仮面ライダーバルキリーたん 第11話「Those who annihilate it by rage」 |
「Those who annihilate it by rage」 愛「さてみなさま、前回はさぞ驚かれた事でしょう。無理もありません。今回のイマジンの事件を調べているのが、慧ちゃん達以外にもいたのです。そして、彼らはこの世界とは異なる別の世界からやってきた、ファンガイアと呼ばれる種族の頂点に立つ4人組・チェックメイト・フォーだったのです。そして、そのうちの一人で、ファンガイアの脅威にンなる存在のせん滅を一任している大地の力をつかさどりし戦士・アーケロンファンガイアことルークが慧ちゃんに標的を定めてしまったのですから大変なことになりました。しかも、今回敵はそれだけではなかったのです。そう、ルークと共に、もう一人動き出したのです。それは、チェックメイト・フォーのクイーン!!果たして慧ちゃんの運命は!!それでは!!仮面ライダーバルキリーたん、レッツスタート!!」 6月3日 PM19:00 電気街 メイドカフェ「フェアリーテイル」 霧がかかった夜の電気街は、それでもネオンと喧騒に包まれ騒がしい。 メイドカフェの一角で、一人の少女がメイド服を着込んだ店員とトランプ遊びに興じていた。銀色のウェーブがかかったロングヘアに、縦ロールを編みこみ、肩口を大きく開いた黒いゴスロリドレスを着込んだ少女はあどけなさが残る可愛らしい顔にどこか背筋が震えるような妖艶な笑みを浮かべている。 クイーン「スリーカード・・・」 客「すげえ!!また、真姫(まき)さんの勝ちだ!!」 メイド「くすん、負けちゃいました〜」 クイーン「ふふっ、楽しかったわよ。ありがとう」 そこへ、180pは超える長身の凛然とした女性がやってくる。 ルークであった。 ルーク「よっ、クイーン」 クイーン「あら、ルーク。いけない、もう待ち合わせの時間かしら?」 ルーク「正確にいえば1時間オーバーだけどな。メールもつながらねぇし。あんまり待っても来ないからもしやと思ってみてきてみりゃこれかよ」 クイーン「ごめんごめん、ちょっと熱入っちゃった」 ルーク「しゃあねぇな・・・。ビショップももうそろそろ来るころだから行こうぜ」 クイーン「はいはい」 そういって、ルークについていくようにしてクイーンも店を出ていく。 待ち合わせ場所に行くと、そこにはビショップも到着していた。 クイーン「待った?」 ビショップ「いえ、私も今来たばかりです」 ルーク「キング・・・やっぱ怒ってるかな?」 ビショップ「いえ、クイーンが電気街に仕事にいったら、間違いなく遊んでいるだろうから1時間ほど遅れていくとおっしゃってました。ちょうど合流できるんじゃないですかね」 ルーク「全く、経過報告兼ねて外で食事に行こうっていった本人が遊び呆けて遅刻してどうするんだよ」 クイーン「ふふっ、メイクの仕事で知り合ったメイドの女の子と息合ってね。つい1ゲームのはずが・・・・あはは・・・・ごめんね」 ビショップ「全く、あなたというお人は・・・・」 ビショップとルークが額に手を当てているが、本人は全く意にも介していない様子で笑みを浮かべている。 クイーンという立場の割には、細かいことを気にしない自由奔放な気質の持ち主のようである。少しは気にしてほしいというのがルークとビショップの切なる願いではあるのだが。 クイーン「ところでぇ、ルーク。貴方の言っていた契約者の件はどうなっているの?」 ルーク「それなんだけどさ、なんか、もうちょっと様子見させてほしいというか、ルークが出るというようなタイミングが見つからない状態。もうしばらく、ビショップが様子を見てみてもいいかもしれない」 ビショップ「・・・・私も同行してみましたが、同感です」 ルーク「確かにイマジンと契約はしているんだけど、何ていうか、願いを言っている様子もないし」 ビショップ「というよりも・・・・」 ルーク「・・・・だよなぁ」 クイーン「何ですの?」 クイーンが疲れ切ったようにうなづきあう2人を見て首をかしげる。 「あまりにも運がなさすぎて、何を願ったのか、それどころか、その人物に誰かがイマジンを憑依させて不幸を引き起こしているのではないかといわんばかりの現状だから、どうすればいいのか分らない」 2人の現状況での契約者のことを話すと、クイーンの目が丸くなった。 その人物こそ、まぎれもなく、仮面ライダーバルキリーたん・天童慧であることを知る由もなかった。 Vライナー 食堂車 まさしく、慧はいつものようにドタバタの真っただ中にいた。 唯今時刻は夜7時。 しかし、慧は幾分疲れた様子で食堂車の席に座っていた。 その向かいに晶が心配そうに見ている。 慧「はうう・・・・お腹すいた」 晶「大丈夫?」 慧「何でこんなことになっちゃうんだろう・・・大丈夫かな」 そういって厨房の先をみると、そこからいくつものけたたましい声が聞こえてくる。 厨房ではルーベット、トパーズ、サファイア、エメラルドの4人が食材と調理器具を片手に激しいバトルを繰り広げていたのだ。机の上には無残なまでに食材の残骸と調理器具が滅茶苦茶に散らばり、流しには生ゴミが山のように積み上げられており、床にも野菜の皮とか水がぶちまけられている。 ルーベット「ああっ、お鍋が、お鍋が沸騰しておりますぞっ!!」 トパーズ「バカ、何で水があふれんばかりになるまでカレーを詰め込むんだ。沸いたら沸騰してあふれるのは当り前だろうが」 ルーベット「ぎゃああああああああああああああああ!!!トパーズ殿、ハンバーグが焦げ付いておりますぞおおおおおおおおおおおおお!!」 トパーズ「何っ!?あ、あちちちちちちちちち!!!!」 サファイア「ふっ、そろそろできるころだね。あたしの特製手料理!!ふふっ、チキンライスの上に旗を乗せて、冷凍ハンバーグとコーンとトマトをのせれば、皆大好きお子様ランチさ!!」 エメラルド「バッカじゃねーのっ!?お姉ちゃんがお子様ランチ食べるようなお年頃かっつーの!!」 サファイア「ふっ、お子様ランチには夢と希望と旗が詰まっているのだよ!」 エメラルド「意味分らん!!つーか、それ、ケチャップじゃねーしっ!!タバスコじゃん!!」 サファイア「げっ、タバスコソースでチキンライス作っちゃった!?あ、あははは、何ていうか、あれだよ、恋とはピリッとスパイシーかつ刺激的!!てね!!」 エメラルド「ぎゃあああああああああああああああっ!!タバスコとばすなっ、バカ!!目が、目があああああああああああああっ!!」 ルーベット「ぎゃあああああああああああああああああ!!な、何をしてくれますか、あんたはあああああああああああああっ!!」 トパーズ「このアホ!!」 バキバキドカンッ!! サファイア「あじゃぱあああああああああああああああああああ!!!?」 晶「・・・・まともな食事は期待できないね」 慧「琥珀さんに申し訳ないよ・・・・無理言って厨房使わせてもらったのにさ」 晶「ルーベットも普段は料理得意なんでしょう?」 慧「そうなんだけど、団体で、しかもこのメンツでやっているから完全にペース崩れちゃってるみたい・・・」 晶「大変だね・・・」 そこへ、呆れた様子で琥珀がやってきた。 手にはおむすびと沢庵がのっかっている小皿が用意されている。 琥珀「やっぱりこうなったか・・・」 晶「琥珀さん。これは?」 琥珀「あいつらがたまには慧に手料理作ってあげたいとか言っていたから厨房貸したけど、万が一の場合を考えて軽食程度のものは作っておいた」 慧「お、おいしそう・・・・」 慧が本当においしそうにおむすびを見る。 琥珀「少しは腹の足しになるだろ。中は鮭と明太子とおかかなんだけど」 慧「うん、ありがとう!!」 晶「あ…晶も…いい?」 琥珀「ああ、どうぞ」 そういって、もう一枚おむすびがのっかった皿を手渡す。 そして、おむすびを思いきりほおばった。 米の甘さが、そして醤油と砂糖と酒で煮込んだおかかが、鮭の塩辛さが、明太子のほどよい辛味が程よく調和されており、口中に美味しさが広がる。 慧「ああ、美味しい・・・」 晶「うん、最高・・・」 琥珀「大袈裟だな。まあ、腹へってりゃ何でもうめぇわな」 慧「ううん、本当に美味しいよ・・・ありがとう」 晶「琥珀さん、ここに馴染めたようでよかったね」 琥珀「え?」 晶「気になってはいたんだ。まだ、どこかここにいることで何か考えてるんじゃないかなって」 そう言われて、琥珀が目を丸くする。しかし、ふっと笑みを浮かべる。どこか自嘲めいた笑みだった。 琥珀「・・・どうだろうな」 慧「え?」 琥珀「あたしは本来ここにいられるべきじゃなかったはずだ。あたしだって、今までの奴らと同じ、お前たちがいる大切な時間を壊そうとしていた。なのに、こんな風に良くしてもらっている。おまえたちと一緒にいて、時間や思い出、過去というものをあたしは持つことができた。・・・でも、あたしにその資格があるのかな」 琥珀が表情を曇らせてつぶやく。 が、話を聞いていた神妙な顔つきになっている慧と晶を見て、一瞬驚き、すぐ笑みを浮かべる。 琥珀「なんてな。お前らには感謝してるよ。ははっ、それじゃ風呂入ってくるわ」 そういって、琥珀が立ち去っていく。 その立ち去っていく後姿がどこか寂しかった。 慧「・・・やっぱり吹っ切れてなかったんだ」 晶「自分が人を襲ったこと?でもあれは・・いじめから助けるために・・・」 慧「それでも、自分のことを許しきれないんだよ。だから、いつも皆から一歩引いていて、どこかみんなと一緒にいるはずなのに、離れているような感じがする。・・・でも、ずっとこのままなの?」 晶「それじゃ・・・寂しすぎるよ」 風呂。 一人、流れゆく夜の景色を眺めながら琥珀がふうっと溜息をついた。 その瞳はどこか寂しそうで、憂鬱な気配を帯びていた。 琥珀「・・・・あたしも・・・あいつらと一緒に戦えれば・・・・仲間になれるのかな。でも、あたしにそんな資格、ないよね。あたしは・・・ここの掃除でもやってればいいんだよ」 心の中で芽生えつつある願いを無理やり押し殺す。 「自分も役に立ちたい」 「慧を守りたい」 しかし、それでも消えなかった。 トパーズ「それは違うだろう」 琥珀「どわっ!?」 後ろを振り返ると、至近距離ゼロの位置にトパーズが相変わらずの無表情で湯船につかっていた。 琥珀「お、おまえ、料理はどうしたんだよっ!?」 トパーズ「厨房で3バカが喧嘩やらかして、撃沈。勝負はお預けってことで、一抜けてきた」 厨房内。 床でたんこぶ、青あざ、すり傷にまみれてルーベット、サファイア、エメラルドが気を失ってぶっ倒れていた。ルーベットの顔面にはタバスコが大量にかけられ、サファイアの顔面には熱々のレトルトカレーがぶちまけられ、エメラルドは顔から流し台に突っこんだまま痙攣していた。 慧「・・・・なんで厨房で料理しているはずなのに、ケンカするのかな、この3人」 晶「・・・本当にバカだね」 慧「・・・うん、それより、助けないと」 晶「まずはお風呂場にでもいって、タバスコやカレーを流してあげないと」 慧「あ・・・そういえば、晶、今日8時半から約束があるんじゃないの!?」 壁にかかっている時計を見ると、50分を指している。 慧「あとはまかせて。晶、待ち合わせなんでしょう?」 晶「え?でも、いいの?電気街だから、すぐなんだけど」 慧「ダメだよ。待ち合わせに遅刻なんて。大丈夫。私なら、いつものことなんだから」 そういって、3人を一気に首根っこを掴んで、ズルズルと引きずっていった。 晶はその光景を引き攣った笑みを浮かべながら見るしかなかった。 浴室。 トパーズが琥珀の背中を流しながら話をしている。 トパーズ「琥珀、君のことはかなり心配してる。慧も晶も、私もな」 琥珀「心配?」 トパーズ「心当たりあるんじゃないか?」 琥珀がうっと息を詰まらせる。図星だった。 トパーズ「お前が気に病むのは仕方ない。しかし、過去をいつまでも悔やんでも、変えられないのだぞ。でも、過去の自分を振り返るだけでなく、今の自分の生き方を見直し、やり直そうとすることが大切なのではないか?」 琥珀「・・・・・でもよ」 トパーズ「資格とか自分の立場がどうとかいう問題じゃない。今、自分に出来ることを全力で取り組むことに意味があるんだ。まずはぶつかってみろ。お前自身の抱えている悩みに」 トパーズの力強く温かい言葉が胸に沁み入る。 琥珀が静かにうなづいた。 Vライナーの夜が静かに更けていく。 しかし、このとき、また新たなる契約者によってイマジンが生み出されていた・・・。 PM20:00 電気街 ?「あんたの望みを言え。どんな望みも叶えて・・・」 「ド腐れメイドどもに天罰を与えてやりたいッ!!!」 ?「・・・あっさりと何とんでもないメタな発言、全力でシャウトしてんの、あんた」 イマジンが憑依した男は、不完全体である砂状のイマジンにほんの少しも臆することなく言った。眼の幅ほどもある涙を流しながら、契約者の男は熱弁する。 「メイドなんて嫌いだあああああぁあああああ!!所詮漫画みたいにメイド喫茶の店員と客のラブラブ恋愛なんてすべて幻想なんやああああああああ!!今日で・・・うう・・・今日で・・・・この電気街全てのメイド喫茶から出入り禁止食らったんだ!!ちょっといたずらでお尻なでたり、ちょっと電話番号しつこく聞きまわしたり、ちょっとご主人さま気取りで色々と偉そうに命令していただけなのに、何でじゃ!?どうして、お客様はお主人さまだろうが!神様だろうがっ!!なのに、どうしてっ、出入り禁止食らうわ、メイドからは虫けらでも見るような眼で見られて、警察に通報されるわ、殴られるわ、避けられなければならないのだっ!?許さん・・・許さんぞ!!天誅を与えてやらねばならん!!神になりかわって、電気街の神になりかわって、俺が罰を与えてやるわあああああああ!!でもっ、俺には犯罪や暴力をやる度胸はないっ!!そこでだっ、お前にこの願い、聞いた以上、俺の代わりに復讐してほしいっ!!」 ?「100%あんたのせいだろ。しかも逆恨みな上に中二病・・・・・救いなさすぎ。まあ、いいけどね。要するに、メイドの服装している女の子をひどい目にあわせればいいってことね。はいはい、契約完了っと」 そういって、トビウオの姿を模したフライングフィッシュイマジンたんが足早に電気街のビルの上へと軽々と飛び越えて消えて行った・・・。 一方。 ファミレスのテーブルの一角で食事を済ませたビショップは食後のコーヒーを飲みほし、クイーンがファッション雑誌を見て、ルークが喫煙エリアのスタンドで煙草を吸っていた。 すると、そこへやってきた人物が口を開くと、3人の顔色が豹変し、きっと引き締まった真剣なものにかわって、その人物の顔を見る。 その人物こそ、彼らを統べる王「キング」であった。 クイーン「イマジンが!?」 ビショップ「ごくわずかですが・・・気配を感じますね」 ルーク「・・・分かった。これから捜査に入る」 3人がそう言うと、キングは忌々しげに夜のネオンと喧騒につつまれた電気街を見下ろしながら呟いた。 キング「イマジンが・・・」 6月4日AM11:30 電気街 いつもの平穏で騒がしい喧騒に包まれている電気街。 白昼の通りで、メイド服を着こんだ可愛らしい女の子が笑顔を浮かべながら喫茶店のちらしを通行人に配っている。 その光景を、ビルの上からフライングフィッシュイマジンたんが静かに狙いを定めるように見据えている。そして、持っていた長距離射撃用のロングライフルの調整をすませると、ガチャッと音を立てて銃弾を込める。スコープをつけ、サイトの光の調整をすると、ビルの屋上に寝そべって、ライフルを構える。 フライングフィッシュイマジンたん「まっ、契約上しゃあねえから、勘弁してねって感じ・・・死んでも恨むなよってね」 (ここでイマジンたんファイル!!) 「フライングフィッシュイマジンたん。男性の「人魚姫」のトビウオのイメージから具現化されたイマジン少女。ロングレンジライフルを持つスナイパーで、遠距離からの狙撃を得意としており、その射程距離は2kmに達する。また空中だけでなく、水中を時速80ノットもの猛スピードで泳ぐことが可能で、素早い動きで敵を幻惑して、隙をついて、どんな遠くの敵も確実に仕留める」 そういって、ライフルのスコープのサイトにメイド服の少女に定めると、トリガーを引いた!! ズギュンッ!!! 弾丸が寸分の狂いもなく、メイドに着弾する。 すると、メイドの少女が倒れこんだ。打ち込んだ弾薬は少女の心臓を打ち貫いていた。 それはわずかな電流を流して、気絶させる程度の電気弾であったが、打ちどころによっては、たいへん危険な代物である。 倒れこみ、ぴくりとも動かない少女を見て、フライングフィッシュイマジンたんは「あらら」とつぶやくと、何事もなかったかのように次の狙いを定める。 フライングフィッシュイマジンたん「心臓に当たったか。まあ、普通なら気絶くらいなんだけど、あの様子じゃハズレか。まあいい、次、次と」 冷淡に無表情のままで、自分が殺したメイド少女に目もくれず、次の獲物に狙いを定める姿は冷酷無慈悲な性格を表している。 しかし、狙いを探している間、彼女に変化が訪れていることにイマジンは気づいていなかった。 メイド服の少女がわずかに動き、そして、ゆっくりと起き上がる。 その少女の顔に突如何か紋章のようなものが浮かび上がっていたことなど。そして、その眼の色が灰色に光り輝いていたことなど・・・。 電気街。 クイーンとビショップが電気街の路地を歩いていると、ビショップがクイーンに何かを手渡した。それはバックルと赤い色のソウルポッドであった。仮面ライダーワイバーンに変身するために必要なバックル一式。ビショップとは違って、赤いラインが入っている。 クイーン「ようやく、あたしの完成したようね」 ビショップ「ルークのも完成してます。これで、すべてのバックルの調整は完了です」 クイーン「イマジンが来ても、全員変身して戦えるってことね」 ビショップ「ええ」 その時だった。 「きゃああああああああああああああああああっ!!」 歩道のほうから悲鳴が聞こえてきた。 クイーンとビショップが駆け付けると、そこでは悲鳴と恐怖に彩られた惨劇が繰り広げられていた。 そこでは、通行人だったものが、灰となって風に散りゆき、その付近ではアゲハ蝶を模した甲冑と仮面をまとった怪人・スワローテイルオルフェノクたんが通行人を襲っていた。 ビショップ「あれは・・・確かオルフェノク!?」 クイーン「はん、あれが。うーん、ここで暴れられてもねえ・・・」 ビショップ「イマジンはルークに任せておきましょう。まずは、計画の妨げになる障害を取り除くことが先決です」 クイーン「そうね」 二人がワイバーンバックルを腰に装着し、ビショップがビショップの紋章が刻まれたソウルポッドを差し込むと、クイーンも赤いラインが入ったクイーンの紋章の入っているソウルポッドをバックルに装てんする。 すると、クイーンの顔に赤いステンドグラスのような紋章が浮かび上がり、バックルからは優雅なクラシックのメロディが静かに流れだす。 クイーン「・・・・変身」 ビショップ「変身!!」 そして、クイーンの周りに赤い電流が取り囲むようにして、みるみるアーマーと仮面に具現化して装着されていく。 始祖鳥(翼竜)を模したイメージの竜を思わせる仮面と、胸には羽を広げた始祖鳥をイメージした黄金のプレートが装着される。手には赤い光とともにクイーンボウガンと呼ばれるボウガンが現れた。 仮面ライダーワイバーン・クイーンフォーム。 そして、純銀のサーベルタイガーを模したビショップフォームがその姿を現した。 Bワイバーン「さあ、神に祈りなさい」 Qワイバーン「貴方に永久の安息と眠りを与えん・・・」 二人がそれぞれセリフを告げると、同時にスワローテイルオルフェノクたんに襲いかかっていった。 同時刻。 慧が駆け付けると、フライングフィッシュイマジンたんの銃撃によって、通行人が絶叫を上げてわれ先に逃げ出そうとパニックと化していた。 道路には、何人ものメイド服を着込んだ少女のみが倒れている。 気を失っているようだが、逃げ惑う一般人に蹴られ、踏みつけられ、もはや泥まみれで傷だらけの無残な姿と化している。 慧「ひどい・・・。助けないと!!」 そういって、倒れているメイド服の少女に声をかける。 しかし、倒れている人数が多い。 見ると、離れた距離に倒れているメイド服の少女に気にしている余裕もなく、無慈悲に踏みつけようとしている集団が猛然と向ってきていた。 慧「危ない!!」 その時だった。 琥珀「あたしに任せろ!!」 そういって、慧から琥珀が飛び出し、通行人が走り去るぎりぎりのところで、少女を抱きかかえるとフックで壁につかまりそのままロープを引き上げて宙に浮かびあがり、難を逃れた。 慧「琥珀さん!!」 琥珀「慧、救助は任せろ!!お前はイマジンを探すんだ!!」 慧「は、はい!!」 慧に金色の光が宿り、金色のメッシュを入れ、眼鏡をかけた知性的な顔立ちになる。 そして、気配を感じたビルの一角を見上げると、そこにはライフルを構えているフライングフィッシュイマジンたんの姿があった。 T慧「あいつかっ!!」 そういって、ビルの中へと走り出す。 一方。 琥珀は助けたメイド少女たちを建物の中に避難させていた。 傷つき倒れている少女たちの痛々しい姿を見て、琥珀は胸が締め付けられるような思いにかられる。 琥珀「あたしも・・・・あたしも・・・こんなことをしようとしていたんだ・・・やっぱりあたしは慧のそばにいる資格なんて・・・ないよ」 その時だった。 ルーク「おいおい、イマジンが人間を助けるとは驚きの光景だね?」 振り返ると、そこには皮肉めいた笑みを浮かべた長身の女性・ルークが立っていた。 琥珀「なぜ、イマジンのことを!?」 ルーク「まあ、わけありでね。つーか、イマジンなんてしょせんクズばっかだろ?人間守ろうなんて・・・似合わないことしてんじゃねぇよ。見ててムカつくぜ!!」 そういうなり、敵意をあらわにすると、紫色のステンドグラスのような紋章が浮かび上がりアーケロンファンガイアの姿に変貌させる。 琥珀は見たこともない未知の存在に驚きを隠しきれない。 琥珀「なんだよ、お前!!今、お前に構ってる場合じゃねぇんだよっ!!皆、撃たれて大変なんだよ!!早く病院連れて行かないと!!」 アーケロンファンガイアたん「はん?知ったこっちゃねぇよ!!ルークの役目はお前らクズ共のせん滅だっ!!人の心配する前に、テメェへの念仏でも唱えてな!!」 そういうなり、素早い動きで近寄るや否や、琥珀に思い切り拳を叩きこんだ!! 琥珀は背中から生やした爪で防ぐが、あまりにも強すぎる力に耐えきれず、一気に吹き飛ばされ、窓ガラスをぶち破り、地面に転がる。 琥珀「がはっ!!」 アーケロンファンガイアたん「イマジンは・・・・すべて潰すッ!!」 琥珀「・・・何だよ、こいつ、ワケわからねぇ!!」 そういって、琥珀がカギ爪を構えるとアーケロンファンガイアたんを迎え撃つかのように構える。 全身に激しい痛みが走り、足がもう震えている。 さっきの一撃で腕の一本はもう折れている。 それでも歯をくいしばって、必死に痛みを押し殺して琥珀が飛びかかった。 爪の一撃を鎧にたたきこむ。しかし、爪の一撃はいくら与えても全く動じていない。 アーケロンファンガイアたん「効くかよ・・・・クズがっ!!」 アーケロンファンガイアたんが拳を振り上げて琥珀を殴りつける。腹部を殴られ、気を失いそうな圧迫感が脳を支配する。 さらに胸倉を掴まれた琥珀に、容赦なくアーケロンファンガイアたんが殴りつけていく。 バキッ!!!グシャッ!!! 顔を、腹部を、容赦なく殴られ、肉が裂け、骨が折れていく。 激痛とすべての意識を手放してしまいそうな感覚に襲われる。 しかし、拳のラッシュは収まるどころか、エスカレートしていくばかりだ。 琥珀「がはっ・・・・・・・・・」 アーケロンファンガイアたん「お前らに生きる資格なんてねぇんだよっ!!ルークたちの世界を滅ぼしたお前たちに・・・・居場所なんてねぇっ!!!!」 琥珀「!!」 琥珀の顔面に渾身のアッパーがさく裂し、琥珀が吹き飛び、ビルの窓ガラスをぶち破って、オフィス内に倒れこむ。 アーケロンファンガイアたん「ぶっ飛ばしてやる!!」 アーケロンファンガイアたんが大地の力を吸いあげ、みるみる巨大な紫色の光球を生み出すと、容赦なく琥珀に向けて無数の弾丸を発射した。 琥珀「ああ・・・・!!!!」 そして、弾丸は容赦なく降り注ぎ、ビルの一部を跡形もなく破壊していく。 やがて、ビルの室内からすさまじい音とともに、爆発が起こった。 アーケロンファンガイアたんはルークの姿に戻ると、ふんと笑みを浮かべる。 ルーク「ルークを怒らせるからだ。バーカ」 そういって、立ち去っていく。 一方。 ビルの屋上に慧がたどり着くと、そこにはフライングフィッシュイマジンたんがいた。 T慧「今回はずいぶんと派手にやってくれたな。許さん!!」 フライングフィッシュイマジンたん「ああ、あんたがバルキリーたん?あたしのタクティクスの邪魔はさせないよ」 慧が金色のボタンを押して、パスを通す。 T慧「変身」 「Ax form」 慧の姿がフクロウを模したアックスフォームの姿へと変わっていく。 Vガッシャー・アックスモードを構えると、静かに怒りを秘めた言葉でセリフを言う。 Aバルキリー「チェックメイト。待ったはなしだ」 フライングフィッシュイマジンたんがライフルを構えて銃弾を発射する。しかし、頑丈なアーマーによって遮られ、銃弾ははじかれて無効化している。 フライングフィッシュイマジンたん「な、なにっ!?」 Aバルキリー「ふん、タクティクスとか何とかいうくらいなら、相手の特徴とか調べておくべきだったな」 そういって、斧を構えて猛然と走りだすと、フライングフィッシュイマジンたんに切りかかり、斧の刃がフライングフィッシュイマジンたんを容赦なく切り倒す!! Aバルキリー「はあああああああああああああ!!」 斧を何度も何度も叩きつけ、フライングフィッシュイマジンたんの体から火花が飛び散る。 フライングフィッシュイマジンたん「くっ、一時撤退・・・いや、もういいさ。過去に逃げないと!!」 そういって、イマジン少女は近くで放心状態で座り込んでいる男性のもとへ飛び込むと、緑色の扉を開いて過去へと逃げ込んだ。 Aバルキリー「くっ」 チケットをかざすと、「2006/03/18」と表示される。 この日のことを問い詰めると、「初めてメイド喫茶の店員にフラれた日」とのことである。 パスに通し、過去に向かおうとした時、慧は琥珀の存在に気づいた。 慧(・・・・・琥珀さんは・・・?) Aバルキリー「あいつなら大丈夫だ!!あいつは、自分がやるべきことをやれる奴だ。今はイマジンを追うほうが先決だろう!!」 慧は後ろ髪を引かれる気持で、4年前の世界へと飛び去って行った。 そして。 スワローテイルオルフェノクたんが発する燐ぷんが空気中で爆発し襲い掛かってくる。 その攻撃を避けながら、クイーンフォームとビショップフォームが闘っていた。 空中を飛翔しながら攻撃を仕掛けてくる相手に、ビショップフォームが悔しそうに歯ぎしりする。 Bワイバーン「空中にいられると、面倒ですね」 Qワイバーン「・・・撃ち落とすと同時に、一気に決めるわよ」 Bワイバーン「・・・・かしこまりました」 クイーンフォームがクイーンボウガンを構えると、赤い電流が弾丸となって次々と発射される。その弾丸の命中精度はかなり正確なもので、スワローテイルオルフェノクたんの羽根を正確に打ち抜き、やがてもげ落ちる。 スワローテイルオルフェノクたんが空を飛ぶすべを失い落下していく。 Qワイバーン「今よ」 Bワイバーン「はい!!」 ビショップフォームが地面をけり上げて飛び上がり、剣に純銀色の光を宿すと、クイーンフォームもクイーンボウガンに赤い電流が宿り、巨大な赤い弾丸が発生する。 そして、ビショップフォームが切り裂いて、離れると同時に罪人を裁く弾丸を発射した!! Qワイバーン「これがあなたの運命よ。お休みなさい・・・」 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」 スワローテイルオルフェノクたんが雷のエネルギーを受けて、絶叫を上げて爆発し、青い焔を発して灰へと化していった。 そのころ。 琥珀は傷ついた体を必死で押して、人気のなくなった電気街の裏道を歩いていた。 雨が降り出し、琥珀の傷ついた全身の血を洗い流していく。 しかし、琥珀の瞳には深い闇が宿っていた。 息も荒く、もう視界さえうつろにぼやけている。 琥珀「・・・・・あたしは・・・あそこにいる資格なんてない。・・・・・慧・・・・ごめんね。あたし・・・・・もう・・・・・一緒にいられない。いる資格さえないんだ」 目を閉じると、Vライナーで家事に明け暮れていたときのことを思い出す。 ルーベットにお風呂の掃除が奇麗だと褒めてもらえたこと。 トパーズに夜食を作っていって、ほほ笑んでくれたこと。 ソファで寝ているエメラルドを抱いて部屋まで運んで行ったこと。 そして風呂に入っているときに「のぼせて肌を赤らめた君はなんて華麗なんだ」とサファイアに口説かれて呆れたこと。 そして、いつも気にかけ、ほほ笑んでくれていた慧のこと。 自分を温かく迎え入れてくれた愛、晶のこと。 涙が出てきて、とめどなく流れ落ちる。 思い出すたびに、心が痛いくらいしめつけられる。 一緒にいたい。 もっと一緒にいたいよ。 一人なんて嫌だよ。 もっと皆と笑いたいよ。 思い出作りたいよ。 そう叫んでいる心の声が涙となって止まらない。 琥珀「・・・・慧・・・・・苦しい」 そう言い残し、琥珀がトンネルの中で倒れこんだ。 そして意識が闇に飲まれていった・・・。 続く 次回第12話「The Assassin Form」 |
鴎
2009年05月21日(木) 22時58分35秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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すみません、誤字報告をしていながら私が感想文に誤字を入れていました。『隠してみて』ではなく『確認してみて』と書くつもりでした。些細なミスを犯してしまいすみません。 | 10点 | 烈 | ■2009-05-23 23:11:22 | i114-189-58-148.s10.a044.ap.plala.or.jp |
どうも、『烈』です。 今回の話において、『スパイダーイマジンたん』こと『琥珀』さんが現状で思っている罪の意識と“不安”という心の“闇”のことに対してのことが今回の話の主軸の一つであると感じました。(それと『バルキリーたんイマジンメンバー』のなかで一番料理を始めとした家事全般が得意なのが琥珀さんであると話を読みながらしみじみ感じました。) それと、まさか『仮面ライダーワイバーン』に『ビショップ』と『クイーン』の二人が同時に“変身”をするとは思いもよりませんでした。ちょっと思ったことなのですが、『ワイバーン』の装甲や“電仮面”のモチーフって“変身”をする『チェックメイト・フォー』のメンバーの“ファンガイア”ととしての真の姿が基なのではないですか?(理由としてはビショップが“サーベルタイガー”、クイーンが“始祖鳥(翼竜)”がイメージであると記されているのでもしかしてと思ったのです。ところで気になるのは『キング』の“ファンガイア”としての姿と『ワイバーン』に“変身”した際の装甲と“電仮面”のイメージが気になってきます。この場合、“ティラノサウルス”とかですか?) ……それにしても、今回の話はメイドに対してあほらしい妄想を持つうえに自業自得ともいえる人物が“イマジン”の契約者になるは、その“イマジン”ガ殺してしまったメイドの女の子がどういう理由でだか“オルフェノク”へと変貌するは、『チェックメイト・フォー』の『ルーク』が琥珀さんに対してある意味八つ当たりとも取れる攻撃をしてくるはとある意味てんてこ舞いな状況となっていたと思います。 今回の話において、本当に琥珀さんがひどい目にあうというのがなんとなく納得ができない気持ちになりました。それについで、ルークに対して文句を200回言っても足りないくらいの気持ちになりました。理由としてはいくら“イマジン”が己や仲間の大切な“故郷”である“世界”を破壊したものとはいえど、そのこととは関係がなく、自分が昔しようと思っていたことに対する罪悪感を感じながら“イマジン”の被害を受けたメイド服の女の子達を助けようとしている琥珀さんを自分が見ていてムカつくとかいう理由で攻撃をしているほうが“クズ”以下の“大馬鹿者”であると私は思ったからです!私自身もひどいことをここに書いているのかもしれませんが、それでも納得できないものはできません!! 私が第10話の際に投稿をした感想文兼質問文の返信をありがとうございます。おかげさまで気になっていたことがわかりました。それに加え、次回の話では『仮面ライダーバルキリーたん』の第5のフォーム『アサシンフォーム』が現れるそうですけど、その際に慧に憑依する“イマジン”はおそらく“彼女”なのでしょうね。まあ、そのことはおいとくとしても、今のところルークから受けた肉体的ダメージと精神的ダメージのため瀕死の重傷を負い、そのうえに自分が仲間達の下には居てはいけないと思ってしまっている琥珀さん。次回で彼女が本当の意味で見出す答えなどが気になりますが、それは次回以降の楽しみにしておきます。今後も頑張ってください。以上です。 誤字報告:オープニングにおいて、『愛』さんの今回予告内の『脅威にンなる存在のせん滅』とありますが、これは『脅威になる存在の殲滅』と書くべきところではないでしょうか?他にも誤字があるかどうかを隠してみてください。私もできる限り報告をします。 |
30点 | 烈 | ■2009-05-23 23:07:09 | i114-189-58-148.s10.a044.ap.plala.or.jp |
合計 | 880点 |