仮面ライダーバルキリーたん 第23話「Beginning of event covered with uneasiness」
「Beginning of event covered with uneasiness」

8月15日
Vライナー ラウンジ

時の砂漠を駆け抜けていく時の列車「Vライナー」。
いつもと変わらない風景、そしてラウンジでは珍しく6体のイマジンたちがテーブルを囲んでなにやら真剣な表情で話し合っていた。

ルーベット「先日のあの・・・ごちゃ混ぜフォームですが、あれは意外と良かったですな」

琥珀「ごちゃ混ぜ言うな。まあ、あれなら一々変身する必要もないし、どんな敵に対してもオールラウンドに対応できるよな」

それは先日、エメラルドが作成したイカロスショットによる「クライマックスフォーム」のことだ。エメラルドいわく、「常に最高潮の状態で強くてカッコいい名前にしたい」という理由でこれになったのだが、6体や慧がかなり気に入ってしまったのだ。

トパーズ「しかし、心をひとつにしないとイカロスショットは発動しないのだな」
エメラルド「あの時はお姉ちゃんを助けたいって皆思ってたよね」
サファイア「うん」
アメジスト「しかし・・・あれと同じような形でいつでも変身出来るのかしら?」
ルーベット「それが出来るように、いつでも心をひとつに出来る練習はいかがかな?」
トパーズ「どうやってやるんだ?」
エメラルド「それが問題。つーか、お姉ちゃんのこと以外に関して、あたしたちの意見が合ったことなんて、これまで・・・なかったよね」
トパーズ「毎度毎度慧が怪我するのを期待するわけにもいかんしな」
サファイア「・・・いい方法があるよ」

「「「「「却下」」」」」

サファイア「今、何も言ってないのに5人揃ってハモって心をひとつにして総否定かいっ!?」

トパーズ「・・・お前が思っていること言ってやろうか?」
エメラルド「今から風呂場に行こう」
サファイア「えっ!?」
アメジスト「人と人とのふれあいは裸の付き合いから始まる」
サファイア「何ぃっ!?」
琥珀「そして生み出された友情は愛情に変わって・・・」
ルーベット「その愛情は自分への愛に変わるであろう」

「「「「「だから風呂場で皆でチチ繰りあって愛を育もうではないか」」」」」

5体がもはや分かりきっているというような、あきれ果てているような感じで言うと、サファイアは驚きを隠せない様子で言葉を失っている。

どうやら・・・ビンゴであったらしい。

サファイア「・・・一言一句同じだよ。何、君たち、人の心を読めるの?盗聴(タッピング)とかしちゃったりしたのかい?」
トパーズ「・・・・お前の考えていることなどお見通しだ」
エメラルド「つーか、サファイアって見た目一番色っぽくて大人なのに中身は一番お子様でバカだよね」
ルーベット「ああ、救いがないな」
琥珀「・・・・・マジでそんなこと考えていたのかよ」
アメジスト「・・・・至って真剣だからタチが悪いですね・・・」

全くこのサファイアだけは思考回路が何を考えて何を価値基準にして動いているのか分からない。というよりも、理解したくもない。
5人はこの時心がひとつになったという。

サファイア「皆冷たすぎるよっ!!いいかいっ、友情を育むのは愛、愛あれば愛に満ち、人を気遣い助け合い繋がりを作ることによって更なる愛が生み出される、愛とはすなわち古来より人間が、いや、地球上の生物たちが本能的に持っている種の生存競争で最も強みとされている神から与えられた大事なコミュニケーションだよっ!?」

琥珀「お前はやり方がズレまくっている方向にブッチギリで突っ走りすぎだ」
アメジスト「というか、エッチなことしたいからって神まで持ち出しますか」
サファイア「ああ、持ち出すね!!愛を語るためなら神でも仏でも連れ出すね!!」
ルーベット「天罰でも下ってしまえ、バカ」

その直後だった。
ラウンジにやってきた愛がいつものようにゆるーくほのぼのとした笑顔で入ってきた。
そして懐から取り出したものは・・・拳銃。

笑顔のままで天井に向けて思い切り引き金を引いた。

バアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

「「「「「「うひゃああああああああああああああっ!?」」」」」」

6体が銃声に驚いていっせいに飛びのいた。
その直後、心がひとつになり、その姿が一気に消え去った。
愛はにっこりと笑いながら玩具の拳銃を収める。

愛「出来るじゃない。皆仲良しさんなんだから。うふふっ」


AM11:58
ホテル「イリスガーデンホテル」
屋外カフェレストラン「アルコバレーノ」

真夏の日差しが照りつけ、心地よい夏の風が吹いているお昼のひと時。
ホテルの屋外にあるイタリアンレストランのテラス席で晶に誘われてランチにきていた慧と晶が向かい合って食事を楽しんでいた。

晶「それじゃあ、全員まとめて変身出来るようになったの?」
いつものように、慧の前では100%猫かぶり状態・・・失礼、王ではない本来の大友晶としての素顔が出ている晶が驚く。

慧「うん、あれ、すごくいいよね・・・・」
晶「ふうん・・・かなり気に入っているようだね」
慧「うん・・・・・あれ、すごくいいんだ」

慧が珍しく心からの笑顔を見せる。そのあどけなく可愛らしい笑顔に晶は胸が高鳴り、顔が真っ赤になっていき、胸の鼓動が高鳴っていく。

慧「それでねぇ・・・新しいフォーム名・・・クライマックスフォームもいいけど・・・私もっといい名前考えているの」
晶「へえ」
慧「その名も・・・・!!」

慧が体を乗り出して、晶に端正で美しい顔立ちを晶に近づける。
甘い息が伝わり、晶がぎょっと驚いたように眼を見開き顔を真っ赤にする。

慧「ゴージャスウルトラプリンセスフォーム」
晶「・・・・・・」

一瞬にして百年の恋が冷めそうなあまりにもぶっ飛びすぎているセンスに、晶が脱力する。
しかし慧は目をキラキラ輝かせてハイテンションな様子で話しかける。

そのときだった。

晶「・・・いや、それはないでしょ・・・・て、あれ?」
慧の動きが止まり、一度に6つの光が飛び交い、一気に憑依したのだ。

そして、目の前の慧の姿が赤いメッシュが入ったポニーテールに、前髪を七三分けにし、眼鏡をかけ、右目に星のラメが入った異様な姿となった。

晶「ふえっ!?」
R慧「うむ・・・これはどうなのであろうか?」
アメジスト「なんだかごちゃ混ぜって感じ」
エメラルド「というか、皆重いよ!!太ったでしょう!!」
サファイア「失敬な!!」
琥珀「むぎゅっ・・・!!と、トパーズ、胸押し付けるな!!息出来ない!!」
トパーズ「好きで押し付けているものか!!ここが狭すぎるんだ!!」
サファイア「えー、いいないいな、トパーズの大きくて柔らかい胸揉み放題か!?琥珀ずるいぞっ!!」
琥珀「お前と一緒にすんじゃねえ!!」
トパーズ「不埒ものがあああああああああああああっ!!」
ルーベット「だああっ!!トパーズ殿、暴れないで下され!!」
サファイア「ごふっ!!」
琥珀「何であたしまで殴られるんだよっ!?ゲフッ!!」
トパーズ「お前らなどに・・・胸が大きいことがコンプレックスの女性の悩みなど分かってたまるかぁあああああああああああああああああああ!!」
アメジスト「不愉快な発言かまさないで下さる!?」
エメラルド「そうだよっ!!ちっぱいだって悩みはするんだぞ!!」
琥珀「・・・まあ、胸ないからな・・・がふっ!!!!!わ、悪かった!!二人とも!!悪かったから蹴るな殴るな飛び掛るなあああああああああああああっ!!!」


もう滅茶苦茶だ。
6体の光が滅茶苦茶に飛び回り、慧が翻弄されるかのようにテラス内をクルクルと回転させられ、おぼつかない足取りで踊り狂っている光景はホテルの客の奇異の視線を集めている。

そして。
慧が動きを止め、その場に立ち尽くす。

慧「らめ  しぬ」

怪しい発言をかまして、慧が目をグルグル回転させながらぶっ倒れた。
晶があわてて駆けつけ、抱き上げる。

慧「がんだーら・・・・ほにゃらかほいほい・・・・」
晶「慧―っ!!!」

結果は大失敗であった。
そしてこの後、イマジン全員と愛が慧に滅茶苦茶怒られたのは言うまでもない。


しかし、この時、慧たちは気づいていなかった。
もうすでに、時の運行を脅かす強大なる悪の存在が動き出していたことなど・・・。



時の砂漠
どこまでも広がる果てしない荒野。
そしてその地に敷かれた唯一の道しるべである線路を、一両の列車が走っていた。
車体が青い色をして、1両のみの列車。曲線を描くような美しい流線型のフォルムをしている。
その電車の運転席で、目の前に広がる時の砂漠を見ながら、一人の少年が面白そうに見入っていた。
銀色のショートカット、赤い瞳、中性的で可憐な容姿と華奢で小柄な体躯から一見美少女のようにも見えるが、その吊り上っている瞳にはいくつもの修羅場を乗り越えてきたかのような鋭い光が宿り、肉食獣のそれにも思える雰囲気が漂っている。
そして、右肩に鷲を模した装飾が施された甲冑を着込んでいる姿はまるで侍のようであった。

「これが・・・時の砂漠か。ここで派手に暴れるってことか?悪くねぇじゃねぇか」

そこへドアが開いて、智と、艶やかな黒髪を簪で結わえ、両肩まで大きく着物をはだけて豊満な胸を強調しているかのような妖艶な肢体を官能的なしぐさでくねらせながら歩み寄ってくる長身の女性が来た。

智「ルシファー、今度の舞台、これでどうかな?」
ルシファー「ああ、悪くはねぇな。まっ、呆気なく終わっちまったとしても、お前のくれた報酬でいろいろな時代に行きまくって強そうなやつを手当たりしだい殺しまくれるんだからな。これはかなりいい仕事だぜ」

傲岸な笑みを浮かべて少年が楽しそうに笑う。
すると、女性が少年に歩み寄り、しゃがむと少年に抱きつく。その妖しい美貌は魔性の美しさを秘めており、蛇のような緩やかな動きでしなやかに腕を少年に絡みつく。

ルシファー「アスモ?」
アスモデウス「ねぇん、兄様ぁん。今度も思い切り殺しまくろうね。あたし、好きなんだぁ。人間の肉を切り裂くあの感触、血にまみれて腐臭とさび付いた鉄のにおいが入り混じった赤い液体に全身塗りたくって、死体の何が起きたのか分からないよう目玉、死にたくないって最後まで悲痛な叫びを上げていた断末魔を上げたままくたばった顔、ああん、どれも・・・たまんないわぁ」
ルシファー「お前の趣味なんて知ったこっちゃねぇが、まあ、派手にやるさ。暴れて暴れて何もかもぶっ壊してやるぜ」
アスモデウス「それでねぇん、出来ればぁ、やっぱ殺るとしたら、兄様のような可愛くて甚振ったらヒーヒーいい声上げて鳴いてくれそうなボウヤとかがいいわぁ。妄想しちゃうん。兄様・・・あぁん・・・兄様をこの関節剣(かんせつけん)でバラバラに切り刻んでぇ・・・血まみれになって・・・でも殺さないで死ぬ寸前まで抑えておいて、血だらけで激痛と死の恐怖にもだえ苦しみながらのた打ち回る兄様を見下ろして、あたしが呟くの。楽してあげようかって。そしたら、兄様は泣いてあたしにすがりつくの。そして言うわ。アスモ、優しく抱いてくれって。そしたらぁ、もう、たまらないわぁん!!」

ゴインッ!!!!!!


車内に鈍い音が響き渡り、運転席の床には頭にタンコブをこしらえたアスモデウスと呼ばれる女性が床にぶっ倒れており、ルシファーが拳をふるふると握り締めて、不機嫌そうな表情をしている。

ルシファー「後半から俺殺ってるじゃねぇか。このバカ」
アスモデウス「・・・うぅ・・・・痛い・・・・・兄様、手加減ホント知らないんだから。せっかく生き返ったのにこれじゃ頭潰れて死んじゃうわよぉん」
ルシファー「テメェは頭カラの割には岩石ばりにかてぇんだから、そうそう簡単に潰れるかってんだ」
アスモデウス「えへへ、それって、あたしのカラダのこと、気遣ってくれているのぉ?アスモ、嬉しい。えへへっ、兄様ぁ、抱っこ〜♪」
ルシファー「なんでそうなるんだよ」

ルシファーと呼ばれる少年が呆れたように言うが、アスモデウスは懲りない様子で嬉しそうに無邪気に笑みを浮かべてルシファーに抱きつく。もう少年もあきらめたのか抱かれたり、くっついてきたりするアスモデウスを止めるのはやめた。

その漫才のようなやりとりを智は半ば呆れた様子で見ていた。

智(こいつら、戦いのとき以外は本当にボケまくっているのよね・・・)

Priiiiiiiii・・・・・

無線から連絡が入り、ルシファーがとる。

ルシファー「おう、俺だ。あ、マモンか。何、うん、準備出来た?よっしゃ、それならサタンとベルフェ、ベルゼブルとレヴィは邪魔するやつらを迎え撃て。俺たちも今向かっているからよ」

そういって、通信が途絶えた。

アスモデウス「ターミナルに抑えてあるあれは奪い取ったって?」
ルシファー「ああ、エニグマだったか?智?まずはあれを分捕ることに成功した。マモンにパスワードは解析させてあるから、後は動かすだけだぜ」

エニグマ。
時の運行を侵略者の手から守るために作られた古代の最終兵器。
それは巨大な焼夷弾のようなものであり、発射し、敵に着弾すると同時に時の砂漠もろとも吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を有しているものである。
侵略者の手に渡る前に全てを敵ごと打ち滅ぼす、そんな過剰なまでの防衛策として作り上げられたがあまりにも危険すぎるために封印されていたはずだった。

ルシファー「エニグマを発射して時の砂漠をぶっ壊す。そうすればあいつらも黙っちゃいないだろうな、そしておびき寄せてぶっ殺す。こんな感じか?」
智「そういうこと。いい感じでしょ」
ルシファー「ああ、いい感じだ」

ルシファーが傲岸な笑みを浮かべて時の砂漠を見渡す。

ルシファー「楽しくなってきやがったぜ」
こうして、時の砂漠の崩壊のカウントダウンが刻み出した・・・。


8月17日
キングライナー 駅長室
キングライナーのターミナル。
慧と6体のイマジンズは朝早くに駅長に無線で起こされ大至急ターミナルに来てほしいと告げられ、今、駅長室に来ていた。
いつになく真剣で怖いと思えるほどの厳しい表情で駅長は頭を抱えていた。
こんな重苦しい状況下は初めてだ。

琥珀「何があったんだ?」
駅長「その件なのですが・・・・最初に説明しましょう。今時の運行がどうなっているかを」
慧「私も、それが聞きたかったんです。一体、何がどうなってるんですか?」
慧が興味深く尋ねた。駅長は残念そうな顔をしながら話し始めた。

駅長「『カイゼルライナー』・・・もうひとつのターミナルともいわれている施設の全職員及びお客様が・・・皆殺しにされた。それだけではなく、『エニグマ』が盗まれ、封鎖されていたはずの発射装置にかけられ、発射準備にとりかけられてしまっているのです」

その一言に、全員は驚愕した。

アメジスト「エニグマですって!?最悪の破壊兵器じゃないのよ!?何で破壊しなかったの!?」
サファイア「・・・破壊しようにも対策打てなかったんだろうよ。噂に聞いたほどの破壊力じゃ、開発者が処刑されて、設計図も解除方法も分からなくなっちまったような代物じゃさ。下手に誤爆させたら時の砂漠そのものが吹き飛ぶもん」

慧「な、何ですか、そのエニグマって!?」

サファイア「あたしたちを送りつけてきたどっかのバカが、これを使って時の砂漠を支配しろとか昔言っていたようなことがあるんだよ。言うなれば最強最悪の軍事兵器」

アメジスト「エニグマ。かつて時の運行を侵略者の手から守るために作られた古代の最終兵器。それは巨大な焼夷弾のようなものであり、発射し、敵に着弾すると同時に時の砂漠もろとも吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を有しているんです。侵略者の手に渡る前に全てを敵ごと打ち滅ぼす、そんな過剰なまでの防衛策として作り上げられたがあまりにも危険すぎるために封印されていたはずだったのですが」

サファイア「まっ、ようやくシステムを凍結させるパスワードを見つけ出して封印していたって聞いていたけど」

アメジスト「それを誰かが奪い取って作動させている!?」

駅長「はい・・・。そいつらは自らを「セブンズヘブン」と名乗っており、ターミナルを乗っ取ってそこを中心に各地に大勢のイマジンやレジェンドルガたちを率いて大暴れをしているのです・・・!!さらに最悪なことに・・・エニグマがすでに起動してしまっているのです!!」

「何ですってっ!?」

あまりにも急な展開に慧たちが言葉を失った。

駅長「エニグマが作動し、時の砂漠を吹き飛ばしてしまったら、ありとあらゆる歴史が崩壊し、時間そのものが滅茶苦茶になり、あなた方のいる世界もなくなってしまう。それどころか、動植物や人類の歴史なども抹消されて、すべてが・・・消える。文字通り、最初からこの世に存在しなかったということになってしまう・・・」

慧たちが想像するだけで全身に寒気と緊張が支配する。
もしそうなったら自分たちまで消えてしまい、何もかもが消滅してしまうのであろうか?
仮に消えなかったとしても、そこの世界ではセブンズヘブンと名乗る凶悪なレジェンドルガの集団によって支配されている世界。

駅長「そこで我々は作戦を考えました」
駅長がコンピューター・デスクのキーボードを叩いて、モニターに映像を映し出す。

駅長「一つはギガ粒子砲『デイライト』を使用する作戦です。名づけてデイライト(夜明けの光)作戦」

そのままだ、というツッコミはよした。そんなことを言っている場合ではないからである。ギガ粒子砲『デイライト』は、 数世紀前に造られた、現在でも世界最大出力を誇るビーム砲である。あまりの危険さに封印されてきたが、今は 仕方がない。これしか、方法がないのだ。

エメラルド「でもさ、これって、メインのパーツがなかったんじゃないの?あたし聞いたことあるよ」
駅長「そこで!慧さんたちに頼みがあるのです!あなた達にはそのパーツを回収してほしいのです!!」

そういうことか、といった感じで琥珀は嘆息した。自分達は、そのためにここに呼ばれたのだ。

駅長「回収するパーツとその所在地はモニターを参照して下さい。時の運行はもはやあなた方の手に委ねられたのです」

7人は確信した。今、時間の運命が自分達に握られていることを。

慧「・・・やろう。もう時間がない」
ルーベット「・・・・そうですな!」
トパーズ「これ以上好き勝手させられるか」
アメジスト「そうですわね」
琥珀「テロリストだと・・・?ナメんじゃねぇぞ」
サファイア「うちらを喧嘩相手にするなんてやってくれるじゃないか」
エメラルド「・・・よっしゃ、今から集めるパーツを説明するね!!」

まず、大量の水素を含んだ未知の鉱石が封じ込められている「ハイドロニックカプセル」。
次に超高出力のエネルギーを制御できる「エネルギーカートリッジ」。
そして、光線の機能を極限まで高める「レーザー装置」。
そして、レーザーの原料となる不思議な力を持つ鉱石「オリハルコン」である。

エメラルド「こいつを・・・残り7日以内に集めないといけないんだ!」
サファイア「1週間しかないのっ!?」
トパーズ「それまでの間、敵が何か仕掛けてこないわけがあるまい」
ルーベット「それも考えての上での行動が必要ですな」
琥珀「もうやるしかねぇっ!!」

慧「皆・・・・行こう!!」
慧の言葉に全員がうなづいた。


しかしこのとき、もうすでにそのパーツが置かれているエリアには魔の手が伸びていたのだった・・・・。

そのころ。
時同じくして、線路を走るキバライナーにはチェックメイト・フォーの4人が駅長から送られてきたメールを見て、一部始終を聞き、驚いていた。
そして、怒りと憎悪に満ちた様子で、忌々しげにメールをにらみつける。

ビショップ「まさか、ここまでやるとはね・・・」
ルーク「こいつら、自分たちだけ助かるなんて思ってるんじゃないだろうな。エニグマは下手すれば、自分たちがいた歴史まで吹き飛びかねないんだぜ!?」
クイーン「・・・自分たちがいた歴史がもともとなかったとしたら?」

クイーンが意味深な発言をつぶやく。

クイーン「うちらみたいに、別の世界から時の列車を使ってきたとしたら?」
ルーク「・・・そうか、そうすれば、消えずにすむのか!?」
晶「・・・クイーンの見解があっているかどうかなんて分からないし、そいつらがそこまで考えて行動しているかなんて知ったことではない。まずは、このエニグマを止めるためにデイライトを使うかもしれない。それを復活させるためのパーツを急いで回収するぞ」

晶が真剣な表情でつぶやくと、3人も神妙にうなづいた。

晶「カスが・・・・俺たちの守ってきた時間を・・・壊させなどしないぞ」



1886年6月13日
ドイツ バイエルン地方

慧「さて・・・・」
マシンハミングバードから体を下ろすと、慧は前方を眺めた。
目の前に広がっている光景は、中世のヨーロッパの城としか表現のしようがなかった。
だが間違いなく、ここは極秘裏に時の運行に携わる研究者が城に見せかけて作り上げたレーザー工学研究所である。

慧「まさかこんなところに、こんな時代に隠していたなんて」
サファイア「それだけヤバい研究だから、時代を別々に分け、絶対ありえないような場所を探し出して、そのエリアの時の砂漠の地点に研究所を分けて置いたらしいね」
トパーズ「実に荘厳な風景であるな」
ルーベット「ここにあるのですな。レーザー装置が」
慧「・・・行こう」

そんな様子で城に入り込もうとしている慧たちを城のテラスから見下ろしている一人の少女の姿があった。
青い髪を後ろで短く束ねこみ、フリルのついたかわいらしいリボンとゴスロリドレスを着込んだ小柄な少女だ。一見愛くるしいフランス人形のような少女であった。
陶磁器のような白い肌、愛くるしい大きく開いた丸い青い瞳をくりくりさせて、あどけない笑みを浮かべている。携帯電話を取り出すと、ボタンを押して話し出す。

ベルフェゴール「お兄ちゃん・・・?ベルフェです。あのね、あのね、ベルフェのお城にきましたよ。ばるきりぃ・・・」
携帯電話であどけない舌足らずな口調で話すと、向こうからルシファーの声が聞こえてきた。

ルシファー「そうか。あいつらはお前が保管しているレーザー装置を奪い取りに着たんだろうな。俺たちがデイライトの存在など知らないとでも思っているのかな?まあいいさ。丁重におもてなししてやりな」
ベルフェゴール「はい・・・・ベルフェ・・・・頑張ります」
ルシファー「よしっ、頑張ったら甘いお菓子山ほど買ってやるからよ」
ベルフェゴール「わぁい・・・・嬉しい・・・・お兄ちゃん・・・・だぁいすき・・・」
ルシファー「・・・頑張れよ。ただし、何かあったら絶対俺を呼べ」
ベルフェゴール「はぁい・・・」

ベルフェゴールと呼ばれた少女が嬉しそうに顔中を幸せそうな笑顔を浮かべて電話を切る。
そして、左手には鷹を模した巨大なアーチェリーが握られている。

ベルフェゴール「くすくすくす・・・・ばるきりぃ・・・・あなたはベルフェが倒すの。そして、ベルフェ、お兄ちゃんにいっぱいいっぱいいっぱい抱っこしてもらって・・・お菓子一緒に食べて・・・いっぱいお昼寝して・・・遊ぶの・・・くすくすくす・・・」

ベルフェゴールの笑みがやがて狂的な笑みに変わって見る見るその姿が猛禽類を思わせる鋭い光を放つ目を持ち、ハヤブサのような鋭いカギ爪と美しく広がる虹色の光を帯びた羽を持ったベルフェゴールレジェンドルガの姿へと変わっていく。

きらきらと輝く青い髪と抜ける様に白い肌をもつまるでアンティークドールの様な少女、しかし彼女こそセブンズヘブンの弓兵である「閃光のベルフェゴール」こと「ベルフェゴールレジェンドルガ」であった。

ベルフェゴール「くすくすくす・・・・・」

無邪気なまでに邪悪な魂を秘めた少女がおかしくて仕方ないように笑った。
そんな気配に慧が気づくよしもなく、慧が城内に潜入したのはその数分後であった。

続く

2009年09月11日(金) 22時08分48秒 公開
■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは!!
最近ジャンヌダルクの「WILD FANG」や奥井雅美の「WILD SPICE」などの音楽にはまっている鴎であります。
作品を書くときこれを聞いていると、すごく筆が進むし、臨場感のイメージがわきやすくて好きです。
さて、今回は変身なしでしたが次回からはバンバン戦いを繰り広げていきます!!

>烈様

>今回の話はルークさんの見事な相手の気持ちを察する姐さんぶりと、クイーンさんの相手が自分達にとって一番大切な人であろうと間違っていると思うことは間違っていることだとハッキリと言えるところと、大切な仲間との“絆”の大切さと決して諦めずに戦う慧ちゃんの姿が印象的なものであったと思います。

ありがとうございます!!
そういっていただけると、本当に書いててよかったと心から思えます!!

>『クライマックスフォーム』なのですか?

クライマックスの響きがカッコよかったというか・・・その響きに私が弱かったためですね。クライマックス、常に最高潮でハイテンションな慧達にはある意味合っている名前かと思ったのですが。

>それはそうと晶君。今回のことを教訓として、今後は相手の気持ちをよく考えてもう少しわかりやすくことを説明するように努めていくことを忘れないようにしよう。

晶「・・・そんなこと分かってはいるけれど」
どうも晶はそういった人の心を考えたりする思慮深さが足りないようです。しかしこの後、仲間たちに支えられながらもキングとしての非情さと敵に対する恨みと狂気がぶつかり合い、苦労しそうです。

>虹の七色
そういったことは意識していませんでしたが・・・考えてみると面白そうですね。
そういったアイディアも今後どんどん取り入れていきたいですね。
ありがとうございます。


>銀狼様

今回のご指摘、そして、貴重なご意見ありがとうございます。
今回のことは今後ないように気をつけながら作品つくりに取り掛かりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

次回もよろしくお願いいたします。
次回はついにセブンズヘブンの一人、「閃光」の二つ名を持つ光の能力者、ベルフェゴールレジェンドルガとの戦いです!

この作品の感想をお寄せください。
3OE0Qd A big thank you for your blog article. Really Cool. 50 Social Bookmarking Service ■2012-08-07 12:53:18 91.201.64.7
nfUd5p Thanks again for the article post.Really thank you! Want more. -20 Article Directory ■2012-07-15 08:18:42 192.162.19.21
どうも、こんばんわ。『烈』です。今回新しく投稿されていた“【仮面ライダーバルキリーたん】第23話「Beginning of event covered with uneasiness」”の話ですけど、冒頭から前回の話で登場した『クライマックスフォーム』のことについてバルキリーイマジンメンバー(略してVIM)が色々と話し合っているところから始まっていますが、心を一つにしなければ変身はできないというのは『電王』の『クライマックスフォーム』と同じなのには納得がいきます。……それにしても、相変わらず“百合”で変態チックな考えしか浮かばないんですかね〜。あの変態青玉白鳥は……;それにしても、『電王』のイマジンメンバー達とは違い彼女達の方は通称“ごちゃ混ぜフォーム”である『クライマックスフォーム』のことが気に入っているようですね。結構意外に思えてきます。……それにしても慧ちゃん、さすがに晶君の言うとおり“ゴージャスウルトラプリンセスフォーム”というのはいかがなものかと思いますよ、私も;……それはそうと愛さん;いくらなんでも一同の心を一つにするために慧ちゃんが『バルキリー』に変身してない状況でルーベット達を拳銃で脅かすのはどうかと思いますよ、マジで;(……そんでもって、その後にルーベット達が一斉に慧ちゃんに憑依してしまったためにかなりのカオスな状況を生み出してしまったわけですな……。哀れ慧ちゃん…;)

そして一方の別の“時の列車”に乗っているレジェンドルガの《セブンイレブン》のリーダー格の“ルシファー”と“アスモゼウス”、そして“スフィンクスレジェンドルガ”こと智さんの三人。……何といいますか、馬鹿らしい感じがしていたと思えば、“エニグマ”と呼ばれるかなりやばい“兵器”を利用してとてつもなくやってはいけないことをやろうとしている始末ですし、抜けていると思ったら以外にも先読みをしているところがあると油断できない奴らであることを話も読みながらつくづく感じました。…それにしても、《セブンへブン》のメンバーの名前の由来が悪魔達を束ねる“七つの大罪”の『魔王』達の名前からつけられているとは正直驚き半分納得半分な感じがしました。……ところで質問ですけど、ひょっとしてですけど《セブンへブン》のメンバーは“ルシファー”以外は全員“女”なのではないですか?(“アスモゼウス”や“ベルフェゴール”が女性でしたのでたぶん読みとしては間違っていないと思っています。)

最悪の敵達のやろうとしている恐るべき野望を止めるために“ギガ粒子砲『デイライト』”のパーツを集めることになった慧ちゃん達。しかし、そのパーツがある場所に既に待ち構えている《セブンへブン》のメンバー達。彼女達が無事に奴らを倒しながらパーツを手に入れていき無事に発動された“エニグマ”を止めることができるかどうかが気になってきます。それについで、晶君達《チェックメイト・フォー》の四人もその野望を阻止することができるのでしょうか?次回の話が気になってきます。

どうか次回の話も面白く、シリアスで、カッコいい感じでお願いします。ただし、バットエンドな感じの話は書いてほしくないのでお願いします。それでは今回の感想はここまでにしてしておこうと思いますので、今後も頑張って下さい。以上です。
30 ■2009-09-11 21:35:23 i114-189-63-41.s10.a044.ap.plala.or.jp
合計 60
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