仮面ライダーバルキリーたん&仮面ライダーイグナイト!!「戦う理由」
「第11章」

ビルの屋上から、一人銀色のメッシュを風にたなびかせ、ポニーテールに縛り上げたロングヘアを縦ロールに巻き上げている少女が、夜の天明市の町並みをつめたい瞳で見下ろしていた。この街をもうすぐ自分が二度との日のかげる事の無い永劫の闇へと変える。そう考えるたびに、何も知らずに飄々と生きている人間どもが滑稽な道化に見えてくる。

しかし、それなのに、この空虚な気持ちは何なのだろうか。

ここ最近調子が狂いっぱなしだ。
原因はわかっている。
この特異点と呼ばれる少女、天童慧と呼ばれる少女と出会ってしまったからだ。
彼女のことを最初は、ただの家畜に過ぎない存在、さらにはとことん運に見放されているかのような愚か極まりない存在と一蹴していた。
しかし、それに対する意識が変わったのは、慧が脱出を企てて、結局黒棘と青鰭に見つかったときのことだ。当然二人の超荒魔を前に、家畜ならば命乞いをするか、お決まりのお涙頂戴もしくは自己陶酔に等しい強がりなどをはき捨て、最後は結局無様に死んでいく、そんな未来が想像されたのだが・・・。


数時間前。

慧「はあっ・・・はあっ・・・・いい加減にしろよ・・・これ以上やるなら・・・マジで殺すぞ・・・」

両手から血をにじませて、息も荒く、しかしその瞳には全てのものを圧倒するかのような威圧感と狂気と憎悪に満ちた深く黒く凶暴な獣の光が宿っている。

そして、地面には全身の棘という棘をへし折られボコボコに殴り倒されたハリネズミの異形が人間体となった青年と、鉈がたたき折られ、泥まみれになって全身のいたるところが真っ赤に腫れ上がり、激痛に全身を身もだえしている鮫の異形が化身した茶髪の少女が呻いていた。

黒棘「こ・・・こいつ・・・・本当に・・・・人間なのですか・・・がはっ・・・まさか・・・私たちが・・・・ここまで痛めつけられるなんて・・・・!!!」

青鰭「・・・・こいつ・・・・鬼じゃん。人間じゃないって、家畜じゃないって。化け物か鬼の類だって・・・・。かはっ・・・・・ちくしょう・・・・こいつ・・・・化け物だ・・・!!」

慧「あたしのどこが化け物だって?どっから見ても一般市民Aの平凡な女子高生でしょうよ」

絶対それはない。
少なくとも生身で超荒魔を二人殴り倒すなど信じられない所業である。いや、そう思い込みたかったのかもしれない。

慧(これで、もし荒魔を殴り倒した女子高生なんて肩書きついた日には、もうまともな生活送る自信がない・・・!)

自嘲的な笑みを浮かべて、後ろに向き直ると、全速力で走り出した!!
黒棘たちが後ろから怨念に満ちた呪詛をなにやら叫んでいたがもはや気にしていられない。

慧「ああ、もうっ、何でこうなるのっ!?不幸だ、不幸だ、はいもう不幸です!!!!!」

絶叫しながら天明市に飛び出し、街中を爆走し、Vライナーが止まっている空き地近くの公衆トイレの扉に向かっている。時計を見ると、もうすぐ出発時間だ。そう思いきや、突然目の前に無数の異形の集団が立ちはだかる。そしてそれの筆頭をしているのが、白鳥の異形たる存在、スワンスペクターこと白羽根であった。

慧「・・・・しつこいな、本当に。こちとら、イマジン追いかけて一戦やらかして疲れているっていうのに、わけの分からない鉈振り回してくる危ない女の子や眼鏡の兄さん、軍服きているオッサンに薔薇を加えながらわけのわからないことをいうポエム兄さんにからまれてボロボロだっつーのに・・・・今度は何?」

もう今日は仏滅、ぶっちぎりで運勢最悪の日だ。
しかもイマジンたちがこいつらによって遠くまで吹き飛ばされ、現在彼女のみでこういった異常事態を切り抜けなければならないのだ。

白羽根「手間かけさせないでよね。所詮家畜ごときが、この世を支配する最強の一族に歯向かうなんて無謀のきわみよ。おとなしく投降しなさい、命が惜しければね。あんたなんかいつでも殺せるけど、智とかいうヤツがうるさいのよ。それに、あんたがいなければ、長い時間身体が維持できないしね」

慧「また智か。どうしてこうもまあ人の神経逆なでするようなことばかりやらかすかなあ・・・!!」

あのにやけた顔を思い出すと、拳をプルプル震わせて血管が浮き出し、歯を食いしばり、全身の血が一気に沸騰するかのように熱く燃え上がる。

白羽根「いい?これは命令なのよ。従わなければ・・・殺すわよ」
慧「・・・・ああもう、どいつもこいつも同じことばかり。どうやら、本気で一度暴れなきゃ分からないのかなぁ?だったら・・・こっちだって・・・もう形振り構ってられない」
白羽根「何をゴチャゴチャ言っているの!!少し痛い目にあわないと分からないようね!!」

そういうと、いっせいに彼女の配下であるスペクタ−達が一斉に飛び掛っていく。
欲望と本能に狂った瞳をぎらつかせ、鋭く光る爪と牙を振りかざし一斉に襲い掛かる。
しかし、その瞬間、慧の唇がにたりとつりあがった・・・そう彼女は「笑った」のだ。
そしてその表情には、これまでの家畜からは見られなかった凶暴な光が瞳に宿り、獰猛な笑みを浮かべて、手に持っていた鉈を持ち上げる。先ほど青鰭と名乗る少女から勝手に持ってきたものだった。それを軽々と片手で持ち上げて回転させると、構えだす。

慧「痛い目見るのは・・・・・あんたらだ・・・・くくくっ!!」

そして、一気に飛び出し、スペクターの首を鉈で吹き飛ばし、同時に攻撃をよけると、振り上げた足で首の骨をへし折り、もう片手で頭をつかんで一気に他のスペクターに叩きつけて、勢いをとめることなく殴り、蹴り、切り倒していく!!!

慧「・・・・全員ぶっ殺す・・・・・覚悟・・・・決めろ・・・・」

その声はどこまでも低く、うなり声に似ているかのような重い口調・・・。
そして、スペクターの血しぶきを全身に浴びながらも、彼女はぎらつく光を瞳に宿し、怒りと憎悪の咆哮を喉が張り裂けんばかりに叫び、四肢を振るって次々と大群を殴り倒していく。

その光景に、白羽根はもはや驚きを隠せなかった。
まさか抵抗するなど思いもしなかったのだ。しかも圧倒されている。

全身を血にまみれ、激しい感情を瞳に宿し、迫り来る敵を次々と切り殺し、殴り倒し、蹴り飛ばすその姿はまさに「鬼」そのもの。

慧「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!ぐあああああああああああっ!!」

咆哮を力いっぱいに叫び、鉈で殴り、切り殺し、鮮血に全身を染めながら、拳を荒魔の顔面にめり込ませてそのまま首の骨をへし折り、放り投げる。これが人間の姿とは思えない。完全にブチキレた慧は、まさしく「化け物」だ。その姿はどこまでも純粋な「暴力」。
限りなく人間の欲望のひとつ「憤怒」を形にしたような存在。
にもかかわらず、黒いロングヘアをなびかせて、端正な顔立ちを怒りに歪ませて、全てを断ち切り蹂躙し支配する姿は・・・ある意味何かをひきつけるような「闇」があった。
それはもはや美しくさえ見えた。
包み隠さない欲望丸出しの、純然たる「怒り」。その光景に白羽根がもはや凍りついたように動けない。目の前の惨劇が受け入れられない。足が動かない、声が出せない。自分が圧されている・・・!?

白羽根「ああ・・・ああああ・・・・・何よ、何よ、こいつ・・・・!!」

黄兜「これは・・・どういうことなのだ・・・あの女・・・・化け物か・・・?」
青鰭「あたしが知るかって・・・!あいてて・・・・あいつ・・・メチャクチャ!!」
黒棘「我らを・・・我らを生身で圧倒するなど・・・・ありえない・・・!!」

赤薔薇「美しい・・・」

そう言ったのは赤薔薇であった。薔薇を片手に暴れ狂う慧の姿を見て、感心しているかのように言葉を次々と語りだす。

赤薔薇「純然たる怒り・・・・激しき烈火のごとく燃え上がる情動・・・・身を焦がすような狂気に満ちた黒き炎を全身から発してなお、彼女は美しく光り輝く・・・。まるで・・・美しき夜叉・・・・すばらしい・・・・!!」

その言葉にもはや我を忘れて見ほれているかのような赤薔薇。そして、青鰭もまた暴れ狂う慧の姿に家畜とは違うなにかを感じているのか、見入っていた。

青鰭「・・・あんなに・・・・激しく・・・・暴れ狂うヤツが・・・家畜の中にいたの?あははは・・・あははははは・・・すごい・・・・あの鬼の子・・・すごい・・・欲しい。あいつ・・・すごく欲しい・・・・あははは・・・あはははは・・・・!!もったいないよ、人間なんかにさあ!!ほしいよぉ・・・・あははは・・あああ・・・・ほしぃ・・・」

黒棘「あれは・・・少しまずいのでは・・・?私たちではとても制御できるようなシロモノではありませんよ?」

黄兜「下らん・・・!!所詮は家畜だ、あのような無粋な輩、鬼の名前をかたるなど無礼千万!!赤薔薇!!」

赤薔薇「ふむ、このままでは確かに白羽根を失いかねない。いきますか」

青鰭「まずはおとなしくついてきてくれないとね」

黒棘「世話を焼かせますね!!」

橋の上からヘラクレスビートルスペクター、ローズスペクター、シャークスペクター、そしてヘッジホッグスペクターが飛び出し、スワンスペクターを攻め立てていた慧を取り囲んだ。

慧「・・・・ケリつけるとするか・・」

ベルトを巻きつけ、パスを通す。

「Plat Form」

プラットフォームに変身し、Vガッシャーをソードモードに組み替えるとスワンスペクターを蹴り、のけぞったと同時にヘラクレスビートルスペクターの大剣の攻撃を避け、柄を持ち上げて顎を殴り飛ばし、そのまま駆け上がり、頭を踏みつけて、飛び越えると今度はガンモードに組み替えて無差別に乱射し、下で待ち構えていたヘッジホッグスペクターとシャークスペクターの足元を乱射し、砂埃が舞い上がり、それに隠れるように走り抜ける。

シャークスペクター「やっぱり、あいつ、面白い!!あははははははははははははははは!!」

Pバルキリー「ちっ!!」

そして一気にトイレの扉まで爆走するが、もう時間がない。
すると、目の前にローズスペクターとスワンスペクターが立ちはだかった。

ローズスペクター「いきますよ、白羽根」
スワンスペクター「ヘマしたら殺すわよ・・・」

そして、同時に白い羽根吹雪と赤い花吹雪が同時に舞い上がり、一斉に慧に向かって乱射される!!慧がランスモードに組み替えて回転させて吹雪を一気に次々と弾き飛ばしていく。しかし無数の羽根と花びらはとどまることなく襲い掛かる!!
そして、一瞬の隙が生まれた。

そこへ、一体の影が飛び込み、右足を突き出した状態でスワンスペクターが空中に舞い上がり、吹雪にまぎれて、ものすごい速さで突き進み、渾身の蹴りが炸裂する!!

Pバルキリー「きゃあああああああああああああっ!!」

蹴りの衝撃に耐え切れず慧が吹き飛んでいく。その吹き飛んでいく先に青鰭が立った。

青鰭「それじゃあ、いきますか。あははははははははははははははは!!」
慧に青い光となって飛び込み、そのまま地面に着地すると、白い帽子をかぶり、髪が肩までかかるショートへアに変わり、青いウェーブがかかったメッシュが入り、左目の目元に星のラメが入り、青い光が宿った。

A慧「あはははははははははははははは!!ゲット!!」

慧とは思えない高笑いを浮かべながら鉈とパスを持ち上げて4人に向き直る。

黒棘「やれやれ、まずはひと段落ですか」
黄兜「俺は認めん。絶対に認めんぞ・・・!!」
A慧「まあまあ、いいじゃんいいじゃん。面白くなってきたんだしさあ、あははははははははははははははははははは!!」
黄兜「その顔で笑うな!!!」

そのときの慧の姿に、もはやこれまでの何かをぶち壊されたような感じがした。
いや、それは今まで自分が振り返りたくない過去を思わせる何か。

圧倒的な強さ。
あの時、あの強さがあれば、あの約束を果たすこともできた。
あの時、青鰭に殺されることもなかった。
なぜ、選ばれた自分にあの強さがない?なぜ家畜ごときにあそこまでの闇を操る強さがある?あそこまでひきつける「狂気」を、「闇」をもっていながら、なぜ人間などに甘んじる?
全てが腹ただしい存在だ。

白羽根「・・・あの家畜が・・・・!!あいつには・・・死よりも残酷な苦痛と絶望を与えてやる・・・・!!」


こうした憎悪を慧に感じ、今はこうして慧に憑依し、彼女の仲間であるイマジンをも打ち倒して彼女に自分の仲間を倒させるという苦痛を与えることにも成功しているのに。
今、自分を認めてくれる存在がもういない。自分自身さえ何をしようと心が満たされない。

S慧「・・・・あんたはいつもそう。勝手に人のことをかき回して、こっちが何か言い返そうとするとすぐに煙に巻くんだから・・・・でも・・・返事くらいさせてよ」

屋上に寝転び、届きそうで届かない星に手を伸ばしながらつぶやく。

S慧「私だって・・・強くなれる、あんな家畜なんか、いつだって殺せる。私は超荒魔、選ばれた者、家畜同然の人間など恐れない!!」


トパーズ「独り言はイタいぞ、見ていてな」
サファイア「やーれやれ、うちのチビスケやってくれちゃってさ、負けてないって暴れて大変だったんだよね?」

そこへ、トパーズとサファイアが歩いてくる。
それを見て、慧が起き上がり、バックルを構えなおす。

トパーズ「君で最後だ、覚悟しろよ。私は白鳥と変態とバカが大嫌いだ。変身」
サファイア「あたしを見て言うなよ!!変身!!」
S慧「・・・ふふふ、あははは、上等じゃない。あんたたち全員殺してやる。こいつにあんたたちを傷つけたという絶望を刻ませてやる、私は、こいつを壊してやる!!変身!!」

白い嵐と青い光、黄色の光が行き交い、同時に飛び出した!!

クインガッシャーをサーベルモードに変えてアックスの攻撃を受け止めると同時にクインガッシャー・ガンモードを構えて銃弾を発射し、白い羽根の形をした弾丸が飛び出し、それがアックスフォームに炸裂する!!

Aバルキリー「何っ!?」

無防備となった上半身に無数の弾丸が打ち付けられ、爆発し、斧の刃がたじろぐ。
そしてアックスフォームをつかみ、ガンフォームが乱射してきた弾丸を前に突き出すと、青い弾丸が爆発し、アックスフォームのアーマーが火花を上げて爆発する。

Aバルキリー「ぐあああああああああああっ!」
Gバルキリー「嘘っ!?」

そしてアックスフォームを放り投げると呆然としているガンフォームに向かって翼を広げて無数の羽根手裏剣を発射する!!
それをもはや避けきれずガンフォームも吹き飛ばされる!!
そのまま隙を与えず、蹴りを次々と叩き込んでいく!!

Sバルキリー「私は負けない。慧なんか、怖くないっ!!私は、選ばれた者なんだっ!!!慧なんか・・・あんな家畜なんか・・・怖くないんだっ!私の居場所を、私のいたい場所を、あいつなんかにぶち壊されてたまるかっ、私の存在を汚させるものかっ!!!!赤薔薇に気に入られる?!青鰭に認められる!?許せない、あいつだけは許せない!!」

もはやヒステリーのような絶叫を上げながらガンフォームを蹴り飛ばす。
そして、パスを通し、雷が、吹雪が、嵐が全身を渦巻き、空中に舞い上がる。

Aバルキリー「まずいな・・・!!」
Gバルキリー「つーか、エメラルドの言ってたこと、マジみたいね。あいつ、もう完全におかしくなっちゃってる!!」
Aバルキリー「お前が言うんだから処置なしだな」
Gバルキリー「やかましいわ、バカ!!」

Sバルキリー「荒魔の力を思い知れ!!!」

照準が定まると同時にミサイルのように発射され、蹴りがアックスフォームとガンフォームに炸裂すると、大爆発を起こし吹き飛んだ!!

Aバルキリー「バカなああああっ!!?」
Gバルキリー「うわあああああああああっ!」

二人がビルの屋上から投げ出され、落下していく。
下を見ると、夜の闇にまぎれて何も見えない。まあこの高さから落ちたら無事ではすまない。

Sバルキリー「これで・・・また二人だ。あははは・・・あとはあの赤いヤツだけ。それと封魔師・・・あんたたちを全員黄泉の国に案内してあげるわ・・・ふふっ!!」


一方・・・。
琥珀「お前らなぁ・・・怪我人にムチャさせるんじゃねぇって・・・!!」

ビルに張り付いていた琥珀が張ったネットにトパーズとサファイアが引っかかっていた。

トパーズ「不覚だ・・・!!」
サファイア「ありゃ、強すぎ。つーか、キレちゃてるわな。いったあああああああああっ!!」

琥珀「ひどい怪我だ。急いで戻らないと・・・・!!」

琥珀「・・・つーか、お前ら、少し太っただろ?」
サファイア「し、し、失敬だねっ!?あたしの体重はラブパワーに変えられるのさっ!そうか、トパーズか!トパーズだな!?」
トパーズ「バカ抜かすなっ!!!お前だろうがっ!!毎晩毎晩夜遊びしているんだからな!!」
サファイア「いっつもクッキー食べて寝そべってチェスしかしてないじゃん!!」
琥珀「お前ら、こんなところで喧嘩するなっ、バカっ!!あ、やべ、ネットもたねぇっ!!!」

ぶちっ(ネットが千切れた音)

バカヤロォオオオオオオッ!!!!!!!!(琥珀の絶叫)

サファイアのバカがぁあああああああああああっ!!(トパーズの咆哮)
トパーズのむっちりおっぱいいいいいいいいいいいっ!!!(サファイアの戯言)

バカばっかりだ、こいつら。


結果。

祥子「ビルの屋上から落っこちて大怪我・・・ねぇ(怒り)」
彩乃「・・・・言いたかないですけど、バカですよ、これ」
眞子「というよりも、残りまともに動けるのルーベットさんだけじゃん!!どんだけバカやらかしてるんですかぁああああああ!!」
奈々美「というよりも、琥珀さん大丈夫ですか?まさか、あの二人の下敷きになるなんて・・・」

琥珀「・・・もうなれました(全身複雑骨折)」
サファイア「あいたたたた・・・・(打ち身)」
トパーズ「全く・・・不甲斐ない(打ち身)」
エメラルド「つーか、お前らに任せたあたしがバカだった・・・・」
アメジスト「でも厄介ね、残りはまともに動けるのあなたたちと、ルーベットだけよ」

ルーベット「・・・・対策が必要ですな。正面突破以外で」
眞子「前みたいにバーニング熱旋キックとかは!?」
祥子「さすがに相手もそのパターンは読めるわよ」
眞子「ですよね・・・」
サファイア「気をつけて、あいつの次の狙いは、ルーベットだ」
エメラルド「お姉ちゃんのこと、相当憎んでるもんな・・・」
トパーズ「無理はない。存在意義そのものを奪い去りかねないヤツなんだからな」
琥珀「あいつが荒魔の仲間になんかなるはずがないんだけどな」
アメジスト「あいつが認めなくても、あいつらのボスが認めてしまったら?」
彩乃「でも、慧さんって、そんなにひどい人じゃないんですよね?」
眞子「今までのやつらみたいに、人間やめました、やりたいことやりたいようにやります、殲鬼姫様命ですって感じではないですよね」

トパーズ「・・・そうだが・・・・・・」
サファイア「あいつ、基本的に人間嫌いだからね・・そうも言い切れないんだよ。殲鬼姫はどうでもいいとしてさ」
エメラルド「それに・・・あたしたち・・・本当に勝てるのかよ・・・そんなヤバいやつに・・・」
琥珀「一か八か・・ってとこだろうな」
アメジスト「ましてや、この体たらくじゃあね・・・本当に・・・動きたいときに限ってどうして動けないのよ・・・・」

意気消沈だ。
無理もない。ここまで痛めつけられ、動きたいのに動けない絶望感が彼女たちを支配している。

そのときだ。
ルーベットが「ふむ」とうなづいて、槍を構える。そして、部屋を出ようとする。

彩乃「ルーベット?」
ルーベット「むぅ?」
祥子「貴女・・・まさか行くつもりなの?」
ルーベット「もちろん」
春姫「慧ちゃんを・・・取り戻しに?」
ルーベット「この町に笑顔を取り戻すためにも、今なお暴れている荒魔たちを鎮圧しなくてはなりませんからな。それで向こうから着たら迎撃する」
眞子「何体いると思ってるのよ!?」
ルーベット「まあ、指だけでは数え切れないでしょうなあ」
奈々美「なのに、どうして・・・どうしてそんなに落ち着いているんですか?」


ルーベットが背中に槍を置いて、後ろを振り向かずにゆっくりと話し出す。

ルーベット「私はバカですからな、大事なもの奪われて、力及ばず朽ち果てて倒れても、どうしても取り戻したいと思う気持ちばかりが先走って、気がついたらもう一度立ち上がって取り戻すために突っ走っている。理屈とか力の差とかそんなものいくら聞かされても、結局は私がどうしたいしか考えてない」

「平穏な、少々暇なくらいなこの天明で、慧殿や皆と思い切り笑ってバカやりたい」

優しい笑顔で、しかし強い光を帯びた眼差しで話す言葉に、全員が胸を打たれる。

ルーベット「あの人と出会って、ほれてしまった以上、あの人の隣で一緒に歩いていくためには、いつどんなときでも背筋伸ばして、お天道様真っ直ぐ見て生きて生きたい。この空、慧殿が好きな青空がない。なら、私たちがでかい花火打ち上げて青く澄み切った青空にしないとね。さて、私は先に参りますぞ」

そういって、背中越しにいう。

ルーベット「トパーズ、エメラルド、サファイア、琥珀、アメジスト、次会うときは・・・陽の下で・・・・待ってますからな」

力強く微笑むと、電車から飛び出していく。
その言葉はどこまでも熱く、仲間のことを信じている強さが感じられる。

サファイア「・・・参るよね、あそこまで言われたら無茶するしかないじゃん」
トパーズ「全くだ・・・」
エメラルド「あいててて・・・・!!いくっきゃないじゃん」
琥珀「・・・いま動かなきゃ、ここにいる理由すらなくなっちまう」
アメジスト「そう思えば、白羽根もそんな思いと今戦っているのね」

5体が涙を浮かべて、全身の激痛に耐えながらも起き上がるが、床をはいつくばっている。

そしてそれぞれが彩乃たちに足元にすがりつくようにはってきた。

トパーズ「祥子・・・すまない・・・力を貸してくれ!!」

サファイア「眞子くん、一生のお願いだ。あたしにもう一度力を貸して!!」

アメジスト「・・・春姫・・・・お願い・・・あいつを助けて」

琥珀「奈々美・・・・・ごめんこんなことに巻き込んじまって・・・・!!」

エメラルド「あやのん、お願い、助けて!!!」

心からの絶叫。
守りたい人を守りたい、初めて心から慧以外の誰かを頼るという行為は今までの彼女たちからは考えられない行動であった。でも今は、心から信じている。彩乃達の強さを。

彩乃「・・・任せてよ。必ず取り戻してみせる!!太陽も、慧さんも!!」
奈々美「うん!!一生懸命、頑張る!!」
眞子「この眞子ちゃんと皆にまかせなさいって!!」
春姫「はい!!そしたら皆でティーパーティーを盛大にやりましょう〜!!」
祥子「・・・任せて」

そして飛び出すとそこは、慧が拉致された広場へとつながっていた。
そしてそこでは無数のスペクターたちの死体、死体、死体の山が積み重なっていた。それはすべて槍で胸を、額を貫かれ、首をはねられて、体のいたるところが折れ、腫れ上がり、無残な姿をさらしていた。

祥子「・・・一番キレちゃってるのは、あの子のようね」


そして、広場。
銀色のメッシュをたなびかせて、冷たい瞳を狂気にゆがめて笑みを浮かべて、慧に憑依した白羽根が目の前の相手を見て待ち焦がれたかのように笑う。

そしてその先には赤い槍を構えて、いつにない怒りと激情を静かに秘めている獰猛な顔つきのルーベットがいた。ベルトを巻きつけパスを構えている。

S慧「会いたかったわ・・・赤薔薇を殺したあんたにね。一番残酷な方法で殺してやる、そう、この天童慧の身体で殺してやる!!あはははっ!!」

ルーベット「・・・・死なないさ。皆が待っているからな!!」

同時にパスを構えて白い光と赤い光が飛び交い、一陣の風が吹き出したと同時に、ライフルとランスが激しくぶつかり合い、火花が飛び散る!!!

Lバルキリー「白羽根ぇええええええええええええ!!!」
Stバルキリー「慧・・・慧・・・・慧・・・!!壊してやる!!!」

憎悪と情念、二つの激しい感情がぶつかり合う!!!
2010年06月19日(土) 14時17分05秒 公開
■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回本当に申し訳ございません。
もし、荒魔たちや白羽根様のイメージが崩れていたら本当に申し訳ございません!!本作品で書いているのですが、慧はどちらかというとダークヒーローの面が強いので、さらに、彼女自身も自分の狂気を恐れているという一面があるので、書いてみたのですが、いかがでしょうか?次回からは最終決戦に向けて書きますので、応援よろしくお願いいたします。

>イタリアーノリク様
今回、本当に申し訳ございません。
しかし、作品を読んで一番好きな荒魔が実は白羽根様であったりします。赤薔薇との約束を守るために戦う誇り高い姿勢がとても好きでした。
そしていつもお返事本当にありがとうございます。こうして作品中の人物とお話できる機会を作っていただけるイタリアーノリク様には感謝のきわみです。

それで今回なのですが・・・。
殲鬼姫様と5人の超荒魔の方々にお聞きしたいのですが、「天童慧」という少女をどう思われますか?
人並み以上に不幸で、キレたらもう手がつけられない凶暴さと人間を受け付けない孤高さ、そして荒魔に匹敵する「闇」を持っているのですが、どう思われますか?

>烈様
それにしても、正直黒棘の言葉には頭にきました。必死に頑張っている人などを侮辱する上にどこまでも卑劣な奴であることが、よくわかる感じでした。

作品を読んでみると、卑劣ですが頭はいいし、敵を心理的に追い詰める策に関しては天才といえますね。私はそう思います。
イタリアーノリク様の書かれる悪役はこういった魅力に満ち溢れているのですね。

ちなみにエメラルドは無事です。
あの後、助けられて「自分は負けてない!!あいつ倒す!!」と大暴れしまくったそうです。

次回もよろしくお願いいたします!!

この作品の感想をお寄せください。
Lmj12J Very informative blog post.Really thank you! Awesome. 50 click ■2012-08-07 13:00:46 91.201.64.7
一足遅れて参上しました。そして感想!

今回は白羽根が随分イラついているようですが、荒魔という選ばれた存在でないのに、
何故慧ちゃんに自分達に迫るほどの力を持っているのか。大体の理由はこんな所でしょうか。
それと白羽根のイメージについてなんですが、正直な事を言わせてもらえば、
こういう相手を自責の念で押し潰させるやり方は余り好まないキャラなんですが、
今回はお祭り規格みたいなものなんで、このままの調子で遠慮せずに書き上げてください。

というか慧ちゃん、生身で上級と対峙するって、どんだけチートなんだよ・・・

一方Vライナー側でも慧ちゃん奪回作戦を練り上げるルーベットの熱いシーンが
本当に熱い!どれだけ慧ちゃんを思っているのか気迫を通して分かってきます。
次回で最終決戦ですが、殲鬼姫は復活するのか?それと未だ空気な智はどうなる?


殲鬼姫「慧といったな?それ程の力、心に秘めた闇、わらわの僕に相応しい。
    人という愚かな家畜など捨てわらわ達至高の存在である荒魔となれ。
    それこそ主が夢見る幸多き未来じゃ。」
黒棘「気に入りましたよ。それ程の力がありながら家畜のために戦うなど。余りにも
   無意味、無益、無価値。力とは全て己という言葉に集約されるべきもの、
   それが分からないとは、哀れ。」
赤薔薇「美しい・・・・・実に美しい。薄幸という荒波の中にも決して未来という光を
    見失わず、希望という舵を握り進むその姿。我が舞台に立つに相応しい。」
白羽根「あんたも殲鬼姫様の愛を受け入れなさい。そうすれば殲鬼姫様の僕という
    名誉ある地位と力が手に入るのよ。」
青鰭「家畜が超荒魔であるこのアタシを超えるデスって?笑えない冗談ね!」
黄兜「我々と共に来い。その力は殲鬼姫様のために振るってこそ本当の価値がある。
   人間などという下等な存在を守ってなんになる?下々の力とは至高の支配者の
   手駒となるために存在しているのだ。」
50 イタリアーノリク ■2010-06-20 17:53:17 i118-16-179-58.s10.a022.ap.plala.or.jp
感想です。どうも『鴎』さん。

新たに更新された話ですけど、今回の話は随分と白羽根を代表とした“超荒魔”などの“スペンサー”達の心情と、慧ちゃんのなんだかんだの暴走、そして慧を救うためにかなりの怒りを抱きながら敵地に向かうルーベットの様子が印象的だったと思っております。
まず第一に呼んでいて思ったことですが、冷静に考えてみれば慧ちゃんが敵さんに捕まって静かにただ捕まっているような人物ではなかったということを忘れていたことです。……何気に今回の話では、生身でかなりの数の“スペクター”を殲滅していたみたいですね。…正直【仮面ライダーバルキリー】で語られていたことですが、慧自身がかなりの“人外存在”であり、かなりの“心の闇”を抱えているだろうということを改めて再認識した気持ちです;その暴走振りが見事に今回の話では出ており、その“修羅”如き様子には白羽根を始めとした“超荒魔”のメンバーもかなり引いていたようですね…。……ただ一人はその姿に酔いしれていたようですけど…;
次に思うことは、何だかんだいって白羽根が慧に“憑依”して変身した『バルキリー・ストームフォーム』の実力です。…彼女の戦闘能力は正直言って凄まじいの一言です。ある意味慧に対しての憎悪などが関係して発揮されているようですが、その結果、《バルキリーズ》の中でも実力者であるトパーズとサファイアの二人をほんの数秒辺りで倒してしまうとは、正直驚きました;ある意味今まで中で一番強い存在だといっても過言ではない気がします…;
……それにしても、一応琥珀さんの助けもあって助かったトパーズとサファイアですけど、…いくらなんでも“ネット”の上で暴れるのもどうかと思うよ;流石に呆れるわ…;…琥珀さん、ファイト!!
そんでもって結果的に戦える人物がルーベットと封魔師4人だけになったわけですが、そんな状態だろうと諦めないルーベットの様子が、何よりもカッコいいと思いました。そして白羽根の許に向かうルーベットが仲間達に言った言葉が鍵となり、トパーズ達を再び立たせる結果を生んでしまったのですからすごいと思います。…単純だけどはっきりと強い意志を感じさせる“言葉”。それこそが今回の話で一番必要であったものだったのだなと、しみじみ思いました。

白羽根が“憑依”した慧とルーベットとの戦いが始まりましたが、それがどのような結果を生むのかが気になってきます!そして、今回の話で暗躍している智の奴はどういったことをしているのかも気になります。…次回の更新される“話”の際も、かなりのことが起こる気がします。

そんな感じで、感想は以上です。どうか今後も頑張って下さい!!


50 ■2010-06-20 16:49:39 i125-205-40-54.s10.a044.ap.plala.or.jp
合計 150
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