仮面ライダーメイデン 第三十九時間目「インペリアルフォーム」
夕暮れ迫る校内は生徒の気配もなく静まり返っている。
学校はもうすぐ迫る期末テストのため、部活動も休止期間に入り、生徒たちも早帰りとなっているのだ。

部室棟にやってきた歌たちは部室の鍵をあけると、中に入り、まっ先に舞の使っていた机にやってくる。
机の上は意外と奇麗に整理されており、料理の本やゲームの攻略本が棚に収まり、ゲーム機が充電されたまま置かれており、新しいレシピが描かれたノートが開かれたまま置いてあった。

歌は舞の机の一番下の引き出しに、魅音からもらった鍵を差し込む。

カチャン

鍵が開き、中からB4サイズほどの封筒が入っていた。
取り出し、中をあけると数枚の写真と地図、そしてワープロで書かれたレポートが何枚か入っていた。

歌「これが、舞くんが極秘に調べていたファウスト、そして禍魔事件の調査書・・・」
魅音「舞ちゃん、以前から自分の身の回りで起こる事件の真相を突き止めるために色々と調べていたらしいの。自分に何かあったら、調べていたレポート全部ここにあるからって・・・」

茜「でもさ、何で舞は一人で調べていたんだろう・・・?」
茜が疑問を口にする。

歌「…もうその時から覚悟していたのかもしれません。本体である三鎧将の空から切り離されて寿命が縮まり、いつ死ぬか分らないと悟った舞くんは、それまでに事件のことを僕たちに伝えるために一人で調べていたのでしょう。彼女ならやりかねません」

自分の死が迫っていることを悟った舞が、仲間たちのために遺した最後のレポート。その情報を一つ一つ見逃さないように丁寧に見ていく。


「舞のレポート」
歌先輩、そして茜、藍、萌黄、碧、魅音。
お前たちがこのレポートを見ているということは、あたしはもうこの世にいないか、何かあったかということだろう。もしかしたら、生きていてももうあたしはあたしじゃなくなっているのかもしれない。
せめて、あたしが調べ上げた情報だけは伝えるために、このレポートに記しておく。

まず、ファウスト事件と禍魔事件。
この二つの事件は一人の人物が60年前より仕掛けていたものだ。
第二次世界大戦時、あたしと歌先輩が昔忍び込んだことがある風吹山の中腹内にある日本軍の防空壕には、禍魔と呼ばれている古代の生命体の遺伝子が偶然発見されたことがあり、日本軍はその遺伝子から復活させた人工生命体を作り上げることに成功していた。それがヒューマンサイマだ。ヒューマンサイマはかつて、禍魔の頂点についたが、その後眠りに就いたのか何があったのかわからないが、あの防空壕の中で眠り続けていたらしい。

ヒューマンサイマを生み出すことに成功した軍部の科学者たちは人工生命体による不死身の兵士たちを生み出して戦争に勝とうと画策し、人間の肉体を材料に人体実験を行い、やがて禍魔たちをよみがえらせることに成功したんだ。
その実験の一部となるレポートを手に入れた。
あの時の事件のとき、たまたま持ち帰っていたんだ。
最初は何が何だかわけがわからないから放って置いたけど、古文のテストで習った古文の知識で訳してみたら、とんでもないことが分かった。

禍魔(生命体名称)の遺伝子培養の際に大量の純度の高いβヘテロ・ノンセロトニンを注入することが不可欠である。この物質は人体の脳内物質の一部で第2次性徴期後期の若者達(16歳から19歳の健康体)の脳下垂体から最も多く分泌される物質であることが調査により判明している。
更にこの物質は脳幹の青斑核で作られるノルアドレナリンの過剰分泌に反応することが研究により明らかにされた。
ノルアドレナリンは、人間を極度の緊張状態・恐怖状態においた時に分泌される脳内物質である。βヘテロ・ノンセロトニンは活性化細胞の中でしか存在しない物質の為、脳死状態の人体からは抽出できない。
よって原材料となる若者達を麻酔もかけずに生きたまま頭蓋骨を開き殺される恐怖と激痛によるノルアドレナリンの過剰分泌を促した上で、脳下垂体を切除することが最良の抽出方法である。

それと禍魔の遺伝子は非常に順応しやすく、実験の結果、その融合によって生み出した遺伝子を注入し、人間の体に劇的な変化を催した生命体、これを禍魔と呼ぶ。

・・・つまり、現代によみがえった禍魔はその実験で犠牲になった人間たちのなれの果てということになる。禍魔の記憶が残っているのは、上級ゆえに自我の強さが人間の意識を凌駕していたからだ。
挙句の果てに、それだけじゃ飽き足らない軍部は、死者をよみがえらせるという途方もない案に没頭しだした。いくら禍魔が人間を超えた生命体だとしても、傷を負ったり、ダメージを負うとカードの形になって封印されてしまう特性まで引き継いでしまったのは禍魔の特性に近づきすぎた故かもしれない。
それで生み出したのが、禍魔の肉体と肉体をつなぎ合わせ、さらに多くの人間の肉体をかき集めて儀式を執り行い、霊道を開いて霊力を得てよみがえったのがファウストだ。

そしてその研究に携わっていた研究者たちが、現在のキングと名乗る4人の禍魔、凪と功刀、そして朱火と輝。さらに、あたしと歌先輩の祖父に当たる人物だったんだ。あたしと先輩がライダーとして覚醒したのは侍の一族の末裔だからじゃない。その遺伝子を祖父たちは自分たちの息子たちにもたくし、その遺伝子の遺伝で生み出されたにすぎない。
自分たちが失敗したら、息子が、孫が戦争で打ち勝つ最後の手段として使うために。

そして、凪たちは自分たちが神になり替わり、人間社会を支配するためについに動き出した。ヒューマンサイマの力を受けて、自分たちが王として君臨するためにこの計画を立てていたんだ。
倒す方法はただ一つ。
ヒューマンサイマたちの研究していた遺伝子アンプルが保管されている研究施設をこの世から消滅させること。そして、ヒューマンサイマたちを倒すことだ。研究施設は風吹山の近くにある廃工場内に置かれているターンテーブルの機関車で地下に行けることができる。ターンテーブルの鍵は万が一を考えてスペアを作っておいたので封筒に同封しておく。

茜たちへ。
あたしたちの祖父がとんでもないことをしてしまい、何と言って謝ればいいのかわからない。本当に申し訳ないことをした。謝っても許されないことだ。お前たちの人生を奪い、戦争の道具としてしか利用しない祖父たちの愚かさにはあたしたちがいくら償いたくても償いきれない。
でも、これだけは言わせてほしい。
人間に復讐という考えだけは・・・しないでほしい。
お前たちがたとえこのレポートを見て、怒り、苦しみ、嘆き、絶望に打ちのめされるのは覚悟の上だ。でも、お前たちが復讐のために誰かを傷つける姿なんて・・・あたしは見たくない。できれば、今、普通の女子高生として明るく楽しく生きようとしているのならそのまま生きていてほしい。
あたしがそのそばにいてあげられないのがあたしもすごく寂しい。できれば、もっと一緒にいたかった。もっと一緒に笑っていたかった。お前たちとデートもっとしてやればよかったな。何もしてあげられなくてほんとにごめんなさい。茜、藍、萌黄、碧、先輩たちを信じて。誰よりもあたしが信頼している人たちで、あの人たちならお前たちを絶対裏切ったりなんてしない。お前たちを何があっても捨てたりしない。これだけは確かだから・・・・。

歌、茜たちを頼みます。



文章はこれでおしまいであった。
読み終えた後、6人は座り込んでしまった。

魅音「・・・・舞ちゃん、だから、責任を感じて一人でアジトに乗り込もうとして・・・・」
そしてつかまり、ティーゲルとなってしまった。
いつ死ぬかわからないのに、無理をしてライダーとなり、今、茜たちのために戦いに挑み続けている。

茜「・・・・・・・あたしたちが・・・・人間だった・・・・?」
藍「・・・・つまり、僕たちは人間のオモチャとして扱われていたってことか」
萌黄「・…いくらなんでもひどすぎるよ。戦争に勝つために、何人も同じ国の人間殺して、こんなの生み出すなんて・・・・!」
碧「・・・・愚かすぎて言葉が出ませんね」

歌「・・・・行きます」
歌が立ち上がって部室を出ようとする。

魅音「行くって・・・まさか、この場所に行くんですか!?」
歌「ええ。これ以上、60年前にくたばった亡霊どもに振り回されるなど御免こうむります。それに、茜くんたちの人生を奪い、僕たち孫の世代にまで迷惑をかけて、それでなお戦争に執着しているヒューマンサイマやキングを倒さない限り、犠牲者は増える一方ですからね」

そういって、歌は部室を出て行こうとする。
すると、ぐいっと一本の手が歌の手をつかんだ。

振り返ると、そこには茜がいた。
顔をうつむかせ、それでも力強く歌の手を引っ張っている。

歌「茜くん。無理しなくていもいいんですよ。今回の事態は明らかに君たちが被害者だ。僕たちが祖父の誤った実験の尻拭いをしなくてはなりません。君たちがこれ以上傷つくことはない」

茜「・・・・・もし行かせたら、歌が、今度は歌がいなくなる」
茜を見ると、茜はポロポロと涙をこぼしていた。
嗚咽交じりの声をあげて、赤い瞳からは涙がとめどなくあふれ出ている。

茜「歌がいなくなるなんていやだ。もう、舞みたいにあたしたちを置いていかないで。仲間がいなくなるってもう本当に嫌だ。実験とか過去とか、あたしたちが幾らあがいたってどうにもならないことなんて知るもんか。でも、この手を離して歌がいなくなるくらいなら、あたしたちも戦う。そして、皆でまたバカ言い合えて笑いあえるあの時間を取り戻すんだ!!」

茜の眼には強い決意が宿っていた。
過去を振り切り、仲間を思う強い気持ち。

藍「全く、ここまでバカぞろいだと、復讐とか過去とかどうでもよくなってくるから、不思議だよね。ここで歌くんに死なれて、舞くんが死んだら、それこそ大暴れとか考えるけど、死なないんだよね、しぶといし。だったら、今僕らにできることは…ただ一つ」

萌黄「舞ちゃんの情報を頼りにヒューマンサイマをぶっつぶすこと!!」

碧「やれやれ・・・今私たちがやるべきことなんて、私たちが人間だったとかエゴで作られた武器とか、逆に考えたら願ったりかなったりでしょう。それならその力利用して、守れる人を守りたい。そのために戦えるなら、兵器でも悪くはないですよ」

歌を前に、まっすぐな視線で向き合う茜、藍、萌黄、碧。
この視線を前に、歌は驚いたように目を見開いていた。

茜「それによぉ、歌。あたし、分かったことがある。本当に守りたいものがあるなら、たとえどんな辛くたって、逃げちゃいけないんだって。歌も舞もあたしの大事な仲間だ!その仲間が危機に晒されているのを黙ってみているだけなんて・・・あたしは我慢できない!!あたしも戦う!!」

茜が拳を握り締めて満面の笑顔で言い切った。
藍も、萌黄も、碧も、自身の過去を知らされても、自分の守りたいものを守るために戦う決意を瞳に宿している。

歌は笑みを浮かべると、振り返り、一言つぶやいた。

歌「・・・・どいつもこいつも、勝手にしやがりなさいって感じですね」

そういって、5人が立ち上がると部室を飛び出していった。



凪「くっ、まさか計画の狂いがここまで生じるなんて・・・!!」

凪は焦っていた。自身の計画では功刀を主戦力とする部隊を組んで一気に攻め込むはずだったのだが、功刀が封印され、さらに魅音が情報をつかんだまま逃走した以上、この秘密研究所がバレるのも時間の問題である。

輝「やれやれ、まあ、いずれにせよ奴らを消せばいいだけのことよ。ここがたとえ分かってもたどり着ければの話でしょうし」
輝が相変わらずの余裕めいたように腕を組みながら笑みを浮かべて言う。

輝「ティーゲルの二人組ももう戦闘準備は整っているわ。そして、私たちキングもいる。ヒューマンサイマ様の意のままに動けば確実に勝利は我らのものです」
凪「しかし!!奴らの力の成長ぶりはもはや測定不能だ!!これ以上上回ることがあれば、我らの計画は頓挫するかもしれないのだぞ!?」
ヒューマンサイマ「私たちの計画はだれにも邪魔はさせませんよ・・・」

涼しげで静かな声が響き渡る。
その威厳に満ちた声が発する雰囲気に圧され、振り返るとそこにはヒューマンサイマが立っていた。
凪は顔を青ざめ、膝をつき頭を下げた。

凪「も、申し訳ございません!!」
ヒューマンサイマ「凪、取り乱すあなたの気持は分かります。ですが、功刀の犠牲も一つの策としては成功といえます。彼らの力が成長すればするほど、我らの計画も果たしやすくなる。そう、我らの力と彼らの力を激しくぶつけあわせて、極限まで高めた力をエネルギーとして、これに注入すれば、最高のエネルギーと化す」

そういって、ヒューマンサイマが振り返り後ろにそびえたつ巨大な影を見上げて笑みを浮かべる。
全長25mは超える巨大な体躯を持つその影は、両肩に展開した伸縮自在の巨大な腕や、体の各所から発射されるビーム砲を携えた姿は破壊の悪魔のようであった。

ヒューマンサイマ「このヒューマンサイマ・アルティメットフォームがあればね」
輝「こいつで、人類滅亡を図るってわけだ。もはや敵も味方も関係ない。人類はしょせん戦いから逃げられない運命のもとにいるんだ。それが分かっていないエセ平和主義者が多すぎるんだよ。だから、こいつで全部破壊して、誰がこの世界を支配するにふさわしいか教えてやろうじゃないか」
ヒューマンサイマ「ええ。そして、その証を持つ者こそ・・・私です」

傲慢な笑みを浮かべ、ヒューマンサイマは支配者のオーラを全身から発しながら静かにその場を立ち去って行った。



三日後。
学校も冬休みに入り、歌たちは必要最低限の準備を整えた姿でバスから降り立ち、目の前に広がる欝蒼とした森を見る。
この森の奥深くにある洞くつは、以前歌と舞が訪れて、紅邪に襲われるは、爆発事故に巻き込まれて死にかけるといった忌まわしい思い出しか残っていない。

茜たちは覚悟を決めたかのように表情をきっと引き締めるとゆっくりと歩き出した。
一歩一歩が脳に危険信号がピリピリと伝わってくる。
それを覚悟したかのように、ゆっくりと呼吸すると再び歩き出す。

最終決戦の始まりであった・・・。


森の中を歩いて早十分。
一行は森の中で大きく木々が開いた円形状の広い空間に出てきた。

その広場に差し掛かったそのときだった。

「まさか、ここまで来るなんてね。でも、ここから先は黄泉への旅路よ」
「お前たちを倒す。恨み事はあの世で閻魔にでも聞かせるんだな」

聞き覚えのある声に振り返ると、木の上から翼と舞が飛び立ち、地面に降りてきた。
二人の瞳にはもはや憎悪と狂気が宿った赤く光るまがまがしい光が帯びている。

歌たちもとっさに身構えてバックルを装着させる。

歌「舞くん、翼くん、君たちは本当にそれでいいのですか?君たちが見てきた地獄がどんなものかは分りかねますが、君たちがこれまで闘って培ってきた正義も信念も決して消えはしない大切なものであったはず。それすらも汚してまで、自分の生きざままで忘れてしまって、何のために闘ってきたことすらも分らないまま倒されるなど、それでいいのですかっ!?」

翼「うるさいっ!!所詮あたしたちは闇の住人だっ!!光りなんて・・・平和なんて・・・追い求めようとすること自体がガキの思い上がりだったんだよっ!!あたしたちが光りなんてすべて覆い尽くしてやる!!もう誰にも邪魔なんてさせるもんかーーーっ!!」

舞「こういう生き方しかできないバカもいるってことだ。まっ、諦めてくれや。あたしは結局闇から逃げられない運命だったんだろうよ」

茜「そんな運命・・・テメェで勝手に作って逃げただけじゃないか。闇に立ち向かって打ち勝つという運命だって作れたはずだ。都合よく勝手な理屈を述べて逃げ込んでいるだけのくせに、独りよがりなセリフ吐いて楽になろうなんて百年早いんだよ!!」

萌黄「舞ちゃん、翼ちゃん、あたしたち、今日は二人でもやっつけちゃうからねっ!!」
藍「ここまでひねくれているとなると、お仕置きじゃなきゃ取り戻せないからね」
碧「ケリをつけてさしあげます・・・!!」
魅音「舞ちゃん・・・・あたしもう逃げない!!」

歌「皆さん。行きますよ!!」

「「「「「変身!!」」」」」

舞「バカが揃って死ににきやがったか。全員まとめてあの世に送ってやるよ」
翼「お前たちの顔見ているだけでイラつく・・・!!」

二人の手の中にティーゲルバックルが飛び込み、バックルに装てんする。

「「変身!!」」

森の中で8つの光が舞い上がり、乱牙、セイバー、ランサー、アベル、パルサー、ヴァンリー、そしてティーゲルバスターフォームとストライクフォームが現れた。

乱牙「行きます!!」

乱牙の掛け声とともに、6人のライダーが分散して、乱牙とアベル、ヴァンリーはストライクフォームに、そしてランサーとパルサー、ヴァンリーはバスターフォームにとびかかっていった。

バスターフォーム「てりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!ヒャーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハ!!!」

ランサー「姉さん・・・!!」
パルサー「藍、必ず取り戻しますよ。彼女の心を」
ランサー「・・・・うん!」
ヴァンリー「ここで負けるわけにはいかないですしね!!」


ストライクフォーム「ふっはっはっはっはっは! ふふふっふふふっ! ふっはっはっはっはっはっはっ! はぁーっはっはっはっはっはっ! ふっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」

乱牙「くっ・・・・完全におかしくなってますね」
セイバー「まったく、単純バカなのも大概にしてほしいよ!!」
アベル「そんなこと言ってる場合じゃないよ〜!!舞ちゃんのパンチ、メチャクチャ痛いッスから〜!!」

セイバー「舞のアネゴ・・・。あたしは今日、あんたたちをぶっ飛ばしに来ただけじゃない。ヒューマンサイマのクソふざけた野望を打ち砕きにきた!!あたしが手に入れた、新しい力・・・・今こそ発揮する!!はあああああああああああっ!!」

セイバーが剣でストライクフォームをなぎ払うと、功刀が封印されているカードを取り出し、それが豪華で荘厳な王冠を模した鍵「インペリアルキー」へと姿を変えていく。
そのカギをバックルに差し込むと、紅蓮と黄金のまばゆい光が解き放たれ、みるみる彼女の全身を包み込んでいった。

セイバー「はあああああああああああああああああああっ!!」

太陽が堕ちて来たような煌金の輝きの中、少女の体が豪奢な紋章を刻んだ鎧に包まれて行く。そして、その光が収まった時――金色に煌く鎧に包まれたセイバーが、長大な剣を手に、大地を踏み締め佇んでいた。

刹那、気が狂いそうな感覚と激痛がセイバーを襲った。
強過ぎる――無双の王の力が、鬨の声を上げているような、高揚感。
膝を突き掛けるセイバーの体を青白い稲妻が包み込み、周囲の大気を縮こまらせた。
皮膚の下を這い回る濁流が、どす黒いまでの意思を持って、茜と言う殻を突き破ろうと蠢動する。

セイバー「あああ――あああっ!」
茜と言う人格を、金色の力の本流が押し流し、覆い尽くし、消し去ろうと迫り来る。茜は力の限り叫んだ。
セイバー「行くぜ!!インペリアルフォーーーーーーーーーーーーーーーーームッ!!!」

やがてその言葉が光をはじき、そこに現れた姿を見てストライクフォームとバスターフォームが茫然とした状態で立ち尽くしていた。

自分たちを追い詰めるであろうその強大な力の権化は大剣を構えて悠然と立っている。
仮面ライダーセイバー・インペリアルフォーム。
強大な力を秘めた業火の王がここに降臨した。

続く
ロジャー
2009年03月02日(月) 21時27分43秒 公開
■この作品の著作権はロジャーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
第39話投稿いたします。
今回、最強究極フォーム「インペリアルフォーム」登場いたしました。
茜が手に入れた「聖火」の力を最大限に引き出す戦士として、武器である大剣「インペリアルセイバー」を駆使し、次回、ティーゲルとの対戦に挑みます。

レスをお返しいたします。
>DarkMoonNight様
一時的な洗脳解除とはいえ・・・・・・蹴られたら再洗脳って、ほんとに君はテレビかよ舞ちゃん!?

そこのところが舞の単純らしさというか、明らかに作者の表現力不足という点が原因ですね。はっきりしないあやふやな立場は書いていてもどうすればいいのか展開に迷いやすいです。克服しなければ。

>なんで可愛いって思えるんだろう・・・・・・?
そう言っていただき光栄です。歌は確かに変人だしフォローしようがないまでに特殊な嗜好の持ち主でありますが、そう言っていただけると書いていて幸いです。

>翼さんが負けた理由があるとしたら、それは・・・・・・「何か」を捨ててしまったからなのしれません。
ありがとうございます・・・。
そう言っていただけると、この二人を敵として描いた甲斐があります。二人の共通点、それは「まっすぐ生きようとし過ぎたため、予測不能の事態に対処しきれない」ということ。自分たちがどうにかして叶えようとした理想や願いがことごとく踏みつぶされ、暗中模索で落ち込んでいるときにその心の闇を突かれてしまった点について、その「何か」を捨ててしまったという表現につながるのかもしれません。

次回もよろしくお願いいたします。

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