仮面ライダーセレナ第壱拾参話「間話/それぞれの家路」 |
前回までの仮面ライダーセレナは 巻奈からの突然の要請を受け、事件現場に急行した鷹音。 そこで暴れていたマンティスファクターと激突するも、右腕を斬り落とされ絶体絶命! しかしそこで鷹音の中の“何か”が目覚め、マンティスファクターをアッサリ撃退してしまう。 そしてマンティスファクターに止めを刺そうとする鷹音の前に立ちふさがったのは、仮面ライダーマキナだった。 正気を失い、鷹音はマキナに襲いかかる。 接戦の末、リミッターを解放したマキナに敗れる鷹音。 マキナは心を痛めながらも、鷹音を連れて研究所へ帰還するのだった。 *** マシンアクセラーにて 運転しているのは、要巻奈戦闘形態こと“仮面ライダーマキナ”。 セレナコア――に宿る“AIセレナ”――は、コンソールの脇に適当に固定されている現状を気にもせずに、ウンウン唸っていた。 『う〜ん?何が…ってマスター!!?』 走り出してから1、2分ほど後、何が起きていたのかずっと考えていたセレナは、タンデムシート(と言って良いのかは微妙だが)に括り付けられた主の惨状にようやく気付き仰天する。 『姉さん、一体何があったのですか? 私がダウンする前は、右腕の欠損以外に目立った傷は無かった筈…』 「それは……」 『……………………なるほど』 「え?」 『ああ、いいです、何となく推測できました。 マスターの抱えている問題は一応私も聞いていましたから。 姉さんが止めてくれたんじゃないですか?』 先程まで唸っていた癖に、口籠もるマキナを見て妙な洞察力を発揮して一人(?)納得するセレナ。 「え…いや…でも…」 『無問題ですよ。暴走したマスターを放置したら、どんな被害が出ていたか判りませんし、駄々っ子はお仕置きして言うこと聞かせる物ですよ』 「でも、私は鷹音ちゃんにあんなに傷を…」 『いや、マスターのダメージの殆どは、自業自得でしょう。 そうで無い物も、あの変態カマキリとナノマシンの暴走に依る物だと思いますよ? よく分かりませんが』 「それは…そうかも知れませんが…」 『絶対そうです。 全く、姉さんはマスターに対しての考え方が一々後ろ向きでなんですよ。 他じゃそんな事無いのに…』 「後ろ向き?」 『ええ、後ろ向き、ネガティブ、加害妄想、自信欠乏症、外弁慶、それが姉さんです』 「ひ、酷い…」 『いーえ!姉さんは見てるこっちが苛つく位自信が足りません。 “やってしまった…”じゃなくて“やったぜ、オッシャー!!”位の方が見ていて気持ちが良いですよ!』 「そ、それは自信過剰すぎるような…」 『普通の人がしたら確かにそうでしょう…。 ですが、姉さんはこれくらいやってようやく少しダメな位です!』 「だ、ダメって…」 『え〜え〜、ダメです、ダメロボです』 「だ、ダメロボ…」 『きっと何か失敗したと思う度に、部屋の隅で緩衝材のプチプチを一晩中潰し続けるタイプですね』 「そんな事しません…」 『とにかく!これからは嘘でも良いからもっと自信を持つこと、良いですか?』 「ぜ、善処します」 『ふむ、よろしい!』 軽く凹んでいる姉に、妙に偉そうな態度で言葉を切るセレナ。 「……」 『……』 しばらく両方とも無言で、ただバイクの駆動音だけが静かに響く。 マキナの格好が格好なので、道行く人達の奇異の視線を集めたりしていたが、生憎とそんな事を気にする様な神経はマキナもセレナも持ち合わせていない。 そんな事を気にするであろう少女は、幸か不幸か、未だギミックコンテナ(シートモード)で眠ったままだ。 「……フフ」 『?』 突然マキナが小さくクスクスと笑い出した。 『…何かおかしかったですか?』 「ああ、いえ、ごめんなさい。 ただ、最近私って気遣われてばかりだな、って思って」 言葉の内容とは裏腹に、その笑みは自嘲の笑みという訳では無さそうだ。 『気を遣った覚えはありませんが?』 「フフ…」 『な、何笑ってるんですか!?』 再び笑い出した姉に、セレナは焦った様な照れた様な声で抗議する。 「いえいえ、何でもありませんよ。 ただ、私は気を遣われたと思った、それで良いじゃないですか」 『…何か最後の方で結論が飛躍していませんか?』 「気のせいですよ!フフフ…」 『………』 笑みを崩さない姉の態度に、憮然として黙り込むセレナ。 そんな妹の気持ちを知ってか知らずか、“仮面ライダーマキナ”こと“要巻奈”は、変わらぬペースと精度で、バイクを操作している。 だが、その心は先程までと比べて、本の少しだけ軽くなっている様な気がした。 *** 時は少し遡り、事件現場から少し離れた公園 「おーい、伸くーん!」 公園の敷地内に入ってきた少女の声に反応して、脇の茂みが“ガサガサ”と揺れ、中から茶色の大柄な影が“ぬっ”と現れた。 茶色の影は、大まかには人型をしているが、明らかに普通の人間ではなかった。 頭部からは一対の角が生えその片方は中程から折れている。 顔は前後に長く、体を覆う様に毛が生え、全体の印象は鹿っぽい。 「はい!これ」 「ありがとう…。ちょっと待ってて」 その姿を見ても少女は驚かず、手に持っていた紙袋を手渡した。 それを受け取った鹿男=ディアーファクターは、割と若い男の声で答えて、そそくさと敷地内に設置された公衆便所(男子)に駆け込む。 それから二分程して 「お待たせ…」 公衆便所(男子)から出てきたのは、ディアーファクターではなく、青いジャージを着た大学生位の青年=鹿山伸一だった。 そんな青年に少女=泊優華(とまりゆうか)は近付くと、青年のあちこちをぺたぺたと触る。 触られて居た伸一は、顔を赤くして優華に問いかけた。 「な、何かな?」 「ん〜?……うん、いつもの伸君だ! ………って、あ!ご、ゴメンね、いきなり無遠慮に触っちゃって…」 伸一の声を無視してしばらく触り続けていた優華は、やがて満足したのかニッコリ笑って彼の両肩を叩いて触るのを止めた。 だが、そこで恥ずかしくなったのか、彼女自身も顔を赤くして俯きながら謝り出す。 「い、良いよ!ジャージ買ってきて貰っちゃったし、気にしてない…と言うかむしろ嬉しかったというか…」 「?……〜〜〜!」 伸一も赤い顔のままフォローするが、それを聞いて優華はますます顔を赤くする。 二人とも顔を赤くして俯いたまま固まってしまった。 簡単に状況を説明すると、仮面ライダーセレナに助けられ、マンティスファクターから逃げてこの公園に辿り着いた二人は、キメラが変身すると服が破れると言うことにようやく気付く。 そこで戦闘態ではうかつに買い物に行けない(かと言って変身を解いたら全裸だし)伸一が優華に財布を渡して(伸一達の荷物は、優華がちゃっかり回収していた)、そのお金で適当に服を調達するという話になったのである。 そうして近くに有ったスポーツ用品店でジャージを買い、シーンの冒頭に至る、と言う訳だ。 「……」 「……」 「…………あのさ」 「ん?」 しばらく続いた沈黙を最初に破ったのは伸一の方だった。 「ごめん」 「え…何が?」 いきなり謝られた優華は、訳が分からず聞き返してしまう。 「えっと…さ、僕ってその…キメラだからさ…」 「それが?」 「え…そ、“それが?”って聞き返されるとアレなんだけれども…。 えっと…僕が恐くないの?」 「でも、伸君は伸君でしょ?」 優華としては、ますます訳が分からない。 キメラだったから何だというのか。 いきなり変身して襲いかかってきたならともかく、伸一は自分を助けようとしてくれた。 確かに初見ではビビったが、それだけだ。 一方の伸一の方は、思い切って言ってみた事に対しての優華の反応が予想外だったせいで、見事に肩透かしを食らい、言葉が継げないでいる。 「……いや、もっと他にあるでしょ!? “化け物”とか“怪物”とか“けだもの”とか“変質者”とか」 「え…?えっと…貴方、伸君じゃないの?」 「いや、確かに僕は伸一だけれども…」 「じゃあ、それで良いでしょ?」 「………」 「あ、でも!」 「!」 今度こそ来るか!と、伸一は身構える。 「黙ってたのは納得行かないかな」 「え、そっち!?」 「へ?他に何か有るの?」 「えぇ〜…無い…のか?」 「無いよ!」 「わ、分かったよ…」 「……全く、今まで黙ってるなんて伸君、私の事信用してくれてなかったの?」 「ゔ…ごめんなさい…」 そう言われると言い返せない。 確かに自分の行為は、“キメラであった”と言う事を除いても、自分が優華を信用していなかったと言うのに等しいからだ。 再び黙り込む。 最早どう答えて良いのか、伸一には判らなかった。 伸一の常識では、キメラは一般人から排斥される存在であり、無条件で嫌われる物だ。 それが、自分の想定していない方向から攻められ、どうして良いのか思考が追いつかない。 その“常識”が全く通用しないことに、彼は戸惑っていた。 「…………あのさ」 「ん?」 自分はどうするべきなのか迷っていると、優華の声にその思考を中断される。 「私の方こそ、ごめん」 「は?」 自分は何か謝られる様なことをされたのか、訳が分からず新たな思考のスパイラルに沈みそうになった所で、優華が言葉を続けた。 「あの時、伸君があのキメラに斬られそうになった時、私、思わず伸君の前に出ちゃったけど、あの時の伸君――」 “困ってたよね”と、優華は力無く微笑む。 「私が前に出ちゃったから、伸君はどう動いたら良いのか判らなく成っちゃったんでしょ? 私が居なきゃ、避けられる可能性もあったのに…」 「そんな事!……」 “無い”とは言いきれなかった。 確かにあの時、優華が割り込まなければ、傷が開くのを覚悟で避けられる目算はあった、少なくとも可能性は有ると思っていた。 それを“ダメにされた”と全く思わなかったかというと、そうは言い切れなかった。 だが――― 「…確かに優華さんが来なければ、って思わなかった訳じゃ無い」 「……」 優華がビクッと震えるが、覚悟はしていたのだろう、泣きも俯きもしなかった。 そんな優華を見て、伸一は一度深呼吸をする。 「でも、あの時優華さんが割り込んでアイツの気を引いてくれたからあの人が間に合って僕も優華さんも助かったんだ。 優華さんはダメになんかして無い」 「伸君…」 そう、避けられる可能性があったとは言え、それは所詮“可能性”でしかない、満足に動けなかったあの状況では、首と胴が泣き別れに成っていた可能性の方が高かった。 だが、優華があの時割り込んで啖呵を切った事でマンティスファクターの攻撃が数十秒遅れた。 だからこそ、二人がやられる前にあの白いヒーロー…仮面ライダーセレナと名乗った少女の一撃が間に合ったのだ。 “自分では勝てなかった”脅威に立ち向かった、あの白い“ヒーロー”が…… 「…ああ、そっか…僕がやられそうになったのも、優華さんがあんな真似をする事に成ったのも、全部僕のせいじゃないか…。 僕が弱い癖に戦おうとしたから…」 「ちょっと伸君、何言ってるの?」 自分の大切な人が傷付けられそうになって、守ろうとして挑み、結局負けて自分自身も、その大切な人も危険に晒す。 確かに自分の介入によって、結果的に優華が救われたのは確かだ。 しかし、自分に出来たのは“ヒーロー”が来るまでの時間稼ぎでしかなかった。 そう、優華を救ったのは“自分ではない”。 「馬鹿だなぁ、僕…勝手に挑んで、勝手に負けて…。 ヒーローにでも成ったつもりだったのかな、あははは…」 「……」 分不相応にも敵に挑んだ馬鹿な怪物は、もっと強い怪物にアッサリ負けて、“本物の”ヒーローがその怪物を倒す。 いっそあの時死んでしまっていれば、自分がヒーロー気取りの馬鹿な怪物だと、道化でしかなかったと気付かずにいられたのかも知れない。 分かっているのだ、自分の行動が間接的にでも優華を救ったのなら、それで満足するべきなのだと、怪物に過ぎない自分でも、恋人を救う一助に成れたのなら、それは素晴らしいなの事だと。 だからこんな感情は持つべきじゃないのだと。 (そんな事分かってるんだ…!) …子供の頃、キメラも仮面ライダーもまだ居なかった昔、ヒーローも怪人もテレビの中のフィクションに過ぎなかった頃、自分がそれをフィクションだとまだ知らなかった頃。 伸一や周りの男子達はそんなテレビの中のヒーローに憧れていた。 どんな悪にも決して屈せず、ピンチも覆し、何度負けても最後には必ず勝利を掴む。 人を、町を、世界を守る、不屈のヒーローに。 大きくなったらそんなヒーローに成って、みんなを守るのだと、息巻いていた様な気がする。 やがて成長し、テレビのヒーローがフィクションだと知って、世界を守る英雄譚は夢物語に過ぎないと理解して、周りの同年代の連中と同じく、そんな思いも忘れ去っていった。 だがある時、E・V(悪の組織)が現れ、キメラ(敵)が現れ、更にそれに対抗して仮面ライダー(ヒーロー)が現れた時、思いは蘇り、また、喜びもした。 小さな頃の夢物語(フィクション)が現実(リアル)に成ったのだ。 その事を純粋に喜びもしたが、それ以上に自分もヒーローに成れるかも知れない事が多くを占めていた。 勿論それは飽くまで可能性、その手の組織に何の繋がりも無い自分が、仮面ライダーに成れるはずもない事も、伸一は十分承知していた。 だが、ひょっとしたら、数千、数万分の一の確率で、自分にそう言う“縁”が出来るかも知れない、そんな考えは心の何処かに存在していた。 だが実際には、伸一はE・Vのテロを装った集団誘拐に巻き込まれ、彼等の尖兵に、“悪の怪人”にされてしまった。 紆余曲折を経て、何とか人格は戻った物の、体まではそうは行かない。 親は自分の生存を喜んでくれたが、周囲が何と言おうとその事実は彼自身に重くのしかる。 だから伸一はキメラとしての自分を封印して、その事から逃げ出したのだ。 そうして二年以上を過ごし、大学に進学し、恋人も出来て、それなりに充実した人生を送ってきたはずだった。 だが、最近キメラの集団があちこちで活動を開始して、伸一も自分がキメラだと言う事を意識しない訳には行かなくなる。 その状態で今日の事件だ。 守りたい人一人すらまともに守り抜けなかった。 自分は――何も出来はしなかった。 (そんなの意志を取り戻したあの日から判り切ってた事じゃないか。 僕は正義の味方じゃない、悪の怪人、只のヤラレ役だって事は…) 何も分かってなかった幼い頃の夢は、いつしか毒となって潜み、それは本物のヒーローと出合った事で一気に弾け、伸一を蝕んでいた。 「ねぇ、伸君」 「(こんな力でも正しく使えば大丈夫、なんて下らない考えだったのかな)………」 その毒に侵された思考で伸一は考える。 ネガティブスパイラルに沈んでいるのと、滲みそうに成る涙を堪えるのに必死で、優華の声は伸一の耳に届かない。 「伸くーん?」 「(その力を使ってこのザマだよ…)………」 正義が成せねばヒーローには成れない、力がなければ正義は成せない。 正義のない力は害悪でしかないが、逆に力の伴わない正義は何の役にも立たない。 「しーんくーん!」 「(正義か悪かじゃない、それ以前の問題じゃないか)………」 だが、それだけが今の気持ちの原因だと納得するには何処か足りなかった。 沈んだ思考で自分の気持ちを分析していくと、伸一は有る結論に辿り着く。 この件は、激しく伸一の心を苛んだ。 確かに負けた事も理由ではあるが、それ以上に彼の心を切り刻んだのは、自分達を救ったあの少女の背中だった。 逃げながらあの姿を見た時、伸一は少女の姿に幼い頃憧れたヒーローを強く意識してしまった。 そして自分が毎週登場して20分前後で爆死していた、ヤラレ役の怪人と同程度の存在に過ぎないと。 「し・ん・く・ん!」 「(ああ、そうか…僕、正義がどうとかヒーローがどうとか以上に、あの女の子に嫉妬してるんだ…)………」 自分が情けない怪人にされてしまったのに、自分より小さな女の子が仮面ライダーに変身して戦っている。 そして自分のしたかった事を代わりにしてしまった。 ソレがどうしようも無く妬ましかったのだ。 「ちょっと!伸君ってば!!」 「(情けない、最低だ…)…………はぁ」 「“ぷちっ”」 要は情けない嫉妬だ。 もっと自分の存在意義とかの深い悩みだと思っていたのに、優華に正体を知られた事を除けば、ソレが一番の原因だった。 守れなかったその事以上に、自分を、優華を守られてしまった事がどうしようも無く妬ましかったのだ。 伸一が自分の思いの外の浅ましさと醜さにとことん打ちのめされて溜息をつくと、ふと前方から何かが切れる様な音が聞こえた(気がした)。 「ん?」 「人の話をォ―――――」 見ると優華がスカートが捲れるのも気にせず、右足を大きく後に振り上げていた。 そう、“これから思い切り蹴るぞ!”と言わんばかりに。 そしてその足が振り子の様に思いきり前に降られ、爪先が真正面斜め下方向から伸一に襲いかかり… 「へ?なn「聞けえェ―――――!!!!」」 “ごみゅっっっ!!!” 「ぺぷしっ!?!?!?!?!?!?」 微妙に柔らかい、何か致命的っぽい物に命中した。 脳裏で弾ける火花、詰まる呼吸、下半身は全体が麻痺したかの様に感覚がない。 「お!!あ!?…!、?、!、!、!、?」 「“ふしーっ”」 構えて息を吐く優華の前で、伸一は股間を押さえながら悶絶してゴロゴロと地面を転がり回る。 男にしか分かるまいこの痛み、いっそ死んでしまいたかった(割と切実に)。 と言うかちょっと走馬燈が見えた。 只一つ分かった事は、“この部分”はキメラにされても弱点のままだと言う事だった。 「ゆ、ゆうかしゃん…こ、れ…は一体…どう言う仕打ちで……ござんス…か?」 やがて喋れる程度に痛みが落ち着くと、地面に倒れたまま、涙浮かべた双眸で優華を見た。 悩んでいた所に強烈な痛みを食らったせいか、キャラが崩れているが気にしない。 「だ、だって…伸君私の事無視するんだもん…」 気まずそうに目を逸らしながら両人差し指を突き合わせてぼそぼそと返答する優華。 その姿は可愛らしくもあったが、直前にされた事を思うと素直にそう感じられない。 「…ごめんなさい」 「ううん、こっちこそ」 お互いに謝るが、その場に何とも言えない微妙な空気が漂い出す。 伸一にしてみれば今日という日は、今まで割と大人しい印象を持っていた優華が、戦いに割り込むほどアグレッシブで、無視されたからと言っていきなり(と言う訳でもない気もするが…)股間を思い切り蹴るようなバイオレンスな一面も知ってしまい、正に青天の霹靂、これからの付き合いに色々影響を及ぼしそうな日だった。 その事も手伝い、伸一からは声を掛けづらい事極まりない。 おまけに状況的には、恥じらう少女の前で股間を押さえて倒れて居る男と言う、何があったか分からなそうで微妙に分かりそうな気もする、シュールと言え無くも無い絵面だ。 少なくとも全うな対話をしている様には見えまい。 「…はぁ…それで、どうしたの?優華さん」 流石キメラなだけ有って、回復は早い。 多少の違和感を感じる程度にまで回復した伸一は立ち上がり、溜息をつくと意を決して優華に話し掛ける事にした。 すると優華の方も、おずおずと答え始める。 「あ、あのね、ひょっとして伸君、“あの子”に助けられた事気にしてるの?」 「……何でそう思ったの?」 「さっき伸君が“ヒーローにでも〜”って言ってたのと……私も同じだったから」 「優華さんが?」 「うん、私、さっき伸君を困らせちゃった、って言ったよね」 「ああ」 「本当は、私も伸君の前に立った時、“私が伸君を守るんだ〜”ってちょっとヒーロー気取ってたの。 そうじゃなきゃ、ヒロインかな?」 「……」 伸一にとって、優華の話は少し意外だった。 そう言う趣味は“男の子”だけの物だと思っていたからだ。 そんな伸一を前に、優華の話は続く。 「だからね、あの子が私達を助けた時、ホッとしただけじゃなくて、“私が伸君を守るはずだったのに”って少し恨んじゃってた」 「そうなんだ…」 これまた意外な話だった。 自分の様に及ばずとも“力”を持っているならともかく、優華の様な純正の一般人が自分と同じような感情を抱くとは。 そんな伸一の思考は、優華の“それにね”と言う言葉に遮られる。 「伸君は、私が居なくても助かってたかも知れない」 「…」 「でも、私は伸君が助けてくれなかったらどうしようも無かった」 「……」 「だからね、私にとって、あのカマキリに立ち向かう伸君の姿が、あの仮面ライダーの人以上の… ……ヒーローに見えたんだよ」 「!」 その言葉に伸一は頭をガツンと殴られた様な衝撃を感じた。 「僕、が…ヒーロー……?」 「そうだよ」 「だけど! 僕は結局優華さんを…「ストップ!」っ」 “危険に晒した”と続けようとした所を優華の声に遮られる。 「アレは私が勝手にやった事。 伸君を見捨てていれば、私は逃げ切れた。 伸君は私をしっかり守ってくれたよ。 私が自分の意志でまた危険に飛び込んだ、だからアレは伸君の責任じゃない、それだけ」 「そんな…」 “どんな形で有れ、伸一は優華を守った”詰まる所そう言う事だ。 先程まで心の中で何度も納得しようとして出来なかった事が、優華に言われただけ不思議と大した抵抗無く胸に入り込んで来る。 「それでも納得出来ないなら、余計なお世話かも知れないけど何度でも言ってあげる。 伸君は私の“ヒーロー”だって」 「! っ……ぁ…」 その言葉に伸一は先程と同じような衝撃を感じる。 と同時に目頭が熱くなってきた。 「誰も認めなくても、伸君自身すら認めなくても、私だけは伸君がヒーローだって思い続けるよ。 …なーんて、私なんかが言っても大して嬉しくないかもだけど」 「う…ぅぅ……」 「って伸君!?」 もう普通にしているのも限界だった。 伸一は最早俯いて涙を堪えるので精一杯だった。 「く…うぅぅ……」 「うわわわ、ちょっと伸君大丈夫!? 私何か悪い事言った!!?」 「うぅ…大丈夫、だから…」 そんな伸一見て優華はしばらく慌てふためくと… 「えーと、えーと……ん」 何を思ったか、俯いたままの伸一の頭を撫で始めた。 「………」 「………」 伸一もソレを黙って甘受している。 不思議な気分だった。 つい先程まで、自分は中途半端な力しか持たない、役立たずだと思っていた。 改造されて三年弱、伸一は常にキメラとしての自分を蔑み、目を逸らして来た。 洗脳されていた時の記憶が時折蘇り、その度に再認識してしまうのだ。 自分という存在は、醜く薄汚れ、自分の力は、誰かを傷付けることしか出来ないのだと。 それでも思わず優華を助ける為に変身した時、こんな力でも出来る事はあるのではないかと思っていた。 結果、力及ばず敗北し、その気持ちも折れたと思っていた。 だが、それらも優華がヒーローだと言ってくれた事で殆ど吹き飛んでしまった。 我ながら現金だと思う、子供っぽいとも思う。 そもそもいい歳こいて、ヒーローと言われて喜ぶなんて、最早“痛い子”と言われても仕方がないだろう。 だが、それでも伸一は、優華が認めてくれた事少しだけ変わった。 コンプレックスが消えた訳じゃ無い、強くなった訳でもなければ、キメラである事を胸を張って言える様になった訳でもない。 キメラになんて成りたくなかったと言う気持ちも変わっていない。 それでもほんの少し――全てを否定していた時よりは少しだけ――キメラとしての自分も悪くない、そう思えた。 撫で続ける優華と、黙って撫でられ続ける伸一。 結局二人は、通りがかった警官に職務質問されるまで、そのままだった。 余談だが、伸一達はその後、戦闘態への無断変身と今回の事件に関しての事情聴取の為、署まで連行されました。 *** 更に時は遡り、スーパー土方フードコートにて 「行っちゃったね…」 「そうだな…」 用事が出来たと鷹音が出て行ったフードコートで、柚乃と灰斗は残ったドリンクを飲みながらボンヤリしていた。 鷹音が去って、二人とも何だか手持ちぶさたになり、気が抜けてしまっていた。 「“ガリガリガリ”帰ろっか」 「“ボリボリボリ”ああ…」 やがて氷まで食べ尽くした二人は、揃って椅子から立ち上がるとドリンクの容器をゴミ箱に捨てて、外に出る。 「んん〜〜!明日からとうとう夏休みかぁー」 二人で連れ立って歩いていると、日差しを浴びて伸びをしながら、柚乃がそんな事を口にし出す。 「夏休み…か」 「ん? どったの?」 喜んでいる様には見えない灰斗に、柚乃は問いかける。 「んあ? ああ、考えてみたらこれがキメラになってから初めてのちゃんとした夏休みなんだなと思ってさ」 「初めて? えーと、E・Vが壊滅したのは二年半前だよね。 去年は?」 「去年は色々とゴタゴタが有ってさ、まともに休めなかったんだ」 「へぇー、やっぱりその体絡み?」 「まーな…」 憂鬱そうに答えるその顔に、柚乃は“あんま突っ込まない方が良いかな”と考え、話題を切り替える事にした。 「じゃあ、夏休みの過ごし方を忘れちゃって困ってる…とか?」 「そうだな、操られてた分も含めて四年近くブランクがあるしな…。 正直、どう過ごすべきか分からん」 「ふ〜む、それは気の毒に…」 「まぁ、思い当たる事と言えば、“バイト”と積んでるゲームを消化することくらいか」 「うへぇ、引きこもりって訳かね。 もっと外に出んかい!」 「“バイト”で呼ばれりゃ出るさ」 「もっと買い物とか旅行とかさ…」 「うーん、そう言うのよく分からないからなぁ……」 「このもやしっ子が!!」 「おわ!?」 「いや、ごめん、言ってみただけ」 「あ、ああ…」 普通に話していたと思ったらいきなり叫びだした柚乃に、灰斗も驚くが、直ぐに真顔で誤魔化されて納得してしまう。 「よし!!」 「な、何だぁ!?」 落ち着いたと思ったら直ぐまた大声を出す柚乃に、灰斗も再び驚いた。 「今度一緒に遊びに行こう!」 「はぁ?いきなり何w「よし決まり!!」おいィ!?」 「とは言え鷹ちゃんはアレで結構人見知りするし、あまり人数は…」 「なあ」 「何さ?」 「遊びにって何するんだ?」 「まだ未定、海行くかも知れないし、ハイキングかも知れない」 「そうか…」 「取り敢えずは身近な人で固めるつもりだよ。 あんま大勢で行くのは鷹ちゃん的にハードルが高いからね」 「アイツ…そんなタマなのか?」 「うん、最近まで自覚してなかったらしいけど、鷹ちゃん、内弁慶のケがあるからね」 「内弁慶…」 「ま、そんなんだからさ、鷹ちゃんが自分から友達作るのって結構珍しいんだよね」 つまりは自分の事か、灰斗はそう思った。 「だからさ、鷹ちゃんが獅堂君に自分から声を掛けようとしたのはちょっと驚いたし、それを受けてくれた獅堂君にも感謝してるんだよね」 「いや、別に…」 「ありがと!」 「………どういたしまして」 灰斗は否定しようとするも、押し切られる様に礼を言われ、観念したかの様に、そっぽを向く。 柚乃はその耳が少し赤くなっている事に気付くが、敢えて黙っておく事にした。 「そういや獅堂君」 「何だよ」 「獅堂君って全体的に成績がアレだけどさ」 「うるせー」 「政治経済だけはかなり良かったよね」 「そうか?」 「そうだよ、98点なんて私取った事無いもん」 「うーん、仕事柄、かなり勉強したからなぁ」 「仕事?そう言えば獅堂君、さっきもバイトがどうとか言ってたよね。 何かしてんの?」 「ん?ああ、少し…な」 「ふーん、忙しいの?」 「いや、時々依頼されてそれをこなすって感じだから、時間は作りやすいぞ」 「何それ、探偵の助手か何か?」 「ははは、そんな感じだ」 「へぇ〜」 柚乃は、探偵が何で政治経済の勉強するのかイマイチ頭の中で結びつかなかったが、きっと答えてくれないだろうと判断して置いておく事にする。 別に御旗高校ではバイト禁止されてないし。 そうこうしている内に、二人の道が分かれる三叉路に着く。 「じゃ、やる事とか大体決まったら連絡するよ」 「了解だ」 そうしてそれぞれの方向に歩き始める二人だったが、柚乃は何かを思い出したかの様に足を止める。 「ねぇ、獅堂君」 「ん? 何だ」 呼び止められ、灰斗は振り向いた。 「一つ忠告」 「忠告?」 「うん、“夜の弁当売り場には気を付けろ”」 「はぁ? べ、弁当?」 何のことだかさっぱり分からず、灰斗は首を傾げるしかない。 「それってd「じゃね、御武運を〜!」あ、おい!」 意味を問い質そうとする前に、柚乃は一度サムズアップをすると、さっさと振り返り走って行ってしまった。 その場に取り残される灰斗。 「…………(まぁ、今気にしても仕方がない)」 そう割り切ると、踵を返し、家路に着いた。 ふと空を見上げると、雲の合間から覗く夏の太陽が灰斗を照らしている。 「夏休み……か」 何となく声に出して反芻してみる。 空を見上げるその表情は、楽しげだが、何処か寂しそうでもある。 その左手は、右手首のリストバンドに触れていた。 「しかし、弁当がどうしたってんだ?」 *** その夜、マキナ達は既に研究所に帰ってきており、鷹音は右腕の縫合と全身の治療を、巻奈はFDモードのせいで各部のパーツが損耗し掛かっていた為、フルメンテナンスを受け、セレナはAIコアを代替の筐体に組み込まれ、“セレナコア”本体の修理が行われていた。 そんな要研究所中央作業室では、所長である健一郎が、セレナが入った携帯ゲーム機みたいな筐体と何本ものコードで接続されたコンピュータで作業をしていた。 「『(* ̄ー ̄)y-~~』さーてと、データのサルベージはこんなモンかな」 『おや、ようやく終わりですか』 「『ヽ(=´Д`=)ノ』ああ、ご苦労さん。 この分ならリミッターも上手く設定出来そうだ」 『それは重畳です』 作業を終えた健一郎は、P○Pそっくりな筐体から出る“セレナ”の声に応えながらコードを外して行く。 因みにこの筐体、変身機構こそ無いが、その他の機能は殆ど完備している為、セレナとしては余り、と言うか全く不自由していなかったりする。 そうしてコードを全て外し終わった所で、突然ブザーが鳴り響く。 それを聞いた健一郎は、慌てず今まで作業していたコンピュータを操作する。 すると、コンピュータのモニターに、真っ黒な背景に赤い文字で“ONLINE…06 SOUND ONLY”と表示されたポップアップが開いた。 「『お待た』はいはい」 『所長、赤坂鷹音への処置が完了しました』 鷹音の処置の監督をしていた女性所員の声だ。 「『(^o^)』ん、ゴクローさん。それで、今の状態は?」 『一応異常無し…いや、むしろ非常に異常有り?……』 「『? ?』どうしたのさ?」 『えーと、その、とても口では言いにくいんですが…。言わなきゃダメですか?』 その歯切れの悪さはあからさまに怪しかった。 健一郎が訝しんでいると 『取り敢えず見て貰った方が早いと思うので、映像も繋ぎます』 「『 了 』分かったよ」 再びコンピュータを操作すると、先程のポップアップウィンドウにテレビの様な砂嵐が映る。 『では、繋ぎます』 その言葉と共に、砂嵐が消え、ハッキリとした映像が映し出された。 幾つもの医療機械が置かれた部屋の真ん中に、手術台の様な台がある。 ココまでは普通だ。 「『!驚?』んん!?」 『え?』 だが、その台の上と周りには、金属片の様な物が散乱しており、その中央に寝かされていたのは健一郎もセレナもよく知る銀髪の少女赤坂鷹音。 「『・A・』マジかよ…」 『え? こう言うのってアリなんですか?』 ただし、その背丈は小学校低学年位にまで縮んでいた。 「『なんで…?』」 ソレを見たセレナと健一郎は、声をハモらせ途方に暮れた。 Go to NEXT STAGE→ |
@PF
2009年07月04日(土) 19時44分51秒 公開 ■この作品の著作権は@PFさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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