仮面ライダー珀羅 『翡翠の鬼と風の天狗《後編》』


子供の頃は夜になるとよく父さんの所へ星を眺めにいった・・・


「お前は星が好きか・・・・?」
「うん、父さんは?」
「そうだな、美しい星を眺めるのは私も好きだ・・・・・・・・」

その森から見上げるのは黒い絨毯(じゅうたん)いっぱいに宝石を散りばめたような・・・・そんな綺麗な空だった。

その日、父さんは静かに俺に言った。

「・・・濠、お前に話しておかなければならないことがある・・・・・・・」

父さんは昔のことを・・・人間を守るために羅喉という凶星と戦ったこと、一部の神の裏切りで世界の敵になったこと、永い時を経て母さん達に救ってもらったこと、羅喉が人界を見守ると決めたこと、その全てを俺に話してくれた。

そんな話を聞かされて俺も最初驚きはした。
だが、すぐに受け止められたのは俺の中にも父さんと同じ血が流れているからだろう。

「計都・・・・」

その名前が出てきたのは話の最後の方だった。

「羅喉と共に降りて来たもう一つの凶星だ。」

父さんが計都を見たのはそれが最初に地上に降りてきた時だけ、それから先はただの一度も姿を現していないらしい。
それがいったい何なのか、父さんにも分かっていなかった。
ただ言えるのは羅喉とは違う凶星がまだどこかにいるかもしれないということだ。

「皆を守らねばならない私にはもう力が残されていない。私にはこの手が届く僅かな所までしか誰かを守ることが出来ない・・・・・しかし濠、お前は・・・・」


「お前の救いたい者を救い、守りたい者達を守れ・・・!」





「ん、ぅ・・・・・・・・」

ぱちっ

鴉美「あれ・・・・・ここは・・・・」
恭也「オレん家だ。濠のやつも一緒に住んでるんだぜ。」

鴉美が目を覚ますとそこには知らない天井があってすぐ横には先ほど知り合った少年が座っていた。
ここは恭也の家『雷鳴堂』の客間だ。
部屋の真ん中に布団を敷き、鴉美はそこで寝かされていた。

恭也「大丈夫か?こっぴどくやられたようだけど・・・」
鴉美「起き上がれないほどではありません。確か恭也さんでしたね、何故私はここに・・・?」
恭也「あんたが土の化け物にボコられた後気絶しちまってたんでオレと濠・・・・主にオレがおぶって来てやったんだよ。」
鴉美「そうだったんですか・・・」

背中で語らずそれを口に出しちゃう、自分に正直なのが恭也という少年だった。

恭也「あー、でも悪ぃな・・・・」
鴉美「え、何がです?」
恭也「いや・・もうちょい早く着いてりゃ・・・・」
鴉美「ぁ・・・い、いえ!その・・・・ありがとうございます・・」

正義を重んじ、常に真っ直ぐな生き方を信条とする鴉美という少女は他人の厚意とか親切というものが本当に嬉しかった。

恭也「まぁ、気にすんな。オレ運んだだけだし・・・・(´∀`)」

当然、率先しておんぶしてきたのは背中に当たる天然桃のやふとももの感触を楽しむ為ではない・・・・はずがない!(ぉ
思い出しながら少しニヤニヤしてるのがどうも情けない恭也だった。

鴉美「でもアイツはどうしたんです?襲われませんでしたか?」
恭也「んー、あいつか?濠が変神していざ尋常に勝負〜って時に逃げられちまったぜ?」

そうこうしているうちに外に偵察に出ていた濠が戻ってきた。


恭也「お帰り&お疲れさんっ。」
濠「あぁ・・・周辺は大丈夫そうだったが念のため家の周りに結界を張っておいた。・・・・目が覚めたようだな。」
鴉美「あなた、戦う力を持ってたんですね・・・」
濠「あぁ、故あってここの土地神と契約している。」
鴉美「ええっ!?あの白澤様とですか!?」

濠はあっさりしているが白澤は土地神の中でも八神の獬豸(カイチ)と並んで称される重鎮だ。
(カイチはもう土地神を空狐に譲り渡しているが)
一下っ端天狗の鴉美は相当驚いたようだった。

濠「話してくれないか、天狗達の間で何が起きたんだ?」
鴉美「・・・あなた達ならお話しても大丈夫みたいですね。」


鴉美「ほんの数日前から大天狗様を始めとする仲間の様子がおかしくなりました。普段はみんな穏やかで争いを好まないんですが・・・・急に気性が激しくなって人間を追い出してこの土地を乗っ取ろうと言い出したんです。」
恭也「土地なんかぶんどってどうするんだ?」
濠「おそらく狙いは龍脈だろうな・・・」

龍脈というのは地下を流れる霊気の通り道で、そのエネルギーは森羅万象の生命の源と言われている。
十数年前に八神で起きた凶星との最終決戦は黄龍が召喚されたことで羅喉は星の意思を理解し、戦いは終結した。
だが龍脈を司る黄龍を呼び出したことで様々な問題も発生していた。
代表的なのは完全に納まりきれず地上に残ったままの膨大な霊力に中てられ、一部の妖怪などが凶暴化したことや
今まで地中深くまで沈み込んでいた龍脈の一部が地表近くまで隆起して第二の八神のような土地を作ってしまったことだ。
この町は後者にあたり濠がやってきたのもその調査のためだった。

鴉美「お願いします!私に協力してもらえませんか!?みんなを元に戻したいんです!」
濠「分かっている。異変の解決は俺の仕事だしな。」
恭也「でー、その龍脈ぶんどった後は?よその土地もぶんどりに行くとか・・・・?」
濠「そんなことをすれば大きな混乱になる。人間だけでなく他の妖怪や神とも戦うことになるぞ。」
鴉美「ええ、だから私はこの団扇を持ち出したんです。」

確かに天狗の切り札とも言える風神の団扇は大きな力を秘めている。
逆にそれを失いさえすれば天狗は迂闊に動けなくなるはずだった。



恭也「だいたいの話は分かったぜ。とりあえず天狗達がおかしくなった原因探さないとな。」
鴉美「恐らくアイツのせいです。戦ってたときも私に『妖魔の中にも吾を拒むものが』とか言ってましたし、間違いないかと。」
恭也「そういや何で鴉美だけ取り憑かれねぇんだ?元から変な奴にはかからないとか?」
鴉美「私は変じゃありませし、あなたにだけは絶対言われたくありませんっ!」

恭也の言葉に猛反論する鴉美。
変な奴呼ばわりされるのは乙女のプライドが許さないらしい。

鴉美「・・・多分私が純粋な天狗じゃないからですかね。ハーフなんですよ。ほら、私ってちょっと他の天狗と違うでしょう?」
恭也「へー、言われてみればそうだよな。今は羽も出てねぇし丸っきし人間に見える。」
鴉美「って、そんなのはどうでもいいんです!兎にも角にもあの土の化け物をどうにかしないと!」
濠「・・・・・考えがある。少し電話をかけさせてくれ。」

濠はごそごそと携帯と取り出しどこかに電話し始めた。


トゥルルルルルルル・・・・ッ・・

濠「もしもし・・・・チー姉さんか?あぁ、俺だよ。・・・あぁ、いや・・・・こっちで少しな・・・あぁ、持ってきて欲しいものがあるんだ。」

鴉美「どこにかけてるんです?」
恭也「たぶん実家だろ、八神にあるアイツん家。」

察するにどうも天狗の中に入ってる者を引き剥がすのにちょうどよいアイテムがあるようだ。

濠「あぁ、それじゃたの・・・・−−『ジジジッ』−−・・む、姉さん、聞こえるか?姉さん?・・・・」
恭也「どうしたんだ?」

急に電波の繋がりが悪くなり、電話が通じなくなった。
その後家族の携帯にもかけてみるのだが一切通じることはなかった。

濠「まずいな・・・通信が遮断された。母さんにも叔父さんにも試したんだがどれも通じない・・・・どうやら町ごと結界か何かで封じられたようだ。」
鴉美「そ、それってどの程度まずいんですか!?」
濠「・・・用件は全て伝えた。この町に入るのに結界があったとしても姉さんは力尽くで破ってくるだろうから問題はないが・・・・・・」
恭・鴉「「が・・・・?」」

その微妙な言い回しに恭也と鴉美は同時に食いつく。

濠「・・・流石は天狗と言ったところか、よほど目の良い奴がいるんだろう・・・・このタイミングでの妨害、まず見られているな。」
鴉美「た、確かに・・・仲間の中には建物などを透視出来る千里眼を持つ者はいます!ここが見つかっていても不思議じゃありません!」
濠「やはりそうか・・・それならここに来るのも時間の問題だな。」
鴉美「・・・すみません、もっと早くに気付くべきでした。」
恭也「透視かー・・・なんか素晴らしい響きだな。」
鴉美「・・・あ、あのですねー・・・」

バカが一人違う所に食いついているようだ。
鴉美が引きつった顔をしていると・・・・・・・

ゴォン!ゴォン!

鴉美「っ!?」

外で何かがぶつかる鈍い音がする。
結界のおかげで家自体には損傷はないが、天狗の追っ手はすぐそこに迫って来ていた。

鴉美「ど、どうしますか?」
濠「・・・直接相手をして時間を稼ごう。恭也は家の中で待っていてくれ。」
恭也「おう、言われなくてもそのつもりだぜ。」



結界は内側からなら通り抜けられるよう細工しておいたので濠と鴉美は素早く外へ飛び出すことが出来た。

日は既に暮れていて辺りは夜の闇が支配する世界に変わっていた。
空では数十羽の天狗がこちらを見下ろしている。

スゥ・・・・・・

濠が月に手をかざすと光がその手に集まり一枚の札になってゆく。
それを腰に当てると光の帯が伸びて繋がり、ベルトのようなものを形作った。

濠「変神!」カッ!
鴉美「召嵐・・・・変神!」ブゥォォォ!

濠が翡翠色の宝石をベルトへはめ、鴉美が風神の団扇を振るうと二人に一瞬で鎧が装着される。

珀羅「ここでは家を巻き込みかねない。少し離れるぞ。」
嵐羽「了解です!」

町外れには昔から人の手の入っていないところがたくさんあり、中に入っても動き回れるような広い竹林なども数多く存在する。
二人が向かったのはやはりそのなかのひとつだった。


ビュン・・ビュン、ビュン!

珀羅「流石に速いな・・・・・」

足の速さは天下一品と謳われる天狗。
すぐに濠達に追い付き、周りを取り囲むと猛スピードで向かってくる。

「ちぇあああっ!」
珀羅「だが反応ならばこちらも負けない!」スッ
「消えた!?」
珀羅「はっ!」ドスッ!
「うっ・・・・・」

接触ギリギリのタイミングで相手を見失った天狗は目を回して一瞬ガードががら空きになる。
それを上手く利用し珀羅は天狗に一撃入れて昏倒させた。

嵐羽「はぁっ!」タンタンタン
「ぐっ・・・・・」
嵐羽「せぃっ!」タンッ!
「がぁっ!?」

こちらでも戦いは繰り広げられている。
嵐羽は軽い手刀を連続して打ち込み、天狗の防御力を削ってゆく。
最後の止めとして裏拳を叩き込みそれを戦闘不能にさせた。


珀羅「次は誰だ、自信のある奴からかかってこい!」

嵐羽「ごめんなさい、でも今は眠っててください!」

珀羅は無駄のない動きで天狗の攻撃を交わし、長く修行を積んだ天狗でさえも危なげもなく鎮圧。
嵐羽は素早い動きで相手を翻弄し、着実に無力化させてゆく。
そうやってすぐに最後の一羽を残すのみとなった。

ドスッ

「うぐぁ・・・・・・」バタッ



珀羅「とりあえず片付いたか。」
嵐羽「いいえ・・・来ます!」

ほんの数分で全ての天狗を倒し終わっても鴉美の警戒が緩むことはない。
当然、この後やって来るものを分かっているからだ。

パサァ・・・・・

倒された天狗たちから上る砂が魔人を形作ってゆく。

土《ゴウ・・・》
珀羅「話してもらうぞシャニ、お前達は・・・・計都は何をしようとしている!?」
土《・・・・・・》ジャキッ

魔人は黙ったまま武器を構えた。
話すことは何もないそう言っているかのように・・・・

珀羅「それならいい・・・お前達がどうあろうと俺が止めるだけだ!」




ずずずずずずず・・・・・・・

恭也「ふぅ・・・あいつらは大丈夫かねー・・・・」

既に濠達が出て行って数十分が経っている。
ただ一人で待つというのも退屈で何をしたらいいかわからないものだ。
(かといって付いていっても何も出来ないのだが・・・)

とりあえずと飲んでいたお茶も飲み終えてしまったので本当にすることがない・・・・

ガツーーーーーーーンッ!!

恭也「うぉぁ!?」

突然何かがぶつかるような音がして、まるで地震でも起きたかのように家が揺れる。
先程よりもだいぶ大きな衝撃だ・・・・

恭也「うわー、天狗戻って来たのか・・・どうするオレ!?ってライフカードも持ってねぇ・・」

喧嘩は弱い方ではないが、はっきり言って人外の相手を出来るほど化け物地味た体力は持ち合わせていない。
どこまでいっても恭也はそこら辺に転がってそうな男子高校生である。

ガツーーーーーーーーンッ!!!・・・・パリッ・・・・・

恭也「えー!?なんか嫌な音がしたんだけどーー!?『ガツーンッ!!』ちょっ、濠ー!!ゴぉーーー!プリーズカムバァァァアック!?」



パリィインッ・・・・・・・・・

恭也「あ。」

「お邪魔しま〜す♪」


どうやら結界が破られてしまったようだ。
玄関の戸がガラガラと開けられ、誰かが入ってくる声が聞こえる。

恭也「うわー!?どーする、どーするよオレ!?続きはウェブでとか言ってる場合じゃねー!?」

そしてとうとう部屋のドアが開けられ・・・・

「こんちゃ〜っす♪濠くん久しぶり〜♪」ひょこっ
恭也「へ?」
「およ、いないのか・・・・マカラもとばしてくれたんだけどな〜・・」

天狗かと思えば入ってきたのは恭也達よりも少し年上ぐらいの女性。
動きやすそうなTシャツにデニムのショートパンツ、茶髪のショートボブのお姉ちゃんはにっこり笑って恭也に言った。

「ねぇねぇ、そこのキミは濠くんのお友達かな?お名前なんての?」
恭也「お、大峰恭也っス。・・・えーと、お姉さんが濠んとこの?」

冢杏「そうだよ〜、ボクの名前は冢杏(チョウコウ)、呼ぶ時はチョコちゃんと可愛く呼ぶようにっ♪」



嵐羽「征嵐剣!!」サッ

嵐羽が腰から団扇を引き抜くとヤツデの葉のように分かれた鋼鉄の刃、その中央の一本が伸びて両刃の剣のになる。
空を疾走する嵐羽はシャニに斬りかかってゆく。

嵐羽「はぁっ!」
土《退け、扇を渡せば汝に用はない・・・・》
嵐羽「あなたに無くたってこっちにはあるんです!さっさと倒されてみんなから出てってください!」

ガンッガンッガンッ!

互いの武器がぶつかり合い火花を散らす。
最初はプレッシャーに押されていた鴉美も仲間を元に戻すためと気合が入ったようだ。

嵐羽「もらいます!」ザッ
土《それしきで・・・・》
嵐羽「くっ、堅いですね!」

嵐羽の一撃はスピードこそはあるものの重量感が足りず後一押しに欠けていた。
それでは二、三撃入ったところでシャニにはまったく効いていない。

珀羅「下がれ!!」

嵐羽の攻撃が通用しないとわかるや否や、すぐさま珀羅がその間合いに飛び込んでくる

土《ゴウ・・・・『シュルルル』っ!》

シャニも反応して斧を振ろうとするが、何かに絡みつかれて身動きが取れない。
それは嵐羽が操る風の糸だった。

嵐羽「今です!」

珀羅は二つのトンファーの刃先に念を集中させ完全に間合いに入り込んだ。

珀羅「念心爆砕・・・・!」
土《っ!》
珀羅「穿孔双角撃(バイコーンドライブ)!!!」ダァァンッッ!!
土《ぐぉっっ・・・っ!?》


ドガァアアアアアアアアアアアア!!!!

二つのトンファーを一点、シャニの胴体にぶつけるとそこで念が一気に膨れ上がり爆発が起こる。
シャニはその衝撃で大きく吹き飛んで行く。



嵐羽「やったんですか?」
珀羅「・・・・・・・いや、まだだ・・」

濠の視線の先にはゆらりと立ち上がる魔人の姿があった。

土《・・・・・・・》シュゥゥゥゥ

ボロボロになったシャニは微かに光を放ちながらその姿を消して行く・・・
砂に変わり再び天狗の中へ入り込もうとしているのだ。

嵐羽「みんなを隠れミノにするつもりですね!?」
珀羅「やはり奴を天狗達から引き剥がさなければ・・・−−『ヴゥンンッ』−−・・・む?」

ヴゥンンンッッ!!

珀羅「この音は・・・・・・」

響いてくるのは馴染みのある懐かしいエンジン音。
一台のバイクが竹林の向こうの方から走って来ていた。

冢杏「お〜い、濠く〜ん!」
恭也「濠ー、鴉美ー、頑張ってるかー?」

濠の父達が力を結集して作り上げた走行機龍、真空(マカラ)に乗っているのは八神から応援に来てくれた冢杏、その後ろには恭也が掴まっていた。

嵐羽「な、何で恭也さんまで・・・・」
恭也「なんかクライマックス臭がしてな。濠、しっかりやれよー!」
珀羅「分かっている。チー姉さん、“金輪”を!」
冢杏「ほいよっ♪」シュッ!

パシッ

冢杏が投げたそれを珀羅はキャッチして左腕にはめる。

珀羅「転神!!」


カァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


恭也「うぉっ、まぶしっ!?」
嵐羽「ご、濠さんの鎧が・・・・!」

翠と白を基調とした鎧が光り輝く金色に染まって行く。
頭の二本の角は左右に展開、拡張し雄々しい四本角になった。

珀羅(金)「珀羅『金剛』・・・・・!」


貔貅(ヒキュウ)の金輪、濠の母が以前力を借りていたもの
金気(ごんき)と破邪の力を操る聖なる神具だ。

珀羅(金)「はぁぁぁぁ・・・・!」ゴォォォォオ

『金剛』となった珀羅は光の波動を天狗達・・・それに取り憑いているシャニに向かって放つ。

・・・・・・・・バンッ!

土《何だと・・・!?》

すると弾き出されるように魔人は姿を現した。
再び戻ろうとしても結果は同じ・・・シャニは天狗への侵入を封じられた。

土《ゴウ・・・・!》

珀羅(金)「貔貅の力で天狗を清めた。逃げ場は塞いだぞ!終わりだ、シャニ!」
土《ならば、吾が滅びを以ってケイトゥ様が望みに足る証とせよ!》
珀羅(金)「言われなくても・・・・お前を倒す!!」

珀羅は周囲から金気を集め、手にしたトンファーを別の武器、刺又(さすまた)に作り変える。

珀羅(金)「はぁっ!」シュッ!
土《ぐっ・・・》ザクッ

珀羅はそれを投擲し魔人に突き刺した。
するとその身体はブロンズ像のように固まって行く。

珀羅(金)「鬼面嚇妖・・・・・!」

金の鬼の足に金気、そして邪を祓う聖なる覇気が集中する。
珀羅は大地を駆け出しシャニに向かって必殺の蹴りを放った。


珀羅(金)「覇皇穿掘脚(インペリアルケイブド)!!」ガァアアアアアア!!!
土《ぬぅぅぅ・・・・がぁっっっ!??!?》

ドゴォォォォォォオォオォオォオォオ!!

珀羅の足から黄金の波動が解き放たれシャニを貫いた。


土《ゴ・・・これで・・・・なん・・・じ・・は・・・》


珀羅(金)「計都が人界を乱す存在ならば、俺がお前達を調伏する。俺は・・・・・」


土《・・・・・・》サァァァァァァァァ


魔人の身体が光に変わり消えて行った・・・・



珀羅(金)「俺は阿修羅(アスラ)を継ぐ者だ!」





《ケイトゥ様・・・》

どこともわからないような不思議な世界、暗黒の中遠くの方で微かに光が瞬き合っている。
そんな空間を歩く白銀の魔人は玉座で眠っている白い衣を纏った男、“計都”に呼びかけた。

計都『ソーマ【月】か、どうした?』
月《・・・シャニが滅びました・・》
計都『・・・そうか。』

計都は無表情で何を考えているのかわからなかった。
変わりにソーマと呼ばれた魔人が言った。

月《ケイトゥ様は何故あの者を?》
計都『ゴウか・・・吾が半身ラーフ【羅喉】が認めし者、羅刹天の子・・・そして・・・』
月《・・・・戦神と名高い羅刹天では・・・・》
計都『羅刹天は既にその力のほぼ全てを失くしている。だがその子ならば・・・吾が望むに足るやもしれん。いや、その為に阿修羅の姫を転生させたのだ・・・そうでなくては。』
月《シャニを滅したとはいえ、あれしきでケイトゥ様の・・・・》
計都『奴の力はまだ目覚めていない・・・次を用意せよ。よいな。』
月《・・・・・・仰せのままに・・・・》




恭也「ふあ゛ぁぁ、よく寝た・・・・・・」

二学期最初の授業は朝から行われる化学の課外だった。
しかし大半の生徒はその授業をスルーして夏休みの課題を仕上げたり予習をしたり寝ていたりする。
熱量計算の説明をしていた担当の教師が「大学になったら〜」と今聞いてもしょうがないようなアドバイスをし出し、何故か途中からおいしいカレーの作り方を教え始めた為だ。
当然、恭也もばっちり寝て過ごした。(だいたいいつも寝ているが・・・・)

濠「・・・・・・・・」
恭也「おっ、なんだ濠も寝てたのか?」

ぱちっ

濠「いや、起きてるぞ・・・・今のは・・・」
恭也「別にいいって。少しは聞いてたけどケチャップにメープルシロップはねぇからな・・・・」
濠「だから、俺は・・・・」
恭也「はいはい・・・あー!そういやなんか今日転校生来るって!お前知ってたか!?」



恭也「っ、あぁ!?」
鴉美「転向生の蔵前鴉美です、よろしくお願いします!」キラッ☆

とびきりの営業スマイルで微笑みかけるのは天狗の少女、鴉美だった。
もちろん、翼も出していなければ高下駄も履いていないし、山伏装束でなく恭也達の学校の制服を着ていた。

「おぉー、ラッキー!可愛い子じゃん!」
「ばっか、転校生はみんな可愛いってのがお約束なんだよ!」
「どこの約束だよっ!?」
「ちょっと男子うるさい、まだあいさつの途中でしょ!?」

モブ男君、モブ子さん達がわいわいやってる中担任の先生が鴉美の紹介を軽く済ませる。
蔵前鴉美はこの町の出身だったが、父親の仕事の都合で暫く八神の学校に通っていた。
そして最近父の転勤に伴って戻ってきたという・・・とまぁ、設定はこんな感じだった(ぉ

鴉美「早く皆さんに馴染めるよう頑張ります!」



鴉美「先日はどうもお世話になりました。」

昼休みになって濠と恭也は鴉美を連れて屋上に出た。

恭也「いやー、びっくりしたぜ・・・・いきなりだもんな。」
濠「俺は今朝白澤から聞いた。」

濠の今朝のあれは脳内会議中だったようだ。


恭也「えーっと、何で?・・てか、どうやって入って来たよ?」
鴉美「ええ、実は先日のお礼をどうしようかと大天狗様と話していたらそこに白澤様がいらっしゃって『濠の手伝いをしてやってくれ』とおっしゃるので・・・」

それでどうせなら普段から近くにいた方がよいだろうと学校にまでやってきたらしい。
ちなみに出身とかその他諸々は土地神さまマジックでちょろまかしたそうだ(ぉ
苦労掛けっぱなしの相棒に少しでも楽をさせたいという白澤の配慮だった。


濠「はぁ、まったく心配性だな・・・・・ともかく、これからよろしく頼む。」

鴉美「はい!こちらこそよろしくお願いします。」

恭也「よし、お願いされた。」



こうして秋は始まりを迎えた


彼らにとって大きな変化をもたらす季節が・・・・・


再び凶星との戦いは幕を開ける・・・・


だがそれも濠の長い戦いの旅のほんの始まりに過ぎない・・・・


この先に待ち受ける運命、交錯する二つの世界の物語を・・・・


濠「・・・・・・」


異界の住人達との出会いを、彼はまだ知る由もなかった・・・・







青嵐昇華
2010年08月25日(水) 22時02分43秒 公開
■この作品の著作権は青嵐昇華さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんな感じで始めてしまうけどどうせまた長い冬眠期間に入るだろう青嵐昇華です(ぉ

このお話は『朱凰』の後、『海賊』の前の話になっています
まだ序章しかなく影も形もない状態だった霧島濠ですが・・・まぁ、それはいずれ(←いつだ)
ただ向こうの世界と関係がある(?)のはラストなので『海賊』抜きにしても普通の『朱凰』続編にはなったかと思います。


・・・・これでようやく計都さんが日の目を見ることが出来ましたw(ぉ


誤字脱字があったら申し訳ありません

この作品の感想をお寄せください。
sy0g3v Very neat blog article.Really thank you! Really Cool. -20 take a look at it! ■2013-10-25 03:23:49 46.161.41.184
KL3jjE Great post.Thanks Again. Really Cool. 30 click here ■2012-08-09 02:01:33 91.201.64.7
Thanks for the article.Much thanks again. Great. -20 Distance Education ■2012-06-13 03:39:59 91.201.64.7
Very good blog article.Really thank you! Much obliged. -20 TAFE ■2012-06-13 02:45:58 91.201.64.7
Really enjoyed this blog article.Much thanks again. Great. 30 registry cleaner cnet ■2012-05-27 06:44:04 91.201.64.7
Awesome post.Really thank you! Great. 50 top 10 antivirus programs ■2012-05-27 05:18:37 193.105.210.170
Wow, great post.Thanks Again. Great. 50 pc cleaner pro license key crack keygen ■2012-05-27 05:12:08 91.201.64.7
Im grateful for the blog.Really thank you! Will read on... -20 speed up vista shutdown ■2012-05-27 03:45:46 193.105.210.170
Im thankful for the post.Really thank you! Want more. 50 landscape design phoenix installation ■2012-05-27 03:44:44 91.201.64.7
Really appreciate you sharing this article.Really thank you! Keep writing. 50 womens plus size clothing ■2012-05-23 20:00:37 193.105.210.170
wow, awesome post.Really looking forward to read more. Will read on... -20 web proxies ■2012-05-23 16:44:30 91.201.64.7
Great, thanks for sharing this post.Thanks Again. Really Cool. -20 web proxy ■2012-05-23 16:44:25 91.201.64.7
Thank you for your blog.Really thank you! Want more. -20 Juegos en Linea ■2012-05-23 16:35:29 193.105.210.170
I value the blog post.Really looking forward to read more. Cool. 30 spanx ■2012-05-19 04:46:44 193.105.210.170
I really liked your blog post.Really thank you! Really Great. -20 monitor arm ■2012-05-19 03:28:08 193.105.210.170
Awesome blog.Really looking forward to read more. Fantastic. 50 politics ■2012-05-19 03:11:28 91.201.64.7
Im thankful for the post.Much thanks again. Will read on... -20 and Pok Fu Lam ■2012-05-18 17:37:02 193.105.210.170
Im grateful for the blog article. Really Cool. 50 wall panelling ■2012-05-18 15:43:53 91.201.64.7
I really enjoy the blog post.Really thank you! Keep writing. -20 Logo Design Services ■2012-05-18 15:43:02 193.105.210.170
I cannot thank you enough for the blog post. Great. 30 brainytools.com reviews ■2012-05-18 12:27:35 91.201.64.7
I think this is a real great blog.Much thanks again. Awesome. -20 snakegame.co ■2012-05-18 11:14:56 91.201.64.7
This is one awesome article.Much thanks again. Much obliged. 50 bubble shooter ■2012-05-18 09:57:26 91.201.64.7
Thank you ever so for you blog.Thanks Again. 50 ceiling fans doylestown PA ■2012-05-18 07:10:36 91.201.64.7
Thanks-a-mundo for the post.Thanks Again. 50 sexanzeiger ■2012-05-18 03:49:00 91.201.64.7
A big thank you for your article post.Really looking forward to read more. Great. -20 wine making equipment ■2012-05-18 02:42:06 193.105.210.170
A round of applause for your article.Much thanks again. Much obliged. -20 urlaub mit hund in noordwijk ■2012-05-18 02:40:43 91.201.64.7
Enjoyed every bit of your article post.Thanks Again. Awesome. 30 7 red casino ■2012-05-18 01:33:16 91.201.64.7
Hey, thanks for the blog.Much thanks again. Fantastic. 30 Baby Gender Prediction ■2012-05-18 01:33:14 193.105.210.170
Major thankies for the post.Thanks Again. Really Great. -20 mold testing atlanta GA ■2012-05-18 00:24:27 91.201.64.7
Say, you got a nice article post.Much thanks again. Really Cool. -20 oil change medford oregon ■2012-05-17 23:15:13 91.201.64.7
Enjoyed every bit of your post.Really looking forward to read more. Will read on... 30 Mold testing NH ■2012-05-17 22:06:13 91.201.64.7
Fantastic article.Thanks Again. Cool. -20 vacuum cleaners fort worth texas ■2012-05-17 20:58:24 91.201.64.7
Fantastic blog article.Much thanks again. Want more. 30 sewing machines albert lea MN ■2012-05-17 19:53:17 91.201.64.7
I loved your blog post. Fantastic. -20 plumber ■2012-05-17 19:35:25 193.105.210.170
Hey, thanks for the blog post.Really looking forward to read more. Really Great. -20 automated money machine ■2012-05-17 18:52:49 91.201.64.7
Very neat article post.Much thanks again. Really Great. -20 bubblegame ■2012-05-17 18:50:15 192.162.19.11
Appreciate you sharing, great article post. -20 automated money machine ■2012-05-17 18:34:19 193.105.210.170
A round of applause for your article post. Really Cool. 30 atlanta denists ■2012-05-17 17:53:46 91.201.64.7
A big thank you for your article.Really looking forward to read more. Really Great. -20 helicoptergame.co ■2012-05-17 17:50:22 192.162.19.11
Thanks for the article.Really looking forward to read more. Fantastic. -20 hip hop instrumentals for sale ■2012-05-17 17:33:21 193.105.210.170
A round of applause for your blog post.Thanks Again. Keep writing. -20 tatuaggi in stile polinesiano ■2012-05-17 16:56:40 91.201.64.7
Really enjoyed this post.Much thanks again. Great. -20 e cigarettes ■2012-05-17 16:50:37 192.162.19.11
Im obliged for the article.Really looking forward to read more. Much obliged. 50 sin city porn links ■2012-05-17 16:32:38 193.105.210.170
I am so grateful for your blog.Really thank you! Much obliged. 50 secretsofdiet.com ■2012-05-17 15:51:38 192.162.19.11
A round of applause for your blog post.Thanks Again. 50 seeds for survival ■2012-05-17 15:34:55 193.105.210.170
Thanks-a-mundo for the blog post. Fantastic. -20 aerobic.ws ■2012-05-17 14:54:25 192.162.19.11
I really liked your article post.Much thanks again. Great. 30 seeds for survival ■2012-05-17 14:38:18 193.105.210.170
I am so grateful for your article post.Much thanks again. Cool. -20 top 10 hosting reviews ■2012-05-17 13:58:19 192.162.19.11
A big thank you for your blog post.Really looking forward to read more. Cool. 50 seeds for survival ■2012-05-17 13:43:30 193.105.210.170
I really enjoy the article. Want more. -20 mazegame ■2012-05-17 13:04:05 192.162.19.11
合計 410
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ


<<戻る
感想記事削除PASSWORD
PASSWORD 編集 削除