仮面ライダーメイデン 二十三時間目「挑戦!!疾風の戦乙女」 |
ライノセラスサイマを倒した茜たちは疲労困憊で歌を病院まで送り返した後、無事ポロネーゼについたときは茜は疲労の限界で倒れこみ、そのまま部屋で寝付いてしまった。 その後、歌が茜たちに託した手紙を開くと、そこには歌と舞が記した内容の手紙があった。 「ヴァリアブルキー。君たちの持っているエレメンタルキーのつくりを分析して、データを基に、ナイトクラス、クイーンクラス、キングクラスの3つの上級の能力を取り込み、パワーアップさせる新しい機能を備えたアイテムです。君たちに伝えなかったのは、このアイテムは絶大なる力を与えると引き換えに、精神の負荷が激しく、長時間変身していると肉体がもたない恐れがあるからです。このアイテムは非常に強靭な精神が必要不可欠でした。戦う為に、本当に必要な想いを見つけてから君たちに託したかったので、秘密にしていました」 「お前たちは強い。いつか、このアイテムを使いこなせる日が来ることを信じている。なぜなら、お前たちは人を、この世界に生きる全てを愛しく想っているから、戦うことが出来るから。あたしは信じているからね」 藍「歌くん・・・・舞くん・・・・・そこまで僕たちのことを・・・」 3人は自分たちのことを信じてくれている力強い文章から二人の気持ちが伝わってくるようだった。言葉に出来ない嬉しさで全身が打ち震えている。 萌黄「あたしたち・・・もっと強くなれるよね」 碧「うん。だって、こうしていつも見てくれている二人がいるんだから」 萌黄の瞳には光るものがたまっており、碧も必死で堪えているようだった。 藍「よし、僕たちも頑張らないとね!」 そういって、藍が笑みを浮かべると萌黄と碧が頷きあった。 深夜。 天明市内、山中。 銀色の長い髪をなびかせて、槍をただ無心に振り続けている女性がいた。 その瞳は真っ直ぐで強く光を宿し、振るう槍裁きは優美かつ力強く、まるで極上の舞を踊っているようであった。 月明かりに映し出されるその姿は、暗き山間を舞台にするには不釣合いとも思えるように美しい。この舞を見たものは誰もが心を奪われ、見ほれてしまうであろう。この地に巣食う異形でさえも思わず彼女に見入っていた。 (ウ・・・美シイ・・・・・) (ア・・・・アア・・・) 吹く風さえもまるで彼女を映えさせるためにやさしく、時に力強く吹き、周辺の木の葉や花びらが舞い上がる。 彼女こそ、白鳥の禍魔、スワンサイマこと翼という少女であった。 翼(杏樹・・・。戦場では隠密は死と隣り合わせ・・・。戦場では情をかけることは、己の傲慢ゆえに生み出す弱さと知る。でも・・・それでも、あたしはお前の犠牲を割り切ることなど・・・・出来ないっ!!) 翼が気合とともに、槍を振るうと、周囲の木の葉や花びらが上空に舞い上がり、木々がなぎ倒された。 翼「白刃歌、黒刀舞、エース・・・。貴方たちは私が倒しますっ!!」 決意と信念に満ちた熱い瞳を輝かせて、翼が槍の矛先を敵に向けて叫んだ。 その姿を見て、キング、朱火は冷たい視線で見下ろしていた。 が、その唇を吊り上げた・・・。 翌朝。 朝焼けの河川敷で、茜たちが集まっていた。 秋とはいえ、だいぶ冷え込んできている。寒さに弱い碧と、朝に弱い藍が眠そうな顔つきで立っている。 対する茜は赤ジャージを着込み、鉢巻を頭に巻いて竹刀を持って熱血モードに入っている。 茜「よっしゃあ!!絶好の特訓日和だぜ!!」 萌黄「だぜー」 藍「・・・・そりゃ特訓は賛成だけどさあ」 碧「こんな早朝から・・・・ふわあ・・・・・」 茜が竹刀を振り上げて地面を思い切り叩く。すっぱーんと気持ちのいい音を立てる。 茜「バカヤロウ!!!これぞ青春ではないか!!!!朝焼けの太陽があたしたちの未来を祝福してるぜっ!!!朝日に向かって今こそ、腑抜けきった己と向き合い、体を動かし、心の汗を流そうではないかっ!!!!」 藍「・・・・・スポ根もの見すぎ」 碧「ところで、何をやるのですか?まさか、町内100周とか、腕立て伏せ千回っていったら殺しますよ?」 茜「バカタレ!!!!そんないきなりやったら体壊すわ!!!昔やったら、アネゴダウンさせちゃったし、筋肉痛になったし」 やったことあるのかよ。 そして、それにつき合わされたのか、舞よ。 茜の押しの強さに根負けしてつき合わされ、疲労困憊の状態で学校の授業を受け、ソナタでの集まりに参加し、家に帰り着いたときの舞の疲労振りを想像するだけでも気の毒に思えてくる。 ちなみに、一週間連続付き合い続け、八日目に舞は見事にぶっ倒れ、1日中学校サボり・・・もとい、藍たちに介抱され、散々説教を受けたのはご愛嬌。 茜が笑みを浮かべて、ノートを取り出して広げると、トレーニングのスケジュールが書かれてあった。内容は、無理なく、そして短期的で体を鍛えるための必要最低限のやることが書かれている。 萌黄「・・・これ、舞ちゃんが?」 茜「あたしが作ったメニューじゃ体持たないって」 藍「だろうね」 その中で、碧が見たメニューの項目に、「苦手克服実践訓練」という項目があった。 藍「・・・これは?」 茜「あたしたちの特性を見て、その長所と短所をまとめて、どんな敵にどのような戦法で挑めばいいか、書いてあるんだ。よっしゃ、これやってみよう。まず、準備体操してから」 茜「変身」 藍「変身」 萌黄「変身」 碧「変身」 それぞれがライダーに変身すると、まずパルサーがフレスベルグを構えてセイバーにむかって銃弾を乱射する。セイバーはなんとか狙いを外そうと縦横無尽に走り回るが、パルサーはまるで動きを予測したかのようにことごとく命中させる。 セイバー「あたしの弱点はこれだ・・・。銃撃戦じゃあたしの突撃戦法は通用しない。したがって、剣片手に突っ込んでくるような相手には碧、お前が適役なんだ」 パルサー「な、なるほど・・・・」 次は、アベルがパルサーに斧で切りかかってきた。パルサーは引き金を何度も引き、無数の銃弾を発射する。同時に、今度はアベルが爆煙に包まれた。 パルサーの余裕は、しかし、煙の中から何事も無かったように出てきたアベルによって完全に霧散した。アベルはさらに歩を進め遂に己の間合いに敵を捉えた。 アベル「はああああああああああ!!」 気合鋭く手にした斧を横に薙ぎ払う。パルサーは咄嗟に後ろの飛んでかわそうとしたが、斧の一撃を受けて後退する。 アベル「あたしなら、碧ちゃんみたいな銃撃戦はアーマーでしのげるから有利だね」 パルサー「防御を得意とする敵には銃弾は不利ですか・・・」 ランサー「次は僕だね」 アベル「いっくよー!!」 アベルの斬撃はランサーを捉えたかに見えた。しかし、一呼吸早くランサーは身を屈め、相手の一撃をかわしていた。そのままがら空きとなった相手のボディに渾身の突きを繰り出す。 アベル「あれれ?!」 ランサー「振り回すだけじゃ、ダメダメ」 パルサー「なるほど。長距離のおける攻撃ならアベルの攻撃は避けられる・・・」 セイバー「単純な攻撃になりがちだからね。パワーファイターは・・・」 ランサー「なるほどね、というと、僕の槍裁きの天敵、つまり小回りの利く戦い方が・・・剣を用いた戦法だ!!」 セイバー「そういうこった!!!」 ランサーは槍を突き出すが、セイバーは上体を反らして攻撃をかわす。そして相手が槍を引き戻すより早くセイバーが槍を掴んだ。そしてそのまま懐に潜り込み一気に切り込む。 セイバー「行くぜ行くぜ行くぜーーーーーーーーーーー!」 ザシュ!ザシュ!!ザシュ!!!ザシュ!ザシュ!!ザシュ!!!ザシュ!ザシュ!!ザシュ!!! そのままランサーを滅多切りに切り刻む。 そして、全員が変身を解いた。 茜「これが敵だったらとか、シミュレートするんだ」 藍「なるほど、これならいかなる敵に対しても対策が打てるやね」 萌黄「特殊能力を除けばね」 碧「そこはその場その場での状況判断が鍵を握りますね」 4人が頷きあう。 茜「敵はもうかなり数がいなくなっている。多分焦り出すころだ。焦ると、相手の手の内はおろか、敵の目的や奴らを動かしているキングの居場所も芋づる式に分かる。今は先ず、相手の手の内を読み、いかに自分が優位に戦略を立てられるかを考えようぜ」 茜は単純明快かつ単細胞で馬鹿だが戦略に関する洞察力はかなり鋭く、視野が広い。これは彼女が戦闘的であり、4人の中でも一番多く戦ってきた経験から培われた知識である。 こうして、4人が新しいトレーニングを始めた。 1週間後。 病院から退院した(ファウストの力を持って、奇跡的な回復能力で全快した)歌も合流し、茜たちのトレーニングを聞き、感心したように頷いた。 歌「なるほど、悪くはありませんね。うん、君達、かなりの作戦です。僕も驚きました」 碧「正直、茜がここまでやるとはね・・・」 萌黄「最近、茜ちゃん頑張ってるんだよ。トレーニングも、お勉強も。なんだか、萌黄たちも頑張らなきゃって思っちゃう」 そういって、碧たちが笑い逢う。 以前まではどこか不安要素がある4人であったが、今はお互いの欠点を補い合い、絶妙なチームワークを立てて、策略を立てて慎重かつ攻める際には大胆にやるといった戦法に切り替えた際の4人の動きは歌も感心するほどであった。 しかし、藍だけがどこか不安そうに、テラスで居眠りをしている茜を見ていた。 藍「・・・でも、最近、茜何だか頑張りすぎてない・・・かな?なんだか・・・無茶しているようにも見えるんだけど・・・」 萌黄「藍ちゃん、心配しすぎだよ。茜ちゃんなら大丈夫だよ。いつも、元気一杯で明るい茜ちゃんのままじゃない」 碧「藍・・・・、何か気になるの?」 碧が尋ねると、藍は頬杖をつきながら別にと呟いた。 その日の夕方。喫茶店ソナタ。 藍は1人やってきて、紅茶を頼むとウエイトレスの少女に何気なく尋ねてみた。内容は茜のことだ。そして、その答えは藍の予想通りであった。 藍「そうか、やっぱり茜、元気なかったんだね」 奈々美「うん・・・。1人で来てたとき、すごく元気がなかった」 眞子「茜があんなに落ち込むなんて見てられないしさ」 それは斉藤千佳のことであった。 (回想) 茜「なあ、彩乃、眞子、奈々美。狂っちまうほど好きになることって、なんでこんなに苦しいことなのかな」 彩乃「ど、どうしたのよ、急に」 奈々美「茜、好きな人出来たの?」 茜「・・・あたしの知り合いの話。そいつが、ある人の事を好きになって、でも、その人死んじゃって、苦しくて苦しくておかしくなっちゃって・・・。結局いなくなっちゃった。あたし、何も出来なかった。ただ、あいつの最期を看取ることしか出来なかった。掛ける言葉さえ見つからない。あたし、どうすればいいのか分からないまんまだ。今でさえ分からない。それが・・・すごく苦しい」 眞子「茜・・・・?」 茜「あたし・・・もっと強くなりたい。強くならずにいられない。強くなれば、強くなれば、答えが出てくるはずなんだ。でも、どうしても答えが出てこない。あたし、どうすればよかったんだ・・・?」 藍「なるほどね。それで、急にトレーニング始めたり、妙に強がったりしてたってわけだ」 藍には分かっていた。感受性の鋭い藍だけが、茜の心境の変化に気付いていた。 藍「ありがとう、茜の事聞けてよかったよ」 彩乃「藍、茜のこと本当に心配してるのね」 藍「当たり前だろ・・・。僕達のリーダーなんだからさ」 そういって、藍がふっと優雅な笑みを浮かべて、紅茶を一口飲む。 藍「可愛い女の子には笑顔が一番の化粧ってものだ。僕が茜の悩みをぬぐって、心のメイクアップさせてあげないとね。それが、プリンスってやつだ」 そういって手にポンと薔薇を取り出すと、クスリと笑みを浮かべた。 夜。 帰路についていた藍の前に現れた人物を見て、藍の顔が緊張で引き締まる。 銀色のロングヘアを風になびかせて、銀色の瞳を輝かせて凛然とした立ち振る舞いで彼女の視線を真っ直ぐ突き刺すように見ているのは、翼ことスワンサイマであった。 藍「まさか、君からデートのお誘いとはねぇ?僕もかなりイケてるってやつかな?」 翼「でぇと?何ですか、それは。あたしは・・・・お前にこれを渡しに来た」 翼が一通の封筒を投げ渡す。 白い封筒には、墨で「果たし状」と書かれている。 藍「・・・・はい?これ、何ていうか、その、斬新なラブレター・・・というか、恋文なんて今時純粋で珍しいというか、時代遅れと云うか・・・」 翼「あたしは、杏樹の仇を討たせてもらう。ウイングクラスのものを幾度となく倒してきたお前たちをこれ以上野放しになど出来ない。あたしと勝負しろ。そっちは何人でもいい。あたしが、全てケリをつけてやる」 藍「おいおい、それ、死亡フラグってやつかい?」 翼「あたしは闘い続ける。例え、死ぬ事になろうと、キングをこの世界の王にするためなら本望だ。だが、その前にあたしはお前を倒す!!」 翼が槍を構えて背中から美しい純銀の光を放つ翼を広げる。 翼「アクアクラスのエース、藍殿とお見受けした!!貴殿たちに一騎打ちを申し込む!!あたしは逃げも隠れもしない。三日後、体力を万全にしておくがいい!再びあたしはお前たちの前に現れる!!その時こそ、決着を着ましょう」 その瞳の真っ直ぐな力強さ、信念に満ち溢れた高潔な武人のそれである。 自分の意思を通すために戦う、故に彼女は強い。藍は翼の体から放たれる覇気に心底震えた。 そして、翼は背中の翼を広げると、満月の美しく冴える夜空へと羽ばたいていった。 藍「・・・・天使・・・みたいだ。故に強いか。最強だね、これは・・・」 その姿は漆黒の夜空を美しく照らす銀色の天使のようであった。 しかし、その表情は凛々しく勇ましい戦乙女(ワルキューレ)のそれ。 ウイングクラスのクイーンがついに動き出した・・・!! 続く |
ロジャー
2009年01月14日(水) 23時37分33秒 公開 ■この作品の著作権はロジャーさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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WflDrg Thanks so much for the blog post.Thanks Again. | 30点 | click here | ■2012-08-08 02:39:44 | 91.201.64.7 |
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