仮面ライダーバルキリーたん 第12話「The Assassin Form」 |
「The Assassin Form」 6月4日 PM18:00 雨が屋根と石畳を打ちつける音が響いてくる。 外を行き交っているであろう人々の足音と喧騒が行き交っている。 琥珀「・・・・・・・ん」 琥珀がその音で目覚めたとき、見知らぬ光景が広がっている。 モダンな雰囲気が漂う一昔前の洋館を思わせるような内装の部屋。 机とクローゼット、ベットが置かれ、本棚には洋裁関係や紅茶の入れ方、チェスの教本、ミステリーの原本などが置かれている。 お洒落な内装の部屋は整理が行き届いている。 琥珀「ここは・・・?」 「あ、目覚めた?」 ドアが開き、緑色のショートカットをなびかせて、見慣れた可愛らしい顔立ちをした人物が鈴を転がすような可愛らしい声で話しかける。 琥珀「晶・・・?」 晶「まだ、起きちゃダメだよ。身体、完全に治ってないんだから」 大友晶。 慧の親友であり、自分にとっても友人である存在。 晶「もう、慧のこと追いかけてみたら、外で倒れてるんだもん。心配したよ?」 琥珀「・・・お前が助けてくれたの?」 晶「大したことはしてないよ。怪我もほとんど治りかけてるみたいだし、イマジンってすごいね」 琥珀がそういって、自分の体を見ると、驚いたように目を見開く。 折れていた腕が完全に元の状態でくっついており、傷がだいぶふさがりつつある。 それでも巻かれている包帯や絆創膏がある部分からはわずかに痛みを感じるが、先ほどまでの痛みと比べるとだいぶ回復している。 しかし、自身は驚いて身体をまじまじと見ている。 琥珀(あたし、こんなに自己回復能力、あったか?まあ、実体化したとはいえ、自身の体のことなんて考えたことないけどさ・・・あまりにも早すぎるんじゃないか?) 晶「・・・・大丈夫?まだ痛いでしょう?」 晶が心配そうに琥珀の顔を覗き込む。 碧色のくりくりとした丸いつぶらな瞳が潤んでおり、意識がないとはいえ、扇情的な雰囲気を醸し出している。異性がこんな可愛らしく見つめられて心配されたら、一発でその魅力に落ちるであろう。 琥珀「・・・・大丈夫。あたしは・・・・いててっ」 晶「もう、無理しないの!!少し休んでいろって」 晶が琥珀を寝かしつけて、シーツを上からかける。 琥珀「・・・・・・ありがとう」 晶「ん?」 琥珀「・・・・・あたしみたいな奴、助けてくれて。お前本当にいいやつだよな。あたしなんか、こんな風に優しくしてもらえる資格なんてないのにな」 琥珀が自嘲めいた笑みを浮かべる。 晶「・・・・何かあったの?」 琥珀「・・・・あたしさ、お前も知っているかと思うけど、イマジンだろう?」 晶「うん」 琥珀「・・・・イマジンは、自身が時間を手に入れるために、他人の時間を、想い出を平気で奪い取って、傷つけて、苦しめている。ひどいことをしている。あたしも昔はそういうことに対して、何の意識もなかった。ただ、自分も時間というものを欲しかった。そのために、他人を傷つけようとしていた。そんなあたしが、どうしてこんな風に優しくしてもらえる権利がある?あたしには、求める資格も、与えられる資格もないのに」 目からいつの間にか涙がこぼれおちている。 止まらない。 琥珀は嗚咽交じりに泣きだした。 琥珀「あたしっ、どうしたらいいのか分らないよっ。あたし、誰かを傷つけようとしたのに、傷つけようとしている連中を止めようとか、自分が助かって優越感に浸っているだけじゃないのかとか、そんなことばかり頭で回ってる。あたし、どうしたらいいんだよっ。守りたい、でも、あたし、どうすればいいのか分らない。こんなあたし、皆と一緒にいる資格なんて・・・ないんだ・・・・ひぐっ・・・・・ぐすっ・・・・」 涙を流しながら琥珀が心の不安を一気にまくしたてる。 晶は琥珀の心からの叫びをただ真剣な表情で聞いている。 ふと、晶が琥珀に近づいて、顔を覗き込む。 晶「・・・・うん、考えてみればそうだね。資格なんてないよね」 琥珀「・・・・だろう?」 晶「違うよ、慧と一緒にいること、自分の過去の過ちを正すために戦うことに、資格なんて必要ないってことだよ」 琥珀は晶の答えの意味が一瞬分からない様子で、ぽかんと口を開く。 晶は琥珀をじっと見据えて、いつになく真剣な様子で話しかける。 晶「資格ってなんだよ。資格がなけりゃ慧と一緒にいたらいけないなら、資格ってなんだって話じゃない。自分がいたいから、慧といたんだろ?慧とあの列車に乗るって決めたんだろ?そして、慧を助けたい、時間を守りたい、それが琥珀さんの心からの願いなんだろ?だったら、それでいいんじゃない?それのどこが悪いって話だよ」 琥珀「でも・・・・」 晶「確かに過去にやろうとした過ちを悔いることは必要だよ。でもね、それに縛られて未来に進めないなんてただ逃げているだけだろ。冷たいかもしれないけど、言うよ。人は過去をどんなに悔いたって取り換えなんて利かねぇんだ。でもね、今、自分の気持ちを切り替えれば、今の自分からは変わることはできる」 晶の口調が一瞬粗暴なものに変わる。しかしそこにはふざけているのではなく、本来の晶の感情が真剣に高ぶっているが故に口調に現れているのだ。 そして晶は言った。 晶「やり直しのきかない人生なんてないよ。琥珀さん、思いが残ってるんだろ?叶えたい願いが、守りたい人がいるんだろう?だったら、過去を悔いて引きこもっているより、何もかも開き直っちまって自分の人生切り開いてみろよ!!そうやって、昨日よりももっとマシな自分になるために開き直ったほうが前に進めないよりいいと思う!!」 晶が琥珀に力強く告げる。 その言葉を琥珀は真摯な表情で聞き入っている。 晶「・・・・晶だって、そうだったから、分かるんだ。でもね。慧は受け入れてくれた。だから、晶は今の自分、堂々と胸を張っていられる。そう教えてくれた人が慧だったから。晶は晶だって。琥珀さんのことだって、慧が一度でも否定したことなんてなかったはずだろ?」 琥珀が思いだす。 思い出すのは自分を責めたり、蔑むような表情ではない。 自分をいつも温かく迎えてくれる笑顔。 自分を呼ぶのは優しく温かい声。 慧(琥珀さん・・・) 琥珀ははっと気づいた。 そして、自分が悩んでいたことを恥じるように涙を浮かべ、泣きだす。 琥珀(そうだよ、いつだって慧は・・・あたしのこと、一度だってそんな風に言わなかった。いつも優しかった。そうだ、あたしは、そんな慧に憧れて、慧の優しさが温かくて、一緒にいたくて、この列車に乗ったんだ。そうだよ、あたし、まだ、守りたいものがある) そう思った時、琥珀の瞳に力強い光が宿った。 それを見て、晶がふふっと笑みを浮かべる。 そして、一息つく。 晶「ふう・・・久し振りに男の言葉で話すと、結構疲れるね」 琥珀「・・・・でも、どっちも結構様になっているように見えるけどね。まっ、それが晶らしいっちゃ晶らしいんだけど・・・・いいんじゃない?」 琥珀が口元に笑みを浮かべる。 琥珀「しかしさ、あたし、お前が男なんて未だに信じられないんだけどな」 そう、読者の皆様には告げていませんでしたが。 大友晶は、「男」です。 晶がむうっとほっぺを少し膨らませる。 晶「オトメンって言ってよ。オトメン」 琥珀「・・・・まあ、見た目や声だけなら確実に女の子にしか見えないしな」 晶「まあ、昔はこれがコンプレックスだったけどね。でも、慧が、教えてくれた。可愛いものが大好きでも、女の子のような服装が好きでも、変態って一言で片づけるんじゃなくって、トランスジェンダーって変に気遣うわけでもなく、晶として接してくれる人がいるって知ったとき、すごくうれしかったんだよ。だから、晶は晶のままでいられる。琥珀さんだって、琥珀さんのままでいいんだよ。そんな琥珀さんを慧は受け入れたんだから」 琥珀も笑い返す。そして、腕を握って開いて、調子を確かめる。 琥珀「よっしゃ・・・気合い入った。テンション上がってきた。慧のところに行かないと!!」 晶「え、でも、まだ怪我が・・・」 琥珀「大丈夫だ。もう、いつでもOK。早くしないと、慧がルークとか言う奴にやられちまう!!あいつ、かなり強かったしな。慧もケンカかなり強いけど、油断できないし」 晶の顔色が驚いたように目を見開く。 晶「・・・・ルーク?ルークっていう奴が慧を!?」 琥珀「あたしを叩きのめしたカメみたいな奴がいるんだよ。イマジンとは違うけど、何て言うか、とにかくヤバい!!早く追わないと!!」 琥珀がそう立ち上がって、窓から飛び出し、地面に着地した時、突然、ぐらりと視界が揺らめく。そして、意識が遠のいていき、琥珀が倒れ込んだ。 琥珀(あっれー?何・・・これ・・・・) 4年前。 電気街。 フライングフィッシュイマジンたん「くっ・・・な、なんとかタクティクスを組み直さないと・・・。」 ライフルのリロードレバーを引く手が震える。 イマジンにあきらかな焦りが見え始めていた。 一方で、仮面ライダーバルキリー・アックスフォームは頑丈な鎧で銃弾をものともせず弾きながら、ビル街の物陰に隠れながら慎重にフライングフィッシュイマジンたんがいるであろう鉄塔の上を目指している。 パシュッパシュッパシュッ 空気が抜けるような小さな音と共に、ライフルから連続で三発の弾丸が飛び出す。 微妙に軌道を変えながら、弾丸はアックスフォームを目指して飛んで行く。 Aバルキリー「ふん、豆鉄砲に過ぎん」 Vガッシャー・アックスモードで銃弾をはじくと、首をゴキリと鳴らす。 そして、標準を定めるや否や、アックスフォームが動きを止める。 Aバルキリー「ここらへんで一気に攻めるか。ルーベット!マシンハミングバードで一気に吹っ飛ばして攻めるぞ!!」 ルーベット「承知!!」 赤いボタンを押すと、ルーベットが宿り、タカを模した仮面ライダーバルキリー・ランスフォームへと化す。そして、空間が開き、超高性能バイク「マシンハミングバード」が飛び出し、飛び乗ると、一気にエンジンをふかして走り出す!! サファイア「ルーベットに花を持たせるのかい?」 トパーズ「この中で一番バイクを乗りこなせるのはあいつだしな」 エメラルド「なるへそ」 Lバルキリー「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 バイクの前輪を一気に持ち上げると、鉄塔の上を器用にバイクの車輪が乗り、そのまま一気に登りあがっていく。 まるで曲芸のようにすいすいと鉄塔をバイクで走って上がっていくことも、難なくこなしている。 そして、一気に登りあがったとき、目の前にフライングフィッシュイマジンたんが面くらったような顔でこっちを見ていた。 そのまま、振りかぶり、ランスの刃を薙ぎ払い、フライングフィッシュイマジンたんを吹き飛ばした!! フライングフィッシュイマジンたん「ぐああああああああああ!!」 フライングフィッシュイマジンたんが体制を何とか整えて地面に着地する。 そしてランスフォームがランスを構えて、右手を突き出す。 Lバルキリー「その罪、閻魔に代わって斬る!!久しぶりに暴れますぞ!!」 銃を撃たれる前に、ランスフォームがバイクに乗りながらランスを振り回して一気に突っ込む。そしてすれ違いざまにランスを突き出し、フライングフィッシュイマジンたんのボディに直撃する。 Lバルキリー「まだまだ!!」 バイクを急回転させて再びすれ違いざまに背中をランスで切り裂いた。火花が飛び散り、フライングフィッシュイマジンたんが吹き飛んだ。 サファイア「さーてと、ルーベット。次はあたしに変わってよ。銃の使い方ってもん、あのガキに教えてやらないとさ」 Lバルキリー「・・・・よこしまなことは起すなよ」 そういって、青い光が宿り、ガンフォームに変身する。 そして、Vガッシャー・ガンモードを突き出し、倒れこんでいるフライングフィッシュイマジンたんに話しかける。 Gバルキリー「さーてと、覚悟はいいかな?君のハートに・・ロックオン」 銃撃音と共に、銃口から無数の弾丸が飛び出し、フライングフィッシュイマジンたんを狙い撃ちにする。 フライングフィッシュイマジンたん「きゃあああああああああああっ!!」 Gバルキリー「やることがえげつなさすぎるよ。悪い子にはおしおきだ」 再び銃弾の雨がフライングフィッシュイマジンたんを襲う。 子ども相手であろうと敵なら容赦しない主義らしい。 冷徹な狙撃手は傷だらけでライフルに新しい弾装を装填しようとしている彼女を狙い撃ちする。 エメラルド「次はあたしだーっ!!あたしにも暴れさせろー!!」 Gバルキリー「やれやれ、ま、いいけどね」 ため息をつきながらも、緑色のボタンを押して、ソードフォームの姿へと変身する。 Sバルキリー「あたしのビートで痺れさせてあげる!!さーてっと、一気に決めるぜ!!」 そして、持前の瞬発力で一気に飛び出すと、ライフル銃を蹴り飛ばして、空中に舞いあげると無防備と化したボディにソードを数回切りこんでいく。 Sバルキリー「行くぜ行くぜ行くぜーーーーーーーーーーーっ!!!」 華麗なステップを踏みながら、相手の攻撃をかわし、ソードの刃を何回も何回もぶつけていく。ボディが火花を噴き出し、切られた部分から砂が噴き出していく。 そして、とどめといわんばかりに思い切り蹴りを腹部に叩き込み、フライングフィッシュイマジンたんが地面に転がっていく。 フライングフィッシュイマジンたん「ぐはっ・・・・・」 Sバルキリー「タクティクスだか何だか知らないけど、あんたのやったこと、許すわけにはいかない!!トパーズ!!派手に決めちゃえ!!チェックメイトだ!!」 トパーズ「ああ」 最後に金色の光が宿り、アックスフォームへと変身する。 首をゴキリと鳴らし、アックスを構えてつぶやく。 Aバルキリー「チェックメイト。待ったはなしだ。終わりだ」 そういって、パスをターミナルバックルに通した。 そのころ。 琥珀が目を覚ますと、そこは晶の部屋でもなく先ほどまでいた電気街であった。 しかし、そこは現代の電気街ではない。 琥珀が轟音で目を覚ますと、そこではアックスフォームがフライングフィッシュイマジンたんと壮絶なバトルを繰り広げていた。 ふと、時計を見ると、「2006年3月18日」と表示されている。 琥珀「はあっ!?あたし、どうして!?なんで、チケットもねえのに、4年前に!?ん、あれ、なんだ、これ!?」 ポケットに手を突っ込むと、そこには、なぜかVライナーのチケットがあった。 「2006年3月18日」。 しかしそのデザインは慧の赤色のラインではなく、青いラインが入っているカードであった。 琥珀「ど、どうなってるの・・・?」 何が何だか訳のわからないまま、琥珀は見たことないチケットを見つめる。 しかし、突然何かが倒れる音がし、琥珀が見る。 そこでは、アックスフォームが膝をついていた。 そして、フライングフィッシュイマジンたんがライフルを担いで、よたよたと逃げ出していく。 琥珀「お、おい!!」 琥珀があわてて駆け寄ると、アックスフォームが顔を苦しそうに上げる。 Aバルキリー「・・・琥珀?お前、どうやって過去に?」 琥珀「そんなことあたしだって分らないよ!!それよか、どうしたっ!?」 Aバルキリー「・・・弾丸、実はかなりダメージが来ていた。あたしではなく、慧がな。このまま耐久戦では慧がもたない。一気にやらないと・・・!!」 アックスフォームが苦しそうにうめきながら言う。 その姿を見て、琥珀がきっと真剣な表情となって、アックスフォームを見る。 その顔はこれまでにない、意志を宿した強い視線。 燃え上がる炎が瞳の中でゆらめいて燃え上っていた。 琥珀「・・・・それ・・・・あたしに・・・やらせてくれるか」 そういったとき、琥珀の手から突如砂が噴き出し、やがてそれがオレンジ色の宝石の周りに悪魔が牙をむきだしにしたかのようなデザインのバックルが現れる。 Aバルキリー「これは・・・?」 琥珀「・・・・おそらく、あたしのイメージから生まれた。あたし、ずっと考えていたけど、悩みはまだ消えてないけど、不安はまだ残っているけど、でも、見つけた。あたしが今、果たしたいこと・・・!」 琥珀がアックスフォームにオレンジ色の灼熱のまなざしを向ける。 その顔には一つの決意が浮かび上がっていた。 琥珀「あたしも戦う。たとえ、過去が変えられないのだとしてもっ、現在を、未来を自分が望むものに変えていくためには戦わなくちゃいけないって気づいたから!!あたしは、お前達と一緒に過ごす時間を、現在(いま)を、守りたい・・・!!そのために戦いたい!!」 強いまっすぐな言葉。 アックスフォームが静かに笑みを浮かべる。どこか重い荷が下りたような顔つきだった。 それだけ琥珀を気にしていたということである。 Aバルキリー「・・・・そうか。慧、もう少し、頑張れるか?」 慧「うん、大丈夫。琥珀さん、一緒に戦ってくれる?」 その言葉に琥珀は自分が信じたものが間違っていないことを確信し、胸の奥が熱くなるのを感じた。そして、こくりと力強くうなづいた。 琥珀「・・・・・ありがとう」 慧「・・・行くよ!」 慧がバックルを上から被せると、ボタンを押した。 ロックのような激しく荒っぽいミュージックが流れ、パスを通した。 「Assassin Form」 そして、バルキリーの周囲で銅色の鎧が装着し、みるみる蜘蛛を模したかのような、鋭い八本の腕が肩アーマーとして装備され、両腕にはかぎ爪が宿り、頭部には蜘蛛を模した仮面が装着される。 仮面ライダーバルキリー・アサシンフォームの登場である。 アサシンフォームはVガッシャーを取り出すと、手斧型の「ハンドアックスモード」と短剣型の「クナイモード」に組み立てて、両手に装備する。 そして、一気に飛び出した。 フライングフィッシュイマジンたん「くっそうぅ・・・・いったん仕切り直しだ」 フライングフィッシュイマジンたんがライフルを構えながら路地裏を走っている。 すると、目の前にアサシンフォームが立ちはだかった。 Asバルキリー「悪いけど、お前、ここで終わりだよ」 フライングフィッシュイマジンたん「お、お前、バルキリーか!?」 Asバルキリー「蜘蛛の巣という名の・・・処刑場にようこそ」 そういって、一気に地面を蹴り飛ばすとクナイモードで次々とフライングフィッシュイマジンたんのボディに切りかかっていく。細かいしなやかな動きで敵の攻撃をかわしながら、まるで獲物を捕食するかのように切り刻んでいく。 フライングフィッシュイマジンたん「く、くそぅ!!」 Asバルキリー「ふん!!」 そして、右手に持ったハンドアックスを振りかぶって、一気に切り裂いた。超重量級のアックスも、小回りが利くハンドアックスでは破壊力は半減するが、その分、すき一つない動きで敵の体を確実に切り裂いていく。 クナイモードとハンドアックスモードを交互に器用に振りながら、フライングフィッシュイマジンたんを切り刻み、吹き飛ばす。 地面に転がって行ったフライングフィッシュイマジンたんをみると、パスを通した。 「Full charge」 アサシンフォームが腰を低く身構えると、素早くクナイモードを投げつけた。 刃が深々とフライングフィッシュイマジンたんに突き刺さり、やがてそこからエネルギーが噴き出しみるみる蜘蛛の巣のようなイメージが浮かび上がり、フライングフィッシュイマジンたんを動けなくする。 それを見定めると、一気に飛びあがり、右足を突き出すとそのまま目にも止まらない速さで敵の体を蹴りつけていく!! Asバルキリー「デッドエンドレクイエム・・・!!」 フライングフィッシュイマジンたん「ぎゃああああああああああっ!!」 フライングフィッシュイマジンたんが蜘蛛の巣にとらわれたまま、大爆発を起こし散った。 その様子を見ていた黒いローブに身を包み、フードをかぶった一人の人物がいた。 その人物の左手には「キング」を冠する紋章が刻まれている。 キング「・・・世話が焼けるんだから。まあ、慧の不安要素をなくすためだから仕方ない」 そういって、キングは人知れずその場を立ち去っていく。 キング「慧、お前は俺が守る。俺はたとえ、お前が気づかなくとも、ちゃんと見ているから」 6月4日PM22:00 Vライナー・ラウンジ 晶と合流し、一通り話をすると、慧が驚いたように目を見開く。 慧「え!?晶、自分のことバラしちゃったの!?」 晶「だっていつかはバレると思ったし、それに、琥珀さんをどうにかして立ち直らせたかったんだよ。でも、晶が驚きなのは、晶が男だって知ってもさほど驚かないことだよね、皆が」 晶が告白した衝撃的な告白。 晶「えへへ・・・実は晶、男でーす」 そういうと、意外にも反応は晶の予想とは少しかけ離れていた。 最初は全員がぶっ飛ぶほど驚いていたが、落ち着いてくるとだんだんとその事実を受け入れつつあるのだ。 ルーベット「・・・ま、まさか、晶殿が殿方だったとは・・。うう、私、自分のおしとやかさとか女らしさのなさに・・・涙が・・・」 トパーズ「それは私も同感だ。こんなに女心を理解している上に、可愛いのに、男なんて信じがたいが、事実なら仕方あるまい」 エメラルド「とほほ、なんだかあたしより可愛いじゃん。男に負けたぁ・・・・」 晶「・・・軽蔑とかすると思ってたんだけどね。男の子のくせに女子の制服着てるし、こんななりだしさ」 ルーベット「驚きはしたが、そこまでは思いませんぞ。だって、晶殿は晶殿でございましょう」 トパーズ「晶はこの列車において大切な仲間だ。家族のようなものだしな。男性とか女性とか、そういう些細なことではのけ者になどせんさ」 エメラルド「そう、そうだよ。あたしは晶のこと好きだしねー♪いつも遊んでくれるし」 晶は嬉しそうにほほ笑んだ。本当に可愛らしい笑顔。年頃の少年とは思えないほど可愛いし、この純真無垢な笑顔で笑いかけられたら、もはやコロっとやられてしまうであろう。 晶「ありがとう・・・・」 慧「よかったね、晶」 晶「うん」 すると、そこにいない人物の部屋から何やら声が聞こえてきた。 サファイアの部屋からだ。 晶「何だろう、あの声」 「あーーーーーーーっ!!!!!あたしの小鳥ィ!!!!君は、なんてつれない人なんだあああああああああああ!!!!エッチでラブラブな手取り足取り腰取りの人生を教えてあげようと楽しみにしてたのに・・・してたのにいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(号泣)」 サファイアの涙と悲痛に満ちた雄たけびが聞こえてきたのだ。 晶「・・・・えーと、なんだか背筋に冷たいものを感じるね」 トパーズ「・・・・晶、強く生きよう」 ルーベット「ああなってはおしまいですぞ」 晶「・・・・はい」 もはやうなづくしかない晶であった。 夜の公園。 雨が上がり、月の周りには虹がリングのようになって囲んでいる。 それを見上げている慧の顔は、髪がショートカットにシャギーが入った状態でオレンジ色のメッシュが入り、瞳の色がオレンジ色に光り輝き、蜘蛛の巣のデザインのピアスやドクロのデザインが施されたTシャツ、パンクファッションに身を包んでいた。 K慧「慧、ありがとう。あたしも、ようやく自分がやりたいと思っていることができた。この時間を守りたい」 慧「これからも、よろしくね。琥珀さん」 慧の温かい声に、琥珀は笑顔でうなづいた。そこにはもう迷いはなかった。 続く 次回予告 第13話「Treasure-hunting」 |
鴎
2009年05月26日(火) 23時13分47秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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合計 | 870点 |