| 仮面ライダークロノスたん・序章なごさん-うしろ |
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スミレ「ぁ、痛ァ……!?」 スミレにとってそれは、実にビックリ仰天な出来事だった。 突然――ホントに突然、まるで瞬間移動でもしたかのように――現れた謎の怪人少女に殴り飛ばされ、壁にぶつかって頭を強打。 痛い、マジ痛い、やってらんねぇ。 それだけならまだしも、謎の怪人少女はあっけに取られるシルヴィを抱えて舟から飛び出していってしまった。 そのときシルヴィが発した「なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ、もうヤだぁ―――――っっ!!?(涙 」というアレな叫びが、また同情を誘う。 ちなみに阻止しようと飛びかかったアリサは、しかし怪人少女にあっさり蹴り飛ばされてしまった。 痛む頭を押さえつつ、ヨロヨロとスミレは立ち上がる。 スミレ「ぉ、追っかけないと……!」 面倒ごとは正直ゴメンなのだが、宇宙人誘拐現行犯を放置しておけるほど悪どい性格はしていないようだ。(ぉ オロオロとうろたえるアリサを頭の上に乗っけて、スミレは船の外に出る。 すでに時間帯は深夜。 調査用に設置されていたライトの光が舟を照らしているが、雑木林などは真っ暗だ。 ライトの逆行に目をしかめつつ注意深くシルヴィと謎の怪人少女の姿を探すが、見つからない。 そりゃそうだ、特異点であることを除けばスミレのスペックは一般人(ぱんぴー)以下なんだから。 そこで考える、怪人相手には怪人の力を利用するのが常套、と。 スミレ「よし、探しながら追っかけるよアリサ!」 アリサ「りょーかいなのです!」 アリサは「とぉーっ」とか力のぬけるかけ声をシャウトしながらスミレの身体に入りこむ。 髪の一房と瞳の色が真っ赤に染まり、腰に巻きつけたるはガンメタ調のクロノスベルト。 ポケットから漆黒のライダーパスを取りだし、赤色のフォームスイッチを押す――――!! Aスミレ「へん、しんっ!」 ≪――Gun Form――≫ 赤い犬耳メイド服+ふさふさ尻尾のクロノスたん・ガンフォームは、ばばっ! と這いつくばった。 スミレ(どう? なんか匂う?) クロノスGF「くんかくんかくんか……! 見つけた! さっきはアヤフヤだったから見逃したけど、今度はそーはいかないのですよっ!!」 スミレ(よし、追っかけるよ! ……てゆーか、なんか本格的に犬だよネー) クロノスたんは四つんばいのまま、シルヴィと謎の怪人少女を追いかける――――!! ……その姿はどうみても犬です、ほんとうにありがとうございました。 ★ シルヴィ「ちょっとアンタ、なにすんのよ!!」 ???「…………」 シルヴィ「ムシすんな―――――っっ!!」 さて、一方のシルヴィはというと。 謎の怪人少女“X”にロープでがんじがらめにされ荷物のごとくぞんざいに扱われ、そこから逃れようとジタバタしていた。 しかしこの怪人少女――どうやらカメレオン種のようで、それっぽい感じのコスプレをしている――はシルヴィの猛抗議にもひたすらに沈黙をつらぬいている、なんというか人間味(?)が感じられない。 Navi子ちゃんのほうがまだマシと思えるぐらいのその態度、機械以下とありえない。 “X”はダダダダっ! と森の中を迷う素振りもなく走る走る走る。 飛び出した枝が身体に当たることもまるで気にせず、目的地にむかってただただ走る走る走る。 と、そのとき――――! クロノスGF「逃がさないのですよ、今すぐシルヴィちゃんを放すのです―――――っっ!!」 シルヴィ「あれって、もしかして……助けに来てくれたの……?」 “X”「…………」 シルヴィの目に映ったのは野犬? いや、赤い犬耳メイドさんだ!! クロノスたんはぐんぐんと距離をつめ、「とりゃ―――――!」とスライディング。 “X”はそれをジャンプして回避するも、もともと足止め目的だったであろうクロノスたんの思惑にまんまとハマった形となる。 “X”はシルヴィを抱えたまま戦闘開始の意思を表すように構えた。 クロノスGF「もー大丈夫なのですよシルヴィちゃん。さて、悪いイマジンさん――――、イマジンじゃない? なんだかよくわかんないけど、とにかく冥土に送ってあげるのです!!」 “X”「……………」 スミレ(なんかキモチ悪いね、ぜんぜん喋らないし) かくして、クロノスたんは“X”に立ち向かうのであった――――!! ★ シャル「申し訳ありません、遅れました―――――って、あらあら」 クロノスGF「きゅ〜〜〜〜〜……」 シルヴィ「……だっさ」 珍しく慌てて追いかけてきたシャルが見たものは、目を回してぶっ倒れているクロノスたん。 ぽんっ、と音がしてクロノスたんの身体から負け犬が飛び出す。 クロノスたん・プラットフォームは頭をふりながら立ち上がった。 青いフォームスイッチを押しながら悪態をつく。 クロノスPF「あたたた……ホント頼りにならないねこの子は……シャル、行くよ!」 シャル「えぇ、それでは参りましょうか」 ≪――Sickle Form――≫ ベルトから青い光が放たれ、そこにいたのは青い透け好けローブwithスク水。 時代が時代なら変態である。 いや、今でもキワドイけどさ。 クロノスSF「その性(さが)、性技の鎌で断ち切ります! ここからはワタクシがお相手いたしましょう。 それはそうとスミレさん、ズイブンといいように手玉に取られたようですね?」 スミレ(いゃ、シルヴィに当たったらいけないから銃はダメって言ったら、この有様だよ。 まさかここまで喧嘩に弱いとは思わなくってネー、はははは……(苦笑 ) クロノスSF「……全イマジンを代表して申し訳ありません。(苦笑 」 いくらアリサでもそこまで弱くない、そう思っていた時期がアタシにもありました……と、スミレは後に語る。 正確には戦ってすらいない、“X”は突っかかってくるクロノスたんを避けて避けて避けまくっていただけなのだが。 そのうちに目を回して自滅というのだから、ホント目も当てられない。 “X”「……………」 シルヴィ「いたっ!?」 “X”はポイッとシルヴィを落とす。 目の前のライダー少女の強さは先ほどと比べ物にならないとわかったからだろう。 具体的にいうと、戦闘力に関しては飲茶とお料理教室を開催している野菜王子ぐらいの開きがある。 一気にケリをつける、そう判断して“X”は飛びかかった――――! “X”「!」 クロノスSF「急いてはナニを仕損じますよ? もっと落ち着きなさいな」 “X”の猛攻は、しかしその全てが掠りもしない。 クロノスたんは余裕綽々といった具合でかわし、おまけに腰に引っさげた黒光りするナニ(クロノガッシャー)をゆっくり組み上げるという始末。 早い話、ショートレンジでは圧倒的不利というわけだ。 クロノスSF「はっ!!」 “X”「!!?」 このまま堂々巡りになるかと思われた矢先、突如として襲いかかる鎌。 “X”はかろうじて防御したが、さほどダメージはない。 切れ味こそ鋭いものの、数をくらいさえしなければ致命傷には至らないと判断する。 となればやることは一つ、“X”は距離をとってあるものを取りだした。 ピンク色のムチ、きっとカメレオンの舌から連想したにちがいない。 スミレ(テンプレ的な武器だよねー。っていうかいつも思うんだけど、どっから出してんの?) クロノスSF「話の都合でしょう♪」 スミレ(それ言っちゃオシマイだよネーw) シャルに任せているとそこそこ余裕ができるのか、スミレはしょーもないことを考えていた。 そんなアホな思考にわざわざ対応しつつ、クロノスたんの目は“X”を捉えて離さない。 ピシィっ! と音がする、それより早く回避行動に移る。 わざわざ使うあたりかなりの腕前で、少しばかり気を引きしめる。 “X”「!! !! !!!」 スミレ(うゎ、ちょっとヤバいかも。シャル、シルヴィどっかやっちゃって。ぶっちゃけ邪魔でしょ?) クロノスSF「ですね。はっきり言って足手まといです」 シルヴィ「……いーわよいーわよ、どーせ私は足でまといのお邪魔虫ですよーだ……ぐすん」 怒涛のムチさばきは木をへし折り、大地をえぐり、確実にクロノスたんに迫りつつあった。 シュタっ! とシルヴィを抱え、クロノスたんは再び跳びまわる。 木を踏み台にして跳べばへし折られ、地面を踏み台にして跳べばえぐられる。 少しづつ荒地と化していく森の中、そうそう逃げ切れるはずもなく。 クロノスSF「くっ!?」 ついにカメレオンの舌はクロノスたんを捉えた。 とっさにガードしたためムチの侵攻はガッシャーシックルに留まっているが、さすがにコレは手放せない。 かといって力比べでは向こうに分があるだろう。 勝った! クロノスたん完! とか“X”は思ったにちがいない。 “X”はぎりぎりとムチを引っぱる力を強くする。 クロノスたんは面白くない表情で、どうにか踏んば―――― クロノスSF「仕方ありません、目には目とイきましょう」 ――――らなかった。 カチリ、とガッシャーシックルのトリガーを引く。 “X”「!!?」 突然、“X”は手ごたえをなくして後ろにこけそうになった。 そして驚きに目をほんの少しだけ開く。 クロノスたんが手にしていた武器、それが真ん中からポッキリと折れているではないか。 クロノスSF「折れている? 何を馬鹿な。よく目をこらしてご覧なさいな」 挑発するかのようなクロノスたんの言葉に、“X”はようやくカラクリに気がついた。 よく見れば細い光のようなもので持ち手と刃の部分が繋がっているのだ。 さながら鎖鎌のようにクロノスたんはガッシャーシックルを操り、“X”のムチからするりと抜いた。 クロノスSF「さて。ワタクシ、縄の扱いにかけてはそれなりのモノだと自負を持っていますが――――それを踏まえて問いましょう。まだヤりますか?」 “X”「……!!」 再度の挑発に、“X”は追撃で返事をした。 別に怒ったわけではないが、どのみち“X”にとってクロノスたんは倒すべき敵でしかない。 それはクロノスたんとて同じことだろう、向かってくるムチを全て叩き落す!! その合間にシルヴィの縄を片手間でほどいて木陰に逃がすと、懐からライダーパスを取り出す。 クロノスSF「隙ありです! 48の緊縛技が一つ、恥丘(ちきゅう)落としっ!!」 “X”「――――!!?」 なんとも器用なことに、戦っている最中に仕込みをしていたらしい。 ぐぃ! とガッシャーシックルの持ち手を引っぱると、ギャグのように“X”が吊り上げられた。 ……どこから吊るしているかは秘密である。 クロノスSF(正体不明ですから無闇に昇天させるというのは問題アリな気もしますが……「責任をもって追放いたします」といった手前、見逃すわけにもイきませんしね) ≪――Full Charge――≫ ババっ! と跳びあがり、空中で一回転すると、クロノスたんは右脚のカカトを前に突き出す――――!! クロノスSF「デンライダー、キック!!」 青い光をまとったカカトは、めきょっ!! と“X”の身体にめりこんだ。 その身体を蹴ってクロノスたんが反転すると同時に、“X”は声にならない断末魔をあげて爆発する。 ひゅるひゅるひゅる……、と回りながら落ちてきたガッシャーシックルを華麗にキャッチし、クロノスたんは爽やかに言った。 クロノスSF「監禁プレイは大人になってからですよ♪」 ★ 一方そのころ、宇宙船に放置されたオリヴィエは。 オリヴィエ「なんなんだお前はっっ!!?」 Navi子「はぁ―――――いっ♪ 私、スペースシップ補助用擬似人格プログラムのNavi子(なびこ)ちゃんじゅうななさい!」 オリヴィエ「それはさっき聞いたっっ!!」 Navi子「はぁ―――――いっ♪ 私、スペースシップ補助用擬似人格プログラムのNavi子(なびこ)ちゃんじゅうななさい!」 オリヴィエ「人の話を聞け――――――――――ぃっ!!」 Navi子ちゃんと格闘していた。 オリヴィエさんは留守番をお願いします。 そう言ってシャルが飛び出していってからというもの実に暇だったのだが、コントロールルームに戻ってきたときに現れたのがNavi子ちゃんである。 どうやらバルたん星人との関連性がハッキリしないかぎり同じ台詞を繰り返すようで、さきほどから「はぁ―――――いっ♪ 私、スペース(ry」がエンドレス状態。 セキュリティ面ではしっかりしているということなのだろうが、悪魔的短気さをもつオリヴィエはもはや爆発寸前だ。 スミレ「あれ? オリヴィエ、Navi子ちゃん動かしたの?」 オリヴィエ「誰がするかこんなポンコツっ!!」 Navi子「はぁ―――――いっ♪ 私、スペースシップ補助用擬似人格プログラムのNavi子(なびこ)ちゃんじゅうななさい!」 オリヴィエ「うが――――――――――っっ!!?」 頭をかきむしりイライラがクライマックスなオリヴィエは放っといて、スミレたちはすたすたとNavi子ちゃんの元へ行く。 Navi子「はぁ―――――いっ♪ 私、スペースシップ補助用擬似人格プログラムのNavi子(なびこ)ちゃんじゅうななさい!」 シルヴィ「……Navi子、結果はどうなの?」 Navi子「――――バルたん星人、承☆認! Navi子ちゃんじゅうななさい、セーフモードからアクティブモードに移行しますっ♪ さて、ラッキーラッキー朗報ですよー。なんと! 宇宙警備隊員のヒトがシグナルをキャッチ! どうやら舟ごとバルたんの艦隊に送り届けてくれるそうです、ヤッタネ!!」 シルヴィ「え……ホントにっ!?」 Navi子「Navi子ちゃんウソツカナイ。もうそろそろ来るんじゃないカナ、カナ?」 思わず身を乗り出して問いつめるシルヴィに対し、終始Navi子ちゃんはこの態度。 実にウザい。 それはともかく、変える算段がついたことにホッとしたのか、シルヴィはへなへなとその場にへたりこんだ。 アリサ「やった! これでママさんのところに帰れるのですよシルヴィちゃん!」 シルヴィ「うんっ、うん……!」 スミレ「ていうか、こんなラッキーあるんだねー。宝くじに当たったみたいなモンじゃない?」 シルヴィ「うんっ、うん……!」 オリヴィエ「えぇい、泣くな鬱陶しいっ!!」 シルヴィ「うんっ、うん……!」 泣き笑いしながら適当に相槌を打つシルヴィ。 またそんな言い方して! このイマジンでなし! と食いかかるアリサ。 うるさい黙れ、私はお前みたいな泣き虫が嫌いなんだ! と全力で(ぉ)襲いかかるゴボウの人。 もー、二人とも、進歩しないんだからー、と呆れつつも笑うスミレ。 そんな面々の中、やっぱり一歩引いたところで沈黙しているものがいた。 ★ ――これにて仕事は完了です―― ――しかし、よろしかったのですか? わざわざこのような手回しまでして―― ――……いえ。平和的解決であるなら、ナニも不満はありませんとも―― ★ ――――数十分後、舟の外で空を見上げていた一同の下にやってきたのは赤い光。 それを指してスミレは言った。 スミレ「あっ、アレじゃない?」 その言葉に反応したわけではないだろうが、赤い球体はふわふわとスミレたちの前に降下してくる。 ……意外と小さい、大体3mぐらいの球体で、舟を運ぶ力があるとは思わなかった。 ???【 XbUbTijIbVUzvVLfJCjUbJOpACE、LjNjHbCbSvUbOTfJKjOEbOb? 】 シルヴィ「HbJ」 ???【 EfIbJLpVLb。LjNjOpLbApLvHbKaFSjXpNbUUfJSv 】 シルヴィと赤い球体はなにやら言葉を交わした。 地球における英語のような、最大公約数的な言葉なのだろうか。 地球人であるスミレには全くワケがわからなかった。 ただシルヴィの表情から、この問題も解決に向かっていることだけはうかがえた。 スミレ「……ぇっと。とりあえず帰れるようになったってことでおk?」 オリヴィエ「そう、なんだろうな。はぁ、今日はやけに疲れた……」 アリサ「シルヴィちゃん、よかったのですよかったのです」 そんな会話をしていると、赤い球体はスミレのほうを向いた。 ……いや、どこから見ても赤い球体なので本当に彼女のほうを向いたのかはよくわからなかったが。 なんとなく、スミレにはそんな気がした。 ???【 ――――種族の垣根さえ超えた優しさを、その心を忘れないでくれ。その思いが実を結ばず、散ってしまうことがあったとしても。それだけが私の願いだ―――― 】 スミレ「へ? あ、う、ぅん」 そんな声が聞こえた気がした。 赤い球体が言ったとは断言できないのだけれども、スミレにはどこか確信めいたものがあった。 言葉が通じるというビックリ仰天な事態なのだが、どういうワケかそれを茶化す気にはなれなかった。 やがて赤い球体は舟の元に近づくと膨らみ、巨大化し、すっぽりと舟を包んでしまった。 をぉ―――――、とか感嘆の声を上げていると、近づいてくるのはシルヴィ。 ちょっとブスッとした顔つきだったけれども。 シルヴィ「……アンタ、名前は?」 スミレ「アタシ? アタシは黒野 スミレ。で、このちっちゃいのが順番にオリヴィエ、アリサ、シャル」 シルヴィ「そう。……私は、やっぱり人間は好きになれそうにないわ。もう地球に来ようって気にもならない」 スミレ「そりゃそーだよねー(苦笑 」 シルヴィ「……でも、アンタたちのことは忘れない。何だかんだ言って助けてくれた、アンタたちのこと、私、ぜったい忘れないから」 スミレ「……うん、アタシも忘れないよ。ガノタで泣き虫で巻き込まれ属性持ちのみょーちくりんな宇宙人がいたこと」 ちょっと感傷的な気分になって、舟に乗りこむシルヴィをスミレたちは見守った。 やがて舟は赤い球体に包まれたまま飛びあがり、そのまま飛んでいく。 遠い銀河の友だちと、別れのときだ。 スミレは球体にむかって手を振った。 光が見えなくなるまで。 To be continued……? |
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YP
2009年03月03日(火) 12時55分33秒 公開 ■この作品の著作権はYPさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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