仮面ライダーバルキリーたん 第13話「Treasure Hunting」 |
「Treasure Hunting」 愛「さて皆様。突然ですが、皆様はオーパーツというものはご存知でしょうか?オーパーツ(OOParts)とは、『Out−Of−Place ARtifacTS』(時代や文化に合わない場違いな工芸品)の略語で、その時代にはあり得ない知識が盛り込まれたもの、もう1つが、その時代の技術水準では製作する事が困難なものとされているそうですよ。 なぜ、この話を持ち上げたかといいますと、今回慧ちゃんたちが巻き込まれる事件にオーパーツが大きくかかわってくるからなのです。そして、この事件は物語の核心をついた展開につながっていくことになるのです!それでは!!仮面ライダーバルキリーたん、レッツ・スタート!!」 星見市英国文化博物館。 小高い丘の上に立つ英国貴族の住まうような美しい庭園に面する好機で荘厳な雰囲気が漂う宮殿。それがこの町の名物のひとつでもある「星見市英国文化博物館」である。 古今東西の美術品や書籍、考古学的な遺物、硬貨やオルゴールなどの工芸品が陳列されている静寂に包まれていたはずの空間だったが。 ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! ガラスが割れるけたたましい音が夜の闇を切り裂いた。 それは「パーベルじいさんの小石」の「トカゲ」のイメージから生まれた「サンゲイザーイマジンたん」!! サンゲイザー「・・・これで契約完了。これだけあれば、大金持ちになりたいなんていうバカな願いでも叶うでしょうね。それが一時の夢であろうとも。・・・でも、せめて報酬としてはこのくらいもらっても悪くはないわよね」 彼女の独白が、彼女が交わした契約内容と現在の行動がどのような経緯で行われているのか説明づけている。そう言いながら手に持っているのは中身のつまった麻袋から、黄金色の光を放つかなり歴史的に価値がありそうな鷲の紋章が彫られた懐中時計と綺麗な装飾が施されたオルゴールを取り出して、うっとりと笑みを浮かべる。 サンゲイザー「これが17世紀の貴族が実際に愛用していた懐中時計か。ぜんまい式なのね。ふむ、いい趣味のお持ちのようね。そして、クルミの木で作られた作者不詳のオルゴール。ああ、このしっくりくる手触り、いかにもアンティークな感じで素敵・・・うふふ」 R慧「随分と目の肥えて、趣味のよろしい泥棒ですわね。ですが、泥棒は犯罪ですぞ」 サンゲイザーイマジンたんが振り返ると、そこには赤いメッシュを編みこんだポニーテールの少女が立っていた。 手にはライダーパスを握りしめ、腰にはバルキリーベルトを巻いている。 サンゲイザー「バルキリーか。何かご用かしら?」 しかしサンゲイザーイマジンたんも余裕の笑みを崩さないまま、まあ答えは分かっているけどと言わんばかりに聞いてきた。 R慧「その罪、閻魔に代わって裁きに来た。変身!!」 慧が赤い光を全身にまとい、ランスフォームに変身する。 そして、走りながらVガッシャーをランスモードに組み立て、猛然と走りだしてサンゲイザーイマジンたんに切りかかっていく。 サンゲイザー「ふっ!!」 サンゲイザーイマジンたんが赤い瞳を光らせると、その手には赤い光が放たれ、やがてあらわれたものを見て、ランスフォームが愕然とする。 Lバルキリー「何!?」 それはVガッシャー・ランスモードだった。 自分の武器と同じ外見の武器を生み出し、それを手に持って、華麗に振り回してランスの攻撃を防いで、そのままキックでランスフォームを蹴り飛ばす。 Lバルキリー「なぜっ、私と同じ武器をっ!?」 サンゲイザー「あたしの能力。見たものは大抵コピーできるの。ふむ、使い勝手は悪くはない。でも、まだ、足りない」 にっと笑みを浮かべると、ランスを振り回し、一気に横なぎに振り上げると、バルキリーが攻撃を避けて、相手が振り返る前に背中に向かってランスを突き出すが、それを背中に向けて構えたランスではじかれる。 そしてそのまま地面に突き刺したランスを支柱に体を持ち上げて、回転しながら蹴りを繰り出し、ランスフォームが吹き飛ばされる。 庭園に転げ回り、起き上がると、サンゲイザーイマジンたんが槍を肩に担いで悠々と歩いてくる。 サンゲイザー「ふふっ・・・・」 Lバルキリー「こいつ・・・!!」 サファイア(かなりやばそうだね。あたしが変わるよ) Lバルキリー「・・・博物館を間違えて壊すなよ?」 サファイア(OK!!) 青いボタンを押し、青い光が全身に包まれるとその姿を白鳥を模したガンフォームに変え、Vガッシャーをガンモードに組み替える。 Gバルキリー「さぁて、君のハートをあたしが盗んであげるよ。可愛い子猫ちゃん♪・・・・ロックオンってね」 サンゲイザー「あたしのハートを盗むには・・・・言葉が足りませんねぇ。出直してきなさいな」 Gバルキリー「なぁに、恋も駆け引きも、押しの一手よ」 ガンフォームが銃弾を乱射するが、それをサンゲイザーイマジンたんの頑強な鎧に阻まれて弾が弾かれていく。やがて、槍を突き出すとその姿を青い光に包まれ、その姿を何と今度はガンモードに変えてしまった。 これにはガンフォームも驚きを隠せなかった。 Gバルキリー「うっそん!?」 サンゲイザー「ああ、これ。こういうのも欲しかった。ありがとっ、じゃあね!!」 そういって、ガンモードを乱射しガンフォームの足元で弾丸が何発も着弾し砂煙をあげる。 そしてその間に、サンゲイザーイマジンたんが近くの木に飛びあがり、そのまま次々と建物の屋根や木々の枝を飛び移って消えていく。 Gバルキリー「げほっ、げほっ、あれ?ああ、嘘、逃げられた!?ええっ、ちょっと、待ってよ、夜はこれからでしょっ!?つれないよ〜!!カムバーック!!マイスイートハニーッ!!!」 ルーベット(アホーーーーーーっ!!!早く追いかけんかあああああああっ!!) Gバルキリー「えっ、追いかけていいの?追いかけちゃうよ。女の子のためなら、地の果てまでも追いかけちゃうよっ!?うぉーし、お姉さん頑張っちゃうぞーっ!!」 そういって、ステップを踏みながらとろけそうな笑みを浮かべて走り出した。 トパーズ(・・・こいつはどこまでバカなんだ) エメラルド(ゴッデス・オブ・バカ(和訳すると「バカの女神」)だよね) 琥珀(まあまあ。確かに、こういったコメディアン的要素がなくなったらこいつのアイデンティティーが・・・思いつかなくなるけども) 変身を解いて青いメッシュを編みこんだ三つ網をなびかせて、嬉々とした表情で博物館を出ようとする。 しかし、後ろから何か赤いランプの光とけたたましいサイレンの音が響き渡り、後ろを振り返る。そして、後ろでライトをバックに立っている無数の黒い影。 目を凝らすと、そこでは無数の警察官や機動隊たちが駆けつけて銃を構えているではないか。 「そこの人物に次ぐ!!大人しく投降しなさい!!」 S慧「やっべー、警察来ちゃった。濡れ衣で捕まるなんてゴメンだよ」 琥珀(サファイア、あたしに変われ!!逃亡ならあたしの十八番だ!!) S慧「よっしゃ。頼むよ」 すると、オレンジ色の光が宿ると髪がシャギーが入ったショートヘアになり、オレンジ色の光を瞳に宿らせると、そのまま一気に走りだした。 そして後ろから警察官たちが一斉に追いかけてくる。 しかし、琥珀は手からネットを発射すると、木の枝に絡めて、そのまま飛び上がって木の上に飛びつく。そして、ネットを次々と枝にからめとっては、木と木の間を器用にすり抜けて飛び越えていく。 警察官たちはあまりに身軽な動きについていけず、やがて後ろから聞こえてきた声や足音が聞こえなくなってきた。 うまく捲いたらしい。 琥珀はふうっと息をはき、額の汗をぬぐう。 K慧「どうやら警察に捕まるなんて言う間抜けな展開はなさそうだな」 トパーズ(しかし、あいつの目的はだいたい予想がつくが、どうやって仕留めるかだな) K慧「契約者を見つけ出して、そいつと合流する前に迎え撃つしかないな」 慧(そうだね。エメラルド、この間作ったあれ、使える?) エメラルド(いつでもいいよっ!!琥珀、ちょっと変わってもいい?) そういって、今度は緑色のメッシュが入ったシニョンヘアに変わり、目の色が緑色に光輝く。右目もとに星をあしらったラメをはっている。 ポケットから小型のレーダーのような機械を取り出すと、オレンジ色の光が赤い光に向かって突き進んでいるのが見える。 E慧「あたしの作ったイマジンレーダー。契約者の居所まで分るという代物の力、ご覧あれ!!」 赤い光は契約者、オレンジ色の光はイマジンを指している。 そして中心の黄色い光が自分である。 レーダーの光を見ながら、現在地点である場所を割り出し、エメラルドが走り出した。 E慧「向こうのほうだ。北西3qの地点!!トパーズ、どのあたり?」 トパーズ(このあたりだと、神社のあたりだ。ここらへんで落ち合うつもりだな) E慧「よっしゃっ!!」 慧がマシンハミングバードを呼び出すと、バイクにまたがって一気に走りだした。 その様子を見ていた人影がいた。 眼鏡をかけ、銀色のライダージャケットにGパンといったラフなファッションに身を包んでいるのはビショップであった。 ビショップ「クイーン、バルキリーが動きました。引き続き尾行を続行いたします」 そういって、ビショップも止めてあったバイクにまたがり、縛り上げた金髪をなびかせ、一気にエンジンを回して走りだす。 その連絡を聞いていたクイーンも隣にいたルークに話しかける。 クイーン「行くわよ、神社の付近だって」 ルーク「了解だ」 ルークが腕をボキボキ鳴らして立ち上がった。 E慧「もうすぐ近くだよ!トパーズ、どのあたり!?」 ザザ・・・ザ・ザザザ・・・・ ノイズのような音が聞こえて、トパーズたちの声が聞き取れない。 慧が一瞬何が起こったのか分からない顔つきになる。 E慧「あれ?どうしたんだろ?トパーズ!?トパーズ!!」 すると、ようやくトパーズの声が返ってきた。 トパーズ「ああ、こちらトパーズ。どうかしたのか?急につながらなくなったが」 E慧「ああ、こっちも。なんだか変だよね。今の、何だろう」 トパーズ「分らない。ああ、そうだ、イマジンはそこの神社だ!」 E慧「OK!トパーズ、派手に決めちゃえ、チェックメイト!!」 そういって、トパーズに変わり、金色のメッシュが入り、ひと房だけ髪が長くなり、眼鏡をかけた知性的な顔立ちになる。 そして、バルキリーベルトを腰に巻きつけて装着すると神社へと駆け上がる。 すると目の前では契約者らしきみずぼらしい風体の男の前にサンゲイザーイマジンたんがいた。 サンゲイザー「あら、追いつかれちゃった。でも、もうおしまいよ」 そういって、過去へつながる扉を開いたとき。 サンゲイザーイマジンたんが持っていた時計が突然黄金色の光を放ちだした!! そして時計の針がまるでとち狂ったかのようにグルグルとメチャクチャに回転しだしたのだ。 サンゲイザー「な、なんだっ!?」 T慧「何だあれは?どういうことだっ!?」 そして、その過去につながるはずの扉は緑色ではなく、禍々しい赤色に光り輝いている。 その扉の中から凄まじい風が吹き出し、扉の中へとあらゆるものを飲み込まんと引きずり込んでいる。 その風圧に耐えきれず、サンゲイザーイマジンたんが飲み込まれた。 サンゲイザー「ああああああああああああああああああああ!!!」 そしてトパーズも必死に耐えているが、その風圧に耐えきれず、足が空中に浮き上がり、抗えない強い力に引きずり込まれるようにして過去への扉に飲み込まれ奥へと飲み込まれていった。 T慧「うわああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」 彼女を飲み込むと、時空の扉が閉じ、男は何が起こったのか分からない様子でその場で座り込んでいた。 一方。 神社から発する赤い光にビショップはバイクを止め、目を見開いて緊張をあらわにした顔つきでその光を見ていた。 ビショップ「・・・か・・・・カオスゲート・・・・!?間違いない、この気配は・・・!!くっ、慧ちゃんっ、無事でいて!!」 ビショップがバイクから降りて神社前の階段に走り出すと、そこにはクイーンとルークも狼狽した様子で目の前で起こっている赤い光の柱を見上げながら駆けつけてきた。 クイーン「ビショップ!?これって、まさか!?」 ビショップ「ええ・・!!カオスゲートに間違いありません!!あいつらが、動き出したようです!!私たちの世界を滅ぼしたイマジン野郎たちが!!」 ルーク「慧ちゃんはっ!?まさか、カオスゲートの近くにいねぇよなっ!?」 その時だった。 T慧「うわああああああああああああああああああああああああああ!!」 悲鳴が神社の上から聞こえ、3人の顔色が青白くなる。 特にビショップはその声に聞きおぼえがあった。 ビショップ「慧ちゃん!?」 ルーク「くそっ!!!」 3人が駆けつけると、そこで赤い光が収まり、やがて何もなかったかのように静まり返った空間が広がっている。 そこに倒れている男を見て、3人は彼がイマジンと繋がっているであろう契約者の証である砂を見つけ、認識する。 ビショップが青いラインのブランクチケットを取り出すと、カードの中の数字が赤い光とともに、静かに浮かび上がってきた。それはまるで血文字のようにおぞましい雰囲気の文字であった。 「1941/10/1」 クイーン「遅かった・・・!!」 ビショップ「この時代、間違いなく慧ちゃんがいる・・・!」 ルーク「ルークたちだけじゃ手に負えない。キングに報告だ!!」 ビショップ「はい!!」 ルーベット「慧殿!?慧殿!!」 突然の事態にルーベットも必死の形相で叫び続けるが慧の応答はなかった。 サファイア「ねえ、何が起こったの!?」 エメラルド「慧が・・・まるで消えちゃったみたいにつながらなくなった!?」 琥珀「それに、あんな過去の扉見たことねぇぞ!?くそっ、何が起こってやがるんだ!」 ルーベット「ここで手をこまねいている余裕はなさそうですな・・!!愛殿に連絡です!」 言うが早いか、ルーベットが車内電話の受話器をとり、愛の番号を入力して連絡する。 「1941年10月1日」 イギリス・ロンドン ジルバラードの町 レストラン地下 慧が目を覚まし、ゆっくりと瞳を開くと、そこにあったものはまず古びたレンガつくりの壁。そして、目を凝らして周りを見回すと、年代物のワインやウイスキーが横に寝かされて陳列棚に入っている。近くには樽もいくつかおかれている。どうやら酒蔵らしい。 トパーズ(慧、気がついたか!?) トパーズの声が頭の中に聞こえてくる。慧はトパーズの声でようやく意識を取り戻す。 慧「トパーズ・・?うん、えっと、今、何がどうなっているの・・・?」 トパーズ「私にも何が起こったのか分らない。今目覚めたばかりで、状況をどうにかして把握しようとしているのだが」 珍しくトパーズが弱気な声を出すが、慧が納得する。 慧「・・・まずはこの状況を整理しないといけないね。いくつか頭の中で思いついたことを順番に消していきながら今後の対応をとろう」 慧はこういう予想外の事態やトラブルにかなり強い。困難に面したら、まず、現状を理解し把握し、対策を打つことが解決の糸口となるという理知的な考え方や肝の据わっているところは16歳でありながら自然に修得できているらしい。あまりの運の悪さゆえにいろいろな予想外の事態に慣れてしまっているが故というのもあるのだが。 慧「まず、どうして私たちはこのような事態になったんだろう」 トパーズ「あの時、イマジンの契約者の過去につながる扉を開いた際、自分たちもあの赤い光の中に飲み込まれてしまった。あの時の扉は普段とは異なっている。あらゆるものを飲み込まんとしていた赤い光。そして、その光に飲まれて流れ着いたのがここだったのだろう。あの時の過去の扉を開く際に、何か時間全体に異変が起こって、このように歪んでしまった時のつながりが出来てしまったことで、自分たちが流れ着いてしまったのであろう。それが原因としか考えられん」 慧「時間全体の歪み・・・それはあのトカゲさんが起こしたこと・・・ではないよね」 あの赤い光を見た時、サンゲイザーイマジンたんも予想外といわんばかりの驚いた顔つきをしていた。 慧「・・・ここ、いつなんだろう」 トパーズ「・・・うん?ああ、そこの壁にカレンダーがある。・・・・!?1941年だとっ!?バカな、あの泥棒がそこまで年を食っているようには見えんぞ」 慧「・・・・約70年前だね。つまり、あの赤い光は過去につながるけど、イマジンたちがこれまで飛んできた時の扉とはまったく異なる存在であることは証明されたね。そして、それが起こりうる異常事態が時の運行で起こっていることも」 トパーズ「・・・そうなるな。くそっ、さっきから作戦を立て直したいのに、Vライナーとつながらない・・・!」 トパーズがイライラしながら歯ぎしりする。 今このような事態が起こっている間は、2010年のVライナーとは交信が途絶えている状態に置かれているらしい。慧も先ほどからルーベットたちと交信しようとするが、ルーベット達にうまくつながらなかった。 慧「・・・・仕方ない。今はまず、この時代におそらくあのトカゲさんもたどり着いているはず。あのイマジンを何とかしないと」 トパーズ「・・ああ、そうであったな。私としたことが取り乱して・・・すまない」 慧「ううん、私、トパーズがこの事態を冷静に分析してくれたから私も落ち着いて考えることができた。トパーズ、ありがとう」 慧が胸の内に秘めていた不安を打ち明けるように、笑みを浮かべる。 その笑みを見て、トパーズはごちゃごちゃとなっていた脳内が、ある一つの考えにまとまって自分がやるべき行動を割り出すことができた。 今は自分だけが慧を守れる。 自分が慧を守ることに専念する。 慧の言葉を信じ、慧を守ると誓った自分自身を信じるしかない。 トパーズ「・・・そうだったな。慧、まずは外に出てみよう」 慧「うん!」 そういって、金色の瞳を光らせ、メッシュをあみこんだひと房の髪をなびかせて慧が地下のワイン庫から出てきた。一見古びた普通のレストランのようだが、なぜか人の姿も気配もない。ガランとした店内を慧は見回しながら物色を始める。 T慧「何か武器になるかもしれない」 そういって、厨房で手に入れた包丁とデッキブラシの柄に取り付けた即席の槍を作り出す。 その時だった。 ヒューッという落下音と共に、 ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!!! ズドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!! 白い光に包まれると同時に床が震えて、窓が叩かれているかのように激しく揺れる。 そして、次々に爆発が起こった。 慧「きゃああああああああああああああああああああああ!!」 T慧「これは・・・焼夷弾!?まさか・・・そうか!!慧、ここは危ない!!地下に避難するぞ!!」 空を見上げると、そこにはサーチライトに照らされて無数の爆撃機の影があるではないか。 慧「ど、どういうこと〜!?」 T慧「1941年・・・!!第二次世界大戦だ。私たちはその戦争のあった時代によりによって飛ばされたらしいな!」 慧「だ・・・・第二次・・・・って・・・・・私・・・・どこまで運がないの・・・・」 慧がもはや信じられないといわんばかりに愕然とする。そりゃあいくら何だって時空の歪みに巻き込まれた揚句、流れ着いた先が第二次世界大戦の真っただ中の時代と来た日にはもう二の句が告げようがない。 T慧「一旦避難だ!!」 そういって、地下に逃げ込み、重い鉄の扉を押し上げて閉めると、地下に爆撃による揺れと振動する音が不気味に響き渡る。 慧(こ・・・・怖いよ・・・・どうしよう・・・・!!) いくら不幸慣れしているとはいえ、こんなヘビー級の最悪の事態にさすがの慧も不安を口にする。わずかだが、体が震えている。 その時だ。 ふわっと、温かい風が不釣り合いなまでに吹いて慧の頬を優しく撫で上げていくような気がした。そして、頭の中に「声」が聞こえてくる。 T慧「・・・・抱いていいか?君の気が・・・少しでも和らぐなら・・・・」 慧は一瞬、自分を抱きかかえているトパーズの姿を思い描いていた。 自分の体を温かく抱きしめていてくれている。そしていつものようにクールだが自信に満ち溢れている笑みを浮かべて自分を見守っていてくれている。 慧(・・・・そうだ。私も頑張らなくちゃ。トパーズが・・・一緒にいるなら・・・・怖いものなんてない) T慧「安心しろ。お前は・・・・私が必ず守る」 慧「・・・・頼りにしてる。ありがと」 慧も少しだけ笑みを浮かべる。心から安心し、きっと助かるという希望的観測に満ちた笑顔だ。そういって、T慧はなんとか爆撃が終わるまでやりすごすことにした。 キングライナー(ターミナル) 時の砂漠に巨大な赤い装甲を持ったその列車は荘厳な雰囲気を漂わせながら存在していた。 時の列車が行き交う巨大なターミナル。 そこの駅長である白い制服に身を包んだ壮年の男性が通信室からマイクでいつになく真剣な表情で緊急警報を出していた。 駅長「緊急警報です〜!只今、1941年より、謎の時空の歪みが発生し、大変危険な状態となっております。1941年の時代に向かっている時の列車は全車両大至急引き返すか、緊急停止してください。この歪みの原因を現在確認中でございます。安全の確認がとれますまで、大変申し訳ございませんが、列車の運行を見合わせていただきます」 緊迫する空気が時の砂漠に漂い出していた・・・・。 一方、事態を聞かされて愛が血相を変えて電車に駆け込んできた。 そして事の顛末を聞くと、愛の顔色が真っ青になる。 愛「・・・赤い扉・・・・時空の乱れ・・・・まさか・・・・そんなことが・・・!」 ルーベット「愛殿、何か知っていることがありますのか?」 愛「・・・・詳しくはわからないけど、昔、バルキリーとして闘っていた時に聞いたことがある。時の運行をしていた列車が原因不明の神隠しにあい、突然行方不明になってしまった事件。その時に目撃証言で出ていた唯一のものが・・・その赤い光を帯びたどこの時間につながっているのか分らない、通常では現れるはずのない時間の歪みが作り出したトンネル・・・・カオスゲートと呼ばれるものがあるって。噂でしか聞いたことがなかったけど・・・まさか本当にあるなんて・・・!!」 愛も頭に手をおいてソファに座りこむ。 サファイア「それでさ、何とかして慧と連絡が取れる方法はないの?もしくは時代が特定できれば、一刻でも早くこの時代に駆け付けたいんだけど」 エメラルド「チケット・・・チケットとってみれば分かるんじゃない!?」 エメラルドがそういうと同時であった。 ガタンッ・・・・・ 突然列車が停車したのだ。 サファイア「な、何だい!?」 エメラルド「ど、どうして、止まっちゃったの!?」 琥珀「待って、モニターに何か通信が入っている。・・・これはターミナルからだ。・・・何!?1941年の時代につながる時の運行がメチャクチャになっているだって!?原因不明、調査のため当分時の列車を緊急停車させるって!?」 ターミナルからの緊急停止命令に一同が唖然となる。 ルーベット「これはいったい何が起こっているのでしょうか!?」 エメラルド「・・・どうしよう・・・・このままじゃ助けに行けないよ・・・!!」 琥珀「慧・・・!くそっ、手をこまねいてる場合じゃないのによ」 愛「・・・慧ちゃん・・・!!」 サファイア「落ち着くんだ。今はまず、情報収集が何より先決だよ。そして、こっちはこっちで慧に交信を絶えずやってみるんだ。もしかしたら繋がるかもしれない。今、やれることを何でもやってみるしかない」 サファイアの冷静なアドバイスに全員がうなづきあって、真剣な表情で向き合う。 サファイア「慧・・・!無事でいてくれよ・・・!」 1941年10月1日 サンゲイザーイマジンたんが流れ着いたのは、町の中央に位置する市立公園の墓地にある管理小屋の地下壕であった。爆撃が収まったのを確認すると、ウイスキーを瓶から直接飲みながら窓から外の様子を伺う。 サンゲイザー「・・・・しばらくは様子を見たほうがよさそうね。この時代に流れ着いてから「声」も聞こえなくなった。お役御免ていうならそれでもいいけどこんなわけのわからない事態は御免被りたいわ」 その時だった。 ふと、この死と腐臭の匂いに満ちた戦場から不釣り合いともとれる美しいオルゴールの音色が聞こえてきた。サンゲイザーイマジンたんは首をかしげる。 サンゲイザー「・・・・こんなところで、オルゴール・・・?」 それは公園の中央に位置するホール「メモリアルホール」から聞こえてきた。 サンゲイザーイマジンたんはホールに忍び込み、足音を忍ばせながら音がどんどん鮮明に聞こえてくるホールへと向かっていき、ようやくホールに辿り着いた。 そして静かに扉をあけ、中の様子をうかがう。 ワインヤード型の荘厳な雰囲気に包まれたコンサートホール。人気は全くない。ただ真っ暗な闇が広がるのみ。しかしその闇の中からオルゴールの音色が静かに聞こえてくる。 しかしそこには誰もいない。 サンゲイザー「・・・何なのよ?」 サンゲイザーイマジンたんもさすがに驚きと動揺を隠しきれない。 警戒心をあらわにし、一歩一歩慎重に歩いて行く。 その時だった。 「きゃあああああああああああああああああああああっ!!!」 女の子の悲鳴がホール中に響き渡る。急いで駆け付けると、そこでは一人の女の子が涙にまみれた必死の形相でこっちに向って逃げてきている。そして、サンゲイザーイマジンたんの体を・・・すり抜けていった!!まるで立体映像であるかのように。 そして、後ろから追いかけてきたもう一人の人物―いや人物ではなかった。 「あはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」 奇声を上げながら飛び込んできたのは赤茶色のショートボブの髪を持つ吊り眼で強気で活発そうな雰囲気の少女だ。その瞳が赤く光り輝いたかと思うと、その姿を少女と同一人物には思えないまでに凶悪な姿に変わってゆく。ゼブー(インドの牛の神の一種)を模した雄々しき角を持ち、屈強な筋肉で引き締まった体は鋼鉄に勝る硬度を誇る。 手には巨大なハンマーを構えて辺りのものを手あたり次第ハンマーで殴り破壊していく。狂気の哄笑を上げながら、彼女も同様にサンゲイザーイマジンたんをすり抜けていく。しかし、妙だ。牛の怪物が殴りつけたものはすべて実際に壊れているのだ。原形をとどめることなくつぶされ、破壊されたベンチや灰皿、壁にはハンマーで開けられた穴があいている。 サンゲイザー「・・・何よ、なんなのよ、何が起こっているの!?」 そして次は金色のメッシュを編みこみ、金色の瞳をもつ眼鏡をかけた慧が飛び込んできた。 T慧「お前は?何でここに?」 サンゲイザー「あんたは幽霊みたいじゃなさそうね・・・」 T慧「勝手に殺すな。あいにく、慧の悪運の強さとしぶとさは伊達じゃない」 慧(それ褒めてない!!) T慧「しかし、何があったんだ?オルゴールの音色が聞こえたから誰か逃げ遅れて救助を求めていると思ったのだが」 サンゲイザー「あたしにも分らない。つーか、なんかヤバいかも」 「ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!」 何かをたたきつけるような重い音とのどが張り裂けんばかりに悲鳴が聞こえてきた。 ホールに飛び込むと、そこでは見るに堪えない惨劇が広がっていた。 血に染まるステージ。 血だまりの中で少女が頭から血を流して横たわっている。 ぴくりとも動かない少女を見下ろしながら、ゼブーの姿をした怪物が血まみれのハンマーを持って、嬉しそうに笑っていた。 「あはははははははははははははははははははははは!!!あたしが殺した!!!楽しい・・・楽しい・・・・もっと・・・もっと殺したい・・・・!!あはははははははははあははははははは・・・・ああ・・・・まだ・・・獲物がいたじゃない」 慧とサンゲイザーイマジンたんがあまりのむごたらしい光景に言葉を失う。 そして、その怪物が巨体からは想像もつかないまでに素早い動きで飛び出し、ハンマーを振り上げてきた。 そして、慧とサンゲイザーイマジンたんがよけると、そこにあった壁を思い切り殴り壊した。想像を絶する怪力のようだ。 T慧「どういうことだっ!?」 サンゲイザー「嘘でしょう・・・!さっきまでは実体なんてなかったのに!!」 「特異点か。さっきまでのはあの女の子の死に際の感情の高ぶりが見せた過去の映像。もっとも、あたしは精神体と肉体を分離していただけでこうして獲物を見つけられたら実体化できるけどね!!」 そういって、ゼブーの姿をした怪物がハンマーを構える。 サンゲイザー「やるしかないわね!」 そういって、コピー能力で生み出したバルキリーベルトを巻き、青いボタンを押す。 T慧「そんなものまでコピーできるのか。くっ、しかたない。一時休戦だ!変身!」 サンゲイザー「変身!!」 同時にアックスフォーム、ガンフォームに変身する。 「倒せるかな?このレジェンドルガの一人、ゼブーレジェンドルガ様をなあ!!」 ハンマーを構えて、暴君が牙をむき出しにした。 Aバルキリー「チェックメイトにしてやる。待ったなど聞かん」 Gバルキリー「あんたのハートに・・・ロックオン」 続く |
鴎
2009年06月05日(金) 06時50分39秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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