仮面ライダーアーク ROUND18 「神の頭」 |
青白い満月冴え渡る夜。 そのビルはまるで要塞のように聳えているようであまりの殺風景さに不気味な雰囲気さえ感じてしまう。 そのビルには「天才ジャーナル・天明教室」と書かれている。 そして、そのビルの4階から6階までが小学校高学年・中学年・高校の学生達が一単位90分の授業を受けているのだ。 時間は23時を指している。 藍色の瞳を輝かせて、メイがゆっくりと動き出す。藍色の妖しい光を瞳に輝かせて。 一方。 火「全く、魔宝の存在を感じたから着てみたってのに、変なのにからまれて遅れちまったな」 木「それにしても、まさかあれが世に出ているなんてね。“神の頭”」 2人がそれぞれ武器である憤怒の矛と色欲の鎌を悠然と構えながら歩いていた。 後ろには先程まで彼女達を狙っていた異形が無残な姿となって転がっている。 水「あれは・・・古代のスーパーコンピューター・・・全ての時代におけるあらゆる知識や情報を司るといわれてます・・・」 金「でもあれは、開発者が突然不慮の死を遂げて、それ以来持ち主が変わるたびに死んでしまうって言ういわくつきの代物でしょう?その上、死に方がまともじゃない」 日「・・・全員と云う全員が極度の痴呆状態に陥って幻覚を発症して自害、もしくはあまりの恐怖に心臓が耐えられないケース・・・共通しているのは“記憶”や“人格”といった思念の感情が一切なくなっていたということ」 木「いずれにせよ、人間には過ぎた代物」 火「ああ、一応この町中に領域張っちまったしな。どうする?邪魔な連中、全員撃つけど?」 月「願わくば・・・宝だけ持ち去って早く行こう」 水「慎重ですね」 月「・・・いや、土がおねむだ。早くしないと体調のバランスを崩す」 見ると、月の背中には土がくぅくぅと寝息を立てて眠っていた。 「「「「「・・・了解」」」」」 その頃。 警備員の制服を着込んだメイが廊下を歩いている。 そして、お目当ての教室が立ち並ぶ6階についた。 「S級進学クラス特別棟」 教室に入ると、そこではまさしく授業が行われていた。 しかし、学生達の顔は青白く、精気が宿ってないようにも見える。 ただただ黒板に書かれている文字をノートに言われたとおりに書き、血走った目でまくし立てる教師の言葉を忠実に聞き入っている。 藍メイ「・・・・つまらんのぉ」 メイがケッといわんばかりに皮肉を吐き捨てる。 しかし、ふと黒板を見るとそこには難しい数式や単語が並び、複雑な公式が書かれている。 その中に、黒板にわずかであるが、異様な紋章が浮かび上がっているように見えた。 それを見て、メイがにぃっと笑みを浮かべる。 火がビルの前に立ち、ふっと息を吸ってはくとその姿を見る見る漆黒の西洋風の騎士を思わせるような出で立ちに変わり、頭部には馬を模した漆黒の仮面が纏い、腕には巨大な矛と銃と化している右腕を構えた。 憤怒の王・サタン。 その姿が今此処に逢った。 サタン「それじゃあ・・・・狩るか」 サタンがライフルを構えて狙うべき「標的」の周辺にあるものを透視しながら見やり、赤い火災報知機を見つけると、それ目掛けて弾丸を発射した。 弾丸は壁をすり抜けて、標的に向かって方向を何度も何度も変えながら確実に飛んでいき、やがて着弾した。 バンッ!! ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!! そして、もう一発銃弾を発射する。それは今度は熱を持って、スプリンクラーに着弾させた。 藍メイ「な、何や?」 突如静かだった廊下に凄まじい音が鳴り響き、天井から水しぶきが降ってきた。 その音に教師達は目を丸くして教室からとびだし、生徒達に避難を呼びかけている。 しかし、異様なことに生徒達はずぶ濡れになることもいとわず、ひたすらノートに課題を書き込んでいた。 教師達が動かそうとしても石のように動かずにいる。 その光景を遠くで見ていたサタンも驚きを隠せないでいた。 サタン「・・・これは、もはや確実だな。神の頭に取り込まれてる。あいつらの精神に青白いコードみたいな光が見える。そしてそれを辿ると・・・・・」 その生徒達から伸びるコードを辿ると、そこには青いボールのようなものに行き着いていた。 そのボールらしきものが、青く不気味な光を発しながら点滅している。 サタン「・・・神の頭だ」 もう一発、弾丸を発射しようとしたその時だった。 ふと、声が頭の中に響き渡る。 “いいのかね?君が銃弾で撃つというのなら、撃たれる前にこの町を丸ごと吹き飛ばすことだって可能だが?ちょっとコンピューターに進入していじくってやれば・・・君達の願いも敵わなくなる” サタンはその言葉に顔を強張らせて、身構える。 (頭の中に直接聞こえてやがる・・・!まさか、精神に神の頭が話しかけてきているのか?) “ははは・・・この町における魔宝の存在、それは君達にとっても必要不可欠な代物なのだろう?私は自ら逃れる術はいくらでも知っている。君達が焼け野原となったこの町で魔宝を探そうと躍起になっている間に、私が全てを頂くとしよう” サタン「けっ、なめんなよ。たかだかコンピュータに過ぎないお前にそこまで出来るのか?」 “強がりを・・・・ああ・・・できるよ。私に不可能は無い。ほら、それを証明させてやろうか?” すると、周囲から足音を立てて無表情の集団がサタンを取り囲んでいる。見るとそれは塾で勉強していたはずの学生達であった。 学生達は手にナイフや斧、さらにはスタンガンやエアガンを持って静かに迫ってきている。 “私の能力でね。人間を想いのままに操ることができる。私がこの世界に来た時学生の1人に拾われてその学生の記憶を支配し、そのまま進学塾で私の念を受信し、思いのままに操る人間を増やしていたのさ。知識を増やしてやったのはほんの手慰みだよ。まあ、彼らもこの勉強が無駄な行為とは思わないだろう。私の手駒として働くのだ。己の意思などまるで持たない人形同然としていき続け、忠誠を誓うのだ!進学とか夢とか、全て私が奪ってやるのだ!!夢さえも奪う!それが、賢いものに許される権利と云うものなのだよ!” 神の頭が陶酔したようにまくし立てる。 その言葉が傲慢に満ち溢れているのを感じ、サタンが顔を見る見る怒りに歪める。 サタン「ざけんなよ・・・テメェ何様だ!!」 “おやおや、君達がやらかした過去の出来事こそ、末代まで同胞を苦しめているのに、そうやってのこのこといき続けている君達が言える言葉かね?” サタンがその言葉に見る見る顔を赤くさせて、矛から尋常ならない殺気が発せられる。 すると、日が手を横に出して制するようにサタンの前に出てきた。 日「・・・・言ってくれますね。私達の罪は許されないし、洗い流せることも出来ない。だって、生きているんですもの。変えられない過去を背負って生きるからこそ本当の生きるって事を悟るものなんですのよ」 木「それでもほむらちゃんはね、素直すぎて純粋だから、過去のあれを悔やんで苦しんで・・・それでもそれでも未来に向かって自分らしく生きようとしているの」 水「そんなほむらのことを・・・笑うというなら・・・許さない」 見ると、そこにはもはや学生達が全て倒れている。しかし、生徒達は寝息を立ててぐっすりと寝込んでいる。 “くくっ・・・医師の麻酔薬かね?” 日「・・・おしゃべりはここまでですわ。散れ、外道」 日が一振りの小さなカッターナイフを取り出すと、瞳が金色に光り輝き出し、空を切るように大きく振った。 すると、突然空間が笑うように黒い口を開いて建物の一部に向かって飛んでいった。 “時空を切ることが出来る能力・・・しかし・・・私をそう簡単に倒せるとでも?” その直後だった。 ”・・・・何?!ぐはっ!!ぐげっ!!!“ 突然神の頭の精神が途絶えた。 それと同時に。 ビルの壁がまるで砂が風に吹かれていくように消えていき、満月が映し出された。 日「・・・・逃げられた?!」 日たちがその場を走り出す。神の頭の“匂い”を頼りに。 町から離れた河川敷。 神の頭を抱えたメイが、神の頭を無造作に捨てる。 “き・・・ぎざま・・・・何を・・・これぁwせdrftgyふじこ!?!?” 藍メイ「ああ・・・あんたがうちを操ってくれて、塾から脱出するはずやったのになぁ。すまんねぇ、プラグからあんたを外す前にあんたの一部にうちが作ったコンピューターウイルス放り込んだった。そうやねぇ、データが完全消滅するまで、あと1分ちゅうところかいな」 “お・・・・己・・・・・・・・・・・・・・・ええええええ!!” 藍メイ「まあ、もっとも」 メイがバックルを腰に巻きつけて藍色の土星の紋章が入ったルーンを突き刺した。 藍メイ「それまでゆっくり待つつもりはないよ」 見ると、神の頭の周囲に土が舞い上がり、見る見る腕や脚を作り出して巨大な四肢を持つ巨人の姿になる。 巨人は唸り声を上げながら、太い拳で殴りつけてくる。それを軽く避けて、メイがバックルを装填する。 藍メイ「変・身」 「ARC CALLING ROD FORM!!」 アークの身体に藍色の狐を思わせるパーツとアーマー、そして狼のようにも見える勇ましいマスクを被り、右手には鋭い穂先を光らせる長槍・疾風の槍が握られていた。 アーク(グリード)「全部・・・奪ってあげる」 そうして、槍を構えて素早く飛び上がると、穂先を回転させながら勢い良く体当たりを仕掛け、槍を突き刺してくる。 すると、風が渦巻いて巨人の各部分を縛り付けるように纏い、見る見る巨人が風のロープに縛られるような格好になる。 アーク(グリード)「夢を奪う・・・言うてたなぁ。ざけんなや。夢だけは・・・奪ってはいかんのや!!人の夢をうばうっちゅうことだけは、詐欺師だろうと盗賊だろうとやったらあかん。その必要悪のルールを破るあんたは・・・許せへんよ」 アークがルーンを槍の柄に突き刺すと、槍に藍色の風が渦を巻きだし見る見る凄まじい暴風の刃となって変わっていく。 槍の回転力と突進力を極限まで高め突きを入れる一点集中破壊型の奥義。 ロッドフォームが目にも止まらない速さで駆け出した。 そして。 強烈な圧力変化を恐るべき破壊力を秘めた衝撃波として相手にぶつける。しかも四方を囲んだ”幻影”も同時に衝撃波を発生させる事でその破壊の波は重なり合い、何十倍にも増幅される。喰らった相手は外傷はもとより内蔵までがズタズタになる。さらに衝撃波は目には見えないものなので止める事も不可能に近い。 見ると、巨人の身体は孔だらけになり、やがて崩壊して地面に横たわった。 それにカードを突き刺して封印する。 すると、メイとグリードが分かれた。 メイ「・・・ぷっはあ!!ムチャしすぎだ!!」 グリード「あっはっは、姐さんのアイディアやないけ」 グリードが言ってクスクス笑う。 グリード「しっかし、最初はデータを分析して調べてから拝見しようとしてたのに、いっきなりうちに乗っ取られたふりをして心の中から話しかけてきたときにはビックリしたわ」 メイ「事情が飲み込めなかったけど、もう慣れてるし。それに、あのインテリバカにもムカついたし」 グリード「・・・でも、うちが嘘つきで愉快犯であんたがムカつくタイプ思われると思ったけど、あんたがまさかあんな嘘思いついてくれるなんて思わなかったわ」 メイ「・・ああ、ウイルスなんて嘘だよ。具合が悪くなったのは、ボクが生徒を装ってその日のテストのデータを打ち込んで一時的にパニック起させただけなんだけどね」 グリード「完璧に教え込んで自分の思い通りにしか動かないはずの生徒の中に、あそこまでアホな回答されたら、パニくるわな」 そういって、グリードがゆっくりと起き上がる。 グリード「ああ、楽しかった。うち、あんたが一緒に戦おういうてくれたときは驚いたけど、おもろかったで」 そういって、パンパンと尻をはたいた。 するとメイが起き上がってふうっと息をつく。 メイ「・・・さーてっと、けーるぜ」 グリード「・・・けーるって?」 メイ「帰るんだよ。お前、泊まるあてあんの?」 グリード「・・・・え?」 メイ「だから、ないならうちにこい。それで、お前が飽きるまでいればいいし、アテがあるならそっちにいけばいいけど、今日はもう遅いし泊まってけよ」 そういって、メイがグリードの首にかけてあるクロスをいじった。 メイ「綺麗・・・かなり使い込んでるね。ずっと旅してきたって顔だ。これも何かの縁ってやつだ。今日は助けてくれたお礼にと思ってくれや」 グリード「え・・・・あ、あのなあ、うちのこと信用せんといてーや。うち、あんたが強そうだからって理由だけで憑依して、自分が儲かりたい理由でアレ取りにいったんやで?一歩間違えたら人でなしや。そんなうちのこと、信用しきった目で見られたら・・・」 メイ「してるよ」 グリードの顔つきが本当に固まった。 メイ「お前の嘘に付き合ったのも、お前が1人であの魔宝を追っていたのも、お前が誰かのために嘘をつけるヤツだって事も、きっとそういうヤツなんだって信じたいから。だって、お前の嘘、聞いてて面白いんだよ!!ボクの心をワクワクさせる!」 そういって、メイがグリードに満面の笑みをみせた。 信頼を言葉にしなくても伝わる、純粋な笑み。 グリードが顔を真っ赤にして俯いてしまった。 グリード(あ・・・あかん・・・この子・・・メッチャメッチャかわええ・・・・!!!) 頭が真っ白になり、何も思いつかなくなる。 すると、グリードの手をメイの手が取った。柔らかくてひやりとした手。 ここまでが、グリードの意識が手放すまでの瞬間でもあった。 翌朝。 喫茶店のテラスで終電を逃したために寝ていたメイとグリードを見て店の主が驚いたのは言うまでもない。 翌日。 部屋で寝ていたメイがゆっくりと起き上がった。 見ると時間は午後3時。 しかし、今日は休みだ。 そう思ってゆっくりと起き上がると同時に―。 胸が急に締め付けられるような感じがした。 「・・・!!!」 息苦しくなってその場で座り込む。 すると、胸から堰を切ったようにゴホゴホと熱い何かがむせ返るように飛び出して来た。 せきが止まらない。 やがて、三分ほどたった頃。 ようやくせきが止まって、あまりの息苦しさに思わず涙が零れ落ちる。 顔中が真っ赤になったかと思いきや、血の気が引いたように真っ青になりつつある。 手を見ると、メイが舌打ちした。 その手には、赤黒く鉄の匂いがする液体がへばりついていた。 メイ「・・・・はは、もう少し、もう少しだけでいいんだ。・・・もう少しだけ、もう少しだけ・・・・・生きたい。あいつらと一緒に・・・いたいよ」 その悲痛な声は何時ものメイからは想像もつかないまでに弱弱しくはかなくて壊れそうな感じだった・・・・。 続く |
SHT
2008年03月13日(木) 12時36分44秒 公開 ■この作品の著作権はSHTさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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bpTwxy Fantastic blog post.Really thank you! Fantastic. | 30点 | click here | ■2012-08-08 18:50:45 | 91.201.64.7 |
遂に全員集合のヴァンデットチーム。高飛車、お色気、ヤンデレ、姉御、大和撫子、 ものぐさ。本当にいろいろなキャラが出てきてましたが、最後は怪しい関西弁ですか。 ここまで個性的なキャラを上手く纏め上げるのは至難の業です。灰汁が強すぎる キャラはその分、個性がありすぎて扱いにくいものですから。 今回の魔宝の神の頭ですが、読んでてこらぁてめぇ人間を舐めるなよ! と言いたくなりました。こういう自分が一番で他はチェスの駒程度しか 考えていない奴(?)は何時見ても腹が立ちます。 >グリード特性のウイルス ざまぁみろ!機械の分際で人間を舐めるからそうなるんだ! 最後でメイちゃんとも上手く纏まりよかったと思った矢先、今回で浮き彫りになった、 というかすっかり忘れていた悲しい宿命・・・・・・・そうです、メイちゃんは あと一年で・・・・・・・・・ SHTさんの描く主人公はどこかぶっ飛んでるのに、同時にどこかほろりと来る娘ばかりです。 この先どんな最後が待っていても、トコトンお付き合いしていきます! |
50点 | イタリアーノリク | ■2008-03-13 09:59:38 | i121-112-55-60.s10.a022.ap.plala.or.jp |
合計 | 80点 |