仮面ライダー朱凰&クロノスたん何じゃこりゃ外伝(ぉ ララナギはりけ〜んTwei 〜 第1話 試合開始&捜査開始(前編)
――赤川、という少女は、絢斗や遼那たちと同じ学校の女子バレー部の部長である。
その運動能力は高く、遼那たちの目から見ても超高校級の選手だと断言できる……のだが、
残念ながら、同じチームの他の選手は、凡庸かそれ以下(……)であった。
団体競技の悲しさ、赤川一人が超高校級であろうと他のメンバーがそんな程度では
試合に勝ち抜いていけるはずもなく……同校女子バレー部は万年下位の成績に甘んじていたのだ。

だが、見ている人間はちゃんと見ているものである。
しばらく前の近隣学園交換学生制度(※拙作「クロノスたんoutervolume」シリーズ参照)に
端を発する学園親善の目的で、非公表にて行われる、緑ヶ丘学園バレー部とのエキシビジョンマッチ。
赤川は、その「近隣学園選抜バレーチーム」の一員に選抜され、めでたくも選手の一角を
務(つと)めることとなったのだ。

……選抜チームvs一学園って、学園側(つまり緑ヶ丘)がすっげぇ不利じゃね? とお思いだろうが
さにあらず。なにせあの緑ヶ丘学園――そう、あの(この世界における)北京オリンピック・
女子バレーボールで日本が見事金メダルを獲得した、その原動力となったチーム。
その構成員のほとんどが、緑ヶ丘学園の生徒たちだったのである。※

※この物語はフィクションです。「どこの日本で、現役学生、しかも一つの学校のメンバーを
まるまるオリンピックに出すなんて事態がありえるんだよぅ」みたいなツッコミはご遠慮ください。

つまりは(非公表、ではあるが)オリンピック金メダルチームに胸を借りる形の、
負けが前提勝てれば奇跡、それでもそれなりの成果を期待されてのチーム編成なわけで、
そのチームに――少なくともバレーでは――弱小校から選出された赤川の喜びが想像できるだろうか?

ゆえにこの試合にかける赤川の意気込みは尋常ではなかった。積極的に他校の選手と交流を行い、
学校に戻った後も夜遅くまで一人でがんばって練習しているその姿を
遼那たちはあたたかく見守りつつ、自分たちも元気を分けてもらうような気分になったものである。

――そして、ついに試合当日。
そんな赤川を応援するべく、絢斗たち4人+ 以前の話(「祓霊獣〜」)ではすっぱり無視された 慎弥くんが
「近隣学園選抜バレーチーム」の控え室を訪れるところからこの物語は始まる。

――その後に絢斗たちを襲う、過酷な運命(笑)を知る由もなく――
                ★
「……って、長い前フリだったなおい。てか解説文の分際で(笑)とかついてたし。」

――浅草・総合体育会館。※架空の施設です念のため。
選抜チーム側の控え室に向かう最中(さなか)その古ぼけた天井を見上げつつ、蓮見 絢斗はつぶやいた。

「? 何か言った? 絢斗」
「いや別に、独り言だ。……に、しても――がんばって欲しいよな、赤川には」
「当然、頑張るだろう。結果が伴うかは……相手の能力を考えると正直、微妙と言わざるをえないが。」
「んもぅ、ゆーちゃんシビア過ぎ。がんばる思いやがんばって欲しいって思うことは、ゼッタイ、
 力(パワー)になるんだから。それを伝えるための応援、でしょ?」
「…………。あのぅ姉さん。その応援に行くのはいいとして、
 少しこの大量の花束持つの手伝ってくれるとありがたいんだけど……(汗 」

絢斗の隣を歩くは、稲葉 遼那。シビアな発言をかますのはゆーちゃ……もとい、矢倉 悠麻。
その悠麻を叱るようにツッコミを入れる、霧島 湊。そして殿(しんがり。最後尾のこと)に
激励の花束を 持たされた 持った湊の弟、慎弥。ご存知「仮面ライダー朱凰」チームの面々である。
5人は玄関ホールを抜け、売店の前を通り通路を歩み、一路、赤川たちのいる
選抜チーム控え室(控え室R)へ向かい――ドアをノックしようとした、その、直前。

「なんで!? どうしてこんな状況(こと)になってるの――――!!」

悲鳴――いや、金切り声、といったほうがニュアンスが近いか。遼那たちが聞き違うはずもない、
赤川の声だ。控え室から響くその声に5人は、

「「「「「――――――!」」」」」

一様に表情をこわばらせ、控え室の扉をバ――――ン!! と開く!

「どうした、赤川っっ!!」
「……きゃっ!? あ――――は、蓮見! それにみんなも……」

振り向いた赤川は、しかしはっとしたように自分の口を塞ぎ、5人を急いで部屋に招き入れると
ばたん、とその扉を閉めた……その行動が何かを隠すときの様子に思えて一瞬けげんな表情を浮かべる
絢斗たちだったが……内部の様子を見て、納得した。

「…………っ!?」
「ちょ……っ! み、みんなどうしたの大丈夫!? しっかり――」 

駆け寄る遼那たち。少女たち――赤川と同じく、親善バレーに出場するべく各校から選抜された
バレー部の娘たち――が、倒れてうずくまっている。

「な、なになに、どーしたのこれって――!!」
「わからない――わかんないわよ!
 わたしがちょっと……その、用を済ませて、帰ってきたら……みんな、お弁当食べて、倒れてた……っ」
「……弁当?」

問いかける湊に、やや錯乱気味に答える赤川。まぁ状況から考えれば無理もないが。
それを聞いて、傍らの弁当箱を拾い上げる悠麻。その銘柄に目をやり、少し驚いたかのように目を見開く。

「――『ファイナル弁当』だと……!?」
「……なんだそのアレなネーミングは。つーか、知ってんのかよ、悠麻?」
「あぁ、裏弁当界ではかなり有名な、食中毒弁当専門の弁当屋だ。
 半額弁当争奪戦に裏から介入しようとしていた直前、BOARD学園とZECT学園への弁当の
 誤配が原因で潰されたと聞いていたが……」 ※某「Nextたん(1)」での話です。
「…………。その『裏弁当界』とか『半額弁当争奪戦』とか言うのが何のことだか聞いていい?(汗 」
「話すと長くなるから『そういうものがあるんだ』と思っておけ。ここで重要なのは
 選抜チームが、何者かによって弁当に意図的に軽度な毒物を仕込まれたとおぼしきことだ――――」
「って――――!」

悠麻は、淡々と事実のみを語った。だがその言葉の意味するところは、とても淡々と流せることではない。

「それって、大事件じゃない!? 赤川さん、それすぐ……えぇと、
 バレーの委員会? 事務局?? とにかくしかるべきところに報告しないと――――」
「――ダメよ。それはできない。」

遼那の、この場においては至極当然とも言える意見を、しかしにべも無く却下する赤川。

「って、なんでだ! 病人でまくりの状況をほっとけるわけがないだろう赤川――!」
「落ち着いて蓮見。 それはそうなんだけど――あんたらには説明してたでしょ? 今回の相手は、
 緑ヶ丘チーム……かのオリンピック出場チームよ。今回、学校親善の目的で試合することには
 なったけど、無用な混乱を避けるためにそのあたりの情報は全部非公表にしてあるんだから。」

――そう。あくまでも表向きはただの親善試合なのである。

「だから、下手に警察沙汰とかにして、話を大きくするわけにはいかないの。」
「け、けど……っ!?」

それは理解するが、だからといって病人を放置しておくことなんか出来るわけがない。
湊がそう指摘する――それよりも早く、赤川はどこからかアタッシュケースのようなものを
取り出して、中から薬を引っ張り出す。

「……大丈夫。不幸中の幸いで解毒薬みたいなものは用意してあったから、
 これを飲ませて安静にしてれば、選手のみんなの体調の心配はないから――」
「……って、よく都合よくそんなものがありますね……(汗 」
「……ふむ。」

その赤川の言葉にツッコむ慎弥、考え込むしぐさを見せながら、その薬を手に取る悠麻。

「…………。確かに、これは軽微食中毒用の解毒剤だな」
「じゃあ、ホントにこれ飲ませて安静にさせてるだけでいいわけね? ゆーちゃん」
「だとすると、あとの問題は――――」

今度は遼那が、考え込む仕草を見せる。
本来の選手はこれで安静にさせておけばいいとして――個人的にはよくない気がすごくするが、
まあ赤川の言う「表ざたに出来ない」理由はわからなくもないし、悠麻が薬の効果について
保障したからには食中毒的な心配もないのだろう、多分。
そうすると、問題は2つ。1つは当然「ファイナル弁当」にこの件を依頼した人間のこと。
だが、それよりもっとせっぱつまった問題が目の前にある。そして、この展開からいくと――

「――そうね稲葉。試合に出るメンバーが、足りないの。
 てなわけで稲葉、それから霧島。お願い――みんなのかわりに試合に出て。」
「……やっぱりこうなるわけね……」

――まぁ、お約束といえばお約束だ。

「け、けど赤川さん。私たち、バレーって体育でしかやったことないんだけど……?(汗 」
「だけど、最低限のルールはわかるでしょ? 稲葉と霧島の運動神経がいいのは知ってるし
 ……大丈夫、わたしがちゃんとフォローするし、『勝て』とまでは言わないから。
 勝てないまでも――無様な試合を見せるわけには、いかないもの。ちゃんと埋め合わせはするから」
「「………………。」」

微妙な表情で顔を見合わせる、遼那と湊……すっかり、断れない状況になっている。
「――うん、わかった! そこまで言うなら、やる!」 拳を握って気合を入れる湊と、
「……しかた、ないわね。わかった」 ため息をつきながらも状況を受け入れる遼那。
赤川をあわせてこれで3人。だが……

「……で、あと3人どうするのよ、赤川さん。」

そう、バレーには、最低6人が必要なのだ。

「俺たちが出られれば話が早いんだろうが――さすがに、女子バレーだとそうもいかないしなぁ」
「……あの、なんなら僕、ダメ元でランさん(※)に電話してみましょうか?」

腕を組んで考え込む絢斗。その横から、慎弥がおずおずと手を上げる。

※SHTさん作「仮面ライダーアーク」のキャラクター、八尺瓊 ラン/仮面ライダーシエルのこと。
 慎弥くんとはちょっぴりいい雰囲気。(ぉ

「呼んだってそんなにすぐには来れないんじゃない?
 まぁ、最悪頼らざるをえないかもしれないけど……『秘密裏に』という条件がつくからなぁ」
「各校のバレー部メンバーに当たってみればいいんじゃないの?」
「…………。なにしろ話が秘密裏だから、事情知らない部員もいるはずなのよ。
 それを考えると――まったくの部外者呼ぶのと大してリスクは変わらないわね」
「……おい赤川、それじゃ八方ふさがりじゃないか」
「あ、ゆーちゃん、フィナやモールたち式神チーム呼ぶとか……」
「……も、無理があるな。さすがにバレーのルールを1から教え込んでるような暇はない※」
「あらあら〜。それは大変ですねー。」

口々に意見を述べる、深刻な話のさなか……突然。
赤川でも絢斗たちでも倒れている選抜チームのものでもない新たな、そしてのーてんきな声が響く。

※式神チームについては、あとからチアガールさせるつもりはあるんで今回こういう扱いに
 させてください。<青嵐さん ……いや、あれ認めると、バレーの交代要員が
 いくらでも用意できる話になるんで……(汗

「「「「「「…………………………。」」」」」」

絢斗たちがその方向へ一斉に振り向くと、そこに居たのは――――

「へろーはわいゆー♪」
「「「「「「どわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!?」」」」」」

ポニーテールの女性。のほほんとしたおねーさん、という雰囲気の人だった。
いきなり出てきたその女性に、一斉にオドロキの声を上げる一同。

「あ、驚かせちゃいました? わたし、気配させずに登場するの得意なんです。(えっへん 」
「いやンなことを自慢げに誇られてもっっ!?」

ツッコミを入れる絢斗……だがその口の動きがぴたりと止まる。絢斗をして思わず言葉を止めるほどに
目を引くのはその女性の大きな――胸。

「………………。絢斗?(にっこり 」
「!!?? い、いイやいヤいや、思わず見とれるとかしてないですじょ!?」

ナニカの怒りを込めて、にっこり微笑む遼那ちゃんと、それにガクブル震える絢斗。
そっちは無視して、悠麻はその女性に問いかけた。

「――というか、いきなり出てきたあなたは何者ですか。」
「いやー、正真正銘、ただの通りすがりなんですけどねー。

 妹と、その友達と知り合いの娘と4人でこの近所まで来たんですけれど。ちょっとわたしが――
 ここのトイレ行ってその帰りにのみもの買って、ついでにポップコーンも欲しくなったんで売店行って、
 そこで『ジャンプSQ』の今月号が出てたから立ち読みして……あ、『エンバーミング』面白いですよ?
 で、そこで『うううう、ヴァイオレットちゃんかわいそうぉぉぉぉっっ』って泣いてる女の子を
 慰めてあげて、それから待ち合わせ場所に戻ってきたら3人ともいなかったんですよー。
 もぅ、みんな迷子になっちゃったんですねー。どこ行ったんでしょう」
「「「「「「それはあんたの方が迷子になってるんだっ!?」」」」」」

一同(赤川さんまで含めて)総ツッコミだった……つか、大の大人の行動じゃねーよなこれ。(ぉ
……この女が犯人、少なくとも関係者なんじゃねーの? と一瞬思わないでもなかったが、
その「――――――?(きょとん 」とした なーんも考えてなさそうな 無垢な表情からは、
少なくとも弁当に細工をするような人間だとは思えなかった。そもそも、

「……ところで、これってどういう状況なんですか?」

状況を把握しきれず、戸惑ったように周囲を見渡す女性。これが演技でできるならたいしたものだが
そうも見えない。そしてこれが演技であるなら、

「……集団で陣痛?」
「/// なんでだぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!? ///」

……状況を把握できてないボケにしても、もう少しマシな台詞を吐くだろう。てなわけで犯人の可能性は
ないだろうとは思えるものの、このままだと際限なく話が脱線していきかねない。

「……あ〜もうっ!(かくかくしかじか)で大変な、しかもそれを下手に外部に漏らせない状況なんです!
 言っときますけど、いまの話も他言無用ですからね!!」
「わかりました、それじゃ言いません〜あらあら〜、それは大変ですねぇ。」

遼那の説明に対してちーとも大変そうではない口調で、その女性は言った。

「いや、大変なんですよ本当に状況わかってますかおねーさん――!?
 選手の代わり、あと3人も探さなきゃいけない状況だし、」
「あ、そっちは簡単ですよ? らっきーなことに、足りない選手さんはあと3人なんでしょ?」
「……? 何が“らっきー”なんですか?」
「(にっこり♪)」

……なんとなく、嫌な予感がする。思わず問いかけた絢斗のセリフに、しかしその女性は
微笑みつつ自分のバッグの中から化粧道具を取り出して――

                ☆



                ☆

「ぴぴるまぴぴるま、ぷりりんぱ♪ はーい、あだるとたっちでへーんしんっ☆、ですよー」

――やり遂げた漢(おとこ)の笑み(いや、れっきとした女の人だが)を浮かべ、
化粧道具をしまう女性。そしてその女性と絢斗たちを左右交互に見比べながら、

「……け、絢斗…………?(大汗 」
「……ゆーちゃん、それに慎弥…………?(大汗 」
「……は、蓮見も矢倉も弟くん(=慎弥)も…………(大汗 」

……呆然半分、驚嘆半分といった表情で見つめるしかできない遼那と湊、そして赤川の姿がそこにあった。
だがそれも無理はあるまい。

――体操着にブルマ、エルボーガーター、ニーガーター。
3人ともどこへ出しても恥ずかしくない女子的バレースタイルだ……ただし、中の人が女の子なら、だが。
絢斗、悠麻、慎弥……その女子的バレースタイル、であった。

「「「…………。って、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っっ!!?」」」
「あ、それは女子的バレーボールスタイルといってですね」
「ンなこたぁわかっとるわ――――――ッッ!!? 俺らが言いたいのはいつのまに化粧させられて
 いつの間に着替えさせられたのかがまったくわかんねーってことで、」
「あ、あの☆2つの空白の間に一体何がっ!?」

絢斗のツッコミをバックにしつつ、思わず疑問を口にする湊。だがそれは永遠の謎であった。(ぉ
ともあれいつのまにやら、そういう格好に着替えさせられた絢斗たち……何より恐ろしスゴイのは、
体つきこそがっちりしているものの、中の人のことをよく知っているはずの遼那たちの目で見てすら
きちんと女の子に見えるところである――――!!
絢斗たちのその化粧と着替えをほどこしたその女性は、しれっと言葉を紡ぐ。

「いやー、わたし喫茶店とかやってるんですけどね。
 ウチのバイトって基本的に女の子ばっかりなんで、たまに男の子がバイト希望で来ても
 制服がない、みたいな事態があったんですよ。……で、妹の友達にメイクアップの達人がいてですね。
 その娘にメイクの方法とか習って、男のバイトの娘(……)に女装とかしてもらってるうちに、
 女装させるノウハウが確立しちゃって
。これはただのその応用です♪」
「ノウハウ確立するほど女装の回数こなす間(ま)には、ちゃんと男性用の制服手配しろよっっ!?」

絢斗の至極もっともなツッコミに、けく、とわかってなさそうな表情で首をかしげ
……つまり絢斗の神経を逆なでしながら、女性はさらに言葉を続けた。

「そうは言いますけど。この場はまぁ、その女装メイクが役に立つってことで♪
 ……あぁ、大丈夫! 心配しなくても、3人ともちゃんとかわいいですよ?(ちからづよく 」
「「って微塵も嬉しくねぇ――――――――――――っっ!!?」」

絢斗、慎弥が叫びを上げる…………、って、悠麻はどうした?

「ふむ。これは――――確かに、客観的に言って、可愛い。いや、化粧の腕前お見事です」
「お前も一人で姿身(等身鏡)見て納得してんなァァァぁぁぁぁぁっっっっっ!!!?」
「……あぁぁぁ。以前の話(註:『祓霊獣〜』)では存在自体無視されて、今回ようやく出番が
 あったかと思えばこの仕打ち……(涙 こ、こんなところランさんに見られたら※――――!」

――鏡を見ながらひとり感嘆する悠麻に、絢斗は思わずツッコミを入れ、
そして慎弥は頭を抱えてさめざめ涙するのだった。

※安心しろ慎弥くん、呼ばれない限りは出てこないから。えぇ、呼ばれない限りは
                ★
……そんなこんなで絢斗がいい加減ツッコミ疲れた頃、唐突に、さらに頭痛の種が増える。

「――んっふふふふふふふ。見ーちゃったーみーちゃったっ♪」

心底楽しげな、その声。それに絢斗はばっちり聞き覚えがある。
まず第一に、普通に考えてここに来るはずのない人間。第二に、こんな格好見られたくないやつグランプリを
開催すれば、親父と並んで堂々ぶっちぎりの一位になる人間。
……だが悪い予感ほど当たるものである。錆びた機械のようにぎぎっ、と硬い仕草で絢斗が振り向くと、
そこにいたのは、不幸にして――――

「んちゃを♪」
「……って、やっぱりお前かスミレ――――――――――――ッッ!!!?」

――そう。黒野 スミレ、その人だった。

「お、ぉをぅおヲおOh、お前、なんでここに出てくんだよっっ!! ご都合主義にも程があんだろっ!!」
「あ、ご都合主義ってほどには不自然な話でもなくてさ。
 ほら、アタシ緑ヶ丘(学園の生徒)じゃん? 友達と一緒にそっちの応援に控え室行くはずが、
 単にうっかり訪ねていく場所の、こっち(控え室R)とあっち(控え室L)間違えただけなんだけどねー。
 ……まぁそのおかげでこんなおもろいモン見れちゃったよ――ハレルヤ。」
「賛美すんなァッ!?」
「あぁ、だいじょーぶだいじょーぶ。友達のよしみで、ネットにアップとかしたりせずに
 あくまで個人的観賞用にとどめとくから。……てゆーか、こんだけきちんと女の子に見えてると
 かえっていぢって遊ぶネタになんないし、(ぱしゃぱしゃ 」
「個人的観賞のために女装姿写真に残しとくようなヤツなんざ友達じゃねぇ――――――――ッッ!?
 ……って、あぁコラ、言ってるそばから写メとか撮るなぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!?」
「あ、ほらほらどーです。第三者から見てもちゃんと女の子に見えてるでしょ?(えっへん 」
「あ、これやったのそっちのおねーさんなんだ? ――グッジョブ。(ぐっっ 」
「いえいえ、それほどでも〜♪(ぶいっ 」

サムズアップとVサインで互いを認め合う女性とスミレ。……あんたら初対面のクセに
めっちゃ仲よさそうですね。(ぇ  そんな微笑ましい(……)光景に、おずおずと遼那が割り込んでくる。

「あの、というかえぇと……黒野さん、だったっけ? 応援に来た、ってことはこのあとヒマなわけよね?
 私たち、これから選手として出るハメになっちゃったんだけど、……できれば、絢斗と
 選手代わってあげて欲しいんだけど」

その頼みに、しかし―― 一応は、申し訳なさそうに――頬をぽりぽりかきながら、

「いやー、悪いんだけどアタシってばマジで運動神経無い人だから、ぶっちゃけ手助けになんないんだよねー。
 いんじゃない? そんだけ女の子に見えてれば、試合中脱いだりとかしない限りゼッタイバレないと思うし。」
「い、いや……バレないからいいとか言う問題じゃなくって、だなぁ……っ!?」
「それに――――」
「……? 『それに』、なんだ?」

断るスミレに、なおも食い下がる絢斗。それに対しスミレはいったん言葉を切って、ふたたび右手の親指を
サムズアップする。同時、傍らの女性の方はぴっ、と左手の人差し指を立て、ほぼ同時に絢斗の方へ顔を向け、

「「そっちの方が面白い(です)し。」」

タイミングよく声と仕草をあわせ、ぴったりきっぱし言い切りやがった――そしてお互い顔を見合わせる。

「おを♪ おねーさん通だねぇ、倒錯萌えの概念ってヤツがわかってるねー」
「あははー、わたしにはそういう難しいことはよくわかりませんけど、とりあえず面白いは正義ですよねー」

……こんだけ会話がかみ合ってないのに、なんでそんなに気が合ってるんだお前ら。(ぉ

「って、和んでんじゃね「それじゃみんな、がんばってねー♪」「あ、わたしも妹たち探さないと。」

絶叫しかける絢斗の声を「実はお前ら事前に打ち合わせしてんじゃねーの?」とすら思える
絶妙なタイミングでそれぞれさえぎって、スミレと謎の女性はそそくさとその場を離れた。あとには、

「……んでんじゃねぇ…………」叫びきれずに微妙に口をぱくつかせる絢斗と、
「――いろいろ怒涛の展開だったな。」と他人事のようにつぶやく悠麻、
「「……………………。」」あまりの事態に呆然としている遼那&湊、さめざめ涙を流す慎弥、
そして――――

「――――――――。」

ひとり、微妙な表情で立ち尽くす赤川の姿が、そこに残されたのだった。


―― 後編に続く ――
八兎ジャック
2009年05月31日(日) 04時29分15秒 公開
■この作品の著作権は八兎ジャックさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
とりあえず前半。
後半&選択方法については今夜にでもまぁ。

この作品の感想をお寄せください。
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50 Sabrina Poole ■2013-01-12 14:03:49 host25.canaca.com
cHI93z Awesome article post.Much thanks again. Great. 30 Social Bookmarking Service ■2012-08-08 09:52:11 91.201.64.7
この前言い忘れてたので最初に言っておきます!
平成ライダー少女界バリバリ最凶(字は間違ってない)ナンバー1のきょにうはバーニングフォームの翔ちゃんその人であるとっ!(ぉ

それは置いといて珍しく即日感想に参ります(←ホント珍しいなぁ(汗

>ファイナル弁当
懐かしのファイナル弁当w
ベン・トー編やったとき絡ませなかったのが悔やまれます

>泣いてる女の子
エリカちゃんや!エリカちゃんや!(大事なことなので2回言い(ry

>アルティメットメイクアップ
うわぁーおwwwwww
まさかここに来て女装させられるとは・・・・実に新しいです
慎弥はまだ成長途中だから大丈夫(なのかな?かな?)にしてもゆ〜ちゃんは背が高過ぎて女の子に見えるかどうかw
絢斗と慎弥はカツラかなんかしてるんでしょうか?

>ハブられキャラの慎弥くんと呼ばれない限りは出て来ないらしいランさん
ここぞとばかりに気になるあの娘を推薦とは見せつけてくれるな!えぇ?少年君!(ぉ
なんか出て来るフラグとしか思えませんねw
・・・・SHTさんに確認が取れないと難しいですかね?

>翔ちゃん&スミレちゃん夢の最凶タッグ(ぉ
なっ、天然外道とドドドドSが手を組んだだと!?
か、勝てるはずがない・・・・w


バレー対決ということでしたが何やら事件が発生してしまった今回のお話
スミレちゃんがいるということは異○人絡みも・・・?
後編も楽しみにしております!

PS、お返事は前後編一緒で結構ですw
50 青嵐昇華 ■2009-05-31 19:14:57 proxyc103.docomo.ne.jp
合計 130
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