達も行っていたのですよ〜。サンドウィッチと珈琲、とても美味しかったです〜。祥子ちゃんも勉強になったとおっしゃっていました〜」 すると、クリーム色のポニーテールの少女が出てきて一礼する。 「こんにちは。先日はとても美味しかったですよ」 ラース「・・・・な、ま、参ったな・・・・なあ?そ、そんなに、褒められるとは・・・思ってなかったからよ」 ラースが顔を真っ赤にしてポリポリと頬を指で掻く。グラトニーも顔を真っ赤にしてこくこくと頷く。 メイ「いいじゃん、いいじゃん、すげーじゃん!!この2人にこんな事言って貰えるなんて見込みアリってことだよ!!」 プライド「・・・・確かに、この紅茶とケーキの味からそれは言えてますわね。このお店また近いうちにゆっくりと来させて頂きますわ」 お互いに笑顔を弾ませる。 帰り道。 紅茶の話で盛り上がっているラースとグラトニーを置いて、5人が帰路についていた。 すると、スロウスが帰路を歩いていた制服姿の女子生徒とぶつかった。少女は分厚い参考書を落とした。 見ると、「天才ジャーナル数学U」と書いてある。 女子生徒は鬼のような顔を上げて参考書を挙げて、無言で立ち去っていった。 メイ「ちょ、ちょっと!」 メイが呼び止めるのも無視して少女は立ち去っていった。 メイ「何だよ、あいつ!」 プライド「ずいぶん年甲斐になく険しい表情をしてましたわね」 スロウス「天才ジャーナルとか書いてあったけど、それって、最近CMで大々的に宣伝している超難関進学塾だろ?」 メイ「あー、そうそう。ま、ボクとは縁の無い場所だわね」 すると、ラストが何時になく緊張した顔つきで立っていた。 メイ「ラスト?」 ラスト「・・・今の子、顔色が白くて目の充血が尋常じゃない。精神的にも肉体的にもボロボロだわ。どれだけ根詰めて勉強すればああなるっていうの・・・?」 ふと、メイの足元に一枚のCDケースが落ちていた。 見ると、「課題」と書いてあるのみのCD。 メイ「さっきの子のかな?・・・・・ん?」 メイがCDから異様な空気を感じ取った。 メイ「・・・・これ、魔宝の気配を感じる」 ラスト「・・・・調べてみたほうがいいわね」 その夜。 メイが近所のネットカフェの一室にあるパソコンにCDを装填させて起動させた。 (メイの家には業務用のパソコンしかないので)すると、画面が突如黒くなり、やがて一瞬パッパッパッと白黒する画面が映し出される。 すると、突然メイの意識が急に遠くなるような錯覚に襲われる。 メイ「・・・・なっ・・・!!」 メイはしくじったと思った。 ラストたちが飲み物を取りに言ってる間にセットアップだけしておこうと入れておこうとしただけなのに、入れたと同時に自動再生されるとは思ってなかった。 そして、息も苦しくなり、やがて視界がブラックアウトする・・・。 その時。 メイは薄れ逝く意識の中で誰かの声を聞いたような気がした。 「さて・・・そろそろうちの出番やね」 飲み物を片手にラストたちがメイがいるはずの個室に入ってきた。 ラスト「メイちゃーん、珈琲ですよーって・・・あれ?」 プライド「・・・トイレかしら?」 そこには、主が居ない空白の部屋があった。 「さてと、今日も働いたし、たまにはカラオケで歌いますか!!」 「眞子!うん、たまにはいいよね」 「何歌おうかな・・・・・」 そういって、歩いてきた少女達とすれちがうように1人の少女がすれ違う。 藍色のメッシュを入れ整えたショートカットに、濃紺のスーツ。 まるで仕事が出来るOLか企業戦士のようにも思える怜悧で理知的な雰囲気。 セルフレームの眼鏡が良く似合っている。 「あ・・・あれ?」 「どうしたの、彩乃?」 「い、いまの人、メイちゃんじゃない?」 「え?いまの人・・・?」 「まさか・・・」 ふと街角の一角。 1人の少年を数人の大柄な少年達が下卑た声を上げて取り囲んでいた。 「おらおら、早くお金出しなさいよ」 「俺たち、寄越せとはいってないだろ?ゲームセンターで遊ぶお金かして欲しいってお願いしてるのよ」 「こ、これは、塾の会費で・・・」 「・・・ほーう、俺、傷ついちゃったな。俺たちの友情より塾を取るんだ」 そういって、少年の1人が少年のおなかを蹴り上げた。 少年が蹲り、腹の底から絞り出すような声を上げる。 すると、少年がナイフを取り出して、わざとぎらつかせるように少年に見せ付ける。 少年の瞳に恐怖の色がありありと浮かんだ。 その時だった。 ふと、少年の仲間の一人が唖然とした様子で少年を見ていた。 「・・・どうしたよ?」 「・・・お前、何それ?」 ふと、自分が持っていたものを見ると。 其処には―ちくわ。 一瞬目が点になる。 更に自分が蹴っていたはずの少年は、いかつい顔つきをした金髪のパンチパーマを利かせた赤シャツのいかつい叔父様に早変わりしていた。 「・・・おい、わりゃあ、何してくれとるんじゃ・・・・」 「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「待たんかいガキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」 「ご、ごめんなさあああああああああああああああああい!!!」 少年達が顔を青くさせて、泣きながらヤクザの追っ手から逃げ惑う。 その光景を、藍色のメッシュをいれ眼鏡をつけていたメイが愉快そうに見ていた。 「御狐様のたたりやでぇ・・・・」 そういって、手に持っていた先程の少年を下ろすと、そのまま立ち去る。 少年は驚きと興奮を抑えきれない様子でメイに近づく。 「あ、あの!!」 「何や?これ以上のサービスはギャラとるで?」 「い、いや、さっきの、どうやって・・・」 「・・・アホ、ええか?詐欺師と手品師は、そう簡単に手の内明かさんもんやねん」 メイは呆れたように呟き、振り返る。しかし、次の瞬間、その顔に理知的かつ誘惑するような瞳で笑みを浮かべる。 「・・・・でも、それでも知りたいなら、それ相応の対価は払ってもらおか。どうや?それでもええんなら話は別や」 しかし、その瞳は何処までも冷たくぞっとする様な感じがした。少年はそこで凍りついたように動けなくなり、メイが立ち去る姿を見送った。 メイが言った言葉が頭の中で何回も反芻して、麻薬のように体を支配していくような気がした。 『全て・・・・奪ってあげようか?』 満月を背に、ビルの屋上に1人メイが立っている。 藍メイ「はあ・・・人間界(こっち)も面白いことになってるなあ?うち、ワクワクしてきたわ」 そういって、メイに被って見えたのは。 狐を模したヴァンデッド・フォックスヴァンデッド。 藍色の怜悧で鋭い瞳が「天才ジャーナル」の看板を見据えている。 藍メイ「全て奪ったるわ・・・・。強欲(グリード)の思うが侭に」 そういって、メイが手に一陣の風が走り、見る見る竿のような鋭い穂先を持つ魔宝「疾風の杖」を取り出し、肩に抱いて悠然と微笑んでいた。 続く |
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SHT
2008年03月12日(水) 17時50分48秒 公開 ■この作品の著作権はSHTさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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