仮面ライダーバルキリーたん 第二話 Guardian of operation at time |
「Guardian of operation at time」 愛「さて、皆様。お初にお目にかかります。私、この物語の主人公である天童慧の母親であり、科学捜査研究所所長、そしてこの物語の進行役を勤めさせていただいております天童愛と申します。さて前回、西暦2010年の現代に突如現われた侵略者集団「イマジンたん」。その内の一人、スパイダーイマジンたんに狙われてしまった慧ちゃんは、イマジンとしての役目に嫌気が差し、慧ちゃんに惚れ込んでしまった謎のイマジンたんの力を借り、かつてあたしが戦ってきた仮面ライダーバルキリーたんのベルト一式を授けた慧ちゃんが二代目仮面ライダーバルキリーたんに変身し、見事スパイダーイマジンたんを打ち破るのでした。しかし、それはほんの序章に過ぎなかったのです」 4月13日 AM1:00 河川敷。 川原からずぶ濡れになって這い上がってきたのは、スパイダーイマジンたんであった。 スパイダーイマジンたん「決めた・・・。あいつ、もう仲間とか関係ない。先にぶち殺す」 愛「今回の対戦カードは復讐の念に燃えるスパイダーイマジンたん!!それでは!!仮面ライダーバルキリーたん、レッツスタート!!」 AM7:00 Vライナーフェニックス・寝台車・001号個室 やけに揺れるな・・・。 そんな感覚で、慧は目を覚ました。 頭の上には冷やしたおしぼりがおかれており、体中に絆創膏や湿布、包帯が巻かれている。 ゆっくりと起き上がると、そこは自分の部屋ではない。 限りなく自分の部屋に近い内装だけれど、かなり狭くなっている。 そして窓がある。 窓を何気なく見ると、其処に広がる風景を見て、慧は眠気が一気に覚めた。 慧「な・・・・どこ・・・・何処なのよ、ここはーーーーーーーっ!!」 其処はまるでオーストラリアの本で見た事があるような一面砂と巨大な大岩やサボテンなどが生えている広大な大地が広がっている。 決して家の外の風景などではない。 慧が部屋から飛び出すと、廊下があり、いくつもの個室が立ち並んでいる。 「002号室」「003号室」「004号室」「005号室」「006号室」「浴室」と書かれたプレートが並び、小さい売店がある。 その光景はまるで、電車のようだ。 慧はそう思った。 後ろから声が聞こえてくる。 振り返ると、ラウンジと書かれたドアから聞こえてくる。 恐る恐るラウンジの扉に手をかけた。 同時刻 寝台車 ラウンジ 車両の両側には大きなガラス張りとなっており、風景が一望できるラウンジにはソファーが置かれ、壁の棚にはテレビや雑誌も置かれている。コーヒーサーバーや紅茶のティーカップセットも用意されている。まるで超高級の一流ホテルのようだ。 慧「わあ・・・・」 思わず感嘆の声を洩らしてしまう。 愛「あ、慧ちゃん!おはよ〜」 振り返ると、母親の愛が紅茶を飲みながら笑顔で手を振っている。 慧は愛の元に慌てて駆けつける。 慧「お、おはよう。というかさ、これ、何!?」 愛「え?電車」 慧「そりゃ見りゃ分かるよ!!これ見て誰も我が家なんて思わないって!!そうじゃなくてね、なんであたしがここにいるかってこと!?」 愛「お母さんが連れてきたから」 慧「あ・・・そう、そうなの、というか、あのね、その」 愛「慧ちゃん。今から貴女にお話しします。あ、そうそう、慧ちゃんに紹介したい子がいるの。慧ちゃんを助けてくれた人よ」 そういって、手を振ると、ドアが開き一人の女の子が入ってきた。 紅い髪をポニーテールに縛り上げ、簪をつけ、桜色の和服を着込んだ可愛い女の子。 「あ、おはようございます。慧殿。朝食ご用意いたしました」 そういって、テーブルに出されたのはご飯とお味噌汁、アジの干物、お新香、生卵に納豆といった和風の朝食であった。 慧「・・・・あ・・・・ど・・・どうもありがとうございます」 もはや呆けたように応えるしかない慧であった。 慧「あたしに憑依したイマジンーーーっ!?」 愛「うん。この子、話してみたけど、悪い子じゃないみたいよ」 ルーベット「わ・・・私、初めまして。ルーベットと愛殿からお名前を頂戴いたしました。未来より2010年にやってきました。不束者ですが、よろしくお願い申し上げます」 愛「ルビーみたいに紅い髪とか瞳とか綺麗でしょう?だからルーベット」 慧「・・・うん、そうだね。確かに綺麗だし・・・似合ってるよね」 ルーベット「ま、まあ、その、あの、ポポポッ///」 ルーベットが赤面して頬を両手で覆う。頭をフルフルさせる仕草は可愛い。 そして、タカのイマジン「ルーベット」は正座をして、頭を深々と垂れて礼儀正しく挨拶をした。慧も慌てて、正座して頭を下げる。 慧「あ、あたしは、慧です。天童慧。よろしくお願い致します。助けていただきありがとうございます」 愛「初々しいなあ〜♪慧ちゃん顔まっかっか〜♪きゃわゆ〜い!」 慧を茶化すように笑う愛を慧が軽く睨む。 慧「ルーベット・・・って呼べばいいのかな?」 ルーベット「はい」 慧「ルーべット、色々と聞きたいことがあるんだけど、まずは・・・そうだな。うん、あのイマジンって何者なの?」 愛「イマジン。それは、未来からやって来た人類の精神体が、人間のイメージ=記憶により怪人としての肉体を得た姿。過去を都合の良いように改竄し、現在や未来を変えることを最大の目的としているわ。お母さんも昔、イマジンたちの襲来に巻き込まれて、その時、このベルトを手に入れて、バルキリーたんに変身して戦っていたことがあるの」 慧「現代や未来を・・・変える?」 ルーベット「私はこんな計画に手など貸すつもりはございませんでした。ですが知ってしまった以上見てみぬふりなど出来ますまい。それで、ヤツラに紛れて2010年にやってきたのです。彼等を止めるために」 慧「でも、それって、ルーベットは・・・・」 愛「実質裏切ったってことよね」 ルーベット「・・・・はい」 慧が落ち込んだルーベットを見て、取り繕うようにして話を続ける。 慧「でもさ、どうやって変えるの?」 ルーベット「イマジンは契約者の願いを聞き、その願いを叶えることで、契約を成立させます。程度はまちまちですが、契約者の意思に関わらず殺人・略奪・破壊活動を平気で行います。そして、契約者の最も強く思う過去へ飛ぶのです。望みを叶えるという行為はこの過去の時間を強くイメージさせるための間接的手段に過ぎないのです。ヤツラは願いを強引に解釈して契約を完了、場合によっては完了すらしないケースがほとんどなんです」 慧「あのチカンも誰かと契約しているってことかしら・・・?」 愛「そうなるわね」 慧「そうなると・・・契約者を探すっていう調べ方も考えておくとしますか。あとは、あのイマジンが攻めてくる前に、もしくは何かやらかす前に探し回るというのも、うーん、地道な捜査が必要ね」 愛「さっすが刑事の娘!!地道な捜査が実を結ぶのよね!!」 慧「はいはい」 ルーベット「あの、慧殿。私はイマジンの存在を感知することが出来ます。もし貴方様がよければ、よければですが、私も捜査のお手伝いをさせていただけませんでしょうか?」 慧は少し考えるような素振りをする 慧「でもさ、本当にいいの?それでもし、ルーベットが狙われたら・・・」 ルーベット「・・・え?それは?」 慧「だってさ、それじゃ、ルーベットがこっそり捜査していることが知られたらルーベットが狙われるじゃない。今の段階ならあたしだけがイマジンとやらにマークされているし、危ない目に逢うこともなくなるだろうし・・・」 愛「要するに、命の恩人の貴女を危険な目にあわせたくないんだって」 愛がそういうと、ルーベットが噛み締めるように慧を見る。 その瞳は感動しているかのように潤んでいるようにも見える。 ルーベット「慧殿・・・。私もイマジンです。それなのに、イマジンであるこの私に、そんな情けをかけてくださるなんて・・・・何と勿体無い」 慧「情けなんかじゃないよ。あたしのこと助けてくれた人が酷い目に合うのを分かっていて放っておけないもん。情けとかじゃなくって、その、あたしのワガママだよ。ルーベットが痛い目にあったり苦しいって思ったりする事があるなんて、嫌。あたしは・・大丈夫。ちょっとやそっとのことじゃ動じないしさ。それでも戦うっていうなら・・・一緒にやろうよ」 慧が優しい笑顔を浮かべる。 その大らかな心からくる優しさは見る者を幸せにするオーラに包まれている。 ルーベットが深々とお辞儀をする。 ルーベット「ありがとう・・・ございます」 このイマジンは悪いイマジンじゃない。慧はそう確信した。ふと時計を見ると、もうそろそろいつもどおり晶が迎えに来る時間だ。 慧「ご馳走様。お味噌汁美味しかったよ。あ、あたし、もう学校行かなきゃ!!」 愛「あたしも研究所行かなくちゃ。今日遅刻したら4日間連続遅刻で減給されちゃうし」 慧「もうっ、どうしてもう朝早く起きられないの!?」 愛「だって眠いんだもん!!」 慧「子供か、あんたはっ!!」 愛「子供でいいもん!眠いときは寝たいもん!!お仕事きらーい!!」 AM8:00 河川敷 河川敷の下、ダンボールで作った即席の家からスパイダーイマジンたんが出てきて焚き火の火を消した。昨夜はここで野宿したらしい。 スパイダーイマジンたん「さてと、殴りこみかけると意義ごむのはいいのですが、手がかりがまるでないときてるし・・・どうするかな。契約なんて今は構ってられないし。いや、待てよ、あたしが契約を果たすことを阻止するためにバルキリーがいるのなら、契約を果たすとき、あいつらもやってくるはずよね」 つまり契約者をおとりにして呼び出そうという魂胆だ。 その頃。 河川敷の上にある橋に差し掛かっていたのは晶と慧だ。 晶「遅刻だーーーーーーーーーっ!!」 慧「まさか自転車が揃ってパンクするなんてーーーーーーっ!!」 我が身の不幸を嘆きつつも自転車をブッチギリで走らせる2人。 しかし、慧の不運がここで終わるわきゃない。 慧の自転車のタイヤがバキッ・・っと音を立てて軸から外れた。 慧「ああ・・・この後は当然・・・お約束――――――っ!!」 そして、タイヤが吹き飛び、前輪がなくなった状態のまま暴走する自転車が橋の欄干にぶつかり、哀れかな、慧の体は橋の外側に放り投げられた。 慧「ぎゃああああああああああああああああっ!!!」 晶「ケイーーーーーーーーーーーっ!!」 バッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!! 川の中へとダイブし、大きな水柱が上がった。 その光景を見て、スパイダーイマジンたんは呆然と見ていた。 スパイダーイマジンたん「・・・・ありえねぇだろ、それ」 河川敷からずぶ濡れになって這い上がってきた慧を出迎えたのはスパイダーイマジンたんを前に腰を抜かしている晶と、呆れたように慧を見ているスパイダーイマジンたんであった。 慧「お前は・・・!!」 スパイダーイマジンたん「お前・・・さあ。折角人が名案思いついたのに、そっちから来るなんてマジKYじゃね?」 慧「来たわけじゃありません!!いつもどおりのアンラッキーですっ!!」 スパイダーイマジンたん「・・・言ってて悲しくならないの?」 慧「・・・泣きそうです。あ、もう、涙出てきた」 慧がそういう理由は、遠くから聞こえてくるチャイムの音であった。 慧「遅刻決定。罰掃除・・・お説教・・・ああ・・・・もうイヤ」 スパイダーイマジンたん「そっちかよっ!!あたしより、遅刻の方がダメージ大きいって・・・つか、あたしゃ遅刻以下かい!(ズガーン)」 慧「当たり前です!!いちいちチカンなんか気にしてたら、毎日毎日不運で頭一杯になってノイローゼになるじゃないですかっ!!!!あんたに分かりますか〜?放課後、鬼のお局ティーチャーに地獄よりも恐ろしい説教地獄喰らった挙句に、7時過ぎまで掃除させられるあの苦痛が〜、辛さが〜!!!!」 スパイダーイマジンたん「あ・・・その、言い過ぎました。マジ、すんません」 慧の頭に角が生えて、口から舌が蛇のようにチロチロさせながら巨大化して迫ってくる鬼のようなイメージにもはや謝るしかほかない。 スパイダーイマジンたん「て、何であたしが謝らなきゃなんねぇの!?」 慧「いや、知りませんけど」 スパイダーイマジンたん「お前・・・あたしを使って遊んでいるつもりか!?弄んでいるのか!?」 慧「誤解招くような発言かますなああああああああああああああっ!!!あたしゃ鬼畜でもないしそんな趣味もありませんよおおおおおおっ!!」 もう目からは涙が滝のように流れている。もはや突っ込むのも疲れてくる(それならやらなきゃいいのに)。 ルーベット(慧殿!!) 慧「ルーベット、行くよ!!」 そういうと、慧の頭に紅いメッシュが入ったポニーテールに代わり、瞳も赤く光り輝く。 そして腰には「バルキリーベルト」が巻かれた。 R慧「変身!!」 慧の体を紅いタカが飛び込んで仮面と鎧を装着していく。 Vガッシャーを組み立て、ランスモードにすると、肩に担いで構える。 Lバルキリー「その罪、閻魔に代わって斬る!!!」 スパイダーイマジンたん「ちょっと待てーーーーっ!!罪って、ほとんど自虐ネタじゃんか!!ンでもって逆切れかよっ!!」 Lバルキリー「許せません。よくも私が敬愛する慧殿を泣かせましたねっ!!」 スパイダーイマジンたん「人の話を聞きやがれーーーーーっ!!」 もう泣きたいのはこっちのほうだ。 そう思い、思わず腕を伸ばして爪を振るおうとする。 その時だった。 スパイダーイマジンたん「!?」 スパイダーイマジンたんの腕に切り傷が入り、血が吹き出す。 スパイダーイマジンたん「!?何だ、これ!?いてぇっ!!」 Lバルキリー「私は何もしていませんよ?」 スパイダーイマジンたん「まさか、契約者のあの子に何かあったのかっ!?」 Lバルキリー「どういうことです?」 スパイダーイマジンたん「お前も分かるだろうが!!契約したイマジンは契約者と一心同体だって!!つまり、あたしが契約した子が何かあったんだよっ!!」 その時だった。 慧の携帯に電話がかかってきた。 それは愛からであった。 慧「もしもし!?」 愛「慧ちゃん、聞いて。新手のイマジンよ。今、繁華街のクラブで高校生が喧嘩や集団飲酒で一斉検挙されたんだけど、途中で若い子からカマキリの姿をした怪人が飛び出て大暴れしているとかで!!」 慧「こんな時に!?」 スパイダーイマジンたん「カマキリって・・・、この切れ味、まさか・・・!?」 思い当たる節があるらしく、スパイダーイマジンたんはその場を飛び出していった。 慧も変身を解除して、後を追って走り出す。 晶「・・・・何、あれ?夢?」 一方で、親友に置いてけぼりを食らった晶は放心状態で一部始終を見ていた。 AM9:15 星見駅前繁華街「きらめき通り」 クラブ「ハンニバル」前では、数人の若者や警察官達が傷だらけになって道路に横たわっている。その倒れている人物の顔を見て、慧は唖然とする。 慧「昨日、糸井さんを呼び出した連中だ・・・!」 そこへ、愛がやってきてこっそり耳打ちする。 愛「イマジンが憑依したのはあの女の子よ。警察に検挙されるとき、「ぶっ殺してやる」とか叫んでいたらしいから、おそらくそれが願いね。「この事件に関わる全ての人間を殺す」とかいう」 慧「そんな・・・!!」 愛「慧ちゃん急いで。今、この騒ぎに乗じて、一人の女の子が逃げたの。見つけた時はクラブで暴行を受けていたのか救急車待ちの状態だったの。それでね、現場からこんな手紙を見つけたわ」 取り出した手紙にはこう書かれていた。 「糸井奈央は預かった。返して欲しければ一人でクラブ・ハンニバルに来い。 天童慧へ」 慧の背筋に冷たいものが流れた。 一方で。 マンティスイマジンたんは鋭い鎌をぎらつかせて、裏路地を必死で逃げ惑う少女・糸井奈央を狩りをするかのようにギラギラと瞳を輝かせて走っていた。 (ここで、イマジンたんファイル!) 「マンティスイマジンたん。鎌田奈緒美の思い描く「カマキリと月」のカマキリから具現化されたイマジン少女。白兵戦を得意にしており、両手の甲から生えた鎌が最大の武器。また、その鎌から刃を飛ばして、遠方の敵を攻撃することもできる。」 そんな彼女の前にスパイダーイマジンたんが躍り出た。 マンティスイマジンたんは鎌を納めて同胞を蔑むような冷たい視線で見やる。 スパイダーイマジンたん「お前どういうつもりだっ!?あたしの契約者を殺す気か!」 マンティスイマジンたん「ええ、殺しますよ。そういう願いなのですから。それに、ああいう気弱で恐怖に震え上がっている子ウサギちゃんというのは、一番切り刻みがいがある。ああ・・・どんな引きつった顔を見せてくれるのでしょう、どんな断末魔を上げて死んでくれるのでしょう?それを考えるだけでうっとりとしてきますわ」 スパイダーイマジンたん「そのためなら同朋の命も知ったこっちゃねぇってか・・。なるほど、腐りきってやがる!!」 マンティスイマジンたん「おやおや、貴女に言われたくありませんよ。何でもバルキリーたんなどというわけのわからない人間風情にぶっ倒されたそうじゃないですか。そんなイマジンの恥ともいえる存在など消えてしまえばいい」 そういって、マンティスイマジンたんが両手の鎌を飛び出し、一気に走り出すと鎌を振り上げてスパイダーイマジンたんに切りかかっていく。 ブン!と空気を切る音を立てながら刃が繰り出される。すんでのところでバックステップでかわすスパイダーイマジンたん。しかしギリギリでかわしきれず、アーマーの胸元が切り裂かれる! マンティスイマジンたん「きひひ、イマジンなど斬っても楽しくないのですけど、獲物となったら仕方ありません」 再び構えなおすマンティスイマジン。また刃に魔力を込め始める。 スパイダーイマジンたん「あのタカのイマジンの言っていた通りか・・・。自分が何をしたいか、何をしたかったか分からないまま侵略して倒されて・・・惨めだなぁ、これ」 今更ながら気付いた。 過去を変える。ただ命令のままに動き、いらなくなったら捨てられる。 そんな矮小な存在でしかない自分を。 そんな彼女の様子を奈央はまるで自分を見ているかのように見ていた。 奈央(あの怪人・・・あたしと一緒だ。どんなにお金を持っていても、なくなったら殴られて蹴られて、しまいには生かすも殺すもあの人たちの意思次第なんてことになっちゃってて。でも、それって、どうしてあたしたちがこんな目に遭わなきゃいけないの・・?) 悔しくて涙が出てくる。 自分がずっと押し殺していた言葉が口から出てくる。 自分はどうなっても構わない。 でも、自分にそっくりな怪人が切り裂かれていく光景を見て彼女は叫んだ。 (回想) スパイダーイマジンたん「いじめっ子をやっつければいいんだな?よし、OK」 奈央「やっつけるって・・・まさか・・・・」 スパイダーイマジンたん「完膚なきまでにボッコボコにする。もういじめなんて出来なくなるまでにな」 奈央「・・・・でももしそれで仕返しがきたら・・・」 スパイダーイマジンたん「バッカ。それでも来るならまた吹き飛ばす。それがお前とあたしが結んだ契約なんだろう?契約は守る主義なんだ」 嘗て、自分を助けてくれると言ってくれたあの笑顔を思い浮かべて。 奈央「・・・す・・・け・・・・て」 ―助けて!!!!!あの怪人さんを誰か助けてえええええええっ!!!慧さああああん!!― その時だった。 「かしこまりました、姫君殿」 そういって、紅い翼を翻し、一人の騎士が立ちはだかり、マンティスイマジンたんをぶっ飛ばす。 マンティスイマジンたんが路地裏の空き地に吹き飛ばされた。 そして転がるマンティスイマジンたんの前に、仮面ライダーバルキリーたんが躍り出た。 Lバルキリー「まさか契約者まで切りつけるなんて。もはや貴女の凶行許すまじ。その罪、閻魔に代わって斬る!!」 マンティスイマジンたん「きひひ、今宵の刃は血に飢えておる・・・」 Lバルキリー「いきます!!」 槍を振り回し、怒涛の勢いでバルキリーたんが、マンティスイマジンたんを縦横無尽に切り裂いていく!!ブン!と空気を切る音を立てながら刃が繰り出されるが、それを槍で防御すると、そのまま一気に持ち上げて投げ飛ばす!! 慧(ルーベット、相手は手数の多さで攻め込むタイプだよ。リーチの長さを生かして闘いましょう!!) Lバルキリー「おお、さすがは慧殿。一度だけでそこまでお見抜きか!!」 バルキリーたんがライダーパスをベルトに通す。 「Full Charge」 ターミナルバックルからフリーエネルギーがVガッシャーに充填され、Vガッシャーを構えると、連結している部分が紅いオーラエネルギーの糸でつながれているかのようになる。それを一気に投げ放つと、縦横無尽に刃が飛び出し、それがまるでマンティスイマジンたんを閉じ込めるオリのようになる。 そしてそれは一気に縛り上げた!! マンティスイマジンたん「なにっ!?」 Lバルキリー「あなたは倒す・・!!確実に!!たあああああああっ!!」 バルキリーが飛び上がって、紅い光を全身に纏いながら目にも止まらない速さで一気に蹴りつける!! Lバルキリー「ライダ―キック!!!」 マンティスイマジンたん「ぎゃああああああああああああああああっ!!!」 マンティスイマジンたんは蹴りを受けて転がり、爆発四散した。 そして、もう二度と再生する事はなかった。 自分が切りつけ、ショックで記憶を失ってしまった少女のために。 その様子を見ていたスパイダーイマジンたんは呆けてみていた。 スパイダーイマジンたん「自分の意思で選んで本気で挑むつもりか。イマジンに。はは・・・ははは・・・・カッコいいというか・・・バカっつーか・・・くそっ・・・どうしてこう涙が止まらなくなる?どうしてこんなに自分が惨めに思える?あたしは・・・あたしらしく生きたいって・・・思ったことすらないのに」 涙が零れ落ちる。 止まらない。 慧がやってきて、スパイダーイマジンたんに手を置き、優しく語り掛ける。 慧「今が分岐点なのかも知れませんよ。自分らしく生きたい。あなたはあなたにしか作れない過去や現実、未来がある。どう生きるかは貴女次第ですよ」 奈央「うん、そうだよ。あたし嬉しかった。あたしの味方になってくれる人がいて、あたしにも、あたしにもこういう人たちと巡り合えるんだって・・・。そう思ったら、生きたいって思ってきた。だから、貴女も、生きて・・・!」 奈央は傷だらけの手でスパイダーイマジンたんを抱きしめる。 スパイダーイマジンたんの瞳から涙が零れ落ち、止まらなくなった。 PM21:00 Vライナーフェニックス ラウンジ 愛「そう、それでその奈央ちゃんはどうなったの?」 慧「うん、もう少し頑張ってみるって。それでね、もし何かあったらあたしのところに着てって伝えました」 ルーベット「ところで、いじめっ子たちはどうなるのでしょうか?」 愛「逮捕。それでもって退学処分決定になったらしいわよ。札付きのワルだったらしいけど、今回は遣りすぎたわね。何せ覚せい剤のバイニンとの繋がりもあったし、女子高生を悪用して売春組織まで手を染めていたから、余罪を転がせば出てくる出てくる。もう、学校にはいけないわね。彼女達も巡り合えればいいけど、自分達の存在を受け入れてくれる誰かに」 慧「・・・うん」 ルーベット「そう思わずにはいられませんな」 愛「それで、そのクモのイマジンたんは・・・?」 ルーベット「ええ、まあ、その、保護監査処分ということで・・・」 同時刻 浴室 大浴場で一人、頭に手ぬぐいを巻いて必死に風呂掃除をしているのは、スパイダーイマジンたんであった。 スパイダーイマジンたん「チックショ〜!!!何が保護観察処分だっ!!風呂掃除永久当番って・・・要するにパシリじゃねぇか!!!!コンチクショ〜!!!」 涙を流し、床や壁の汚れと必死に戦っているスパイダーイマジンたんであった。 しかし、何処かほっとしたように険が顔から消えていた。 PM22:00 星見市中央病院 病棟501号個室 光の玉が一人のベットに入り込み、やがてそれが形を作り上げていく。 ?「お前の願いを言え。どんな願いでも一つだけ叶えてやる・・・」 続く Next「第三話 Checkmate and waited release」 |
鴎
2009年03月27日(金) 10時40分00秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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はじめまして、ワタクシへっぽこSS書きのYP(某所ではわぴたん(ぉ )と申します。 こんごともよろしくです。 オレ オマエ マルカジリ。 ところで、『鴎』って、なんて読むん、です、か……?(汗 >けー(慧)ちゃん なんでも武術の腕前はイマジン少女とタメをはれるほどという、実にハイスッペクわがままボディな女の子。 で、今のところ巻き込まれ属性持ち。 ……ウチの子とは真逆だなぁ。(苦笑 ともあれ主人公のお約束どおり正義感と根性はある、と。 これからもツッコミ 兼 二代目として頑張ってください。 >ルーちゃん >ランスフォーム (((;゚Д゚))) ……!? 基本フォームがモロかぶりという、初めての体験にガクブルしておりますが。 まぁそれは置いといて、大和撫子とはえぇもんですのぅw ウチのアホの子にもルーちゃんのおしとやかっぷりを見習わせたひっ……! >ぼくらの隣人、スパイディ(違 スパイダーたん、これからどうなるのやら……。 でわ今回はこの辺でー。 |
50点 | YP(ようやく退院……最近はなにかと病院に縁があるなぁ。(苦笑 ) | ■2009-03-29 23:27:04 | i121-118-1-40.s11.a028.ap.plala.or.jp |
合計 | 50点 |