仮面ライダーイグナイト 第三十六話 新たな旅立ち |
殲鬼姫との戦いから一ヶ月。天明市は急ピッチで復興作業が行なわれていた。五荒星冥獄陣発動によって 倒壊したビルの修復、さらにこの戦いで犠牲になった人々の慰霊。それは皮肉にも千年前の戦いの 傷の修復の再現でもあった。しかし人々の顔には悲しみだけでなく、愛する街を蘇らせようと 必死に力を振るう希望と意気込みガはっきりと目に焼きついていた。 「あれから随分と元通りになってきてるね。」 「なんか大声で、『この街は私達が救ったのよ!』って叫びたい気分ね。」 「それは言わぬが花ね。別に英雄になりたくて私達は戦ってたわけじゃない。ただ、自分達の大切な人や場所を守りたかった。 それを守りぬけた。それ以上求めるのはヒーローとして欲張りすぎじゃないかしら?」 復興に汗を流す人々を見つめながら、眞子は残り少なくなったシルバーテイルのクレープを口に放り込んだ。 殲鬼姫との戦いが終わり、春姫の祖父牧野清次は今まで隠していたスペクターの存在を、千年前の戦いの歴史を 包み隠さず公表した。殲鬼姫が解き放ったスペクターレギオンの存在を多くの人々が目撃した事により、これ以上の 情報規制は不可能と判断したのだ。天明市の人々は戦いが終わりようやくスペクターの存在を 認知する事となった。 しかし彩乃達の存在は公表される事はなく、封魔師の子孫により駆逐されたとだけ報道した。これは余計な混乱を 避けるためでもあり、何より彩乃達の希望でもあった。 「月並みな言い方だけど、街の人達の笑顔が私達の勲章で報酬じゃない?眞子?」 「そう言われると返す言葉がないっていうか、自分が小物臭く見えちゃうっていうか。」 両手の人差し指をモジつかせながら、眞子はそのまま黙り込んでしまった。 「あれ、彩乃達じゃん。おーい彩乃―。」 「あれは、スミレさんじゃない。」 元気よく手を振りながらやってきたのは、近頃ソナタに顔を見せるようになった顔馴染みの客の一人で、 眞子のゲーセンのライバル兼オタク友達でもある黒野スミレであった。 「どうしたのスミレ?まさかいつものじゃじゃ馬根性丸出しで来たんじゃないでしょうね?」 スペクターの存在が一般に公表された事が切欠で、怪物の現れた街を一目見ようと他の街や県から 多くの人々が天明市へ足を運ぶようになり、天明市は一時的であるだろうが人々の間に交流が広まり 色んな意味で街は活性化してきている。中には抜け目ない商人などがスペクターをモチーフにした グッズなんかも近々販売する方針らしい。スペクター饅頭とかTシャツとか、キーホルダーとか。 「へへへー半分は。もう半分はあんたらに会いたかったからって所かな」 「私達のに?まさか前のリベンジに来たのかしら?ん?」 「ふふふふふ。歩が五つ。ザッツライトまさにその通り!昨日紙一重で負けたあのレースの仮を返しに来たのだよワトソン君! と、言いたい所だしそのつもりもあるけど、実際はあんたらが心配で来たのが正解かな。」 「私達の?」 「あぁ、この前スペクターっていう化け物がこの街に現れたっていうだろ。あの時はゴタゴタがあって 行くタイミングが見つからなくって。これでも心配してたんだぞ。べ、別にお前等の身がどうのこうのじゃなくて、 勝ち逃げされたまま勝手に死なれると後味悪いからってだけなんだからな!」 なんとも良いツンデレを見せるスミレに、思わず三人の顔が綻ぶ。そしてしみじみと噛み締めた。 こんな何気ない平和や優しい日々を取り戻す為に今まで戦ってきたんだなと。 「馬鹿言うんじゃないわよ。あたしが死ぬとでも思ってたの?それに勝負なら何時でも受けてやるわよ。」 「よーし!その言葉忘れるなよ!それなら早速カモン!いつものゲーセンへ!ってそういえば 祥子さんたちはどうしたの?一緒じゃないの?」 ここにはいない二人の先輩を探すように、スミレは辺りを見渡した。 「祥子さんと春姫さんなら、大事な用があるとか言ってたけど。」 「大事な用?」 「あの二人ならきっと、あそこにいるんじゃないかな。」 ここにはいない二人の先輩に思いを馳せながら、小さく顔を見上げた。見上がれば今まで殲鬼姫によって 覆われていた黒雲の陰湿な陰りを吹き飛ばしたいばかりに、燦々と輝く太陽が昇っていた。 天明市にある小高い丘。そこには死した人々が街の風景を見られるようにと多くの墓石が軒を連ねている。 そこへ二人の少女が花束を手に、少々上り辛い石造りの階段を登りながらやってきた。二人は墓石の一つに 腰を下ろすと埃や砂煙で汚れた墓石を水布巾で綺麗に洗い落とし、周りに生えた雑草や枯れた花を取り出し 持ってきた花をうつし替えた。持ってきた花はスイートピー。彼女達の前に立つ墓に眠る女性の好きだった花。花言葉は 「優しい思い出・・・・・か。終わったよ、お姉ちゃん。何もかも・・・・・・」 「見てくだい、この蒼い空、街から聞こえる沢山の人達の笑い声。私と祥子ちゃん達が守り抜いたんですよ。 天国からも見えてますか?聞こえてますか?伊織お姉さん?」 武下家ノ墓と刻まれた墓石に手を合わせながら、二人は今は亡き最愛の姉、武下伊織に思いを馳せる。 あの日、自分の軽率な行動で最愛の姉を失ったあの忌々しい日から祥子の戦いは始まった。何度も倒れ、 投げ出しそうになりながらも祥子は戦い続けた。時に自分に言い聞かせるように春姫達を激励し、 時に春姫達に励まされながらも自分達は一歩一歩を踏みしめ続けた。ピリオドが打たれるその日を 姉に伝えられるこの日が来るのを信じて。そして今日、その日はやってきた。自分達の勝利という最高の形で。 「それと、これは私と祥子ちゃんが作った今まで最高の出来栄えです。少しは伊織お姉さんの作ったのに 迫れるものだと柄にもなく自惚れているんです。天国で出来たお友達と召し上がってください〜。」 春姫が持ってきた紙のバスケットに入れられたシフォンケーキを置き、二人は再び瞑想に入った。 「お姉ちゃん、覚えてる?この戦いが終わったら何をしようかって。」 「それじゃあ祥子ちゃん」 「えぇ。今日彩乃達に教えるわ。」 「寂しくなりますね〜。」 「彩乃達が参戦する前に決めていた事よ。仕方がないわ。」 伊織の好きな花、スイートピーのもう一つの花言葉は門出。奇しくも祥子と春姫のその後を暗示する言葉でもあった。 大事な戦友にして、可愛くも出来の悪い妹分達に伝えるべく、二人は重い腰を上げた。 「っとと!」 「どうしたんですか、祥子ちゃん」 「今、誰かに押されたような気がしたんだけど・・・・」 「もしかして、伊織お姉さんが押したのかもしれませんよ。『こんな所で道草食ってないで早く行きなさい』って。」 「かもしれないわね。」 軽く笑い合うと、二人は改めて伊織の墓前に立ち尽くし別れの挨拶を交わした。 「行ってくるね、お姉ちゃん。」 「「「「「ありがとうございました〜。」」」」」 時間的に見て最後の客に送り迎え、祥子は店の掛札をOPENからCLOSEに変えた。 「ふぅ、今日も良く働いたね。」 「平和になってお客さんが戻ってきたのはいいけど、こりゃ繁盛店じゃないのも一種の幸せっていう言葉が今なら分かるわ。」 「そうね、この疲労も明日が見納めかと思うと感慨深いものがあるわ。」 祥子の思わぬ一言に店のカウンターでぐったりしていた三人は祥子の方へ目を向けた。 「どういう意味ですか、それじゃあ祥子さんが店をやめるみたいじゃないですか?」 「ええ、正確にはこの店自体をやめるの。」 「へ?」 「い?」 「てん・・・・・・・・・・・・」 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーーーー!?」」」 突然の閉店宣言に、三人はカウンターから立ち上がりグロッキー状態なのも忘れ祥子に根掘り葉掘り事情を問いただした。 「旅に出る?マジですか!?」 「はい〜。改造したキャンピングカーを使って寝泊りしながら日本中を気の向くまま巡って、気に入った土地で その土地の人達に私達の作ったお菓子なんかを振舞うんです〜。」 「昨日私が車の免許を習得してね。だから、それに併合してこの喫茶ソナタも閉店。」 「そんな!どうして急に!?そんな事急にいわれても納得できません!」 「今からやめなくてもいいじゃないですか!やっと戦いが終わって普通の女の子に戻れたんですよ! 私達、もっと祥子さんと春姫さんと一緒にいたいし学びたい事だって沢山・・・・・」 「奈々美の言うとおり!私達一緒にカラオケ歌ったり花見したり夏祭りしたり遊園地行ったり、 もっともっと祥子さん達と一緒に思い出いっぱい作っていきたいんです!」 三人の説得に二人の心は揺れ動く。元々この戦いは伊織に代わって祥子と春姫の二人から始まり、 二人で終わると思っていたのだ。子孫である彩乃はともかく、眞子や奈々美といったイレギュラーの介入など 予期していない事態なのだ。それゆえ、二人は旅に出るのを諦めようかとも考えていた。しかし 「ありがとう、三人とも。でもね、これはあんた達と出会う以前に私と春姫、そしてお姉ちゃんと計画していた事なの。」 「私も祥子ちゃんも、彩乃ちゃんたちとこの街を離れるのは寂しいですが、これは決して今生の別れになるわけじゃありません〜。 いつか必ず、ここへ帰ってきます〜。ですから、私と祥子ちゃんの最後の我侭を聞いてはもらえませんか〜?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・分かりました。でも条件があります。」 「なに?」 「帰ってきたら真っ先に私達の所に顔を見せてください。そして、旅先で仕入れた新メニューのスィーツを奢ってください。」 「分かったわ、約束する。」 「英雄は死なず。ただ立ち去るのみですか。でもこの借りは高くつきますから覚悟してくださいね。」 「祥子さん、春姫さん、絶対に戻ってきてくださいね。」 「ええ、それは必ず約束します〜。」 ほんのりと涙を浮かべる奈々美の目をそっと拭いてあげながら、春姫は三人をそっと抱き寄せた。 「そして、閉店を記念してこんなのを企画したの。春姫」 「はい〜。」 祥子に言われて春姫は一枚のポスターを取り出し彩乃達に見せた。そこには喫茶ソナタ閉店、 最後の出血大サービス、300円でケーキ食べ方ほうだい。ドリンクは無料という文字が。 「今までソナタを贔屓してくれたお客さんへの感謝を込めて、最後は儲け無しで開店しようと思うの。」 「いいですね、最後はドーンと華々しく散るってわけですか。」 「そういうこと。あんたらも学校の友達なり家族なり口コミで客寄せ忘れないようにね。」 「「「はい!」」」 「ですが、お客様の方々来てくれるか心配です〜。」 しかし春姫の不安を掻き消すかのごとく、当日祥子達の予想を上回る長蛇の列が出来上がっていた。 スミレ「この店閉店しちまうのか。結構人気あったのに勿体無い。」 絵美里「そうだね、今日が食べ修めになるんだしうんと楽しもう。」 修二「へっへっへっへ、今日はこの日のために昨日の晩から飯を抜いてきたからな。1万分でも10万分でも食ってやるぜ。」 イザベラ「この店のチェリーパイが食えるのも今日が最後か。そう考えると柄にもなく感慨深いものを感じちまうぜ。」 聖「チラシにはお持ち帰りも自由って書いてありますし、帰りに蘭さん達の分も買ってきましょう。」 遼耶「今日はこの日のために朝食抜いてきたんだし、今日はトコトン食べるわよ。」 湊「こ、拘ってるね・・・・・・」 絢斗「いいのか悠麻、春姫さんと暫く会えなくなるっていうのに。」 悠麻「いいんだ。これは一時の試練だと思えば絶えられる。それに、祥子さんには内緒でメアドも電話番号も貰ってるし。 遠距離恋愛というのも考えようによっては乙なものじゃないか。」 舞「あーあ、祥子さんと春姫さんにはまだまだ教わりたいことがあったのにな〜。いきなりお別れなんて寂しすぎるよ〜。」 歌「私達と会う前の約束なんだから仕方ないじゃないですか。」 茜「そうですよ、別れは出来るだけ爽やかに終わるよう笑顔でいようって言ったのは舞さんですよ。」 藍「しかし凄い行列だな。こっちは結構早い時間に並んだから良かったものの。」 碧「それだけこの店や祥子さん達が多くの人達に愛されてるって事なんじゃない?」 萌黄「そうだね。」 予想以上の長蛇の列に、5人は思わず後ずさりしそうになる。 「予想以上の人だかりね・・・・・・」 「これだけのお客さんが来てくれるのは嬉しいけど、これじゃあ」 「はい〜。ケーキもかなりの数を焼いたつもりでしたが、これじゃあとても足りません〜。」 五人とも昨日から徹夜で今日のためのケーキや飾り付けをしていたが、これ程の人数になれば用意したケーキじゃとても間に合いそうもない。 「随分と難航しているようだね。」 「うわっ!って、春姫のお爺さん!?いきなり現れないで下さい!」 初めて現れたときと変わらず、謎の後光を背後に背負い素顔を見せてくれない老紳士の出現に一同身構える。 「最後の開店の前に、オーナーである私が演説するよう春姫に頼まれてね。それと」 徐に指を弾くと、後ろから一台のトラックが現れたかと思いきや、黒ずくめの男達が次々と姿を表し コンテナから一つ、また一つと多種多様にわたるケーキを運んでいく。 「お爺様これは」 「こうなると予想していてね。屋敷のパティシエ総動員してケーキのストックを用意しておいたんだ。」 「ありがとう春姫のおじいさん!これだけあれば何とかなります!」 「それじゃああんた達、喫茶ソナタ最後の営業開始よ!」 「「「「おー!!!!!」」」」 ソナタの掛札をCLOSEからOPENに変えた途端、今まで待てをされた客は我先にとカウンターや席に座り込み、 店内の席という席はものの数十秒足らずで満席になってしまった。 「えーお客様の皆様に、恐れ入りますが開始する前に当店のオーナーであり私の祖父である牧野清次から、 労いの言葉があります。 恐れ入りますが、今しばらく席におつきのまま、ご静粛にお願いいたします。」 メガホンを持つ春姫の言葉に、店の客は徐々に口を閉ざし話し声がまばらになると、扉から花束を抱えた 燕尾服姿の清次が姿を表し五人の前に対峙した。 「皆様、ご多忙の中この喫茶ソナタ最後の開店にお越しくださり、真にありがとうございます。 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、このソナタが閉店する理由は、我が孫娘、牧野春姫と、 最愛の親友である武下祥子が、前から計画していた日本一周の旅の目処が立ったため、それに併合し このソナタを閉店する事に相成ったからであります。」 その話を聞き客席の方から「やめないでー!」「ずっとここにいてください!」という声が聞こえてきた。 「別れを惜しむ皆様方もいらっしゃいますが、どうか、皆様笑顔でこの二人の若者の旅立ちを見送ってください。 月並みな演説になりましたが、最後の言葉とさせていただきます。春姫、祥子君、どうか怪我や病気のない良い旅を。」 演説が終わり彩乃達から二人に花束を手渡されると客席から一つ、叉一つと拍手が響き、やがて客席全てから 惜しみない拍手が送られた。そして最後の締めに、清次からマイクを手渡され祥子の演説が始まった。 「皆さん、この喫茶ソナタ最後の開店に、こんなにも大勢のお客さんが来てくださり、私達は今までの人生で一番の 喜びを感じています。私も春姫も、皆様と別れるのは辛いですが、別れは終わりではなく新しい出会いの始まりです。 そしで、私と春姫はこれから多くの新しい出会いと別れを体験すると思います。皆様も、新しい出会いを 見つけ沢山の思い出を残していってください。このソナタの思い出が、皆さんの心のアルバムに残る事を祈っています。」 清次に続き、祥子にもお客さん方から溢れんばかりの拍手が送られた。 「皆さん、今日は今までお世話になった皆様へのささやかな感謝の気持ちです。思う存分楽しんでください。」 祥子の退場を皮切りに、お客さんたちは待っていましたといわんばかりにテーブルにあるケーキを 我先にと言わんばかりに自分の皿に盛っていく。 「押さないで下さい!まだケーキは沢山ありますから!」 「お持ち帰りはこちらの用意したバスケットでお一人様10個まででお願いします!」 修二「こっち、抹茶シフォンお変わり。」 舞「私もカスタードパイワンモア」 「あ、はーい!少々お待ちください!」 次々とやってきて途切れる事のないオーダーの嵐に、彩乃達はてんてこ舞いになりながら店を引っ切り無しに走り回る。 そんな猫の手も借りたいほど忙しい彩乃達も、メイド達の計らいで日ごろから贔屓してもらっている 常連の方達との挨拶をすることが出来た。 「どうですか悠麻さん、本日の紅茶の味は〜?」 「うん、いつもながら完璧です。そして、今日が最後という事もあってか今までで最高の味わいです。」 「そうですか、ありがとうございます〜。」 「あんたの面もこうして見るのが最後というのが、この街と去る際の唯一の喜びだわ。」 微笑ましい男女の会話に遠慮なく土足で入り込む祥子にも、悠麻は余裕の態度で受け流していく。 「ははは、祥子さんのその毒舌ももう聞けないかと思うと寂しくなります。」 「ふんっ!」 「二人とも、本当にこの街を離れるんですか?」 「はい〜、私も祥子ちゃんも皆さんと別れるのは寂しいですが、必ずここへ戻ってきます〜。 彩乃ちゃん達にも言いましたがこれは今生のお別れではなく、一時の別れですから、さよならじゃなくで、 叉会いましょうと言ってはもらえませんか〜?」 「「「・・・・・・・・・・・・・・はい!」」」 春姫のお願いに、三人は今までの影を潜めた顔を拭い、明るく快活な声で二人に微笑んだ。 「で、あんたはどうなの?どうせあんたの事だから春姫がいなくなった時の新しい生贄ぐらい用意してんでしょうけど。」 「これは心外ですね。春姫さんの魅力を知っている私にとって春姫さん以外の女性と付き合うなんて虚しくなるです。 私は別れという冬を耐え、春姫さんという春が来るのを気長に待つ桜になるだけです。」 「まぁ、本当に上手な人ですね〜。」 「気障なこと言わないでよ。嫌な奴思い出しちゃったじゃないの。」 悠麻の歯が浮く台詞の数々に、今まで風化させようと頑張ってきた忌々しい男の姿が脳裏をよぎった。 「眞子、奈々美、あんたらはついていかないの?」 「私はスミレさんや絵美里さんと同じで学校があるし。これから先は彩乃と眞子と一緒に試験戦争に精を出すよ。」 「かー、ついてないねぇ。化け物がいなくなってようやく思いっきり羽を伸ばせると思ったら今度は受験とはね。」 「そうよねぇ。私もこれから先はスミレと一緒に特撮&ゲーム三昧かと思った矢先にこれだもん。 ホント、マジやってられないって感じー?みたいなー」 「スミレ、私達もその受験に挑まなきゃいけないの忘れてない?」 他人行儀な発言を繰り返す親友に、米噛みに汗を一筋たらしながら突っ込みを返した。 「眞子もスミレさんも気持ちは分かるけど、平和になったんだから安心して勉強と遊びを満喫できるんだよ。 これからは安心して勉強に励みつつ、目一杯遊んでいけば良いんだよ。ね?」 「うー、奈々美ちんは相変わらず真面目やなー。真面目ついでに桃のタルト、おかわりね。」 「あ、じゃあ私も」 「あいよ。行くよ奈々美。」 「うんっ。」 「彩乃、お前等は祥子さんに別れを言わなくていいのか?」 「私達は皆より先に済ませてきたから。そういう舞さん達はいいんですか?」 「私らもあの悠麻って奴らの話が終わったら済ませるつもりだよ。ていうか歌、お前は食ってばっかいねぇで ちったぁ感慨深くしていたらどうなんだ!」 「失礼な。感慨深いからこそこうやって最後となる春姫君のケーキを味わっているのではないですか。」 「いいんですよ舞さん。そうやって美味しく食べてもらえるのが祥子さんや私達にとっても一番の労いになるんですから。」 「そういえば出発は何時になるんですか?」 「出発の日時は明日店の前にチラシを張っておくといってました。眞子みたいな言い方をするなら あなた達はこのチラシを見たなら見送りに来てもいいし来なくてもいいってやつです。」 「来ない訳ないじゃん!絶対に行くよ!ねぇ茜!」 「おう!あたし等全員揃って亥の一番に駆けつけるぜ!」 彩乃達五人は交友の深い常連や友人達とソナタ最後の団欒を満喫しつつ、ソナタ最後の開店は 満員御礼という華々しい形で幕を閉じていくこととなる。 |
イタリアーノリク
2010年04月16日(金) 20時56分12秒 公開 ■この作品の著作権はイタリアーノリクさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | ||||
---|---|---|---|---|
感想遅くなってしまい申し訳ございません。 それでは、投稿させていただきます!! 「行ってくるね、お姉ちゃん。」 このシーンは・・・泣けました。本当に泣きました。 ここまで最後まで戦い抜いてきて、一段落着いたからこそ感動もひとしお。 今まで張り詰めていた何かから開放されて、祥子さんという人物の暖かさや優しさがにじみ出ている素敵な文章です。 「はい〜。改造したキャンピングカーを使って寝泊りしながら日本中を気の向くまま巡って、気に入った土地で その土地の人達に私達の作ったお菓子なんかを振舞うんです〜。」 これは驚きました。 イグナイトは本当に興奮や感動に展開が満ち溢れている名作・・・!! 「おお、そうくるかっ!」「ええ、こうなるのっ!?」といった驚きや先が読めない展開に読めば読むほど面白さが感じられます!! 「スミレ、私達もその受験に挑まなきゃいけないの忘れてない?」 他人行儀な発言を繰り返す親友に、米噛みに汗を一筋たらしながら突っ込みを返した。 平和が戻ってきた証ですね。ほのぼのしていていい雰囲気です。 ですが、遊びほうけていてはいけませんよ。 こういったお茶目な一面が眞子ちゃんのいいところでもあるのですが。 エメラルド「今度時間空いたらVライナー来てよ。一緒に秘蔵の特撮見たり発明したりして遊ぼうぜー」 琥珀「受験勉強・・・がんばれよ。応援しているからさ」 そして、質問に答えてくださってありがとうございます。 そしてこの後ですが、ようやく序章と第一話が書きあがりました「仮面ライダーイグナイト&仮面ライダーバルキリー・ミッドナイトカーニバル」ですが、今回は超荒魔の5体の皆様に質問があるのですが、よろしいでしょうか? 今回、うちのイマジンたちと戦うにあたって、一番戦ってみたいキャラクターはそれぞれどんなヤツがよろしいと思われますか? もしよろしければ参考までに教えてくださると嬉しい限りであります。 ・ルーベット(ランスフォーム) ・トパーズ(アックスフォーム) ・エメラルド(ソードフォーム) ・サファイア(ガンフォーム) ・琥珀(アサシンフォーム) ・アメジスト(ファントムフォーム) 次回の最終回楽しみにしております。 |
50点 | 鴎 | ■2010-04-29 23:58:29 | 124x35x122x206.ap124.ftth.ucom.ne.jp |
合計 | 50点 |