不意志根曲(ぶいしねま)・仮面ライダークロノスたんoutervolume 〜 みんな愛のせいね 〜 転章・(一方的な)愛をとりもどせ!
不意志根曲(ぶいしねま)・仮面ライダークロノスたんoutervolume 〜 みんな愛のせいね 〜
転章・(一方的な)愛をとりもどせ!



黒野 スミレとその憑依イマジンたちが、百合峰 麻美の持つ精神操作能力について
その対策を練っていたころ――当の麻美はというと。

「――――――――失敗、しちゃった。」

シャワーを浴び、バスタオルを体に巻きつけて。暖房を入れて暖かくした部屋の中、
百合峰 麻美はひとり、ベッドにその身を倒しこんで――小さく、つぶやいた。
あの、剣崎さんって娘がこちらをたまたま見ていなかった、ただそれだけで彼女が得た眼力(ちから)
……他人の意識に干渉する能力は破られてしまった、のだ。しかもその後、気が動転して
その場から逃げ出してしまうという――あからさまに怪しい行動をとってしまった。

「……けど。けど――能力のことまでは、バレて、ないよね。」

そのささやきは誰かに問いかけているというよりは、むしろ自分に言い聞かせているようでもあった。
バレていないなら――否、極論バレたとしても「嫌われて」いないならチャンスはまだあるのだ。
「スミレお姉さまに、好きになってもらう」。ただし、この能力で操って好きになってもらったのでは
意味がない。だから能力の使用は、いちゃつける状況を作ることに限定する。
……このあたりの麻美の思考は、なんとアリサの読みどおり、だった。

「……うん。済んだ、ことはしかたない。バレてないなら、まだチャンスはあるもの。
 だから――また明日こそ、がんばろっ」

……もしこの言葉をスミレ本人が聞いていたら、「いやガンバらなくていいからっ!?」とか
言っていたに違いない。ともあれ麻美は――なかば無理やりに――気を取り直すと、
そのままネグリジェに着替えて、眠りについた。……前向きな娘ではあった。方向性はともかく。(ぉ
                ★
そして、麻美が完全に寝入ったその、直後。

『……ぬぁ〜にが、“がんばろっ”だか。』

――電気も消えた暗い部屋に、突然響く、くぐもった声。
そして麻美の体から、霧のようにすぅっ、と人影が湧き出てくる。もしもこの光景をスミレが
見ていたなら、「! あ、新手のスタンド使いっ!?」とか形容したかもしれない。靄(もや)が
人影の形に依(よ)り集まり、実体と化していく――その姿はまるで、半漁人(はんぎょじん)。
いや、正確には半漁人の着ぐるみを着たように見える少女。もはや言うまでもない、数日前
麻美に『――――叶えたい、想いがあるのね?』と悪魔の誘惑を持ちかけた、あの存在である。
ほどなくしてそれは完全に実体化し、寝ている麻美の頭を軽く踏みつけ、
頭をごろごろと転がすかのようにぐりぐり動かす。……心情的にはこのまま首をもぎ取って
踏み潰したいと思わなくもないが、彼女を寄り代にしている都合上、少々傷つけるくらいならともかく
さすがに殺すまではできない――はふ、とため息をついて、その少女は麻美から足を離した。

「……ンったく、いまどきの人間のクセに妙に古風というかおとめちっくというか。
 相手の人格なんて無視して、好きなように操ってもてあそんでしまえばいいのに……
 そうすればこっちも、すんなりコトが運べたものを――――!」
「んー。『ザ・人選ミス』ってヤツーっ? すっごく基本的な失敗だよね――ガラン。」

半漁人のつぶやきに、もうひとつ別の声が重なる。その声の方向に振り向く“ガラン”。
そう、その半漁人少女の名称は“ガラン”と言う。
……登場から3話目・2月経過にして、ようやく正式な正体バレであった。(ぉ

そのガランの目の前で、空間がまるでガラスのようにぱりん、と割れていく。
まるで壁を形作っているようなその虚空に開いた“穴”からは、サイケデリックな色彩の
オーロラ光を放つ空間――見るからに異次元の風景を覗かせている。その“穴”から
イモムシの着ぐるみをまとったかに見える少女が現れた――「クロノスたん序章ごれんじゃい」において
始めてその姿をあらわした、謎の存在・■■■■――その尖兵たる少女、その人(?)である。

「を、出てきたわねー腰巾着イモムシ。」

ガランと呼ばれた半漁人少女は、その少女を揶揄(やゆ)するような言葉で迎える。
そのガランに『腰巾着イモムシ』と呼ばれた少女は一瞬ぴく、と
片方の眉のみを吊り上げた微妙な表情を作るが、すぐに気を取り直し話を続ける。

「腰巾着でも餅巾着(もちきんちゃく)でもいーんだけどーっ……なーにやってんのかな? ガラン」
「――ふん、こっちの様子はそれなりに把握できてるくせに。
 
 ライダー少女を、こっちの手駒として操る。そのためにアタシの精神操作能力を
 この上なく有効に利用してるだけだけど?」
「有効利用、できてないんじゃないのかなーっ? その精神操作能力は、人間に憑依した状態で、
 かつその憑依した人間の意志でないと発揮できない。で、その人間がこんならぶこめ思考じゃ
 手駒として操るどころか、相手の気持ちを自分に向けることすら満足にできてないじゃない。

 ……いちゃいちゃするだけで相手の気持ちがこっちに向くんなら、苦労はないと思うんだけどなーぁっ」
「……………………。そこはまぁ、認めるけど。」

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるガラン……当初の思惑としては、
麻美の好意が受け入れられない⇒業を煮やした麻美が、精神操作能力で対象――この場合はスミレ――を
操ってでも手に入れようとする、という状況を想定していた。そして、一度スミレの意志を
完全に無視して操らせてしまえば、あとは簡単だ。口八丁で麻美を言いくるめ、
その“好意”を失わせないために都合よく操り続けるように仕向ければいい――
麻美の――否、ガランの意により操られる、悪の尖兵(せんぺい)・ライダー少女の出来上がりである。
……まぁご覧の通り、麻美の意外な純愛主義のせいでそのガランの思惑はまるで形になってないわけだが。
そんなガランの様子に少女はわざとらしくため息をついて、

「『まだ あわてるような 時期じゃない』ってね……そもそも、今はまだ地盤固めの段階であって
 ワームとか魔化魍とかにアタリをつけてる最中なんだけどーっ? イマジンども焚きつけるんなら
 ともかく、直接“らいだぁ少女”とコトを構える必然性なんてないんだけどなーぁっ?」
「『0より1は必ず多い』。いずれコトを起こすときのために、手駒が多いのは重要だと思うけど?
 あたしも、人間が破滅する様を直接演出することで、ストレス発散ができて一石二鳥、って寸法よ」

……作戦のためだけではない、自分のストレス発散のためでもあると、ガランはきっぱり言い切った。

「……その勝手な行動、“あのお方”は、すっごく怒ってるんだけどーっ?」
「…………。そ、そこはまぁ、作戦を成功させて、その結果で補うってことで。そりゃ確かに
 今のところ停滞はしてるけどね。けど大丈夫。これからもう少し強硬な手段を採(と)るわ。
 夢からこの娘の意識に干渉して、不安感を煽(あお)る。そうすれば、この娘も
 くだらない恋心より焦りの方を優先させて、あのライダー少女を操るのにためらいが薄らぐはずよ」

一応、ガランの方にもこの状況を打破するプランはあるらしい。だがそれを聞いても
少女の表情は渋いままだ。そしてそのまま、もう一度口を開く――少し、真面目な口調で。

「もひとつだけ、忠告ーっ……あんま、『人間』をナメてかかんないほうがいいと思うな。
“あのお方”だけじゃない――“あのお方”と同格に扱われてた『謀将』『豪将』、あーんど
 その恐ろしさを知ってたはずの『知将』やそれを束ねていた『皇帝』すらも、結局は
『人間』をアマく見てて倒されたんだしね」
「――ふふん、そんなのそいつらが馬鹿だっただけじゃない」

少女の忠告を、鼻で笑い飛ばすガラン……自分の主人まで一緒くたに馬鹿扱いしてしまっているわけだが、
それにガランは気づいていないし、少女もそこはスルーした。(←ぉぃ)

「あたしは、失敗しない――そこで指をくわえてみてなさい。成果を上げれば文句はないでしょ?」
「うん。ないよーっ?」

――あっさりと。こんだけ意味ありげに出て来て、あんだけ否定的な言葉を紡いだくせに、
最後はそれだけ口にするといきなりそそくさと帰り支度を始めるその少女だった。
あまりの引き際のよさに、ガランの目が点になる。

「……は……? あ、あの、そんだけ??
 もっとこう、ほら、言うこときかないなら力づく、みたいなことでも言うのかと思ってたら……」
「んー。だって『忠告して来い』って言われただけで、『力づくで止めろ』とか
 言われたわけじゃないしーっ。 てなわけで、そんじゃねー♪」

言って、明るく軽く手を振って。少女は来たとき同様に、空間の狭間へと帰っていった。
あとに残るのは、眠りの中にありその不吉な会話を知る由もない麻美と、そしてガラン自身。
そのガランはあきれ返った表情で立ち尽くす――暖房きかせた室内だというのに、
ひるるる、と冷たい風が吹き抜けたような気が、なぜか、した。

「……………………。 ……ま、まぁ、いいわ。
 最終的に止められなかったってコトは、つまり作戦を続けていいってことだろうし。」

つまりは“あの方”から許可が出たのだ、と――少なくともガランはそう考えた。事実はともかく。

「――さて、それじゃさっそくやりますか」

言いつつガランはにまりと笑い、麻美に悪夢を見せはじめる――精神的につながりのある麻美、
それも本人の意識が文字通り眠っているこの状況なら、このくらいの芸当は朝飯前、ということか。
ガランはおもむろにメガホンを取り出し、麻美の耳元にそれを押し当て……、って、あれ? おい?(汗

「……おねーさまが他の女と付き合いだすー、おねーさまが他の女と付き合いだすー。
 あぁっおねーさまが他の女とあーんなことをっ。そーんなこととかっっ。こーんなことまでっっっ。
 そのおねーさまをそそのかす、小さな悪い妖精が3体ほどついてて――――」
「(うーんうーん)……お、……ねぇさ、ま…………そんな――そんなのは、だ……め――」

えらくコメディチックな方法で麻美に悪夢を見せるガラン。
……い、いやまぁ、麻美がうなされながらおねぇさま(スミレ)のことを求めだしているんで、
成功してはいるのだろうが。普通にテレパスかなんかで精神に干渉するんじゃないんかい。(ツッコミ
                ★
そして翌日、放課後。緑ヶ丘学園・2年某組、スミレのクラス――運命のときは、迫りつつある。

「それじゃ、『今日は』一緒に帰ろっか、えみりー」
「ん、いいけど――あ、なんだか久しぶりだよね、黒野さんと一緒に下校するのって」
「(ぼそっっ)……約束自体は毎日してたんだけどねー。いや、えみりーには責任ないからいいんだけど。」
「? 何か言った? 黒野さん」
「いーにゃ、ただの主人公的モノローグだから気にしなくていいよー」

てなわけで寄り道して帰るべく、肩を並べて教室から出ようとするスミレと絵美里。そこへ――

「おねーさま一緒に帰りましょー♪」

当然のようにやってくる麻美。それから――

「あ、ごめーん。今日はえみりーとSh15uya(渋谷)の復興見物※に行こうかと思ってんだよね」

※この世界の渋谷、ワームが存在するぐらいだから当然Sh15uya(渋谷)隕石が落ちてます。まだ復興途上。

と、麻美の誘いをにべもなく断るスミレ。そして――
                ★

「――――――――――――。」

                ★
……麻美の左目に光が灯(とも)り、その記憶・思考が書き換えられてしまう――
ここまで全部、いつも通りの光景だ。もちろん、この後

「あ。ごめんなさい。黒野さん。わたし。今日も。用あるから。」
「あ。それじゃ。しかたないね。えみ……

 ……それじゃえみりー、またあした、ね」

と絵美里が「用事で」先に出て行き、結局二人きりにならざるをえない、これもまたいつも通りの状況。
だが。

「さー、それじゃおねーさま帰りま――――」
「あ、そうだねそれじゃ帰ろうか。……あ、ちょっと寄り道していくけど、いい?」
「はい♪ もちろんお供しますー♪」

そのスミレの言葉には、精神操作を受けた人間のそれではない、確固たる意識が乗せられている。
麻美は、そのことには気づいておらず、いそいそと“おねーさま”とともに帰るべく
ぴったり寄り添ってくる―――― 一瞬、「……〜〜〜〜。」とばかりに口元をヘの字に曲げ
微妙な表情を作るスミレだったが、それ以上特に何を言うでもなく、歩みを進めた。

そしてスミレは、麻美を連れて――街外れへと向かう。決着をつけるために。
                ★
閑散とした、廃工場跡。
いきなりそんな場所に連れて来られては、麻美でなくとも戸惑うだろう。
まして――スミレに精神操作をかけている、という――後ろ暗いところのある麻美なら当然だ。

「……あ、あの、おねー、さま……?」
「………………。」

怯えたように口を開く麻美に対して、スミレはここに至るまで無言だった。
そんなスミレが、ついに口を開いた。たった一言

「もう……やめよ?」

とだけ。……この後に「ボク達、間違ったんだ……((c)種ガン)」とか
「命令で人を殺すのは〜((c)パタリロ)」とか続けたくなってしまうのが哀しいヲタクの性と
いうものだったが、そこはさすがに自制した。(ぉ
そしてその一言で、――繰り返すが――後ろ暗いところのある麻美はさすがに意図を察したらしい。
なぜだかわからないが、麻美が与えられた能力(ちから)のことが、スミレにバレてしまっている――!!

「――――!! わ。忘れてください、おねぇさま――――――――!!」

左瞳(め)を、光らせ能力を使う……その麻美の行動は、ほとんど反射的なものだった。
そして、その光をまともに受けてしまうスミレ。……だが。

「…………。あれ。アタシ。こんなところで。なにやって――――

 ってまぁ、マミりん。もうその“ギアス”、ほとんど利かないから」

あっさりと、原状の記憶を復帰させるスミレだった。

……昨日の一件で“状況を再確認すれば、精神操作は効果を失う”ことはわかっている。
だからスミレは憑依しているイマジンを通して、自分の行動を逐一記録させた。具体的には、
自分の部屋にメモ帳を用意して、その行動を全部、詳細にメモさせたのである。

そして麻美といちゃつかされるような状況になった、とイマジンたちが判断したら、
実際に『ギアス』が使われたかどうかに関わらず、3人してメモを読み上げ「記録してある状況」を
スミレに再確認させる。……イマジンと精神的つながりがあるスミレだからこそ、可能な方法だった。

「あ――――――――、な、なんで、どうして!? あ、あの、おねぇさま、これは……」

狼狽する、麻美。いろいろな感情がごちゃ混ぜになっている。
何でばれたんだろう。どうやって記憶を戻してるんだろう。あの、「夢で見た」3体の妖精のせい?
いや、そうだったとして、これが原因で嫌われたら……そのときはまた記憶を操作して、
違う落ち着いて、もう記憶操作は効かないって、あ、でも、それじゃ、
どうやって嫌われなくすればいいんだろう――――――――!!

――混乱して、ぺたん、と座り込む麻美。スミレはそんな麻美におもむろに近づいていく。
すぐ目の前にスミレが立ったのを見て反射的に「――――ひ、!」と悲鳴にすら聞こえる息音を漏らし、
後づさろうとする麻美。スミレはそんな麻美との距離を、ば、と一気に詰めて、

麻美の頭をよしよし、と撫でた。

「――――。え」

……怒られる、最悪嫌われると思っていた麻美にとって、そのスミレの行動は意外すぎて――
きょとん、とした表情でスミレを見る。そのスミレは、微笑み……というにはやや引きつった表情で、
それでも優しげに麻美を見ている。

(……あのな、スミレ。もう少しきちんと微笑め、お前は。)
(あ、いやー、オリヴィエそう言うけどさー。どーもアタシ、マミりんには
 いまだに苦手意識のほうが強いって言うか、こっから迫られたらどう逃げようかと思ってるとゆーか、)
(……あぅ。でもスミレ、この娘自体には腹を立ててないはずなのですよ?)
(ここがキメ時ですよ、キメ時。ほら、凛々しく可愛くたくましく。はい、スマイル満開♪)
(う、うん…………)

――そして、ぎごっっ、と音がするほどにっこり(……?)微笑んで、改めて麻美に声をかける。

「あ、あの。おねえさま……?(汗 」
「……えーと、ね。なんというか……              す、すごい催眠能力だったね。」
(((この状況で言うことがそれかッッ!?/それですか〜〜〜!?/それなんですか。)))

3体のイマジンたちに、脳内総ツッコミを受けながら。
ぷるぷる、と犬のように首を振って気を取り直すと、改めて口を開く。

「けどさ、マミりん――アタシもいろいろ考えたんだけど、マミりんってばその能力をさ、
 アタシと二人っきりになることばっかに使って、けっきょく、それ以上のことに使わなかったよね?
 ……使えるん、でしょ?」
「――――――――。」

麻美は答えられない。だが、その沈黙で答えとしては十分だ。スミレは頷いて言葉を続ける。

「――だから、アタシは怒ってないよ。その気持ち自体はまっすぐなものだと思うし、
 マミりんが他人の気持ちを操ってまで自分のものにしたいなんて思うひどい人間じゃなくて
 むしろ良かったと思ってる…………(ぼそっっ)まーそのぅ、そのイキオイにも〜ちょっち
 ブレーキをかけてほしいというか、あんましきちょーめんなのはアタシの性に合わないというか、
 そういう根本的じゃない部分で言いたいことがないわけじゃないけど…………」
「――おね……さまっっ!」

感極まったかのように、だっ、と駆け出しスミレに抱きつく。そして、「ごめんなさい……っ」と
何度も繰り返す。――スミレ、「……あぉぅ」と呻いて、内心冷や汗だーらだら。
結局、苦手意識が消えることはなかったが、とにもかくにも、麻美の方の、心の始末はついた。

そう、スミレは思った……この時は、まだ。だから、麻美が小声でつぶやいたその言葉、

「けど…………。まだ、あとひとつ、終わってない――――」

それを聞き逃してしまったのだ――――
                ★
麻美に抱きつかれた状況のまま、スミレは数回深呼吸をして、気を引き締める。
まだ一の目(第一段階)が終わっただけだ。これから二の目――敵を、倒さねばならない。

「――――そういうわけだから、」

スミレにしては、硬い声。そして麻美を睨みつける……いや、実際に睨んでいるのは麻美ではなく、
つもりとしては、その背後にいる存在の方である。

「マミりんに憑いてる“なにか”――さっさと、出てきたほうがいいよ?
 アタシも今回けっこう怒ってるから、あんまり手加減したげられないかもしれないし」
『――――手加減? あたしに? あんた、が??』

スミレの、わかりやすい挑発。だがそれに反応して、麻美が声を出した。
いや、もちろんその声の主は麻美ではない。麻美の意識内に潜んでいた“彼女”は、
いらついた声とともにその存在を明らかにしたのだ……「うわ、ノってきた。こんな軽い挑発で
あっさり怒ってくるとは、ちょっと思わなかったなー……意外に小物?」、スミレは内心そう思うが、
とりあえず口には出さずに相手の出方を待つ。

そして麻美の体から、霧のようにすぅっ、と人影が湧き出てくる。その光景を見たスミレは
「! あ、新手のスタンド使いっ!?」とかお約束なコメントを発するが、もちろんその人影――
ガランはそんなコメントに取りあうことなく、スミレ達から少し距離をとった場所に実体化する。
そして自分の能力を打ち破ったスミレに、賞賛半分怒り半分といった視線を向けた。

「…………。ふん、仮に気づかれてても対抗手段はないから、とタカをくくってたけれど、
 まさか本当に気づくとはね――ま、しかたないわね。あんたを手駒にする作戦は失敗。
 けれど、こっちも手ぶらじゃ帰れないのよ。“あの方”へのせめてもの手土産――
 あんたはここで、倒させてもらう!!!」
「ちょいとタ●ノくん、それって悪党の負け台詞。
 しかも、仮に“手土産”ゲットできたとしてもそれが評価されない場合のパターン。」
「……やかましいっ!? てか、タン●くんってなによ●ンノくんって! あんなキモい姿してない、
 つっかあたしにゃ“ガラン”っていう立派な名前があるわぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!?」

っておい、“タ●ノくん”ってのがなんなのか知ってるのか、ガランw
……そんなツッコミをものともせずに、ガランは一直線にスミレのほうへ突っ込んでいく。

「!! お、おねーさまッッ!?」
「危ないから下がってて、マミりん! 行くよ――シャル!!」
(ようやく、出番ですか――イきましょう、スミレさん!!)

――スミレは、3体のイマジンのうちもっとも 痴性 知性に長けるイマジン、
シャルをその意識内に召喚した。相手が――精神操作能力を別にすれば――明らかにパワータイプで
あるならば、そのパワーを馬鹿正直に受け止めるより受け流すようにするタイプが適している、と
判断したゆえだった。

「変身っ!!」 ≪――Sickle Form――≫

まず瞬間的に姿をあらわしたのは、駅員風のクロノスたん・プラットフォーム。
その駅員服がハニーフラッシュのようにはじけ飛び、スク水のみが残った肢体を蒼碧色の薄絹が纏(まと)う。
――クロノスたん・シックルフォームである――!! その変身が終わるとほぼ同時。クロノスたん(SF)目がけ

「――喰らい……なさいっ!!」

――ごぉんっっ!! と振るわれる、ガランの豪腕。なるほど当たれば痛そうだ。
だがクロノスたん(SF)はそれを冷静に見切り、す、と最小限の動きで回避する。
むきになって「――――! こ、このこのくのくのっっ!!?」と腕を振るうガラン。そのすべてを、
舞いでも踊るかのように避けるクロノスたん(SF)。薄絹をまとったように見えるその姿とあいまって、
あたかもそれは天女の舞とも見まがうほどの優雅さすら感じさせた。

「あらあら……力任せで満足するのは、若いというよりお子様なうちだけなんですけどねぇ。
 力と技(テク)をあわせて、輪●(マワ)さないと――――」
(/// お前何の話をしてるんだァァァァァぁぁぁっっっっっっ!!!!!? ///)
(/// あ、あのー、シャル? それはさすがに表現イき過ぎじゃないかなーと…… ///)
「……まぁ、一方的に攻められるのも飽きてきましたし、ここらで反撃、とイきましょうか。

 まずは―― 一発っっ!! ……って、あらワタクシはしたない。」
(いちいちそっち系のセリフ吐かないと攻撃できないのかよっっ!?)
「控えめに言って、その通りですが。」

なんて、三こすり半漫才やってる場合ではない。つか、口開いた瞬間に優雅もへったくれも
なくなりましたな(汗 ……ともあれクロノスたん(SF)は腰に装着されたクロノガッシャーを
ガシャッ!と一斉に全部パージ(分離)し、空中でそれをぱぱぱ、と付け替え接続し、自らの武器
クロノガッシャー・シックルを完成させ――間髪いれず、居合いすら思わせる勢いで
鎌(シックル)を振るう!! 疾(と)く斬りつけられた一撃は狙いあやまたずガランの肩口に命中し――

「――あアぁあぁァあ―――――――――――――――――――ッッッ!!!!」

肩を抑えて絶叫を迸(ほとばし)らせたのは、しかし――

ガランではなく、麻美の、方だった。
                ★
クロノスたん(SF)の鎌は、ガランの肩口を覆うウロコで受け止められたようになっていた。
多少、刃が食い込んではいるもののガラン自体にダメージを与えた様子はあまりない。
だがその攻撃を受け、――麻美が、のたうちまわる。彼女が痛みに耐えるように押さえているそこは、
ガランに攻撃を仕掛けた、それとまったく同じ場所を……肩口、だった――――!

(!…………これって、ガランとマミりんが感覚を同調してる……させてる、ってこと!?)
(マジかよ……!)(……は、はぅあぅあぅ〜〜〜〜〜っっ!!)
「……ワタクシとしたことが。ありがちなパターンでしょうに、この程度は予測しておくべきでしたか――」

ちっ、と舌打ちのような下品な真似は、シャルはやらない。だが心情的にはそうでもしたい気分だ。
これで事実上、ガランに対する攻撃すべてが封じられたのだから。

「――――ほらほら、余所見はだめよ!!」
「!? ……ふっ!」

一瞬動きを止めたクロノスたん(SF)に振るわれたガランの爪攻撃をあっさり危なげなく避け、
いったん距離をとる。……だが距離をとったはいいものの、麻美を素で人質に取られてる状態の今、
有効な攻撃手段はない。顔をしかめるクロノスたんに、ガランは余裕ありげに口元をゆがめた。

「――ま、こういうこと。もちろん、そっち(麻美)のダメージにもこっちに来るから、
 その娘殺せば、あたしを倒すのは簡単よ?」
「…………それはいいコトを聞きました――――ワタクシに、それが出来ないとでも?」

挑発する口調のシャル。この状況を打破するヒントをうっかりガランが漏らすことを期待して、
つとめて悪そうに、本当にやりかねない雰囲気をまとわせたつもりだった……
が、ガランはそれを一笑に付し、

「出来ない、わよ。……というか、あんたのような性格のヤツが本気でそうする気なら、
 そんな牽制の言葉なんか吐かずに即座にやるでしょうに。 だから、遠慮なくどうぞ?」
「――――――――っ。」

――シャルの目論見(もくろみ)は、虚しく潰えた。

(はぅあぅあぅ〜〜〜〜っっ! あいつ、シャルの話術にノってこないのですよ――――!)
(……いるんだよねー。自分のペース乱された上で挑発されるとあっさり崩れるくせに、
 自分のペース内である限りそーゆーの一切効かないタイプ……) ※某綾小路さんとかねw
「……まぁ、この状況を打破する手がなくはないわけですが――」
(どんな手段だ!? てか何かあるんならさっさとやれ!!)
「ガランと同調している彼女(麻美)を、痛みが快感に変わるように調教するんです。
 そうすれば、少なくとも痛みでショック死することはないと――――」
(/// ンなことができるかこの色ボケ青色吐息――――――――っっ!? ///)
(はぅぁぅあぅ〜〜〜〜!!、シャル、この状況でそんなことしてる余裕あるわけないのですよ〜〜!?)
(/// って、余裕があったらすんのかこの犬っコロ!!? ///)
(それにさ、調教したはいいけど、快感でショック死されたら、それはそれで意味ないんだよ!?)
(/// って、スミレそういう問題でもなぁぁいぇぃいぃぃィィぃぃぃッッッッッッ!!!!? ///)

――オリちゃん、ツッコミどころ満載であった。てか余裕ありますねあんたら。(ぉ

「……いや、真面目な話、困りましたね。
 あの“醜い魚の仔(=ガラン)”が麻美さんの精神と同調している限り、手が出せない。
 ここは――いったん引いて体勢を立て直すべきですか。」
(!! ひ、引いてって、シャル!? マミりん見捨てるのっっ!!?)
「落ち着きなさい、スミレさん。あくまでも一時撤退です。
 ……幸い、とはいいませんがガランと麻美さんが同調(シンクロ)しているのなら、
 ガランが麻美さんを傷つけることも、またできない。つまり麻美さんの無事は保障されてます。
 ……そうなると直接の脅威は例の“ギアス”だけですが、そちらには対抗手段がある。」
(………………! け、けど――――)

シャルの意見は冷静かつ妥当だが、スミレにしてみれば心情的にその意見は受け入れ難(がた)い。
だからと言ってスミレに状況を打破するアイディアなどあるはずもなく――その逡巡(しゅんじゅん)が、
ここでは致命的な隙となった。

――ひゅ、と軽い風切り音。
ガランは駆ける――麻美の方へと。そして倒れこんでいる麻美を無理やりに立たせた。

「きゃあっ!」「麻美さん!?」

慌ててそちらへ駆けるクロノスたん(SF)……だが、今のガランの動きは不可解だ。
感覚の共有によってすでに麻美は人質も同然なわけで、この上麻美の身柄自体を確保することに
意味はない……うっかりガラン自身が麻美を傷つけ、結果自分も傷つく可能性が増えるだけだ。
なら何のつもりなのか……クロノスたん(SF)がそれに思考をめぐらせるより早く。
麻美の耳元で、ガランは何かをつぶやいた。そしてその麻美を抱え上げ、――ぶぉんっっ!!

「……きゃぁぁぁぁぁ――――――――――――っっ!!?」

いきなりクロノスたん(SF)目がけ、麻美の体を投げつける!!

「…………!! なっ――――!?」

慌てて、――麻美を牽制にした追撃がこないのを確認しつつ――クロノスたん(SF)は麻美を抱きとめた。
顔を近づけ、見つめあう形になる2人。――見つめあう。つまり、麻美の瞳を見る。
その左目から漏れ出る――――光。…………光、“ギアス”!!?

「――――これは……っ!?」

慌てて目を閉じようとするクロノスたん――――いや、間に合わない!!!!
麻美の瞳の光とともに、心に何かが染み込んでいく感覚。そして、麻美の言葉。

「――おねーさまから離れて、この、悪魔――――!!!」

それとともに、光が収束し――――その、次の瞬間。

――ぽんっっ。
場違いなほど軽い音。それとともに――いきなり、シックルフォームの変身が解除された――!!
                ★
クロノスたんはプラットフォームの姿になり、麻美を抱きとめたまま――何とか転ばずに――
体勢を立て直した。一方シャルは「……え?」と戸惑いの声を上げつつ、
スミレの体からはじき出され地面へと落とされる――ぽてん。

「あうっ!?…………え゛?」
「――――!? な、これは――――!!」

いきなり分離した2人。だが明らかに状況が異常である。
例えばスミレが変身解除したとするなら、シャルは元いたスミレの部屋に戻るのであって、
こんな風に外に出てくることはない。さきほどの麻美の“ギアス”が何らかの形で
効いているのは確実だが、その効果がわからない。……そこへ、

「――うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!(ぶぉぅっっ!! 」
「っ! わきゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?(あたふたじたばたっっ 」

――ものすごい勢いで突っ込んできたガランを、必死こいてどうにか避けるスミレ(と、麻美)。
この状況は、ヤバい。このまま――プラットフォーム状態――では、ガランのいい的・
木偶(デク)人形にしかならない。幸い、タックルを外し走り抜けたガランと自分との間には
距離がある。いまなら、ワイルドショットで牽制しつつその逃げ足でさらに距離を取ることも出来るだろう。

スミレは、そう考えた。……あるいは、この時点でいきなりの状況に若干混乱していたのかもしれない。

「マミりん、ちょっと下がっててね――アリサ、行くよ!!」≪――Gun Form――≫
(え、あ――――はいです!!)
「………………。」

再び弾け飛ぶ、プラットフォームの制服。そしていつの間にか紅いメイド服がまとわれ――――否。

まるでDVDの逆再生のようにプラットフォームの制服が再び形成される。
そしてやはり、ぽんっ、という軽い音と共に輩出されるアリサ――――!!

「…………っ!! な、なんで!!?」
「は、はぅあぅあぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!?」

まただ。またさっきと同じ状況。そして――

「(ずにっっ!)……! この馬鹿、敵、目の前にしてそんなあからさまにうろたえるな!!」
(――――へ!?)
「(ぶぉんっっ!!)――――ちっ、惜しい!?」

――唐突に何の前触れもなくオリヴィエがスミレに憑依し、横っ飛びで避ける!!
その次の瞬間、ついさっきまでスミレがいた場所を、ガランの打舞流叛魔(ダブルハンマー)が
通り過ぎていく……あのままつっ立っていては、ただの的だった。――――だが。

――ぽんっっ。

「(ずべしっっ)……っ痛ぅっ!!」
「――オリヴィエっ!!」

オリヴィエもまた、スミレの体から追い出される――

「……こ、これって……いまの、マミりんの“ギアス”っっっ! けど、なんで!?」
「あ、あの…………!(おろおろ 」

戸惑うスミレ、そして麻美。両方の視線が、ガランに注がれる。
ガランは嫌味たっぷりといった口調で、スミレに対して口を開いた。

「――なんでもなにも、ないでしょ。
 いままでその女は、あんたと二人っきりになる用途にしか……『状況を変える』方向にしか、
“テレパシー光波”――あんたは“ギアス”って呼んだっけ?――の力を使わなかった。
 それを、本来の用途に使用しただけの話よ。」
「“本来の用途”?」
「そ。事実を書き換えるってのは、いわばそれまであったことをなかったことにしてしまうことでしょ?」

そのとおりだ。
そしてその書き換えられた事実は、書き換えられる前の事実を提示されることで払拭される。

「この“テレパシー光波”は、状況を書き加えることも出来る。つまり、
『その3体に憑依できていた』という事実を書き換えないまま、『けど現在は出来なくなった』
 という状況を付け加えたの……って、あぁ、そうか、なるほど。
 あんたはそのイマジンたちに記憶の再認識をさせてたわけね、けど――――

 今回はもう、そのテは通じないわよ」
「け、けど!! そうだったとしても、マミりんにそんな風に能力を使う理由なんてないじゃん!?」
「……あぁ、それはあたしが能力を使う伏線を張っておいたから。あんたが3体の悪魔に
 かどわかされる夢を見せた上で、今、あんたにコレ(麻美)を突き飛ばす時に、こう言ったの。 

 『――言っとくけど、あたしはあなたの「お姉さま」の敵じゃないわよ。
  あたしの敵は、あの娘に取り付いてる“悪霊”――それも3体も。
  その悪霊が、あの娘を戦いに駆り立ててるから、危ない目にあうのよ。
  けどね、その悪霊がいなくなれば戦う理由はない……あとは、わかるわね?』

 ……ってね。あとは――現状の、通りよ」

――まさにそれは、悪魔のささやきだった。
昨夜見た……みせられた不吉な夢のことを覚えている麻美はその言葉を鵜呑みにしてしまい、
スミレから“悪霊”を祓うべく、強烈な“ギアス”を放ってしまったのだ――!!

「…………ひど…………! そりゃ確かにオリヴィエは悪霊並みにきょうあくだしアリサは悪霊並みに
 ひきょーなところもあるしシャルは悪霊並みに言葉を弄するのが好きだけど……
 マミりんの気持ちを、そんな風に利用するなんてッッ!!」
「「「ちょっとちょっとちょっとちょっと。(ぱたぱた手を振る 」」」
「――そんな!!? は、話が違います…………、っっ!!」
「うん、違うわねぇ。けど、あたしは『あとは……わかるわね?』と言っただけだし。
 あたしは『戦う理由はないから、虫けらのように一方的に潰す』という意味で言ったけど、
 それを『戦う理由はないから見のがす』という意味に取ったのは、あんたの勝手よ。」

キッと睨みつけるスミレ。自分のしてしまったことにショックを受ける麻美と、
それを嗤(わら)うガラン。その状況はシリアスで、オリヴィエたち3体のツッコミすらも
軽く流される。

「そういうわけだから、――大人しく吹っ飛ばされなさいっっ!!」
「「「スミレ(さん)っっ……!!」」」
「おねーさまっっ!!」
「――――――――っ!?」

――スミレめがけ、歪劉怒斗零羅(ワイルドトレーラー)の豪腕を叩きつけようとするガラン。
そのガランの前に、「やめてぇぇぇぇぇぇっっっ!!」と叫びながら麻美が立ちふさがる!!
だがガランはそれを見て取ると――想いっきり殴ってしまえば自分も傷つくので――
ふっ、と力を抜き、最低限の威力の打撃で麻美を殴り、出口近くまで吹っ飛ばした――――!

「……きゃああああああああっっ―――――――!」
「――マミりんっっ!!」
「ほらほら、自分の心配しなさいよ!!(ぼぐぅっ! 」
「――――、こふ……ッ!」

続いて、スミレの腹に一撃!! ……麻美の乱入で勢いを殺された分威力は確実に落ちているが、
それでも一瞬、息が全部吐き出され目の前が暗くなる程の衝撃を叩き込まれるスミレ――!

「あ――ぐぁ、……!、……っ!」
「スミレぇぇぇぇぇッッ!!」「は、はぅあぅあぅ〜〜〜〜っっ!!?」「――スミレさん!!」

慌てて駆け寄るイマジンたち。なんとか憑依しようとスミレに体当たりを敢行するも、
すぐにぽんぽんと弾かれてしまうだけだった。しかも傍から見ると、
こいつらもスミレにぽかぽか攻撃仕掛けてるようにしか見えない。(ぉ

「ほらほら、何発耐えられるかしら――――!! 罵而悪苦辣獣(メテオクラッシュ)!!」
「――ごふっ!? …………ぁ、う――――」
「ほらほら続けていくわよ――――」

さらに一撃を加え、スミレの体勢をを崩してからより大きな一撃を叩き込まんとするガラン。
だが、その時――――!!

ひゅっ、と、風を切る音。ジャンプしてきた何者かが、スミレとガランの間、その射線上へと
割って入る。まるでスミレの盾にならんかのごとく。――その何者かは…………百合峰、麻美。

「!! マ……ミ、りんっっ!!!」

慌てて、麻美を突き飛ばしてでも戦線離脱させようとするスミレ……だが、負ったダメージは
そこそこに重く、うまく体が動かない。

「な――――ちょっっ!?」

狼狽するのはガランも同じだ。このタイミングでは、麻美に対して手加減しようがない。
そして麻美にダメージを与えると、自分居間で跳ね返ってくるのだ。慌てて手を止めようとする
――が、間に合わない!!!!

 ――この時点で、スミレたちもガランも気がついていない。
 自らの体を傷つけるのを嫌ったガランが手加減したとはいえ、麻美の負ったダメージは
 相当大きかったはずだ。にもかかわらず、麻美がああも素早く飛び込んでくるなどありえない――!
 まして、麻美の運動神経は(体育の授業とか見る限り)生身のスミレとどっこいどっこいのはずだ。

そして。
ザシャァァァァァァァッッッッッ――――!! 殴られ、吹っ飛ばされる音が、した。
                ★
「――え――」と渇いた声を発し、目の前の光景を“信じられない”といった表情で見つめるスミレ。

視界の向こうには、殴られ吹っ飛ぶ麻美…………ではなく、ガラン――――!!
そしてスミレの盾になるように立ちふさがった麻美。

その麻美の、あるやなしやの胸の谷間――いや、それでも某剣崎さんよりは確実にありますがね、えぇ(ぉ―― 
からにょっきり“生えている”のは、腕。ボクシングのグローブをはめた腕が、その胸元から伸び、
完全に無防備だったガランの顔面にまともに命中し、吹っ飛ばしたのだ!!
「……ぼぐぅっ!?」と叫びつつ地面に叩きつけられるガラン――――!

「いっ……今のパンチはまさか……テリオス!?」
「……いやそのスミレ、だからそういうネタは誰にもわからない、というのに。」

……いやそのオリちゃん、だからそういうネタがわかってしまう君は何者なんだ、というのに。
それはともかく、まずその腕が。そして体が、頭が、下半身が――麻美の体から、うぞぞぞと生えてくる。
やがて一人の少女の姿となり、それは実体化した……麻美の体から吹き出る、大量の砂とともに。

「――す……砂っ!?」
「って、イマジンだと!? このやっかいなタイミングで出てくるのかっっ!!」

――驚愕するスミレ、そしてオリヴィエ。そう、考えるまでもない。その少女はイマジンだった。
ピンクのロングヘアの末端のみを縛っており、後ろから見るとまるでピンクのイルカのように見える
その姿。動きやすい、タンクトップの女性ボクサーのような格好で、髪の色こそ異なるものの
スミレにとある有名RPGのヒロインキャラのようなイメージを重ねさせた。
そのスミレの視線の先では、いきなり吹っ飛ばされた状況から立ち上がろうとするガランの姿。

「……き、貴様、なにもの……って、イマジン!!?」
「その通りよ!……な、長かった……苦節2話……もとい数日。いろいろコワい思いもしたけれど、
 ついに――ついに契約するべき娘と巡り会った……っ、てなわけで、そこのヌ●サっ!」
「誰が●ンサよ誰がッッ!? つーかヌン●だのタ●ノくんだのとみんな好き勝手に
 呼びやがるけど、こちとら“ガラン”っていう由緒正しい名前があんのよ!!」
「(聞く耳持たない)この“D”が……いいえ、“ドルフィンイマジンたん”が、
 契約に基づきあンたをぶっとばす!! 喰らいなさい憎いあンちくしょう!!!」

無意味にポーズをとりつつ、シャドーボクシングでもするかのようにシュッシュとその腕を振る。
ともあれ、“D”はいまこそ実体として――百合峰 麻美と契約を交わした
“ドルフィンイマジンたん”として、ここに姿をあらわしたのだ――――!


不意志根曲(ぶいしねま)・仮面ライダークロノスたんoutervolume 〜 みんな愛のせいね 〜 続く
【BGM:リングにかけろ 〜 明日への闘志 】(←おい)


――Imagine“D” Side


その、ほんの数分前。“D”はふよふよと空中を漂い――そこへ、たどり着いた。

「……廃工場! 様々な厄介ごとの聖地(メッカ)であると聞くわ。
 ここならあるいは、アタィの契約者足りえる人物が見つかるかも――――!!」

……ずいぶんメタな思考ではあるが、とりあえずその考えは正しかった。
そこではいままさに、ガランの計略にはまり、3体のイマジンを輩出させられたクロノスたん/スミレが
そのガランに食ってかかっていた、その真っ最中だった。

「………………。あれも、ライダー少女?
 以前見た2組の連中より、ずいぶん弱っちく見えるけど…………」

……当たり前であった。
臨戦態勢のめっちゃ乱暴もの(電王たん)や、敵にはいっさい容赦しない女(メガミスたん)と、
計略にハマって本来の能力を発揮できない状態のクロノスたんを比べるのはいくらなんでも酷だろう。

そうこうしているうちに状況が動き――おさげの少女(麻美)が、ガランにより吹き飛ばされ――
“D”の目の前へと落ちてくる!!

「――――――――!!」

“D”は、ふよよよよよよよん、と音もなく麻美の方へと駆け寄った。

「ちょ、ちょっと、あんた、大丈夫――――!」

見たところ、怪我はそんなにたいしたことはない。それでも衝撃はそれなりに大きかったか、
意識は半ば朦朧(もうろう)としている。――それでも、麻美は這うようにしながら、
「お……ね、さま――たすけ……ないと――っ」と、スミレのほうへ向かおうとしている。
――今の麻美が行けるとは思わないし、行ったところで邪魔にしかならないだろうに。

「…………。」

“D”は状況を察すると、麻美の正面に立ち言った。

「――あのライダー少女を、助けたいのね?」
「――――! あ、なた……は?」
「まず、アタィの質問に答えて。――助けたいん、でしょ?」
「……えぇ……っ!」

麻美の答えには、一瞬の躊躇もない。

「らじゃ(了解)。それじゃまかせて、あんたの願いを叶えて――助けてあげる。」
「(ぴく)ねが……いを――――?
 それ……じゃ、あなたも、あいつの、仲間なの――――!!?」

問われて、一瞬言葉に詰まる“D”直感でわかる。あのサカナ女はイマジンではない。
そういう意味では仲間では間違いなくないが――しかしこの場合麻美が言いたいのは、
“D”がおねえさまを助けてくれるか――麻美を裏切らないかどうか、という話だろう。
どう説明したものか、一瞬だけ“D”は悩む。だが結局、うまく表現できる言葉なんて
自分の知能(あたま)では思いつかなかったので、結局――ぶっちゃけた。

「あのサカナ女は仲間じゃない。だからアタィは――アタィなら、あのサカナ女を倒して
 おねえさま――あのライダー少女を助ける手助けは出来る!」
「本当……? 本当に? 嘘じゃない――??」
「そこは信じてもらうしかない――けど、アタィの目的は過去にわたることで、そのためには
 あんたが満足するように願いをかなえなくちゃいけない。だから、いったん約束したら
 あんたの願いは裏切れない。――それに、

 ――どうやらあのサカナ女に騙されるかナニカしたみたいだけど……嫌いなのよ、そーゆーの」

……これはまた、イマジンらしからぬセリフである。しかも言葉が上手くない。
だがその瞳の真摯さに、麻美も感じ入るものがあったのか。

「――わかった。信じる。過去でも何でもあげるから――おねーさまを……助けて。」
「任せなさい。あたぃは、ここに契約する。必ず助ける。

 あのライダー少女と、それから……あんなぽにょぽにょに憑かれてる、あんたもね!!」
「―――――――おね……、がい……」
「(こくん。)」

頷く――こうして、“D”は契約した。砂が麻美の体に染み入るように吸い込まれる。
次の瞬間、か、と麻美の瞳が見開かれた。「!ぅ……ぁ――――!」と、小さな、だが確かな“悲鳴”が
一瞬だけその喉から漏れるが――それも一瞬のみ。
そして、麻美は立ち上がる……否、それは意識を“D”が握った姿だ。
ピンクに染まった髪の一房、そして瞳。そのまま麻美――“D”憑依状態。言うなればD麻美――は
ガランがクロノスたん(PF)を嬲(なぶ)る中へと突入し、

そして、ガランへと、そのパンチの一撃を炸裂させた――――!
                ★
――ガランを殴り飛ばし、シャドーボクシングでもするかのようにシュッシュとその腕を振る
ドルフィンたん。その存在に、スミレたちは驚愕を隠せない。
ただし、それはドルフィンたんが唐突に姿をあらわしたから…………では、ない。

「!? み、みんな! あのイマジンって――――!」
「……だな、おい。間違いなく――――そういう、ことかよ。」
「! !? ??! は、はぅあぅあぅ〜〜〜〜〜〜っっ!?」
「あらあら。なるほどそういうパターンもありですねぇ」

――4人が4人とも、そのドルフィンたんの姿に見覚えがある……そんな微妙な反応を
みせていることに、当のドルフィンたんはしかしまったく気がついていなかった――――
八兎ジャック
2009年03月08日(日) 22時42分36秒 公開
■この作品の著作権は八兎ジャックさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ごめんお待たせ【 誰も待ってねぇ 】しくしくしくしく……(涙

それはともかく、ようやく“D”とスミレちゃん、エンカウント。
……スミレちゃんたち、“D”のことを知ってるっぽいセリフ吐いてますが、
そのあたりの詳細は次回で。……嗚呼(あぁ)、イマジン残酷物語の歴史が、また1ページ……(嘆

ちなみに、ドルフィンイマジンたんの出展は、イソップ童話「ライオンとイルカ」。
あてにならない同盟者の寓話だったりして…………って、いきなしダメじゃん…………

つぅか、全4回のうちの3話目にして、ようやく敵の正体明示だよぉぃw
ガランについては、原作でも「ヤンデレな存在に同化して、光線で他人を操る」みたいなキャラでした。
ただ、人間を操るのはツノからの怪光線だったけど……それを“ギアス”みたいにしちゃったのは、
個人的趣味。(ぉ 今風アレンジ、くらいいいほうに解釈してくれれば幸い。
あと、ガランガスじゃなくて炎吐きますので悪しからず。

あと今回シャルさんかませな役割負ってますが、ぶっちゃけ今シリーズで挽回の機会ありません。(ぉ
……いやそのだって、この話の着想自体が「YPさんが『ろっくおん』放置して『朱凰外伝』やってた頃で、
シックルフォームの基本情報がなかった」んで仕方ないと言うかなんと言うか、いやそのシャル姐さん、
そういうわけなんで次があるなら考慮するんで、今回だけは許せ許して許し給う、その鎌を
罪も無い病気がちな書き手に向けるのはやめていただけるとありがたいのでございますが。(ぇ

               ☆

てなわけで、次回完結ー。(左右真っ二つにされたを糊でくっつけながら)


     ★


ここからは代理投稿者。
PASSWORDは以前と同じです。
……イタズラしないでね?(ぉ

この作品の感想をお寄せください。
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